JP4295002B2 - 光学物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れたフォトクロミック特性と優れた強度特性を兼ね備えた眼鏡レンズ等の光学物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミック眼鏡とは、太陽光のような紫外線を含む光が照射される屋外ではレンズが速やかに着色してサングラスとして機能し、そのような光の照射がない屋内においては退色して透明な通常の眼鏡として機能する眼鏡であり、近年その需要は増大している。
【0003】
フォトクロミック性を有するプラスチックレンズの製造方法の一つとして、モノマーにフォトクロミック化合物を溶解させそれを重合させることにより直接フォトクロミックレンズを得る方法(以下、練り込み法という)が知られている。
【0004】
該方法は、フォトクロミック性の付与をレンズ成形と同時に行なうものであり、一旦レンズを成形してから後でフォトクロミック性を付与するための処理を行なう方法と比べて一段階でフォトクロミック性プラスチックレンズが得られるという利点を有している。
【0005】
フォトクロミック性はフォトクロミック化合物が光エネルギーを吸収して可逆的な構造変化を起すことにより発現するのであるが、練り込み法で得られるフォトクロミック性プラスチックレンズにおいては、フォトクロミック化合物が樹脂マトリックス中に分散しているため、発色濃度や退色速度といったフォトクロミック特性に関してフォトクロミック化合物が本来有する特性を十分に発揮できないことが多い。これは、溶液中に比べてこのようなマトリックス中では自由空間が圧倒的に小さいためこのような構造変化が制約を受け易いという理由によるもので、特に硬度及び耐熱性の高い樹脂マトリックスに高分子量のフォトクロミック化合物を分散させた場合にその傾向は顕著である。たとえば、プラスチックレンズ基材として汎用されている樹脂組成物に分子量300以上のフォトクロミック化合物を分散させた場合には、フォトクロミック化合物の退色半減期は大幅に長くなり(退色速度が大幅に遅くなり)、樹脂マトリックス中の退色速度は溶液中の退色速度の50倍以上になってしまう。
【0006】
このような問題のない、即ち優れたフォトクロミック特性を有し硬度及び耐熱性が高いフォトクロミック性硬化体を与える樹脂組成物としては、(A)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が40以下である重合性モノマー、(B)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である3官能以上の重合性モノマー、(C)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である2官能の重合性モノマー及び(D)フォトクロミック化合物を含んでなる重合硬化性組成物(以下、従来組成物ともいう)が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
国際公開第01/05854号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来組成物は練り込み法でフォトクロミック性プラスチックレンズを製造する際の原料組成物として極めて有用なものであるが、該組成物を硬化させて得られた硬化体を最近流行しているリムレス眼鏡(レンズに直接穴をあけてフレームを固定した縁のない眼鏡)用に用いようとする場合には、ドリルを用いて穿孔加工する際に亀裂が入ったり、或いは穿孔加工時に特に問題がない場合でも固定されたフレームに負荷をかけると固定部のレンズが破損したりするという問題が発生することが明らかとなった。
【0009】
そこで、このような穿孔加工時或いは加工後の強度(以下、耐穿孔加工強度ともいう)が低下する原因を探るべく、上記従来組成物の組成比を検討した結果、前述の単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である3官能以上の重合性モノマー(以下、多官能重合性モノマーともいう。)の添加量が多い場合には硬化体の耐穿孔加工強度が著しく低下することが判明した。このことから耐穿孔加工強度向上のためには多官能重合性モノマー量を減らせば良いが、多官能重合性モノマーの添加量を少なくしすぎると、優れたフォトクロミック特性を得ることが難しくなるといったトレードオフの関係が存在する。そこで、前記従来組成物において、耐穿孔加工強度を含めた物性バランスを考慮して使用する重合性モノマーの種類や組成の最適化を行なうことにより、一応実用に耐え得るレベルの耐穿孔加工強度、耐熱性、硬度およびフォトクロミック特性を有する硬化体を与える重合性組成物(以下、最適化重合組成物ともいう。)を得ることに成功した。
【0010】
