つぎに、この発明の制御装置の実施例1を図面に基づいて説明する。この実施例1は、請求項1および請求項2の発明に対応するものであり、この実施例1は、複数の動力伝達系統が並列に配置されている構成のパワートレーンの一例である。図2は、この発明の一実施例であるFF(フロントエンジンフロントドライブ;エンジン前置き前輪駆動)形式の車両(ハイブリッド車)Veパワートレーンを示すスケルトン図、図3は車両Veの制御系統を示すブロック図である。図2において、1はエンジンであり、このエンジン1は、燃料噴射量制御装置、点火時期制御装置、電子スロットルバルブなどを有する公知のものである。エンジン1のクランクシャフト2は軸受1Aにより回転可能に保持されており、クランクシャフト2にはフライホイール3が形成されている。
また、エンジン1の外壁には、中空のトランスアクスルケース4が取り付けられている。トランスアクスルケース4の内部には、インプットシャフト5、第1のモータ・ジェネレータ6、動力合成機構7、変速機構8、第2のモータ・ジェネレータ9が設けられている。クランクシャフト2と第1のモータ・ジェネレータ6と第2のモータ・ジェネレータ9とが同軸上に配置されている。クランクシャフト2の軸線方向で、エンジン1と第2のモータ・ジェネレータ9との間に、第1のモータ・ジェネレータ6が配置されいる。また、インプットシャフト5におけるクランクシャフト2側の端部には、クラッチハブ10がスプライン嵌合されている。
そして、フライホイール3とインプットシャフト5との動力伝達状態を制御するトルクリミッタ11が設けられている。また、フライホイール3とインプットシャフト5との間におけるトルク変動を抑制・吸収するダンパ機構12が設けられている。前記第1のモータ・ジェネレータ6は、インプットシャフト5の外側に配置されている。
図3に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータ6との間で電力の授受をおこなう蓄電装置70が設けられており、第1のモータ・ジェネレータ6と蓄電装置70との間の回路にインバータ71が配置されている。一方、第2のモータ・ジェネレータ9との間で電力の授受をおこなう蓄電装置72が設けられており、第2のモータ・ジェネレータ9と蓄電装置72との間の回路にインバータ73が配置されている。
前記トランスアクスルケース4の内部には隔壁77,78が形成されており、隔壁77と隔壁78との間に第1のモータ・ジェネレータ6が配置されている。第1のモータ・ジェネレータ6は、トランスアクスルケース4側に固定されたステータ13と、回転自在なロータ14とを有している。このロータ14と一体回転する中空シャフト17が設けられており、隔壁77,78に取り付けられた軸受16により、中空シャフト17が回転可能に保持されている。この中空シャフト17内にインプットシャフト5が配置されている。中空シャフト17とインプットシャフト5との間には軸受80が介在されており、中空シャフト17とインプットシャフト5とが相対回転可能な構成となっている。
また、前記動力合成機構7は、インプットシャフト5の軸線方向で、第1のモータ・ジェネレータ6と第2のモータ・ジェネレータ9との間に設けられている。この動力合成機構7は、いわゆるシングルピニオン形式の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、動力合成機構7は、サンギヤ18と、サンギヤ18と同軸上に配置されたリングギヤ19と、サンギヤ18およびリングギヤ19に噛合するピニオンギヤ20を保持したキャリヤ21とを有している。そして、サンギヤ18と中空シャフト17とが一体回転するように連結され、キャリヤ21とインプットシャフト5とが一体回転するように連結されている。なお、リングギヤ19は、インプットシャフト5と同軸上に配置された環状のコネクティングドラム22の内周側に形成されており、このコネクティングドラム22の外周側にはカウンタドライブギヤ23が形成されている。また、コネクティングドラム22は、トランスアクスルケース4内に取り付けられた軸受33により回転可能に保持されている。
一方、インプットシャフト5の外周には、中空シャフト24が取り付けられており、インプットシャフト5と中空シャフト24との間には軸受81が介在されており、インプットシャフト5と中空シャフト24とが相対回転可能な構成になっている。この中空シャフト24の外周側に前記第2のモータ・ジェネレータ9が配置されている。より具体的には、トランスアクスルケース4のリヤカバー74と、隔壁79との間の空間に、第2のモータ・ジェネレータ9が配置されている。第2のモータ・ジェネレータ9は、トランスアクスルケース4に固定されたステータ25と、回転自在なロータ26とを有している。また、ロータ26と中空シャフト24とが一体回転可能に連結されている。さらに、リヤカバー74および隔壁79には、軸受75が取り付けられており、軸受75により、中空シャフト24が回転可能に保持されている。
