JP4320914B2 - 非水電解液及びそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池のサイクル特性や電気容量、保存特性などの電池特性に優れた新規な非水電解液、及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウム二次電池は小型電子機器などの駆動用電源として広く使用されている。リチウム二次電池は、主に正極、非水電解液および負極から構成されており、特に、LiCoO2などのリチウム複合酸化物を正極とし、炭素材料又はリチウム金属を負極としたリチウム二次電池が好適に使用されている。そして、そのリチウム二次電池用の電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が好適に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性について、さらに優れた特性を有する二次電池が求められている。
負極として例えば天然黒鉛や人造黒鉛などの高結晶化した炭素材料を用いたリチウム二次電池は、電解液が負極で分解して不可逆容量が増大したり、場合によっては炭素材料の剥離が起こることがある。この不可逆容量の増大や炭素材料の剥離は、電解液中の溶媒が充電時に分解することにより起こるものであり、炭素材料と電解液との界面における溶媒の電気化学的還元に起因するものである。中でも、融点が低く誘電率の高いPCは、低温においても高い電気伝導性を有するが、黒鉛負極を用いる場合にはPCの分解が起こってリチウム二次電池用には使用できないという問題点があった。また、ECも充放電を繰り返す間に一部分解が起こり、電池性能の低下が生じる。このため、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性は必ずしも満足なものではないのが現状である。
【0004】
本発明は、前記のようなリチウム二次電池用電解液に関する課題を解決し、電池のサイクル特性に優れ、さらに電気容量や充電状態での保存特性などの電池特性にも優れた非水電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、該非水電解液中に下記一般式(I)
【0006】
【化3】
(式中、Xは、側鎖として少なくとも1つの炭素数1〜4のアルキル基を有し、主鎖が炭素数2〜6であるアルキレン基を示す。また、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるジスルホン酸エステル誘導体が含有されていることを特徴とする非水電解液に関する。
【0007】
また、本発明は、正極、負極および非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、該非水電解液中に下記一般式(I)
【0008】
【化4】
(式中、Xは、側鎖として少なくとも1つの炭素数1〜4のアルキル基を有し、主鎖が炭素数2〜6であるアルキレン基を示す。また、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるジスルホン酸エステル誘導体が含有されていることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【0009】
電解液中に含有される前記一般式(I)で表されるジスルホン酸エステル誘導体は、充電の際に、負極である炭素材料表面で一部還元され、不働態皮膜を形成する役割を有する。このように、天然黒鉛や人造黒鉛などの活性で高結晶化した炭素材料を不働態皮膜で被覆することにより、電解液の分解が抑制され、電池の可逆性を損なうことなく正常な充放電が繰り返されるものと考えられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
非水溶媒に電解質が溶解されている電解液に含有される前記一般式(I)で表されるジスルホン酸エステル誘導体において、Xは、メチルエチレン基、エチルエチレン基、プロピルエチレン基、ブチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1,3−トリメチルトリメチレン基、1−プロピル−2−エチルトリメチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、1−メチルペンタメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基、1−メチルヘキサメチレン基、2−メチルヘキサメチレン基、3−メチルヘキサメチレン基などのような主鎖のメチレン鎖が2〜6で、かつ、側鎖として少なくとも1つの炭素数1〜4のアルキル基を有することが好ましい。この時、分枝した炭素数1〜4のアルキル基は直鎖状またはイソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基のような分枝状であっても良い。また、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基はイソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基のような分枝アルキル基でもよい。
【0011】
前記一般式(I)で表されるジスルホン酸エステル誘導体の具体例としては、例えば、プロピレングリコールジメタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、、R=メチル基〕、プロピレングリコールジエタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、、R=エチル基〕、プロピレングリコールジプロパンスルホネート〔X=メチルエチレン基、、R=n−プロピル基〕、プロピレングリコールジブタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、、R=n−プチル基〕、1,2−ブタンジオールジメタンスルホネート〔X=エチルエチレン基、R=メチル基〕、1,3−ブタンジオールジメタンスルホネート〔X=1−メチルトリメチレン基、R=メチル基〕、2−メチル−2,4−ペンタンジオールジメタンスルホネート〔X=1,1,3−トリメチルトリメチレン基、R=メチル基〕、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタンスルホネート〔X=3−メチルペンタメチレン基、R=メチル基〕、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールジメタンスルホネート〔X=1−プロピル−2−エチルトリメチレン基、R=メチル基〕、などが挙げられる。
なお、前記一般式(I)における2つのRは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、合成の容易さから同一のRを有するジスルホン酸エステル誘導体が好適に使用される。
【0012】
前記一般式(I)で表されるジスルホン酸エステル誘導体の含有量は、過度に多いと、電解液の伝導度などが変わり、電池性能が低下することがあり、また、過度に少ないと、十分な皮膜が形成されず期待した電池性能が得られないので、電解液の重量に対して0.01〜50重量%、特に0.1〜20重量%の範囲が好ましい。
【0013】
本発明で使用される非水溶媒としては、高誘電率溶媒と低粘度溶媒とからなるものが好ましい。
高誘電率溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状カーボネート類が好適に挙げられる。これらの高誘電率溶媒は、一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0014】
低粘度溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどのエーテル類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、プロピオン酸メチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。これらの低粘度溶媒は一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。
高誘電率溶媒と低粘度溶媒とはそれぞれ任意に選択され組み合わせて使用される。なお、前記の高誘電率溶媒および低粘度溶媒は、容量比(高誘電率溶媒:低粘度溶媒)で通常1:9〜4:1、好ましくは1:4〜7:3の割合で使用される。
【0015】
本発明で使用される電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF4(iso−C3F7)2、LiPF5(iso−C3F7)などが挙げられる。これらの電解質は、一種類で使用してもよく、二種類以上組み合わせて使用してもよい。これら電解質は、前記の非水溶媒に通常0.1〜3M、好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
【0016】
本発明の電解液は、例えば、前記の高誘電率溶媒や低粘度溶媒を混合し、これに前記の電解質を溶解し、前記式(I)で表されるジスルホン酸エステル誘導体を溶解することにより得られる。
【0017】
本発明の電解液は、リチウム二次電池の構成部材として使用される。二次電池を構成する電解液以外の構成部材については特に限定されず、従来使用されている種々の構成部材を使用できる。
