JP4315856B2 - 耐冷性液状潤滑油及びその製造方法 - Google Patents

耐冷性液状潤滑油及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物油を水添処理後、ウインタリング処理することにより得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物を含有する耐冷性液状潤滑油、及び該耐冷性液状潤滑油脂の製造方法に関するものである。
耐冷性液状潤滑油(本発明における耐冷性液状潤滑油とは、10℃において保存しても結晶の析出がしない液状の潤滑油のことをいう。)として、一般に鉱物油が良く使用されているが、近年、消費者の環境意識の向上により、液状植物油を原料とする耐冷性液状潤滑油が求められるようになってきている(特許文献1)。しかしながら、液状植物油には、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸が多いために酸化安定性が低く、潤滑油としては適さないという欠点があった(非特許文献1)。
酸化安定性が比較的高く潤滑油として使用可能な液状植物油として、オレイン酸含量の高いハイオレイックひまわり油が挙げられる。しかしながら、ハイオレイックひまわり油は価格が高いために実用的ではなく、また、酸化安定性の点でも充分満足できるものではなかった。
特開平10−53780号公報 南一郎、光宗将太、植物油の化学と潤滑性能、「トライボロジスト」、トライボロジー学会、2000年、第45巻、11号、p.789−794
本発明の目的は、耐冷性を有し、かつ、酸化安定性が高い、植物油由来の耐冷性液状潤滑油及び該耐冷性液状潤滑油の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成脂肪酸を有する植物油を、特定の条件で水添処理及びウインタリング処理することにより得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物を含有する液状油が、耐冷性及び酸化安定性が高く、潤滑油として優れていることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明は、全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70〜90質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が5〜22質量%である植物油を、水添処理前後におけるヨウ素価減少率が5〜15%の範囲となるように水添処理した後、15℃以下でウインタリング処理することにより得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物を含有することを特徴とする耐冷性液状潤滑油である。
本発明の第2の発明は、前記耐冷性液状トリグリセリド組成物の全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が75〜95質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が0〜15質量%であり、且つ全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が0〜5質量%であることを特徴とする第1の発明に記載の耐冷性液状潤滑油である。
本発明の第3の発明は、前記植物油が、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、及びハイオレイック大豆油から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の耐冷性液状潤滑油である。
本発明の第4の発明は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする第1の発明から第3の発明のいずれか1つの発明に記載の耐冷性液状潤滑油である。
本発明の第5の発明は、合成潤滑油を含有することを特徴とする第1の発明から第4の発明のいずれか1つの発明に記載の耐冷性液状潤滑油である。
本発明の第6の発明は、潤滑油用添加剤を含有することを特徴とする第1の発明から第5の発明のいずれか1つの発明に記載の耐冷性液状潤滑油である。
本発明の第7の発明は、全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70〜90質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が5〜22質量%である植物油を、水添処理前後におけるヨウ素価減少率が5〜15%の範囲となるように水添処理した後、15℃以下でウインタリング処理することにより得られる耐冷性液状トリグリセリド組成物を使用することを特徴とする耐冷性液状潤滑油の製造方法である。
本発明の第8の発明は、前記耐冷性液状トリグリセリド組成物の全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が75〜95質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が0〜15質量%であり、且つ全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が0〜5質量%であることを特徴とする第7の発明に記載の耐冷性液状潤滑油の製造方法である。
本発明の第9の発明は、前記植物油が、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、及びハイオレイック大豆油から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする第7の発明又は第8の発明に記載の耐冷性液状潤滑油の製造方法である。
