JP4299907B2 - オフセット印刷方法、印刷用原板及び印刷装置 - Google Patents

オフセット印刷方法、印刷用原板及び印刷装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般軽印刷分野、とくにオフセット印刷、とりわけ簡易に印刷版を製作できる新規なオフセット印刷方法及び印刷原板に関するものである。その中でもとくに印刷用原板の反復再生使用を可能にするオフセット印刷方法、その印刷用原板及びそれらによる印刷装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オフセット印刷法は、数多くの印刷方法の中でも印刷版の製作工程が簡単であるために、とくに一般的に用いられてきており、現在の主要な印刷手段となっている。この印刷技術は、油と水の非混和性に基づいており、画像領域には油性材料つまりインキが、非画像領域には湿し水が選択的に保持される。したがって印刷される面と直接あるいはブランケットと称する中間体を介して間接的に接触させると画像部のインキが転写されて印刷が行われる。
【0003】
オフセット印刷の主な方法は、アルミニウム基板を支持体としてその上にジアゾ感光層を塗設したPS板である。PS板においては、支持体であるアルミニウム基板の表面に砂目立て、陽極酸化、その他の諸処理を施して画像領域のインキ受容能と非画像部のインキ反発性を強め、耐刷力を向上させ、印刷面の精細化を図るなどを行い、その表面に印刷用画像を形成させる。したがってオフセット印刷は、簡易性に加えて耐刷力や印刷面の高精細性などの特性も備わってきている。
【0004】
高精細化によってオフセット印刷法の利用が拡がって一般印刷分野に普及する一方において、オフセット印刷法の一層の簡易化が要望され、数多くの簡易印刷方法が提案されている。
【0005】
その代表例がAgfa-Gevaert社から市販されたCopyrapid オフセット印刷版をはじめ、米国特許3511656号、特開平7−56351号などでも開示されている銀塩拡散転写法による印刷版作製に基づく印刷方法であって、この方法は、1工程で転写画像を作ることができて、かつその画像が親油性であるために、そのまま印刷版とすることができるので、簡易な印刷方法として実用されている。しかしながら、簡易とはいいながらこの方法もアルカリ現像液による拡散転写現像工程を必要としている。現像液による現像工程を必要としない、しかも簡易な印刷方法が要望されている。
【0006】
上記の背景から、画像露光を行ったのちのアルカリ現像液による現像工程を省略した簡易印刷版の製作方法の開発が行われてきた。現像工程を省略できることから無処理刷版とも呼ばれるこの簡易印刷版の技術分野では、これまでに主として▲1▼像様露光による画像記録面上の照射部の熱破壊による像形成、▲2▼像様露光による照射部の親油性化による画像形成、▲3▼同じく照射部の親油性化であるが、光モード硬化によるもの、▲4▼ジアゾ化合物の光分解による表面性質の変化、▲5▼画像部のヒートモード溶融熱転写などの諸原理に基づく手段が提案されている。
【0007】
上記の簡易オフセット印刷方法として開示されている技術には、米国特許第3,506,779号、同第3,549,733号、同第3,574,657号、同第3,739,033号、同第3,832,948号、同第3,945,318号、同第3,962,513号、同第3,964,389号、同第4,034,183号、同第4,081,572号、同第4,693,958号、同第731,317号、同第5,238,778号、同第5,353,705号、同第5,385,092号、同第5,395,729号等の米国特許及び欧州特許第1068号などがある。
【0008】
これらは、製版に際して現像液を必要としないように考案されているが、親油性領域と親水性領域との差異が不十分であること、したがって印刷画像の画質が劣ること、解像力が劣り、鮮鋭度の優れた印刷画面が得にくいこと、画像面の機械的強度が不十分で傷がつきやすいこと、そのために保護膜を設けるなどによって却って簡易性が損なわれること、長時間の印刷に耐える耐久性が不十分なことなどのいずれか一つ以上の欠点を伴っていて、単にアルカリ現像工程を無くすだけでは実用性は伴わないことを示している。印刷上必要とされる諸特性を具備し、かつ簡易に印刷版を製作できる印刷版作成方法への強い要望は、上記の数々の改良にも係わらず、いまだに十分に満たされていない。
【0009】
上記した無処理型印刷版作成方法の一つにジルコニアセラミックが光照射によって親水性化することを利用した印刷版作製方法が特開平9−169098号で開示されている。しかし、ジルコニアの光感度は不十分であり、かつ疎水性から親水性への光変換効果が不十分のため画像部と非画像部の識別性が不足している。
【0010】
上記した現像液を必要としない簡易な印刷方法とともに、使用済みの印刷用原板を簡単に再生して再使用できる手段があれば、コストの低減と廃棄物の軽減の2面から有利である。印刷用原板の再生使用には、その再生操作の簡易性が実用価値を左右するが、再生操作の簡易化は難度の高い課題であり、従来殆ど検討されきておらず、わずかに上記の特開平9−169098号でジルコニアセラミックという特殊な原板用材料について開示されているに過ぎない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとしている課題は、上記事情に鑑みてアルカリ性現像液を必要とせず、簡易に製版できて、かつ印刷面の画像部と非画像部の識別性が改良された実用レベルの印刷画質を有し、さらに印刷用原板を反復して使用することも可能なオフセット印刷方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、上記の印刷方法によって簡易な操作によって実用レベルの印刷品質の印刷を行い、かつ印刷原板を繰り返して使用することのできる印刷装置を提供することである。
さらに、本発明では、ネガ型の製版方式であって、かつ上記の目的を満たした印刷方法を提供することを意図している。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者たちは、上記の目的を達成するための研究過程において、特定波長の光を照射すると親水性となる物質があり、この性質を簡易印刷に利用できることを認めたが、本発明の上記の目的を十分に達成するには、さらに画像部と非画像部との識別性の向上が望まれた。そのため、親水性の照射領域と疎水性の非照射領域の識別性を向上させる手段をさらに鋭意研究した結果、光により親水性化する上記の特性を備え、さらに加熱温度や加熱条件によって表面の疎水性/親水性が特異な変化挙動をとる物質があることを見いだし、この性質を版面上への印刷用画像の形成と印刷終了後の版面の画像の消去に利用することによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0013】
1.光触媒能を有する印刷用原板を疎水性発現温度で加熱して表面を疎水性化し、次いで該表面に活性光の像様照射を施して照射部分を親水性化することによって親水性領域と疎水性領域の像様分布を形成させ、疎水性領域を印刷用インキに接触させることによって該領域がインキを受け入れた印刷面を形成させて印刷を行うことを特徴とするオフセット印刷方法。
【0014】
2.疎水性発現温度が50〜250℃であることを特徴とする上記1に記載のオフセット印刷方法。
【0015】
3.印刷に使用した印刷版面上に残存するインキを洗浄除去したのち、その印刷版を印刷用原板として上記1又は2に記載の操作を反復して印刷を行うことを特徴とする上記1又は2に記載の印刷方法。
【0016】
4.印刷用原板を疎水性発現温度で加熱する際に、有機化合物の存在下で加熱することを特徴とする上記1〜3のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
【0017】
5.疎水性発現温度で加熱する際に存在させる有機化合物が、温度400℃において少なくとも1mmHg以上の蒸気圧を有し、かつ疎水性発現温度において安定な有機化合物であることを特徴とする上記4に記載のオフセット印刷方法。
【0018】
6.疎水性発現温度で加熱する際に存在させる有機化合物が、沸点が30〜400℃の範囲であることを特徴とする上記4又は5に記載のオフセット印刷方法。
【0020】
.印刷用原板の表面が、TiO2 BaTiO3CsLa NbTi 10 、HCa 1.5 La 0.5 Nb 2.5 Ti 0.5 10 ,HLa 2 NbTi 2 1 0 及びZnOの少なくとも一つから選ばれる金属酸化物の少なくとも一つによって構成されていることを特徴とする上記1〜のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
【0021】
.上記1〜のいずれか1項に記載の方法に使用するオフセット印刷装置であって、光触媒能を有する印刷用原板を装着した原板装着部と、該原板を疎水性発現温度に加熱してその表面を疎水性化する加熱手段と、該原板に活性光の像様照射を施して親水性領域と疎水性領域の像様分布を形成させる描画手段と、該疎水性領域に印刷用インキを供給して該領域がインキを受け入れた印刷面を形成させるインキ供給手段と,該印刷面を印刷される面と接触させて印刷を行う印刷手段と、を有することを特徴とするオフセット印刷装置。
【0022】
.印刷終了後、印刷版に残存するインキを除去する手段を有することを特徴とする上記に記載のオフセット印刷装置。
【0023】
10.少なくとも加熱手段、描画手段、インキ供給手段およびインキ除去手段が、版胴の周囲に配設されてなることを特徴とする上記又はに記載のオフセット印刷装置。
【0024】
11.印刷用原板が版胴の一部を構成しており、少なくとも加熱手段、描画手段、インキ供給手段およびインキ除去手段が、前記版胴の周囲に配設されてなることを特徴とする上記8〜10のいずれか1項に記載のオフセット印刷装置。
【0025】
12.印刷用原板を疎水性発現温度で加熱して表面を疎水性とする加熱手段が、該原板の表面に有機化合物の蒸気が接するように有機化合物蒸気供給手段を配していることを特徴とする上記8〜11のいずれか1項に記載のオフセット印刷装置。
【0026】
本発明者は、たとえば酸化チタンなどの特定の物質の表面が特定波長の光の照射によって親水性に変化することを認めて、このような光物性変化を行う物質を「光触媒能を有する物質」と呼び、この光物性変化を引き起こす特定波長の光を「活性光」と呼ぶこととした。以下の本明細書の記載においても、この用語を使用する。本発明は、「光触媒能を有する物質」の中には、さらに、その表面が以下のような特異な熱応答挙動をする物質があることを見いだしたことによってなされた発明である。すなわち、光触媒能を有する特定の物質は、その清浄な表面が程度の差はあっても本来親水性ではあるものの、▲1▼適度の温度(以後、「疎水性発現温度」という)で加熱を行うと疎水性に変化すること、▲2▼さらに高温度(以後、「高温親水性発現温度」という)に加熱すると再び親水性となること、及び▲3▼これらの表面の性質の変化には履歴効果があることを発見した。本発明は、光触媒能とこの熱応答挙動とを効果的に利用してなされたネガ型方式のオフセット印刷方法と印刷装置である。
【0027】
