JP4316088B2 - アレイ導波路型回折格子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば波長多重光通信において光合分波器として用いられるアレイ導波路型回折格子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光通信においては、その伝送容量を飛躍的に増加させる方法として、光波長多重通信の研究開発が盛んに行なわれ、実用化が進みつつある。光波長多重通信は、例えば互いに異なる波長を有する複数の光を多重して伝送させるものであり、このような光波長多重通信のシステムにおいては、伝送される多重光から、光受信側で波長ごとの光を取り出すために、予め定められた波長の光のみを透過する光透過デバイス等を、システム内に設けることが不可欠である。
【0003】
光透過デバイスの一例として、図9に示すような平板光導波路回路(PLC;Planar Lightwave Circuit)のアレイ導波路型回折格子(AWG;Arrayed Waveguide Grating)がある。アレイ導波路型回折格子は、シリコンなどの基板1上に、同図に示すような導波路構成を石英系ガラス等のコアにより形成したものである。
【0004】
アレイ導波路型回折格子の導波路構成は、1本以上の並設された光入力導波路2の出射側に、第1のスラブ導波路3が接続され、第1のスラブ導波路3の出射側には複数の並設されたアレイ導波路4が接続され、アレイ導波路4の出射側には第2のスラブ導波路5が接続され、第2のスラブ導波路5の出射側には複数の並設された光出力導波路6が接続されて形成されている。
【0005】
前記アレイ導波路4は、第1のスラブ導波路3から導出された光を伝搬するものであり、互いに異なる長さに形成され、隣り合うアレイ導波路4の長さは互いにΔL異なっている。なお、光入力導波路2や光出力導波路6は、例えばアレイ導波路型回折格子によって分波あるいは合波される互いに異なる波長の信号光の数に対応させて設けられるものであり、アレイ導波路4は、通常、例えば100本といったように多数設けられるが、同図においては、図の簡略化のために、これらの光入力導波路2、アレイ導波路4、光出力導波路6の各々の本数を簡略的に示してある。
【0006】
光入力導波路2には、例えば送信側の光ファイバ(図示せず)が接続されて、波長多重光が導入されるようになっており、光入力導波路2を通って第1のスラブ導波路3に導入された光は、その回折効果によって広がって各アレイ導波路4に入射し、アレイ導波路4を伝搬する。
【0007】
このアレイ導波路4を伝搬した光は、第2のスラブ導波路5に達し、さらに、光出力導波路6に集光されて出力されるが、全てのアレイ導波路4の長さが互いに異なることから、アレイ導波路4を伝搬した後に個々の光の位相にずれが生じ、このずれ量に応じて集束光の波面が傾き、この傾き角度により集光する位置が決まる。
【0008】
そのため、波長の異なった光の集光位置は互いに異なることになり、その位置に光出力導波路6を形成することによって、波長の異なった光(分波光)を各波長ごとに異なる光出力導波路6から出力できる。
【0009】
すなわち、アレイ導波路型回折格子は、光入力導波路2から入力される互いに異なる複数の波長をもった多重光から1つ以上の波長の光を分波して各光出力導波路6から出力する光分波機能を有しており、分波される光の中心波長は、アレイ導波路4の長さの差(ΔL)及びアレイ導波路4の実効屈折率ncに比例する。
【0010】
アレイ導波路型回折格子は、上記のような特性を有するために、アレイ導波路型回折格子を波長多重伝送用の波長多重分波器として用いることができ、例えば図9に示すように、1本の光入力導波路2から波長λ1,λ2,λ3,・・・λn(nは2以上の整数)の波長多重光を入力させると、これらの各波長の光は、第1のスラブ導波路3で広げられ、アレイ導波路4に到達し、第2のスラブ導波路5を通って、前記の如く、波長によって異なる位置に集光され、互いに異なる光出力導波路6に入射し、それぞれの光出力導波路6を通って、光出力導波路6の出射端から出力される。
【0011】
そして、各光出力導波路6の出射端に光出力用の光ファイバ(図示せず)を接続することにより、この光ファイバを介して、前記各波長の光が取り出される。なお、各光出力導波路6や前述の光入力導波路2に光ファイバを接続するときには、例えば光ファイバを1次元アレイ状に配列固定した光ファイバアレイを用意し、この光ファイバアレイを光出力導波路6や光入力導波路2の接続端面側に固定して光ファイバと光出力導波路6及び光入力導波路2を接続する。
【0012】
上記アレイ導波路型回折格子において、各光出力導波路6から出力される光の光透過特性(アレイ導波路型回折格子の透過光強度の波長特性)は、各光透過中心波長(例えばλ1,λ2,λ3,・・・λn)を中心とし、それぞれの対応する光透過中心波長から波長がずれるにしたがって光透過率が小さくなる光透過特性を示す。
【0013】
また、アレイ導波路型回折格子は、光の相反性(可逆性)の原理を利用しているため、光分波器としての機能と共に、光合波器としての機能も有している。すなわち、図9とは逆に、互いに異なる複数の波長の光をそれぞれの波長ごとにそれぞれの光出力導波路6から入射させると、これらの光は、上記と逆の伝搬経路を通り、アレイ導波路4によって合波され、1本の光入力導波路2から出射される。
【0014】
