JP4335665B2 - シリンダ冷却水温度制御装置付き内燃機関 - Google Patents
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Description
かかる技術においては、シリンダライナ外周に形成された水室を上部水室と下部水室とに区画して、上部水室及び下部水室に冷却水入口をそれぞれ設け、冷却水入口管路を通ってきた冷却水を前記上部水室及び下部水室の冷却水入口に分流してそれぞれ導入し、該上部水室及び下部水室を通ってシリンダライナを冷却した冷却水を該上部水室及び下部水室にそれぞれ設けた冷却水出口から導出して冷却水出口管路に合流させている。
そして、かかる従来技術においては、前記シリンダライナの低温部を冷却する下部水室の冷却水入口に絞り機構を設けて該下部水室への冷却水量を、シリンダライナの高温部を冷却する上部水室への冷却水量よりも小さくして、シリンダライナの低温部の過冷却を防止するとともに、シリンダライナの高温部を十分に冷却するようにしている。
しかしながら、特許文献1の技術にあっては、シリンダライナの高温部を冷却する上部水室側とシリンダライナの低温部を冷却する下部水室側との冷却水量の割合を下部水室の冷却水入口に設けた絞り機構によって一義的に変えているにとどまり、シリンダライナの軸線方向における水温の分布を該シリンダライナの壁温度分布を考慮した適正な温度分布とする手段はなされていないため、シリンダライナの軸線方向において過冷却部分と冷却不足部分とが混在し易く、冷却損失の増大が抑制困難となる。
さらに、特許文献1の技術にあっては、エンジン負荷等のエンジンの運転条件に無関係に、上部水室側と下部水室側との冷却水量の割合を前記絞り機構によって一義的に変えているにとどまるため、エンジンの運転条件毎の適正な水温分布を得ることは不可能となり、殊にエンジンの部分負荷運転時における冷却損失の増大が著しくなる。
エンジン回転数、エンジン負荷を含む前記エンジン運転条件と該エンジン運転条件に適合する前記各冷却水入口の目標水温との関係が予め設定されたマップ状設定手段にて構成するのがよい。
一方、壁温度センサによって前記複数の冷却水入口に対応するシリンダライナの壁温度を検出して前記コントローラの水温調整量算出手段に入力する。該水温調整量算出手段においては、前記複数の冷却水入口に対応する前記壁温度センサからの壁温度検出値と前記目標壁温度算出手段で算出された目標壁温度との壁温度偏差を算出し、該壁温度偏差を水温偏差に換算して、前記各冷却水入口における水温偏差を算出する。
さらに、該水温調整量算出手段においては、前記各冷却水入口における水温偏差に基づき該水温偏差を0(ゼロ)にするつまり前記各冷却水入口の実水温(実際の冷却水入口温度)が前記目標水温に一致するような水温調整量を算出して、前記各冷却水入口への冷却水路毎に設けられた熱交換器等の水温調整手段に出力する。該水温調整手段においては、水温調整量算出手段で算出された水温調整量に基づき、前記各冷却水入口の水温を前記目標水温に調整する。
尚、本発明において、複数の冷却水入口に該冷却水温度を検出する冷却水温度センサを設け、前記コントローラは、前記冷却水温度センサからの前記複数の冷却水入口における冷却水温度検出値と前記目標水温算出手段で算出された前記複数の冷却水入口に対応する目標水温との水温偏差を算出するように構成することもできる。
このように構成すれば、シリンダ軸線方向における水温差が小さいので制御精度が低くなるが、壁温度のセンサが不要となり、また目標水温を目標壁温度に換算する必要がなくなり、冷却水温度制御が簡単化される。
このように構成すれば、冷却水入口における最高水温に従いポンプ制御装置により水ポンプの吐出圧力を飽和圧力以上に保持することにより、冷却水の沸騰を回避できる。
このように構成すれば、各冷却水入口に接続される冷却水通路に夫々設けられた熱交換装置の熱交換量を調節することにより、各冷却水入口の水温を高精度で目標水温に調整できる。
また、エンジン出口の冷却水温度が低い起動後や低負荷運転時には、熱交換装置の熱媒流体として排気ガスを用いることにより、水温調整を迅速に行うことが可能となる。
このように構成すれば、エンジンの負荷変動が大きくなって(dL/dtが増大して)シリンダライナの熱負荷が増大するに従い、シリンダ冷却水の温度を低くすることにより、シリンダライナの冷却度を増大させ、負荷変動時におけるシリンダライナの熱応力の増大を抑制することができる。
