JP4306259B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として大型のモーターや発電機の鉄心材料に用いられる方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
大型の発電機やトランスの鉄心材料には、鉄損によるエネルギー損失を重視して方向性電磁鋼板が用いられている。この方向性電磁鋼板を積層して使用する大型発電機の鉄心(固定子)では、方向性電磁鋼板を扇型形状に打抜いたセグメントを積層して組み立てる方法が用いられている。このような積層方式を用いる場合、ティース部を中心として複雑な形状に打抜く必要がある他、数トン以上もの鉄心材料を使用するため打抜き回数も膨大な数となることから、打ち抜き金型の磨耗の少ない打抜き加工性の良好な方向性電磁鋼板が求められている。
【0003】
方向性電磁鋼板の表面には、通常フォルステライト(Mg2SiO4)を主体とした下地被膜(グラス被膜)が施されているが、無方向性電磁鋼板に施されている有機樹脂系の被膜に比べて、フォルステライト被膜は著しく硬質で、打抜金型の磨耗が大きい。そのため金型の再研磨または交換が頻繁に必要となり、需要家における鉄心加工時の作業効率の低下とコストアップをもたらすことになる。同様に、スリット性や切断性もフォルステライト被膜の存在により劣化する。
【0004】
ここで、方向性電磁鋼板の打抜加工性を改善するには、フォルステライト被膜を酸洗や研削などの方法で除去することが一般的であるが、コスト高になるのみならず、表面性状が悪化し磁気特性も劣化するという、大きな問題がある。
【0005】
一方、特許文献1および特許文献2には、仕上焼鈍時に適用するMgOを主体とする焼鈍分離剤中に薬剤を配合し、フォルステライト披膜の形成を抑制する技術が、また特許文献3には、Mnを含有する素材にシリカ、アルミナを主体とする焼鈍分離剤を適用する技術が、それぞれ提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特公平6−49948号公報
【特許文献2】
特公平6−49949号公報
【特許文献3】
特開平8−134542号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法では、コイルの層間における仕上焼鈍雰囲気の変動によりフォルステライトが部分的に形成されることが多く、フォルステライトの形成を完全に抑制した製品板を得ることは、極めて困難であった。
【0008】
さらに、大型のモーターや発電機の鉄心材料として方向性電磁鋼板を適用する場合には、圧延方向は勿論、圧延方向と直角の圧延直角方向への磁化も必要になる。この圧延直角方向の磁化に関しては、圧延方向に比べて、比較的低磁化力下での磁束密度、例えば磁化力100A/mにおける磁束密度Bを改善することにより、鉄心での交流磁化が円滑に行われるのである。
【0009】
しかしながら、現行の方向性電磁鋼板の圧延直角方向のB1値は、0.5T以下であり、同圧延方向のB1値が1.8T程度であるのに比べて著しく低いため、交流磁化の回転に伴い鉄損が増大する結果、方向性電磁鋼板が有する良好な鉄損を、モータコアやEIコアにおいて有効に発揮できていない。
【0010】
かように、従来の技術によって、大型のモーターや発電機の鉄心材料として理想的な、磁気特性と打抜き加工性とを共に満足する材料は未だ提供されていない。
そこで、本発明は、打抜き加工性並びに磁気特性、特に圧延直角方向の磁気特性に優れた、全く新しい方向性電磁鋼板を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記の課題を解決する手段について鋭意究明したところ、まず、フォルステライト被膜の形成を抑制するために、焼鈍分離剤として通常使用されているMgOを使用しないこと、一方、このMgOの不使用によって純化が難しくなる、SおよびSeを素材の段階で低減し、さらにインヒビタとしてAlNを単独で使用すれば、圧延方向そして圧延直角方向の磁束密度をも向上させ得ることを、新たに見出した。
【0012】
以下、本発明を成功に至らしめた実験について説明する。
