JP4302210B2 - 難燃性被覆断熱管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性被覆断熱管に関し、さらに詳しくは燃焼時にハロゲンガスの発生がなく、難燃性、断熱性、圧縮復元性が良好な難燃性被覆断熱管に関する。
【0002】
【従来の技術】
給水・給湯用の配管材や空気調整装置の冷媒配管材には、一般に、銅管、鋼管、ステンレス管、アルミニウム管などの金属管が用いられている。これらの金属管は、その使用に際しては金属管の外周を断熱材で覆った被覆断熱管として用いられている。
図1に示すように、被覆断熱管は、金属管1の外周に、断熱層2、その上に必要に応じてプラスチックシートなどからなる保護層2が設けられた構造となっている。断熱層としては、ロックウールやグラスウール等の無機系断熱材、または、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン等の有機系断熱材などが用いられている。
【0003】
無機系断熱材は、配管施工現場にて配管済みの金属管の外周に取り付けられることが多い。取り付け作業は配管施工現場の限られたスペースで行われるため作業性に劣り、配管施工のコストアップの原因にもなる。
【0004】
それに対して、有機系断熱材は金属管への装着が容易であり、あらかじめ金属管に装着して出荷することも可能である。しかし、有機系断熱材は易燃性であるため、一度燃え上がると管の断熱材を伝って延焼するおそれがある。そこで、部屋と部屋との間などの防火区画間にまたがって配管する場合には、被覆断熱管の区画間の壁、床を貫通する部分の断熱材をいったん取り外して、隙間に難燃シーリング材を充填することが行われている。
【0005】
一方、このような作業を簡略化可能な、難燃性を付与した有機系断熱材を用いた被覆断熱管としては、無機物が高充填された発泡体を断熱材とした断熱管が提案されている。ところが、無機物が高充填された発泡体を、断熱性を高めるために高発泡倍率とすると、機械的強度が低下するためにその使用中に断熱層が収縮して断熱性が低下してしまうという問題があった。このような問題を解決した発泡体を断熱層として用いた断熱パイプカバー(特開平7−27284号)が提案されている。
【0006】
ところが、この断熱パイプカバーは難燃剤としてハロゲン系化合物を必須としているために、燃焼時にハロゲンガスが発生するという問題がある。また、その他、この断熱パイプカバーに表面保護のために樹脂フィルムを積層する際、加熱ロールを用いて断熱層の発泡体と樹脂フィルムとを圧着すると、発泡体の気泡がつぶれてしまい、断熱性が低下してしまうという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、燃焼時にハロゲンガスの発生がなく、難燃性、断熱性、圧縮復元性に優れた難燃性被覆断熱管を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明においては、管状体の外周に、エチレン−αオレフィン共重合体10〜70重量%と、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体の少なくとも1種からなるエチレン系共重合体90〜30重量%とからなる樹脂成分に、水酸化マグネシウムおよび表面処理された水酸化アルミニウムの少なくとも1種、赤燐および酸化チタンが配合された樹脂組成物を発泡させてなる、密度0.075g/cm3 以下の発泡体からなる断熱層と、
その外周に、ポリエチレンおよびまたはエチレン−αオレフィン共重合体と、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体の少なくとも1種からなるエチレン系共重合体とからなる樹脂成分に、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの少なくとも1種と赤燐、およびまたは酸化チタンが配合された樹脂組成物からなる保護層とを備え、前記保護層の酸素指数が25以上30未満、前記断熱層の酸素指数28以上、または、前記保護層の酸素指数が30以上、前記断熱層の酸素指数25以上である、難燃性被覆断熱管が提供される。
前記断熱層におけるエチレン−αオレフィン共重合体が、融点120〜130℃、メルトフローレート0.1〜20g/10minとすると耐熱性の点で好ましい。