これにより、エンジンの全運転域において冷却損失を最小限に低減できて、正味熱効率を向上することができる。
1、2及び3は各シリンダの前記水室105のシリンダ軸線方向に沿って複数(この
例では3個)設けられた冷却水入口(A)、冷却水入口(B)、及び冷却水入口(C)である。7は高温の冷却水が通流する高温冷却水管、8は中温の冷却水が通流する中温冷却水管、9は低温の冷却水が通流する低温冷却水管、700は冷却水主管である。
該冷却水主管700には、水道水(水道水に限らず、エンジン100を循環する清水でもよい)を水圧ポンプ31によって後述するような圧力に加圧された冷却水が通流するようになっており、該冷却水主管700から前記高温冷却水管7、中温冷却水管8及び低温冷却水管9の冷却水温度の異なる3系統の冷却水管が分岐されている。
そして、該高温冷却水管7は各シリンダの冷却水入口(A)1、中温冷却水管8は各シリンダの冷却水入口(B)2、中温冷却水管8は各シリンダの冷却水入口(C)3に、それぞれ分岐して接続されている。
前記高温熱交換器21は、前記冷却水主管700からの入口冷却水(水道水)と前記シリンダヘッド106出口から冷却水出口管30を通って導入された熱媒流体としての高温冷却水とを熱交換して、該入口冷却水の前記冷却水入口(A)1における温度を所定の高温に保持せしめ、前記中温熱交換器22は前記冷却水主管700からの入口冷却水(水道水)と前記高温熱交換器21にて熱交換後の前記高温冷却水とを熱交換して、前記冷却水入口(B)2における温度を所定の中温に保持せしめ、さらに前記低温熱交換器23は前記冷却水主管700からの入口冷却水(水道水)と前記中温熱交換器22にて熱交換後の前記高温冷却水とを熱交換して、前記冷却水入口(C)3における温度を所定の低温に保持せしめるようになっている。
さらには、前記熱媒流体として、前記高温冷却水と排気ガスとをエンジン負荷(エンジン回転数でもよい)によって切換使用し、前記高温冷却水の温度が高くなる一定以上のエンジン負荷運転時には該高温冷却水を使用する一方、エンジン出口の冷却水温度が低い(つまり前記高温冷却水の温度が低い)起動後や低負荷運転時には、高温の排気ガスを用いることにより、前記冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3における水温調整を迅速に行うことが可能となる。
41はエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出器、42はエンジン負荷を検出する負荷検出器であり、該エンジン回転数検出器41及び負荷検出器42の検出信号は前記コントローラ10に入力するようになっている。
31aは前記コントローラ10からの制御操作信号を受けて前記水圧ポンプ31の吐出圧力を制御するポンプコントローラである。
前記エンジン回転数検出器41からのエンジン回転数の検出信号41及び負荷検出器42からのエンジン負荷の検出信号は前記コントローラ10の目標水温算出部12に入力される。また前記負荷検出器42からのエンジン負荷の検出信号は該コントローラ10の負荷変化率算出部18にも入力される。
11は目標水温設定部である。該目標水温設定部11には、図3に示すように、エンジン負荷L(エンジン回転数Nでもよい)に対応する前記冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3の目標水温つまり冷却水入口温度の目標値Tc0が設定されている。かかる目標水温Tc0は、エンジン負荷(あるいはエンジン回転数)と該エンジン負荷(あるいはエンジン回転数)に適合する目標水温Tc0との関係を、予め算出してマップ状に設定している。
そして前記目標水温算出部12においては、前記負荷検出器42からのエンジン負荷Lの検出信号(エンジン回転数検出器41からのエンジン回転数Nの検出信号でもよい)に相当する前記冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3の目標水温Tc0を図3のマップから選出して目標壁温度算出部13に入力する。
これにより、前記水室105(図1参照)のシリンダ軸線方向に設けられた複数の冷却水入口つまり前記冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3における目標水温Tc0の分布を、エンジン負荷L(あるいはエンジン回転数N)に最適な水温分布とすることができる。