上記最適化重合組成物の硬化体は、(i)少なくとも1種のフォトクロミック化合物が分散した樹脂からなり、(ii)該樹脂中に分散したフォトクロミック化合物の退色半減期が該フォトクロミック化合物の溶液中における退色半減期の10倍以内であり、且つ(iii)後述する引張り強度が15Kgf以上であるという特徴を有する。
【0011】
ところが、上記最適化重合性組成物の硬化体を用いてフォトクロミック眼鏡レンズを製造するに際し、その表面にハードコートを施した場合には基材が本来有する耐穿孔加工強度が得られない(前記引張り強度が30〜50%低下する)という更なる問題が発生することが判明した。ハードコートはガラスレンズに比べて傷つき易いプラスチックレンズの耐擦傷性を改良する方法として汎用的な方法であり、ハードコート処理品において十分な耐穿孔加工強度が得られないことは用途が大きく制限されることを意味する。
【0012】
そこで、本発明は、ハードコート処理を施した後でも発色濃度が高く、退色速度が速いといった優れたフォトクロミック特性を示し、しかも硬度や耐熱性は実用的レベルであり、更にリムレス眼鏡に使用できる十分な耐穿孔加工強度をも兼ね備えたフォトクロミック性プラスチックレンズを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
フォトクロミック化合物を含まないプラスチックレンズでは、ハードコートを施用したものでも耐穿孔加工強度が特に問題となっていないことからハードコート層自体に問題があるとは考えられないこと、また、最適化重合組成物の硬化体自体の耐穿孔加工強度は高いことから、本発明者らは、ハードコート処理を行なうことにより耐穿孔加工強度が低下するのは、ハードコート処理時に耐穿孔加工強度を低下させる何らかの原因があるのではないかと考え、その原因を究明すべく鋭意検討を行なった。その結果、ハードコート処理時にハードコート剤を硬化させる際に起こるハードコート層の収縮により基材に応力がかかることが原因で耐穿孔加工強度が低下しているという知見を得るに至った。そして、該知見に基づき更に検討を行なった結果、ハードコート層と最適化重合組成物の硬化体からなる基材との間にこの応力を緩和させる緩衝層を設けた場合にはハードコート処理を行なっても耐穿孔加工強度が低下しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、表面にハードコート層を有する光学物品であって、少なくとも1種のフォトクロミック化合物が分散した樹脂からなり、該樹脂が、(A)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が40以下である重合性モノマー、(B)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である3官能以上の重合性モノマーおよび(C)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である2官能の重合性モノマー、を含有する組成物であって、上記(B)の3官能以上の重合性モノマーとして少なくとも3つ以上のラジカル重合性基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを使用し、その含有量を全重合性モノマーに対し1〜30重量%とした重合性組成物を硬化させて得た樹脂である基材とハードコート層とが前記基材および前記ハードコート層に密着性を有し且つその鉛筆硬度がハードコート層の鉛筆硬度よりも低い緩衝層を介して接合されてなることを特徴とする光学物品である。
【0015】
ここで、引張り強度とは、試験片の重心を通り且つ試験片を横断する任意の直線と基板周縁との2つの交点からそれぞれ4mm内側の当該直線上の2点をそれぞれ中心として、試験片に直径2mmφの2つの穴をドリル加工により穿孔し、次いで得られた2つの穿孔に夫々直径1.6mmφのステンレス製の棒を貫通せしめた後にこれら2本の棒を夫々引張り試験機の上下のチャックに固定し、5mm/分の速度で引張り試験を行なったときの引張り強度を意味する。なお、試験片の形状にもよるが、通常の加工された眼鏡レンズのような形状を有する場合には、試験片に設けられる上記2つの孔うちの一つがリムレスフレームを取り付けるときの孔と同じかほぼ同じ位置となるように上記直線を決定するのが好適である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の光学物品は、前記最適化重合組成物の硬化体からなる基材、即ち(i)少なくとも1種のフォトクロミック化合物が分散した樹脂からなり、(ii)該樹脂中に分散したフォトクロミック化合物の退色半減期が該フォトクロミック化合物の溶液中における退色半減期の10倍以内であり、且つ(iii)前記引張り強度が15Kgf以上である基材に特有の「ハードコート処理をすると耐穿孔加工強度が低下する」という問題を解決するために開発されたものである。したがって、本発明では、上記(i)〜(iii)の条件を満足する基材を使用する必要がある。