その印刷方法は、第1段階としてまず光触媒反応を有する特定の物質の表面を疎水性発現温度に一様に加熱してその物質の表面を疎水性とし、第2段階として活性光をその表面を像様に照射して親水性領域と疎水性領域の像様の分布を形成し、次いで第3段階として疎水性領域に印刷用インキを、親水性領域に湿し水をそれぞれ保持させてオフセット印刷を行う方法である。さらに、印刷の終了後に使用済みの印刷版のインキを洗浄除去して、その版を再び疎水性発現温度に一様に加熱すると親水性・疎水性の像様分布も消去されて一様の疎水性表面が得られるので、印刷原板として上記の製版、印刷過程に再び使用できる。一般に、金属や金属酸化物などの光触媒能を有する物質の表面は、物質によってその本来の親水性あるいは疎水性の程度が異なり、また時間経過によっても変化するが、本発明に用いられる上記▲1▼〜▲3▼の特性を持つ物質の場合は、表面を疎水性発現温度で加熱して疎水性にすると、その表面は、室温下においても履歴効果によって実用的に十分な時間その疎水性が維持される。しかも本発明では、上記▲1▼〜▲3▼の特性の把握によって第1段階の加熱による疎水性発現過程を、そり高温の親水性発現温度に至らないような適切に温度制御を行うことができるので、疎水性化を最適温度条件で促進させることができる。
以下の記述において、熱に対して▲1▼、▲2▼及び▲3▼の特性を有する上記物質を「熱応答型物質」と呼ぶ。上記の熱応答型物質は、金属及び金属酸化物の中に多く認められており、これらの金属及び金属酸化物をそれぞれ「熱応答型金属」及び「熱応答型金属酸化物」と呼ぶこととする。光触媒能を有する熱応答型物質と、その熱応答挙動については、後にさらに詳細に説明する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
はじめに、本発明で用いる「光触媒能を有する熱応答型物質」について説明する。本発明に用いることのできる印刷原板材料は、適度に加熱によって疎水性が発現し、さらに加熱すると親水性が再び現れて、かつ履歴現象を示す「熱応答性」と活性光の照射によって親水性となる「光触媒能」とを具備した物質である。このような特性を有する物質は、必ずしも金属酸化物に限定されないが、印刷用原板としての要件なども考慮されると、金属酸化物の中に比較的多く見られる。また、この物質は、セラミックや半導体のなかにも見られる。光触媒能を有する熱応答型セラミックは、複合金属酸化物からなっており、光触媒能を有する熱応答型半導体の多くは、基底順位と伝導体が近い真正半導体と不純物準位に依存する酸化バナジウムや酸化銅などの仮性半導体との両方に見られる。これらセラミック及び半導体は、本発明が利用する光触媒能と熱応答性という型物特性の上では、他の光触媒能と熱応答性を有する金属酸化物と同様であるので、それらを「光触媒能を有する熱応答型金属酸化物」に含めて以下にその順序に説明する。
【0029】
本発明に用いる金属酸化物は、いろいろの形態の金属酸化物に見られ、単一の金属酸化物、複合酸化物のいずれの場合もあり、また後者の場合は、固溶体、混晶、多結晶体、非晶質固溶体、金属酸化物微結晶の混合物のいずれからもこの特性を有するものが認められる。このような特性をもつ金属酸化物は、経験的に周期律表の0と VIIA(ハロゲン元素)族を除く第3〜6周期に属する金属元素の酸化物に見いだされる。
なお、上記金属及び金属酸化物は、印刷版として使用する際に湿し水に対して過度に溶解してはならないので、水に対する溶解度は、水100ミリリットルについて10mg以下、好ましくは5mg以下、より好ましくは1mg以下である。
【0030】
「光触媒能を有する熱応答型金属酸化物」の中でも、酸化チタンと酸化亜鉛は好ましく、これらについてまず説明する。これらは、いずれも本発明の光応答性を有する印刷版材料として利用できる。特に酸化チタンが感度(つまり表面性の光変化の敏感性)などの点で好ましい。酸化チタンは、イルメナイトやチタンスラグの硫酸加熱焼成、あるいは加熱塩素化後酸素酸化など既知の任意の方法で作られたものを使用できる。あるいは後述するように金属チタンを用いて印刷版製作段階で真空蒸着によって酸化物皮膜とする方法も用いることができる。
【0031】
酸化チタン又は酸化亜鉛を含有する層を原板の表面に設けるには、たとえば、▲1▼酸化チタン微結晶又は酸化亜鉛微結晶の分散物を印刷版の原板上に塗設する方法、▲2▼塗設したのち焼成してバインダーを減量或いは除去する方法、▲3▼印刷原板上に蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの方法で酸化チタン(又は酸化亜鉛)膜を設ける方法、▲4▼例えばチタニウムブトキシドのようなチタン有機化合物を原板上に塗布したのち、焼成酸化を施して酸化チタン層とする方法など、既知の任意の方法を用いることができる。本発明においては、真空蒸着又はスパッタリングによる酸化チタン層が特に好ましい。
【0032】
上記▲1▼又は▲2▼の酸化チタン微結晶を塗設する方法には、具体的には無定形酸化チタン微結晶分散物を塗布したのち、焼成してアナターゼまたはルチル型の結晶酸化チタン層とする方法、酸化チタンと酸化シリコンの混合分散物を塗布して表面層を形成させる方法、酸化チタンとオルガノシロキサンなどとの混合物を塗布してシロキサン結合を介して支持体と結合した酸化チタン層を得る方法、酸化物層の中に酸化物と共存するできるポリマーバインダーに分散して塗布したのち、焼成して有機成分を除去する方法などがある。酸化物微粒子のバインダ−には、酸化チタン微粒子に対して分散性を有し、かつ比較的低温で焼成除去が可能なポリマーを用いることができる。好ましいバインダーの例としては、ポリエチレンなどのポリアルキレン、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ蟻酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリスチレンなどの疎水性バインダーが好ましく、それらの樹脂を混合して使用してもよい。
【0033】
上記▲3▼の酸化チタンの真空蒸着を行うには、通常真空蒸着装置内の蒸着用加熱の熱源に金属チタンを置き、真空度10-5〜10-8Torrで全ガス圧10-2〜10-5Torr、酸素文圧比が30〜90%になるようにしながら、チタン金属を蒸発させると、蒸着面には酸化チタンの蒸着薄膜が形成される。また、スパッタリングによる場合は、例えばスパッタ装置内にチタン金属ターゲットをセットしてAr/O2 比が60/40(モル比)となるようにガス圧を5×10-3Torrに調整したのち、RFパワー200Wを投入してスパッタリングを行って酸化チタン薄膜を基板上に形成させる。
【0034】
一方、本発明に酸化亜鉛層を使用する場合、その酸化亜鉛層は既知の任意の方法で作ることができる。とくに金属亜鉛板の表面を電解酸化して酸化皮膜を形成させる方法と、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング,CVDなどによって酸化亜鉛皮膜を形成させる方法が好ましい。
酸化亜鉛の蒸着膜は、上記の酸化チタンの蒸着と同様に金属亜鉛を酸素ガス存在下で蒸着して酸化膜を形成させる方法や、酸素のない状態で亜鉛金属膜を形成させたのち、空気中で温度を約700°Cにあげて酸化させる方法を用いることができる。
そのほか、修酸亜鉛の塗布層やセレン化亜鉛の薄層を酸化性気流中で加熱しても得られる。
【0035】
蒸着膜の厚みは、酸化チタン層、酸化亜鉛層いずれの場合も1〜100000オングストロ−ムがよく、好ましくは10〜10000オングストロ−ムである。さらに好ましくは3000オングストロ−ム以下として光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作用を十分に発現させるには厚みが50オングストローム以上あることが好都合である。
【0036】
酸化チタンはいずれの結晶形のものも使用できるが、とくにアナターゼ型のものが感度が高く好ましい。アナターゼ型の結晶は、酸化チタンを焼成して得る過程の焼成条件を選ぶことによって得られることはよく知られている。その場合に無定形の酸化チタンやルチル型酸化チタンが共存してもよいが、アナターゼ型結晶が40%以上、好ましくは60%以上含むものが上記の理由から好ましい。
酸化チタンあるいは酸化亜鉛を主成分とする層における酸化チタンあるいは酸化亜鉛の体積率は、それぞれ30〜100%であり、好ましくは50%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸化物の連続層つまり実質的に100%であるのがよい。しかしながら、表面の親水性/親油性変化特性は、酸化亜鉛を電子写真感光層に用いるときのような著しい純度による影響はないので、100%に近い純度のもの(例えば98%)をさらに高純度化する必要はない。それは、本発明に利用される物性は、導電性とは関係ない膜表面の親水性/親油性の性質変化特性、すなわち界面物性の変化特性であることからも理解できることである。
【0037】
しかしながら、熱の作用によって表面の親水性が変化する性質を増進させるためにある種の金属をドーピングすることは有効な場合があり、この目的にはイオン化傾向が小さい金属のドーピングが適しており、Pt,Pd,Au,Ag,Cu,Ni,Fe,Co又はCrをドーピングするのが好ましい。また、これらの好ましい金属を複数ドーピングしてもよい。ドーピングを行った場合も、その注入量は酸化亜鉛や酸化チタン中の金属成分に対して5モル%以下である。
【0038】
一方、体積率が低いと層の表面の親水性/親油性の熱応答挙動の敏感度が低下する。したがって、層中の酸化物の体積率は、30%以上であることが望ましく、とくに実質的に100%であることが好ましい。
【0039】
次に、本発明に用いることができる別の化合物である一般式RTiO3 で示したチタン酸金属塩について記す。一般式RTiO3 において、Rはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウムなどの周期律表のアルカリ土類元素に属する金属原子であり、とくにストロンチウムとバリウムが好ましい。また、2種以上のアルカリ土類金属原子をその合計が上記の式に化学量論的に整合する限り共存することができる。
【0040】
次に、一般式AB2-x x 3-x x 10で表される化合物について説明する。この一般式において、Aは水素原子及びナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、リチウムなどのアルカリ金属原子から選ばれる1価原子で、その合計が上記の式に化学量論的に整合する限りそれらの2種以上を共存してもよい。
Bは、上記のRと同義のアルカリ土類金属原子又は鉛原子であり、同様に化学量論的に整合する限り2種以上の原子が共存してもよい。
Cは希土類原子であり、好ましくは、スカンジウム及びイットリウム並びにランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、ホルミウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどのランタノイド系元素に属する原子であり、また、その合計が上記の式に化学量論的に整合する限りそれらの2種以上を共存してもよい。
Dは周期律表の5A族元素から選ばれた一種以上で、バナジウム、ニオブ、タンタルが挙げられる。また、化学量論関係を満たす限り、2種以上の5A族の金属原子が共存してもよい。
Eは同じくチタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの4A族元素に属する金属原子であり、また、2種以上の4A族の金属原子が共存してもよい。
xは0〜2の任意の数値を表す。
【0041】
RTiO3 、一般式AB2-x x 3-x x 10で表される上記化合物、SnO2 ,Bi2 3 ,FeOx (x=1〜1.5)で示される酸化鉄系の化合物のいずれの薄膜形成にも、酸化チタン及び酸化亜鉛を設ける前記の方法を用いることがでる。すなわち、▲1▼上記光触媒能を有する熱応答型金属酸化物の微粒子の分散物を印刷版の原板上に塗設する方法、▲2▼塗設したのち焼成してバインダーを減量或いは除去する方法、▲3▼印刷版の原板上に上記酸化物を各種の真空薄膜法で膜形成する方法、▲4▼例えば金属元素のアルコレートのような有機化合物を原板上に塗布したのち、加水分解させ、さらに焼成酸化を施して適当な厚みの金属薄膜とする方法、▲5▼上記金属を含む塩酸塩、硝酸塩などの水溶液を加熱スプレーする方法など、既知の任意の方法を用いることができる。