このように構成することにより、エンジン負荷Lの検出値に基づき、シリンダライナ101の壁温度が高くなる高負荷運転時には、前記冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3の目標水温Tc0を低くすることにより、水室105内におけるシリンダ冷却水の温度を低くしてシリンダライナ101の冷却度を増大させ、該シリンダライナ101の熱応力の増大を抑制することができる。
一方、前記シリンダライナ101の壁温度が低くなる低負荷運転時には、前記冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3の目標水温Tc0を高くすることにより前記シリンダ冷却水の温度を高くしてシリンダライナの冷却度を小さくし、該シリンダライナ101の温度を一定温度以上の高温に保持することにより、該シリンダライナの過冷却による冷却熱損失の増大、及びピストンリングの摺動抵抗の増大による摩擦損失の増大を回避できる。
即ち、前記負荷検出器42からのエンジン負荷Lの検出値は、前記コントローラ10の負荷変化率算出部18に入力される。該負荷変化率算出部18においては該エンジン負荷Lの検出値に基づきエンジン負荷Lの時間変化率dL/dtを算出する。
一方、前記負荷変化率算出部18には、図4に示されるように、エンジン負荷Lの時間変化率dL/dtと冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3の目標水温Tc0との関係が設定されている。図4に明らかなように、負荷変化率算出部18には、エンジン負荷Lの時間変化率dL/dtの増大に伴ない目標水温Tc0が低下するように設定されている。
該目標水温算出部12においては、前記エンジン負荷Lの時間変化率dL/dtの算出値に基づき、図4から前記冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3における目標水温Tc0を算出する。
このように構成すれば、エンジンの負荷変動が大きくなって(dL/dtが増大して)シリンダライナ101の熱負荷が増大するに従い、シリンダ冷却水の温度を低くすることにより、該シリンダライナ101の冷却度を増大させることにより、負荷変動時におけるシリンダライナ101の熱応力の増大を抑制することができる。
該壁温度偏差算出部14には、前記壁温度センサ(A)4からの前記冷却水入口(A)1に対応するシリンダライナの壁温度の検出値、壁温度センサ(B)5からの前記冷却水入口(B)2に対応するシリンダライナの壁温度の検出値、及び壁温度センサ(C)6からの前記冷却水入口(C)3に対応するシリンダライナの壁温度の検出値が入力されている。
該熱交換器水温調整弁開度算出部19においては、前記冷却水入口(A)1に対応する水温偏差、前記冷却水入口(B)2に対応する水温偏差、及び前記冷却水入口(C)3に対応する水温偏差ΔTcの算出値に基づき、前記各水温偏差ΔTcを0(ゼロ)にするつまり前記冷却水入口(A)1の実水温(実際の冷却水入口温度)TcA、冷却水入口(B)2の実水温TcB、及び冷却水入口(C)3の実水温TcCが、前記各冷却水入口(A)1の目標水温Tc0A、冷却水入口(B2)の目標水温Tc0B、及び冷却水入口(C)3の目標水温Tc0Cに一致するような水温調整量ΔTwA、ΔTwB、及びΔTwCを算出する。
即ち、例えば前記高温熱交換器21用の水温調整弁(A)24の開度を大きくすると、該高温熱交換器21をバイパスしてバイパス管27を流れる冷却水量が増加し、該高温熱交換器21において熱媒流体としての高温冷却水と熱交換する冷却水量が減少することにより、該高温熱交換器21における熱交換量つまり入口冷却水(水道水)の温度上昇量が小さくなり、冷却水入口(A)1における実水温(実際の冷却水入口温度)TcAが低下する。逆に水温調整弁(A)24の開度を小さくすると、高温熱交換器21における熱交換量つまり入口冷却水(水道水)の温度上昇量が大きくなり、冷却水入口(A)1における実水温TcAが上昇する。
以上の動作によって、前記冷却水入口(A)1、冷却水入口(B)2、及び冷却水入口(C)3における実水温(実際の冷却水入口温度)TcA、TcB、及びTcCは、前記目標水温TcA、Tc0B、及びTc0Cに常時保持される。
