JP4294374B2 - 超音波探傷装置および超音波探傷方法 - Google Patents

超音波探傷装置および超音波探傷方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、固体と固体との境界部分を非破壊的に検査する超音波探傷装置および超音波探傷方法に関するものであり、特に境界部分の付近の腐食の有無を検査することが可能な超音波探傷装置および超音波探傷方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属構造物とその構造物を支持する支持構造物のような異なる固体間の境界部分を非破壊的に検査するために超音波探傷装置が使用されている。この種の従来の超音波探傷装置は、例えば特許文献1に示されている。特許文献1に記載の技術では、送信用探触子を探傷器で励振し、パイプ内に超音波を伝搬させる。伝搬した超音波のエコーは受信用探触子で受信され、エコーのレベルが探傷器の表示器上に表示される。パイプを支持するパイプラックとパイプとの境界部分の付近に腐食があれば、この部分で超音波が乱反射を起こすので、探傷器の表示器上に表示されたエコーのレベルは、その分だけ小さくなる。従って、受信されたエコーレベルが小さければパイプラックとパイプとの間に腐食が存在すると判断できると特許文献1では想定している。
【0003】
しかし腐食がない場合でも、超音波はパイプラックへ透過していくので、エコーレベルだけで腐食の有無を評価することは難しい。また、この方法は、パイプの周囲にはパイプラック以外には何も存在しない場合にだけ適用できる方法である。例えば、パイプの周囲がコンクリートで固められた状態では、パイプの内部だけでなく、コンクリート中へ超音波が伝搬していくと考えられる。このため、受信されるエコーレベルは腐食の有無に係わらず小さくなる。従って、コンクリートとパイプの境界付近のパイプの腐食の検査には、特許文献1に示されている方法は適用困難である。
【0004】
また、特許文献2にも腐食による減肉の検査方法が示されている。特許文献2では、送信用探触子により検査対象部中へ表面波を伝搬させ、伝搬した表面波を受信用探触子で受信する。検査対象部を支持する架台と検査対象部との境界付近に腐食があれば、腐食に沿って表面波が伝搬するので、その分だけ受信されるエコーの受信時間が遅れる。この受信時間の遅れを利用して腐食を評価することができると特許文献2では想定している。
【0005】
しかしこの方法も、検査対象部の周囲には架台以外には何も存在しない場合にだけ適用できる方法である。例えば、検査対象部の周囲がコンクリート等で固められた状態では、検査対象部とコンクリート等との境界面に沿った表面波は伝搬しない。このため、表面波の伝搬遅延時間を利用して腐食を検査することはできない。従って、コンクリート等と検査対象部の境界付近の検査対象部の腐食の検査には、特許文献2に示されている方法は適用困難である。
【0006】
さらに、特許文献3にも腐食の検査方法が示されている。特許文献3に記載の技術は、SH波(Shear Horizontal Wave)を用いるという点が特許文献2に記載の技術と異なる。特許文献3に示されている検査方法では、探触子からSH波を送信し、腐食した場所で反射された反射SH波および腐食した場所を透過した透過SH波を用いて、腐食を評価する。
【0007】
しかしこの方法も、試験対象物の周囲がコンクリート等で固められた状態では、試験対象物内だけでなく、コンクリート等中へ超音波が伝搬していくと考えられる。このため、受信されるエコーレベルは小さくなり、十分な信号対雑音比を確保することは困難と考えられる。従って、コンクリート等と検査対象部の境界付近の検査対象部の腐食の検査には、特許文献3に示されている方法は適用困難である。
【0008】
【特許文献1】
特開昭62−113060号公報
【特許文献2】
特開2002−5905号公報
【特許文献3】
特開2002−243704号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、試験対象物の周囲が試験対象物と異なる性質の固体で囲まれた状態である場合には、試験対象物と他の固体との境界付近の腐食の検査には、従来示されている方法では困難であるという課題があった。
【0010】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、試験対象物の周囲が試験対象物と異なる性質の固体で囲まれた状態である場合に、試験対象物と他の固体との境界付近の腐食の有無を非破壊的に検査できる超音波探傷装置および超音波探傷方法を得ることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る超音波探傷装置は、電気信号によって駆動され異なる性質の固体で囲まれた部分を有する試験体中に板波を励振する送信用探触子と、送信用探触子を駆動するためにバースト信号を生成するバースト信号生成部と、バースト信号のキャリア周波数を変更する指令をバースト信号生成部に与える制御部と、試験体中を伝搬した板波、及び、異なる性質の固体で囲まれた部分で生じた擬似板波を電気信号に変換する受信用探触子と、受信用探触子からの電気信号に基づいて、試験体中の板波及び擬似板波の強度を計算する強度計算部と、キャリア周波数の変更に対する試験体中の板波及び擬似板波の強度の変化に基づいて、試験体の異なる性質の固体で囲まれた部分の性状を判定する性状判定部とを備えたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しながらこの発明の様々な実施の形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置を含む超音波探傷システムを示す。図1に示すように、この超音波探傷システムは、送信用探触子1と受信用探触子2と探傷制御ユニット(超音波探傷装置)7とを備える。
【0013】
