JP4309834B2 - 調質圧延方法 - Google Patents
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Description
また、近年における食品や飲料等の保存容器としてのスチール缶には、薄肉化や高強度化のみならず、ファンシー缶に代表されるように、様々な形状や優れた意匠性を有する形状のものが求められており、表面処理鋼板用原板、特にぶりきやティンフリースチール(TFS)などの缶用素材鋼板には、従来にも増して美麗な表面性状が要求されるとともに、このような意匠性に優れた形状の加工を可能とする製缶性の向上も望まれている。とりわけ、鋼板の圧延平行方向と圧延直角方向において降伏点や伸び等の機械的性質に大きな差があると、加工時のブランク取りにおいて変形を生じたり、鋼板に印刷したパターンが製品原板を切り出す際にいびつに変形することから、鋼板の圧延平行方向と圧延直角方向における機械的性質の差、いわゆる、鋼板の方向性の問題を改善することが急務となっている。
乾式圧延は、潤滑剤を使用しないことから圧延制御が容易である反面、ロールと鋼板との摩擦係数が高いため、許容圧下率を超えるとロールや鋼板からの金属粉が発生しやすく、これが巻き込み疵の原因となり、鋼板品質を低下させるという問題がある。換言すると、潤滑剤を使用しない乾式圧延では、軽圧下率しか確保することができない。
また、この軽圧下率しか確保できないという乾式圧延の性格から、この方式では製鋼段階での材質設計が大きなウェイトを占めている。すなわち、図1(a)に示すようにT1〜DR8の調質度を得るのに上工程から多くの合金成分系の缶用素材鋼帯を用意しなければならず、これが工程管理や品質管理を煩雑にするひとつの要因となっている。
したがって、0.5〜1.5%程度の軽圧下率しか確保できない乾式圧延は、近年ますます要請される製造プロセス全体の簡素化やコスト削減を図るには技術的限界があるとも言える。
すなわち、湿式圧延は、多くの合金成分系鋼帯を用意しなければならない乾式圧延とは異なり、単一成分系鋼帯から様々な調質度の缶用素材鋼板を造り分けることが可能な調質圧延方法であり、製造プロセス全体の簡素化ひいてはコスト削減やエネルギー削減を図れるという有意義な特徴を持つ調質圧延方法と言える(例えば、特許文献1参照)。
このため、従来の湿式圧延においては、特殊な潤滑剤を使用したり、その塗布方法や張力の調整等によりロールと鋼板との摩擦係数を調整して改善を試みていたが(例えば、特許文献1参照)、当該現象を完全に阻止することは困難であった。
すなわち、ジャンピングの発生により、湿式圧延の有利な特徴、すなわち、単一成分系鋼帯から様々な調質度の缶用素材鋼板を造り分けて、製造プロセス全体の簡素化ひいてはコスト削減やエネルギー削減に資するという湿式圧延の有利な特徴を十分に発揮することができなかった。
しかし、このダルロールを用いて湿式圧延を行った後にブライトロールで圧延を行うと、ダルロールで鋼板に転写された凹部に潤滑剤がまばらに残り、製品に潤滑むらと呼ばれる光沢むらが生じるという問題があった。特に、ショットブラストを用いて加工したダルロールを用いてジャンピングを防止しようとするとロール粗度を大きくする必要があるため、潤滑むらあるいはNo.2スタンドでの異常延びが発生しやすく、これが美麗な表面性状を要求される缶用素材鋼板にとっては致命的な問題となっていた。
しかし、この方法においては、比較的高価なNを0.01〜0.03%も添加する必要があるため、生産コスト的に問題があった。また、一般にNの含有率が高くなると鋳片に表面疵が発生しやすいことから、美麗な表面性状を要求される缶用素材鋼板にとっては致命的な問題となった。
なお、缶用素材鋼板とは、容器材料に用いられる鋼板であり、代表的なものとしては、ぶりきやティンフリースチール(TFS)、その他、Ni系めっき鋼板等がある。
(A)調質圧延において圧下率を振らせると降伏点が下がる領域が存在するが、この領域においては鋼板の方向性が改善されること。そして、この領域は、乾式圧延よりも湿式圧延のほうが広いこと。
(B)当該領域においては、従来から使用してきた鋼帯成分に特段の変更を加えることなく、鋼板の方向性を改善することができること。
