JP4302819B2 - 光化学触媒、光化学分解方法及び燃料電池 - Google Patents

光化学触媒、光化学分解方法及び燃料電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機化合物を分解する光化学触媒、この光化学触媒を用いる光化学分解方法及び燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地球温暖化(CO2 )、大気汚染(NOX 、SOX 、粒子状物質等)等による地球規模での環境破壊、環境汚染が問題になっている。このような温暖化現象等がこのまま進行すれば、自然破壊にとどまらず、人類の生存も脅かすほど憂慮されている。そのため、世界的にその排出の根元となっている火力発電所や、自動車等の各種の内燃機関等に使われる石化エネルギーの代替・転換が大きくクローズアップされている。
【0003】
これらの排出削減対策として、ガソリン、重油等を燃料とする内燃機関自動車のクリーンエンジン化対応もその対策の一つであり、水素を利用する燃料電池を搭載した内燃機関−電気(燃料電池)型及び燃料電池−電気(他の電池)型等のハイブリッド自動車、又は完全電池型の電気自動車等が開発され、実用化されつつある。
【0004】
このような電気の供給方法としては、従来から、太陽電池、鉛電池、ニッケル・水素電池、リチウムイオン電池、リチウムマンガン電池等の充放型電池や、燃料電池等を挙げることができる。なかでも燃料電池は、充電を必要としないことから、低公害自動車用電池としても利点がある。
【0005】
この燃料電池の原理は、水素と空気中の酸素とを電気化学的に反応させて発電(電流を取り出す)する電池であり、この反応で排出されるものは主として水であることから、取り出した電気で電動機を駆動させることにより、従来の内燃機関自動車のようにCO2 や汚染物質を排出することがなく、エンジンのクリーン化を達成することができるものとして期待されている。
【0006】
このような燃料電池に使用される水素源としては、CO2 の削減率、取り扱い性、低廉、供給安定等の観点からメタノールやメタンガスを使用する燃料電池が主流になろうとしている。なかでも、メタノールは、常温で液体であり、取扱い性に優れ、しかも天然ガスや石炭から簡単にかつ大量に生産され、供給も安定してることから、燃料電池自動車等の水素源としても有望である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来から、触媒で有機化合物を分解させる方法、例えばメタノールを触媒で分解させて水素を発生させる方法(メタノール改質方法)が提案されている。例えば、メタノールと水蒸気の混合物を300℃の高温下に接触分解(触媒反応)させて、水素と二酸化炭素に分解(CH3 OH+H2 O→3H2 +CO2 )させる方法が知られている。
【0008】
しかしながら、このような加熱下の触媒反応では、自動車エンジン等としてのトータル・エネルギー効率が著しく低下する。
【0009】
また、メタノールと水蒸気の混合物系を用いる上記方法は、メタノールを水素と二酸化炭素に完全には変換されず、メタノールから一酸化炭素が副生され、接触分解反応(CH3 OH→CO+2H2 )を防ぐことができない。このため、生成した水素ガス中に少量の一酸化炭素が含まれることになり、例えばこのような水素を燃料電池に使用すると、一酸化炭素が白金等の触媒電極を被毒させることから、このようなメタノール改質方法による水素ガスを燃料電池に供給することは大きな問題がある。このため、生成した一酸化炭素を極力除去する必要がある。また、従来の燃料電池においては、一酸化炭素を含まない水素は、高圧ボンベか水素吸蔵合金に貯えるしか方法がなく、これらの両方法とも容器の質量が大きくなるので、実用的とは言えなかった。
【0010】
他方、従来から、有機化合物を分解させる触媒として、例えばTiO2 、SnO2 、ZnO、In2 3 、Nb2 5 、WO3 等の酸化物半導体が知られている。例えば、二酸化チタンは、光(紫外線)により励起される光反応性半導体であり、メタノール水溶液中で光化学触媒として用いて、メタノールを水素と二酸化炭素に分解させる方法も知られている。
【0011】
ところが、酸化チタンは可視光を吸収せず、紫外光しか吸収しないので、分解効率が良くなく、しかもその触媒活性が吸収される紫外光の照射下になされることから、特別に紫外線照射を必要とする。このため、例えば燃料電池用の水素供給方法としては実用性に乏しく、コスト高にもなる。
【0012】
さらに、可視光を吸収して触媒活性を示す触媒として、砒化ガリウム、硫化カドミウム等の半導体型触媒が知られている。しかし、例えばメタノール水溶液中で可視光を照射すると、これらの触媒は酸化されてガリウムイオン、カドミウムイオンとして溶出し易いため、水溶液中では使用することができない。
【0013】
上述したように、メタノール等の有機化合物を分解させる従来の触媒には未だ多くの課題が有り、特に一酸化炭素の如き副生物を生成することなしに、常温、常圧で、通常の可視光線の照射下でも有機化合物を分解させる触媒活性を充分に発揮し、また、このような触媒活性をメタノール等の有機化合物の水溶液中で安定して発揮できる光化学触媒が未だ得られていないのが実状である。
【0014】