前記変速機構8は、インプットシャフト5の軸線方向において、動力合成機構7と第2のモータ・ジェネレータ9との間に配置されており、この変速機構8は、いわゆるシングルピニオン形式の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、変速機構8は、サンギヤ29と、サンギヤ29と同心状に配置され、かつ、コネクティングドラム22の内周に形成されたリングギヤ30と、サンギヤ29およびリングギヤ30に噛合するピニオンギヤ31を保持したキャリヤ32とを有している。このキャリヤ32はトランスアクスルケース4に固定されている。
一方、前記トランスアクスルケース4の内部には、インプットシャフト5と平行なカウンタシャフト34が設けられている。このカウンタシャフト34は、軸受79により回転可能に保持されている。カウンタシャフト34には、カウンタドリブンギヤ35およびファイナルドライブピニオンギヤ36が形成されている。そして、カウンタドライブギヤ23とカウンタドリブンギヤ35とが噛合されている。さらに、トランスアクスルケース4の内部にはデファレンシャル37が設けられており、デファレンシャル37は、デフケース38の外周側に形成されたリングギヤ39と、デフケース38に対してピニオンシャフト40を介して取り付けられた複数のピニオンギヤ41と、複数のピニオンギヤ41に噛合されたサイドギヤ42と、サイドギヤ42に連結された2本のフロントドライブシャフト43とを有している。各フロントドライブシャフト43には車輪(前輪)44が連結されている。さらに、トランスアクスルケース4内には、デフケース38を回転可能に保持する軸受82が設けられている。
一方、前記図3に示すように、車両Veの全体を制御する電子制御装置76が設けられており、この電子制御装置76に対して、エンジン回転数センサの信号、ブレーキスイッチの信号、車速センサの信号、アクセル開度センサの信号、シフトポジションセンサの信号、第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9の回転数を検出するレゾルバの信号、トランスアクスルケース4内を潤滑および冷却する潤滑油の温度を検知する油温センサの信号、第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9の温度を検知するセンサの信号などが入力される。これに対して、電子制御装置76から、エンジン出力を制御する信号、第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9の出力を制御する信号などが出力される。
上記のように構成されたハイブリッド車においては、車速およびアクセル開度などの条件に基づいて、車両における要求駆動力が算出され、その算出結果に基づいて、目標エンジン出力、すなわち、目標エンジン回転数および目標エンジントルクが算出される。また、実エンジン出力を目標エンジン出力に近づけるにあたり、最適燃費線に基づいて目標エンジン回転数が選択され、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、第1のモータ・ジェネレータ6の出力が制御される。すなわち、エンジントルクがインプットシャフト5を経由してキャリヤ21に伝達されるとともに、第1のモータ・ジェネレータ6が反力要素として機能し、第1のモータ・ジェネレータ6の回転数を制御することで、エンジン回転数とリングギヤ19の回転数との比を、無段階に制御することが可能である。
ここで、サンギヤ18とリングギヤ19とキャリヤ21との差動作用により、動力合成機構7が無段変速機として機能し、実エンジン回転数が目標エンジン回転数に近づけられる。上記の制御と並行して、電子スロットルバルブまたは燃料噴射量制御装置または点火時期制御装置の少なくとも1つの制御により、実エンジントルクを目標エンジントルクに近づける制御が実行される。上記の制御において、動力合成機構7の変速比およびリングギヤ19の回転数に応じて、第1のモータ・ジェネレータ6は力行または回生をおこなう。第1のモータ・ジェネレータ6の回生により生じた電力は、蓄電装置70に充電される。