(C)湿式圧延の方向性が改善される領域は、ジャンピングが発生する領域(1.5〜6%の圧下率の範囲)と重なり、1.5〜10%の圧下率の範囲であること。
(D)したがって、湿式圧延におけるジャンピング発生の問題を解決すれば、鋼板の方向性の問題を改善できるとともに、単一成分系鋼帯から様々な調質度を有する鋼板を安定して造り分けることも可能となること。
(E)ジャンピングは、鋼板とロールとの摩擦力が変化して、ロール圧下力が鋼板に伝わる状況が微妙に変化すると発生しやすいこと。そして、前記鋼板とロールとの摩擦力が変化する要因としては、潤滑剤を介してのロールと鋼板間のグリップ力の変化が主であり、潤滑剤の流入の変化が従であること。
また、穴縁の総長密度を調整することにより、前記主要因たるロールと鋼板間のグリップ力の変化を低減できる摩擦係数を確保できること。そして、穴縁の総長密度は5〜15mm/m2の範囲が望ましいこと。
さらに、前記穴の形状をなるべく円筒形、すなわち、深さ方向になるべく均一な断面積を有する形状にすれば、ロールが磨耗しても摩擦係数が変化しないことから、ロールと鋼板間のグリップ力の変化を抑制できること。
また、前記穴の形状を、深さ方向に完全に均一な断面積を有する形状に加工することが困難である場合には、ロール表面から所定の深さにいたるまでの穴の直径の変化量が少なければ、摩擦係数の変化も抑制できることから、ロールと鋼板間のグリップ力の変化を抑制できること。
前者については、穴の面積率を5〜40%とし、かつ穴の深さを3μm以上とすれば、穴の中に積極的に潤滑剤が溜まり、ロールバイト内でもロールと鋼板間に連続的に潤滑剤が供給されるので、前記潤滑油膜切れを防止できること。
後者については、ロールバイト入り側でロールの穴に対する鋼板の表面部分は微視的には圧延されないで穴の形状たる凸状になるために、潤滑剤と鋼板との接触角が幾何学上小さくなるので、前記濡れ性をも改善できること。
さらに、穴の加工方法によっては穴の周囲に盛り上がり(リム)が形成される場合があるが、リムが存在すると圧延時に潤滑剤と鋼板との接触角が幾何学上大きくなり、前記濡れ性を改善することが困難となるので、リムを形成しないように穴を加工することが望ましいこと。ただし、リム高さが1μm以下ならば前記濡れ性への影響が小さく許容される範囲であること。
(H)ダルロールを用いて湿式圧延を行った後にブライトロールで圧延を行うと、ダルロールで鋼板に転写された凹部に潤滑剤がまばらに残り、これが原因で潤滑むらやNo.2スタンドでの異常伸びが発生すること。
(I)これらの発生を防止するためには、幅方向の潤滑均一性を確保する必要があること。そして、幅方向の潤滑均一性を確保するためには、前記リムが鋼板に転写されて生じる凹部に潤滑剤が残らないようにすれば良いため、前記凹部の深さを1μm以下に抑えるか、さらに望ましくはリムを形成しないように穴を開けて前記凹部を形成させないことが重要であること。
(2)ロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm 2 、穴の周囲の盛り上がり部の高さが1μm以下である圧延用ロールを用いて、湿式圧延を行うことを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延方法。
(3)1.5〜10%の圧下率で湿式圧延を行うことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の缶用素材鋼板の調質圧延方法。
(4)質量%で、
C :0.1%以下、
Si :0.05%以下、
Mn :0.05〜0.4%、
solAl:0.01〜0.1%、
N :0.002〜0.01%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、
ロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm2 である圧延用ロール、またはロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm 2 、穴の周囲の盛り上がり部の高さが1μm以下である圧延用ロールを用いて、湿式圧延を行うことを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延方法。