送信用探触子1は電気信号によって駆動され、電気信号の周波数と同じ周波数の超音波を生成する。受信用探触子2は受信した超音波の周波数と同じ周波数の電気信号を生成する(すなわち超音波を電気信号に変換する)。探触子1,2は圧電素子式超音波トランスデューサ、EMAT(electro−magnetic acoustic transducer)、またはその他の超音波トランスデューサでよい。
【0014】
図1は、試験対象物8に送信用探触子1および受信用探触子2が戴置された状態を示す。試験対象物8は、例えばパイプや鋼板などの一様な小さい厚さを有する金属構造物の一部分である。試験対象物8の周囲には、コンクリート等の周囲固体10が配置されている。試験対象物8の周囲固体10で囲まれた部分には腐食5が存在する可能性があり、腐食5がある部分では試験対象物8は周囲固体10に接触していないが、他の部分では両者は接触している。探触子1,2は周囲固体10の両サイドに配置されている。
【0015】
探傷制御ユニット7は、制御部71と任意波形発生部(バースト信号生成部)72と送信部73と受信部74と信号処理部(強度計算部、性状判定部)75と出力部76を備える。制御部71は、任意波形発生部72、送信部73、受信部74、信号処理部75および出力部76に接続されており、これらに対して制御信号を供給することにより、探傷制御ユニット7の制御を司る。
【0016】
任意波形発生部72は送信用探触子1を駆動するために送信電気信号を生成する。任意波形発生部72が生成する送信電気信号の波形を図2に示す。この送信電気信号は、キャリア周波数f0を持つバースト信号である。また、信号の初期(立ち上がり部分)および末期(立ち下がり部分)の振幅が小さくなるように、この送信電気信号は振幅変調されている。この種の振幅変調がされた送信電気信号を以下「変調バースト信号」と呼ぶことにする。
【0017】
任意波形発生部72は送信部73に接続されており、送信部73は送信用探触子1に接続されている。送信部73は任意波形発生部72で生成された変調バースト信号を増幅して、増幅した変調バースト信号(励振信号)を送信用探触子1に伝達することにより、送信用探触子1を電気的に励振する。すなわち励振信号は送信用探触子1内で超音波に変換される。この超音波が試験対象物8に伝達される。超音波は、周囲固体10の下方にある試験対象物8中を伝搬し、受信用探触子2で超音波のエコーとして受信される。
【0018】
受信用探触子2は受信部74に接続され、受信部74は信号処理部75に接続されている。受信部74は、受信用探触子2から出力された受信電気信号(受信エコー信号)を増幅し、増幅した受信エコー信号を信号処理部75に伝達する。図示はしないが、信号処理部75は内部にA/D変換部およびメモリを有する。A/D変換部は受信部74からの受信エコー信号をディジタル信号に変換する。ディジタル信号は信号処理部75内のメモリに記憶される。
【0019】
一つの変調バースト信号に対応する超音波のエコーに由来する前記のディジタル信号が信号処理部75内のメモリに記憶されると、信号処理部75は制御部71にその旨を通知し、この通知に応じて制御部71は、別のキャリア周波数f0を指定した制御信号を任意波形発生部72に供給する。この制御信号に応じて任意波形発生部72はキャリア周波数f0を変えた変調バースト信号を生成する。
【0020】
異なる変調バースト信号のキャリア周波数f0について、エコーの測定を繰り返し行うことにより、各キャリア周波数f0についての各エコーに由来するディジタル信号を信号処理部75は、内部のメモリに記憶する。後述するように、信号処理部75はこれらのディジタル信号に基づいて、試験体中の超音波の強度(エコー高さ)を計算し、各キャリア周波数f0についてのエコー高さに基づいて試験対象物8の性状を判定する。信号処理部75は、例えばディスプレイ装置である出力部76に接続されており、信号処理部75は出力部76に性状判定結果を通知し、出力部76は性状判定結果を出力する(例えば表示する)。
【0021】
キャリア周波数f0を変える範囲および繰り返しの回数などは、送信用探触子1および受信用探触子2の周波数特性(具体的には安定した送受信が可能な周波数帯域)に基づいて、試験を行う者が予め決めておく。
【0022】
これらの受信エコー信号から、腐食5を検査する方法を次に述べる。
試験対象物8の厚さが、一様で小さい場合(例えば試験対象物8内を伝搬する超音波の波長と同程度から数倍程度である場合)、試験対象物8内を伝搬する超音波は板波となる。送信用探触子1が通常用いられている斜角探触子である斜角探傷法を利用する場合、板波の振動が進む方向は図1の紙面と平行となる。このような板波はラム波(Lamb波)と呼ばれるが、以降は単に「板波」と呼ぶ。
【0023】
試験対象物8内を伝搬する板波は複雑な伝搬形態を示す。また、周波数によってその伝搬形態は異なる。この様子を音場シミュレーションによって確認した結果を、図3から図13(A)に示す。
【0024】
図3は、音場シミュレーションの条件を示した図である。音場シミュレーションでは、発明者が開発したプログラムに従った数値解析により、各時刻での様々な部分における超音波エネルギの強さおよび粒子変位ベクトルを算出し、それらの結果をグラフィック表示ソフトウェアで表示した。このシミュレーションでは、送信用探触子1からの入射角および受信用探触子2への入射角を60°とする斜角探傷法を使用すると仮定した。入射角を60°に保持するくさびの材料にはアクリルを仮定しており、試験対象物8の材料として厚さ4.36mmの鋼板を仮定した。周囲固体10としては、長さ300mmのモルタルを仮定した。試験対象物8と周囲固体10の間には空隙が存在しないと仮定した。また、探触子1,2の周波数応答特性として、中心周波数1.0MHzの広帯域のものを仮定した。なお、シミュレーションの都合で、周囲固体10中に吸収境界10Aを設けて解析に不要な反射波を抑制した。
【0025】