さらに、要求駆動力に応じた目標モータ・ジェネレータ出力、すなわち、目標回転数および目標トルクが求められる。そして、第2のモータ・ジェネレータ9の実出力を、目標モータ・ジェネレータ出力に近づける制御が実行される。この第2のモータ・ジェネレータ9のトルクをリングギヤ30に伝達する場合は、キャリヤ32が反力要素となり、第2のモータ・ジェネレータ9の回転方向と、リングギヤ30の回転方向とが逆になる。サンギヤ29からリングギヤ30に伝達されるトルクは、変速機構8の変速比に応じて増幅または低減される。この実施例において、図2に示された車両Veは、駆動力源としてエンジン1および第2のモータ・ジェネレータ9が搭載されたハイブリッド車であり、エンジン1または第2のモータ・ジェネレータ9の少なくとも一方のトルクが、コネクティングドラム22に伝達される。コネクティングドラム22に伝達されたトルクは、カウンタドライブギヤ23およびカウンタシャフト34を経由してデファレンシャル37に伝達されるとともに、デファレンシャル37のトルクが車輪44に伝達されて、駆動力が発生する。
(制御例1)
つぎに、図2に示されたパワートレーンの運転状態の制御例、特に、車両Veを構成するシステムの耐久性に基づいて、パワートレーンの運転状態を制御するルーチンを、図1のフローチャートに基づいて説明する。ここで、パワートレーンの運転状態には、エンジン出力、第1のモータ・ジェネレータ6の出力、第2のモータ・ジェネレータ9の出力、動力合成機構7の変速比が含まれる。まず、電子制御装置76に入力される信号および電子制御装置76に記憶されているデータに基づいて、車両を構成するシステムのうち、動力伝達により負荷が生じるシステムに関して、各システムにおける負荷を累積する処理が実行され、その負荷の累積結果に基づいて、システムの疲労状態もしくは耐久性が求められる(ステップS1)。
ここでは、動力伝達により負荷が生じるシステムの一例として、各種の軸受を採り上げる。例えば、動力合成機構7および変速機構8および第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9およびカウンタシャフト34およびデフケース38に対応して設けられた各種の軸受においては、回転体の回転速度、回転体で伝達されるトルクなどに応じて負荷が生じる。特に、ギヤとしてはす歯歯車が用いられており、各ギヤ同士の噛み合い反力、または、噛み合い反力に応じた分力で、スラスト荷重やラジアル荷重が生じ、その荷重が各種の軸受における負荷となる。さらに、エンジン1としてレシプロエンジンが用いられていると、ピストンの往復運動がクランクシャフト2の回転運動に変換されて、軸受1Aにラジアル荷重が加わる。この軸受1Aにおける負荷も、クランクシャフト2のトルクに応じたものとなる。
そして、図2に示すパワートレーンの構成においては、軸受1Aの負荷は、エンジン1の運転状態に影響され、軸受16,80の負荷は、エンジン1の運転状態および第1のモータ・ジェネレータ6の運転状態に影響され、軸受75,81の負荷は、第2のモータ・ジェネレータ9の運転状態に影響され、軸受33,79,82の負荷は、エンジン1および第2のモータ・ジェネレータ9の運転状態に影響される構成となっている。基本的には、軸受で保持されている回転体のトルクが高トルクであるほど、軸受に作用する荷重および負荷が高まる。
このように、ステップS1では、支持するべき回転体で伝達されるトルク、およびその回転体の回転数などに基づいて、各軸受における負荷が求められ、かつ、その負荷を累積する処理が実行される。また、ステップS1において、システムの耐久性を求める場合に用いるマップの一例を、図4に基づいて説明する。この図4においては、縦軸に負荷が示され、横軸に時間が示されている。この図4のマップでは、現時点までに累積された負荷が、実累積負荷A1であることを示す。
上記のステップS1についで、実累積負荷が保証耐久性に対応する基準累積負荷未満であり、かつ、その負荷の差が所定値以上であるか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2の判断は、例えば、図4のマップを用いて判断することが可能である。図4に示すように、基準累積負荷B1が設定されており、実累積負荷A1が基準累積負荷B1未満であり、その負荷の差が所定値以上であれば、ステップS2で肯定的に判断される。そして、実累積負荷A1が、動作点変更基準に到達したか否かが判断される(ステップS3)。動作点変更基準とは、パワートレーンの動作点を変更する基準となる負荷であり、図4のマップにおいては、動作点開始基準C1が設定されている。この動作点開始基準C1は、実累積負荷A1よりも低負荷に設定されている。そして、実累積負荷A1が動作点開始基準C1未満である場合は、ステップS3で否定的に判断されて、図1に示す制御ルーチンを終了する。