そこで、本発明の目的は、一酸化炭素の如き毒性物質を発生させることなく、常温、常圧下で、しかも可視光照射下でも、メタノール等の有機化合物を効率よく分解させ、また水溶液(又は水性媒体)中で安定な光化学触媒を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、このような光化学触媒を使用して、上記有機化合物を常温、常圧及び可視光線照射下に、水溶液(又は水性媒体中)で効率よく分解させる光化学分解方法を提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、このような光化学触媒によって分解発生させた水素を水素源とする燃料電池を提供することにある。
【0017】
【課題を解決する手段】
本発明者は、このような実状に鑑みて、上述した従来の問題点を解消すべく鋭意検討を行った。その結果、特に、グラファイトのアーク放電によって得られるフラーレン分子を含む煤(スス)が、常温、常圧下で、しかも通常の可視光線を照射させても、効率よくメタノール等の有機化合物を水溶液中で接触分解させ得る良好な触媒活性を有していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
本発明で使用するフラーレン分子は、炭素のみからなる一連の球状炭素分子であり、炭素60個からなるC60をはじめ、それ以上の偶数個の炭素からなるいわゆる高次フラーレン(Higher Fullerenes )の総称であり、例えば12個の5員環と20個又はそれ以上の6員環を含んでいる。即ち、炭素原子数が幾何学的に球状構造を形成し得る数から選択され、炭素原子が球状に結合してなる球状炭素分子Cn(Cは炭素原子を表し、nは炭素原子数を表す)であって、それぞれC60(図2参照)、C70(図3参照)、C76、C78、C80、C82、C84等のように表されるものである。
【0019】
例えば、C60は、正20面体の頂点をすべて切り落として正五角形を出した切頭20面体と呼ばれている多面体構造を有し、図2に示すように、この多面体の60個の頂点をすべて炭素原子が占めるものであり、サッカーボール型の分子構造を有している。同様にC70、C76、C84等は図3に示すようにラクビーボール型の分子構造を有している。
【0020】
本発明者は、このような基本構造を有するフラーレン炭素分子が、太陽光などの白色光線(可視光線)の照射によっても簡単に励起されて活性になることに着目し、例えば、可視光線の照射で励起されたC60(後述する図1(A)に示す励起三重項状態のC60)等が、メタノール等の有機化合物の光化学分解触媒として優れた効果を発揮することを見出し、C60等のフラーレン分子の光触媒能に基づく酸化・還元作用で上記有機化合物を効率良く目的物へと分解させ、本発明の上述した目的を達成できることをつき止めたのである。
【0021】
即ち、本発明は、Cn(但し、nは幾何学的に球状炭素化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を含有する煤からなり、非共有電子対を有する原子と水素原子とを分子内に含む有機化合物(例えばメタノール:以下、同様)を光照射下に常温、常圧下で分解するのに用いられる光化学触媒(以下、本発明の触媒と称する。)に係るものである。
【0022】
また、本発明は、Cn(但し、nは幾何学的に球状炭素化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を含有する煤を光化学触媒とし、この光化学触媒の存在下に、非共有電子対を有する原子と水素原子とを分子内に含む有機化合物を光照射下に常温、常圧下で分解する光化学分解方法(以下、本発明の方法と称する。)を提供するものである。
【0023】
更に本発明は、負極と電解質と正極との積層構造からなる燃料電池において、Cn(但し、nは幾何学的に球状炭素化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を含有する煤からなる光化学触媒が配置され、非共有電子対を有する原子と水素原子とを分子内に含む有機化合物を前記光化学触媒に接触させた状態で光照射して前記有機化合物を常温、常圧下で分解し、これによって生成した水素を前記負極に供給するように構成したことを特徴とする燃料電池(以下、本発明の燃料電池と称する。)も提供するものである。
【0024】
本発明の触媒は、C60等の球状フラーレン分子を含有するカーボン質の煤からなる光半導体型の光化学触媒である。このフラーレン分子は、従来の酸化チタン等の光触媒作用とは大きく異なり、通常の白色光(可視光)の照射(勿論、紫外線光の照射でも)で励起され、この励起状態のフラーレン分子に接触する原子、分子、化合物等を活性化し、酸化又は還元する作用をなすことを特徴としている。
【0025】
また、本発明の触媒で有機化合物を分解させる接触(触媒)反応は、常温、常圧下に効率良く達成され、しかもその分解生成物中には一酸化炭素が全く含有されないことを特徴としている。これは、従来のような高温を必要とする触媒反応とは異なり、本発明の触媒の顕著な特徴である。例えば、得られた分解生成物を、白金等の貴金属担体又は触媒電極を使用するような用途に供しても、一酸化炭素によるこれらの貴金属を被毒させる心配が全くないものである。
【0026】