発明者らは、C:0.04mass%以下、Si:3.4mass%、Mn:0.15mass%、Sn:0.04mass%、sol.Al:0.015mass%およびN:60massppm(以下、単にppmと示す)を含み、S量を種々に変化させ、その他の成分を各々30ppm以下に低減した、鋼スラブを連続鋳造にて製造した。ついで、1220℃に加熱した後熱間圧延により2.4mmの板厚に仕上げた。熱延板を1000℃で窒素雰囲気中で1分間均熱した後急冷した。引き続き、冷間圧延を行って0.35mmの最終板厚とした。その後、水素20vol%、窒素80vol%および露点30℃の雰囲気で850℃で均熱60秒の脱炭を兼ねる再結晶焼鈍を行った。そして、再結晶焼鈍後のコイルより試験片を切りだし、最終仕上焼鈍条件を種々変更する実験を行った。さらに、焼鈍分離剤としてMgOを使用する条件としない条件とに分けて焼鈍実験を行った。なお、最終仕上焼鈍は、零点−20℃の窒素雰囲気にて、常温から850℃の保定温度までを50℃/hで昇温し50時間保定し、保定後Ar雰囲気または窒素雰囲気にて20℃/hで1000℃まで昇温する方式で行った。
【0013】
最終仕上焼鈍後、圧延方向および圧延直角方向の磁気特性を測定した。その結果を、S量と圧延方向の磁束密度との関係として、図1に示す。圧延方向の磁束密度に関しては、S量が50ppmまではほぼ一定であるが、50ppmを超えると大きく劣化した。ここで、仕上焼鈍後の試料を調査したところ、S量が50ppmを超えると二次再結晶粒の発達が不十分であることがわかった。
【0014】
また、S量と圧延直角方向の磁束密度との関係を、図2に示す。圧延直角方向の磁束密度に関しては、高磁化力での磁束密度Bの値については、焼鈍分離剤としてMgOを使用した条件とMgOを使用しない場合とで差異はほとんど認められないが、低磁化力下での磁束密度、すなわちBの値は、特にS量が少ない場合に、MgOを使用しない場合が格段に良好となった。なお、焼鈍分離剤としてMgOを使用した場合には表面にフォルステライト被膜が形成され、MgOを使用しない場合にはシリカ(SiO2)が形成されていた。
【0015】
上記の実験から、S量を50ppm以下に低減することで圧延方向の磁束密度が向上すること、さらに焼鈍分離剤としてMgOを適用せず、フォルステライト被膜の形成を抑制することにより、圧延直角方向の低磁化力での磁束密度の値が向上することが新たに知見された。
【0016】
さらに、図3に、圧延方向の鉄損値に及ぼす、S量および焼鈍雰囲気、そしてMgO適用の有無の影響を示す。
MgOを適用しない場合、保定後Ar雰囲気に切り替えた場合には、S量が50ppm以下の範囲で良好な鉄損を示すのに対して、切り替えない場合には鉄損値が劣化した。最終仕上焼鈍後の地鉄中窒素量を調べたところAr雰囲気に切り替えた場合10ppm以下まで低減していたが、窒素雰囲気の場合80ppmであり、素材での60ppmから増加していた。また、最終仕上焼鈍後の地鉄中S量に関しては、どの雰囲気の場合とも、ほぼ素材中と同等量残留していた。
【0017】
一方、MgOを適用した場合、仕上焼鈍後の地鉄中Nは、Ar雰囲気で30〜50ppm残存し、窒素雰囲気で80〜100ppm残存し、MgOを適用しない場合に比べて脱窒が阻害されていた。最終仕上焼鈍後のS量に関しては、どの雰囲気の場合とも、半減以下となっていた。
【0018】
以上の実験および調査から、Nに関しては、MgOを適用しない場合850℃以上での焼鈍雰囲気をArへと切り替えることにより減少することが可能であるが、Sについては焼鈍中に低減することが出来ないことが明らかとなった。一方、MgOを適用した場合は、脱窒がむしろ阻害されて不利になるのに対して、地鉄中のS量は有利に低減されることが明らかとなった。
【0019】
以上の実験を基に、インヒビターとしてAlNを単独で含有するものを使用する一方、SおよびSeを含有するインヒビターを極力低減する成分系を用いたならば、焼鈍分離剤にMgOを適用せずとも、最終焼鈍雰囲気をArなどの非窒化雰囲気へと切り替えることにより窒素の低減が可能で、良好な鉄損が得られることを新規に知見し、本発明を完成させたものである。
【0020】
すなわち、本発明の要旨構成は次の通りである。