【0017】
ここで、退色半減期とは、後述する実施例で定義されるように、光照射してフォトクロミック化合物を発色状態にした後に光照射を止めたときに、前記最大波長における吸光度が発色時の1/2まで低下するのに要する時間を意味し、フォトクロミック特性のうち最も重要な特性のひとつである退色速度の指標となる値である。該基材中のフォトクロミック化合物の退色半減期が、溶液中の該フォトクロミック化合物の退色半減期の10倍以内、好ましくは7倍以内、特に好ましくは5倍以内であることは、優れたフォトクロミック特性を有することを意味する。なお、上記フォトクロミック化合物溶液の溶媒は特に限定されないが、基準となる溶媒としてエチレングリコールジメチルエーテルを挙げることができる。また、基材中における退色半減期を絶対値で表せば、4分以内、好適には2分以内である。
【0018】
次に、引張り強度とは、耐穿孔加工強度の指標となるものであり、課題を解決するための手段の欄で定義したとおりのものである。定義に示される引張り強度試験において、試験片の破壊は通常ドリル穿孔された孔の近傍で起こり、通常眼鏡レンズとして使用されるものに関しては、引張り強度は基材の形状には殆ど影響を受けない。リムレス眼鏡に使用し得る引張り強度は、15Kgf以上、好ましくは20Kgf以上である。引張り強度が15Kgf以上であることは、リムレス眼鏡のモニター使用において良好な結果を示すこと及び基材の任意の位置にドリル加工により直径2mmφの穴を2100rpmの回転数で激しく(目安として、1穴/1秒以内の速度で)穿孔した時に、大きなクラックが入らない(クラックの長さが0.4mm以内に収まる)ことに対応している。基材の引張り強度が非常に高い場合には、そのままハードコート処理をして全体としての引張り強度が低下してもフレームレス用のレンズとして使用可能な場合もあるため、本発明の光学物品のような構造をとることのメリットが大きいという理由から、基材の引張り強度は15〜40Kgf、特に20〜35Kgfであるのが好適である。
【0019】
なお、本発明では、基材を上記(ii)及び(iii)のような物性によって特定しているが、これは次のような理由による。すなわち、前記最適化重合組成物の硬化体は、何らかの構造的特徴によって上記(ii)及び(iii)に示されるような物性的特長が発現しているものと考えられるが、現在の分析技術でそのフォトクロミック化合物を含む架橋性高分子のような複雑な系のミクロ構造を分析し、物性に影響を与えている構造的特徴を特定することは極めて困難であるという理由による。本発明においては、前記(i)〜(iii)の条件を満たす基材であれば何ら制限なく使用することができるが、更に(iv)ロックウェル硬度が60〜120、特に70〜110であるものを使用するのが好適である。
【0020】
本発明で使用する基材は、例えば国際公開第01/05854号パンフレットに記載されている、(A)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が40以下である重合性モノマー、(B)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である3官能以上の重合性モノマー(多官能重合性モノマー)および(C)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である2官能の重合性モノマー、を含めた全重合性モノマー100重量部に対して(D)フォトクロミック化合物を0.001〜5重量部含有する組成物(従来組成物)のうち、上記(B)の多官能重合性モノマーとして少なくとも3つ以上のラジカル重合性基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー使用し、その含有量を全重合性モノマーに対し1〜30重量%とした重合性組成物を硬化させることにより好適に得ることができる。
【0021】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量が1重量%未満の場合には、前記(ii)の条件を満足することができず、十分なフォトクロミック特性が得られない。逆に上記多官能(メタ)アクリレートモノマーの上記含有量が30重量%を越える場合には、引っ張り強度が15Kgf未満となり、リムレス眼鏡に使用し得る強度が得られない。
【0022】
ここで、少なくとも3つ以上のラジカル重合性基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されないが、入手の容易さから下記式(1)
【0023】
【化2】
【0024】
{式中、R1は水素原子又はメチル基であり、基−R2−は−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−又は−C(=O)CH2CH2CH2CH2CH2O−で表される基であり、R3は3〜6価の有機残基であり、aは0〜3の整数であり、bは3〜6の整数である。}