【0042】
例えば、上記▲1▼、▲2▼の塗設方法によってチタン酸バリウム微粒子を塗設するには、チタン酸バリウムとシリコンの混合分散物を塗布して表面層を形成させる方法、チタン酸バリウムとオルガノポリシロキサンまたはそのモノマ−との混合物を塗布する方法などがある。また、酸化チタンの項で述べたように、酸化物層の中に酸化物と共存できるポリマーバインダーに分散して塗布した後、焼成して酸化物層とすることもできる。酸化物微粒子のバインダ−として好ましいポリマーの例は、酸化チタン層の項で述べたものと同じである。
この方法によって、チタン酸バリウム以外にチタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム又はそれらの分子間化合物、混合物も同様に薄膜形成可能である。
【0043】
同様にして上記▲1▼、▲2▼の塗設方法によってCsLa2 NbTi2 10微粒子を塗設することも可能である。CsLa2 NbTi2 10微粒子は、その化学量論に対応するCs2 CO3,La2 3,NbO5,TiO2 を乳鉢で微粉砕して、白金るつぼに入れ、130°C で5時間焼成し、それを冷却してから乳鉢に入れて数ミクロン以下の微粒子に粉砕する。このCsLa2 NbTi2 10微粒子を前記のチタン酸バリウムと同様にバインダーの中に分散し、塗布して薄膜を形成した。この方法は、CsLa2 NbTi2 10型微粒子に限らず、HCa1.5 La0.5 Nb2.5 Ti0.5 10,HLa2 NbTi2 10など前述のAB2-x x 3-x x 10、(0≦x≦2)に適用される。
【0044】
上記▲3▼の真空薄膜形成法を用いた光触媒能を有する熱応答型金属酸化物層の形成方法としては、一般的にはスパッタリング法あるいは真空薄膜形成法が用いられる。スパッタリング法では、あらかじめ単一もしくは複合型の酸化物ターゲットを準備する。例えば、チタン酸バリウムターゲットを用いて蒸着膜用の支持体の温度を450°C以上に保ち、アルゴン/酸素混合雰囲気中でRFスパッタリングを行うことによりチタン酸バリウム結晶薄膜が得られる。結晶性の制御には必要に応じてポストアニーリングを300〜900°Cで行えばよい。本方法は前述のRTiO3 (Rはアルカリ土類金属原子)をはじめ他の前記光触媒能を有する熱応答型金属酸化物にも、結晶制御に最適な基板温度を調整すれば同様の考え方で薄膜形成が可能である。
例えば酸化錫薄膜を設ける場合には基板温度120°C、アルゴン/酸素比50/50の混合雰囲気中でRFスパッタリングを行うことにより酸化錫結晶の本目的に沿う薄膜が得られる。
【0045】
上記▲4▼の金属アルコレートを用いる方法も、バインダーを使用しないで目的の薄膜形成が可能な方法である。チタン酸バリウムの薄膜を形成するにはバリウムエトキシドとチタニウムブトキシドの混合アルコール溶液を表面にSiO2 を有するシリコン基板上に塗布し、その表面を加水分解したのち、200°C以上に加熱してチタン酸バリウムの薄膜を形成することが可能である。本方式の方法も前述した他のRTiO3 (Rはアルカリ土類金属原子)、AB2-x x 3-x x 10(A,B,C,D,Eはそれぞれ前記の定義の内容を表す)、SnO2 ,SiO2 ,Bi2 3 及びFeOx (x=1〜1.5)で示される酸化鉄系の化合物の薄膜形成に適用することができる。
【0046】
上記▲5▼によって熱応答性機能を発現する金属酸化物薄膜を形成させる方法も、バインダーを含まない系の薄膜の形成が可能である。SnO2 の薄膜を形成するにはSnCl4 の塩酸水溶液を200°C以上に加熱した石英又は結晶性ガラス表面に吹きつけて薄膜を生成することができる。本方式も、SnO2 薄膜のほか,前述したRTiO3 (Rはアルカリ土類金属原子)、AB2-x x 3-x x 10(A,B,C,D,Eはそれぞれ前記の定義の内容を表す)、Bi2 3 及びFeOx (x=1〜1.5)で示される酸化鉄系の化合物のいずれの薄膜形成にも適用することができる。
【0047】
金属酸化物薄膜の厚みは、上記のいずれの場合も1〜100000オングストロ−ムがよく、好ましくは10〜10000オングストロ−ムである。さらに好ましくは3000オングストロ−ム以下として光干渉の歪みを防ぐのがよい。また、光活性化作用を十分に発現させるには厚みが50オングストローム以上あることが好都合である。
【0048】
バインダーを使用した場合の上記光触媒能を有する熱応答型金属酸化物の薄層において、金属酸化物の体積率は50〜100%であり、好ましくは90%以上を酸化物が占めるのがよく、さらに好ましくは酸化物の連続層つまり実質的に100%であるのがよい。
【0049】
印刷原板の熱応答性を高めるには、断熱層を画像形成層の下層に設けることが有効である。光熱変換による描画を行う場合には、その光に対して機能性表面が透明である場合には下層に光熱変換層を設けてもよい。
以上で本発明に用いる熱応答型物質、とくにその中でも好ましい熱応答型金属酸化物についての説明を終わる。
【0050】
次に本発明に使用する印刷用原板の形態について述べる。
本発明に係わる印刷原板は、いろいろの形態と材料を用いることができる。例えば、光触媒能を有する熱応答型物質の薄層を印刷機の版胴の基体表面に蒸着、浸漬あるいは塗布するなど上記した方法で直接設ける方法、支持体に担持された熱応答型物質や、あるいは支持体を持たない熱応答型物質の薄板を版胴の基体に巻き付けて印刷版とする方法などを用いることができる。
また、勿論版胴上で製版する上記形態以外に、一般的に行われているように、製版を行った印刷版を輪転式あるいは平台式印刷機に装着する形態を採ってもよい。
【0051】
光触媒能を有する熱応答型物質が支持体上に設けられる場合、使用される支持体は、疎水性発現温度でも熱分解せず、寸度的にも安定な板状物であり、アルミニウム板、SUS鋼板、ニッケル板、銅板などの金属板が好ましく、特に可撓性(フレキシブル)の金属板を用いることが好ましい。また、ポリエステル類やセルローズエステル類などのフレキシブルなプラスチック支持体も用いることが出来る。防水加工紙、ポリエチレン積層紙、含浸紙などの支持体上に酸化物層を設けてもよく、それを印刷版として使用してもよい。
【0052】
具体的には、紙、プラスチックシート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等のシート)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ステンレス等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0053】
好ましい支持体は、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、アルミニウム、又は印刷版上で腐食しにくいSUS板であり、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板と、製版工程における加熱操作に対して安定性の高いポリイミドフィルムは特に好ましい。
【0054】
好適なポリイミドフィルムは、ピロメリット酸無水物とm−フェニレンジアミンを重合させたのち、環状イミド化したポリイミド樹脂フィルムであり、このフィルムは市販されている(例えば、東レ・デュポン社製の「カプトン」)。
【0055】
好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられる金属支持体の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmであり、プラスチックや加工紙などその他の支持体の厚みはおよそ0.1mm〜2.0mm程度、好ましくは0.2mm〜1.0mmである。
【0056】
アルミニウム支持体を用いる場合は、表面を粗面化して用いることが好ましい。その場合、所望により、粗面化に先立って表面の圧延油を除去するための、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行うなど公知の方法を利用することができる。また、粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。陽極酸化の電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0057】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量が1.0g/m2より少ないと、耐刷性が不十分であったり、平板印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0058】
以上で本発明の印刷方法に使用する光触媒能を有する熱応答物質を使用したネガ型方式の印刷原板の構成について説明したので、次に本発明のオフセット印刷方法及び印刷装置についての具体的態様を図を用いて述べる。
【0059】
はじめに、光触媒能を有する熱応答物質の表面の熱応答性をさらに説明する。図1は、前記した▲1▼〜▲3▼の熱応答性を説明するための実験結果の一例を示す図であって、酸化チタンをそれぞれの温度で5分間加熱したときの酸化チタン表面の水に対する接触角を協和界面科学(株)製の接触角測定装置CA−Dを用いて得た測定値を温度に対してプロットして得た温度・接触角関係を示す。加熱は、室温から200℃までは小型高温チャンバーST−110(タバイエスペック社製)によって行い、200℃以上では電気炉KM−100((株)東洋製作所製)によって加熱した。
【0060】
言うまでもなく、表面が親水性であるか、疎水性であるかの尺度は、水に対する接触角の大きさによって表すことができ、接触角が大きいほど疎水性であり、疎水性は親油性又は親インキ性と言い換えることもできる。図1は、酸化チタンを加熱して行くと、表面接触角が増加して行き、温度が210°Cのとき極大に達し、さらに加熱すると接触角が低下することを示している。
【0061】
この酸化チタンの例が示すように、表面温度を室温から高めて行き、「疎水性発現温度」の領域に至ると疎水性となり、さらに温度を高めて「高温親水性発現温度」に至ると再び親水性となるのが、熱応答型物質の特性である。この特性を把握して、高温親水性発現温度を避けた適切な疎水性発現温度の範囲内で加熱を行って、表面の全面を疎水性とし、その表面に活性光の像様照射を行うと、光照射部が親水性となったネガ型の疎水性・親水性の像様分布が得られる。
ネガ型の製版方式であって、かつ加熱温度を疎水性発現温度に適合させることによって疎水性とその均一性の高い表面が得られること、その上に光触媒能を利用して疎水性と親水性の識別効果を向上できること、さらに原板の保管中の履歴に影響されないので疎水性の再現性がよいことが本発明の特徴であって、これらの特徴が相まって画像領域と非画像領域の識別性の高い印刷版を再現性よく製作することができるという利点が得られている。
【0062】
さらなる利点としては、親水性化のための高温加熱操作がないので、原板の支持体の耐熱性の制約が少なく、したがって支持体の選択範囲がひろがることである。
さらに付け加えるべきことは、疎水性発現温度の雰囲気に有機化合物(後述する)を存在させると、疎水性化が促進されて親水性と疎水性の識別効果がさらに向上し、印刷版の品質を高めることができることである。
【0063】