任意波形発生部72が生成する送信電気信号としてキャリア周波数f0が0.7MHzの変調バースト信号を仮定し、音場シミュレーションを行った結果を図4に示す。図4は、8μsecずつ経過時間が異なる音場のスナップショット(上記のグラフィック表示ソフトウェアで得た)を有しており、一番上のスナップショットが、送信用探触子1を励振してから12μsec後の音場を示し、一番下のスナップショットが92μsec後の音場を示す。図4中のドットの密度は超音波エネルギの強さを示し、ドットが密集しているほど超音波エネルギが強い。
【0026】
12μsec後の段階では、まだ音は試験対象物8(鋼板)中へは伝搬しておらず、送信用探触子1のアクリル製のくさび内に留まっている。20μsec後の段階で超音波は鋼板中に伝搬する。このときに、鋼板内の超音波は板波となっている。36sec後の段階では板波は鋼板の上下が空気となっている領域を伝搬し、44μsec後の段階で鋼板の上にモルタルがある領域に差し掛かる。その後、モルタル内にエネルギを漏洩しながら、鋼板内を板波が伝搬していく。
【0027】
図5は、図4に示した92μsec後の音場のスナップショットを拡大し、さらにその段階での粒子変位ベクトルを併記した図である。図5に示すように、粒子変位の方向が鋼板の上面付近と下面付近とで同じ方向を向いている。すなわち、鋼板の上面付近で上向きに振動するときには鋼板の下面付近でも上向きに振動し、鋼板の上面付近で下向きに振動するときには鋼板の下面付近でも下向きに振動する。このような板波を非対称モードの板波という。図5に示した板波は、非対称モードの中でもこの技術分野で零次非対称モード(A0モード)と呼ばれる板波である。
【0028】
A0モードの板波は、モルタル中にエネルギを漏洩しながらも受信用探触子2まで伝搬し、受信される。図6は、受信用探触子2で受信されたエコーを示している。縦軸は受信用探触子2から出力された電圧すなわち超音波の振幅を表す。通常の超音波探傷では、図6に示されるように受信されたエコーの振幅の変化しか分からないので、そのエコーがA0モードの板波かどうかは判断できない。音場シミュレーションにより得られた図5に例示したような粒子変位ベクトルの形式を観察することにより、超音波の伝搬モードがA0モードであると判断できる。
【0029】
図7は、キャリア周波数f0を1.0MHzに変えて、同様の音場シミュレーションを行った結果を図4と同様に示す。鋼板中を伝搬した板波がモルタルの下の領域に差し掛かるまでは、超音波エネルギの様子はほぼ図4と同様であるが、モルタルの下の領域を超音波が伝搬する様子が異なる。図4と図7の比較から分かるように、キャリア周波数f0が1.0MHzの場合には、鋼板からモルタルにエネルギが早く漏れていくので、モルタルの下の鋼板内を伝搬する板波の振幅が非常に小さい(すなわち図7上でドットがより粗い)。また、キャリア周波数f0が1.0MHzの場合には、経過時間が後の段階で、A0モード以外の板波も伝搬している。
【0030】
図8は、図7に示した92μsec後の音場のスナップショットを拡大し、さらにその段階での粒子変位ベクトルを併記した図である。図8に示すように、A0モードの板波よりも遅れて伝搬していく板波が鋼板中に存在している様子が確認できる。この板波は、粒子変位の方向が鋼板の上面と下面とで異なる方向を向いている。すなわち、鋼板の上面付近で上向きに振動するときには鋼板の下面付近では下向きに振動し、鋼板の上面付近で下向きに振動するときには鋼板の下面付近では上向きに振動する。このような板波を対称モードの板波という。図8に示した対称モードの板波は、対称モードの中でもこの技術分野で零次対称モード(S0モード)と呼ばれる板波である。
【0031】
実は、図4に示したキャリア周波数f0が0.7MHzの場合にも、S0モードの超音波は伝搬しているが、キャリア周波数f0が1.0MHzの場合よりもその減衰が非常に大きい。このため、キャリア周波数f0が0.7MHzの場合には、92μsec後の段階でS0モードの板波は既に見えなくなっている。図4の44μsec後の段階で、A0モードの超音波より少し遅れて伝搬している板波は、実はS0モードの板波である。すなわち、キャリア周波数f0が1.0MHzに変更されたことによって、S0モードの板波の減衰量が比較的小さくなったため、図8に示すようにS0モードの板波がA0モードと同等程度の振幅となって鋼板中を伝搬していく。
【0032】
変調バースト信号のキャリア周波数f0が1.0MHzの場合には、A0モードおよびS0モードの板波は、モルタル中に多くのエネルギを漏洩するため、非常に微弱な振動となるが、受信用探触子2まで伝搬し、微弱ではあるが受信される。図9は、受信用探触子2で受信されたエコーを示している。
【0033】
図10は、キャリア周波数f0を1.4MHzに変えて、同様の音場シミュレーションを行った結果を図4と同様に示す。鋼板中を伝搬した板波がモルタルの下の領域に差し掛かるまでは、超音波エネルギの様子はほぼ図4と同様であるが、モルタルの下の領域を超音波が伝搬する様子が異なる。図4と図7に図10を比較することで分かるように、キャリア周波数f0が1.4MHzの場合には、鋼板からモルタル中にエネルギを漏洩しながらも、比較的大きな振幅が後の段階でも維持されて板波が伝搬していく。すなわちエネルギの拡散が他の場合よりも遅い。
【0034】
図11は、図10に示した92μsec後の音場のスナップショットを拡大し、さらにその段階での粒子変位ベクトルを併記した図である。図11に示すように、A0モードともS0モードともいえない振動変位ベクトルを持つ板波が鋼板中を伝搬している。この板波は、鋼板の下側にエネルギが集中しているため、モルタル中へのエネルギの漏洩が少ないと考えられる。このような振動変位の板波を以降は「擬似板波」と呼ぶ。
【0035】
擬似板波は、モルタル中へのエネルギの漏洩は少ないため、比較的大きな振幅を持った信号として受信用探触子2で受信される。図12は、受信用探触子2で受信されたエコーを示している。
【0036】