前記ステップS3の判断時点で、実累積負荷A1が動作点開始基準C1以上である場合は、そのステップS3で肯定的に判断されて、各種の軸受における負荷を軽減して、その軸受の耐久性の低下を抑制することを目的として、パワートレーンの運転状態が制御され(ステップS4)、図1に示す制御ルーチンを終了する。このステップS4で実行される具体的な内容は後述する。これに対して、ステップS2の判断時点で、実累積負荷A1が累積負荷基準B1未満であり、かつ、その負荷の差が所定値よりも小さい場合、または、実累積負荷A1が累積負荷基準B1以上である場合は、ステップS2で否定的に判断されて、エンジン出力および第2のモータ・ジェネレータ9の出力が制限され(ステップS5)、図1の制御ルーチンを終了する。このステップS5の処理の具体的内容は後述する。
前記ステップS4の処理の具体例を、図5のフローチャートに基づいて説明する。前述したように、エンジン1および第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9の運転状態、言い換えれば出力と、各軸受における負荷との対応関係は明確である。そこで、実累積負荷A1が動作点開始基準C1以上となっている軸受について、その軸受の負荷を軽減して,その軸受の耐久性を制御、具体的には、耐久性の低下を抑制する処理が、図5のフローチャートで実行される。この図5のフローチャートにおいては、便宜上、エンジン1の出力と、第2のモータ・ジェネレータ9の出力との対応関係について説明する。
まず、エンジン出力を第2のモータ・ジェネレータ9の出力で除して、出力比率Pを求める(ステップS11)。このステップS11についで、第2のモータ・ジェネレータ9の出力により耐久性が影響を受ける軸受の耐久性G2の方が、エンジン出力により耐久性が影響を受ける軸受の耐久性G1よりも高いか否かが判断される(ステップS12)。このステップS12で肯定的に判断された場合は、出力比率Pが小さくなるように、エンジン1の出力と、第2のモータ・ジェネレータ9の出力との対応関係を制御し(ステップS13)、図5に示す制御ルーチンを終了する。なお、ステップS13の処理の実行前と実行後とで、車両Veの駆動力が同じとなるように、エンジン1の出力と、第2のモータ・ジェネレータ9の出力との対応関係が制御される。
これに対して、ステップS12で否定的に判断された場合は、出力比率Pが大きくなるように、エンジン1の出力と、第2のモータ・ジェネレータ9の出力との対応関係を制御し(ステップS14)、図5に示す制御ルーチンを終了する。なお、ステップS14の処理の実行前と実行後とで、車両Veの駆動力が同じとなるように、エンジン1の出力と、第2のモータ・ジェネレータ9の出力との対応関係が制御される。さらに、ステップS13,14においては、予め記憶されているマップや定数を用いることが可能である。
ところで、前述したステップS5の具体的な内容を説明すると、エンジン1の出力および第2のモータ・ジェネレータ9の出力を制限する場合は、要求駆動力と補正係数とが乗算され、その算出結果に基づいて、エンジン1の出力および第2のモータ・ジェネレータ9の出力が制御される。軸受の実耐久性が、基準耐久性以上である場合は、補正係数は1に設定され、軸受の実耐久性が、基準耐久性よりも低い場合は、補正係数は1未満に設定される。より具体的には、耐久性が低下するほど補正係数も小さくなる。
以上のように、図1の制御例によれば、各軸受の耐久性に応じてパワートレーンの運転状態を制御することが可能であり、耐久性が低下している軸受について、その耐久性が更に低下することを抑制できる。
(制御例2)
つぎに、パワートレーンの運転状態を制御する他のルーチンを、図6に基づいて説明する。まず、電子制御装置76に入力される信号および電子制御装置76に記憶されているデータに基づいて、各種の軸受に関して、単位時間内で所定値以上の負荷が発生する頻度(回数)に基づいて、各軸受の疲労状態もしくは耐久性が求められる(ステップS21)。
このステップS21において、各軸受の耐久性を求める場合に用いるマップの一例を、図7に基づいて説明する。この図7においては、縦軸に負荷の発生頻度が示され、横軸に時間が示されている。上記のステップS21についで、負荷の実発生頻度が、保証耐久性に対応する基準発生頻度未満であり、かつ、その頻度同士の差が所定値以上であるか否かが判断される(ステップS22)。このステップS22の判断は、例えば、図7のマップを用いて判断することが可能である。図7に示すように、時間の経過にともない増加する特性の基準発生頻度αが設定されており、実発生頻度D1が、基準発生頻度α未満であり、その頻度同士の差が所定値以上であれば、ステップS22で肯定的に判断される。なお、基準発生頻度αは、負荷のカウンタdcを所定時間dtで除して算出したものである。
そして、実発生頻度D1が、動作点変更基準に到達したか否かが判断される(ステップS23)。ここで、動作点変更基準とは、パワートレーンの動作点を変更する基準となる頻度の増加程度(具体的には、増加率、増加割合、増加勾配)である。そして、実発生頻度D1の勾配が領域E1のように緩やかであれば、ステップS23で否定的に判断されて、図1に示す制御ルーチンを終了する。