「疎水性発現温度」の領域は、具体的には接触角の極大値に対してその両側の接触角の低下が20度以内の領域を指しており、インキを受容する実用的疎水性の領域に相当する。図1の実験例では、接触角の極大値は50度で、その両側20度の疎水性発現温度の領域は、155〜240℃であるが、一般に光触媒能を有する熱応答型物質の種類、加熱速度、加熱雰囲気によって異なる。また、同じ加熱速度と同じ加熱雰囲気においても、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウムなど熱応答型物質によって接触角の極大値は異なり、その両側20度の範囲に対応する温度範囲も変化する。また加熱速度を速くしてもこの温度範囲は変化する。このような多少の相違はあるものの、一般に疎水性発現温度は、50〜250°Cの温度領域にある。この温度領域で一様な加熱を行うことによって表面の疎水性を均一かつ高いレベルにたもつことが可能で、したがって画像部と非画像部との識別性を増大させ、印刷面の品質を向上させることができる。
【0064】
疎水性発現温度への加熱手段には、ニクロム線や発熱抵抗体などの電熱加熱器、赤外線を放射する固体レーザー、又は赤外線域の光を放射する半導体レーザー、赤外線灯、キセノン放電灯や可視域の光を放射する半導体レーザー(被加熱部に光・熱変換機能を組み込んだ場合)、大容量コンデンサーからの放電によってフラッシュ光を発する光・熱変換発熱装置などが用いられる。その中では、電熱加熱器や赤外線灯が疎水性発現温度範囲内への温度の制御が容易であること、均一な加熱面が広く取れること及びコストが安いことにより好ましい。
【0065】
疎水性発現温度に加熱を行うに際して、前記したように加熱雰囲気中に有機化合物蒸気を存在させると、疎水性化の速度と極大接触角が増加し、接触角が極大となる温度及び疎水性となる温度領域も変化する。その結果、親水性と疎水性の識別効果を向上させることができる。この作用機構は不明であるが、おそらく加熱された原板表面に有機化合物が吸着して疎水性の皮膜を形成するのではないかと推定している。
【0066】
このような、好都合な効果をもつ好ましい有機化合物は、温度400℃における蒸気圧が少なくとも1mmHgで、かつ蒸気圧が1mmHgとなる温度において安定な有機化合物である。つまり、この程度の蒸気圧を有している有機化合物が加熱雰囲気中に存在すると親水性と疎水性の識別性の向上が引き起こされる。より好ましくは、温度300℃における蒸気圧が少なくとも1mmHgで、かつ蒸気圧が1mmHgとなる温度において安定な有機化合物である。さらに好ましくは、沸点が30〜400℃にあって、かつ30〜400℃の温度範囲で安定な有機化合物であり、中でも好ましい沸点範囲は50〜350°Cである。この温度範囲の沸点をもつ有機化合物は、具体的には脂肪族及び芳香族炭化水素、脂肪族及び芳香族カルボン酸、脂肪族及び芳香族アルコール、脂肪族及び芳香族エステル、脂肪族及び芳香族エーテル、有機アミン類、有機珪素化合物、印刷用インキに添加できることが知られている各種溶剤や可塑剤類の中に見られる。
【0067】
好ましい脂肪族炭化水素は、炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素であり、好ましい芳香族炭化水素は、炭素数6〜40の、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素である。好ましい脂肪族アルコールは、炭素数2〜30の、より好ましくは炭素数2〜18の脂肪族アルコールであり、好ましい芳香族アルコールは、炭素数6〜30の、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族アルコールである。好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数2〜24の脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは炭素数2〜20の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数4〜12の脂肪族ポリカルボン酸であり、また、好ましい芳香族カルボン酸は、炭素数6〜30の、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族カルボン酸である。好ましい脂肪族エステルは、炭素数2〜30の、より好ましくは炭素数2〜18の脂肪酸エステルであり、好ましい芳香族エステルは、炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数8〜18の芳香族カルボン酸エステルである。好ましい脂肪族エーテルは、炭素数8〜36の、より好ましくは炭素数8〜18の芳香族エーテルであり、好ましい芳香族エーテルは、炭素数7〜30の、より好ましくは炭素数7〜18の芳香族エーテルである。そのほか、炭素数7〜30の、より好ましくは炭素数7〜18の脂肪族あるいは芳香族アミドも用いることができる。
【0068】
具体例としては、2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)、ノナン、デカン、n−ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルオクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ナフタレン、アントラセン、スチレンなどの芳香族炭化水素;ドデシルアルコール、オクチルアルコール、n−オクタデシルアルコール、2−オクタノール、ラウリルアルコールなどの1価アルコール;プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール;ベンジルアルコール、4−ヒドロキシトルエン、フェネチルアルコール、1−ナフトール、2−ナフトール、カテコール、フェノールなどの芳香族アルコール;酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、カプリン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族1価カルボン酸;しゅう酸、琥珀酸、アジピン酸、マレイン酸、グルタール酸などの多価脂肪族カルボン酸;安息香酸、2−メチル安息香酸、4−メチル安息香酸などの芳香族カルボン酸;酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、アクリル酸メチル、しゅう酸ジメチル、琥珀酸ジメチル、クロトン酸メチルなどの脂肪族エステル;安息香酸メチル、2−メチル安息香酸メチルなどの芳香族カルボン酸エステル;イミダゾール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、アニリン、オクチルアミン、アニリン、フェネチルアミンなどの有機アミン;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゾフェノンなどのケトン類、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、メトキシトルエン、ラウリルメチルエーテル、ステアリルメチルエーテルなどのエーテル及びステアリルアミド、ベンゾイルアミド、アセトアミドなどのアミド類が挙げられる。
【0069】
また、印刷用インキの成分であるアマニ油、大豆油、けし油、サフラワー油 などの油脂類、燐酸トリブチル、燐酸トリクレシル、フタール酸ジブチル、ラウリン酸ブチル、フタール酸ジオクチル、パラフィンワックスなどの可塑剤も挙げられる。
【0070】
そのほか、沸点が前記の好ましい範囲にあるエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アクリロニトリルなどの有機溶剤も使用することができる。
【0071】
好ましい有機珪素化合物は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどで代表されるオルガノポリシロキサン化合物であり、とくに重合度が12以下のオルガノポリシロキサン類である。これらの好ましいオルガノポリシロキサンはシロキサン結合単位当たり1〜2個の有機基が結合しており、その有機基は、炭素数が1〜18のアルキル基及びアルコキシ基、炭素数が2〜18のアルケニル基及びアルキニル基、炭素数が6〜18のアリール基、炭素数が7〜18のアラルキル基、炭素数が5〜20の脂環式基である。また、これらの有機置換基には、さらにハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシ基が置換してもよい。また、上記のアリール基、アラルキル基、脂環式基には、上記の炭素数の範囲でメチル基、エチル基又はプロピル基などの低級アルキル基がさらに置換していてもよい。
【0072】
本発明に使用できる好ましい有機珪素化合物の具体例は、下記の化合物であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
好ましいポリオルガノシロキサン類としては、▲1▼炭素数1〜5のアルキル基を有するジアルキルシロキサン基、▲2▼炭素数1〜5のアルコキシ基を有するジアルコキシシロキサン基、▲3▼炭素数1〜5のアルコキシ基とフェニル基を有するアルコキシフェニルシロキサン基及び▲4▼エトキシメトキシシロキサン基又はメトキシエトキシシロキサン基のうち、少なくとも一つを繰り返し単位として含み、重合度が2〜12、より好ましくは2〜10のポリオルガノシロキサンである。また、その端末基は、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜5のヒドロキアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基である。より好ましい端末基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基及びエトキシ基である。
その中でも好ましいシロキサン化合物は、重合度が2〜10のジメチルポリシロキサン、重合度が2〜10のジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合物、重合度が2〜8のジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合物、重合度が2〜8のジメチルシロキサン−モノメチルシロキサン共重合物でこれらのポリシロキサン化合物の端末はトリメチルシラン基である。そのほか、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,5−ビス(3−アミノプロピル)ヘキサメチルトリシロキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,5−ジブチル−1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチル−トリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0074】
特に好ましい汎用化合物として、いわゆるシリコーンオイルがあり、ジメチルシリコーンオイル(市販品では、例えばシリコーンKF96(信越化学工業(株)製)、メチルフェニルシリコーンオイル(市販品では、例えばシリコーンKF50(信越化学工業(株)製)、メチルハイドロジェンシリコーンオイル(市販品では、例えばシリコーンKF99(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0075】
そのほか、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリ−t−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシランなどのシラン化合物も挙げらることができる。
【0076】