このようなアレイ導波路型回折格子においては、前記の如く、回折格子の波長分解能が回折格子を構成するアレイ導波路4の長さの差(ΔL)に比例するために、ΔLを大きく設計することにより、従来の回折格子では実現できなかった波長間隔の狭い波長多重光の光合分波が可能となり、高密度の光波長多重通信の実現に必要とされている、複数の信号光の光合分波機能、すなわち、波長間隔が1nm以下の複数の光信号を分波または合波する機能を果たすことができる。
【0015】
上記のようなアレイ導波路型回折格子を作製するときには、例えば、まず、火炎加水分解堆積法を用いて、シリコン基板上にアンダークラッド膜、コア膜を順に形成し、その後、アレイ導波路回折格子の導波路構成が描かれたフォトマスクを介してフォトリソグラフィー、反応性イオンエッチング法を用い、コア膜にアレイ導波路回折格子パターンを転写する。その後、再度、火炎加水分解堆積法を用いてオーバークラッド膜を形成することにより、アレイ導波路回折格子が作製される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のアレイ導波路型回折格子は、元来、石英系ガラス材料を主とするために、この石英系ガラス材料の温度依存性に起因してアレイ導波路型回折格子の前記光透過中心波長が温度に依存してシフトする。この温度依存性は、1つの光出力導波路6からそれぞれ出力される光の透過中心波長をλ、前記アレイ導波路4を形成するコアの等価屈折率をnc、基板(例えばシリコン基板)1の熱膨張係数をαs、アレイ導波路型回折格子の温度変化量をTとしたときに、(数1)により示されるものである。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで、従来の一般的なアレイ導波路型回折格子において、(数1)から前記光透過中心波長の温度依存性を求めてみる。従来の一般的なアレイ導波路型回折格子においては、dnc/dT=1×10−5(℃−1)、αs=3.0×10−6(℃−1)、nc=1.451(波長1.55μmにおける値)であるから、これらの値を(数1)に代入する。
【0019】
また、波長λは、各光出力導波路6についてそれぞれ異なるが、各波長λの温度依存性は等しい。そして、現在用いられているアレイ導波路型回折格子は、波長1550nmを中心とする波長帯の波長多重光を分波したり合波したりするために用いられることが多いので、ここでは、λ=1550nmを(数1)に代入する。そうすると、従来の一般的なアレイ導波路型回折格子の前記光透過中心波長の温度依存性は、(数2)に示す値となる。
【0020】
【数2】
【0021】
なお、dλ/dTの単位は、nm/℃である。例えばアレイ導波路型回折格子の使用環境温度が20℃変化したとすると、各光出力導波路6から出力される光透過中心波長は0.30nmシフトするものであり、前記使用環境温度変化が70℃以上になると、前記光透過中心波長のシフト量が1nm以上になってしまう。
【0022】
アレイ導波路型回折格子は1nm以下の非常に狭い間隔で波長を分波または合波できることが特徴であり、この特長を生かして波長多重光通信用に適用されるものであるため、上記のように、使用環境温度変化によって光透過中心波長が上記シフト量だけ変化することは致命的である。
【0023】
そこで、従来から温度により光透過中心波長が変化しないように、図9に示したように、サーミスタ31の検出温度に基づき、アレイ導波路型回折格子の温度を一定に保つペルチェ素子30等の温度調節手段を設けたアレイ導波路型回折格子が提案されているが、上記温度調節手段を用いてアレイ導波路型回折格子の温度を一定に保つためには、ペルチェ素子等に例えば1Wといった通電を常時行なわなければならず、コストがかかり、しかも、ペルチェ素子やその制御機構を形成する部品の組立ずれ等に起因して、光透過中心波長シフトを正確に抑制できないことがあった。
【0024】
そこで、上記課題を解決するために、本発明者は、図7に示すような構成のアレイ導波路型回折格子を提案した(特願平11−270201号、特願2000−021533に提案されているものであり、未だ公開になっていない)。
【0025】
同図に示すアレイ導波路回折格子は、基板1上に石英系ガラスによって形成された導波路形成領域10を形成している。導波路形成領域10には従来例と同様に、1本の光入力導波路2、第1のスラブ導波路3、複数のアレイ導波路4、第2のスラブ導波路5、複数の光出力導波路6が設けられており、前記アレイ導波路4、光出力導波路6は、それぞれ予め定められた導波路間隔を介して並設されているが、同図に示すアレイ導波路回折格子においては、第1のスラブ導波路3が、第1のスラブ導波路3を通る光の経路と交わる切断面8で切断分離されている。
【0026】
なお、同図では、切断面8は、図のX方向と成しており、切断面8によって、前記導波路形成領域10は、導波路形成領域10aと導波路形成領域10bとに切断分離されている。
【0027】
図7に示すアレイ導波路回折格子の特徴的なことは、前記の如く、第1のスラブ導波路3が第1のスラブ導波路3を通る光の経路と交わる切断面8で分離スラブ導波路3a,3bに切断分離されており、この分離された分離スラブ導波路3a側を前記切断面8に沿ってスライド移動させることにより前記光透過中心波長をシフトさせるようにしたことであり、図7のアレイ導波路型回折格子には、上記スライド移動を行なうスライド移動機構が設けられている。
【0028】