本発明によれば、耐冷性及び酸化安定性の高い、耐冷性液状潤滑油を得ることができ、得られた潤滑油は、金属加工、塑性加工、及び金属表面処理時の各種潤滑油(圧延油、切削油、研削油、引抜き加工油、プレス加工油、及び防錆油等)として使用することができる。また、食品機械用の潤滑油としても使用することができる。
さらに、本発明の耐冷性液状潤滑油は、乳化系、分散系、可溶化系の潤滑油製剤においても使用することができる。
本発明の耐冷性液状潤滑油は、10℃においても結晶を析出しないという耐冷性を有し、ハイオレイックひまわり油よりも酸化安定性が高い。このように、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の耐冷性向上剤を添加しなくても、10℃における耐冷性を有するため、ポリグリセリン脂肪酸エステルの使用を避けたい用途においても潤滑油として使用することができ、さらに、コスト面においてもメリットがある。
また、耐冷性をさらに向上させるためにポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しようとした場合、本発明の耐冷性液状潤滑油を用いれば、ハイオレイックひまわり油等の植物油へ添加する場合に比べ、より少ない量のポリグリセリン脂肪酸エステル添加量で耐冷性をより向上させることができ、コスト面でもメリットがある。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する本発明の耐冷性液状潤滑油は、0〜5℃においても結晶を析出しないという耐冷性を有し、ハイオレイックひまわり油よりも酸化安定性が高い。したがって、さらなる耐冷性が求められる用途でも、潤滑油として使用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明に使用する植物油について説明する。
本発明に使用する植物油は、全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜8質量%であり、全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70〜90質量%、好ましくは70〜85質量%であり、並びに全構成脂肪酸中の長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が5〜22質量%、好ましくは5〜18質量%である植物油である。
全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が15質量%を超えた植物油を使用した場合、水添処理して得られる水添油は、長鎖飽和脂肪酸含量が多く、低温又は室温で固体化してしまい、ウインタリング処理を行うことができなくなってしまう。また、ウインタリング処理ができたとしても、収率が著しく低くなってしまう。したがって、全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量は0〜15質量%が良い。
全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70質量%未満の植物油には、他の構成脂肪酸として飽和脂肪酸が多いもの、又は長鎖多価不飽和脂肪酸が多いものがある。
全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70質量%未満で、飽和脂肪酸含量の多い植物油を使用した場合、水添処理して得られる水添油は、全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量がさらに増加し、低温又は室温で固体化してしまい、ウインタリング処理を行うことができなくなってしまう。
また、全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70質量%未満で、長鎖多価不飽和脂肪酸含量の多い植物油を使用した場合、水添処理することで、酸価安定性の高い長鎖モノ不飽和脂肪酸含量を増やし、酸価安定性に悪影響を与える長鎖多価不飽和脂肪酸含量を減少させる必要がある。しかし、全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70質量%未満で、長鎖多価不飽和脂肪酸含量の多い植物油を水添処理しても、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が一定量に達すると頭打ちとなってそれ以上増やすことができず、長鎖飽和脂肪酸含量だけが増加してしまう。酸価安定性の高い長鎖モノ不飽和脂肪酸だけを効率良く増加させることができない。そして、長鎖飽和脂肪酸含量が増加すると、低温又は室温で固体化してしまい、ウインタリング処理を行うことができなくなってしまう。
以上のことから、全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量は70質量%以上が良い。
一方で、市場での入手し易さを考慮すると、全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量は90質量%以下が良い。
全構成脂肪酸中の長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が5質量%未満である植物油は多く存在するが、さらに全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%である植物油となると、市場から入手することが困難であるため、長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量は5質量%以上が良い。