(1)C:0.08mass%以下、Si:1.0mass%〜4.0mass%、Mn:0.005〜3.0mass%、sol.Al:0.010〜0.030mass%およびN:30〜100massppmを含有し、SおよびSeをそれぞれ50massppm以下に低減した成分組成を有し、残部Feおよび不可避的不純物になる鋼スラブを、1200℃以上の温度に加熱してから熱間圧延して得られた熱延板に、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで脱炭を兼ねる再結晶焼鈍を行い、その後MgO主体の焼鈍分離剤を適用することなく最終仕上焼鈍を行う際、最終仕上焼鈍を1000℃以下の温度域にて行い、850℃以上の温度域では窒素含有量が50vol%未満の雰囲気とすることを特徴とする、圧延直角方向の磁束密度Bが0.7T以上かつフォルステライトを主体とする下地被膜のない方向性電磁鋼板の製造方法。
【0023】
)最終仕上焼鈍開始前のC量を0.010〜0.025mass%の範囲に制御することを特徴とする上記(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0024】
)鋼スラブが、さらにSb:0.01〜0.50mass%,Sn:0.01〜0.50mass%,Ni:0.01〜1.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%,P:0.0005〜0.50mass%およびCr:O.01〜1.50mass%のうちから選んだ少なくとも1種を含む成分組成を有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明により、焼鈍分離剤としてMgOを適用せずにフォルステライト被膜の形成を抑制することにより、圧延直角方向の低磁化力での磁束密度Bが0.7T以上の高い値が得られることについては、必ずしも明らかでないが、発明者らは以下のように考えている。
【0026】
さて、フォルステライト被膜は、鋼板表面に圧延方向に張力を付与することにより、圧延方向の鉄損の低減に寄与することがよく知られており、さらに張力付与のために、高温でガラス化する燐酸塩等を主体とした張力コーティングを上部に施すことが、方向性電磁鋼板の製造法において極めて一般的である。このフォルステライトの及ぼす張力は、鋼板の反り量を測定して評価すると、ほぼ3〜5MPa程度と見積られている。ところで、180°磁区は、圧延方向の磁化成分しか持っておらす、180°磁区の磁壁移動によっては圧延直角方向の磁化を行うことができない。フォルステライト被膜により鋼板表面に張力が付加されている場合、180°磁区構造が磁気弾性効果により安定しており、圧延直角方向への磁化が妨げられる結果、圧延直角方向の低磁化力での磁束密度が低下するものと推定される。
【0027】
通常のインヒビターを用いて、フォルステライト被膜を形成する技術では、1100℃を超える高温焼鈍でインヒビター形成成分(S、Se、N等)を純化しなければ低鉄損が得られないが、AlN単独でインヒビターとして使用し、かつMgOを適用せずにフォルステライト被膜を形成させない方法では、1000℃以下の低温で窒素の純化が可能である。すなわち、Nの純化に関しては、焼鈍雰囲気へと分解放出することにより進行するため、フォルステライト被膜を形成させない方が有利であると考えられる。また、SおよびSeの低減はフォルステライト被膜中に濃縮することにより地鉄中より吸い寄せられる機構で低減するため、フォルステライト被膜を形成させない場合には純化が進行しないものと考えられる。
【0028】
本発明による方向性電磁鋼板は、EIコア、発電機用コアまたは分割型モータ用コアのように、圧延方向および圧延直角方向の磁化特性を重視し、かつ打抜加工で作製される鉄心の大量生産に好適である。
【0029】
次に、本発明の電磁鋼板を製造する際の溶鋼成分の限定理由を以下説明する。
Cは0.08mass%を超えると、最終的に磁気時効の起こらない50ppm以下に低減することが困難になるため、0.08mass%以下に限定する。さらには、素材段階で50ppm以下に低減しておくことが、再結晶焼鈍を乾燥雰囲気で行い脱炭を省略する上で特に望ましい。
【0030】
ここで、C量が高い素材の場合、再結晶焼鈍時、最終仕上焼鈍後の平坦化焼鈍時に酸化性雰囲気で脱炭することも可能である。特に、磁束密度を向上させるために、最終仕上焼鈍前の段階でC量を0.01〜0.025mass%とすると、二次再結晶方位の選択性を向上させることができる。なお、この場合には、最終仕上焼鈍前でのC量が0.01mass%未満であると磁束密度向上効果がなく、0.025mass%を超えるとγ変態により二次再結晶粒の発達が阻害される。
