JP4338793B2 - (フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、カチオン錯体重合反応に供されるメタロセン触媒(重合触媒)の助触媒として有用な、トリス(フッ化アリール)ホウ素やビス(フッ化アリール)ホウ素ハライド等の(フッ化アリール)ホウ素化合物を単離する(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(フッ化アリール)ホウ素化合物、とりわけ、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素は、例えば、カチオン錯体重合反応に供されるメタロセン触媒(重合触媒)の活性を高める助触媒として有用な化合物である。尚、メタロセン触媒は、ポリオレフィン重合用触媒として、近年、特に注目されている。
【0003】
上記のトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を結晶(粉体)として取り出す方法として、例えば、J. Organomet. Chem., 2, 245 (1964)には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のペンタン溶液をエバポレータを用いて真空下、20℃で蒸発乾固させる方法が記載されている。ところが、該方法は、原料であるブロモペンタフルオロベンゼンからのトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の収率が30%〜50%と低い。また、該文献には、取り出されたトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の純度については何ら記載されていない。尚、該文献には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素が真空下、80℃で昇華することが記載されている。
【0004】
また、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を結晶(粉体)として取り出す方法として、例えば、特開平6−247978号公報には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のオクタン溶液を晶析する方法、並びに、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のトルエン溶液を蒸発乾固させた後、昇華させる方法が記載されている。ところが、該方法は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の収率が53%〜71%と低い。
【0005】
さらに、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を得る方法として、例えば、Z. Naturforsch., 20b, 5 (1965)には、ペンタフルオロフェニルマグネシウムブロマイドと三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体とを鎖状エーテル系溶媒中でグリニャール(Grignard)反応させる方法が記載されている。そして、該文献には、n−ヘキサンを用いてトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の濃縮・晶析操作を数回繰り返すことにより、白色針状結晶のトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素が収率88%(純度不明)で得られること、即ち、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の単離方法が記載されている。また、該文献には、蒸留または昇華することによってトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を精製する方法が記載されている。尚、該文献には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジエチルエーテル錯体が減圧下、60℃以上でトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素とジエチルエーテルとに分離することが記載されている。
【0006】
一般に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の溶液から溶媒を除去して該トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を結晶(粉体)として取り出すには、蒸発乾固、或いは、溶液状態での長時間の加熱・濃縮操作が行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素は、蒸発乾固、或いは、溶液状態での長時間の加熱・濃縮操作を行うと、その一部が、例えばペンタフルオロベンゼンと他の分解生成物とに分解してしまう。例えば、溶媒を分離・除去するために、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の溶液を単純に加熱・濃縮等した場合には、上記分解反応が起こり、分解生成物がトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素に多量に混入する。このため、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離することができない。
【0008】