このスライド移動機構は、アレイ導波路回折格子の各光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向に、分離スラブ導波路3a側を切断面8に沿ってスライド移動させる機構であり、同図に示す構成においては、高熱膨張係数部材7、ベース9、係止部材14を設けて上記スライド移動機構を構成している。
【0029】
分離スラブ導波路3bとアレイ導波路4と第2のスラブ導波路5と光出力導波路6が形成されている側の導波路形成領域10bおよびその下の基板1は、石英ガラスやInvarロットなどの低熱膨張率の材料により形成されたベース9に固定されている。
【0030】
また、分離スラブ導波路3aと光入力導波路2が形成されている側の導波路形成領域10aおよびその下の基板1は、前記ベース9に対してスライド移動自在に設けられている。導波路形成領域10aの一端側は接着剤13を介して高熱膨張係数部材7に固定されており、他端側は係止部材14に係止されている。
【0031】
高熱膨張係数部材7は、導波路形成領域10aの上面に沿って設けられた上板部7aと導波路形成領域10aの側面に沿って設けられた側板部(図示されていない)とを有するL字形状の部材であり、側板部が固定部11でベース9に固定されている。高熱膨張係数部材7は、例えば熱膨張係数が2.31×10−5(1/K)のAl(アルミニウム)により形成されている。
【0032】
前記係止部材14は、導波路形成領域10aの上面に沿って設けられた上板部14aと導波路形成領域10aの側面に沿って設けられた側板部(図示されていない)とを有するL字形状の部材であり、側板部が固定部12でベース9に固定されている。係止部材14の上板部の内壁と導波路形成領域10aの上面とは当接しており、導波路形成領域10aのスライド移動時に、導波路形成領域10aがベース9に対して上方側(XY平面に垂直なZ軸方向)に変位しないようになっている。また、側板部の内壁と導波路形成領域10aの側面とは間隔を介しており、導波路形成領域10aのスライド移動が支障なく行なえるようになっている。
【0033】
同図に示すアレイ導波路回折格子において、アレイ導波路回折格子の使用環境温度が変化すると、高熱膨張部材7が導波路形成領域10よりも大きく膨張または収縮するので、ベースに固定されていない側の導波路形成領域10aおよびその基板1が、前記切断面8に沿って、図の矢印A方向または矢印B方向にスライド移動し、それにより、分離スラブ導波路3a及び光入力導波路2がスライド移動する。
【0034】
そして、前記切断面8に沿っての移動は、アレイ導波路回折格子の各光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向に行われるため、この提案のアレイ導波路回折格子においては、アレイ導波路回折格子の使用環境温度変化に伴う各光透過中心波長の温度依存性が補償される。
【0035】
なお、上記提案は、アレイ導波路型回折格子の線分散特性に着目して成されたものであり、以下、上記提案における光透過中心波長の温度依存性補償原理について、図8に基づいて述べる。
【0036】
アレイ導波路型回折格子において光入力導波路2から入射された光は、第1のスラブ導波路(入力側スラブ導波路)3で回折し、アレイ導波路4を励振する。なお、前記の如く、隣接するアレイ導波路4の長さは互いにΔLずつ異なっている。そこで、アレイ導波路4を伝搬した光は、(数3)を満たし、第2のスラブ導波路(出力側スラブ導波路)5の出力端に集光される。
【0037】
【数3】
【0038】
(数3)において、nsは第1のスラブ導波路3および第2のスラブ導波路5の等価屈折率、ncはアレイ導波路4の等価屈折率、φは回折角、mは回折次数、dは隣り合うアレイ導波路4同士の間隔であり、λは、前記の如く、各光出力導波路6から出力される光の透過中心波長である。
【0039】
ここで、回折角φ=0となるところの光透過中心波長をλ0とすると、λ0は(数4)で表される。なお、波長λ0は、一般に、アレイ導波路型回折格子の中心波長と呼ばれる。
【0040】
【数4】
【0041】
ところで、図8において、回折角φ=0となるアレイ導波路型回折格子の集光位置を点Oとすると、回折角φ=φpを有する光の集光位置(第2のスラブ導波路5の出力端における位置)は、例えば点Pの位置(点OからX方向にずれた位置)となる。ここで、O−P間のX方向の距離をxとすると波長λとの間に(数5)が成立する。
【0042】
【数5】
【0043】
(数5)において、Lfは第2のスラブ導波路5の焦点距離であり、ngはアレイ導波路4の群屈折率である。なお、アレイ導波路4の群屈折率ngは、アレイ導波路4の等価屈折率ncにより、(数6)で与えられる。
【0044】
【数6】
【0045】
前記(数5)は、第2のスラブ導波路5の焦点OからX方向の距離dx離れた位置に光出力導波路6の入力端を配置形成することにより、dλだけ波長の異なった光を取り出すことが可能であることを意味する。
【0046】
また、(数5)の関係は、第1のスラブ導波路3に関しても同様に成立する。すなわち、例えば第1のスラブ導波路3の焦点中心を点O’とし、この点O’からX方向に距離dx’ずれた位置にある点を点P’とすると、この点P’に光を入射した場合に、出力の波長がdλ’ずれることになる。この関係を式により表わすと、(数7)のようになる。
【0047】
【数7】
【0048】
なお、(数7)において、Lf’は第1のスラブ導波路3の焦点距離である。この(数7)は、第1のスラブ導波路3の焦点O’とX方向の距離dx’離れた位置に光入力導波路2の出力端を配置形成することにより、前記焦点Oに形成した光出力導波路に6おいてdλ’だけ波長の異なった光を取り出すことが可能であることを意味する。