さらに、本発明の触媒は、このような光照射下の光半導体的な作用のもとに、水を介在させることにより触媒反応系を安定化させ(ガス中ではラジカル反応で副生物が生成してしまう。)、有機化合物を十分に目的物へ分解させることができ、また水溶液中でも溶出せずに安定である。従って、有機化合物を、水溶液の如き水性媒体(有機化合物が水性媒体を兼ねる場合もある。)中で分解させ、例えば、メタノール等の如く酸素、窒素、イオウ等の非共有電子対を有する原子を含む有機化合物を十分に分解させ、効率よく水素を発生させることができる。これにより、燃料電池の水素源として有機化合物、特にメタノールが使用可能となることは大きな利点である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の触媒(フラーレン分子含有煤)による有機化合物の分解作用について、更に具体的に説明する。
【0028】
本発明の触媒であるC60等のフラーレン分子は、ダイヤモンド、グラファイトに次ぐ第3の結晶質炭素である。ダイヤモンドやグラファイト分子を構成している炭素原子の立体構造(炭素原子の結合状態)は、ダイヤモンドは4本の炭素結合鎖で3次元的な構造をしており、グラファイトは3本の炭素結合鎖で2次元的な構造している。従って、それぞれの分子構造の炭素原子の原子価状態が、それぞれsp3 、sp2 である。このような原子価状態を持つ純粋なダイヤモンドは不導体であり、グラファイトは2次元的に金属である。
【0029】
一方、図2及び3に示すような構造を有するフラーレン分子の立体構造(炭素原子の結合状態)は、その炭素原子の原子価状態がsp3 とsp2 との中間の状態にあり、その性質もダイヤモンドとグラファイトの中間の半導体的導電性を示すものである。このような原子価状態にあるため、フラーレン分子は光照射のもとに簡単に励起され、その励起三重項状態(図1(A)参照)に基づく高い触媒活性を発揮するものである。
【0030】
即ち、図1(A)から明らかなように、例えば固体状態のC60からなるフラーレン分子は、バンドギャップが1.7eVであり、基底一重項状態(1.1V)にある電子は、波長650nm以下(例えば600nm)程度の光を吸収して励起されて励起一重項状態(−0.6V)となり、この励起一重項状態から項間交差(項間交叉)を経て励起三重項状態になるが、ここから基底状態への遷移は禁則であるため、この励起三重項状態の寿命は長い。このように励起三重項状態の寿命が長いことは、多彩な化学反応を実現させることに密接に関与するものと言える。
【0031】
本発明においては、このように可視光線を照射されて励起したフラーレン分子の電子準位(電子レベル)が安定な励起三重項状態を呈することに着眼したのである。
【0032】
本発明においては、有機化合物と触媒との接触系において、触媒種のフラーレン(C60)の価電子帯にある電子は、波長600nm程度(可視光)の照射光によって導電子帯へ励起され、価電子帯に正孔を残すが、この正孔が還元剤(本発明ではメタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸)を電子引抜きにより酸化し、一方、励起された電子は酸化剤(本発明では水素イオン)を還元するものと考えられる。従って、フラーレン分子が、光照射で励起されて、このように酸化部位と還元部位を発現することが、有機化合物を連鎖的に分解させる触媒作用になっているものと言える。
【0033】
そこで、本発明において代表的な有機化合物の分解例として、非共有電子対を有する原子が酸素原子であるメタノールの水溶液について、上記する酸化部位及び還元部位等の関与によって進行する分解反応を下記(a)〜(g)に示す反応式に基づいて概略的に説明する。
【0034】
本発明において、フラーレン分子を含有する煤からなる本発明の触媒は、常温、常圧下で熱的に安定している。この触媒とメタノール水溶液とが接触している固−液不均一系に可視光線(hν)が照射される。この照射により、上述したように励起したC60によってメタノールは下記(a)のように電子を引き抜かれ、ラジカルとなる。このラジカルは不安定であり、ラジカル連鎖又は会合等を介して下記(b)〜(g)に示す反応式で表せる反応が逐次的且つ並発的に進行し、水素イオンと電子を放出して中間化合物であるホルムアルデヒド(介在する水と接して容易にホルマリンになる)と水素に分解し、更にC60の電子引き抜きによりホルムアルデヒドはギ酸と水素に、ギ酸は二酸化炭素と水素に分解される。その結果、本発明の光化学触媒によって、メタノール水溶液から水素(H・の会合による)と二酸化炭素とを効率良く生成することができる。
【0035】
【化1】
Figure 0004302819
なお、上記反応式において、hνは光照射を表し、H・、CH3 O・、CHO・及びHCOO・はそれぞれラジカル状態を表し、e- は励起C60によって引き抜かれた電子を表し、H+ はプロトン(水素イオン)を表している。また式(c)において、CHO・(H2 O)は、中間体として生成したHCHO(ホルムアルデヒド)に、この系に介在する水が吸収(会合)したホルマリンが励起されたラジカル状態を表している。このことは、本発明において、有機化合物の分解反応が、効率よく安定して進むために、水の関与が重要であることを表すものであり、後述する実施例に示すように、メタノールが本発明の触媒で接触分解されて水素を発生するこの固−液不均一系に水が介在している事実とよく対応している。
【0036】
また、上記したラジカルを経由した反応は、同様にホルムアルデヒドの水溶液(またはホルマリン)においても上記(c)〜(g)に示すように逐次的且つ並発的な光化学反応が進行する。さらにギ酸等のカルボン酸類は、上記(e)〜(g)に示すように光照射下で容易にラジカルを生成し、このラジカルは簡単に二酸化炭素(CO2 )に分解すると共に、ラジカル連鎖で生じた2個のH・は簡単に会合して水素となる。
【0037】