これに対して、ステップS23の判断時点で、実発生頻度D1の勾配が領域F1のように急激である場合は、そのステップS23で肯定に判断されて、各種の軸受における負荷および耐久性を制御することを目的として、パワートレーンの運転状態が制御され(ステップS24)、図1に示す制御ルーチンを終了する。このステップS24の処理は、前述したステップS4の処理と同じである。これに対して、ステップS22の判断時点で、実発生頻度D1が基準発生頻度α未満であり、かつ、その頻度の差が所定値よりも小さい場合、または、実発生頻度D1が基準発生頻度α以上である場合は、ステップS22で否定的に判断されて、エンジン出力および第2のモータ・ジェネレータ9の出力が制限され(ステップS25)、図6の制御ルーチンを終了する。このステップS25の処理は、前述したステップS5の処理と同じである。
以上のように、図6の制御例によれば、各軸受の耐久性に応じてパワートレーンの運転状態を制御することが可能であり、耐久性が低下している軸受について、その耐久性が更に低下することを抑制できる。
(制御例3)
つぎに、パワートレーンの運転状態を制御する他のルーチンを、図8に基づいて説明する。この制御例3は、制御例1と制御例2とを組み合わせたものである。まず、ステップS31の処理が実行される。このステップS31の処理は、ステップS1の処理およびステップS21の処理と同じである。このステップS31についで、保証基準値と実測値との差が所定値以上であるか否かが判断される(ステップS32)。このステップS32の判断は、ステップS2およびステップS22の判断と同じである。
このステップS32で肯定的に判断された場合はパワートレーンの動作点変更条件が成立したか否かが判断される(ステップS33)。このステップS33の判断は、ステップS23の判断と同じである。ステップS33で肯定的に判断された場合は、ステップS34の処理を実行し、図8の制御ルーチンを終了する。ステップS34の処理は、ステップS4の処理と同じである。
これに対して、ステップS33で否定的に判断された場合は、動作点変更条件が成立したか否かが判断される(ステップS35)。このステップS35の判断は、ステップS3の判断と同じである。ステップS35で肯定的に判断された場合は、ステップS36の処理を実行し、図8の制御ルーチンを終了する。ステップS36の処理は、ステップS4の処理と同じである。また、ステップS35で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。なお、ステップS34の処理を実行した後、ステップS35に進む制御ルーチンを採用することも可能である。さらに、ステップS32で否定的に判断された場合は、ステップS37の処理を実行し、図8の制御ルーチンを終了する。ステップS37の処理は、ステップS5の処理と同じである。この図8の制御例においても、図1の制御例および図6の制御例と同じ効果を得られる。
ここで、図1に示す機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS1が、この発明の耐久性判断手段に相当し、ステップS4が、この発明の比較手段および運転状態制御手段に相当する。さらに、図5に示されたステップS12が、この発明の比較手段に相当し、ステップS13,S14が、この発明の運転状態制御手段に相当する。
また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、エンジン1が、この発明の第1駆動力源に相当し、モータ・ジェネレータ9が、この発明の第2駆動力源に相当し、インプットシャフト5およびキャリヤ21およびサンギヤ18および中空シャフト17および軸受1A,16,80などにより、この発明における第1の動力伝達系統が構成されている。さらに、中空シャフト24およびサンギヤ29およびキャリヤ32およびリングギヤ30および軸受75,81により、この発明の第2の動力伝達系統が構成されている。また、動力合成機構7が、この発明の遊星歯車装置に相当し、キャリヤ21がこの発明の入力要素に相当し、サンギヤ18がこの発明の反力要素に相当し、リングギヤ19が、この発明の出力要素に相当する。さらに、各種の軸受の耐久性が、この発明における動力伝達系統の耐久性に相当する。
つぎに、参考例1を、図9に基づいて説明する。この図9は、複数の動力伝達系統が直列に配置されている構成のパワートレーンの一例を示すスケルトン図である。図9において、100はエンジンであり、このエンジン100もエンジン1と同様にして出力を電子制御することが可能である。このエンジン100のクランクシャフト102は軸受157により回転可能に保持されている。またエンジン100の外壁には、トランスアクスルケース103が取り付けられている。このトランスアクスルケース103の内部には、ベルト式無段変速機およびデファレンシャルが組み込まれている。