【0031】
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005mass%未満であると効果がなく、一方3.0mass%を超えると磁束密度が低下するため、0.005〜3.0mass%とする。
【0032】
so1.AlはインヒビタとしてAlNを形成させるために必要であるが、含有量は0.01mass%未満であると、二次再結晶方位の先鋭度が低下して磁束密度が低下し、0.03mass%を超えると二次再結晶が不完全となり磁束密度が低下するため、0.01〜0.03mass%に制限される。
【0033】
NもインヒビタとしてAlNを形成させるために必要であるが、含有量が30ppm未満であると二次再結晶方位の先鋭度が低下し磁束密度が低下し、一方100ppmを超えると二次再結晶が不完全となり磁束密度が低下するので30〜100ppmに制限される。
【0034】
また、インヒビター形成元素であるSおよびSeについては、最終仕上焼鈍で除去が困難であり残留して鉄損を劣化させるため、それぞれ50ppm以下、好ましくは20ppm以下に低減することが有利である。
【0035】
その他の純化が困難な炭化物を形成する、Ti,VおよびNb等の不純物元素も、それぞれ50ppm以下に低減することが望ましい。
すなわち、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるためにNiを添加することができる。Niの添加量が0.01mass%未満であると磁気特性の向上量が小さく、一方1.50mass%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するため、添加量は0.01〜1.50mass%とする。
【0036】
また、鉄損を向上させることを目的として、Sn:0.01〜1.50mass%,Sb:0.01〜0.50mass%,Cu:0.01〜1.50mass%およびP:0.005〜0.50mass%のうちから選ばれる少なくとも1種を単独または複合して添加できる。それぞれ添加量が下限量より少ない場合には鉄損向上効果がなく、上限量を超えると二次再結晶粒の発達が抑制される。
【0037】
上記成分を有する溶鋼は、通常の通常造塊法または連続鋳造法にてスラブとしてもよいし、100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。その後の熱間圧延は、スラブにおいてインヒビター成分であるAlおよびNを完全固溶させ、二次再結晶を良好に発現させるような均一微細分散状態を得る必要から、1200℃以上とすることが必須である。
【0038】
次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度は850℃以上1150℃以下が好適である。熱延板焼鈍温度が850℃未満であると熱延でのバンド組織が残留し、1150℃を超えると熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎて、それぞれ製品板のゴス組織の発達が低下し磁束密度が低下するので、熱延板焼鈍温度は850〜1150℃の範囲が好適である。
【0039】
熱延板焼鈍後、必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷延を施した後再結晶焼鈍を行う。冷間圧延の温度を100℃〜250℃に上昇させて行うこと、および冷間圧延途中で100〜250℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、ゴス組織を発達させる点で有効である。
最終冷延後の再結晶焼鈍は800〜1000℃の範囲で行うことが好適である。
【0040】
ここで、Cの含有量が多い素材を用いる場合には、湿潤水素雰囲気で脱炭を同時に行ってもよい。さらに、脱炭焼鈍後C量を0.01〜0.025mass%として磁束密度を向上させることもできる。
【0041】