有機化合物の雰囲気のもとで疎水性発現温度に加熱を行うには、原板表面に接するように設けられた加熱部の外套内に有機化合物充填容器を置いて、加熱時間中に有機化合物の蒸気を外套内に存在させるのがよい。また、有機化合物を含浸させた紙、布、ゼオライト、珪草土などを外套内に挿入して加熱するのもよい。
【0077】
以上で疎水性発現温度への加熱方法及び操作の説明を終わり、このようにして疎水性化した表面への活性光による印刷用画像の付与について説明する。
原板表面に照射される活性光の光源は、光触媒能を有する物質の感光域の波長の光、すなわち光吸収域に相当する波長の光を発する光源である。例えば光触媒能を有する物質が酸化チタンの場合では、アナターゼ型が387nm以下,ルチル型が413nm以下、酸化亜鉛は387nm以下に、その他の多くの金属酸化物の場合も250〜390nmの紫外部に感光域を有しており、また、酸化亜鉛の場合は、固有吸収波長域(紫外線領域)のほかに、既知の方法で分光増感を行って適用できる活性光の波長領域を拡げることもでき、したがって使用される光源は、これらの波長領域の光を発する光源であり、主として紫外線を発する光源といえる。
活性光の光触媒作用によって親水性領域の像様の分布を形成させる手段には、面露光方式、走査方式のいずれでもよい。
面露光方式の場合は、一様な光をマスク画像(例えば印刷原稿を現像したリスフィルム)を通して原板上に照射して、照射領域の表面を親水性化する方式である。支持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体とマスク画像を通して露光することもできる。面露光方式で活性光の照射を行うのに適した光源は、水銀灯、タングステンハロゲンランプ、その他のメタルハライドランプ、キセノン放電灯などである。その露光時間は、上記の露光強度が得られるように露光照度を勘案して決定される。
【0078】
好ましい照射光の強さは、光触媒型金属酸化物の画像形成層の性質によって異なり、また活性光の波長、分光分布及び光触媒能を有する熱応答型物質の光吸収率によっても異なるが、通常はマスク画像(例えば現像済みリスフィルム)で変調する前の面露光強度が0.05〜100joule/cm2 ,好ましくは0.05〜10joule/cm2 ,より好ましくは0.05〜5joule/cm2 である。
また、光触媒反応には相反則が成立することが多く、例えば10mW/cm2 で100秒の露光を行っても、1W/cm2 で1秒の露光を行っても、同じ効果が得られる場合も多く、このような場合には、活性光を発光する光源の選択の幅は広くなる。
【0079】
後者、すなわち走査式露光の場合には、画像マスクを使用する代わりにレーザービームを画像で電気的に変調して原板上を走査する方式が行われる。レーザー光源は、活性光のビームを発振する公知のレーザーを用いることができる。例えば、励起光として発振波長を325nmに有するヘリウムカドミウムレーザー、発振波長を351.1〜363.8nmに有する水冷アルゴンレーザー、330〜440nmに有する硫化亜鉛/カドミウムレーザーなどを用いることができる。さらに、紫外線レーザー、近紫外線レーザー発振が確認されている発振波長を360〜440nmに有する窒化ガリウム系のInGaN系量子井戸半導体レーザー、及び発振波長を360〜430nmに有する導波路MgO−LiNb03 反転ドメイン波長変換型のレーザーを使用することもできる。レーザー出力が0.1〜300Wのレーザーで照射をすることができる。また、パルスレーザーを用いる場合には、ピーク出力が1000W、好ましくは2000Wのレーザーを照射するのが好ましい。支持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体を通して露光することもできる。
【0080】
以上で本発明における印刷原板の光触媒作用及び熱応答特性並びに光触媒能と熱応答性をもつ物質について説明した。つぎにこの原板を装着して行う印刷方法および装置について説明する。
【0081】
印刷原板は、光触媒能を有する熱応答型物質の表面にネガモードの親油性・親水性の画像状分布を形成させたのち、現像処理することなく、そのままオフセット印刷工程に送ることができる。
従って通常の公知の平版印刷法に比較して簡易性を中心に多くの利点を有する。すなわち上記したようにアルカリ現像液による化学処理が不要であり、それに伴うワイピング、ブラッシングの操作も不要であり、さらに現像廃液の排出による環境負荷も伴わない。また、上記したような簡易な画像記録手段から容易に印刷を行うことも利点である。
【0082】
光触媒能を有する熱応答型物質から得られた平版印刷版の非画像部は、十分に親水性化しているが、所望により、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理してもよい。本発明の画像記録材料を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージー、あるいは、スキージーローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。
この様な処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機等にかけられ、あるいは印刷機上で製版され、多数枚の印刷に用いられる。
【0083】
次に印刷を終えた印刷版の再生工程について記す。
印刷終了後の印刷版は疎水性の石油系溶剤を用いて付着しているインキを洗い落とす。溶剤としては市販の印刷用インキ溶解液として芳香族炭化水素、例えばケロシン、アイソパ−などがあり、そのほかベンゾール、トルオール、キシロール、アセトン、メチルエチルケトン及びそれらの混合溶剤を用いてもよい。画像物質が溶解しない場合には、布などを用いて軽く拭き取る。また、トルエン/ダイクリーンの1/1混合溶媒を用いるとよいこともある。
【0084】
インキを洗浄除去した印刷版は、前記した方法で疎水性発現温度で加熱を行うことによって版面全体にわたって均一に疎水性を回復する。この疎水性化に先立ち、親水性発現温度に昇温するか、活性光を全面照射して一度親水性化したのち、加熱による疎水性化を行ってもよい。この疎水性化操作は、印刷インキを洗浄除去してから次の製版作業において活性光の像様照射を行うまでの間の任意の時期に行ってもよいが、その原板を次の製版工程に再使用する際に行うのが原板の保管中の履歴の影響を排除できる点で好ましい。
【0085】
本発明に係わる印刷原板の反復再生可能回数は、完全に把握できていないが、少なくとも15回以上であり、おそらく反面の除去不能な汚れ、修復が実際的でない刷面の傷や、版材の機械的な変形(ひずみ)などによって制約されるものと思われる。
【0086】
本発明における印刷原板の構成材料及び製版操作について説明した。次にこの原板を装着して印刷を行う方法及び装置を、図によって説明する。
光触媒能を有する熱応答型物質を表面にもつ印刷用原板は、版胴の構成部材として固定されていてもよく、また着脱自在であってもよい。以下図2以降の説明では、本発明の簡易性を顕著に発揮する前者を例に、すなわち版胴上に印刷原板が固定されている例について説明する。
【0087】
図2は、本発明の第1の実施形態によるオフセット印刷装置の構成を示す図である。図2に示すように本発明の第1の実施形態によるオフセット印刷装置は、酸化チタンや酸化亜鉛など前記した光触媒能を有する熱応答型物質を表面に有する版胴1と、版胴1に対して疎水性発現温度の加熱を行って原板表面を全面疎水性化する加熱部2と、全面疎水性化された版胴1に対して活性光の像様照射を行って親水性・疎水性の像様分布を形成する活性光照射部5と、その版胴1にインキおよび湿し水を供給するインキ・湿し水供給部3と、印刷終了後に版胴1に残存するインキを除去するインキ洗浄部4と、版胴1に保持されたインキを用紙に転写するための中間体としてのブランケット6と、ブランケット6とともに給送された用紙を保持する圧胴7とを備え、これらの部材が本体8内に収容されてなるものである。なお、本体8には、後述するように印刷原稿を焼き付けて現像済みのリスフィルム9を供給するためのフィルム供給部10が設けられている。
【0088】
加熱部2は、温度調節装置付きの電熱加熱器が装備されており、版胴の表面は疎水性発現温度の範囲内に保たれる。この加熱手段は、電熱加熱方式が適しているが、同様に均一な面加熱方式でかつ温度調節も容易な赤外線灯による熱線加熱を採用することもでき、またその他前記した加熱方式を採用することができる。
【0089】
図3は、加熱部2の態様の一つで、有機化合物の蒸気を含んだ雰囲気中で印刷用原板表面を加熱して疎水性化を促進できるように、有機化合物蒸気供給手段を設けた加熱部である。
【0090】
図3において、有機化合物蒸気供給手段29では、空気取り入れ口24より空気が取り入れられて、内径約30mmの分液ろ斗タイプの硝子管を横向きに配置した蒸発室26にコック25を経て導かれる。蒸発室には有機化合物27(斜線で示す)が容積率が例えば50%になるように満たされていて、有機化合物27の内部及び表面を空気が通過する間に必要量の有機化合物の蒸発気体を取り込んでから、版胴1上の印刷用原板表面に導かれ、この空気・蒸発気体の混合雰囲気中で描画が行われる構造となっている。
【0091】
加熱部2の外套の内部の加熱領域は、電熱ヒーター31により、蒸発室26は電熱ヒーター30によりそれぞれ加熱され、その加熱温度は加熱領域及び蒸発室26にそれぞれ配した温度センサー32、33と温度制御部34によって所定温度に制御される。
また、有機化合物27の蒸気の取り込み量は、温度制御部34において印刷用原板の加熱温度を所定の疎水性発現温度に設定したときに、その疎水性が強化されるに足りる量であり、その量になるように蒸発室26の温度が設定される。蒸発室の温度は、例えば、揮発し易い低沸点の有機化合物(例えば、メチルエチルケトンやメチルセロソルブ)の場合は、蒸発室の下部に有機化合物27を満たすだけで加熱する必要はないが、それでは不十分の沸点のやや高い化合物(例えば、ヘキシレングリコール)の場合には、空隙率の大きい硅草土、シリカ粒子、沸石粒子などを有機化合物27とともに蒸発室内に入れて取り入れた空気と有機化合物との接触度を高める措置が取られる。また、有機化合物27がナフタレンのような固形物の場合は、蒸発質26に適当な空隙率で充填される。さらに沸点が高い有機化合物の場合には、温度制御部34、電熱ヒーター30及び温度センサー33によって蒸発室26内部の温度を蒸発に適した温度に調節できる機構となっている。例えば、シリコーンオイルを使用する場合には、シリコーンオイルを含浸させた珪草土が容積率が50%となるように硝子管の下半分に空気と接するように置かれ、空気の温度は取り入れ口24では室温で、この管を通過中に例えば190℃に上昇するように電熱ヒーター30によって加熱される。
なお、図には示してないが、当然のことながら蒸気を含んだ空気は、屋外排気される。また、必要があれば、排気の前に空気浄化も行われる。
加熱部2において表面の疎水性化が行われた原板には、活性光照射部5で活性光の像様照射が行われる。
【0092】
図2に戻って、本形態では活性光照射部5に光源として水銀灯を用いているが、キセノン放電灯、高照度ハロゲン・タングステンランプなどの紫外線成分を含む他の光源であってもよい。版胴の回転方向に対して直角方向に配したスリットによって、版胴の回転に伴って版胴表面に設けた画像マスクすなわちリスフィルム9を通してスリット光による全面走査露光が施される。スリットの幅は必ずしも狭い必要はなく、活性光照射部5を通過中に原板表面に像様の親水性・疎水性分布が形成されるように照度とスリット幅及び版胴の回転速度がきめられる。スリットの代わりに版胴の幅に合わせた照射幅をもついわゆるがんどう型のランプハウスを用いてもよい。
【0093】