(5)前記湿式圧延の次に、表面粗度が1.0μmRa以下のブライトロールを用いて圧延を行うことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の缶用素材鋼板の調質圧延方法。
(7)ロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm2、穴の面積率が5〜40%、穴の周囲の盛り上がり部の高さが1μm以下、ロール表面の穴の直径を基準に穴の深さ方向の直径の変化量が30%以下の部分をロール表面から3μm以上有することを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延用ロール。
(9)突起の表面が平滑で、円形の直径が30〜120μm、周囲長の総長密度が5〜15mm/mm2、鋼板表面からの高さが1μm以下である凸状円形突起を鋼板表面に有し、当該凸状円形突起の周りに鋼板表面からの深さが1μm以下である凹みを有することを特徴とする缶用素材鋼板。
(10)圧延平行方向と圧延直角方向との機械的性質の差が、降伏点で15MPa以下、伸びが5%以下であることを特徴とする前記(8)または(9)に記載の缶用素材鋼板。
(11)質量%で、
C :0.1%以下、
Si :0.05%以下、
Mn :0.05〜0.4%、
solAl:0.01〜0.1%、
N :0.002〜0.01%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする前記(10)に記載の缶用素材鋼板。
(12)T3〜DR8のいずれかの調質度を有することを特徴とする前記(11)に記載の缶用素材鋼板。
(B)また、従来のスクラッチロール(圧延方向に筋目の入ったロール)による圧延では、ロールバイトでの圧延方向と幅方向の摩擦係数の差があるが、本技術による穴空きロールでは摩擦係数の差が小さくなり、圧延方向と幅方向のメタルフロー差が小さくなるので、鋼板の圧延平行方向と圧延直角方向における降伏点や伸び等の機械的性質に差のない、いわゆる方向性に優れた缶用素材鋼板を安定して製造することができる。このため、加工時のブランク取りにおける変形や、製品原板を切り出す際に印刷パターンが変形等する問題を解決することができる。これは、様々な形状や意匠性に優れた形状を要求されるスチール缶の製缶性の向上に資するものであり、その製缶プロセスに与える影響ならびに経済的効果は極めて大きい。
(C)さらに、従来技術によってジャンピングを防止しようとすると、潤滑剤残りによる潤滑むらやNo.2スタンドでの異常延びが発生しやすいという弊害を生じたが、本発明によれば前記弊害を生じることなく、美麗な表面性状を満足する缶用素材鋼板を安定して製造することができる。これは、製缶メーカのみならず、エンドユーザを含む社会的ニーズに適合するものであり、その社会的影響は極めて大きい。
ジャンピング現象とは、降伏伸びに関連する現象であり、圧下率が増加すると降伏点が減少する領域で発生する。この領域では、或る圧延荷重を加えると、材料は降伏点が上昇して釣り合う点まで伸びようとするが、圧延機は伸び率を制御しようとして圧下荷重を下げる制御を行う。その結果、材料の伸びは減少するが、今度は、圧下荷重を下げたことで設定値に比べて伸びが小さいので、圧延機は圧下荷重を増やして伸びを確保しようとする。伸びを確保すると、圧下率が増加すると降伏点が減少する領域に再び入るので、材料は降伏点が上昇して釣り合う点まで再び伸びようとする。これを繰り返すのがジャンピング現象であり、実際には、圧下率が例えば2%程度狙いの場合に、伸び率が0〜8%程度変動することがある。それに伴い圧下荷重も±200トン程度変動して非常に不安定になる。また、圧下率が1.5〜6%の範囲で発生しやすく、湿式圧延の方が乾式圧延に比べ発生しやすい。