以上、変調バースト信号のキャリア周波数f0を変更した音場シミュレーションに基づいて、伝搬する板波のモードや受信されるエコーについて説明してきた。同様のシミュレーションを、キャリア周波数f0を0.5MHzから1.5MHzまで0.1MHz間隔で変更して行い、周波数−エコー高さ特性(キャリア周波数の変更に対する試験体中の超音波の強度の変化)を求めた結果を図13(A)に示す。図13(A)では、3種類のシミュレーション結果を併せて示している。1つは、これまでに説明したモルタルが鋼板に完全に接着している場合のシミュレーション結果であり、図13(A)では「空隙なし」として示している。
【0037】
また、これまでに説明したシミュレーションに加えて、図13(B)に示すようにモルタルである周囲固体10と鋼板である試験対象物8との間に腐食を模擬した空隙11を設けたと仮定し、同様のシミュレーションを行い、周波数−エコー高さ特性を求めた結果を、「空隙あり」として示している。さらに、モルタルを無視してシミュレーションした周波数−エコー高さ特性を「モルタルなし」として示している。「モルタルなし」の場合には、A0モードとS0モードのエコーが伝搬して受信されるが、図13(A)ではA0モードのエコー高さを示している。ここでいうエコー高さとはエコーの最大振幅である。図13(A)の各曲線とも、「モルタルなし」の場合の最高エコー高さを基準とした相対エコー高さで表した。
【0038】
図13(A)から分かるように、モルタルと鋼板とが完全に接着している「空隙なし」の場合では、キャリア周波数1.0MHz付近で明らかに特性が変化した。これは、図4から図12に示したシミュレーション結果から分かるように、0.5MHzから1.0MHzまでの周波数帯域ではA0モードのエコーが主として受信され、1.0MHzでは微弱なS0モードのエコーが主として受信され、1.0MHzから1.5MHzまでの周波数帯域では擬似板波が主として受信されるためである。すなわち、モルタルと鋼板とが完全に接着している状態では、キャリア周波数1.0MHz付近で受信されるエコーのモードが入れ替わるため、図13(A)に示したような特性になった。このように、受信されるエコーのモードが入れ替わるため、エコー高さが最低ピークとなり、エコー高さの変化傾向が急激に遷移する周波数が存在する。以下ではこの周波数を「遷移周波数」と呼ぶことにする。モルタルと鋼板とが完全に接着している「空隙なし」の場合は、モルタルと鋼板との間には腐食がない状況と仮定できるので、試験対象物8に腐食がない場合には遷移周波数が存在するということができる。
【0039】
一方、「空隙あり」の場合では、「空隙なし」と場合の周波数−エコー高さ特性と類似した特性を示したが、その変化は比較的緩やかになった。このため、エコー高さの最低ピークは存在するが、変化傾向の遷移は緩やかなため、遷移周波数が明確に得られなかった。「空隙あり」の場合は、鋼板とモルタルの境界部分の付近で鋼板の一部が腐食している状況と仮定できる。従って、鋼板とモルタルの境界部分の付近で鋼板の一部が腐食している場合には、遷移周波数は存在するが、明確には現れないということができる。
【0040】
これに対し、「モルタルなし」の場合では、キャリア周波数0.8MHz付近を最高ピークとした単調な特性を示した。すなわち、遷移周波数が存在しない状況となった。「モルタルなし」の場合は、鋼板が全面腐食して、鋼板とモルタルの間に全面的に隙間がある状況と仮定できるので、鋼板とモルタルの境界部分の付近で鋼板が全面腐食している場合には、遷移周波数は存在しないということができる。
【0041】
以上に示した関係をまとめると、次のようになる。
(1)腐食なしの場合には、遷移周波数が明確に得られる。
(2)鋼板とモルタルの境界部分の付近で鋼板の一部が腐食している場合には、遷移周波数は存在するが、明確には現れない。
(3)鋼板とモルタルの境界部分の付近で鋼板が全面腐食している場合には、遷移周波数は存在しない。
【0042】
周波数−エコー高さ特性はシミュレーションでなくても実際の測定で得ることが可能である。従って、実測した周波数−エコー高さ特性から明確な遷移周波数の有無を判断することによって、鋼板がモルタルに完全接着しているのか、鋼板の一部が腐食しているのか、あるいは鋼板が全面腐食しているのかを、決定することができる。しかし、現実の探傷を考慮すると、腐食の程度にかかわらず腐食の有無を判定できれば十分であることも多いと思われる。そこで、「一部が腐食」という検査結果は出力せず、腐食の有無を判定する処理および方法について、以下に説明する。
【0043】
図14は、実施の形態1に係る腐食の検査方法を説明するためのフローチャートである。以下、図14のフローチャートを参照しながら、腐食の判定方法を実現する各ステップをあらためて詳細に説明する。
【0044】
ステップST1では、制御部71は、任意波形発生部72、送信部73、受信部74、信号処理部75および出力部76を動作可能状態に駆動する。またステップST1で、制御部71は探傷を開始する最初のキャリア周波数f0を設定し、このキャリア周波数f0を指定した制御信号を任意波形発生部72に供給する。また、制御部71は、このキャリア周波数f0を信号処理部75に通知する。
【0045】
ステップST2では、制御部71で設定されたキャリア周波数f0に基づいて任意波形発生部72が変調バースト信号を作成し、送信部73に送信する。
【0046】
ステップST3では、送信部73が送信用探触子1を励振する。検査方法の実行前に、試験を行う者は、A0モードおよびS0モードの板波が効率良く励振されるような角度に送信用探触子1からの超音波の入射角を設定しておく。その結果、検査対象物8中へは、A0モードおよびS0モードの板波が伝搬していく。
【0047】
ステップST4では、受信用探触子2でエコーを受信する。受信用探触子2への超音波の入射角は、送信用探触子1からの入射角と同じでも構わないし、異なっていても構わない。検査方法の実行前に、試験を行う者は、試験対象物8中を伝搬してきたA0モードおよびS0モードの板波を効率良く受信できるように受信用探触子2への入射角を設定しておく。
【0048】