そして、前記必要水圧算出部16においては、前記冷却水入口(A)1の目標水温Tc0に対応する飽和圧力つまり該目標水温Tc0において冷却水が沸騰を起こさないための必要水圧P0を算出してポンプコントローラ31aに入力する。該ポンプコントローラ31aにおいては、前記水圧ポンプ31の吐出圧力を前記必要水圧P0に調整して該水圧ポンプ31を運転する。
このように構成すれば、冷却水入口(A)1における最高水温に従い、ポンプコントローラ31aにより水ポンプの吐出圧力を飽和圧力以上に保持することにより、常時冷却水の沸騰を回避できる。
その他の動作は、図2に示される第1実施例と同様である。
2 冷却水入口(B)
3 冷却水入口(C)
4 壁温度センサ(A)
5 壁温度センサ(B)
6 壁温度センサ(C)
7 高温冷却水管
8 中温冷却水管
9 低温冷却水管
10 コントローラ
21 高温熱交換器
22 中温熱交換器
23 低温熱交換器
24 水温調整弁(A)
25 水温調整弁(B)
26 水温調整弁(C)
27 高温側バイパス管
28 中温側バイパス管
29 低温側バイパス管
30 冷却水出口管
31 水圧ポンプ
31a ポンプコントローラ
41 エンジン回転数検出器
42 負荷検出器
43 排気通路
100 エンジン(ディーゼル機関)
101 シリンダライナ
103 ピストン
105 水室
106 シリンダヘッド
Claims (5)
- シリンダ冷却水をシリンダライナ外周に形成された水室のシリンダ軸線方向に沿って設けられた複数の冷却水入口から該水室内に導入するように構成されたシリンダ冷却水温度制御装置付き内燃機関において、
エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、該エンジン負荷検出手段から入力されるエンジン負荷の検出値に基づき該エンジン負荷の増大に従い前記複数の冷却水入口におけるシリンダ冷却水の目標水温を低下せしめるような水温調整量を算出するコントローラと、前記コントローラで算出された水温調整量に基づき前記各冷却水入口の水温を調整する水温調整手段とを有し、
さらに、冷却水主管に設置された水圧ポンプと、該水圧ポンプによって加圧された冷却水を分岐して前記複数の冷却水入口へ供給する冷却水温度の異なる複数系統の冷却水管と、該冷却水管それぞれに熱媒流体と熱交換する前記水温調整手段である熱交換器を設置し、燃焼室に最も近い位置に設置される高温冷却水入口の目標水温において冷却水が沸騰を起こさないための必要圧力に調整して前記水圧ポンプを制御するポンプ制御装置とを備えたことを特徴とするシリンダ冷却水温度制御装置付き内燃機関。 - 前記複数の冷却水入口に対応するシリンダライナの壁温度を検出する壁温度センサを設け、前記コントローラは、前記目標水温に対応する目標壁温度を算出する目標壁温度算出手段を備えるとともに、前記壁温度センサからの前記複数の冷却水入口に対応する壁温度検出値と前記目標壁温度算出手段で算出された前記複数の冷却水入口に対応する目標壁温度との壁温度偏差及び該壁温度偏差に基づく水温偏差を算出するように構成してなることを特徴とする請求項1記載のシリンダ冷却水温度制御装置付き内燃機関。
- 前記複数の冷却水入口に該冷却水温度を検出する冷却水温度センサを設け、前記コントローラは、前記冷却水温度センサからの前記複数の冷却水入口における冷却水温度検出値と前記複数の冷却水入口に対応する目標水温との水温偏差を算出するように構成されてなることを特徴とする請求項1記載のシリンダ冷却水温度制御装置付き内燃機関。
- 前記コントローラは、前記エンジン負荷検出手段からのエンジン負荷(L)の検出値に基づき該エンジン負荷の時間変化率(dL/dt)を算出し、該エンジン負荷の時間変化率(dL/dt)の増大に従い前記複数の冷却水入口におけるシリンダ冷却水の目標水温を低下せしめるような水温調整量を算出するように構成されてなることを特徴とする請求項1記載のシリンダ冷却水温度制御装置付き内燃機関。
- 前記熱媒流体が冷却水出口管を通って導入される高温冷却水またはエンジン排気通路から導入される排気ガスであり、前記高温冷却水または排気ガスをエンジン負荷もしくはエンジン回転数によって切換えて用いることを特徴とする請求項1記載のシリンダ冷却水温度制御装置付き内燃機関。
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