前記トランスアクスルケース103の内部には、トルクコンバータ107および前後進切り換え機構124およびベルト式無段変速機109およびデファレンシャル110が設けられている。まず、トルクコンバータ107の構成について説明する。トランスアクスルケース103の内部には、エンジン100のクランクシャフト102と同軸上にインプットシャフト111が設けられており、インプットシャフト111にはタービンランナ113が取り付けられている。
一方、クランクシャフト102にはドライブプレート114を介してフロントカバー115が連結されており、フロントカバー115にはポンプインペラ116が接続されている。このタービンランナ113とポンプインペラ116とは対向して配置され、タービンランナ113およびポンプインペラ116の内側にはステータ117が設けられている。ステータ117は、一方向クラッチ117Aを介して中空シャフト120に接続されている。この中空シャフト120の端部はトランスアクスルケース103に固定されており、中空シャフト120内にインプットシャフト111が配置されている。中空シャフト120とインプットシャフト111との間には軸受122が介在されており、中空シャフト120とインプットシャフト111とは相対回転可能となっている。また、インプットシャフト111におけるフロントカバー115側の端部には、ダンパ機構118を介してロックアップクラッチ119が設けられている。
前記前後進切り換え機構124は、インプットシャフト111とベルト式無段変速機109との間の動力伝達経路に設けられている。前後進切り換え機構124はダブルピニオン形式の遊星歯車機構を有している。この前後進切り換え機構124は、インプットシャフト111と一体回転するサンギヤ125と、このサンギヤ125の外周側に、サンギヤ125と同心状に配置されたリングギヤ126と、サンギヤ125に噛み合わされたピニオンギヤ127と、このピニオンギヤ127およびリングギヤ126に噛み合わされたピニオンギヤ128と、ピニオンギヤ127,128を自転可能に保持し、かつ、ピニオンギヤ127,128を、サンギヤ125の周囲で一体的に公転可能な状態で保持したキャリヤ129とを有している。そして、このキャリヤ129と、ベルト式無段変速機109のプライマリシャフト(後述する)とが連結されている。また、キャリヤ129とインプットシャフト111との間の動力伝達経路を接続・遮断するフォワードクラッチCRが設けられている。さらに、トランスアクスルケース103側には、リングギヤ126の回転・固定を制御するリバースブレーキBRが設けられている。
前記ベルト式無段変速機109は、インプットシャフト111と同軸上に配置されたプライマリシャフト130と、プライマリシャフト130と相互に平行に配置されたセカンダリシャフト131とを有している。プライマリシャフト130における前後進切り換え機構124側の端部には凹部133が形成されており、凹部133により、インプットシャフト111の端部が保持されている。なお、インプットシャフト111とプライマリシャフト130とは相対回転可能である。また、プライマリシャフト130にはプライマリプーリ136が設けられており、セカンダリシャフト131にはセカンダリプーリ137が設けられている。プライマリプーリ136は、プライマリシャフト130と一体回転する固定シーブ138と、プライマリシャフト130の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ139とを有している。また、この可動シーブ139をプライマリシャフト130の軸線方向に動作させる油圧アクチュエータ141が設けられている。そして、トランスアクスルケース103には、プライマリシャフト130を回転可能に保持する軸受132が取り付けられている。
一方、セカンダリプーリ137は、セカンダリシャフト131と一体回転する固定シーブ142と、セカンダリシャフト131の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ143とを有している。また、この可動シーブ143をセカンダリシャフト131の軸線方向に動作させる油圧アクチュエータ145が設けられている。さらに、セカンダリシャフト131にはカウンタドライブギヤ147が形成されているとともに、セカンダリシャフト131を回転可能に保持する軸受134が設けられている。