【0049】
したがって、アレイ導波路型回折格子の使用環境温度変動によってアレイ導波路型回折格子の光出力導波路から出力される光透過中心波長がΔλずれたときに、dλ’=Δλとなるように、光入力導波路6の出力端位置を前記X方向に距離dx’だけずらせば、例えば焦点Oに形成した光出力導波路6において、波長ずれのない光を取り出すことができ、他の光出力導波路6に関しても同様の作用が生じるため、前記光透過中心波長ずれΔλを補正(解消)できることになる。
【0050】
前記提案例は、第1のスラブ導波路3と第2のスラブ導波路5の少なくとも一方がスラブ導波路5を通る光の経路と交わる切断面8で切断分離したものであり、図7に示したように、第1のスラブ導波路3が切断分離されていると仮定して議論すると、この分離された第1のスラブ導波路のうち、例えば光入力導波路2に接続されている分離スラブ導波路3a側(光入力導波路2も含む)を、スライド移動機構によって前記切断面に沿ってスライド移動させれば、前記各光透過中心波長をシフトさせることが可能となる。
【0051】
また、前記スライド移動機構によって、前記各光透過中心波長の温度依存変動(波長ずれ)Δλがdλと等しくなるようにして、前記各光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向に分離スラブ導波路3a及び光入力導波路2を前記切断面8に沿って移動させれば、前記光透過中心波長ずれを解消することが可能となる。
【0052】
また、温度変化量と光入力導波路2の位置補正量の関係は以下のようにして導かれる。前記光透過中心波長の温度依存性(温度による光透過中心波長のずれ量)は、前記(数2)で表されるので、温度変化量Tを用いて光透過中心波長ずれ量Δλを(数8)により表わすことができる。
【0053】
【数8】
【0054】
(数7)、(数8)から、温度変化量Tと光入力導波路の位置補正量dx’を求めると、(数9)が導かれる。
【0055】
【数9】
【0056】
したがって、図7に示した構成において、(数9)により示される位置補正量dx’だけ、前記スライド移動機構によって切断面8に沿って第1のスラブ導波路3の分離スラブ導波路3a及び光入力導波路2をスライド移動させることにより、前記光透過中心波長ずれを解消することが可能となる。
【0057】
例えば、従来の一般的なアレイ導波路型回折格子の導波路構成の各パラメータと(数9)に基づき、アレイ導波路型回折格子の使用環境温度の変化量Tと光入力導波路2の位置補正量dx’の関係を求めると、(数10)に示す関係となる。この場合、アレイ導波路型回折格子の使用環境温度が10℃変化した際、光入力導波路2の出力端の位置をX方向に約3.83μm補正(移動)すれば、温度による中心波長すれが補正できる計算になる。
【0058】
【数10】
【0059】
なお、前記の如く、アレイ導波路型回折格子は光の相反性を利用して形成されているものであり、第2のスラブ導波路5側を切断分離して、分離された分離スラブ導波路の少なくとも一方側を、スライド移動機構によって前記切断面に沿って前記各光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向にスライド移動させれば、同様の効果が得られ、前記各光透過中心波長の温度依存変動を解消することが可能となる。
【0060】
しかしながら、図7に示したような構成のアレイ導波路回折格子を多数作製し、それぞれのアレイ導波路型回折格子において、前記スライド移動機構によって分離導波路3a側を図7の矢印A,B方向にスライド移動させてアレイ導波路型回折格子の光透過中心波長の温度依存性低減効果を調べたところ、十分な効果を発揮できないものが存在することが分かった。
【0061】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、光透過中心波長の温度依存性を正確に抑制することができる安価なアレイ導波路型回折格子を提供することにある。
【0062】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明は、1本以上の並設された光入力導波路の出射側に第1のスラブ導波路が接続され、該第1のスラブ導波路の出射側には該第1のスラブ導波路から導出された光を伝搬する互いに異なる長さの複数の並設されたアレイ導波路が接続され、該複数のアレイ導波路の出射側には第2のスラブ導波路が接続され、該第2のスラブ導波路の出射側には複数の並設された光出力導波路が接続されて成る導波路構成を有し、前記光入力導波路から入力される互いに異なる複数の波長をもった光から1つ以上の波長の光を分波して各光出力導波路から出力する光分波機能を有し、前記各光出力導波路から出力される各光の光透過率が少なくとも予め定められた波長領域においては分波光の互いに異なる光透過中心波長を中心としてそれぞれ対応する光透過中心波長から波長がずれるにしたがって小さくなるアレイ導波路回折格子において、前記第1のスラブ導波路が該スラブ導波路を通る光の経路と交わる切断面で切断分離されており、この分離された分離スラブ導波路の少なくとも一方側を前記切断面に沿ってスライド移動させるスライド移動機構が設けられ、当該スライド移動機構により前記分離スラブ導波路の少なくとも一方側を前記切断面に沿ってスライド移動させることにより前記光透過中心波長をシフトさせる構成と成し、前記切断面