また、ジャンピングは、鋼板とロールとの摩擦力が変化してロール圧下力が鋼板に伝わる状況が微妙に変化すると発生しやすく、前記鋼板とロールとの摩擦力が変化する要因としては、潤滑剤を介してのロールと鋼板間のグリップ力、すなわち、ロールと鋼板がスリップしないために必要なロールの鋼板に対する拘束力の変化が主であり、潤滑剤の流入の変化が従である。
なお、円とは、真円のみを意味するものではなく、楕円や長円、円の一部が欠けた円等をも含むものとする。
穴縁4の総長密度が15mm/mm2を超えるとロール1が磨耗しやすくなり、ロール1表面から金属粉が発生しやすくなり、これが巻き込み疵の原因となって鋼板品質を害するおそれがある。一方、5mm/mm2未満では、ロールと鋼板間のグリップ力の変化を低減できる摩擦係数を確保することが困難である。なお、穴縁4の総長密度とは、単位面積あたりの穴の縁部分の長さの和をいう。
また、前記穴の形状を、深さ方向に均一な断面積を有する形状に加工することが困難である場合には、ロール表面から所定の深さにいたるまでの穴の直径の変化量が少なければ、摩擦係数の変化も抑制できることから、ロールと鋼板間のグリップ力の変化を抑制することができる。例えば、ロール表面の穴の直径を基準とした場合、この直径が穴の底部にいたるまで変化しないことが最も望ましいが、30%以下の変化量の範囲であれば、ロールと鋼板間のグリップ力の変化を抑制することができる。また、ロール表面から少なくとも3μmまでの深さにおいては、当該変化量を30%以下とすることが望ましい。
なお、円筒形における円とは、真円のみを意味するものではなく、楕円や長円、円の一部が欠けた円等をも含むものとする。
前者については、穴の面積率7を5〜40%とし、かつ穴の深さ5を3μm以上とすれば、穴の中に積極的に潤滑剤が溜まり、ロールバイト内でもロールと鋼板間に連続的に潤滑剤が供給されるので、前記潤滑剤の膜切れを防止することができる。穴の面積率7が5%未満では膜切れが生じやすく、40%超では穴の中に溜まる潤滑剤が過剰となり、摩擦係数が低下し過ぎるおそれがある。また、穴の深さ5を3μm以上とすることにより、ロールが磨耗しても前記潤滑剤の膜切れの防止を維持することができる。
後者については、ロールバイト入り側でロールの穴に対する鋼板の表面部分は微視的には圧延されないで穴の形状たる凸状になるために、潤滑剤と鋼板との接触角が幾何学上小さくなるので、前記濡れ性を改善することができる。
ただし、穴の加工に際してリムが形成されてしまう場合には、穴の周囲の盛り上がり部の高さ(リム高さ)が1μm以下ならば、前記濡れ性への影響が比較的小さい。
パルスレーザー法は、ロールの表面から3μm以上の深さにおいても、穴の直径の変化量を30%以下に抑えることができる、すなわち、ロール磨耗による摩擦係数の変化を抑制することができるので、穴の形状が半球状に近いフォトエッチング法に比べて有利である。
しかし、レーザー強度が高く、かつ単発照射により穴を開けようとすると図3(a)に示すように穴の周囲にリムが形成され、リム高さが1μmを超えてしまうので、レーザー強度や照射時間を適度に設定して穴を形成するのが望ましい。例えば、パルスレーザーの単発照射に必要な1パルス分のパルス幅を複数個に分割すれば、単発照射を複数回の照射にすることができるので、図3(b)に示すようにリムの形成ないしは穴の周囲の盛り上がり部の高さを低減することができる。なお、電子ビーム法や放電ダル加工法を使用する場合についても同様である。
なお、フォトエッチング法は、前記リムの形成ないしはリム高さを低減することができるので、この点においてはパルスレーザー法に比べて有利である。
潤滑むらとは、ダルロールを用いて湿式圧延を行った後にブライトロールで圧延を行うと、ダルロールで鋼板に転写された凹部に潤滑剤がまばらに残り、これにより光沢むらが生じる現象であり、ジャンピングと同様に、美麗な表面性状が要求される缶用素材鋼板にとっては致命的な問題のひとつである。
この潤滑剤は、通常は、調質圧延機の最初のロールと2番目のロールの間に有るリンガーロールで除去されるが、ブライトロールの粗度が大きい場合には完全に除去するのが難しい。特に、ショットブラストを用いて加工したダルロールを用いてジャンピングを防止しようとするとロール粗度を大きくする必要が有るため、潤滑むらあるいはNo.2スタンドでの異常延びが発生しやすい。