で示される重合性モノマーを使用するのが好適である。
【0025】
前記式(1)で示される重合性モノマーのうち、好適に使用できるものを具体的に例示すれば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、カプロラクタン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、カプロラクタン変性ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、カプロラクタン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることができる。
【0026】
本発明で使用する基材の原料として好適な上記硬化性組成物は、(B)成分として特定量の少なくとも3つ以上のラジカル重合性基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを使用するほかは国際公開第01/05854号パンフレットに記載されている硬化性組成物(従来組成物)と特に変わるところはなく、(A)成分、(C)成分および(D)成分、さらには必要に応じて使用する任意成分としては同パンフレットに開示されているものが何ら制限なく使用できる。
【0027】
例えば、(A)成分としては、平均分子量526のポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量360のポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量1000のメチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量375のポリプロピレングリコールメタクリレート、平均分子量430のポリプロピレングリコールメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル等が使用できる。
【0028】
また、(C)成分としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ノナプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,9−ノニレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジメタクリレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィドが使用できる。
【0029】
また、任意成分である(A)〜(C)成分以外の重合性モノマーとしては、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル等の多価アリル化合物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物等が使用できる。
【0030】
本発明で使用する基材の原料として好適な上記硬化性組成物における重合性モノマー成分の組成は(B)成分としての多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量を1〜30重量%とする以外は特に限定されないが、優れたフォトクロミック特性と硬度、耐熱性などの基材特性を維持しつつ、耐穿孔加工強度が得られるという理由から、(A)成分の含有量が1〜50重量%であり、(B)成分の含有量が1〜30重量%であり、(C)成分の含有量が20〜98重量%であるものを使用するのが好適であり、(A)成分の含有量が5〜30重量%であり、(B)成分の含有量が3〜20重量%であり、(C)成分の含有量が50〜92重量%であるものを使用するのが特に好適である。
【0031】
また、(D)成分のフォトクロミック化合物としては特に限定されず公知のフォトクロミック化合物が使用できるが、分子量が200以上、特に500以上の高分子量フォトクロミック化合物を用いたときに本発明の効果(特に硬化体としたときに良好なフォトクロミック特性を示すという効果)が顕著であることからこのようなフォトクロミック化合物を使用するのが好適である。
【0032】
例えば、好適に使用できるものとしてクロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物等が何ら制限なく使用できる。これらの中でも、クロメン化合物は、フォトクロミック特性が他の系列の化合物よりも高く、又発色濃度、退色速度等も優れているため、特に好適に使用することができる。本発明で好適に使用できるフォトクロミック化合物を具体的に例示すれば、次のようなものを挙げることができる。なお、これら化合物は単独で使用することもできるが、通常は発色時の色調を調整するため複数の化合物を併用することが多い。
【0033】