前記保護層が、厚み0.05〜0.2mmで、外表面がシボ加工されているか、または、引っ張り時のヤング率15〜50N/cm2 、厚み0.2〜2mmであると、被覆断熱管を湾曲させて使用する際に保護層表面にしわが抑制されるという点で好ましい。
【0009】
本発明においては、断熱層の発泡体に水酸化マグネシウムおよび表面処理された水酸化アルミニウムの少なくとも1種、赤燐および酸化チタンが併せて配合されているために断熱層上に保護層を熱融着する際にも、発泡体の気泡のつぶれが抑制されるために、断熱層の断熱性能を維持することができ、優れた断熱性の被覆断熱管を得ることができる。
従来より、難燃助剤として三酸化アンチモンが配合された難燃性樹脂が提案されているが、難燃助剤として三酸化アンチモンが配合された樹脂を高発泡倍率の発泡体とすると、圧力が加わった状態で置かれて変形した状態が圧力が取り除かれた後にも復元しにくくなる(圧縮復元性に劣る)という問題があった。本発明の被覆断熱管では、断熱層の発泡体に三酸化アンチモンを使用せずに赤燐と酸化チタンが用いられているので、このような問題が解決されており、高発泡倍率としても優れた圧縮復元性を有する被覆断熱管となっている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の難燃性被覆断熱管は、管状体上に難燃性の、断熱層と保護層とが設けられた構造となっている。ここで用いられる管状体は、その内部に水、温水、ガス、液化ガスなどの流体を通すことのできるもので、主に金属管である。銅管、鋼管、ステンレス管、アルミニウム管などが一般に用いられている。
【0011】
本発明における断熱層は、密度0.075g/cm3 以下の発泡体により構成される。密度0.075g/cm3 を越えると断熱性が低下し好ましくない。以下に述べる樹脂組成物を調整し、発泡体の密度を0.075g/cm3 以下とすることによって断熱性が良好な断熱層となる。
【0012】
断熱層の発泡体の樹脂組成物における樹脂成分は、実質的に、エチレン−αオレフィン共重合体と、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体の少なくとも1種からなるエチレン系共重合体とからなる。エチレン−αオレフィン共重合体は、エチレンとαオレフィンとの共重合体であり、通常直鎖状低密度ポリエチレンと呼ばれる。αオレフィンとしてはブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセンなどが挙げられる。
断熱層の発泡体に用いるエチレンαオレフィン共重合体のαオレフィンを特にブテン、ヘキセン、オクテンとすると圧縮復元性、可撓性に優れたノンハロゲン系難燃発泡体をより安価に提供できるという点でより好ましい。さらに、αオレフィンとしてオクテンを用いると、発泡成形性、圧縮復元性、可撓性が特に優れた発泡体が得られる。
【0013】
断熱層におけるエチレン−αオレフィン共重合体が樹脂成分中にしめる割合は、10〜70重量%である。10重量%未満では発泡体の耐熱性、耐傷性が低下し、配合割合が70重量%を越えると発泡体製造時の成形性が低下し、均質な発泡体を安定して得ることが困難になる。特に好ましくは15〜40重量%である。
【0014】
断熱層のエチレン−αオレフィン共重合体としては、融点120〜130℃、もうひとつ入りMFR0.1〜20g/10min(JIS K7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験法、試験温度190℃)に準じ測定))であるものが耐熱性の点で好ましい。融点がこの範囲であれば高発泡倍率で耐熱性に優れた発泡体を得やすく、この発泡体を断熱層とした被覆断熱管は、空調設備の冷媒配管のように140℃程度の高温流体を通す配管として用いた場合にも、断熱層の収縮がごく小さいという利点がある。また、MFRが0.1〜20g/10minであると、発泡体製造時の発泡成形性、および、発泡体の加工性の点で好ましい。
【0015】
断熱層におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびまたはエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)の樹脂成分中の配合割合は、90〜30重量%、好ましくは85〜60重量%である。90重量%を越えると断熱層の発泡体の圧縮復元性が劣り、30重量%未満では難燃性、可撓性が劣った発泡体となる。
【0016】