上記したように、本発明の触媒を用いた光化学分解反応において、フラーレン分子の価電子帯の正孔がメタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸から電子を引き抜く能力(酸化作用)があり、電子を引き抜かれて生じたそれぞれのラジカルは極めて不安定であり、また導電子帯に励起された電子も水素イオンを還元して水素ラジカルを経て水素を生じる能力(これは図1(B)のようにPtなどの貴金属触媒担持体の表面で生じ易い。)があることから、それぞれのラジカル及び水素イオンは安定化方向としてホルムアルデヒド、ギ酸及び水素になる。従って、結果的に本発明の方法による触媒反応は、上記(c)〜(g)を経由することになる。
【0038】
以上の(a)〜(g)式から明らかなように、例えばメタノールの水溶液を本発明の触媒で分解させることにより、ホルムアルデヒドを生成し、このホルムアルデヒドはギ酸へ酸化されて水素と二酸化炭素に転化するため、従来の触媒を使用する方法では避けられなかった一酸化炭素(CO)の副生を生じることなく、目的とする水素が生成する。また、本発明においては、理論的に水1分子が関与して分解されることから、メタノール1分子(CH3 OH)から、3分子の水素ガス(3H2 )と1分子の二酸化炭素(CO2 )が生成することになる。
【0039】
以上から、本発明の触媒を用いてメタノール水溶液を分解させ、生成した水素ガスを、例えば燃料電池の水素源として供給すれば、燃料電池の水素極(負極)に用いる白金触媒電極等が一酸化炭素により被毒されることもなく、水素の供給効率もよいことから、後述する本発明の触媒を用いた光化学分解方法を燃料電池の水素供給法とする方法は、従来のメタノール改質法に比べて極めて有利であると言える。
【0040】
また、本発明の触媒において、メタノールが酸化されて二酸化炭素が発生する酸化部位(C60)と水素イオンが還元されて水素ガスを発生する還元部位(活性炭、白金など)の位置を物理的に分離すると、それぞれの部位から純度の大きな二酸化炭素と水素を得ることができる。純度の大きな水素を燃料電池に使用できると、燃料電池の電解質にアルカリ水溶液を用いた高効率な電池を構成することができる利点がある。
【0041】
本発明の方法に基づく反応は、特に後述するグラファイトのアーク放電で生成したフラーレン含有煤に特有であり、C60蒸着膜やフラーレン分離後の煤では触媒活性がない。またC60を活性炭に吸着させた物質も触媒活性がない。C60を活性炭に吸着させただけであると、C60が水をはじいてしまい、光照射時にC60が活性炭から遊離する。フラーレン含有煤の場合、C60が煤中に捕獲され、かつ煤はカルボキシル基などの官能基の存在により水に濡れ易いので、C60が遊離しないで効率よく触媒活性を発揮するものと考えられる。
【0042】
本発明の触媒、方法及び燃料電池においては、上記した非共有電子対を有する原子が酸素(O)であるメタノール、ホルムアルデヒド及びギ酸に限定されるものではなく、その他のエタノール等のアルコール類、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、酢酸等のカルボン酸、スルホン酸等の有機酸類、更にはエステル類、ケトン類、アミン類等も適宜好適に使用されるものである。即ち、非共有電子対を有する原子として、酸素原子(O)、窒素原子(N)及び硫黄原子(S)の少なくとも1種を含み、かつ水素原子を分子内に有する有機化合物の分解に適宜好適に使用されるのである。
【0043】
本発明の触媒で光化学分解させる有機化合物において、非共有電子対を有する原子が酸素(O)である、アルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類、ケトン類の有機化合物を分解させた場合には、その分解ガスは、水素(H2 )と酸化物の二酸化炭素(CO2 )である。中でも、この分解方法によって水素を効率よく得る目的においては、メタノールを分解させることが好ましい。
【0044】
また、非共有電子対を有する原子が硫黄原子(S)であるスルホン酸等の有機酸やスルホン酸エステルの有機化合物を分解させた場合には、水素、酸化物として炭酸ガスやSOX 等が生成する。
【0045】
また、非共有電子対を有する原子が窒素原子(N)であるアミン類やニトロ化物の有機化合物を分解させた場合には、水素、酸化物として炭酸ガスやNOX 等が生成する。
【0046】
また、これらの他、本発明による有機化合物の分解により、既に上述したように分解過程で各種のラジカルが生成することから、これらのラジカルは不安定で、直ちにラジカルが連鎖又は会合して安定化しようとする。その過程で、特にラジカル会合する過程で、水素等の有用物以外に、必要に応じて他の有用化合物を生成させることもできる。
【0047】
また、本発明の触媒は、上述した作用をより効果的に発揮する上で(即ち、有機化合物を分解させる触媒活性を促進又は安定化させるために)、必要に応じて、上記する酸化部位及び還元部位に有効に作用する物質、従ってそれ自体がフラーレン分子によって酸化又は還元を受け易い物質を助触媒として添加することができる。
【0048】
この助触媒は、光照射で励起したフラーレン分子と有機化合物とが接触する固−液不均一系において、上述した作用によって有機化合物が分解される際には、電子の引抜き、水素イオンの還元が必要であり、このような触媒作用をする励起フラーレン分子の働きを促進又は安定に持続させる効果を示すものである。
【0049】