はスラブ導波路内を通る光の経路の長手方向中心位置よりもアレイ導波路側の位置において前記光の経路と交わる面とし、前記アレイ導波路回折格子の導波路は基板上に形成されており、第1のスラブ導波路は前記基板と一体的に切断面で切断分離されていて、分離された一方側の分離スラブ導波路は当該分離された一方側の基板と一体的に前記切断面に沿ってスライド移動する構成と成しており、スライド移動機構は温度変化に応じて伸縮する高熱膨張係数部材を備えており、前記スライド移動させる側の分離スラブ導波路側の前記分離された基板には前記高熱膨張係数部材の一端側が固定されており、前記高熱膨張係数部材の他端側は該高熱膨張係数部材よりも熱膨張係数が低い低熱膨張率の材料によって形成された固定側となるベースに固定され、前記高熱膨張係数部材が使用環境の温度変化に応じて伸縮することによって、前記分離スラブ導波路の一方側が前記切断面に沿って、アレイ導波路回折格子の各光出力導波路から出力する光の光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向にスライド移動する構成とした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0065】
本発明者が、図7に示したような上記提案のアレイ導波路回折格子の構成を有していながら、光透過中心波長の温度依存性低減効果を十分に発揮できないものが存在する原因を解明するために、アレイ導波路型回折格子を解体してみたところ、上記温度依存性低減効果を十分に発揮できないものは、図2に示すように、切断面8における切断部分で導波路形成領域10aの端面(切断面8a)と導波路形成領域10bの端面(切断面8b)との角度θが生じている(切断面8aと切断面8bとが完全に一致した状態で上記スライド移動が行なわれない)ことが分かった。なお、図2には、図の簡略化のために、アレイ導波路型回折格子の導波路構成のうち、光入力導波路2と第1のスラブ導波路3のみが示されている。
【0066】
したがって、この角度θを零に近づけるようにすることが重要であるが、角度θは、実際には図2に示すような大きなものではなく、せいぜい0.5度程度であり(図2においては説明を分かりやすくするためにθを大きく示した)、アレイ導波路型回折格子の作製上の誤差によってこの程度の大きさの角度θが生じてしまうことは避けられない。
【0067】
そこで、本発明者は、前記切断面8の形成位置に着目した。その結果、第1のスラブ導波路3内を通る光の経路の長手方向中心位置よりも光入力導波路2側の位置において、前記光の経路と交わる切断面8で第1のスラブ導波路3を切断したときに、上記角度θとの兼ね合いによって上記アレイ導波路型回折格子における各光透過中心波長の温度依存変動低減効果を十分に発揮できないことが分かった。
【0068】
そこで、本発明者は、上記角度θと、アレイ導波路型回折格子における光透過中心波長シフト量との関係を以下のように考察した。
【0069】
すなわち、図2に示すように、アレイ導波路型回折格子における光入力導波路2の出力端20が、第1のスラブ導波路3の幅方向の中心に形成されている(W1=W2である)とする。光入力導波路2の出力端20から第1のスラブ導波路3に入力された光は、アレイ導波路4側に向かって広がりながら第1のスラブ導波路3を伝搬するが、光入力導波路2の出力端20(同図におけるC)から、第1のスラブ導波路3の出力端における幅方向の中心位置(W1=W2となる位置)Bに向かって直進する光の強度が最も大きい。
【0070】
そのため、切断面8によって切断された導波路形成領域10aの端面(切断面8a)と導波路形成領域10bの端面(切断面8b)との角度θが0の場合、すなわち、切断面8aと切断面8bの角度ずれが生じていない理想的な場合には、第1のスラブ導波路3を伝搬する光の強度中心は、前記位置Bに向かう。
【0071】
ここで、導波路形成領域10aの端面(切断面8a)と導波路形成領域10bの端面(切断面8b)との角度が、切断面8(8a,8b)の端部Aを支点として角度θずれた場合を考える。
【0072】
なお、分離スラブ導波路3aの長さ(光の経路方向の長さ)をLf1とし、分離スラブ導波路3bの長さ(光の経路方向の長さ)をLf2とし、アレイ導波路型回折格子の端面Eから光入力導波路2の出力端20(同図におけるC)までの長さをL0とする。また、切断面8aと切断面8bとの間には屈折率整合剤が塗布されているので、切断面8a,8bの間の隙間によって光の反射が生じないものとする。
【0073】
切断面8aと切断面8bの角度がθの場合、図のCの位置から入力された光強度の中心は、第1のスラブ導波路3内を、図のBの位置から上方側にdxgだけずれた点に向かって直進するので、この光の焦点距離Lfg’は、CB間の距離で近似できるものである。なお、同図において、点Aと点C、点Aと点Bをそれぞれ接続し、γ1=tan−1(Lf1/L0)、γ2=tan−1(Lf2/L0)を考えると、LAB=(L0 2+Lf2 2)1/2、LAD=(L0 2+Lf2 2)1/2・cos(θ+γ2)となり、dxgは、(数11)で表わされる。また、LBD=(L0 2+Lf2 2)1/2・sin(θ+γ2)となり、前記焦点距離Lfg’は、(数12)により近似できる。
【0074】
【数11】
【0075】
【数12】
【0076】
また、図2において、角度θは大きく示してあるが、前記の如く、θは、実際には非常に小さい値なので、アレイ導波路型回折格子の線分散特性が成り立つと仮定してもなんら差し障りが無く、したがって、以下の式(数13)が成り立つ。