エチレン−酢酸ビニル共重合体またはエチレン−エチルアクリレート共重合体としては、酢酸ビニル含有量またはエチルアクリレート含有量が10〜40%、MFRが0.5〜10g/10minであるものが好ましい。酢酸ビニル含有量またはエチルアクリレート含有量を10〜40%とすると、発泡体の加工性向上の点で好ましく、また、難燃剤として水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムを用いる場合の難燃性の点でも好ましい。MFRを0.5〜10g/10minとすると、発泡体製造時の溶融時の粘弾性が適当であるために気泡の破れなどが抑制され、効率的に発泡体を製造することができる。
【0017】
本発明における断熱層では、難燃効果を発現する成分として、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの少なくとも1種、赤燐および酸化チタンを併用することが必須である。これらの難燃成分の配合量は、樹脂成分100重量部に対して、水酸化マグネシウム50〜150重量部、好ましくは80〜140重量部、赤燐2〜25重量部、酸化チタン2〜25重量部が適当である。
水酸化アルミニウムを配合する場合には発泡体の発泡性を考慮して、表面処理されたものを用いる。表面未処理の水酸化アルミニウムは過熱発泡時に脱水反応を起こし、化学架橋を阻害するため高倍率発泡体が得られにくいためである。表面処理剤としてはチタネート系、シラン系、脂肪酸系、脂肪酸塩等が挙げられ、表面処理剤量は0.2〜10%が好ましい。
また、表面処理された水酸化アルミニウムの配合量は樹脂成分100重量部に対して75重量部以下、ただし水酸化マグネシウムの配合量を越えず、かつ、水酸化マグネシウムとの合計量が150重量部を超えない範囲とする。なお、表面処理された水酸化アルミニウムを75重量部を超えて用いる場合には、後に述べる発泡方法として樹脂組成物のシートの片面または両面に電子線などの電離性放射線を照射した後、加熱発泡させる方法を採用すれば、圧縮復元性および難燃性の低下を最小限に抑えることができる。この場合、電離性放射線架橋と化学架橋とを併用してもよい。
また、その他必要に応じて亜鉛系化合物を配合してもよく、その配合量は樹脂成分100重量部に対して0.5〜40重量部が好ましい。さらに好ましくは5〜20重量部である。
【0018】
さらに樹脂組成物には上記の成分の他に、必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、充填剤、顔料、光安定剤、滑剤、帯電防止剤などを添加してもよい。
【0019】
断熱層の発泡体を製造する方法としては、密度0.075g/cm3 以下の発泡体が得られる限り特に限定されない。
代表的な方法としては、上記樹脂組成物を架橋発泡させる方法がある。架橋に際しては、発泡とほぼ同時に架橋させる方法と、発泡に先立って架橋させる方法とがある。
【0020】
発泡とほぼ同時に架橋させる方法の場合は、上記の成分に熱分解型の発泡剤および架橋剤を配合した樹脂組成物を、加圧式ニーダーや2本ロールなどの混練機にて発泡剤が分解しない温度(100〜130℃程度)で混練してペレット化した後、押出機(樹脂温度が100〜130℃程度)にて、所望の厚さと幅の母材シートを押出成形し、約180〜230℃に調整した加熱発泡炉に投入して発泡体を作製する。
熱分解型発泡剤は、加熱すると分解してガスを発生するタイプの発泡剤であり、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、N,N’−ジメチルN,N’−ジニトロテレフタルアミド、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。これらは単独または2種以上で用いることができる。配合量は、樹脂成分100重量部に対して、10〜40重量部が好ましい。
架橋剤としてはジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、4,4’−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレリック酸n−ブチルエステル、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物が挙げられ、その配合量は樹脂成分100重量部に対して、0.3〜2重量部が好ましい。
【0021】
発泡に先立って樹脂組成物を架橋させる方法の場合、上記の成分に熱分解型発泡剤およびビニルトリメトキシシラン等のシラン化合物を配合した樹脂組成物を混練し、母材シートを押出成形した後、ジブチルスズジラウレート等のシラノール縮合触媒および水の存在下でシロキサン縮合反応によってシラン架橋させ、次いで加熱炉に導入して発泡体を製造する。