全構成脂肪酸中の長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が22質量%を超える植物油を使用した場合、水添処理することで、酸価安定性の高い長鎖モノ不飽和脂肪酸含量を増やし、酸価安定性に悪影響を与える長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量を減少させる必要がある。しかし、全構成脂肪酸中の長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が22質量%を超える植物油を水添処理しても、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が一定量に達すると頭打ちとなって増やすことができず、長鎖飽和脂肪酸含量だけが増加してしまう。酸価安定性の高い長鎖モノ不飽和脂肪酸だけを効率良く増加させることができない。そして、長鎖飽和脂肪酸含量が増加すると、低温又は室温で固体化してしまい、ウインタリング処理を行うことができなくなってしまう。
したがって、全構成脂肪酸中の長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量は、22質量%以下が良い。
ここで、長鎖飽和脂肪酸とは、炭素数16〜24、好ましくは炭素数16〜20、最も好ましくは炭素数18の飽和脂肪酸のことをいい、例えば、パルミチン酸、及びステアリン酸等が挙げられる。
また、長鎖モノ不飽和脂肪酸とは、炭素数16〜24、好ましくは炭素数16〜20、最も好ましくは炭素数18のモノ不飽和脂肪酸のことをいい、例えば、オレイン酸等が挙げられる。
また、長鎖ジ不飽和脂肪酸とは、炭素数16〜24、好ましくは炭素数16〜20、最も好ましくは炭素数18のジ不飽和脂肪酸のことをいい、例えば、リノール酸等が挙げられる。
また、長鎖トリ不飽和脂肪酸とは、炭素数16〜24、好ましくは炭素数16〜20、最も好ましくは炭素数18のトリ不飽和脂肪酸のことをいい、例えば、リノレン酸等が挙げられる。
全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70〜90質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が5〜22質量%である植物油として、例えば、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、及びハイオレイック大豆油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができ、入手しやすさや価格面を考慮すると、ハイオレイック菜種油が最も好ましい。
次に、本発明の耐冷性液状潤滑油を得る際の植物油の水添処理条件について説明する。
水添処理は、水添処理前の植物油のヨウ素価に対する水添処理後の植物油のヨウ素価の減少率、すなわち水添処理前後におけるヨウ素価減少率が5〜15%の範囲で行うのが良く、より好ましくは7〜15%、さらにより好ましくは8〜14%、最も好ましくは10〜13%の範囲で行うのが良い。
水添処理前後におけるヨウ素価減少率が5%未満であると、得られる耐冷性液状潤滑油の酸化安定性が高いものが得られず、15%を超えてしまうと、ウインタリング処理をして得られる耐冷性液状トリグリセリド組成物の収率が著しく悪くなってしまうからである。
水添処理前後におけるヨウ素価減少率さえ5〜15%の範囲にすることができれば、他の水添処理条件については特に限定はしない。
水添処理は、例えば、植物油に対して好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%、最も好ましくは0.1〜0.5質量%のニッケル、白金、パラジウム、又は銅等を製剤化した触媒を添加したものを耐圧反応容器に入れ、好ましくは150〜210℃、より好ましくは170〜190℃で、水素ガス雰囲気下(水素ガス圧力0.1〜10kg/cm2)において、原料を攪拌しながら行う。ここで、製剤化した触媒として、例えば、ニッケル、白金、パラジウム、又は銅等を油脂コーティングしたものが使用できる。
なお、反応時の水素ガスの圧力は、反応開始から終了まで一定に保つことが望ましく、水添反応により消費される水素による圧力の変動を考慮して水素ガスの供給量を調整することにより一定に保つことができる。水添処理の反応の終了は、水素ガス圧力が増加し始めた時点を目安として、水素ガスの供給を止めることで行うことができる。
次に、本発明の耐冷性液状潤滑油を得るために行うウインタリング処理について説明する。
ウインタリング処理とは、低温下に置いて油をろ過し、油中に析出している結晶を除去する処理のことである。本発明において、水添処理後のウインタリング処理は、必須の処理である。なぜなら、単に水添処理前後におけるヨウ素価減少率を5〜15%の範囲で水添処理のみで得られる油は、使用する原料、又はヨウ素価減少率によっては、融点の高い長鎖飽和脂肪酸やトランス酸が多く生成し、低温下で結晶の析出を生じたり、固体状になったりしてしまい、潤滑油として適さないからである。
ウインタリング処理の温度は、15℃以下、好ましくは5〜15℃、より好ましくは5〜12℃、最も好ましくは5〜10℃である。この温度範囲内でウインタリング処理を行うと、耐冷性液状トリグリセリド組成物の収率をより高くすることができ、また、結晶化因子のほとんどを除去することができるため、耐冷性がより高くなった耐冷性液状トリグリセリド組成物を得ることができるからである。
ウインタリング処理は、通常使用されているろ過装置等を用いて行うことができる。
次に、本発明の耐冷性液状潤滑油に含有する耐冷性液状トリグリセリド組成物について説明する。