前記ベルト式無段変速機109とデファレンシャル110との間の動力伝達経路には、セカンダリシャフト131と相互に平行なインターミディエイトシャフト150が設けられている。インターミディエイトシャフト150は軸受151により支持されている。インターミディエイトシャフト150には、カウンタドリブンギヤ153およびファイナルドライブギヤ154が形成されている。そして、カウンタドライブギヤ147とカウンタドリブンギヤ153とが噛み合わされている。
一方、前記デファレンシャル110はデフケース155を有している。このデフケース155は、軸受156により回転可能に保持されているとともに、デフケース155にはリングギヤ158が設けられている。そして、ファイナルドライブギヤ154とリングギヤ158とが噛み合わされている。また、デフケース155の内部にはピニオンシャフト159が取り付けられており、ピニオンシャフト159には2つのピニオンギヤ160が取り付けられている。このピニオンギヤ160には2つのサイドギヤ161が噛み合わされている。2つのサイドギヤ161には別個にフロントドライブシャフト162が接続され、各フロントドライブシャフト162には、車輪(前輪)163が接続されている。
さらに、図9に示す車両Veの制御系統を、図10のブロック図に基づいて説明する。エンジン100およびベルト式無段変速機109を制御する電子制御装置200(図示せず)が設けられている。この電子制御装置200には、エンジン回転数センサの信号、ブレーキスイッチの信号、車速センサの信号、アクセル開度センサの信号、シフトポジションセンサの信号、プライマリシャフト130の回転数を検知するセンサの信号、セカンダリシャフト131の回転数を検知するセンサの信号、トランスアクスルケース103内の潤滑油の温度を検知するセンサの信号などが入力される。これに対して、電子制御装置200から、エンジン100およびベルト式無段変速機109および前後進切り換え機構124を制御する信号が出力される。
つぎに、図9に示す車両Veの作用を説明する。まず、前後進切り換え機構124の制御について説明する。シフトポジションとして前進ポジションが選択された場合は、フォワードクラッチCRが係合され、かつ、リバースブレーキBRが解放されて、インプットシャフト111とプライマリシャフト130とが一体回転するように連結される。この状態においては、エンジントルクがインプットシャフト111を経由してプライマリシャフト130に伝達される。プライマリシャフト130に伝達されたトルクは、ベルト146を経由してセカンダリシャフト131に伝達される。
セカンダリシャフト131に伝達されたトルクは、カウンタドライブギヤ147およびカウンタドリブンギヤ153を経由してインターミディエイトシャフト150に伝達される。インターミディエイトシャフト150に伝達されたトルクは、ファイナルドライブギヤ154およびリングギヤ158を経由してデフケース155に伝達される。デフケース155が回転すると、そのトルクがピニオンギヤ160およびサイドギヤ161を経由してドライブシャフト162に伝達され、ついでそのトルクが車輪163に伝達されて駆動力が発生する。
これに対して、後進ポジションが選択された場合はフォワードクラッチCRが解放され、かつ、リバースブレーキBRが係合されて、リングギヤ126が固定される。すると、インプットシャフト111の回転にともなってピニオンギヤ127,128が共に自転しつつ公転し、キャリヤ129がインプットシャフト111の回転方向とは逆の方向に回転する。その結果、プライマリシャフト130、セカンダリシャフト131、インターミディエイトシャフト150などの回転部材が、前進ポジションの場合とは逆方向に回転して車両Veを後退させる向きの駆動力が生じる。
また、ベルト式無段変速機109は、車速およびアクセル開度などの条件、および電子制御装置に記憶されているデータに基づいて制御される。具体的には、油圧アクチュエータ141の油圧室および油圧アクチュエータ145の油圧室の油圧を制御することにより、ベルト式無段変速機109の変速比および伝達トルクが制御される。このようにして、ベルト式無段変速機構109の変速比を無段階に(連続的に)制御することにより、実エンジン回転数を、前述の最適燃費線に応じた目標エンジン回転数に近づけることが可能である。また、実施例1と同様に、実エンジントルクを、目標エンジントルクに近づける制御がおこなわれる。