ステップST5では、受信用探触子2からの受信エコー信号を受信部74で増幅し、信号処理部75に送る。
【0049】
ステップST6では、信号処理部75に送られてきた受信エコー信号を信号処理部75の内部のA/D変換部がディジタル受信エコー信号に変換して、その結果のディジタル受信エコー信号を信号処理部75の内部のメモリに記憶する。この際には、制御部71から通知された変調バースト信号のキャリア周波数f0、すなわちこのディジタル受信エコー信号に対応するキャリア周波数f0をディジタル受信エコー信号と併せて記憶する。
【0050】
ステップST7では、予め決められたキャリア周波数全てを用いて探傷したかどうか、判断する。全てのキャリア周波数を用いて探傷した場合には、処理はステップST9へ進む。ステップST9以降は、信号処理部75内の処理だけとなり、送信部73、受信部74は処理に関与しない。一方、予め決められたキャリア周波数全て用いて探傷していない場合には、ステップST8へ進む。ここで、予め決められたキャリア周波数は、探触子1,2の周波数特性(具体的には安定した送受信が可能な周波数帯域)に基づいて試験を行う者によりあらかじめ決められており、公称周波数1MHzの探触子の場合では、例えばf0=0.5MHz,0.6MHz,0.7MHz,0.8MHz,・・・1.3MHz,1.4MHz,1.5MHzのように決められている。ただし、キャリア周波数の決め方は場合によって様々であり、変化をさせる範囲およびその周波数間隔は、図13(A)に示したような特性が明らかに現れるように選択されればよい。
【0051】
ステップST8では、制御部71はキャリア周波数を変化させる。すなわち予め決められたキャリア周波数の中からまだ探傷に使用していないキャリア周波数f0を選択して、このキャリア周波数f0を指定した制御信号を任意波形発生部72に供給する。また、制御部71は、このキャリア周波数f0を信号処理部75に通知する。そして、処理はステップST2に戻り、予め決められたキャリア周波数全てが探傷に使用されるまで、ステップST2からステップST7までの処理を繰り返し行う。
【0052】
ステップST9では、ステップST6でメモリ内に記憶した全てのキャリア周波数およびこれらに対応するディジタル受信エコー信号を信号処理部75が読み出す。
【0053】
ステップST10では、信号処理部75は強度計算部として機能し、これらのディジタル受信エコー信号に基づいて、各キャリア周波数f0についてのエコー高さを計算することにより、周波数−エコー高さ特性(すなわちキャリア周波数の変更に対する試験体中の超音波の強度の変化)を求める。ここでいうエコー高さとはエコーの最大振幅である。
【0054】
ステップST11では、信号処理部75は性状判定部として機能し、周波数−エコー高さ特性から遷移周波数の有無を調べる。すなわちエコー高さの最低ピークを求め、最低ピークに対応するキャリア周波数の付近のキャリア周波数についてのエコー高さと最低ピークのエコー高さとの相違が閾値を超えた場合に、遷移周波数が存在すると判断する。例えば、1.0MHzのキャリア周波数のときにエコー高さの最低ピークがある場合には、1.0MHzに最も近い探傷に用いたキャリア周波数(例えば0.9MHzおよび/または1.0MHz)のときのエコー高さと最低ピークの相違を求め、相違が閾値を超えた場合に、遷移周波数が存在すると判断する。この場合、最低ピークに対応するキャリア周波数としての1.0MHzが遷移周波数である。このような判断を行うことにより、実際には遷移周波数が存在しても、明確には現れない場合には、遷移周波数は存在しないと判断される。
【0055】
遷移周波数が存在すると判断された場合には、ステップST12で信号処理部75は出力部76に、試験対象物8中に腐食が存在しない旨を示す性状判定結果を通知し、出力部76はその性状判定結果を出力し、処理を終える。
【0056】
他方、遷移周波数が存在しないと判断された場合には、ステップST13で信号処理部75は出力部76に、試験対象物8中に腐食が存在する旨を示す性状判定結果を通知し、出力部76はその性状判定結果を出力し、処理を終える。
このようにして、各キャリア周波数f0についてのエコー高さに基づいて試験対象物8の性状を判定することができる。
【0057】
上記の超音波探傷方法において、ステップST2で作成する変調バースト信号(図2参照)については、どの程度振幅変調をかける必要があるのかは場合によって異なるので、試験を行う者が適宜決める必要がある。場合によっては、振幅変調をかけないバースト信号を用いても構わない。振幅変調の程度を調節するために任意波形発生部72を試験を行う者が操作することができる操作部分(図示せず)が設けられている。
【0058】
ステップST8のキャリア周波数f0の変え方は、探傷に要する周波数の範囲内であれば一様増加にしてもよいし一様減少にしてもよいし、一様でない間隔でキャリア周波数を増加または減少させてもよい。キャリア周波数をランダムに変化させても構わない。ステップST1で最初に設定するキャリア周波数も、所要の周波数範囲内であればよく、所要の周波数の下限や上限である必要はない。
【0059】
また、探傷に使用する全てのキャリア周波数の間隔は、等間隔(例えば上記のように0.1MHz間隔)であってもよいが、等間隔でなくても構わない。例えば、f0=0.5MHz,0.7MHz,0.9MHz,1.0MHz,1.1MHz,1.3MHz,1.5MHzをキャリア周波数として使用すると予め決めておいてもよい。
【0060】
送信用探触子1および受信用探触子2の周波数特性(具体的には安定した送受信が可能な周波数帯域)は、遷移周波数を検知できるように広帯域であることが望ましい。また、エコー高さを計算した後には、これらの探触子の周波数特性(周波数と超音波の送受信性能の関係)に基づいてエコー高さを補正して、周波数−エコー高さ特性を求め、この周波数−エコー高さ特性から遷移周波数の有無を判定しても構わない。
【0061】