本発明の耐冷性液状潤滑油に含有する耐冷性液状トリグリセリド組成物は、耐冷性を有しており、具体的には、10℃において保存をしても結晶を生じない。したがって、冬場や低温時においても結晶析出しにくく、また、固体化することがないため、耐冷性を有し、潤滑油としての機能を充分発揮することができる。
さらに、他の植物油よりも酸価安定性が高いことから潤滑油として使用されているハイオレイックひまわり油よりも、酸価安定性が高い。
本発明の耐冷性液状潤滑油に含有する耐冷性液状トリグリセリド組成物は、全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%であることが好ましく、0〜10質量%であることがより好ましく、0〜7質量%であることが最も好ましく、全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が75〜95質量%であることが好ましく、80〜90質量%であることがより好ましく、並びに全構成脂肪酸中の長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が0〜15質量%であることが好ましく、0〜12質量%であることがより好ましく、且つ全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が0〜5質量%であることが好ましく、0〜4質量%であることがより好ましく、0〜3質量%であることが最も好ましい。
耐冷性液状トリグリセリド組成物の全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が15質量%以下であり、且つステアリン酸含量が0〜5質量%であると、耐冷性液状トリグリセリド組成物の耐冷性をより高めることができるからである。
また、耐冷性液状トリグリセリド組成物の全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量は75質量以上で、かつ、全構成脂肪酸中の長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量は15質量%以下であると、酸価安定性をより高めることができるからである。
そして、製造コスト面の点から、全構成脂肪酸中の長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が95質量%以下が良い。
本発明の耐冷性液状潤滑油中の耐冷性液状トリグリセリド組成物の含量は、30〜100質量%が好ましく、30〜99.8質量%がより好ましく、50〜99.8質量%がさらにより好ましく、70〜99.8質量%が最も好ましい。
本発明の耐冷性液状潤滑油は、先に説明した耐冷性液状トリグリセリド組成物を含有するものである。
したがって、本発明の耐冷性液状潤滑油は、耐冷性を有しており、具体的には、10℃において保存をしても結晶を生じない。したがって、冬場や低温時においても結晶析出しにくく、また、固体化することがないため、耐冷性を有し、潤滑油としての機能を充分発揮することができる。
さらに、他の植物油よりも酸価安定性が高いことから潤滑油として使用されているハイオレイックひまわり油よりも、酸価安定性が高い。
本発明の耐冷性液状潤滑油は、耐冷性をさらに高めるためにポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることができる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する本発明の耐冷性液状潤滑油は、高い耐冷性を有しており、具体的には、0〜5℃において保存をしても結晶を生じない。したがって、冬場や低温時においても結晶析出しにくく、また、固体化することがないため、耐冷性を有し、潤滑油としての機能を充分発揮することができる。
さらに、他の植物油よりも酸価安定性が高いことから潤滑油として使用されているハイオレイックひまわり油よりも、酸価安定性が高い。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、市販のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することができる。また、特開平10−245583号公報、特開平11−279115号公報、特開2000−351986号公報、特開2002−212587号公報に記載されている耐冷性向上剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルも使用することができる。
使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、その構成脂肪酸が2種以上の脂肪酸からなるものが好ましく、特に、構成脂肪酸が中鎖脂肪酸、長鎖飽和及び不飽和脂肪酸からなるものが最も好ましい。具体的には、オレイン酸及びパルミチン酸を主に構成脂肪酸とするもの、オレイン酸、パルミチン酸及びラウリン酸を主に構成脂肪酸とするもの、ラウリン及びパルミチン酸を主に構成脂肪酸とするもの、エルカ酸及び飽和脂肪酸を主に構成脂肪酸とするもの、並びにエルカ酸及び不飽和脂肪酸を主に構成脂肪酸とするもの等が挙げられる。
市販されているものとしては、例えば、商品名:サンソフトQMP−5(太陽化学(株)製)、SYグリスターTHL−15(阪本薬品工業(株)製)、リョートーポリグリエステルLOP−120DP(三菱化学フーズ(株)製)等が挙げられる。
耐冷性液状潤滑油中のポリグリセリン脂肪酸エステル含量は、結晶化抑制効果とコストとのバランスを考慮すると、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましく、0.05〜0.5質量%が最も好ましい。