つまり、上記従来の単離方法では、溶媒を分離・除去するために、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を含む溶液の加熱・濃縮操作等を長時間、行わなければならないため、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素が分解してしまう。それゆえ、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離することができないという問題点を有している。また、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素は昇華する性質を備えているので、溶媒を分離・除去する際の真空度や温度等に制約がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、(フッ化アリール)ホウ素化合物を収率良く、かつ高純度の固体(粉体)として単離することができる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法について鋭意検討した。その結果、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液を、所定の条件下、即ち、圧力が350Torr以下であり、かつ、その圧力における該有機系溶媒の沸点以上であって、該(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華温度並びに融点よりも低い温度に調節された溶媒除去装置に、該装置内の滞留時間が3時間以内となる条件下で導入し、前記溶液から有機系溶媒を除去することにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物が、収率良く固体(粉体)として容易に単離されることを見い出した。また、(フッ化アリール)ホウ素化合物にかかる熱履歴が従来の単離方法よりも小さいので、つまり、高温で長時間、加熱しないので、(フッ化アリール)ホウ素化合物の分解が殆ど起こらず、単離される(フッ化アリール)ホウ素化合物が高純度となることを見い出して、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、請求項1記載の発明の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法は、上記の課題を解決するために、一般式(1)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、nは2または3である)
で表される(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液を、圧力が350Torr以下であり、かつ、その圧力における該有機系溶媒の沸点以上であって、該(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華温度並びに融点よりも低い温度に調節された溶媒除去装置に、該装置内の滞留時間が3時間以内となる条件下で導入し、前記溶液から有機系溶媒を除去することを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の発明の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法において、熱風乾燥法、真空乾燥法、および伝導乾燥法からなる群より選ばれる少なくとも一種の乾燥法を採用して有機系溶媒を除去することを特徴としている。
【0015】
上記の方法によれば、(フッ化アリール)ホウ素化合物が、収率良く固体(粉体)として容易に単離される。また、(フッ化アリール)ホウ素化合物にかかる熱履歴が従来の単離方法よりも小さいので、つまり、高温で長時間、加熱しないので、(フッ化アリール)ホウ素化合物の分解が殆ど起こらず、単離される(フッ化アリール)ホウ素化合物が高純度となる。これにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物を、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離・精製することができる。
【0016】
請求項3記載の発明の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法は、上記の課題を解決するために、請求項1または2記載の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法において、(フッ化アリール)ホウ素化合物がトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素であることを特徴としている。
【0017】
上記の方法によれば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離・精製することができる。
【0018】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明において「(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液」には、(フッ化アリール)ホウ素化合物が有機系溶媒に懸濁状態で含まれている場合、つまり、有機系溶媒が(フッ化アリール)ホウ素化合物をスラリー状で含んでいる場合も含まれることとする。
【0019】
本発明にかかる前記一般式(1)で表される(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法は、該(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液を、圧力が350Torr以下であり、かつ、その圧力における該有機系溶媒の沸点以上であって、該(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華温度並びに融点よりも低い温度に調節された溶媒除去装置に、該装置内の滞留時間が3時間以内となる条件下で導入し、前記溶液から有機系溶媒を除去する方法である。
【0020】
本発明において単離されるべき(フッ化アリール)ホウ素化合物は、式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 で示される置換基が、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基で構成され、かつ、該R1 〜R5 で示される置換基のうちの少なくとも一つがフッ素原子で構成され、Xがフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で構成され、nが2または3である化合物である。従って、上記(フッ化アリール)ホウ素化合物は、nが2である場合にはビス(フッ化アリール)ホウ素ハライドであり、nが3である場合にはトリス(フッ化アリール)ホウ素である。
【0021】