【0077】
【数13】
【0078】
ここで、ΔLは、アレイ導波路の光路長差、nsは第1のスラブ導波路3の等価屈折率、dは隣り合うアレイ導波路4同士の間隔、λ0はアレイ導波路型回折格子の回折角φ=0となるところの光透過中心波長(一般に、アレイ導波路型回折格子の中心波長と呼ぶことがある)、ngはアレイ導波路4の群屈折率である。また、波長λ0は、前記(数4)により表わされるものであり、アレイ導波路4の群屈折率ngは、前記(数6)により表わされるものである。
【0079】
そこで、第1のスラブ導波路3を通る光の経路と交わるように形成する切断面8を、光入力導波路2に近い側に形成した場合とアレイ導波路4に近い側に形成した場合の両方において、上記(数4)、(数6)、(数11)、(数12)、(数13)を用いて、アレイ導波路型回折格子における角度θと前記光透過中心波長シフト量との関係をそれぞれ算出した。この算出結果が、図3、4に示されている。
【0080】
なお、上記算出結果は、上記第1実施形態例と同様の、以下のパラメータに基づいて算出した。すなわち、回折次数mは61、隣り合うアレイ導波路4同士の長さの差ΔLは65.2μm、アレイ導波路4のピッチdは15μm、アレイ導波路4の等価屈折率ncは1.451、アレイ導波路群屈折率ngは1.475、第1、第2のスラブ導波路3,5の等価屈折率nsはそれぞれ1.453とした。なお、これらの等価屈折率値は、波長1.55μmの光に対する値であり、25℃における値である。
【0081】
また、上記切断面8を光入力導波路2に近い側に形成した場合(図3に示す算出結果)は、Lf1=1000μm、Lf2=8000μmとし、上記切断面8をアレイ導波路4に近い側に形成した場合(図4に示す算出結果)は、Lf1=8000μm、Lf2=1000μmとして求めた。
【0082】
図3、4から明らかなように、角度θが大きくなるほど光透過中心波長シフト量も大きくなり、光透過中心波長シフト量は角度θにほぼ比例している。このことは、前記スライド移動機構によって分離スラブ導波路3a側を切断面8に沿ってスライド移動させたときに、このスライド移動によってシフトさせる適切な光透過中心波長シフト量(光透過中心波長シフト量の設計値)に加えて、角度θに対応する大きさだけアレイ導波路型回折格子の光透過中心波長が余分にシフトすることを意味する。
【0083】
したがって、角度θが大きくなると、設計通り前記光透過中心波長をシフトさせることができなくなる。例えば、図3に示すように、切断面8を光入力導波路2に近い側に形成した場合は、角度θが0.1度のときに光透過中心波長シフト量が0.5nmになっているので、光透過中心波長が0.5nm余分にシフトしてしまうことになり、アレイ導波路型回折格子によって、波長多重光を波長0.8nm間隔で分離しようとする場合には問題である。
【0084】
一方、切断面8をアレイ導波路4に近い側に形成した場合は、図4に示すように、角度θが0.1度のときに光透過中心波長シフト量が0.1nmになっており、アレイ導波路4に近い側に切断面8を形成することで、角度θに依存する光透過中心波長シフト量を5分の1程度に小さくできることが分かった。なお、この光透過中心波長シフト量(設計値からのずれ量)が0.1nmであることは許容範囲である。
【0086】
本発明は、上記考察結果に基づいて、第1のスラブ導波路を切断する切断面を、アレイ導波路側に近い側で切断する切断面とし、かつ、図7に示したような提案例の構成と同様のスライド機構を設けてアレイ導波路型回折格子を構成したために、光透過中心波長の温度依存性を正確に抑制することができる安価なアレイ導波路型回折格子とすることが可能となる。
【0087】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略する。図1には、本発明に係るアレイ導波路型回折格子の一実施形態例の概略図が平面図により示されている。本実施形態例は図7に示した上記提案例とほぼ同様に構成されており、本実施形態例が上記提案例と異なる特徴的なことは、切断面8を、第1のスラブ導波路3内を通る光の経路の長手方向中心位置よりもアレイ導波路4側の位置(アレイ導波路寄りの位置)において前記光の経路と交わる面としたことである。
【0088】
すなわち、本実施形態例において、切断面8は、第1のスラブ導波路3を、光入力導波路2側よりもアレイ導波路4側に近い側で切断する面と成しており、具体的には、同図における長さLf1=8000μm、Lf2=1000μmと成している。
【0089】
前記の如く、図7に示した提案例のアレイ導波路型回折格子において、各光透過中心波長の温度依存変動低減効果を十分に発揮できないものは、第1のスラブ導波路3内を通る光の経路の長手方向中心位置よりも光入力導波路2側の位置において、前記光の経路と交わる切断面8で第1のスラブ導波路3を切断し、かつ、図2に示した、切断面8における切断部分で導波路形成領域10aの端面(切断面8a)と導波路形成領域10bの端面(切断面8b)との角度θが比較的大きいことが分かった。
【0090】
そして、本発明者は、上記角度θと、アレイ導波路型回折格子における光透過中心波長シフト量との関係を前記のように考察し、この考察結果に基づき、前記の如く、第1のスラブ導波路3を、光入力導波路2側よりもアレイ導波路4側に近い側に切断面8を形成して本実施形態例のアレイ導波路型回折格子を形成した。
【0091】