送信用探触子1および受信用探触子2の入射角は、A0モードおよびS0モードの板波を効率良く送信および受信できるように設定するのが好ましいが、これは試験対象物8の厚さや送信用探触子1および受信用探触子2が動作する周波数によって異なる。そこで、試験対象物8の厚さや、送信用探触子1および受信用探触子2が動作する周波数帯の変更に応じて、これらの入射角を適宜変更できると好ましい。
【0062】
以上説明したように、この実施の形態1によれば、バースト信号のキャリア周波数の変更に対する試験対象物8中の超音波の強度の変化に基づいて試験対象物8の性状を判定するので、試験対象物8の周囲が試験対象物8と異なる性質の周囲固体10で囲まれた状態である場合に、試験対象物8と周囲固体10との境界付近の腐食の有無を簡単に非破壊的に検査することができる。
【0063】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、探傷制御ユニット7自体が試験対象物8内の腐食の有無を判定するが、この発明の実施の形態2として、判定を容易にさせる情報を探傷制御ユニット7が提供し、試験を行う者がこの情報に基づいて腐食の有無を判定してもよい。例えばディスプレイ装置である出力部76が、前記の周波数−エコー高さ特性を折れ線グラフなどのグラフで表示してもよい。
【0064】
この実施の形態2では、信号処理部75が、各キャリア周波数f0についてのエコー高さを計算することにより、周波数−エコー高さ特性を求めた(図14のステップST10)後、信号処理部75は出力部76に、各キャリア周波数f0に対応するエコー高さを出力部76に通知し、出力部76は周波数−エコー高さ特性を出力し、処理を終える。この実施の形態でも、試験対象物8の周囲が試験対象物8と異なる性質の周囲固体10で囲まれた状態である場合に、試験対象物8と周囲固体10との境界付近の腐食の有無を簡単に非破壊的に検査することができる。
【0065】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3に係る超音波探傷方法および超音波探傷装置について説明する。実施の形態3のシステムの構成は図1と同じであるのでその説明を省略し、動作について以下に説明する。
【0066】
実施の形態1では、任意波形発生部72においてバースト信号を発生し、バースト信号のキャリア周波数f0を変えて探傷し、キャリア周波数とエコー高さとの関係か腐食5の有無を検査する。この場合には、キャリア周波数を変えて繰り返し探傷するので、腐食5の有無を判定するまでに時間がかかる。これに対して、実施の形態3では、広い周波数帯域、すなわち異なる周波数を持つ電気信号で送信用探触子1を励振し、受信用探触子2で受信されたエコーの周波数スペクトラムを求め、この周波数スペクトラムから腐食5の有無を判定する。これによれば、バースト信号のキャリア周波数を変えて探傷を行う方法よりも、短時間で判定結果が得られる。
【0067】
図15は、実施の形態3で任意波形発生部(送信電気信号生成部)72が生成する送信電気信号の一例を示す図である。前記の広い周波数帯域を持つ信号は、図15に示すようなスパイク状の送信電気信号でよい。実施の形態3では、バースト信号のキャリア周波数を変えて探傷する代わりに、図15に示すようなスパイク状の信号で送信用探触子1を一回励振することで、腐食5の有無を判定する。
【0068】
図16は、実施の形態3に係る腐食の検査方法を説明するためのフローチャートである。以下、図16のフローチャートを参照しながら、腐食の判定方法を実現する各ステップを詳細に説明する。
【0069】
ステップST21では、制御部71は、任意波形発生部72、送信部73、受信部74、信号処理部75および出力部76を動作可能状態に駆動する。またステップST21で、任意波形発生部72はスパイク状の送信電気信号を発生し、送信部73に送信する。ここでスパイク状の信号とは、図15に示したような振幅が負の信号だけでなく、振幅が正である信号でもよい。また、インパルス状の信号も、スパイク状の信号に含まれる。
【0070】
ステップST22では、任意波形発生部72で発生したスパイク状の送信電気信号を送信部73が増幅し、異なる周波数で送信用探触子1を励振する。
ステップST23では、受信用探触子2でエコーを受信する。受信用探触子2は受信したエコーをエコー受信信号に変換する
ステップST24では、受信用探触子2からの受信エコー信号を受信部74で増幅し、信号処理部75に送る。
【0071】
ステップST25では、信号処理部75に送られてきた受信エコー信号を信号処理部75の内部のA/D変換部がディジタル受信エコー信号に変換して、その結果のディジタル受信エコー信号を信号処理部75の内部のメモリに記憶する。
ステップST26では、ステップST25でメモリ内に記憶したディジタル受信エコー信号を信号処理部75が読み出す。
【0072】
ステップST27では、信号処理部75は特性計算部として機能し、ディジタル受信エコー信号に基づいて、異なる周波数に対するエコー高さの関係を表す周波数−エコー高さ特性をスペクトラムとして求める。スペクトラムを求める方法としては、高速フーリエ変換を使用することが可能であるが、他の方法を用いても構わない。高速フーリエ変換を使用する場合、元の信号に種々の窓関数(例えば、矩形、ハミング、ハニング、カイザーなど)を掛けることがしばしば行われるが、どのような窓関数を用いるかは、送信用探触子1や受信用探触子2の周波数特性等によって適宜決めておけばよい。
【0073】
ステップST28では、信号処理部75は性状判定部として機能し、ステップST27で求めたスペクトラムとしての周波数−エコー高さ特性から遷移周波数の有無を調べる。すなわちエコー高さの最低ピークを求め、最低ピークに対応する周波数の付近の周波数についてのエコー高さと最低ピークのエコー高さとの相違が閾値を超えた場合に、遷移周波数が存在すると判断する。例えば、1.0MHzの周波数のときにエコー高さの最低ピークがある場合には、1.0MHzに最も近い探傷に用いた周波数(例えば0.9MHzおよび/または1.0MHz)のときのエコー高さと最低ピークの相違を求め、相違が閾値を超えた場合に、遷移周波数が存在すると判断する。この場合、最低ピークに対応する周波数としての1.0MHzが遷移周波数である。このような判断を行うことにより、実際には遷移周波数が存在しても、明確には現れない場合には、遷移周波数は存在しないと判断される。