上記の炭化水素基とは、具体的には、アリール基、炭素数1〜12の直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状のアルキル基、および、炭素数2〜12の直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状のアルケニル基等を示す。尚、上記の炭化水素基は、本発明にかかる単離方法に対して不活性な官能基をさらに有していてもよい。該官能基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、メチルチオ基、N,N−ジメチルアミノ基、o−アニス基、p−アニス基、トリメチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリルオキシ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0022】
上記のアルコキシ基は、一般式(A)
−ORa ……(A)
(式中、Ra は炭化水素基を表す)
で表され、式中、Ra で示される炭化水素基とは、具体的には、例えば、アリール基、炭素数1〜12の直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状のアルキル基、および、炭素数2〜12の直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状のアルケニル基等を示す。尚、上記の炭化水素基は、本発明にかかる単離方法に対して不活性な官能基をさらに有していてもよい。
【0023】
前記一般式(A)で表されるアルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、 sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
【0024】
(フッ化アリール)ホウ素化合物は、例えば、相当するフッ化アリールマグネシウム誘導体と、ハロゲン化ホウ素とを、例えばエーテル系溶媒中で反応させることにより得ることができる。また、フッ化アリールマグネシウム誘導体とハロゲン化ホウ素とのモル比を適宜設定することにより、ビス(フッ化アリール)ホウ素ハライド並びにトリス(フッ化アリール)ホウ素の何れか一方を、選択的に得ることができる。これにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含むエーテル系溶液が得られる。また、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む炭化水素系溶液は、例えば、エーテル系溶媒を炭化水素系溶媒に交換するいわゆる溶媒交換を行うことによって、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含むエーテル系溶液から容易に得ることができる。または、フッ化アリールアルカリ金属誘導体とハロゲン化ホウ素とを、例えば炭化水素系溶媒中で反応させることにより得ることができる。
【0025】
このように、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液は、該有機系溶媒を用いて、上記方法を含む適当な方法を採用することにより得ることができる。さらに、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液は、例えば上記方法を含む適当な方法を採用することによって得た(フッ化アリール)ホウ素化合物を、任意の有機系溶媒に溶解することにより得ることができる。尚、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液の製造方法は、特に限定されるものではない。また、有機系溶媒については後述する。
【0026】
上記のビス(フッ化アリール)ホウ素ハライドとしては、具体的には、例えば、ビス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,3,5−トリフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(1,3−ジフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,3,4,6−テトラフルオロ−5−メチルフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,4,5−トリフルオロ−6−メチルフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,3,6−トリフルオロ−4−メチルフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−メチルフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,6−ジフルオロ−3−メチルフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2,4−ジフルオロ−5−メチルフェニル)ホウ素ハライド、ビス(3,5−ジフルオロ−2−メチルフェニル)ホウ素ハライド、ビス(4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(3−メトキシ−2,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2−メトキシ−3,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(3−メトキシ−2,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(3−メトキシ−2,4,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2−メトキシ−3,5−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(3−メトキシ−2,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(3−メトキシ−4,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(2−メトキシ−4,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド、ビス(4−メトキシ−2,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素ハライド等が挙げられる。
【0027】