なお、調質圧延機にはシングルスタンド、2スタンド等があるが2スタンドが主流であり、さらに2スタンド以上有する調質圧延機も存在する。ここでいうNo.2スタンドとは、2スタンド以上有する調質圧延機の場合には調質圧延機の第2スタンドを意味し、または潤滑剤が残存する場合にはシングルスタンド調質圧延機の2回目の圧延時のスタンドをも意味する。
そして、幅方向の潤滑均一性を確保するためには、最初のロールに形成された穴の周囲の盛り上がり(リム)が鋼板に転写されて生じる凹部13に潤滑剤が残らないようにすればよいため、図4(a)に示す凹部13の深さを1μm以下に抑えるか、さらに望ましくはリムを形成しないように穴を加工して前記凹部13を形成させないことが重要である。
換言すれば、最初のロールに形成される穴の周囲の盛り上がり部の高さ(リム高さ)6を1μm以下にすることが必要である。穴の周囲の盛り上がり部の高さ(リム高さ)6を1μm以下に抑えるか、当該リムを形成しないようにすれば、鋼板表面上の凹部13の形成を低減することができる。
以下に、それぞれの成分範囲を限定した理由について述べる。なお、各成分の含有量は質量%表示である。
C : Cは、多くなると硬くなりすぎるので、その上限を0.1%に限定した。
Si: Siは、JISG 3303のMR型のぶりきについては0.01%以下と規定されているが、連続焼鈍で軟質のぶりき及びTFS用原板を製造する際にはSiの多い方が好ましいので、その上限を0.05%とした。
Mn: Mnは、不可避的不純物のSが誘発する熱間脆性を防止する有効な成分であるから0.05%以上含有させる。また、過剰の含有は硬質化の原因となるので、その上限を0.4%にした。
solAl: solAlは、連続焼鈍低炭素アルミキルド鋼の硬さを低下させ、表面処理後の硬質化も低減する有効な成分であり0.01%以上含有させることが必要である。しかし、あまり多量に添加すると硬くなりすぎるので、その上限を0.1%とする。
N : Nは、熱延条件に関連して適当量のAlNとして析出し、これがC析出の核となり、固溶Cの低減を促進し鋼を軟質化する有効な成分である。しかし、Nが0.002%未満では熱延後析出するAlNが少なく、その効果を消失し、また、0.01%を超える過剰の含有は多量のAlNを析出し、かえって硬質化の原因となるので、その上限を0.01%とした。なお、低炭素リムドおよびキャップド鋼では、軟質化と調質圧延後の硬質化を軽減するために0.003%以下に抑えるのが望ましい。
実施例1の条件を表1と表2に示す。表1は本実施例1で使用した鋼成分条件を示すものであり、全5種類の焼鈍後の低炭素アルミキルド鋼(板厚200μm、板幅1058mm)に対して、表2に示すレーザー加工を施したロールを最初のロール、次のロールに表面粗度が0.2〜1.0μmのブライトロールを使用して湿式の調質圧延を実施した。そして、当該条件により得られた鋼板の表面性状を表3に示す。
なお、圧下率は表2に示す通りであり、圧延速度は400mpmとした。また、潤滑剤はパーム油ベースの潤滑剤を使用している。
また、比較例は、穴の直径3、穴縁4の総長密度、穴の深さ5、穴の周囲の盛り上がり部の高さ6、穴の面積率7が本発明範囲から外れ、それ以外は前記した本発明例と同一条件である。
なお、表2に示す平均ピッチPとは、図2の場合はP=√(PC×PL)、穴の分布がランダムのときはP=√N×1000を言い、PCはロールの周方向のピッチ、PLはロールの軸方向のピッチ、Nは個数[個/mm2]を意味する。また、穴縁4の長さは、穴の直径3から計算している。
反対に、穴の直径3が本発明範囲より上方に外れる比較例2については、鋼板表面への圧延痕が目立ち、缶用素材鋼板に要求される美麗性を満たさなかった。また、比較例2は、穴の面積率7も本発明範囲より上方に外れることから、潤滑剤過剰に伴う摩擦係数の低下からジャンピング現象が発生した。
反対に、穴縁4の総長密度が本発明範囲より上方に外れる比較例4については、ロールと鋼板間の摩擦係数が過大になり、ロール表面から金属粉が発生し、最終的には巻き込み疵が発生した。
穴の周囲の盛り上がり部の高さ(リム高さ)6が本発明範囲より上方に外れる比較例6については、潤滑剤の膜切れに起因する潤滑むらが発生した。