【0074】
遷移周波数が存在すると判断された場合には、ステップST29で信号処理部75は出力部76に、試験対象物8中に腐食が存在しない旨を示す性状判定結果を通知し、出力部76はその性状判定結果を出力し、処理を終える。
【0075】
他方、遷移周波数が存在しないと判断された場合には、ステップST30で信号処理部75は出力部76に、試験対象物8中に腐食が存在する旨を示す性状判定結果を通知し、出力部76はその性状判定結果を出力し、処理を終える。
このようにして、一度出力されたスパイク状の送信電気信号に含まれる異なる周波数に対するエコー高さの関係に基づいて試験対象物8の性状を判定することができる。
【0076】
上記の超音波探傷方法において、ステップST1では、スパイク状の送信電気信号を任意波形発生部72が作成するが、試験対象物8へ伝搬していく超音波の周波数が広帯域であれば送信電気信号はスパイク状でなくてもよく、例えば、階段状の信号でも構わない。
【0077】
実施の形態1と同様に、送信用探触子1および受信用探触子2の周波数特性(具体的には安定した送受信が可能な周波数帯域)は、遷移周波数を検知できるように広帯域であることが望ましい。また、エコー高さを計算した後には、これらの探触子の周波数特性(周波数と超音波の送受信性能の関係)に基づいてエコー高さを補正して、周波数−エコー高さ特性を求め、この周波数−エコー高さ特性から遷移周波数の有無を判定しても構わない。
【0078】
また、実施の形態1と同様に、送信用探触子1および受信用探触子2の入射角は、A0モードおよびS0モードの板波を効率良く送信および受信できるように設定するのが好ましいが、これは試験対象物8の厚さや送信用探触子1および受信用探触子2が動作する周波数によって異なる。そこで、試験対象物8の厚さや、送信用探触子1および受信用探触子2が動作する周波数帯の変更に応じて、これらの入射角を適宜変更できると好ましい。
【0079】
以上説明したように、この実施の形態3によれば、送信電気信号が持つ異なる周波数に対する試験対象物8中の超音波の強度の関係に基づいて試験対象物8の性状を判定するので、試験対象物8の周囲が試験対象物8と異なる性質の周囲固体10で囲まれた状態である場合に、試験対象物8と周囲固体10との境界付近の腐食の有無を簡単に非破壊的に検査することができる。また、探傷工程では、一回の送信電気信号を出力すれば、その送信電気信号に対応する受信エコー信号からスペクトラムとして周波数−エコー高さ特性が求められるので、短時間で判定結果が得られる。
【0080】
実施の形態4.
上述した実施の形態3では、探傷制御ユニット7自体が試験対象物8内の腐食の有無を判定するが、この発明の実施の形態4として、判定を容易にさせる情報を探傷制御ユニット7が提供し、試験を行う者がこの情報に基づいて腐食の有無を判定してもよい。例えばディスプレイ装置である出力部76が、前記の周波数−エコー高さ特性を折れ線グラフなどのグラフで表示してもよい。
【0081】
この実施の形態4では、信号処理部75が、スペクトラムとしての周波数−エコー高さ特性を求めた(図16のステップST27)後、信号処理部75は出力部76に、周波数−エコー高さ特性を出力部76に通知し、出力部76は周波数−エコー高さ特性を出力し、処理を終える。この実施の形態でも、試験対象物8の周囲が試験対象物8と異なる性質の周囲固体10で囲まれた状態である場合に、試験対象物8と周囲固体10との境界付近の腐食の有無を簡単に非破壊的に検査することができ、短時間で判定結果が得られる。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、試験対象物の周囲が試験対象物と異なる性質の固体で囲まれた状態である場合に、試験対象物と他の固体との境界付近の腐食の有無を簡単に非破壊的に検査することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置を含む超音波探傷システムを示す概略図である。
【図2】 この発明の実施の形態1で使用する送信電気信号の波形を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態の原理を発見した音場シミュレーションの条件を示す概略図である。
【図4】 キャリア周波数が0.7MHzの場合の音場シミュレーション結果を示す図である。
【図5】 キャリア周波数が0.7MHzの場合の粒子変位ベクトルを示す図である。
【図6】 キャリア周波数が0.7MHzの場合の受信エコー信号の振幅変化を示す図である。
【図7】 キャリア周波数が1.0MHzの場合の音場シミュレーション結果を示す図である。
【図8】 キャリア周波数が1.0MHzの場合の粒子変位ベクトルを示す図である。
【図9】 キャリア周波数が1.4MHzの場合の受信エコー信号の振幅変化を示す図である。
【図10】 キャリア周波数が1.4MHzの場合の音場シミュレーション結果を示す図である。
【図11】 キャリア周波数が1.4MHzの場合の粒子変位ベクトルを示す図である。
【図12】 キャリア周波数が1.4MHzの場合の受信エコー信号の振幅変化を示す図である。
【図13】 (A)は三つの条件の下にシミュレーションして得られた周波数−エコー高さ特性を示す図であり、(B)はそのうちの一つの条件を示す概略図である。
【図14】 実施の形態1に係る腐食の検査方法を説明するためのフローチャートである。
【図15】 実施の形態3で使用する送信電気信号の波形を示す図である。