本発明の耐冷性液状潤滑油には、使用目的に合わせた潤滑油特性を持たせるために、中鎖脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸多価アルコールエステル等の合成潤滑油、及び鉱物油系潤滑油から選ばれる1種又は2種以上を含有させることができる。
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、トリカプリル酸・カプリン酸トリグリセリドが挙げられる。
脂肪酸アルキルエステルは、脂肪酸及びアルキルからなるエステルのことであり、脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸等が挙げられ、アルキルとしては、例えば、メチル、プロピル、ブチル、及びオクチル等が挙げられる。ここで、オレイン酸といえば、純度の高いオレイン酸だけではなく、動植物由来の脂肪酸であってオレイン酸が主成分であるものも示し、他の脂肪酸についても同様である。
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、例えば、トリオレイン酸トリメチロールプロパン、ジカプリル酸・カプリン酸エチレングリコール、及びプロピレングリコール等が挙げられ、鉱物油系潤滑油としては、例えば、パラフィン、石油、又は灯油等が挙げられる。
本発明の耐冷性液状潤滑油中の合成潤滑油及び鉱物油系潤滑油の含量は、好ましくは0.1〜69質量%、より好ましくは0.1〜49質量%、最も好ましくは0.1〜35質量%である。
ただし、脂肪酸アルキルエステル等の非食品の合成潤滑油、又は鉱物油系潤滑油を含有する本発明の耐冷性液状潤滑油は、安全性の点から、食品へ直接接触して、混入しまうような用途への使用は避けた方が好ましい。
本発明の耐冷性液状潤滑油には、潤滑油用添加剤を含有させることができる。潤滑油用添加剤としては、極圧剤、防錆剤、防食剤、抗酸化剤、増ちょう剤、清浄剤、分散剤、及び消泡剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。潤滑油用添加剤の使用量については特に制限はなく、通常潤滑油に使用される量を添加して使用することができる。
極圧剤としては塩化パラフィン、硫化油、イオウ系化合物、リン系化合物、及びその他の各種減摩材等が挙げられる。
防錆剤及び防食剤としては、カルボン酸、リン酸、スルフォン酸及びその塩、各種活性剤、アルキルアミン、並びにベンゾトリアゾール等が挙げられる。
抗酸化剤としては、各種フェノール系化合物、各種アミン系化合物、及びレシチン等が挙げられる。フェノール系化合物としては、例えばトコフェロール、トコトリエノール、及びTBHQ等が挙げられる。
特に、食品機械用途や作業者への環境配慮が必要な用途に使用する場合には、植物由来のトコフェロール、トコトリエノール、及びレシチン等を抗酸化剤として使用することがより望ましい。
本発明の耐冷性液状潤滑油中の抗酸化剤の含量は、0.01〜7質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.01〜3質量%が最も好ましい。
増ちょう剤としては、各種金属石けん、ウレア化合物、及び無機紛体等が挙げられる。
清浄剤及び分散剤としては、各種金属スルフォネート、フェネート、ホスフォネート、サリシレート、カルボキシレート、及びコハク酸系化合物等が挙げられる。 消泡剤としては、シリコーン油等が挙げられる。
次に本発明の耐冷性液状潤滑油の製造方法について説明する。
本発明の耐冷性液状潤滑油は、全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70〜90質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が5〜22質量%含有する植物油を、水添処理前後におけるヨウ素価減少率が5〜15%の範囲となるように水添処理した後、15℃以下でウインタリング処理することにより得られる耐冷性液状トリグリセリド組成物を使用することにより製造することができる。
ここで、耐冷性液状トリグリセリド組成物を使用して耐冷性液状潤滑油を製造する場合、耐冷性液状潤滑油中の耐冷性液状トリグリセリド組成物の含量を、30〜100質量%とすることが好ましく、30〜99.8質量%とすることが好ましく、50〜99.8質量%とすることがより好ましく、70〜99.8質量%とすることが最も好ましい。
したがって、得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物をそのまま使用することで、耐冷性液状トリグリセリド組成物含量が100質量%である耐冷性液状潤滑油を製造することができる。
また、得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、合成潤滑油、鉱物油系潤滑油、及び潤滑油用添加剤等を配合することにより、耐冷性液状潤滑油を製造することができる。
配合するポリグリセリン脂肪酸エステル、合成潤滑油、鉱物油系潤滑油、及び潤滑油用添加剤については、上述した本発明の耐冷性液状潤滑油における説明と同様である。
ここで、全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸含量が70〜90質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸及び長鎖トリ不飽和脂肪酸含量が5〜22質量%含有する植物油については、上述した本発明の耐冷性液状潤滑油における説明と同様である。
また、水添処理及びウインタリング処理の方法及び条件についても、上述した本発明の耐冷性液状潤滑油における説明と同様である。
水添処理及びウインタリング処理により得られる耐冷性液状トリグリセリド組成物は、10℃において結晶の析出を生じないという特徴を有する。