【0018】
例えば、正極材料(正極活物質)としてはコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種類の金属とリチウムとの複合金属酸化物が使用される。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2などが挙げられる。
【0019】
正極は、前記の正極材料をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して正極合剤とした後、この正極材料を集電体としてのアルミニウムやステンレス製の箔やラス板に塗布して、乾燥、加圧成型後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製される。
【0020】
負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、およびリチウムを吸蔵、放出可能な黒鉛型結晶構造を有する炭素材料〔熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類(人造黒鉛、天然黒鉛など)、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維、〕や複合スズ酸化物などの物質が使用される。特に、格子面(002)の面間隔(d002)が0.335〜0.340nm(ナノメータ)である黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが好ましい。なお、炭素材料のような粉末材料はエチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して負極合剤として使用される。
【0021】
リチウム二次電池の構造は特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、さらに、正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池などが一例として挙げられる。なお、セパレータとしては公知のポリオレフィンの微多孔膜、織布、不織布などが使用される。
【0022】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1
〔電解液の調製〕
EC:PC:DEC(容量比)=20:10:70の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して電解液を調製した後、さらにジスルホン酸エステル誘導体(添加剤)として、プロピレングリコールジメタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、R=メチル基〕を電解液に対して1.0重量%となるように加えた。
【0023】
〔リチウム二次電池の作製および電池特性の測定〕
LiCoO2(正極活物質)を80重量%、アセチレンブラック(導電剤)を10重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にしてアルミ箔上に塗布した。その後、これを乾燥し、加圧成型して正極を調製した。天然黒鉛(負極活物質)を90重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%、の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にして銅箔上に塗布した。その後、これを乾燥し、加圧成型、加熱処理して負極を調製した。そして、ポリプロピレン微多孔性フィルムのセパレータを用い、上記の電解液を注入させてコイン電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を作製した。
このコイン電池を用いて、室温(20℃)下、0.8mAの定電流定電圧で、終止電圧4.2Vまで5時間充電し、次に0.8mAの定電流下、終止電圧2.7Vまで放電し、この充放電を繰り返した。初期充放電容量は、1M LiPF6+EC:PC:DEC(容量比)=2:1:7を電解液(添加剤無し)として用いた場合(比較例1)とほぼ同等であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は92.2%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0024】
実施例2
添加剤として、プロピレングリコールジブタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、R=n−ブチル基〕を電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は91.6%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0025】
実施例3
添加剤として、1,2−ブタンジオールジメタンスルホネート〔X=エチルエチレン基、R=メチル基〕を電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は91.4%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0026】
実施例4
添加剤として、1,3−ブタンジオールジメタンスルホネート〔X=1−メチルトリメチレン基、R=メチル基〕を電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は91.7%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0027】
実施例5
添加剤として、プロピレングリコールジメタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、R=メチル基〕を電解液に対して0.2重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は90.2%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0028】
実施例6
添加剤として、プロピレングリコールジメタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、R=メチル基〕を電解液に対して10重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は89.4%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
主鎖のエチレン鎖にメチル基のような側鎖を導入したジスルホン酸エステル誘導体を添加することにより、添加剤無しの場合(比較例1)よりもセパレータや電極材料に対する非水電解液の濡れ性が向上した。このため、電池製造時の注液工程の効率化をはかることができる。
【0029】
比較例1
EC:PC:DEC(容量比)=2:1:7の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解した。このときジスルホン酸エステル誘導体(添加剤)は全く添加しなかった。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定した。初期放電容量に対し、50サイクル後の放電容量維持率は82.4%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0030】
実施例7
負極活物質として、天然黒鉛に代えて人造黒鉛を使用し、添加剤としてプロピレングリコールジメタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、R=メチル基〕を電解液に対して2.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は92.3%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0031】
実施例8
正極活物質として、LiCoO2に代えてLiMn2O4を使用し、添加剤として、プロピレングリコールジメタンスルホネート〔X=メチルエチレン基、R=メチル基〕を電解液に対して3.0重量%使用したほかは実施例7と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は91.9%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
なお、本発明は記載の実施例に限定されず、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせが可能である。特に、上記実施例の溶媒の組み合わせは限定されるものではない。更には、上記実施例はコイン電池に関するものであるが、本発明は円筒形、角柱形の電池にも適用される。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、電池のサイクル特性、電気容量や充電保存特性などの電池特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
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