最終冷間圧延後、あるいは再結晶焼鈍後に浸珪法よってSi量を増加させる技術を併用してもよい。また、再結晶焼鈍時あるいは再結晶焼鈍時にアンモニア等の窒化雰囲気を用いて、窒素を増加させインヒビターを増加させて磁束密度向上を狙うこともできる。
【0042】
その後、MgO主体の焼純分離剤を適用せずに仕上焼鈍を施すことが、フォルステライトの形成を完全に排除し、良好な打抜き性及び低磁化力での圧延直角方向の良好な磁化特性、すなわちB≧0.7Tを得る上で必須である。
【0043】
最終仕上焼鈍を施すことにより、二次再結晶組織を発達させる。最終仕上焼鈍は二次再結晶発現のために800℃以上で行う必要があるが、800℃までの加熱速度は、磁気特性に大きな影響を与えないので任意の条件でよい。仕上焼鈍雰囲気は850℃以上の高温域で非室化雰囲気として鋼板地鉄中の窒素含有量を50ppm以下に低減することが特に有利である。
【0044】
仕上焼鈍後には、平坦化焼鈍を行い張力を付加して形状を矯正する。鋼板を積層して使用する場合には、鉄損を改善するために、平坦化焼鈍後、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。良好な打抜き性を確保するために樹脂を含有する有機系あるいは半有機系コーティングが望ましいが、溶接性を重視する場合には無機系コーティングを適用する。
【0045】
【実施例】
実施例1
C:0.03mass%以下、Si:3.4mass%、Sn:0.03mass%、sol.Al:0.019mass%およびNを70ppm含有し、Sを5ppm、Seを2ppm未満、そしてその他の成分を各々30ppm未満に低減した、成分組成の鋼スラブを、連続鋳造にて製造した。このスラブを、表1に示す温度で60分加熱し熱間圧延にて2.2mm厚に仕上げた。熱延板焼鈍を1050℃で60秒均熱する条件で行った。その後、130℃の温度の冷間圧延にて0.30mmの最終板厚に仕上げた。
【0046】
ついで、水素25vol%、窒素75vol%、850℃で均熱60秒の脱炭を兼ねる再結晶焼鈍を行った。その後、焼純分離剤を適用することなく露点−20℃の窒素雰囲気中で850℃までを50℃/hで加熱し、850℃以上を10℃/hでAr雰囲気で1000℃まで加熱する方法にて最終仕上焼鈍を行った。焼鈍後900℃で20秒間の平坦化焼鈍を行った後重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂、エチレングリコールを混合したコーティング液を塗布して300℃で焼き付けて製品とした。
【0047】
かくして得られた製品板の圧延方向、および圧延直角方向の磁気特性を表1に併記する。表1から、AlNを含有しS、Se量を低減した素材を用い、スラブ加熱温度を1200℃以上として、さらに最終仕上焼鈍で焼鈍分離剤を適用しないことで、圧延方向の磁束密度が高く、圧延直角方向の低磁化での磁束密度Bが0.7T以上の製品が得られていることがわかる。
【0048】
【表1】
Figure 0004306259
【0049】
実施例2
C:0.04mass%以下、Si:3.4mass%、Sn:0.05mass%、sol.Alを0.014mass%およびNを55ppm含有し、Sを8ppm,Seを3ppm,その他の成分を各々30ppm未満に低減した成分の鋼スラブを連続鋳造にて製造した。このスラブを1230℃で60分加熱し、熱間圧延にて2.2mm厚に仕上げた。熱延板焼鈍を1050℃で60秒均熱する条件で行った。その後、130℃の温度の冷間圧延にて0.30mmの最終板厚に仕上げた。ついで水素25vol%、窒素76vol%、850℃で露点を変更して、均熱60秒の脱炭量を変える再結晶焼鈍を行った。その後、焼鈍分離剤を適用することなく露点−20℃の窒素雰囲気中で850℃までを50℃/hで加熱し、850℃以上をAr雰囲気として10℃/hで1000℃まで加熱する方法にて最終仕上焼鈍を行った。焼鈍後900℃で20秒間、湿水素雰囲気により脱炭を兼ねる平坦化焼鈍を行った後、重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂、エチレングリコールを混合したコーティング液を塗布して300℃で焼き付けて製品とした。
【0050】