上記のトリス(フッ化アリール)ホウ素としては、具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2,3,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ホウ素、トリス(1,3−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル)ホウ素、トリス(2,3,4,6−テトラフルオロ−5−メチルフェニル)ホウ素、トリス(2,4,5−トリフルオロ−6−メチルフェニル)ホウ素、トリス(2,3,6−トリフルオロ−4−メチルフェニル)ホウ素、トリス(2,4,6−トリフルオロ−3−メチルフェニル)ホウ素、トリス(2,6−ジフルオロ−3−メチルフェニル)ホウ素、トリス(2,4−ジフルオロ−5−メチルフェニル)ホウ素、トリス(3,5−ジフルオロ−2−メチルフェニル)ホウ素、トリス(4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(3−メトキシ−2,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2−メトキシ−3,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(3−メトキシ−2,5,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(3−メトキシ−2,4,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2−メトキシ−3,5−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(3−メトキシ−2,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(3−メトキシ−4,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2−メトキシ−4,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素、トリス(4−メトキシ−2,6−テトラフルオロフェニル)ホウ素等が挙げられる。上記例示の化合物のうち、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素が特に好適である。
【0028】
本発明にかかる(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液としては、例えば、(フッ化アリール)ホウ素化合物のエーテル系溶液、炭化水素系溶液、エステル系溶液、ケトン系溶液、アルコール系溶液、アミド系溶液、および、これら溶液の混合溶液が挙げられる。このうち、(フッ化アリール)ホウ素化合物の炭化水素系溶液がより好ましい。つまり、本発明において分離・除去されるべき有機系溶媒としては、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、および、アミド系溶媒が挙げられる。これら有機系溶媒は、(フッ化アリール)ホウ素化合物を溶解し、かつ、本発明にかかる単離方法に対して不活性な非水溶媒であればよい。
【0029】
該エーテル系溶媒としては、具体的には、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジ−2−メトキシエチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエーテル系溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0030】
該炭化水素系溶媒としては、具体的には、例えば、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、パラフィン、石油エーテル等の、直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,5−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、脂肪族炭化水素並びに芳香族炭化水素は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子を有していてもよい。これら炭化水素系溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。これら炭化水素系溶媒のうち、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、IsoparE(商品名;Exxon社製、炭素数が10程度のイソパラフィンの混合物)、ノナン、デカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素がより好適である。
【0031】
該エステル系溶媒としては、具体的には、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等の脂肪酸エステルが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエステル系溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0032】
該ケトン系溶媒としては、具体的には、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらケトン系溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0033】
該アルコール系溶媒としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらアルコール系溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0034】
該アミド系溶媒としては、具体的には、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらアミド系溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0035】
上記有機系溶媒の沸点は、後述する単離操作において採用される操作圧力の下で、(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華が実質的に生じない温度未満、並びに、該(フッ化アリール)ホウ素化合物の融点未満であればよく、特に限定されるものではない。即ち、上記有機系溶媒の沸点は、後述する単離操作において採用される操作圧力の下で、(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華温度並びに融点よりも低い温度であればよく、特に限定されるものではない。尚、昇華温度並びに融点よりも低い温度とは、昇華温度並びに融点のうちの低い方の温度よりも、さらに低い温度を示す。また、有機系溶媒が混合物である場合における沸点とは、該混合物中の、最も高い沸点を有する化合物の沸点を示す。