【化3】
【0034】
分子量376
【0035】
【化4】
【0036】
分子量515
【0037】
【化5】
【0038】
分子量522
【0039】
【化6】
【0040】
分子量547
【0041】
【化7】
【0042】
分子量561
【0043】
【化8】
【0044】
分子量568
【0045】
【化9】
【0046】
分子量673
【0047】
【化10】
【0048】
分子量681
本発明で使用する基材の原料として好適な上記硬化性組成物に含まれるフォトクロミック化合物の量は特に限定されないが、均一分散性の観点から、全重合性モノマー100重量部に対して0.001〜5重量部、特に0.01〜2重量部であるのが好適である。
【0049】
なお、上記硬化性組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、添加剤を更に添加することもできる。好適に使用できる添加剤としては、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等を挙げることができる。
【0050】
界面活性剤の添加量は、全重合性モノマー100重量部に対して0〜20重量部、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の添加量は、全重合性モノマー100重量部に対して0〜2重量部であるのが好適である。
【0051】
上記硬化性組成物を硬化させて本発明で使用する基材を製造する方法は特に限定されず、所定量の各成分を秤り取り適宜混合すればよい。混合の順序等も特に限定されない。硬化方法も特に限定されず、熱及び/又は光により硬化することができ、必要に応じて重合開始剤を使用することもできる。
【0052】
熱による硬化に用いられる重合開始剤については特に制限されないが、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。
【0053】
また、光による硬化に用いられる重合開始剤についても特に制限されないが、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオキサントン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0054】
該重合開始剤の量は特に限定されないが、重合を十分に進行させ、かつ過剰な重合開始剤を硬化体中に残さないとの観点から、全重合性モノマー100重量部に対して0.001〜10重量部、特に0.01〜3重量部であるのが好適である。
【0055】
以上により得られる硬化体(基材)は、優れたフォトクロミック性を有すると同時に、リムレス眼鏡として使用し得る強度も有する。しかし、該硬化体(基材)は通常この状態で用いられることは少なく、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン、チタン等のゾル成分を主成分とするハードコート剤を処理した上で使用される。
【0056】
ここで、硬化の工程において、ハードコート層が収縮することにより、基材には応力が残る状態となる。その結果、ハードコート層を形成した後では、基材の引張り強度は形成前に比べておよそ30〜50%程度低下してしまい、結果として、リムレス眼鏡として実用に耐えうる強度を確保することができない。
【0057】
本発明においては、上記の問題を解決するため、基材に直接ハードコート層を形成するのではなく、基材上に基材および前記ハードコート層に密着性を有し且つその鉛筆硬度がハードコート層の鉛筆硬度よりも低い緩衝層を介してハードコート層を形成する。該緩衝層を介して基材とハードコート層を接合することによりハードコート層形成時に基材に加わる応力を緩和させることができるため、基材そのものの有する引張り強度を確保することができ、結果として、優れたフォトクロミック特性を有し、ハードコート層を形成させながらもリムレス眼鏡として使用し得る強度を確保することができる。
【0058】
上記緩衝層は、基材および前記ハードコート層に密着性を有し且つハードコート層より柔らかいものであれば特に限定されない。上記柔らかさの指標としては例えば鉛筆硬度を用いることができる。緩衝層の鉛筆硬度はハードコート層の鉛筆硬度より低ければよいが、効果の観点から緩衝層の鉛筆硬度は6H以下、特に4H以下であるのが好適である。このような鉛筆硬度を有する緩衝層としては、一般にプラスチックレンズ用のプライマーとして使用されているプライマーを塗布・硬化させて得られる樹脂層、又はハードコート層形成用のハードコート用コーティング剤と類似の組成を有し、硬化層を軟質化するための成分を含むコーティング剤を塗布・硬化させて得られる層などが適用できる。より具体的にはポリウレタン系、ポリエステル系、ポリビニルアセタール系、エポキシ系等の樹脂系プライマーを塗布・硬化して得られる樹脂層、ハードコート層に使用されるシランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン、チタン等のゾル成分含むハードコート用コーティング剤に上記のような樹脂系プライマーを添加したものを塗布・硬化して得られる樹脂層等を挙げることができる。