即ち、フラーレン自身によって酸化・還元を受けやすい物質は、フラーレンの助触媒として効果的である。フラーレン(C60)が光照射されて生成する正孔の酸化電位が1.1Vであるから、例えば酸化還元電位が1.09V(標準水素電極)である臭素/臭化物イオンは、有機化合物に対して酸化剤として作用し、その過程で、その臭化物イオンは励起C60によって、光酸化されて臭素になり、臭素は水溶液中の有機化合物を酸化して臭化物イオンに戻る。従って、C60がメタノール等から電子を引き抜く反応は一般に遅いので、臭素/臭化物イオンを反応系に介在させることによって、励起C60が有機化合物から電子を引き抜く速度(即ち、酸化作用)を高める働きをする。
【0050】
本発明において、常温で液体である臭素( Br2 )は水によく溶けて、その水溶液である臭化水素酸は、水溶液中でHBrO、H+ 、Br- になっている。また、HBrOは太陽光で容易にH+ 、Br- に解離して酸素を発生させる程に、有機化合物に対して酸化剤として作用することがよく知られている。従って、常に電子のやり取りの中で、臭素は水性媒体中で、常にBr2 /Br- なる組合わせが存在することから、本発明における助触媒として有効なのである。
【0051】
また、常温で固体で昇華性が高い沃素(I2 )は水にはほとんど溶けないが、アルコールによく溶ける。従って、アルコール水溶液を分解する際には、沃素を添加すれば沃素/沃化物イオンの組合わせが得られる。
【0052】
また、このような作用をする臭素の他に、有機化合物の水溶液中で、電子のやり取りをして有機化合物に対して酸化剤として存在することができるものとして、例えばCe4+/Ce3+、Co3+/Co2+、Mn3+/Mn2+等の遷移金属イオンの組合わせも助触媒として使用することができる。
【0053】
また、他の助触媒として、既に上記したように有機化合物が分解する過程で水素や水素イオン(又はプロトン)が介在するため、同様に上記する本発明の触媒の触媒活性を促進又は安定させて持続させるためから、上記した固−液不均一系に、予め還元による水素の発生を促進させる物質として、水素に対して活性であって、水素又は水素イオンを吸蔵しやすい例えば白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム等の貴金属や、ニッケル等の金属を介在させてもよい。
【0054】
上記の助触媒の含有量は、有機化合物種やその分解目的により異なり、特に特定することができないが、通常、一般的に極めて微量でよく、上記フラーレン含有煤100mg当たり、1〜30meq/100mg、更には1〜10meq/100mgの範囲で含有させることが好ましい。
【0055】
これらの助触媒をフラーレン含有煤に含有させる方法としては、従来から一般的に公知である含浸法によって、所定量の上記したハロゲン種や遷移金属イオン種を担持させることができる。臭素は、水によく溶けることから、その臭素水を含浸させればよい。一方、沃素は、ほとんど水に溶けないが、アルコールによく溶けることから、沃素のアルコール水溶液を含浸させればよい。また、Ce4+/Ce3+、Co3+/Co2+及びMn3+/Mn2+等の遷移金属イオンは、それぞれその金属塩水溶液を含浸させる方法でよい。
【0056】
なお、これらのハロゲン/ハロゲン化物におけるハロゲン化物として、例えば、KBr、KI、KBrO3 、KIO3 等の塩も、アルカリ金属イオンが光化学触媒の触媒毒にならない限りにおいて、使用可能である。
【0057】
本発明の触媒は、好ましくは、炭素含有電極を用いて、ヘリウム等の不活性雰囲気下のアーク放電法によって得られたC60、C70などのフラーレン分子を含有する煤が使用される。
【0058】
その代表的製法として、例えば図4に示すように、炭素電極(グラファイト電極)を用いたアーク放電法を述べると、一対のグラファイト製の対向グラファイト電極1、1からなるカーボンアーク部を有する真空容器2内に、例えばシリコン基板3を配し、この容器2の空気をガス排気孔4から真空ポンプ5で排気した後、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス6をガス導入孔7から封入し、次いで容器2の内圧をほぼ真空状態に調節する。
【0059】
次いで、一対のグラファイト電極1、1を対向させ、電源8から所定の電圧及び電流(直流又は交流)を供給し、電極端部をアーク放電状態に保持することにより、グラファイト電極1、1から気化した炭素を、フラーレンを含有する煤状物のフラーレン含有煤(フラーレンスーツ)としてシリコン基板3上に堆積させ、この基板上にフラーレン含有煤を得る。
【0060】
そして、冷却後、取り出されたフラーレン含有煤は、通常、C60及び/又はC70を主成分とする球状フラーレン分子が煤(アモルファス・カーボンと考えられる。)に付着されているものである。このようにして得られたフラーレン含有煤は、通常、C60を主成分とし、これにC70が混入した混合物又はそれらの単独物を含有している。
【0061】
本発明では、これらのC60及びC70等のフラーレン分子が煤中に含まれる割合は特に限定されないが、その割合は2〜5重量%とするのがよく、また後述する実施例からも明らかなように、重量比で表してC60:C70=10:0〜9:1のものであれば、適宜使用することができる。
【0062】
また、上記の製造方法で得られるフラーレン含有煤は、製造条件によっても異なるが、通常、上記煤中の含有量が上記範囲より少ないと本発明の目的とする触媒活性を充分発揮させることができず、また上記範囲より多いとフラーレン含有煤として水性媒体中での安定性が低下し易くなる。
【0063】