かくして得られた製品板の圧延方向および圧延直角方向の磁気特性を表2に示す。この表2によれば、AlNを含有しS、Se量を低減した素材を用い、スラブ加熱温度を1200℃以上とすること、最終仕上焼鈍で焼鈍分離剤を適用しないこと、さらに最終仕上焼鈍前にC量を0.01〜0.025mass%確保することで、圧延方向の磁束密度が極めて高く、圧延直角方向の低磁化力での磁束密度Bが0.7T以上の製品が得られていることがわかる。
【0051】
【表2】
Figure 0004306259
【0052】
実施例3
表3の成分からなる鋼スラブを、1250℃に加熱し熱間圧延にて3.2mm厚に仕上げた。なお、表3に示されない成分に関しては、すべて各々50ppm以下に低減した。熱延板焼鈍を1000℃で均熱60秒の条件で行った。その後、冷間圧延で0.50mmの最終枚厚に仕上げた。ついで、水素75vol%、窒素25vol%、露点−25℃の雰囲気で940℃で均熱20秒の再結晶焼鈍を行った。そして、焼鈍分離剤としてコロイダルシリカを適用し、窒素雰囲気中で850℃まで10℃/hで昇温し50時間保持した後、水素雰囲気に切り替え、1050℃まで20℃/hの速度で昇温する最終仕上焼鈍を行った。ついで、875℃での平坦化焼鈍を施した後、重クロム酸アルミニウムを主体とした無機コーティング液を塗布して250℃で焼き付けて製品とした。
【0053】
かくして得られた製品板の圧延方向、および圧延直角方向の磁気特性を表3に示す。表3によれば、AlNを含有しS,Se量を低減した素材を用い、スラブ加熱温度を1200℃以上とし、さらに最終仕上焼鈍で焼鈍分離剤を適用しないことで、圧延方向の磁束密度が極めて高く、圧延直角方向の低磁化力での磁束密度Bが0.7T以上の製品が得られていることがわかる。
【0054】
【表3】
Figure 0004306259
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、EIコア、発電機用コアまたは分割型モータ用コアのように、圧延方向および圧延直角方向の磁化特性を重視し、かつ打抜加工で作製される鉄心の大量生産に好適である、フォルステライト被膜を有しない高磁束密度の方向性電磁鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 素材S量と圧延方向の磁束密度との関係を示す図である。
【図2】 素材S量と圧延直角方向の磁束密度(BlおよびB8)との関係を示す図である。
【図3】 素材S量と圧延方向の鉄損の関係を示す図である。

Claims (3)

  1. C:0.08mass%以下、Si:1.0mass%〜4.0mass%、Mn:0.005〜3.0mass%、sol.Al:0.010〜0.030mass%およびN:30〜100massppmを含有し、SおよびSeをそれぞれ50massppm以下に低減した成分組成を有し、残部Feおよび不可避的不純物になる鋼スラブを、1200℃以上の温度に加熱してから熱間圧延して得られた熱延板に、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで脱炭を兼ねる再結晶焼鈍を行い、その後MgO主体の焼鈍分離剤を適用することなく最終仕上焼鈍を行う際、最終仕上焼鈍を1000℃以下の温度域にて行い、850℃以上の温度域では窒素含有量が50vol%未満の雰囲気とすることを特徴とする、圧延直角方向の磁束密度Bが0.7T以上かつフォルステライトを主体とする下地被膜のない方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 最終仕上焼鈍開始前のC量を0.010〜0.025mass%の範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 鋼スラブが、さらにSb:0.01〜0.50mass%,Sn:0.01〜0.50mass%,Ni:0.01〜1.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%,P:0.0005〜0.50mass%およびCr:O.01〜1.50mass%のうちから選んだ少なくとも1種を含む成分組成を有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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