【0059】
なお、本発明で使用する基材を含めて従来組成物の硬化体のハードコート層に対する密着性は良好であるため、密着性の観点からこれら基材にプライマーを施用する必要は特になく、生産性やコストの観点からは特に必要がない限りプライマーを施用することは通常行なわれていない。
【0060】
前記緩衝層を形成するために好適に使用されるプライマーの中でも応力緩和能の高さからウレタン系のものを使用するのが好適であり、ポットライフ及び硬化の容易さの点からブロック型ポリイソシアネートとポリオールを主成分とする熱硬化性ウレタンプライマーを使用するのが特に好ましい。
【0061】
ブロック型ポリイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の各種イソシアネートをベースとし、末端をフェノール、ε−カプロラクタム、活性メチレン、MEKオキシム、各種アミン類等でブロックしたものが挙げられる。
【0062】
また、ポリオールの具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール;アジピン酸と各種のグリコールや多価アルコールからなるアジペート系ポリオール、ε−カプロラクトンと各種のグリコールや多価アルコールからなるポリカプロラクロンポリオール、テレフタル酸やイソフタル酸と各種のグリコールや多価アルコールからなる芳香族ポリエステルポリオール、エチレンカーボネート等と各種のグリコールからなるポリカーボネートジオール等のポリエステルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、水添イソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等と共重合して得られるアクリルポリオール等が挙げられる。
【0063】
これらブロックイソシアネートとポリオールを主成分とする熱硬化型ウレタンプライマーは、通常各種の溶剤に希釈したかたちで使用される。該溶剤としては、酢酸ブチル、メチキシプロピルアセテート、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0064】
なお、熱硬化型ウレタンプライマーを硬化する際には、三級アミン類、有機すず化合物等公知の触媒が用いられる。
【0065】
なお、基材に緩衝層を形成させる方法は特に限定されず、ディッピング、スピンコーティング、ディップスピンコーティング等の方法が挙げられる。熱硬化型のものは70℃から130℃程度の温度で10〜120分間 程度加熱することにより行うことができ、また光硬化型のものは、例えば紫外線等のエネルギー線を10秒〜5分間程度照射することにより行うができる。このようにして得られる緩衝層の膜厚は、0.1〜10μmであることが好ましい。0.1μm以下では、密着性が低下し、また10μm以上では、フォトクロミック特性が損なわれる場合があり、好ましくない。なお、プライマー液を塗布する前に、密着性を向上させるため、基材を有機溶剤による脱脂処理、塩基性又は酸性水溶液による化学的処理、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理又はUVオゾン処理等の前処理を行うことが好ましい。
【0066】
本発明の光学物品は、上記のようにして緩衝層が形成された基材の当該緩衝層上にハードコート層を得ることにより得ることができる。ハードコート層の形成は、従来の方法と特に変わるところはなく、ハードコート用コーティング剤(ハードコート液)を上記緩衝層上に塗布し、硬化することにより行なうことができる。ハードコート液の種類、ハードコート層の形成方法については特に限定されず、公知のもの及び公知の方法が使用し得る。
【0067】
たとえば、ハードコート液としては、前述したように、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン等のゾル成分を主成分とするものが使用される。
【0068】
また緩衝層上にハードコート層を形成させる方法は特に限定されず、ディッピング、スピンコーティング、ディップスピンコーティング等の方法が挙げられる。熱硬化型のものは70℃から130℃程度の温度で10〜120分間程度加熱することにより行うことができ、また光硬化型のものは、例えば紫外線等のエネルギー線を10秒〜5分間程度照射することにより行うができる。なお、ハードコート液を塗布する前に、密着性を向上させるため、基材を有機溶剤による脱脂処理、塩基性又は酸性水溶液による化学的処理、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理又はUVオゾン処理等の前処理を行っても構わない。