【図16】 実施の形態3に係る腐食の検査方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 送信用探触子、2 受信用探触子、5 腐食、7 探傷制御ユニット(超音波探傷装置)、8 試験対象物、10 周囲固体、10A 吸収境界、11 空隙、71 制御部、72 任意波形発生部(バースト信号生成部、送信電気信号生成部)、73 送信部、74 受信部、75 信号処理部(強度計算部、性状判定部、特性計算部)、76 出力部。

Claims (8)

  1. 電気信号によって駆動され異なる性質の固体で囲まれた部分を有する試験体中に板波を励振する送信用探触子と、
    前記送信用探触子を駆動するためにバースト信号を生成するバースト信号生成部と、
    前記バースト信号のキャリア周波数を変更する指令を前記バースト信号生成部に与える制御部と、
    前記試験体中を伝搬した板波、及び、前記異なる性質の固体で囲まれた部分で生じた擬似板波を電気信号に変換する受信用探触子と、
    前記受信用探触子からの電気信号に基づいて、前記試験体中の板波及び擬似板波の強度を計算する強度計算部と、
    前記キャリア周波数の変更に対する前記試験体中の板波及び擬似板波の強度の変化に基づいて、前記試験体の前記異なる性質の固体で囲まれた部分の性状を判定する性状判定部とを備えた超音波探傷装置。
  2. 性状判定部は、キャリア周波数の変更に対する試験体中の板波及び擬似板波の強度の変化のピークを求め、前記ピークに対応するキャリア周波数の付近のキャリア周波数についての前記試験体中の板波及び擬似板波の強度と前記ピークとの相違が閾値を超えた場合に、前記試験体中の異なる性質の固体で囲まれた部分に腐食がないと判定し、他の場合には前記試験体中の前記異なる性質の固体で囲まれた部分に腐食があると判定することを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
  3. 電気信号によって駆動され異なる性質の固体で囲まれた部分を有する試験体中に板波を励振する送信用探触子と、
    前記送信用探触子を駆動するバースト信号を生成するバースト信号生成部と、
    前記バースト信号のキャリア周波数を変更する指令を前記バースト信号生成部に与える制御部と、
    前記試験体中を伝搬した板波、及び、前記異なる性質の固体で囲まれた部分で生じた擬似板波を電気信号に変換する受信用探触子と、
    前記受信用探触子からの電気信号に基づいて、前記試験体中の板波及び擬似板波の強度を計算する強度計算部と、
    前記キャリア周波数の変更に対する前記試験体中の板波及び擬似板波の強度の変化を表す周波数−エコー強度特性を出力する出力部とを備えた超音波探傷装置。
  4. 電気信号によって駆動され異なる性質の固体で囲まれた部分を有する試験体中に板波を励振する送信用探触子と、
    前記送信用探触子を駆動するために異なる周波数を持つ送信電気信号を生成する送信電気信号生成部と、
    前記試験体中を伝搬した板波、及び、前記異なる性質の固体がある部分で生じた擬似板波を電気信号に変換する受信用探触子と、
    前記受信用探触子からの電気信号に基づいて、前記異なる周波数に対する前記試験体中の板波及び擬似板波の強度の関係を表す周波数−エコー強度特性を計算する特性計算部と、
    前記周波数−エコー強度特性に基づいて前記試験体の前記異なる性質の固体で囲まれた部分の性状を判定する性状判定部とを備えた超音波探傷装置。
  5. 性状判定部は、異なる周波数に対する試験体中の板波及び擬似板波の強度のピークを求め、前記ピークに対応する周波数の付近の周波数についての前記試験体中の板波及び擬似板波の強度と前記ピークとの相違が閾値を超えた場合に、前記試験体中の異なる性質の固体で囲まれた部分に腐食がないと判定し、他の場合には前記試験体中の前記異なる性質の固体で囲まれた部分に腐食があると判定することを特徴とする請求項4記載の超音波探傷装置。
  6. 電気信号によって駆動され異なる性質の固体で囲まれた部分を有する試験体中に板波を励振する送信用探触子と、
    前記送信用探触子を駆動するために異なる周波数を持つ送信電気信号を生成する送信電気信号生成部と、
    前記試験体中を伝搬した板波、及び、前記異なる性質の固体がある部分で生じた擬似板波を電気信号に変換する受信用探触子と、
    前記受信用探触子からの電気信号に基づいて、前記異なる周波数に対する前記試験体中の板波及び擬似板波の強度の関係を表す周波数−エコー強度特性を計算する特性計算部と、
    前記周波数−エコー強度特性を出力する出力部とを備えた超音波探傷装置。
  7. キャリア周波数を変更しながら異なる性質の固体で囲まれた部分を有する試験体中に板波を励振し、前記試験体中の板波、及び、前記異なる性質の固体がある部分で生じた擬似板波の強度の測定結果から、キャリア周波数の変更に対する前記試験体中の板波及び擬似板波の強度の変化のピークを求め、
    前記ピークに対応するキャリア周波数の付近のキャリア周波数についての前記試験体中の板波及び擬似板波の強度と前記ピークとの相違が閾値を超えた場合に、前記試験体中の前記異なる性質の固体で囲まれた部分に腐食がないと判定し、他の場合には前記試験体中の前記異なる性質の固体で囲まれた部分に腐食があると判定することを特徴とする超音波探傷方法。
  8. 異なる周波数を持つ送信電気信号により異なる性質の固体で囲まれた部分を有する試験体中に板波を励振し、前記試験体中の各周波数に対する板波、及び、各周波数に対する前記異なる性質の固体がある部分で生じた擬似板波の強度の測定結果から、異なる周波数に対する前記試験体中の板波及び擬似板波の強度のピークを求め、
    前記ピークに対応する周波数の付近の周波数についての前記試験体中の板波及び擬似板波の強度と前記ピークとの相違が閾値を超えた場合に、前記試験体中の前記異なる性質の固体で囲まれた部分に腐食がないと判定し、他の場合には前記試験体中の前記異なる性質の固体で囲まれた部分に腐食があると判定することを特徴とする超音波探傷方法。
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