この耐冷性液状トリグリセリド組成物の脂肪酸組成は、上述した本発明の耐冷性液状潤滑油における説明と同様である。
本発明の耐冷性液状潤滑油について、具体的製造方法の一例を次に挙げる。
ハイオレイック菜種油、及び油脂コーティングしたフレーク状のニッケル触媒を水添装置に入れ、150〜210℃に加温し、撹拌しながら水素圧を0.1〜10kg/cm2の範囲に保ち、水添処理を行う。水素圧が増加し始めた時点で反応を止め、冷却後ろ過することで触媒を除去する。
得られた水添油を15℃以下で1晩放置した後、15℃以下でろ過(ウインタリング処理)することにより、耐冷性液状トリグリセリド組成物を得る。
このようにして得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物をそのまま使用することで、耐冷性液状トリグリセリド組成物含量が100質量%である耐冷性液状潤滑油を製造することができる。
また、このようにして得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物をステンレスビーカーに入れ、そこへポリグリセリン脂肪酸エステル、合成潤滑油、鉱物油系潤滑油、又は潤滑油用添加剤等を配合し、50〜150℃で、30〜120時間混合攪拌することにより、耐冷性液状潤滑油を製造することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〔耐冷性液状潤滑油1の製造〕
ヨウ素価98のハイオレイック菜種油(商品名:ヘルシーライト、日清オイリオ(株)製)2kg、及び油脂コーティングしたフレーク状のニッケル触媒(添加量:油に対して0.15質量%)3g水添装置に入れ、180℃に加温し、撹拌しながら水素圧を0.5kg/cm2に保ち水添処理を行った。水素圧が増加し始めた時点(水添開始から10分後)で反応を止め、冷却後ろ過することで触媒を除去し、水添油を得た。
得られた水添油のヨウ素価は87で、ヨウ素価の減少率は11%であった。得られた水添油を5℃で1晩放置した後、5℃においてろ過(ウインタリング処理)し、耐冷性液状トリグリセリド組成物を約1.2kg得た。これを耐冷性液状潤滑油1(耐冷性液状トリグリセリド組成物含量100質量%)とした。得られた耐冷性液状潤滑油1のヨウ素価は91であった。
原料に使用したハイオレイック菜種油、及び得られた耐冷性液状潤滑油1の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフを用いて分析した。分析結果を表1に示す。
実施例2〔耐冷性液状潤滑油2の製造〕
実施例1と同じ原料を使用し、同じ製造方法により、水添油を製造し、水添油を得た。得られた水添油のヨウ素価は85で、ヨウ素価の減少率は13%であった。得られた水添油を半分に分けたものを9℃で1晩放置した後、9℃においてろ過(ウインタリング処理)し、耐冷性液状トリグリセリド組成物を約0.7kg得た。これを耐冷性液状潤滑油2(耐冷性液状トリグリセリド組成物含量100質量%)とした。得られた耐冷性液状潤滑油2のヨウ素価は89であった。
原料に使用したハイオレイック菜種油、及び得られた耐冷性液状潤滑油2の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフを用いて分析した。分析結果を表1に示す。
比較例1〔比較潤滑油1の製造〕
実施例1と同じ原料を用い、水添処理時間を15分間にした以外は、実施例1と同様の方法で水添処理を行い、水添油を得た。得られた水添油のヨウ素価は79でヨウ素価減少率は19%であった。得られた水添油を5℃、10℃又は15℃で1晩保管すると、すべての温度において油全体が固まってしまい、通常のろ過(ウインタリング処理)を行うことができず、液状油である比較潤滑油1を得ることができなかった。したがって、比較潤滑油1については、各種評価試験は行うことが出来なかった。
原料に使用したハイオレイック菜種油の脂肪酸組成の分析結果を表1に示す。
比較例2〔比較潤滑油2の製造〕
実施例1の原料のハイオレイック菜種油をヨウ素価113の菜種油に代えた以外は、実施例1と同様の方法で水添処理を行、水添油を得た。得られた水添油のヨウ素価は97でヨウ素価減少率は14%であった。得られた水添油を8℃で1晩放置した後、8℃においてろ過(ウインタリング処理)し、液状トリグリセリド組成物を約1.5kg得た。これを比較潤滑油2(液状トリグリセリド組成物含量100質量%)とした。得られた比較潤滑油2のヨウ素価は100であった。
原料に使用した菜種油、及び得られた比較潤滑油2の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフを用いて分析した。分析結果を表2に示す。
比較例3〔比較潤滑油3〕
実施例2で得られた水添油の半分(ヨウ素価は85)を16℃で1晩放置した後、16℃においてろ過(ウインタリング処理)し、液状トリグリセリド組成物を約0.8kg得た。これを比較潤滑油3(液状トリグリセリド組成物含量100質量%)とした。得られた比較潤滑油3のヨウ素価は87であった。
得られた比較潤滑油3の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフを用いて分析した。分析結果を表2に示す。また、原料に使用したハイオレイック菜種油の分析結果を表1に示す。
比較潤滑油3を、10℃に1晩放置すると、結晶が析出した。したがって、比較潤滑油3については、各種評価試験は行わなかった。
実施例3〔耐冷性液状潤滑油3の製造〕
実施例1で得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物(脂肪酸組成は表1を参照。)を0.1kg、及びポリグリセリン混合脂肪酸エステル(商品名:サンソフトQMP−5、太陽化学(株)製)0.1gを500ミリリットルステンレス容器に入れ、70℃で30分間プロペラ攪拌して混合し、耐冷性液状潤滑油3を約0.1kg得た。
