JP4294183B2 - 内面溝付伝熱管 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、冷凍機器や空調機器等に好適に用いられる内面溝付伝熱管に係り、特に、蒸発器における蒸発管や凝縮器における凝縮管として、何れも好適に用いられ得る内面溝付伝熱管に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、冷凍機器や空調機器等における蒸発器や凝縮器等の熱交換器に組み込まれる伝熱管の一種として、管内面に、多数の溝が、管軸に対して傾斜して延びるように形成されてなる、所謂、内面溝付伝熱管が、知られている。例えば、管内面に螺旋状の溝を多数形成せしめた内面螺旋溝付伝熱管や、実開昭57−183487号公報や特開平9−26279号公報、特開平9−236395号公報等に提案されているように、管内面を、管軸方向に延びる仮想分割線により管周方向に複数の領域に分割し、そして、それら複数の領域のうち、相互に隣接する領域において、管軸方向に対して、互いに逆方向に向かって傾斜して延びる、松葉の如き形状の溝を多数形成してなる内面松葉溝付伝熱管等が、それである。そして、それらの内面溝付伝熱管においては、螺旋溝や松葉溝の如き傾斜溝が設けられていることにより、管内を流通せしめられる冷媒等の伝熱媒体の管内面に対する接触面積が増大せしめられ、以て、管内熱伝達率の向上が図られているのである。
【0003】
ところで、近年では、このような構造の内面溝付伝熱管における熱伝達率の更なる向上、ひいてはそれが組み込まれる熱交換器の熱交換効率の向上を図るために、それぞれの傾斜溝の深さを深くして、管周方向において互いに隣り合う傾斜溝同士の間に形成される、突条形態を呈するフィンの高さを高くしたり、傾斜溝のピッチを狭くして、フィンの幅を小さくしたり、或いは、ピッチや溝底部の幅を小さくする等して、傾斜溝の条数を増加させたりする方策や、管軸に対する傾斜溝の傾斜角度やフィンの頂角、即ち、フィンの両側斜面の交差角度を、所定の範囲内の大きさに規定するといった手立てが、それぞれ単独で、或いは種々組み合わされて、講じられてきている。
【0004】
ところが、そのような高フィン化や、細フィン化、多溝化、溝の傾斜角或いはフィン頂角の規定等の様々な方策を駆使しても、伝熱管を蒸発管として用いた場合の熱伝達率と、それを凝縮管として用いた場合の熱伝達率の両方、つまり、内面溝付伝熱管の蒸発性能と凝縮性能の両方をバランス良く高めることは、極めて困難であったのである。
【0005】
尤も、上述の如き手立てが講じられた内面溝付伝熱管のうち、傾斜溝の条数を増やすことにより、傾斜溝間に形成されるフィンの数を増加せしめるものについては、フィン数を更に増加すれば、管内面の限られたスペース内で、伝熱面積がより効率的に増大せしめられるため、蒸発性能と凝縮性能の両方を高め得ると考えられる。しかしながら、フィンの数が増えれば増えるほど、一つ一つのフィンの厚さが不可避的に薄くなってしまうことから、実際に、フィン数を更に増加させた場合には、伝熱管を熱交換器に組み込む際における、管外面への放熱フィン(プレート)の拡管装着のための拡管工程で、薄いフィンが、管内に挿入される拡管プラグとの接触によって潰れたり、倒れたりして、変形してしまい、結果的に、蒸発及び凝縮の両性能の低下を招く恐れがあるのである。また、そのようなフィンの変形が生じた際には、フィンの変形状態やその変形量のバラツキ等により、部分的な拡管不足が生じて、管外面への放熱フィンの装着不良(伝熱管と放熱フィンとの密着性の低下)が発生し、それによって、熱交換器の熱交換効率の低下が惹起されるといった危惧さえも内在しているのである。
【0006】
一方、そのような拡管プラグとの接触によるフィンの変形を防止する方法としては、特公昭60−28573号公報に記載される如く、管内面に形成される複数のフィンの一部のものの高さを高く為し、管内に挿入された拡管プラグが、それら高さの高いフィンのみに接触せしめられるようにする方法が、知られてはいる。しかしながら、従来の伝熱管において、一部のフィンの高さを高くした場合、拡管時に、伝熱管の変形を招く恐れがあり、また、伝熱管の曲げ加工性も損なわれるといった問題が生ずることとなるのである。
【0007】
従って、従来の内面溝付伝熱管において、単に、フィンの数を更に増加しただけでは、熱交換器に組み込んだ状態で、期待される程の管内熱伝達性能を得ることが出来ず、また、拡管時におけるフィンの変形を防止すべく、単に、一部のフィンの高さを高くしただけでは、伝熱管の変形を防止し、且つその曲げ加工性を確保しつつ、管内熱伝達性能を向上させることは困難であった。そのため、そのような従来の内面溝付伝熱管が組み込まれた熱交換器を蒸発器や凝縮器として用いた場合の熱交換効率の向上、換言すれば、熱交換器単体性能の更なる向上を図ることも、到底、望み得なかったのである。