活性光照射部5の別の態様としては、図2に示したフィルム供給部10から供給される現像済みリスフィルム9を画像マスクとして用いる代わりに、画像情報を担持したレーザー光を活性光として照射する方式も用いられる。
図4は、その例で画像情報を担持したレーザー光による描画の例の構成例である。活性光照射部17(図2では、5)は、レーザー光を出射して版胴1に照射するレーザー光源18と、編集・レイアウトW/S20において印刷すべき画像から信号化されて記録部に入力される画像信号Sに基づいて、レーザー光源18を駆動してレーザー光を変調させて版胴1の表面に描画を行うためのレーザー光源駆動部19とからなる。光源18は出射されるレーザー光を版胴1の回転軸方向に版胴1に対して相対的に移動して版胴1上を走査するよう構成されており、版胴1が回転することにより、版胴1の表面が変調されたレーザー光により露光され、版胴1におけるレーザー光が照射されなかった部分が疎水性の画像領域とされ、レーザー光が照射された部分が親水性の非画像領域とされて、ネガ型方式による描画がなされるものである。
レーザー光は、紫外域、可視域又は近赤外域に発振波長をもち、画像信号によって変調されている。本実施形態では、ヘリウムカドミウムレーザーを搭載して、そのビーム光が直接版胴の表面に照射される。この活性光の照射による光反応によって表面が親水性化する。レーザービーム幅は、概略30μm、エネルギー強度は10mW〜10Wが望ましい。一般に強度が強いとそれだけ短時間に照射が終わるので実用的には望ましい。
なお、レーザーは、活性光を発振するものであれば、半導体レーザー、固体レーザーそのほか任意のレーザーを用いることが出来る。
【0094】
なお、ここではレーザーを直接変調する方式を示したが、レーザーと音響光学素子のような外部変調素子との組み合わせによっても同様に描画できることはもちろんである。
【0095】
次いで、第1の実施形態の動作について説明する。
まず、疎水性温度に加熱する加熱部2を回転しながら通過する版胴1の表面部分は、加熱によって親水性から親油性に変化する。加熱部の温度は、温度制御部34によって疎水性発現温度の範囲内に制御されている。また、加熱雰囲気中に有機化合物を存在させる場合は、有機化合物供給手段29によって加熱雰囲気中に有機化合物蒸気を含ませる。全面が疎水性化した版胴は、活性光照射部5で、画像マスクを経ることにより、又は画像情報で変調させることにより、像様分布が付与された活性光の照射を受けて、照射を受けた領域が親水性で、照射を受けなかった領域は親油性を有する親水性・親油性の画像状分布が得られる。活性光の照射が終了すると、次いで、インキ・湿し水供給部3よりインキおよび湿し水が版胴1に供給される。これにより、版胴1の親油性の画像領域にはインキが保持され、親水性の非画像領域にはインキが保持されることなく湿し水が保持される。
【0096】
その後、ブランケット6と圧胴7との間に矢印Aに示すように用紙を供給し、版胴1に保持されたインキをブランケット5を介して用紙に転写することによりオフセット印刷が行われる。
【0097】
印刷終了後、インキ洗浄部4により版胴1に残存するインキを除去する。その後、版胴1を疎水性温度の加熱部2を通して疎水性化することにより、版胴1の像様の親水性領域は消去されて、活性光による像様の光照射前の状態に戻る。
【0098】
このように、本発明によるオフセット印刷装置によれば、全面加熱による疎水性の均一表面の形成と活性光による像様照射のみで版胴1にネガ型方式の印刷画面を形成することができ、これにより現像が不要でかつ印刷面の鮮鋭性が保たれたオフセット印刷を行うことができる。また、版胴1を洗浄して再度全面加熱することにより元の状態に戻すことができるため、版胴1を反復使用することができ、これにより印刷物を低コストで提供することができることとなる。さらに、印刷装置から版胴1を取り外す必要がないため、従来のPS版のように印刷装置に組み込む際にゴミなどが付着することもなくなり、これにより、印刷品質を向上させることができる。
【0099】
また、印刷用原板として版胴1を使用し、版胴1の周囲に疎水性温度での加熱部2、インキ・湿し水供給部3、インキ洗浄部4および活性光照射部5を配設することにより、単に版胴1を回転させるのみで、原板の全面疎水性化、活性光による像様照射およびインキと湿し水の供給、さらには印刷終了後のインキ洗浄を行うことができるため、装置をコンパクトに構成することができ、これにより省スペース化を図ることができる。
【0100】
さらに、ネガ型の簡易な製版方式の中でも、加熱温度を制御して全面疎水性化してから活性光の像様照射を行う本発明が、加熱操作を行わないで直接活性光の像様照射を行う方式や、加熱走査をおこなっても加熱温度の疎水性発現温度への制御を行わないで活性光の像様照射を行う方式に比較して、▲1▼均一性の高い疎水性表面が得られること、▲2▼疎水性化に続いて直ちに活性光による像様照射を行うことができること、▲3▼履歴に影響されず、再現性がよいことなどの利点を有している。その結果、画像領域と非画像領域の識別性の高い印刷版を再現性よく製作することができるという利点がある。さらなる利点としては、有機化合物の存在下で疎水性化の加熱を行うことによって疎水性化が促進されて親水性と疎水性の識別効果が一層高められ、印刷版の品質を高めることができることである。
【0101】
〔実施例1〕
上記実施形態1による実施例を示す。
99.5重量%アルミニウムに、銅を0.01重量%、チタンを0.03重量%、鉄を0.3重量%、ケイ素を0.1重量%含有するJISA1050アルミニウム材の厚み0.30mm圧延板を、400メッシュのパミストン(共立窯業製)の20重量%水性懸濁液と、回転ナイロンブラシ(6,10−ナイロン)とを用いてその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。
これを15重量%水酸化ナトリウム水溶液(アルミニウム4.5重量%含有)に浸漬してアルミニウムの溶解量が5g/m2になるようにエッチングした後、流水で水洗した。更に、1重量%硝酸で中和し、次に0.7重量%硝酸水溶液(アルミニウム0.5重量%含有)中で、陽極時電圧10.5ボルト、陰極時電圧9.3ボルトの矩形波交番波形電圧(電流比r=0.90、特公昭58−5796号公報実施例に記載されている電流波形)を用いて160クローン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。水洗後、35℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、アルミニウム溶解量が1g/m2になるようにエッチングした後、水洗した。次に、50℃、30重量%の硫酸水溶液中に浸漬し、デスマットした後、水洗した。
【0102】
さらに、35℃の硫酸20重量%水溶液(アルミニウム0.8重量%含有)中で直流電流を用いて、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。即ち電流密度13A/dm2で電解を行い、電解時間の調節により陽極酸化皮膜重量2.7g/m2とした。
この支持体を水洗後、70℃のケイ酸ナトリウムの3重量%水溶液に30秒間浸漬処理し、水洗乾燥した。
以上のようにして得られたアルミニウム支持体は、マクベスRD920反射濃度計で測定した反射濃度は0.30で、中心線平均粗さは0.58μmであった。
【0103】
次いでこのアルミニウム支持体を真空蒸着装置内に入れて、全圧1.5x10-4Torrになるように分圧70%の酸素ガスの条件下でチタン金属片を電熱加熱して、アルミニウム支持体上に蒸着して酸化チタン薄膜を形成した。この薄膜の結晶成分はX線解析法によって無定型/アナターゼ/ルチル結晶構造の比が1.5/6.5/2であり、TiO2薄膜の厚さは900オングストロームであった。これを版胴1の基体に巻き付けて機上印刷用の原板とした。
【0104】
図3に示した態様の加熱部を使用して(ただし、蒸発室に有機化合物を充填しないで)、加熱温度を200℃に制御した電熱加熱による加熱を行った。加熱部の通過時間が1分となる回転速度で版胴を回転させた。加熱後の原板表面の水に対する接触角をContact Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したところ、いずれの部分も48〜51度の間にあった。
【0105】
次いで、図3の活性光照射部5に、US10焼き付け用光源装置ユニレックURM600形式GH60201X(ウシオ電気工業(株)製)を用いて光強度100mW/cm2 のもとで通過時間が15秒となる回転速度で版胴を回転させた。フィルム供給装置10から供給された現像済みフィルムを通して原板表面に像様の活性光露光が行われた。照射後の原板表面の水に対する接触角をContact Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したところ、いずれの照射領域も7〜9度の間にあった。
【0106】
この版胴1をサクライ社製オリバー52片面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0107】
次いで洗浄部4において、版胴1の表面を印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;大日本インキ化学工業社)とトルエンの1/1混合液をウエスにしみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去した。再び加熱部2において200℃で加熱を行った。前と同じ方法で接触角を測定した。版表面のどの部分も48〜55度の間にあった。
【0108】
次いで、この版胴1の表面に上記と同一の条件で像様露光を行った。
この版胴1をサクライ社製オリバー52片面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0109】
以上の繰り返しを5回実施したところ、活性光照射後の接触角の値、加熱による接触角の回復スピード及び印刷面の画像の鮮明さの変化は認められなかった。この結果から、酸化チタン層をアルミニウム支持体上に設けた印刷原板を使用し、実施形態1の印刷装置を用いて活性光の像様照射と疎水性発現温度への加熱によってネガ方式の製版による印刷が可能であり、しかもインキの洗浄除去のみで印刷原板を反復再生使用できることが示された。
【0110】
〔実施例2〕
真空蒸着装置中に100ミクロン厚みのSUS板をセットして全圧5×10-3Torrの真空下でセレン化亜鉛を1000オングストロームの厚みに蒸着した。これを空気中600°Cで2時間酸化処理してSUS板の片面に酸化亜鉛の薄膜を形成させた。
【0111】
この酸化亜鉛皮膜付き100ミクロンSUS板を実施例1と同じく、実施形態1の印刷装置の版胴1の基体に巻き付けて機上製版型の原板とした。
【0112】
実施例1と同じ方法で、加熱温度を200℃に制御した電熱加熱による加熱を行った。加熱部の通過時間が1分となる回転速度で版胴を回転させた。加熱後の原板表面の水に対する接触角をContact Angle Meter CA-D(協和界面科学(株)製)を用いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したところ、いずれの部分も50〜57度の間にあった。
【0113】
次いで、実施例1と同じユニレックURM600形式GH60201Xを用いて同じ条件で、現像済みフィルムを通して原板表面に活性光の像様照射を行った。照射後の原板表面の水に対する接触角をContact Angle Meter CA-Dを用いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したところ、いずれの照射領域も10〜13度の間にあった。
【0114】