原料に使用したハイオレイック菜種油の分析結果を表1に示す。
実施例4〔耐冷性液状潤滑油4の製造〕
実施例1で得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物の代わりに、実施例2で得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物(脂肪酸組成は表1を参照。)を使用した以外は、実施例3と同様の方法で製造することにより耐冷性液状潤滑油4を約0.1kg得た。
原料に使用したハイオレイック菜種油の分析結果を表1に示す。
比較例4〔比較潤滑油4の製造〕
比較例2で得られた液状トリグリセリド組成物(脂肪酸組成は表2を参照。)を0.1kg、及びポリグリセリン混合脂肪酸エステル(商品名:サンソフトQMP−5、太陽化学(株)製)0.1gを2リットルステンレス容器に入れ、70℃で30分間プロペラ攪拌して混合し、比較潤滑油4を約0.1kg得た。
原料に使用した菜種油の脂肪酸組成の分析結果を表2に示す。
比較例5〔比較潤滑油5の製造〕
ハイオレイックひまわり油(商品名:オレインリッチ、昭和産業(株)社製)を0.1kg、及びポリグリセリン混合脂肪酸エステル(商品名:サンソフトQMP−5、太陽化学(株)製)0.1gを500ミリリットルステンレス容器に入れ、70℃で30分間プロペラ攪拌して混合し、比較潤滑油5を約0.1kg得た。
原料に使用したハイオレイックひまわり油の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフを用いて分析した。分析結果を表2に示す。
Figure 0004315856
Figure 0004315856
〔CDM試験による酸化安定性評価試験〕
各種潤滑油の原料として用いた油(ハイオレイック菜種油、菜種油、ハイオレイックひまわり油)、耐冷性液状潤滑油1、2、及び比較潤滑油2について、CDM試験(ランシマット試験)を行い、酸価安定性について評価を行った。
なお、耐冷性液状潤滑油3、4、及び比較潤滑油4、5の酸価安定性は、ポリグリセリン脂肪酸エステル添加前の油とほぼ同じであることから、CDM試験は行わなかった。また、比較潤滑油1については、製造で液状油を得ることができなかったため、比較潤滑油3については10℃で結晶が析出したため、CDM試験は行わなかった。
試験は、2.5gの各種サンプルを、120℃で20リットル/時間の量の空気を吹き込み行った。時間が長いものほど、酸価安定性が高いものであると評価することができる。
試験結果を表3に示す。その結果、本発明品である耐冷性液状潤滑油1及び2は、植物油(ハイオレイック菜種油、菜種油、ハイオレイックひまわり油)及び比較潤滑油2よりも酸価安定性が高く、潤滑油に適していることがわかった。また、耐冷性液状潤滑油1及び2の酸化安定性が高いことから、それらを原料とする耐冷性液状潤滑油3及び4も同じように酸化安定性が高いということがわかる。
なお、比較潤滑油1については、製造で液状油を得ることができなかったため、酸化安定性評価試験は行わなかった。
Figure 0004315856
〔耐冷性評価試験〕
耐冷性液状潤滑油1〜4、及び比較潤滑油2、4、5を、それぞれ0℃で保存し、3日間後、7日後、及び1ヵ月後の結晶析出の有無について確認した。対照として、酸価安定性の高いハイオレイックひまわり油について耐冷性評価試験を行った。また、10℃で1ヶ月保存後の結晶析出の有無についても確認した。
保存後、結晶析出がなかったものを○、結晶析出をしたが、その析出量が少なかったものを△、結晶析出をし、その析出量が多かったものを×として、耐冷性を評価した。0℃及び10℃での耐冷性評価試験結果を表4に示す。
ハイオレイックひまわり油、耐冷性液状潤滑油1〜4、及び比較潤滑油2、4、5について、それぞれ10℃で1ヶ月間保存したが、結晶は析出しなかった。よって、本発明品である耐冷性液状潤滑油1〜4は、すべて耐冷性を有することがわかった。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加した本発明品である耐冷性液状潤滑油3、4、及び比較潤滑油4、5は、0℃で7日及び1ヶ月という長期間においても結晶が析出せず、耐冷性がより高いことがわかった。
一方、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加していない油であるハイオレイックひまわり油、及び比較潤滑油2は、0℃の長期間保存により多量の結晶析出を生じた。また、本発明品である耐冷性液状潤滑油1、2は、0℃の長期間保存により結晶析出を生じたが、その析出量は少なく、しかも1ヶ月後の結晶析出量は7日後の析出量からほとんど増加しなかった。
したがって、この0℃における耐冷性試験結果、先に説明した酸化安定性試験結果、及び10℃での耐冷性試験結果から総合的に判断すると、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加していない耐冷性液状潤滑油1及び2は、ハイオレイックひまわり油より、耐冷性、及び酸化安定性が高く、ハイオレイックひまわり油より潤滑油性能が高いことがわかった。
なお、比較潤滑油1については、製造で液状油を得ることができなかったため、また、比較潤滑油3については10℃で結晶が析出したため、耐冷性評価試験は行わなかった。
また、先に説明したポリグリセリン脂肪酸エステルを添加していない油の0℃での長期間の耐冷性試験結果からわかるように、本発明の耐冷性液状潤滑油は、ハイオレイックひまわり油よりも結晶析出量が少なかったことから、耐冷性をさらに向上させるためにポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しようとした場合、本発明の耐冷性液状潤滑油を用いれば、ハイオレイックひまわり油等の植物油へ添加する場合に比べ、より少ない量のポリグリセリン脂肪酸エステル添加量でも耐冷性、特に0℃での耐冷性を向上させることが期待でき、コスト面でもメリットがあることがわかる。