【0036】
溶液における(フッ化アリール)ホウ素化合物の含有量、つまり、濃度は、特に限定されるものではないが、単離操作をより一層効率的に行うことができるように、できるだけ高濃度であることが好ましく、0.1重量%〜50重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%〜30重量%の範囲内である。さらに具体的には、(フッ化アリール)ホウ素化合物の濃度は、例えば、溶媒除去装置(後述する)に導入されるときの該溶液の温度において、ほぼ飽和濃度となっていることが望ましい。但し、溶媒除去装置への導入に支障が無ければ、飽和濃度を越えていてもよい。
【0037】
(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液から、所定の条件下で有機系溶媒を除去することにより、該(フッ化アリール)ホウ素化合物が、収率良く固体(粉体)として容易に単離される。単離操作時における操作圧力は、350Torr以下が好ましく、200Torr以下がより好ましく、100Torr以下がさらに好ましい。350Torrを越える圧力で単離操作を行うと、有機系溶媒が蒸発し難くなる。従って、有機系溶媒の分離・除去に長時間を要することになるので、(フッ化アリール)ホウ素化合物の分解が起こり易くなり、(フッ化アリール)ホウ素化合物の収率並びに純度が低下するので好ましくない。
【0038】
単離操作時における操作温度は、操作圧力における有機系溶媒の沸点以上、かつ、(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華が実質的に生じない温度未満、並びに、該(フッ化アリール)ホウ素化合物の融点未満であればよく、具体的には、−150℃〜150℃の範囲内が好ましく、−80℃〜140℃の範囲内がより好ましく、−50℃〜130℃の範囲内がさらに好ましい。150℃を越える温度で単離操作を行うと、(フッ化アリール)ホウ素化合物の分解が起こり易くなり、(フッ化アリール)ホウ素化合物の収率並びに純度が低下するので好ましくない。一方、−150℃未満の温度で単離操作を行うと、有機系溶媒が蒸発し難くなるので、単離操作に長時間を要することになる。
【0039】
単離操作時における操作時間、即ち、溶液の溶媒除去装置内の滞留時間は、3時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、30分以内がさらに好ましく、10分以内が特に好ましい。溶液を溶媒除去装置内に3時間を越えて滞留させると、(フッ化アリール)ホウ素化合物の分解が起こり易くなり、(フッ化アリール)ホウ素化合物の収率並びに純度が低下するので好ましくない。
【0040】
そして、本発明にかかる単離方法においては、上記圧力、温度、および滞留時間を全て満足する条件下、即ち、圧力が350Torr以下、温度が例えば−150℃〜150℃の範囲内、かつ、溶液の溶媒除去装置内の滞留時間が3時間以内となる条件下で、有機系溶媒を除去する。
【0041】
本発明にかかる溶媒除去装置、即ち、上記条件下で溶液から有機系溶媒を除去するのに好適な溶媒除去装置としては、熱風乾燥法、真空乾燥法、および伝導乾燥法からなる群より選ばれる少なくとも一種の乾燥法を採用した乾燥装置が挙げられる。熱風乾燥法(いわゆるスプレードライ法)は、熱風を用いて溶液に対流伝導でもって熱を与えて乾燥させる方法である。真空乾燥法は、伝導、放射、或いは両者を併用して溶液を前記圧力下で加熱し、乾燥させる方法である。伝導乾燥法は、溶液を加熱板等に静置接触させて伝熱加熱し、乾燥させる方法である。
【0042】
熱風乾燥法を採用した乾燥装置としては、具体的には、例えば、噴霧乾燥器が挙げられる。噴霧乾燥器は、前記圧力下で溶液を、例えば窒素ガスや乾燥空気等の熱風中に噴霧することにより、有機系溶媒を蒸発させて、(フッ化アリール)ホウ素化合物を20μm〜500μm程度の球状の粒子(固体)とする。噴霧乾燥器の形式としては、横型、円筒型、サイクロン型等が挙げられる。また、溶液の噴霧液は、熱風と並流させてもよく、向流させてもよい。さらに、並流と向流とを組み合わせた複合流とすることもできる。
【0043】
上記噴霧乾燥器の方式としては、具体的には、例えば、▲1▼図1に示すように、溶液をノズル10を用いてノズル噴霧することにより、該噴霧液1を熱風20と共に横方向に並流させる横型並流方式;▲2▼図2に示すように、乾燥器の頂部で溶液を、円板11を用いて回転円板噴霧することにより、または、ノズル(図示せず)を用いてノズル噴霧することにより、該噴霧液1を熱風20と共に下降させる円筒型並流方式またはサイクロン型並流方式;▲3▼図3に示すように、乾燥器の頂部で溶液をノズル10…を用いてノズル噴霧すると共に、熱風20を熱風分散板21を用いて乾燥器内に分散させることにより、該噴霧液1と熱風20とを混合帯5を形成させながら下降させる円筒型並流方式;▲4▼図4に示すように、乾燥器の頂部で溶液をノズル10…を用いてノズル噴霧すると共に、熱風20を熱風整流室22を介して乾燥器内に導入することにより、下降する該噴霧液1と上昇する熱風20とを向流させ、(フッ化アリール)ホウ素化合物2を乾燥器の底部から取り出す円筒型向流方式;▲5▼図5に示すように、乾燥器の中央部で溶液を、ノズル10を用いてノズル噴霧することにより、または、円板(図示せず)を用いて回転円板噴霧することにより、該噴霧液1を熱風20と共に上方向に並流させた後、重力落下によって熱風と向流させ、熱風20を乾燥器の側部若しくは頂部から排気する一方、(フッ化アリール)ホウ素化合物2を乾燥器の底部から取り出す円筒型複合流方式;▲6▼図6に示すように、乾燥器の中央部で溶液をノズル10を用いてノズル噴霧すると共に、熱風20を乾燥器内に内壁の接線方向(横方向)に吹き込むことにより、該噴霧液1を熱風20と共に並流させた後、重力落下によって熱風と向流させ、熱風20を乾燥器の頂部から排気する一方、(フッ化アリール)ホウ素化合物2を乾燥器の底部から取り出すサイクロン型複合流方式;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0044】