この版胴1をサクライ社製オリバー52片面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0115】
次いで洗浄部4において、版胴1の表面を印刷用インキ洗浄液ダイクリーンR(発売元;大日本インキ化学工業社)とトルエンの1/1混合液をウエスにしみ込ませて丁寧に洗浄してインキを除去した。再び加熱部5を通電して前と同じ条件で加熱した後、室温まで冷えた状態で前と同様の方法で接触角を測定した。版表面のどの部分も50〜57度の間にあった。
【0116】
次いで、実施例1と同じユニレックURM600形式GH60201Xを用いて同じ条件で、現像済みフィルムを通して原板表面に活性光の像様照射を行った。照射後の原板表面の水に対する接触角をContact Angle Meter CA-Dを用いて空中水滴法で表面の水に対する接触角を測定したところ、いずれの照射領域も10〜13度の間にあった。
【0117】
この版胴1をサクライ社製オリバー52片面印刷機に使用して、インキ・湿し水供給部3において湿し水を純水、インキを大日本インキ化学工業社製Newchampion Fグロス85墨を用いて1000枚オフセット印刷を行った。スタートから終了まで鮮明な印刷物が得られ、版胴1の損傷も認められなかった。
【0118】
この結果から、酸化亜鉛層をSUS支持体上に設けた印刷原板を使用し、態様1の印刷装置を用いて活性光にとる全面照射とヒートモード印字によって印刷が可能であり、しかもインキの洗浄除去のみで印刷原板を反復再生使用できることが示された。
【0119】
〔実施例3〕
実施例1と同様にして陽極酸化処理したアルミニウム支持体をCsLa2 NbTi2 10の化学量論比に相当するセシウムエトキシド、チタンブトキシド、ランタンイソブトキシド、ニオブエトキシドを含む20%のエタノール溶液に浸漬して表面を加水分解したのち280°Cに加熱してアルミニウム支持体表面にCsLa2 NbTi2 10の厚み1000オングストロームの薄膜を形成させた。
【0120】
この複合金属酸化物薄膜付きアルミニウム支持体を版胴の基体に巻き付けて原板とした以外は、実施例1と同じ製版、印刷及びインキ洗浄除去、再印刷を行った。
加熱後の疎水性領域の水に対する接触角は、1回目及び2回目とも45〜50度であり、また、活性光の照射領域の接触角は、10〜14度であった。印刷面の品質も1回目及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の識別性も十分であった。
【0121】
〔実施例4〕
厚み100ミクロンのポリイミド(無水ピロメリット酸・m−フェニレンジアミン共重合物)フィルム(商品名;カプトン、東レ・デュポン社製)を真空蒸着装置内にセットし、二酸化チタンを熱応答性金属酸化物とした原板を作製した。すなわち、上記ポリイミド支持体をスパッタリング装置内にセットし、全圧1.5×10-4Torrで酸素分圧70%の条件下でチタン金属片を加熱して二酸化チタン薄膜を蒸着形成した。この薄膜の結晶成分は、X線解析法によれば、無定型、アナターゼ、ルチルの各結晶の構造比が15/6.5/2であった。また、二酸化チタン薄膜の暑さは900オングストロームであった。これを版胴の基体に巻き付けて原板として使用したことと、活性光の光源としてタングステン・ハロゲンランプを使用した以外は、実施例1と同じ製版、印刷及びインキ洗浄除去、再印刷を行った。使用したタングステン・ハロゲンランプは、市販の写真撮影用500Wスタジオランプである。
加熱後の疎水性領域の水に対する接触角は、1回目及び2回目とも48〜52度であり、また、活性光の照射領域の接触角は、10〜15度であった。印刷面の品質も1回目及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の識別性も十分であった。
【0122】
〔実施例5〕
実施例1において、活性光の像様照射をユニレックスURM600によって行う代わりに、アルゴンレーザーを使用し、現像済みリスフィルムを画像マスクとする代わりにレーザー光ビームを画像情報で変調して照射することによって像様の分布を与えたこと以外は、実施例と同じ方法で印刷版を製作して印刷を行い、かつ印刷版の反復再使用も行った。レーザー光の照射条件は、発振波長が0.35μmで、ビーム径を30μmで走査した。また、その強度は50mWであった。
レーザー照射による親水性化領域の水に対する接触角は、1回目及び2回目とも9〜11度であり、また、印刷面の品質も1回目及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の識別性も十分であった。
【0123】
〔実施例6〕
図3に示した加熱部2と同じ装置を使用して次の試験を行った。空気取り入れ口に内径約30mmの硝子管(分液ろ斗を転用)を横向きに配置し、加熱部内の空気がこの硝子管内を通過して加熱部の内部に取り込まれる構造とした。シリコーンオイル〔商品名シリコーンKF99(信越化学工業(株)製〕を含浸させた珪草土を容積率が50%となるように硝子管の下半分に流しこんだ。空気取り入れ口の温度は、この管を通過中に室温から150℃に上昇する。シリコーンKF99は、この温度では少なくとも1mmHg以上の蒸気圧を持つので、加熱部の内部に取り入れられた空気は、シリコーンKF99の蒸気を含んでいる。空間部の内容積が2リットルの管熱記録部における空気交換速度は、毎分10vol%であった。加熱部にこのオルガノポリシロキサン化合物の蒸気を導入して雰囲気のもとで疎水性化の加熱を行う以外は、実施例1と同じ原板と同じ装置を使用して、同じ条件で製版し、印刷を行い、使用済みの印刷版を同じ方法で再生して再度印刷を行った。加熱後の疎水性領域の水に対する極大接触角は、190℃に現れ、その接触角の値は、72度であった。一方、活性光の像様照射を行った親水性領域の水に対する接触角は、9〜11度であり、シリコーン蒸気の影響は受けていなかった。この結果を実施例1で得た結果と比較すると、疎水性発現温度での加熱を有機珪素化合物蒸気の存在下で行うことによって、接触角が極大となる温度も変化するが、同時に接触角が著しく増加して親油性〜親水性の識別性が向上したことが判る。
【0124】
ついで、この印刷版を使用して、1000枚のオフセット印刷を行った。実施例1と同様にスタートから終了まで鮮明な印刷物が得られたが、さらに印刷を続けて5000枚の印刷を行ったときには、シリコーンKF99を存在させないで印刷した実施例1においては、目視で認められるインキ汚れが生じたが、シリコーンKF99の存在下で印刷を行った実施例6では、インキ汚れは認められず、版胴1の損傷も認められなかった。
【0125】
〔実施例7〕
実施例6におけるシリコーンKF99を下記▲1▼〜▲4▼に記載の有機化合物に変更した以外は、実施例6と同じ方法で加熱疎水化を行った。その結果を表1に示す。表1から判るように加熱部に有機化合物を介在させることによって、画像領域と非画像領域の疎水性と親油性の差が顕著となり、それを反映して耐刷枚数も増加した。表5においてインキ汚れは、5000枚印刷時点で汚れが認められないものを○、許容範囲ながら目視で認められるものを△と表示した。
【0126】
【表1】
Figure 0004299907
【0127】
〔実施例8〕
実施例1で使用したものと同じ粗面化処理と陽極酸化処理を施したアルミニウム支持体を使用してチタン酸バリウムを光触媒能を有する熱応答性金属酸化物とした原板を作製した。すなわち、上記アルミニウム支持体をスパッタリング装置内にセットし、5.0×10-7Torrまで真空排気する。支持体を200°Cに加熱し、Ar/O2 が90/10(モル比)となるようにガス圧を5×10-3Torrに設定し、SiO2 のターゲットにRFパワー200Wを投入してSiO2 の1μmの薄層を形成した。続いてArのガス圧を5×10-3Torrに設定し、SiのターゲットにRFパワー200Wを投入してSiの1μmの薄膜を形成した。続いてArのガス圧を5×10-3Torrに設定し、6インチφのチタン酸バリウムの焼結ターゲットにRFパワー200Wを投入して膜厚1000Åのチタン酸バリウム薄膜を形成した。X線解析法によれば、この薄膜は多結晶体であった。
【0128】
このチタン酸バリウム薄膜付きアルミニウム支持体を版胴の基体に巻き付けて原板として使用したことと、疎水性発現温度で加熱する全面疎水性化に赤外線レーザーを使用した以外は、実施例1と同じ製版、印刷及びインキ洗浄除去、再印刷を行った。
赤外線レーザー装置は、最大出力500mWの固体赤外線レーザー装置で、ビーム幅を100ミクロンにして全面走査露光によって原板表面の疎水性化を行った。
この場合、照射した赤外線光をSiが吸収するので、この薄層が光エネルギーを熱エネルギーに変換する役目を果たす。すなわち、赤外線を照射することで、Si層が発熱するのでチタン酸バリウム層を加熱できる。加熱温度を疎水性発現温度の範囲(155〜250℃)への調節は、レーザー出力の制御によって行った。
赤外線レーザー光照射後の原板表面の水に対する接触角は、1回目及び2回目とも49〜56度であり、紫外線照射による親水性化領域の水に対する接触角は、1回目及び2回目とも12〜16度であり、また、印刷面の品質も1回目及び2回目とも地汚れはなく、画像領域と非画像領域の識別性も十分であった。
【0129】
次いで、本発明の第2の実施形態について説明する。
〔実施形態2〕
図5は本発明の第2の実施形態によるオフセット印刷装置の構成を示す図である。図5に示すオフセット印刷装置は、図2に示すオフセット印刷装置を印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bとして4台直列に本体12内に配置して構成されるものであり、それぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、B(ブラック)のインキを使用してカラー印刷を行うものである。
【0130】
各印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bの構成および動作は上述した図2に示すオフセット印刷装置と同一であるため、詳細な説明は省略する。第2の実施形態においては、各印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bのインキ・湿し水供給部において供給されるインキの色が、それぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、B(ブラック)である点が異なるものである。
【0131】
次いで、第2の実施形態の動作について説明する。
まず、印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bにおいて版胴1をゆっくり回転させながら加熱部2を通過する原板表面の疎水性化を行う。加熱部の構造は図3に説明したので省略するが、加熱雰囲気の温度、及び有機化合物を存在させる場合は、蒸発室の温度は制御部(図3の34)で制御されるので、有機化合物の有無、有機化合物の種類及び原板表面の熱応答物質の種類に応じて最適の条件が選択される。十分の加熱時間で通過する速度で回転し、版胴全面を疎水性にした後に、図2の活性光照射部5による像様照射により各色を表す描画が行われる。そして、各印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bのインキ・湿し水供給部からY,M,C,Bそれぞれの色のインキを供給して、各印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bの版胴1にインキおよび湿し水を保持する。その後、図5の矢印Bに示すように用紙を供給して、各印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bのインキを用紙に転写する。すなわち、印刷ユニット11YにおいてはYのインキが転写され、印刷ユニット11MにおいてはMのインキが転写され、印刷ユニット11CにおいてはCのインキが転写され、印刷ユニット11BにおいてはBのインキが転写される。これにより、用紙にはカラー画像がネガ型の方式で印刷されることとなる。