【0069】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
以下に実施例で使用した化合物の略号と化学名を示す。
【0071】
1)モノマー
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート
BPE−100:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)
プロパン(m+nは2.6)
A−400:テトラエチレングリコールジアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート。
【0072】
2)フォトクロミック化合物
クロメン1:下記構造の化合物(該化合物のエチレングリコールジメチルエーテル(EGDME)溶液における退色半減期は0.4分である。)
【0073】
【化11】
【0074】
3)熱重合開始剤
パーブチルND:t−ブチルパーオキシネオデカノエート。
【0075】
以下に、得られた硬化体のフォトクロミック特性及び強度特性の評価方法を示す。
【0076】
(1)フォトクロミック特性
得られた硬化体(厚み2mm)に、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2,245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、前記試料のフォトクロミック特性を測定した。各フォトクロミック特性は次の方法で評価した。
【0077】
▲1▼ 最大吸収波長(λmax): (株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0078】
▲2▼ 発色濃度{ε(120)−ε(0)}: 前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と上記ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0079】
▲3▼ 退色半減期〔t1/2(min.)〕: 120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほど退色速度が速くフォトクロミック性が優れているといえる。
【0080】
(2)強度特性
得られた硬化体を用いて厚さ2mm、直径5cmφの円板状の試験片を成形した後に該円板状試験片の直径となる線上に周縁からそれぞれ4mmの点を中心とした直径2mmφの2つの穴をドリル加工により穿孔し、得られた2つの穿孔に夫々直径1.6mmφのステンレス製の棒を貫通せしめ、試験片を貫通した状態でこれら2本の棒を夫々引張り試験機の上下のチャックに固定し、5mm/分の速度で引張り試験を行なったときの引張り強度を測定した。
【0081】
(3)鉛筆硬度
鉛筆の先端を尖らせて、垂直に1kgの荷重で押し当てる。荷重を加えたまま鉛筆を引っ張って、緩衝層に傷が付くかを試験して硬度を判定した。5Hの鉛筆で傷が付けば鉛筆硬度は4Hである。
【0082】
(4)ロックウェル硬度
JIS K7202に基づき決定される値であって、具体的には、硬化体試験片の表面に径6.350mmの剛球からなる圧子を用いて、基準荷重である10Kgfを加え、次に試験荷重である60Kgfを加え、再び基準荷重に戻したとき、前後2回の基準荷重における圧子の浸入深さの差h(単位mm)から、130−500hという計算式により求めた。
【0083】
実施例1
TMPT10重量部、BPE−100 60重量部、A−400 20重量部、GMA10重量部を十分混合した。これにクロメン1を0.04重量部、熱重合開始剤としてパーブチルNDを1重量部添加し十分に混合した。この混合液をガラスモールドとエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入した。90℃で5時間熱重合させた後、硬化体を鋳型のガラス型から取り外した。
【0084】
得られた硬化体の強度特性の評価結果を表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
なお、表1におけるEGDME溶液の退色半減期は、同一濃度のEGDMEを調製し別途測定したものである。
【0087】
次に、本硬化体に、デスモジュールBL3475(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート基を活性メチレンでブロックしたもの;住化バイエルウレタン(株)製)とデスモフェン670BA(ポリエステルポリオール;同社製)を1:1の割合で混合した緩衝層用コーティング液をディッピングにより塗布し、110℃で30分硬化した。さらに、ハードコート液TS−56H(有機シリコン系ゾル;(株)トクヤマ製)をディッピングにより塗布し、120℃で3時間硬化した。なお、得られたハードコート品における緩衝層の厚さは3μmであり、その鉛筆硬度を測定したところHであった。また、ハードコート品のハードコート面の鉛筆強度を測定したところ8Hであった。