この場合の架橋剤は上に挙げられている有機過酸化物が適用でき、その配合量は、樹脂成分100重量部に対して、0.003〜2重量部である。シラノール縮合触媒の配合量は樹脂成分100重量部に対して、0.03〜5重量部が好ましい。
また、発泡に先立って架橋させる方法としては、α、β、γ線、電子線、中性子線、紫外線等の電離性放射線の照射による方法があり、この場合、上記の成分に熱分解型発泡剤を配合した樹脂組成物を混練し、押出成形して得られた母材シートに電離性放射線を照射して架橋させた後、加熱発泡炉に導入して発泡体を製造する。
【0022】
以上の架橋発泡方法はそれぞれ単独でも併用してもよく、いずれの方法によっても必要に応じてトリメチロールプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋助剤を樹脂成分100重量部に対して0.05〜3重量部程度配合しても良い。
【0023】
その他、発泡体を製造する方法としては、溶融混練した樹脂組成物中に、成分と反応しない窒素、二酸化炭素、ブタン、プロパンなどのガスまたは揮発性液体などを注入した後、圧力を開放して気泡を成長させ、発泡体を得る方法などがあるが、70℃を越えるような流体を通す配管の断熱層として用いる場合には、耐熱性の点から架橋発泡させる方法を選択するとよい。
【0024】
本発明における保護層の樹脂組成物は、実質的にポリエチレンおよびまたはエチレン−αオレフィン共重合体と、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびまたはエチレン−エチルアクリレート共重合体の少なくとも1種からなるエチレン系共重合体とからなる樹脂成分と、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの少なくとも一種、赤燐およびまたは酸化チタンとを含有する。なお、保護層に配合する水酸化アルミニウムは表面処理の有無は問わない。
樹脂成分中、ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられる。その他、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体は断熱層と同様の樹脂を用いることができる。
【0025】
湾曲させて用いる被覆断熱管の場合には、保護層のエチレン−αオレフィン共重合体として密度0.915g/cm3 以下のものを使用すると、湾曲部分でのしわの発生が抑制され好ましい。
【0026】
樹脂成分の配合割合は、所望の特性となるように調整すればよいが、シートまたはフィルム状に押出成形する時の加工性、耐傷性の点では、ポリエチレンおよびまたはエチレン−αオレフィン共重合体10〜70重量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびまたはエチレン−エチルアクリレート共重合体90〜30重量%とするとよい。
【0027】
本発明の被覆断熱管では、保護層が、断熱層の発泡体と類似の樹脂成分と難燃成分とからなる樹脂組成物により構成されているために、断熱層と保護層との密着性が高いものとなっている。したがって、被覆断熱管の使用中、さらには被覆断熱管を湾曲させて用いた場合にも保護層が剥がれにくく、また湾曲部に生じるしわが集中しにくいという効果がある。
【0028】
本発明の難燃性被覆断熱管においては上述したように、その断熱層、保護層に所定の難燃剤を配合することによって難燃性を付与するものであるが、酸素指数で、保護層が25以上30未満、断熱層が28以上、または、保護層が30以上、断熱層が25以上となるようにすると被覆断熱管全体としての難燃性が十分なものとなる。保護層の酸素指数が25未満では断熱層の酸素指数が28以上でも被覆断熱管全体では難燃性が不十分である。一方、保護層の酸素指数が30以上である場合には断熱層の酸素指数としては25以上あれば十分である。
【0029】