さらに、このフラーレン含有煤を形成しているアモルファス・カーボンは、通常、BET法比表面積が100〜200m2 /gの多孔質である。本発明の触媒は、多孔質アモルファス・カーボンに球状フラーレン分子が均一に付着したフラーレン含有煤であるのがよい。
【0064】
従って、本発明においては、フラーレン分子を付着しているフラーレン含有煤はそのままで、上述したように有機化合物を分解させる本発明の触媒として触媒活性を有していることから、フラーレン分子は精製することなく、フラーレン含有煤を、本発明の触媒として使用する。これは、コスト的にも低廉であることから経済的にも有利である。
【0065】
なお、上記した白金等の貴金属を添加したフラーレン含有煤は、白金等の貴金属を添加したグラファイト電極をヘリウム中でアーク放電させ、貴金属担持フラーレン含有煤として得ることができる。
【0066】
本発明の触媒の利用形態としては、液への懸濁をはじめ、ガラスウール等の多孔質体に含浸させた形態であってよい。
【0067】
即ち、本発明の触媒は、有機化合物及びその水性媒体中にそのまま分散(懸濁)させて使用されてよいが、光照射下に触媒と有機化合物との接触効率を高める点から、本発明の触媒を担持させた光化学触媒担持体を使用することができる。
【0068】
本発明においては、上記したフラーレン分子含有煤の他、上記した各種の助触媒を含有するフラーレン含有煤を適宜担持させることができる。その担持体として、ガラスウール等の各種の繊維、その繊維からなる織布、編布及び不織布、各種の金属、セラミックス、粘土鉱物等からなるハニカム、パイプ、リング、粒状物、更にはシリコン基板を挙げることができる。
【0069】
これらの中でも接触面積が大きく、圧損が少ないという点で、ハニカムやリングが優れている。また、低廉で、担持させやすく、接触性も良好であるという点で、繊維状物が好適であり、更には水素源有機化合物としてのメタノール等の水性媒体中に分散させて使用する点では、分散性の利点から粉体や粒状物が好適である。
【0070】
本発明の燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させて、起電力(又は電流)を取り出す方法において、水素極(負極)−電解質−空気極(陽極)の構成は、従来から一般的に公知のものであり、本発明においては、この負極に供給する水素が、好ましくは、その水素源として上記した本発明の触媒を用いるメタノールの光化学分解方法によって得られた水素を前記負極に供給すると共に、発生した電子を負極から取出して起電力とする。陽極に供給する酸素は一般に空気として供給され、電解質を介して陽極側へ導びかれた水素イオンと酸素イオンとして反応することにより、水を生成する。
【0071】
本発明の燃料電池においては、例えば水素源にメタノール水溶液を使用するが、メタノールは水溶液として取り扱い性、安全性に優れ、これを負極に接して配してよく、或いは有機化合物を分解させる光化学分解部で発生させた水素を負極に導びいてもよい。
【0072】
そして、一酸化炭素を含まない水素が供給されることから、電池の電極(負極)などに対して、従来のように一酸化炭素による被毒が起こらない等の利点も有している。なお、本発明においても、従来の燃料電池と同様に、負極側から炭酸ガス、陽極側からは、上記電気化学反応で副生する水と供給された空気中の窒素がそれぞれ排出される。
【0073】
本発明の燃料電池は、例えば図5(A)とその拡大図(B)に示すように、水素極(負極)9に出来るだけ接して、フラーレン分子を含有する煤10を懸濁した液(又は煤を含浸したガラスウール)11からなる水素発生部12を配してよい。また、図6に示すように、水素発生部12を水素極9から離し、ここへ発生した水素を導いてもよい。
【0074】
なお、図中の13は液体又は固体電解質(H3 PO4 、パーフルオロスルホン酸樹脂等のリン酸型、アルカリ型、固体電解質型、及び固体高分子型等)、14は陽極である。
【0075】
なお、燃料電池の水素極(負極)−電解質−空気極(陽極)の組合わせ方としては、縦型でも横型でもよく、特に限定されず、その使用目的及び使用方法によって適宜選ぶことができる。
【0076】
本発明の燃料電池において、フラーレン分子含有煤を光化学触媒とし、メタノール等を接触分解させて水素を発生させるに際し、触媒とメタノール水溶液との固−液不均一系に照射される光エネルギー源として、好ましくは、波長が400〜700nmの太陽光及び白色光等の可視光線が使用される、必要に応じて波長が400〜200nmの紫外線が単独又は可視光線に組合わせて使用されてよい。光源は、上記燃料電池で得られた起電力で駆動してもよい。
【0077】
本発明の燃料電池は、1ユニット当り、1V程度の起電力が得られるが、図5の如きユニットを積層すれば、積層数に比例した起電力が得られ、自動車用として十分実用化できる。
【0078】
なお、本発明の触媒は、上記したように、有機化合物の分解触媒用として有効に利用され、ガスとして水素等の有効成分を生成させる他に、その接触分解過程で各種のラジカルを生成させることから、分解過程で有効な中間化合物を合成する触媒としても利用可能である。更には、本発明の触媒は、有機化合物等を検知するセンサーとしても利用され得るものであり、また、上記した燃料電池用に水素供給する他に、例えば有機化合物を含有する各種工業廃水を浄化させる曝気処理用としても使用可能である。
【0079】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に制限されるものではない。