【0088】
緩衝層及びハードコート層を形成させた硬化体の強度特性、及びフォトクロミック特性の評価結果を表1に併せて示した。
【0089】
実施例2
実施例1で得られた硬化体(緩衝層及びハードコート層形成前のもの)に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂にトリエチルアミンを5重量%添加した緩衝層用コーティング液をディッピングにより塗布し、110℃で30分硬化した。さらに、ハードコート液TS−56Hをディッピングにより塗布し、120℃で3時間硬化した。なお、得られたハードコート品における緩衝層の厚さは3μmであり、その鉛筆硬度を測定したところ2Hであった。
【0090】
緩衝層及びハードコート層を形成させた硬化体の強度特性、及びフォトクロミック特性の評価結果を表1に併せて示した。
【0091】
実施例3
実施例1で得られた硬化体(緩衝層及びハードコート層形成前のもの)に、KS(チタンジオキサイドを含む有機シリコン;クレハレンテック(株)製)をからなる緩衝層用コーティング液をディッピングにより塗布し、110℃で30分硬化した。さらに、ハードコート液TS−56Hをディッピングにより塗布し、120℃で3時間硬化した。なお、得られたハードコート品における緩衝層の厚さは3μmであり、その鉛筆硬度を測定したところ6Hであった。
【0092】
緩衝層及びハードコート層を形成させた硬化体の強度特性、及びフォトクロミック特性の評価結果を表1に併せて示した。
【0093】
比較例1
実施例1で得られた硬化体(緩衝層及びハードコート層形成前のもの)を60℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中で10分間エッチングした後、ハードコート液TS−56H(トクヤマ製の有機シリコン系ゾル)をディッピングにより塗布し、120℃で3時間硬化した。
【0094】
得られたハードコート層を形成させた硬化体の強度特性、及びフォトクロミック特性の評価結果を表1に併せて示した。
【0095】
表1から、優れたフォトクロミック特性を有し、且つリムレス眼鏡に使用し得る強度を有する硬化体において、緩衝層を介してハードコート層を形成することにより、優れたフォトクロミック特性を有し、且つ、リムレス眼鏡に使用し得る強度を確保したハードコート層形成硬化体が得られることが分かる。一方、緩衝層を介さずにハードコート層を形成すると、強度の低下がみられ、結果としてリムレス眼鏡に使用することができない。
【0096】
【発明の効果】
本発明の光学物品は、ハードコート処理を施した後でも発色濃度が高く、退色速度が速いといった優れたフォトクロミック特性を示し、しかも硬度や耐熱性は実用的レベルであり、更にリムレス眼鏡に使用できる十分な耐穿孔加工強度をも兼ね備えるという特徴を有する。
Claims (3)
- 表面にハードコート層を有する光学物品であって、少なくとも1種のフォトクロミック化合物が分散した樹脂からなり、該樹脂が、(A)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が40以下である重合性モノマー、(B)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である3官能以上の重合性モノマーおよび(C)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である2官能の重合性モノマー、を含有する組成物であって、上記(B)の3官能以上の重合性モノマーとして少なくとも3つ以上のラジカル重合性基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを使用し、その含有量を全重合性モノマーに対し1〜30重量%とした重合性組成物を硬化させて得た樹脂である基材とハードコート層とが、前記基材および前記ハードコート層に密着性を有し且つその鉛筆硬度がハードコート層の鉛筆硬度よりも低い緩衝層を介して接合されてなることを特徴とする光学物品。
- 光学物品の以下に定義される引張り強度が20Kgf以上である請求項1に記載の光学物品。
引張り強度: 試験片の重心を通り且つ試験片を横断する任意の直線と基板周縁との2つの交点からそれぞれ4mm内側の当該直線上の2点をそれぞれ中心として、試験片に直径2mmφの2つの穴をドリル加工により穿孔し、次いで得られた2つの穿孔に夫々直径1.6mmφのステンレス製の棒を貫通せしめた後にこれら2本の棒を夫々引張り試験機の上下のチャックに固定し、5mm/分の速度で引張り試験を行なったときの引張り強度。
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