真空乾燥法を採用した乾燥装置としては、具体的には、例えば、瞬間真空乾燥装置並びに薄膜蒸留装置(流下膜式分子蒸留装置)が挙げられる。これら瞬間真空乾燥装置並びに薄膜蒸留装置の構成の一例を以下に説明する。尚、両装置の構成は、下記例示の構成にのみ限定されるものではない。
【0045】
瞬間真空乾燥装置は、例えば、図7に示すように、溶液1aを例えば蒸気等の熱媒体によって連続的に加熱する加熱管32等からなる加熱蒸発部;加熱された溶液1aを粉体状の(フッ化アリール)ホウ素化合物2とガス状の有機系溶媒1bとに連続的に分離する分離室34等からなる粉体捕集部;並びに、ガス状の有機系溶媒1bを凝集させて回収する溶媒回収部(図示せず);等で構成されている。
【0046】
上記構成において、溶液1aは、加熱管32内で該管内圧力における有機系溶媒1bの沸点以上の温度に加熱された後、即ち、有機系溶媒1bが過熱蒸気となるように加熱された後、分離室34内に連続的に導入される。分離室34内に導入された溶液1aは、前記条件下で粉体状の(フッ化アリール)ホウ素化合物2と、ガス状の有機系溶媒1bとに連続的に分離される。これにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物が、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離・精製される。
【0047】
薄膜蒸留装置は、例えば、図8に示すように、溶液1aを粉体状の(フッ化アリール)ホウ素化合物2とガス状の有機系溶媒1bとに連続的に薄膜蒸留(分子蒸留)する蒸留部51、および、装置内を前記圧力に維持する真空ポンプ(図示せず)等で構成されている。上記の蒸留部51は、その内壁面(蒸発面)に溶液1aの流下薄膜が形成される縦型の蒸留筒55、所定厚さの流下薄膜が形成されるように溶液1aを内壁面に塗り拡げると共に、該内壁面に付着(析出)した(フッ化アリール)ホウ素化合物2を掻き取るワイパー56、および、ワイパー56が取り付けられた回転軸57を回転させるモータ58等で構成されている。
【0048】
上記構成において、溶液1aは、蒸留部51の蒸留筒55内に連続的に導入され、回転するワイパー56で内壁面に塗り拡げられることにより流下薄膜を形成した後、前記条件下で粉体状の(フッ化アリール)ホウ素化合物2と、ガス状の有機系溶媒1bとに連続的に分離される。これにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物が、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離・精製される。
【0049】
伝導乾燥法を採用した乾燥装置としては、具体的には、例えば、ドラム乾燥器が挙げられる。ドラム乾燥器は、前記圧力下で溶液をドラム表面に0.3mm〜5mm程度の膜状に付着させ、ドラム内側から例えば水蒸気等の熱媒体で加熱することにより、該ドラムが1回転するまでに、有機系溶媒を蒸発させて、(フッ化アリール)ホウ素化合物をフレーク状の固体とする。ドラムは、直径が0.5m〜1.5m程度、長さが0.5m〜2.5m程度とすればよい。また、ドラムの回転数は、10rpm〜20rpm程度とすればよい。そして、ドラム表面に溶液を付着させる方法としては、溶液にドラム表面の一部を浸漬する方法、回転翼等を用いて溶液をドラム表面に跳ねかける方法、溶液をノズル噴霧させる方法等が挙げられる。
【0050】
上記ドラム乾燥器としては、具体的には、例えば、▲1▼図9に示すように、互いに逆方向に回転する2つのドラム70・70の表面に、回転翼71・71を用いて溶液1aを跳ねかけることにより、または、ノズル(図示せず)を用いて溶液1aをノズル噴霧することにより、該溶液1aを付着させる一方、乾燥した(フッ化アリール)ホウ素化合物をナイフ72・72で掻き取る並列ドラム乾燥器;▲2▼図10に示すように、互いに逆方向に回転する2つのドラム70・70の隙間(0.1mm〜0.4mm程度)に、いわゆる上部供給方式を採用して供給口75から溶液1aを供給することにより、該溶液1aをドラム70・70の表面に付着させる一方、乾燥した(フッ化アリール)ホウ素化合物をナイフ72・72で掻き取り、コンベア73・73で搬送する複式ドラム乾燥器;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明にかかる単離方法は、以上のように、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液を、圧力が350Torr以下であり、かつ、その圧力における該有機系溶媒の沸点以上であって、該(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華温度並びに融点よりも低い温度に調節された溶媒除去装置に、該装置内の滞留時間が3時間以内となる条件下で導入し、前記溶液から有機系溶媒を除去する方法である。また、本発明にかかる単離方法は、以上のように、熱風乾燥法、真空乾燥法、および伝導乾燥法からなる群より選ばれる少なくとも一種の乾燥法を採用して有機系溶媒を除去する方法である。
【0052】
より具体的には、熱風乾燥法、真空乾燥法、および伝導乾燥法からなる群より選ばれる少なくとも一種の乾燥法を採用した例えば上記構成の乾燥装置を用いることにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む溶液から有機系溶媒を除去する方法である。尚、本発明にかかる溶媒除去装置、即ち、上記条件下で溶液から有機系溶媒を除去するのに好適な溶媒除去装置は、上記例示の乾燥装置にのみ限定されるものではない。
【0053】
これにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物が、収率良く固体(粉体)として容易に単離される。また、(フッ化アリール)ホウ素化合物にかかる熱履歴が従来の単離方法よりも小さいので、つまり、高温で長時間、加熱しないので、(フッ化アリール)ホウ素化合物の分解が殆ど起こらず、単離される(フッ化アリール)ホウ素化合物が高純度となる。これにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物を、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離・精製することができる。そして、(フッ化アリール)ホウ素化合物がトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素である場合には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離・精製することができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