【0132】
印刷終了後、各印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bのインキ洗浄部により版胴に残存するインキを除去する。その後、版胴1をゆっくり回転させながら加熱部2によって加熱を行い、版胴1の全面を疎水性化して、版胴1は描画前の状態に戻る。ただし、この疎水性化工程は、次の印刷を行う直前に行う方が履歴の影響を避けるためには好ましい。
【0133】
〔実施形態3〕
次いで、本発明の第3の実施形態について説明する。
図6は本発明の第3の実施形態によるオフセット印刷装置の構成を示す図であり、図7は図6の要部拡大図である。図6に示すオフセット印刷装置は、図2に示すオフセット印刷装置を印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bとして本体15内において圧胴7の周囲に配置して構成されるものであり、それぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、B(ブラック)のインキを使用してカラー印刷を行うものである。
【0134】
各印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bの構成は同一であり、印刷ステーション14Yで代表させて図7に示す。図7に示すように、印刷ステーション14Yは、第1の実施形態と同様に、酸化チタンや酸化亜鉛などの光触媒能を有する熱応答型物質を主成分とする表面を有する版胴1と、条件制御された加熱によって版胴1の表面を疎水性にする加熱部2と、疎水性化された版胴1に対して活性光の像様照射を行うための活性光照射部5と、像様照射がなされた版胴1にインキおよび湿し水を供給するインキ・湿し水供給部3と、印刷終了後に版胴1に残存するインキを除去するインキ洗浄部4と、版胴1に保持されたインキを用紙に転写するための中間体として圧胴7に接触するブランケット6とが設けられている。
【0135】
なお、印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bの動作は上述した図2に示すオフセット印刷装置と同一であるため、詳細な説明は省略する。第3の実施形態においては、各印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bのインキ・湿し水供給部において供給されるインキの色が、それぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、B(ブラック)である点が異なるものである。
【0136】
次いで、第3の実施形態の動作について説明する。
まず、印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bにおいて版胴を加熱部において温度制御された加熱によって全面を疎水性化したのち、活性光照射部により像様の活性光照射により各色を表す画像をネガモードで描画する。そして、各印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bのインキ・湿し水供給部からY,M,C,Bそれぞれの色のインキを供給して、各印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bの版胴1にインキを保持する。その後、図5の矢印Cに示すように用紙を供給して、圧胴7の周囲において用紙を搬送し、各印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bのインキを用紙に転写する。すなわち、印刷ステーション14YにおいてはYのインキが転写され、印刷ステーション14MにおいてはMのインキが転写され、印刷ステーション14CにおいてはCのインキが転写され、印刷ステーション14BにおいてはBのインキが転写される。これにより、用紙にはカラー画像が印刷されることとなる。
【0137】
印刷終了後、各印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bのインキ洗浄部により版胴に残存するインキを除去する。その後、版胴を上記と同じ条件で加熱を行うことにより、版胴は活性光による描画前の状態に戻る。
【0138】
なお、上記第2および第3の実施形態においては、4つの印刷ユニット11Y,11M,11C,11Bあるいは4つの印刷ステーション14Y,14M,14C,14Bを用いてカラー印刷を行っているが、5つあるいはそれ以上の印刷ユニットまたは印刷ステーションを設けてカラー印刷を行うようにしてもよい。
【0139】
なお、上記第1から第3の実施形態においては、版胴1を使用しているが、これに限定されるのもではなく、シート上の印刷用原板を使用してオフセット印刷を行うものであっても、本発明を適用することができるのはもちろんである。
【0140】
また、上記第1から第3の実施形態においては、加熱部2から時計回りにインキ洗浄部4、インキ・湿し水供給部3および活性光照射部5を配置しているが、これに限定されるものではなく、任意の順序にて配置することができる。
【0141】
さらに、上記の各実施形態及び実施例は、本発明がこれらの例に記載された熱応答型物質に限定されるものではなく、前記した任意の光触媒能を有する熱応答型物質を使用することができる。
【0142】
【発明の効果】
本発明の光触媒能を有する熱応答型物質、中でも光触媒能を有する熱応答型金属及び金属酸化物を画像形成層とした印刷用原板を疎水性発現温度で加熱してその表面を疎水性として、その表面に活性光を像様照射して、親水性と疎水性の像様分布を形成させて印刷版を作成する印刷方法は、現像などの処理を必要とせず、直接印刷版を作成することができ、かつ印刷終了後、印刷版のインキを除去して印刷原板を再生して反復使用することができる。また、原板を印刷機の版胴に装着し、印刷機上で、親水性化、ヒートモード描画、インキ・湿し水供給及び印刷後の原板再生を行う印刷装置を用いて簡易で安価なオフセット印刷を行うことができる。この方法及び装置は、ネガ型の製版方式であって、かつ光触媒能を有する原板に直接活性光の像様照射を行う製版・印刷方法や、疎水性発現領域に調整せずに加熱してから活性光の像様照射を行う製版・印刷方法に比べて、画像領域と非画像領域との識別性が高く、印刷品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる酸化チタン表面の温度・接触角の関係を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるオフセット印刷装置の構成を示す図である。
【図3】有機化合物蒸気供給手段を設けた加熱部の一態様の構成を示す図である。
【図4】活性光照射部の一態様の構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態によるオフセット印刷装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態によるオフセット印刷装置の構成を示す図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【符号の説明】
1 版胴
2 疎水性発現温度への加熱部
3 インキ・湿し水供給部
4 インキ洗浄部
5 活性光照射部
6 ブランケット
7 圧胴
8 12,15 本体
11Y,11M,11C,11B 印刷ユニット
14Y,14M,14C,14B 印刷ステーション
17 活性光照射部
18 レーザー光源
19 レーザー光源駆動部
20 編集・レイアウトW/S
24 空気取り入れ口
25 コック
26 蒸発室
27 有機化合物
29 有機化合物供給手段
30 電熱ヒーター
31 電熱ヒーター
32 温度センサー
33 温度センサー
34 温度制御部

Claims (11)

  1. 光触媒能を有する印刷用原板を製版直前に、加熱温度で安定な有機化合物の蒸気の存在下において疎水性発現温度で加熱して表面を疎水性化し、引き続き該表面に活性光の像様照射を施して照射部分を親水性化することによって親水性領域と疎水性領域の像様分布を形成させ、疎水性領域を印刷用インキに接触させることによって該領域がインキを受け入れた印刷面を形成させて印刷を行うことを特徴とするオフセット印刷方法。
  2. 疎水性発現温度が50〜250℃であることを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷方法。
  3. 印刷に使用した印刷版面上に残存するインキを洗浄除去したのち、その印刷版を印刷用原板として請求項1又は2に記載の操作を反復して印刷を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット印刷方法。
  4. 疎水性発現温度で加熱する際に存在させる有機化合物が、温度400℃において少なくとも1mmHg以上の蒸気圧を有し、かつ疎水性発現温度において安定な有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷方法。
  5. 疎水性発現温度で加熱する際に存在させる有機化合物が、沸点が30〜400℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
  6. 印刷用原板の表面が、TiO2 、BaTiO3、CsLaNbTi10、HCa1.5 La0.5 Nb2.5 Ti0.5 10,HLa2 NbTi2 10及びZnOの少なくとも一つによって構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のオフセット印刷方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法に使用するオフセット印刷装置であって、光触媒能を有する印刷用原板を装着した原板装着部と、該原板を製版直前に加熱温度で安定な有機化合物の蒸気の存在下において疎水性発現温度に加熱してその表面を疎水性化する加熱手段と、引き続き該原板に活性光の像様照射を施して親水性領域と疎水性領域の像様分布を形成させる描画手段と、該疎水性領域に印刷用インキを供給して該領域がインキを受け入れた印刷面を形成させるインキ供給手段と,該印刷面を印刷される面と接触させて印刷を行う印刷手段と、を有することを特徴とするオフセット印刷装置。
  8. 印刷終了後、印刷版に残存するインキを除去する手段を有することを特徴とする請求項7に記載のオフセット印刷装置。
  9. 少なくとも加熱手段、描画手段、インキ供給手段およびインキ除去手段が、版胴の周囲に配設されてなることを特徴とする請求項7又は8に記載のオフセット印刷装置。
  10. 印刷用原板が版胴の一部を構成しており、少なくとも加熱手段、描画手段、インキ供給手段およびインキ除去手段が、前記版胴の周囲に配設されてなることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のオフセット印刷装置。
  11. 印刷用原板を疎水性発現温度で加熱して表面を疎水性とする加熱手段が、該原板の表面に有機化合物の蒸気が接するように有機化合物蒸気供給手段を配していることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のオフセット印刷装置。
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