穴の深さ5が本発明範囲より下方に外れる比較例7については、ロールと鋼板間のグリップ力の変化を低減できる摩擦係数を確保できずジャンピングが発生して、スリップ疵が発生した。
また、その凸状円形突起の周囲長11の総長密度を凸状円形突起の円形の直径10の計測値から計算すると、表2に記載した穴縁の総長密度に相当する値を確認できた。例えば、発明例1で得られた鋼板8における凸状円形突起9の周囲長11の総長密度は12mm/mm2、発明例2で得られた鋼板8における凸状円形突起9の周囲長11の総長密度は10mm/mm2であった。
さらに、これらの凸状円形突起の高さ12は、いずれも1μm以下であった。
すなわち、鋼板表面に、表面が平滑な凸状円形の突起9を有し、その凸状円形突起の円形の直径10が30〜120μm、凸状円形突起の周囲長11の総長密度が5〜15mm/mm2、凸状円形突起の高さ12が1μm以下で有る缶用素材鋼板8を得ることができた。
以上の結果は、いずれも圧延時に本発明の課題のひとつであるジャンピング現象が発生しなかったことを示すものである。
なお、凸状円形突起9の周りには、リムが鋼板に転写されて生じる凹部13が確認されたが、図4(a)に示す従来品とは対比できない程の極めて僅かな深さ(1μm以下)であり、鋼板の表面性状に影響を与えるものではなかった。また、凸状円形突起9が圧延されることにより前記凹部13が形成される場合もあるが、この場合も0.1〜0.2μm程度の極めて僅かな深さであり、鋼板の表面性状に影響を与えるものではないことを確認している。
また、表1の成分3を含有する低炭素アルミキルド鋼を使用した場合については、圧下率が2.5〜5%である発明例1、2、4および5についてはT5、圧下率が7.5〜10%においてはDR8相当の硬度であることを確認できた。
なお、上記結果(圧下率と調質度の関係)をプロットしたものを図1(b)に示すが、当該図および図1(a)における鋼種1は表1の成分1を、鋼種2は成分3を意味する。また、図1(a)における鋼種3は表1の成分4を、鋼種4は成分5を意味する。
また、従来技術によってジャンピングを防止しようとすると、潤滑剤残りによる潤滑むらやNo.2スタンドでの異常延びが発生しやすいという弊害を生じたが、本発明によれば前記弊害を生じることなく、美麗な表面性状を満足する缶用素材鋼板を安定して製造することができることを確認できた。これは、製缶メーカのみならず、エンドユーザを含む社会的ニーズに適合するものであり、その社会的影響は極めて大きい。
表4に確認試験の条件を示すが、具体的には表1に示した成分の低炭素アルミキルド鋼(成分1〜3)に対し、実施例1の発明例1で用いた圧延ロールを使用して、圧下率が1.5〜8.5%の範囲(1.5〜6%はジャンピングの発生しやすい領域)で湿式の調質圧延を実施し、その結果得られる缶用素材鋼板の鋼種(硬度)、降伏点(YP)および伸び(EL)を測定した。その結果も表4に示す。
なお、比較例は、従来のショットブラストを用いた圧延ロールを使用して圧下率1.2〜1.4%の範囲で乾式圧延を行った場合について示すものであるが、この結果からも圧延平行方向と圧延直角方向とでは機械的性質に差が生じていることを確認することができる。例えば、比較例の中で比較的方向性の少ない比較例8においても、降伏点(YP)で16MPa、伸び(EL)においては3.2%の差が生じている。
なお、特開平8−311609では、焼きなまし処理をする為に均熱加熱後で焼きなまし処理前の冷却速度を60℃/s以上としている。この方法はDI缶では特に有効であるが、汎用の缶用鋼板の場合には、焼きなまし処理は特に意識しないで均熱加熱後の冷却速度を通常20℃/s〜50℃/sにしている。また、特開平8−311609ではYP差が2kgf/mm2以下(19.6MPa以下)であるが、本発明では、15MPa以下である。この理由は、ロール表面の穴により、鋼板が長手方向と幅方向に拘束されて、鋼板の変形が長手方向と幅方向で均一化された可能性が有る。
2 穴
3 穴の直径
4 穴の縁
5 穴の深さ
6 穴の周囲の盛り上がり部の高さ(リム高さ)
7 穴の面積率
8 缶用素材鋼板
9 表面が平滑な凸状円形突起
10 凸状円形突起の直径
11 凸状円形突起の周囲長