温度計、磁気撹拌子、窒素ガス導入管、およびジムロート型冷却器を備えた100mlの三ツ口フラスコ(以下、フラスコAと記す)内を数回、窒素ガス置換した。該フラスコAに、(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液としての、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のIsoparE(商品名)溶液40.3043g(濃度3.7重量%)を仕込んだ。19F−NMRを用いて所定の条件下で分析した上記トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の純度は、93.2%(面積比)であった。
【0056】
一方、窒素ガス導入管、リービッヒ型冷却器、および受器を備えた200mlの三ツ口フラスコ(溶媒除去装置、以下、フラスコBと記す)を50℃のオイルバスに浸漬した。リービッヒ型冷却器の出口側は、トラップ並びに真空排気ラインを介して真空ポンプに接続した。また、フラスコA内とフラスコB内とを、中間部にコックを備えた注射針を用いて連通させた。
【0057】
そして、上記のコックを閉じた状態で、フラスコA内の溶液を撹拌しながら50℃に昇温すると共に、フラスコB内を15Torrの真空度に保持した。その後、該コックを開いて、フラスコA内の溶液をフラスコB内に徐々にかつ連続的に導入した。すると、フラスコB内に導入された溶液は瞬間的に気化した。そのときの滞留時間は、平均すると1秒以内であった。つまり、有機系溶媒であるIsoparEが瞬間的に蒸発すると共に、固体状のトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素がフラスコBの内壁に付着した。
【0058】
フラスコB内への溶液の導入を開始してから40分後に、上記のコックを閉じて該導入を終了した。この時点で、フラスコA内の溶液のうち、17.0286gがフラスコB内に導入された。従って、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の導入量は、0.6361gであった。次いで、窒素ガスを用いてフラスコB内を徐々に常圧に戻し、内壁に付着しているトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を取り出した。
【0059】
これにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素0.5699gを単離した。19F−NMRを用いて所定の条件下で分析した該トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の純度は、96.5%(面積比)であった。従って、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の単離収率は88%であった。
【0060】
〔実施例2〕
実施例1のフラスコAと同一構成のフラスコA内を数回、窒素ガス置換した後、該フラスコAに、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のIsoparE溶液約40g(濃度3.1重量%)を仕込んだ。19F−NMRを用いて所定の条件下で分析した上記トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の純度は、85.0%(面積比)であった。一方、実施例1のフラスコBと同一構成のフラスコBを50℃のオイルバスに浸漬した。また、フラスコA内とフラスコB内とを、中間部にコックを備えた注射針を用いて連通させた。
【0061】
そして、上記のコックを閉じた状態で、フラスコA内の溶液を撹拌しながら50℃に昇温すると共に、フラスコB内を9Torrの真空度に保持した。その後、該コックを開いて、フラスコA内の溶液をフラスコB内に徐々にかつ連続的に導入した。すると、フラスコB内に導入された溶液は瞬間的に気化した。そのときの滞留時間は、平均すると1秒以内であった。つまり、IsoparEが瞬間的に蒸発すると共に、固体状のトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素がフラスコBの内壁に付着した。
【0062】
フラスコB内への溶液の導入を開始してから30分後に、上記のコックを閉じて該導入を終了した。この時点で、フラスコA内の溶液のうち、19.2836gがフラスコB内に導入された。従って、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の導入量は、0.5992gであった。次いで、窒素ガスを用いてフラスコB内を徐々に常圧に戻し、内壁に付着しているトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を取り出した。
【0063】
これにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素0.5737gを単離した。19F−NMRを用いて所定の条件下で分析した該トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の純度は、94.1%(面積比)であった。従って、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の単離収率は96%であった。
【0064】
〔実施例3〕
実施例1のフラスコAと同一構成のフラスコA内を数回、窒素ガス置換した後、該フラスコAに、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のIsoparE溶液約40g(濃度3.1重量%)を仕込んだ。19F−NMRを用いて所定の条件下で分析した上記トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の純度は、85.0%(面積比)であった。一方、実施例1のフラスコBと同一構成のフラスコBを100℃のオイルバスに浸漬した。また、フラスコA内とフラスコB内とを、中間部にコックを備えた注射針を用いて連通させた。
【0065】