この参考例1においては、前後進切り換え機構124を構成する各種のギヤ、カウンタドライブギヤ147、カウンタドリブンギヤ153、ファイナルドライブギヤ154、カウンタドリブンギヤ153、ファイナルドライブギヤ154、リングギヤ158などがはす歯歯車により構成されており、実施例1と同様の原理により、インプットシャフト111およびプライマリシャフト130およびセカンダリシャフト131およびインターミディエイトシャフト150およびデフケース155に、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重が加わり、その荷重が軸受122,132,134,151,156に伝達されて、各軸受における負荷となる。また、実施例1と同様の原理により、軸受157の負荷が生じる。そこで、この参考例1においても、軸受における耐久性を制御、具体的には、耐久性の低下を抑制することを目的として、パワートレーンの運転状態を制御することが可能である。
(制御例4)
この制御例4においては、図1の制御ルーチンを採用可能である。すなわち、ステップS1において、実累積負荷に基づいて軸受132,122の耐久性が算出され、ステップS2において、保証耐久性に対応する基準累積負荷と実累積負荷とが比較される。ステップS2の判断内容は、制御例1と同じである。ステップS2で肯定的に判断された場合は、ベルト式無段変速機109の動作点、つまり、変速比を変更する条件が成立したか否かが判断される(ステップS3)。このステップS3の判断内容は、制御例1と同じである。そして、ステップS3で肯定的に判断された場合は、ステップS4に進み、軸受132,122の耐久性が低下することを抑制するように、ベルト式無段変速機109の制御を実行し、図1の制御ルーチンを終了する。
このステップS4においては、ベルト式無段変速機109の変速比を大きくする制御、すなわちダウンシフトが実行されるとともに、エンジン100からプライマリシャフト130に伝達されるトルクを低下させる制御が実行される。ここで、ベルト式無段変速機109におけるダウンシフトを実行すると、トルク増幅がおこなわれる。そこで、ダウンシフトの実行前と実行後とで、駆動力が変化することを防止するため、プライマリシャフト130からセカンダリシャフト131に伝達される動力が変化しないように、エンジン100のトルクダウン制御が実行される。なお、ステップS3で否定的に判断された場合は、図1の制御ルーチンを終了し、ステップS2で否定的に判断された場合は、ステップS5を経由して図1の制御ルーチンを終了する。このステップS5の処理は制御例1と同じである。このように、制御例4においても、制御例1と同様の原理により、軸受132,122の耐久性の低下を抑制することが可能である。
(制御例5)
この制御例5においては、図6の制御ルーチンを採用可能である。すなわち、ステップS21において、負荷の実発生頻度に基づいて軸受132,122の耐久性が算出され、ステップS22において、保証耐久性に対応する基準発生頻度と実発生頻度とが比較される。ステップS22の判断内容は、制御例2と同じである。ステップS22で肯定的に判断された場合は、ベルト式無段変速機109の動作点、つまり、変速比を変更する条件が成立したか否かが判断される(ステップS23)。このステップS23の判断内容は、制御例2と同じである。そして、ステップS23で肯定的に判断された場合は、ステップS24に進み、軸受132,122の耐久性が低下することを抑制するように、ベルト式無段変速機109の制御を実行し、図1の制御ルーチンを終了する。このステップS24の処理は、制御例4におけるステップS4の処理と同じである。
なお、ステップS23で否定的に判断された場合は、図6の制御ルーチンを終了し、ステップS22で否定的に判断された場合は、ステップS25を経由して図6の制御ルーチンを終了する。このステップS25の処理は制御例2と同じである。このように、制御例5においても、制御例2および制御例3と同様の原理により、軸受132,122の耐久性の低下を抑制することが可能である。
1,100…エンジン、 1A,16,33,75,79,80,81,82,157,122,132,134,151,156…軸受、 2,102…クランクシャフト、 5,111…インプットシャフト、 6…第1のモータ・ジェネレータ、 7…動力合成機構、 8…変速機構、 9…第2のモータ・ジェネレータ、 17,24…中空シャフト、 18,29…サンギヤ、 19,30,39…リングギヤ、 21,32…キャリヤ、 22…コネクティングドラム、 34…カウンタシャフト、 23…カウンタドライブギヤ、 35…カウンタドリブンギヤ、 36…ファイナルドライブピニオンギヤ、 44,163…車輪、 70,72,215…蓄電装置、 71,73,214…インバータ、 109…ベルト式無段変速機、 124…前後進切り換え機構、 130…プライマリシャフト、 131…セカンダリシャフト、 136…プライマリプーリ、 137…セカンダリプーリ、 147…カウンタドライブギヤ、 150…インターミディエイトシャフト、 153…カウンタドリブンギヤ、 154…ファイナルドライブギヤ、 210…モータ・ジェネレータ、 Ve…車両。