【0080】
実施例1
図4に示した装置を使って、有機化合物を分解させるフラーレン分子含有煤からなる本発明の光化学触媒を調製した。
【0081】
ヘリウム100mmHgの雰囲気下でグラファイト電極間1−1間でアーク放電(90A)を行うと、グラファイト電極から気化した炭素が冷却されて、フラーレン分子及びアモルファス・カーボンからなるフラーレン分子含有煤が容器2の内壁上に付着する。これを捕集して得られたフラーレン分子含有煤は、C60とC70からなるフラーレン分子が、この煤中に5重量%含有され、重量比で表してC60:C70=9:1であった。
【0082】
この煤50mgを臭化水素酸2mlと混合し、この混合物に、安定剤としてメタノールが含まれている市販のホルマリン溶液5mlを加え、得られた混合分散液(懸濁液)を透明容器内に入れた。そして、この容器に対し、キセノンランプ(500W)で光強度が167mW/cm2 になるようにして波長400〜700nmの可視光線を30分間照射した。
【0083】
次いで、容器内の液をジーエルサイエンス社製のガスクロマトグラフィーGC390Bで測定した。使用したカラムの充填剤はPorapak T (ポリ[メタクリル酸エチレングリコールエステル])であり、検出器TCDで測定した。測定結果を下記の表1(数字は濃度:単位はモル%)に示す。
Figure 0004302819
【0084】
このように、光照射後にメタノールとホルムアルデヒドの濃度が減少したことがわかる。ギ酸の生成は認められないが、これは、ギ酸がメタノールやホルムアルデヒドより酸化されやすいため、反応系に蓄積することはないためと考えられる。
【0085】
また、ガスの発生が認められたが、これは二酸化炭素が主成分であることが確認され、また定性的に水素ガスが存在することを確認できた。即ち、生成ガスを石灰水中に吸収させたところ、石灰水は次第に白濁したことから、発生したガスが二酸化炭素であることが確認され、また、残りのガスは燃焼テストから定性的に水素ガスであることが確認された。
【0086】
実施例2
実施例1において、臭化水素酸を添加しない以外は同様にしてメタノール含有ホルマリンの光化学分解を行ったところ、下記の表2に示す結果が得られた。
Figure 0004302819
【0087】
本例によっても、メタノール及びホルムアルデヒドが一定量減少することが分かる。
【0088】
実施例3
実施例1において、フラーレン含有触媒中に助触媒として遷移金属粉末である白金粉末を含有した光化学触媒を調製するために、図4に示す装置において、予めこれらの白金金属粉末を含有させたグラファイト電極を用いて、同様の不活性雰囲気下でアーク放電させて、白金を含有するフラーレン分子含有煤を得た。
【0089】
このようにして調製したフラーレン含有煤中に含まれるC60とC70のフラーレン分子の煤中の含有量は、殆ど実施例1と変わっていなかった。なお、この煤中には、化学分析した結果、煤100mg当たり、白金の金属粉末が25meq/100mg含有されていた。
【0090】
次いで、この煤を光化学触媒として、実施例1と同様にしてメタノール含有ホルマリンを光照射下に分解させた。その結果を下記の表3に示す。
Figure 0004302819
【0091】
比較例1
実施例1において、フラーレン含有煤の代わりに精製フラーレン(C6099.5%)50mgを使用して同様に光化学分解を行った。しかし、光照射の前後で、メタノールとホルムアルデヒドの濃度は変化しなかった。
【0092】
このように、フラーレンのみでは、疎水性であることから、水溶液中でメタノールやホルムアルデヒドを酸化することはできないことが分かった。
【0093】
比較例2
実施例1において、フラーレン含有煤の代わりに、精製フラーレン(C6099.5%)20mgを吸着させた活性炭100mg(和光純薬社製のNorit−SX3)を使用して同様に光化学分解を行った。フラーレンの吸着は、フラーレンをトルエン10mlに溶解した後、活性炭を投入し、加熱してトルエンを蒸発させて行った。しかし、光照射と同時にC60が活性炭から遊離して水面に凝集し始めた。結果として、光照射の前後で、メタノールとホルムアルデヒドの濃度は変化しなかった。
【0094】
このように、活性炭にC60を吸着させただけでは、光照射で簡単にC60が遊離してしまうので、最初から遊離のC60を使用した比較例1と同じ結果となり、メタノールとホルムアルデヒドを酸化することはできないことが分かった。
【0095】
【発明の作用効果】
本発明によれば、C60等の球状フラーレン分子を含有する煤は、光半導体型の光化学触媒として、従来の酸化チタン等の光触媒作用とは大きく異なり、通常の白色光(可視光線)の照射でも励起されて、この励起状態のフラーレン分子によって有機化合物を接触分解させることができる。
【0096】
また、このフラーレン分子を含有する煤により有機化合物を分解させる接触(触媒)反応が、常温、常圧下に効率よく達成され、しかもその分解生成物中には一酸化炭素が全く含有されない。これは、従来のような高温での触媒反応とは異なり、例えば得られた分解生成物を、白金等の貴金属担体又は触媒電極を使用するような用途に供しても、一酸化炭素によるこれらの貴金属を被毒させる心配が全くない。
【0097】
さらに、このような光照射下の光半導体的な作用のもとに、水を介在させることにより触媒反応系を安定化させ、有機化合物を分解させることができ、また水溶液中でも触媒は溶出せずに安定である。
【0098】