そして、上記のコックを閉じた状態で、フラスコA内の溶液を撹拌しながら50℃に昇温すると共に、フラスコB内を40Torrの真空度に保持した。その後、該コックを開いて、フラスコA内の溶液をフラスコB内に徐々にかつ連続的に導入した。すると、フラスコB内に導入された溶液は瞬間的に気化した。そのときの滞留時間は、平均すると2秒以内であった。つまり、IsoparEが瞬間的に蒸発すると共に、固体状のトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素がフラスコBの内壁に付着した。
【0066】
フラスコB内への溶液の導入を開始してから30分後に、上記のコックを閉じて該導入を終了した。この時点で、フラスコA内の溶液のうち、17.405gがフラスコB内に導入された。従って、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の導入量は、0.5408gであった。次いで、窒素ガスを用いてフラスコB内を徐々に常圧に戻し、内壁に付着しているトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を取り出した。
【0067】
これにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素0.4681gを単離した。19F−NMRを用いて所定の条件下で分析した該トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の純度は、95.6%(面積比)であった。従って、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の単離収率は87%であった。
【0068】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法は、以上のように、一般式(1)
【0069】
【化3】
【0070】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、nは2または3である)
で表される(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む有機系溶媒の溶液を、圧力が350Torr以下であり、かつ、その圧力における該有機系溶媒の沸点以上であって、該(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華温度並びに融点よりも低い温度に調節された溶媒除去装置に、該装置内の滞留時間が3時間以内となる条件下で導入し、前記溶液から有機系溶媒を除去する方法である。
【0071】
本発明の請求項2記載の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法は、以上のように、熱風乾燥法、真空乾燥法、および伝導乾燥法からなる群より選ばれる少なくとも一種の乾燥法を採用して有機系溶媒を除去する方法である。
【0072】
それゆえ、(フッ化アリール)ホウ素化合物が、収率良く固体(粉体)として容易に単離される。また、(フッ化アリール)ホウ素化合物にかかる熱履歴が従来の単離方法よりも小さいので、つまり、高温で長時間、加熱しないので、(フッ化アリール)ホウ素化合物の分解が殆ど起こらず、単離される(フッ化アリール)ホウ素化合物が高純度となる。これにより、(フッ化アリール)ホウ素化合物を、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離・精製することができるという効果を奏する。
【0073】
本発明の請求項3記載の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法は、以上のように、(フッ化アリール)ホウ素化合物がトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素である方法である。
【0074】
これにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を、収率良くかつ高純度の固体(粉体)として単離・精製することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる単離方法に好適に用いられる乾燥装置(溶媒除去装置)としての噴霧乾燥器の一例を示す概略の断面図である。
【図2】噴霧乾燥器の他の例を示す概略の断面図である。
【図3】噴霧乾燥器のさらに他の例を示す概略の断面図である。
【図4】噴霧乾燥器のさらに他の例を示す概略の断面図である。
【図5】噴霧乾燥器のさらに他の例を示す概略の断面図である。
【図6】噴霧乾燥器のさらに他の例を示す概略の断面図である。
【図7】本発明にかかる単離方法に好適に用いられる乾燥装置(溶媒除去装置)としての瞬間真空乾燥装置の一例を示す概略の断面図である。
【図8】本発明にかかる単離方法に好適に用いられる乾燥装置(溶媒除去装置)としての薄膜蒸留装置(流下膜式分子蒸留装置)の一例を示す概略の断面図である。
【図9】本発明にかかる単離方法に好適に用いられる乾燥装置(溶媒除去装置)としてのドラム乾燥器の一例を示す概略の正面図である。
【図10】ドラム乾燥器の他の例を示す概略の正面図である。
【符号の説明】
1 噴霧液
1a 溶液
2 (フッ化アリール)ホウ素化合物
10 ノズル
11 円板
20 熱風
34 分離室
51 蒸留部
70 ドラム
Claims (3)
- 一般式(1)
で表される(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む炭化水素系溶媒の溶液を、圧力が100Torr以下であり、かつ、その圧力における該炭化水素系溶媒の沸点以上であって、該(フッ化アリール)ホウ素化合物の昇華温度並びに融点よりも低い温度に調節された溶媒除去装置に、該装置内の滞留時間が1時間以内となる条件下で連続的に導入し、前記溶液から炭化水素系溶媒を除去することを特徴とする(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法。 - 熱風乾燥法、真空乾燥法、および伝導乾燥法からなる群より選ばれる少なくとも一種の乾燥法を採用して上記炭化水素系溶媒を除去することを特徴とする請求項1記載の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法。
- (フッ化アリール)ホウ素化合物がトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素であることを特徴とする請求項1または2記載の(フッ化アリール)ホウ素化合物の単離方法。
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