被覆断熱管はその設置場所や用途によって湾曲されて巻管として用いられる。巻管の湾曲部ではしわが多少生じるが、そのしわが集中して図2に示すようなしわ6となってしまうと、外観が劣るだけでなく座屈の原因となることもある。そこで、巻管として使用するような場合には、保護層の厚みが0.05mm以上0.2mm以下の時には、その外表面にシボ加工が施されたものが好ましい。厚みが0.2mm以上2mm以下の時には、引っ張り時ヤング率を15〜50N/cm2 とすることによって、しわの集中を大幅に緩和することができる。また、引っ張りヤング率を15〜50N/cm2 とすると適当な剛性により耐傷性に優れた保護層となる。もちろん、厚みが0.2〜2mmの保護層外表面にシボ加工を施しても構わないし、厚みが0.05〜0.2mmのとき、保護層の引っ張りヤング率が15〜50N/cm2 としてもよい。
なお、本発明でヤング率は、JIS K 6767 引っ張り試験測定方法に準じ、弾性限界内での伸び率と応力との傾きより算出した値とする。
【0030】
本発明の被覆断熱管は、シート状発泡体をそのシートの長手方向に切断して所定幅の帯状シートとし、保護層が外面になるように幅方向に丸め、突き合わされた端面を熱融着してパイプ状に成型し金属管を中に挿入して作製される。
保護層は、帯状に切断する前のシート状発泡体上に設けても、パイプ状に成形した後の発泡体上に設けても良い。保護層を発泡体上に設ける方法としては、熱融着による方法、または接着剤・粘着剤を介して一体とする方法など、特に限定されない。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
(実施例1〜17)および(比較例1〜10)
表1、表2に示す断熱層の樹脂組成物を溶融混合した後、シート状に押出成形し、220℃の熱風炉にて架橋発泡させて厚さ10mmの発泡体シートを作製した。この発泡体シートをパイプ状に成形し、外径22.2mmの銅管を挿入した。表1、表2に示す保護層の樹脂組成物を溶融混練して、銅管入りのパイプ状発泡体の外周に表1〜3に示す厚みで押出被覆し、実施例1〜11の被覆断熱管を得た。
なお、実施例8では外径15.9mmの銅管を使用し、実施例11では保護層表面にシボ加工を施した。
【0032】
本実施例で用いた樹脂組成物の詳細は以下の通りである。
(イ)エチレン−αオレフィン共重合体(直鎖状低密度ポリエチレン)
密度0.930g/cm3 、MFR2.0g/10min、融点123℃、αオレフィン成分;ヘキセン(商品名ジェイレクスBF3650、日本ポリオレフィン(株)製)
(ロ)エチレン−αオレフィン共重合体
密度0.902g/cm3 、MFR3.0g/10min、融点98℃、αオレフィン成分;ヘキセン(商品名ENNGAGE8450、ダウデュポンエラストマー(株)製)
(ハ)低密度ポリエチレン(商品名ジェイレクスLD−F31、日本ポリオレフィン(株)製)
(ニ)高密度ポリエチレン(商品名ジェイレクスE870、日本ポリオレフィン(株)製))
(ホ)ポリプロピレン(商品名ジェイアロマ−PM620A、日本ポリオレフィン(株)製
(ヘ)エチレン−酢酸ビニル共重合体
酢酸ビニル含有量25重量%、MFR5g/10min(商品名エバフレックスP−2505、三井デュポンポリケミカル(株)製)
(ト)水酸化マグネシウム(商品名キスマ5B、協和化学(株)製)
(チ)水酸化アルミニウム
脂肪酸処理(商品名ハイジライトH42S、昭和電工(株)製)
(リ)赤燐(商品名ノーバレッド120、燐化学工業(株)製)
(ヌ)架橋剤(ジクミルパーオキサイド)
(ル)発泡剤(アゾジカーボンアミド)
(ヲ)紫外線吸収剤(商品名MARKLA36、旭電化(株)製)
【0033】
得られた被覆断熱管について、以下の項目で測定、評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0034】
(1)発泡体密度
得られた発泡体から10×10cmの大きさの試験シートを切り出し、質量を体積で除して見かけ密度を求めた。
【0035】
(2)酸素指数
JIS K 7201に準じる。
【0036】
(3)ヤング率
JIS K 6767 引っ張り試験測定方法に準じ、弾性限界内での伸び率と応力との傾きより算出した。
【0037】
(4)被覆断熱管の難燃性
IEEEで規定する垂直トレイ開放燃焼試験準じた測定を行い、合否を判定した。
【0038】
(5)断熱性
JIS A 9511に準拠して熱伝導率を測定し、値が0.045(kcal/mh℃)以下のものを○、0.045を越えるものを×とした。
【0039】
(6)曲げしわ
実施例1〜10の被覆断熱管について、350Rで被覆断熱管を曲げたときのしわの発生状態を観察した。しわの集中が認められなかったものを◎、しわの集中が多少認められたものを△、曲げしわが集中して座屈したものを×とした。
【0040】
(7)圧縮復元性