このように、メタノール等の如く非共有電子対を有する原子を含む有機化合物を効率よく接触分解させて水素を発生させ、これを燃料電池の水素源として用いることができるため、燃料電池の実用化に向けて大きな利点となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づくフラーレン分子(C60)の光照射時の励起状態を表す図である。
【図2】同、フラーレン分子(C60)の炭素原子の結合状態を表す図である。
【図3】本発明に基づくフラーレン分子(C70)の炭素原子の結合状態を表す図である。
【図4】本発明の光化学触媒(フラーレン分子含有煤)を製造するアーク放電法による製造装置の概略断面図である。
【図5】本発明の光化学分解法でメタノールを分解させて生成する水素を用いる燃料電池の概略図である。
【図6】本発明の光化学分解法でメタノールを分解させて生成する水素を用いる他の燃料電池の概略図である。
【符号の説明】
1…グラファイト電極、6…不活性ガス、8…直流電源、
9…負極(水素極)、10…フラーレン分子含有煤、11…懸濁液、
12…水素発生部、13…電解質、14…陽極(空気極)

Claims (21)

  1. n(但し、nは幾何学的に球状炭素化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を含有する煤からなり、非共有電子対を有する原子と水素原子とを分子内に含む有機化合物を光照射下に常温、常圧下で分解するのに用いられる光化学触媒。
  2. 前記フラーレン分子がn≧60の偶数の炭素数を有し、前記煤中に2〜5重量%含有されている、請求項1に記載した光化学触媒。
  3. 可視光線及び/又は紫外光線の照射下に触媒活性を呈し、水性媒体中で安定である、請求項1に記載した光化学触媒。
  4. 前記有機化合物の分解時にその酸化を促進する酸化還元電位を示す助触媒として、ハロゲン/ハロゲン化物イオン、又は遷移金属イオンが添加されている、請求項1に記載した光化学触媒。
  5. 前記有機化合物の分解時に還元による水素の発生を促進させる物質として、貴金属又はニッケルが添加されている、請求項1に記載した光化学触媒。
  6. 前記フラーレン分子を含有する煤を懸濁した液、又は多孔質体へ含浸させた形態をなす、請求項1に記載した光化学触媒。
  7. n(但し、nは幾何学的に球状炭素化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を含有する煤を光化学触媒とし、この光化学触媒の存在下に、非共有電子対を有する原子と水素原子とを分子内に含む有機化合物を光照射下に常温、常圧下で分解する光化学分解方法。
  8. 前記フラーレン分子がn≧60の偶数の炭素数を有し、前記煤中に2〜5重量%含有されている、請求項に記載した光化学分解方法。
  9. 可視光線及び/又は紫外光線の照射下に水性媒体中で前記有機化合物を分解する、請求項に記載した光化学分解方法。
  10. 分解時の前記有機化合物の酸化を促進する酸化還元電位を示す助触媒として、ハロゲン/ハロゲン化物イオン、又は遷移金属イオン前記光化学触媒に添加する、請求項に記載した光化学分解方法。
  11. 前記有機化合物の分解時に還元による水素の発生を促進させる物質として、貴金属又はニッケルを前記光化学触媒に添加する、請求項に記載した光化学分解方法。
  12. 前記フラーレン分子を含有する煤を懸濁した液、又は多孔質体へ含浸させた形態をなす前記光化学触媒を使用する、請求項に記載した光化学分解方法。
  13. 負極と電解質と正極との積層構造からなる燃料電池において、Cn (但し、nは幾何学的に球状炭素化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を含有する煤からなる光化学触媒が配置され、非共有電子対を有する原子と水素原子とを分子内に含む有機化合物を前記光化学触媒に接触させた状態で光照射して前記有機化合物を常温、常圧下で分解し、これによって生成した水素を前記負極に供給するように構成したことを特徴とする燃料電池。
  14. 前記光化学触媒が前記負極に接して配置されている、請求項13に記載した燃料電池。
  15. 前記有機化合物を分解させる光化学分解部で発生させた水素が前記負極に導かれる、請求項13に記載した燃料電池。
  16. 前記フラーレン分子を含有する煤を懸濁した液、又は多孔質体へ含浸させた形態をなす前記光化学触媒が使用される、請求項13に記載した燃料電池。
  17. 発生した水素を水素イオンとして負極に供給すると共に電子を電流として取出し、かつ、前記水素イオンを電解質を通して正極に導き、ここで酸素を前記電子により還元して前記水素イオンと反応させ、水を生成させる、請求項13に記載した燃料電池。
  18. 前記フラーレン分子がn≧60の偶数の炭素数を有し、前記煤中に2〜5重量%含有されている、請求項13に記載した燃料電池。
  19. 可視光線及び/又は紫外光線の照射下に水性媒体中で前記有機化合物を分解する、請求項13に記載した燃料電池。
  20. 分解時の前記有機化合物の酸化を促進する酸化還元電位を示す助触媒として、ハロゲン/ハロゲン化物イオン、又は遷移金属イオンが前記光化学触媒に添加されている、請求項13に記載した燃料電池。
  21. 前記有機化合物の分解時に還元による水素の発生を促進させる物質として、貴金属又はニッケルが前記光化学触媒に添加されている、請求項13に記載した燃料電池。
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