本実施形態例は以上のように構成されており、本実施形態例のアレイ導波路型回折格子において、前記角度θを実際に測定したところ、θ=約0.05度であり、図6に示すように、アレイ導波路型回折格子の使用環境温度0℃〜80℃において、光透過中心波長が殆ど変動しないアレイ導波路型回折格子となることが分かった。
【0092】
なお、図5には、本実施形態例のアレイ導波路型回折格子において、前記角度θを故意に大きくして、角度θに対するアレイ導波路型回折格子の光透過中心波長シフト量を測定した実測結果が、図4に示した光透過中心波長シフト量の計算値と共に示されており、図5からも明らかなように、本実施形態例のように、第1のスラブ導波路3に形成する切断面8をアレイ導波路4に近い側に形成することにより、たとえ切断面8における前記角度θが多少大きくても、光透過中心波長を設計通りシフトすることができ、アレイ導波路型回折格子における光透過中心波長の温度依存性を効率的に低減できることが分かった。
【0093】
なお、図5において、○が実測値、特性線が計算値であり、計算値と実測値はほぼ一致した。
【0094】
本実施形態例によれば、アレイ導波路型回折格子の光透過中心波長の温度依存性を低減できるように図7に示した提案例とほぼ同様の構成とし、ただし、前記考察に基づき、図1に示すように、第1のスラブ導波路3を、光入力導波路2側よりもアレイ導波路4側に近い側に切断面8を形成して本実施形態例のアレイ導波路型回折格子を形成したので、光透過中心波長の温度依存性をほぼ設計通り正確に抑制することができるアレイ導波路型回折格子とすることができる。
【0095】
また、本実施形態例によれば、図7に示した提案例と同様に、高熱膨張係数部材7、ベース9、係止部材14を有して構成される簡単な構成のスライド移動機構を設けることによりアレイ導波路型回折格子の各光透過中心波長の温度依存性を効率的に低減できるものであり、アレイ導波路型回折格子の構成の複雑化を避けることができ、作製も容易にできる。
【0096】
さらに、本実施形態例によれば、第1のスラブ導波路3を切断面8で切断しているために、例えばアレイ導波路型回折格子を構成するアレイ導波路部の作製誤差に起因して、前記光透過中心波長がITUグリッド波長等の設定波長からずれている場合には、その分だけ分離スラブ導波路3aと分離スラブ導波路3bの相対位置をずらして、光入力導波路2のX方向の位置をずらすことにより、設定温度において、前記光透過中心波長をグリッド波長等の設定波長とすることができる。
【0097】
なお、本発明は上記実施形態例に限定されることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば、上記実施形態例では、長手方向の長さが9000μmの第1のスラブ導波路3を、図1に示したように、Lf1=8000μm、Lf2=1000μmとなるように切断面8を切断したが、Lf1やLf2の長さは特に限定されるものではなく、適宜設定されるものであり、Lf1>Lf2となるように切断面8を形成することにより、上記実施形態例と同様の効果を奏することができる。
【0098】
また、上記実施形態例では、高熱膨張係数部材7としてAlの板を用いたが、高熱膨張係数部材7は必ずしもAlとするとは限らず、Al以外の材料により形成してもよい。
【0101】
さらに、第1のスラブ導波路3や第2のスラブ導波路5の切断面8は上記実施形態例のようにX軸とほぼ平行な面とするとは限らず、X軸に対して斜めの面としてもよく、切断するスラブ導波路を通る光の経路と交わる切断面で切断分離すればよい。
【0102】
さらに、上記実施形態例では、分離スラブ導波路3a側を切断面8に沿ってスライド移動させるスライド移動機構を、高熱膨張係数部材7を設けて形成したが、スライド移動機構の構成は特に限定されるものではなく、適宜設定されるものである。すなわち、上記スライド移動機構は、第1のスラブ導波路3を切断面で切断分離して形成した分離スラブ導波路の少なくとも一方側を、前記切断面8に沿ってスライド移動させることにより、アレイ導波路型回折格子の光透過中心波長をシフトできる機能を有していればよい。
【0103】
特に、上記スライド移動機構は、上記実施形態例のように、アレイ導波路型回折格子の各光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向にスライド移動させる機能を有していれば望ましく、スライド移動機構をこのように構成することにより、上記実施形態例のように、従来のアレイ導波路型回折格子において問題であった光透過中心波長の温度依存性を解消することができ、光波長多重通信用などの実用に適した優れたアレイ導波路型回折格子とすることができる。
【0104】
さらに、本発明のアレイ導波路型回折格子を構成する各導波路2,3,4,5,6の等価屈折率や本数、大きさなどの詳細な値は特に限定されるものではなく、適宜設定されるものである。
【0105】
【発明の効果】
第1の発明によれば、第1のスラブ導波路を該スラブ導波路を通る光の経路と交わる切断面で切断分離し、この分離したスラブ導波路の少なくとも一方を、前記切断面に沿ってスライド移動させることにより、アレイ導波路型回折格子の各光透過中心波長をシフトさせることができ、しかも、前記切断面を前記光の経路の長手方向中心位置よりもアレイ導波路側に形成したので、前記分離スラブ導波路同士の角度に依存する光透過中心波長シフト変位量を小さくすることができるため、ほぼ設計通り光透過中心波長シフトを行なうことができる。
【0106】