被覆断熱管に、0.5kg/cmで24時間荷重を加え、荷重を加える前後の断熱層の肉厚から、肉厚の変化率を求め、変化率が10%以内のものを圧縮復元性良好、10%をこえるものを不良と判断した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
表1および表2から明らかなように、実施例1〜17の被覆断熱管は、その断熱層がエチレン−αオレフィン共重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体とが適当な配合割合で配合され、水酸化マグネシウムおよびまたは表面処理された水酸化アルミニウム、赤燐および酸化チタンが併せて配合された発泡体からなり、断熱層、保護層の酸素指数も十分であったために、難燃性、断熱性、圧縮復元性に優れるものとなった。また、実施例12以外はその保護層が発泡体と同様の樹脂、難燃成分からなるために、湾曲部に生じる曲げしわの集中がほとんどなかった。被覆断熱管の径が細くなると湾曲させたときに、湾曲部にできるしわが集中することがあるが、本発明例である実施例の被覆断熱管においては、実施例8に示すように細径の銅管を用いた場合でも曲げしわの集中はなかった。
それに対して、表3に示すように、断熱層として、エチレン−αオレフィン共重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体の配合割合が不適当であったり、必須の難燃成分が配合されていなかったりする発泡体を用いた比較例1〜4の被覆断熱管は、難燃性、断熱性、圧縮復元性が劣るものであった。比較例5〜7の被覆断熱管は、保護層の酸素指数が不十分であるために難燃性が劣るものとなった。また、発泡体密度が大きすぎる比較例8、9の被覆断熱管は、断熱性に劣るものとなり、保護層にポリプロピレンを用いた比較例10は湾曲させた時にしわが集中して生じた。
【0045】
【発明の効果】
本発明の難燃性被覆断熱管は、燃焼時にハロゲンガスの発生がなく、難燃性、断熱性、圧縮復元性に優れており、給水・給湯用の配管材や空気調整装置の冷媒配管材に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆断熱管の断面図である。
【図2】湾曲部にしわが集中して発生した被覆断熱管である。
【符号の説明】
1 金属管
2 断熱層
3 保護層
4 被覆断熱管
5 従来の被覆断熱管
6 集中した曲げしわ
Claims (4)
- 管状体の外周に、エチレン−αオレフィン共重合体10〜70重量%と、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体の少なくとも1種からなるエチレン系共重合体90〜30重量%とからなる樹脂成分に、水酸化マグネシウムおよび表面処理された水酸化アルミニウムの少なくとも1種、赤燐および酸化チタンが配合された樹脂組成物を発泡させてなる、密度0.075g/cm3 以下の発泡体からなる断熱層と、
その外周に、ポリエチレンおよびまたはエチレン−αオレフィン共重合体と、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体の少なくとも1種からなるエチレン系共重合体とからなる樹脂成分に、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの少なくとも1種と赤燐、およびまたは酸化チタンが配合された樹脂組成物からなる保護層とを備え、前記保護層の酸素指数が25以上30未満、前記断熱層の酸素指数28以上、または、前記保護層の酸素指数が30以上、前記断熱層の酸素指数25以上であることを特徴とする難燃性被覆断熱管。 - 前記断熱層におけるエチレン−αオレフィン共重合体が、融点120〜130℃、メルトフローレート0.1〜20g/10minであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性被覆断熱管。
- 前記保護層が、厚み0.05〜0.2mmで、外表面がシボ加工されていることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性被覆断熱管。
- 前記保護層が、引っ張り時のヤング率15〜50N/cm2 、厚み0.2〜2mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性被覆断熱管。
Priority Applications (1)
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