12 凸状円形突起の高さ
13 凹部
Claims (12)
- ロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm2である圧延用ロールを用いて、湿式圧延を行うことを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延方法。
- ロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm 2 、穴の周囲の盛り上がり部の高さが1μm以下である圧延用ロールを用いて、湿式圧延を行うことを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延方法。
- 1.5〜10%の圧下率で湿式圧延を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の缶用素材鋼板の調質圧延方法。
- 質量%で、
C :0.1%以下、
Si :0.05%以下、
Mn :0.05〜0.4%、
solAl:0.01〜0.1%、
N :0.002〜0.01%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、
ロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm2 である圧延用ロール、またはロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm 2 、穴の周囲の盛り上がり部の高さが1μm以下である圧延用ロールを用いて、湿式圧延を行うことを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延方法。 - 前記湿式圧延の次に、表面粗度が1.0μmRa以下のブライトロールを用いて圧延を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の缶用素材鋼板の調質圧延方法。
- ロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm2、穴の周囲の盛り上がり部の高さが1μm以下であることを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延用ロール。
- ロール表面に直径が30〜120μmである円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が5〜15mm/mm2、穴の面積率が5〜40%、穴の周囲の盛り上がり部の高さが1μm以下、ロール表面の穴の直径を基準に穴の深さ方向の直径の変化量が30%以下の部分をロール表面から3μm以上有することを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延用ロール。
- 突起の表面が平滑で、円形の直径が30〜120μm、周囲長の総長密度が5〜15mm/mm2、鋼板表面からの高さが1μm以下である凸状円形突起を鋼板表面に有することを特徴とする缶用素材鋼板。
- 突起の表面が平滑で、円形の直径が30〜120μm、周囲長の総長密度が5〜15mm/mm2、鋼板表面からの高さが1μm以下である凸状円形突起を鋼板表面に有し、当該凸状円形突起の周りに鋼板表面からの深さが1μm以下である凹みを有することを特徴とする缶用素材鋼板。
- 圧延平行方向と圧延直角方向との機械的性質の差が、降伏点で15MPa以下、伸びが5%以下であることを特徴とする請求項8または9に記載の缶用素材鋼板。
- 質量%で、
C :0.1%以下、
Si :0.05%以下、
Mn :0.05〜0.4%、
solAl:0.01〜0.1%、
N :0.002〜0.01%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項10に記載の缶用素材鋼板。
- T3〜DR8のいずれかの調質度を有することを特徴とする請求項11に記載の缶用素材鋼板。
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