また、第2の発明によれば、第1の発明に加えて、前記スライド移動機構による切断面に沿っての移動により、前記各光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向にスライド移動させるものであるから、アレイ導波路型回折格子の各光透過中心波長を非常に適切な量だけシフトさせることができ、前記各光透過中心波長の温度依存変動(波長ずれ)を解消することができる。
【0107】
また、第2の発明によれば、ペルチェ素子やヒータを用いなくてもアレイ導波路型回折格子の使用環境温度による光透過中心波長ずれを抑制し、光透過中心波長の温度無依存化を行うことができるために、ペルチェ素子やヒータを含む温度調節手段を設ける場合のように、常時通電を必要とすることもないし、部品の組立誤差による温度補正誤差が生じることもなく、さらに、室温以上の温度でアレイ導波路型回折格子を保つことによるアレイ導波路型回折格子と光ファイバとの接続損失増加の虞もない。
【0108】
したがって、第2の発明のアレイ導波路型回折格子は、接続相手側の光ファイバとの接続信頼性が高く、確実に光透過中心波長の温度依存性を解消でき、コストが安い優れたアレイ導波路型回折格子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアレイ導波路型回折格子の一実施形態例を平面図により示す要部構成図である。
【図2】アレイ導波路型回折格子の第1のスラブ導波路を切断したときの導波路形成領域端面角度θに対応する光透過中心波長シフトを説明する説明図である。
【図3】第1のスラブ導波路を光入力導波路に近い側で切断したときの、図2に示した角度θとアレイ導波路型回折格子における光透過中心波長シフト量との関係の算出結果を示すグラフである。
【図4】第1のスラブ導波路をアレイ導波路に近い側で切断したときの、図2に示した角度θとアレイ導波路型回折格子における光透過中心波長シフト量との関係の算出結果を示すグラフである。
【図5】第1のスラブ導波路をアレイ導波路に近い側で切断したときの、図2に示した角度θとアレイ導波路型回折格子における光透過中心波長シフト量との関係の算出結果と実測値とを比較して示すグラフである。
【図6】上記実施形態例のアレイ導波路型回折格子における光透過中心波長の温度依存性を示すグラフである。
【図7】従来提案されている第1のスラブ導波路を切断して形成したアレイ導波路型回折格子の構成を示す説明図である。
【図8】アレイ導波路型回折格子における光透過中心波長シフトと光入力導波路および光出力導波路の位置との関係を示す説明図である。
【図9】ペルチェ素子を設けて構成した従来のアレイ導波路型回折格子を示す説明図である。
【符号の説明】
1 基板
2 光入力導波路
3 第1のスラブ導波路
3a,3b 分離スラブ導波路
4 アレイ導波路
5 第2のスラブ導波路
6 光出力導波路
7 高熱膨張係数部材
8,8a,8b 切断面
9 ベース
10,10a,10b 導波路形成領域
14 係止部材
Claims (1)
- 1本以上の並設された光入力導波路の出射側に第1のスラブ導波路が接続され、該第1のスラブ導波路の出射側には該第1のスラブ導波路から導出された光を伝搬する互いに異なる長さの複数の並設されたアレイ導波路が接続され、該複数のアレイ導波路の出射側には第2のスラブ導波路が接続され、該第2のスラブ導波路の出射側には複数の並設された光出力導波路が接続されて成る導波路構成を有し、前記光入力導波路から入力される互いに異なる複数の波長をもった光から1つ以上の波長の光を分波して各光出力導波路から出力する光分波機能を有し、前記各光出力導波路から出力される各光の光透過率が少なくとも予め定められた波長領域においては分波光の互いに異なる光透過中心波長を中心としてそれぞれ対応する光透過中心波長から波長がずれるにしたがって小さくなるアレイ導波路回折格子において、前記第1のスラブ導波路が該スラブ導波路を通る光の経路と交わる切断面で切断分離されており、この分離された分離スラブ導波路の少なくとも一方側を前記切断面に沿ってスライド移動させるスライド移動機構が設けられ、当該スライド移動機構により前記分離スラブ導波路の少なくとも一方側を前記切断面に沿ってスライド移動させることにより前記光透過中心波長をシフトさせる構成と成し、前記切断面はスラブ導波路内を通る光の経路の長手方向中心位置よりもアレイ導波路側の位置において前記光の経路と交わる面とし、前記アレイ導波路回折格子の導波路は基板上に形成されており、第1のスラブ導波路は前記基板と一体的に切断面で切断分離されていて、分離された一方側の分離スラブ導波路は当該分離された一方側の基板と一体的に前記切断面に沿ってスライド移動する構成と成しており、スライド移動機構は温度変化に応じて伸縮する高熱膨張係数部材を備えており、前記スライド移動させる側の分離スラブ導波路側の前記分離された基板には前記高熱膨張係数部材の一端側が固定されており、前記高熱膨張係数部材の他端側は該高熱膨張係数部材よりも熱膨張係数が低い低熱膨張率の材料によって形成された固定側となるベースに固定され、前記高熱膨張係数部材が使用環境の温度変化に応じて伸縮することによって、前記分離スラブ導波路の一方側が前記切断面に沿って、アレイ導波路回折格子の各光出力導波路から出力する光の光透過中心波長の温度依存変動を低減する方向にスライド移動する構成としたことを特徴とするアレイ導波路型回折格子。
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