Figure 0004315856
実施例5
表5に示す配合で、耐冷性液状潤滑油5を製造した。
まず、オレイン酸メチルエステルに、抗酸化剤であるTBHQを添加し室温で溶解させた。
次に、実施例1で得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物、中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名:ODO、日清オイリオ(株)製)、先に調製したTBHQ含有オレイン酸メチルエステルを500ミリリットルステンレス容器に入れ、70℃で30分間プロペラ攪拌して混合し、耐冷性液状潤滑油5を約0.1kg得た。
得られた耐冷性液状潤滑油5については、10℃で1ヶ月間保存したが、結晶析出しなかった。
得られた耐冷性液状潤滑油5について、先に説明したCDM試験により酸化安定性評価試験を行ったところ、30時間を越え、非常に高い酸価安定性を有し、潤滑油に適していることがわかった。
Figure 0004315856
本発明の耐冷性液状潤滑油は、金属加工、塑性加工、及び金属表面処理時の各種潤滑油(圧延油、切削油、研削油、引抜き加工油、プレス加工油、防錆油等)として利用することができる。さらに、食品機械用の潤滑油としても使用することができる。

Claims (9)

  1. 全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が70〜90質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)及び長鎖トリ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が5〜22質量%である植物油を、水添処理前後におけるヨウ素価減少率が5〜15%の範囲となるように水添処理した後、5〜15℃でウインタリング処理することにより得られた耐冷性液状トリグリセリド組成物を含有することを特徴とする耐冷性液状潤滑油。
  2. 前記耐冷性液状トリグリセリド組成物の全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が75〜95質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)及び長鎖トリ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が0〜15質量%であり、且つ全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が0〜5質量%であることを特徴とする請求項1に記載の耐冷性液状潤滑油。
  3. 前記植物油が、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、及びハイオレイック大豆油から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐冷性液状潤滑油。
  4. ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の耐冷性液状潤滑油。
  5. 合成潤滑油を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の耐冷性液状潤滑油。
  6. 潤滑油用添加剤を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の耐冷性液状潤滑油。
  7. 全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が70〜90質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)及び長鎖トリ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が5〜22質量%である植物油を、水添処理前後におけるヨウ素価減少率が5〜15%の範囲となるように水添処理した後、5〜15℃でウインタリング処理することにより得られる耐冷性液状トリグリセリド組成物をそのまま使用、あるいはポリグリセリン脂肪酸エステル、合成潤滑油、鉱物油系潤滑油、又は潤滑油用添加剤を配合して使用することを特徴とする耐冷性液状潤滑油の製造方法。
  8. 前記耐冷性液状トリグリセリド組成物の全構成脂肪酸中の長鎖飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が0〜15質量%、長鎖モノ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が75〜95質量%、並びに長鎖ジ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)及び長鎖トリ不飽和脂肪酸(炭素数16〜24)含量が0〜15質量%であり、且つ全構成脂肪酸中のステアリン酸含量が0〜5質量%であることを特徴とする請求項7に記載の耐冷性液状潤滑油の製造方法。
  9. 前記植物油が、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、及びハイオレイック大豆油から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の耐冷性液状潤滑油の製造方法。
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