【0008】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、蒸発性能と凝縮性能の両方がバランス良く高められ得て、より高度な管内熱伝達性能が有利に発揮され得る内面溝付伝熱管を提供することにあり、また、熱交換器に組込む際の拡管工程におけるフィンの変形が可及的に抑制され得て、熱交換器に組み込まれた状態にあっても、より高度な管内熱伝達性能が有効に確保され得ると共に、管外面に対して放熱フィンが確実に拡管装着され得、以て熱交換器単体性能の更なる向上を効果的に図り得るようにした内面溝付伝熱管の新規な構造を提供することをも、その課題とするものである。
【0009】
【解決手段】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、管内面に、多数の溝が、管軸に対して傾斜して延びるように形成されると共に、それらの溝間に、突条形態を呈するフィンがそれぞれ形成されてなる内面溝付伝熱管において、前記多数の溝が、0.17〜0.34mmのピッチで形成されている一方、前記フィンが、0.01〜0.3mmの高さを有する第一のフィンと、該第一のフィンよりも高さが0.01〜0.1mm高く、且つ該第一のフィンよりも頂角が大きな第二のフィンとから構成され、更に、該第二のフィンが、管周方向において互いに所定の間隔を隔てて、管軸方向に向かって螺旋状に延びるように3〜10条形成されていると共に、それら複数の第二のフィンのうち、管周方向において互いに隣り合うもの同士の間に、前記第一のフィンが12条以上形成されていることを特徴とする内面溝付伝熱管を、その要旨とするものである。
【0010】
このような本発明に従う内面溝付伝熱管にあっては、傾斜溝が、従来の伝熱管の内面に形成される傾斜溝のピッチよりも狭い特定の範囲のピッチで、管内面に形成されて、多溝化されており、それによって、それらの溝間に形成される、突条形態を呈するフィンの条数が、従来管に比して大幅に増大せしめられているのであり、また、それら多数のフィンの殆どが、所定の範囲の高さとされることによって、伝熱性能の向上を図るのに有効な伝熱面積が確保可能とされた、比較的に小型の第一のフィンから構成されているところから、管内面の伝熱面積が極めて効率的且つ効果的に増大せしめられ得、以て、蒸発性能と凝縮性能の両方が、共にバランス良く、有利に高められ得ることとなったのである。なお、ここで、フィンの条数とは、1周当たりのフィンの条数、即ち、管軸に垂直な断面において、その端面に形成されるフィンの数をいうものとする。
【0011】
また、かかる内面溝付伝熱管においては、前記多数のフィンのうち、前記第一のフィン以外のものが、第一のフィンよりも高い高さと大きな頂角とを有する、比較的に厚さの厚い大型の第二のフィンとして構成されているところから、それを熱交換器に組み込むに際しての、管外面への放熱フィンの拡管装着のための拡管工程で、かかる伝熱管内に挿入される拡管プラグが、主に、厚さの厚い大型の第二のフィンに対して、所定の拡管力を及ぼしつつ接触せしめられることによって、第二のフィンよりも薄い小型の第一のフィンに対する拡管プラグの接触が、最小限に抑えられるようになっており、それによって、第一のフィンが拡管プラグとの接触により潰れたり、倒れたりして変形することが、効果的に解消乃至は抑制され得るのである。
【0012】
そして、その結果、かかる内面溝付伝熱管が、熱交換器に組み込まれた状態にあっても、多数の第一のフィンによって得られる蒸発及び凝縮の両性能の向上効果が、有利に確保され得るのである。しかも、それら大型の第二のフィンが、前記多数のフィンのうち、第一のフィンを除いた残りの数少ないものに限られて、その数が可及的に少なくされているところから、かかる大型の第二のフィンの存在によって、第一のフィンによる蒸発及び凝縮の両性能の向上効果が損なわれるようなこともないのである。
【0013】
さらに、本発明に係る内面溝付伝熱管にあっては、拡管プラグが接触せしめられる第二のフィンが、管周方向において互いに所定の間隔を隔てて、管軸方向に向かって螺旋状に延びるように形成されているところから、かかる第二のフィンが、前記多数のフィンのうち、第一のフィンを除いた残りの数少ないものにて構成されているにも拘わらず、前記せる如き拡管工程で、拡管力が、該第二のフィンを介して、管内面の全面に略均等に加えられ得、それによって、伝熱管全体が周方向において均等に拡管せしめられて、放熱フィンが、管外面に対して、十分な密着性をもって、確実に拡管装着せしめられ得ることとなるのである。
【0014】
従って、本発明に従う内面溝付伝熱管にあっては、優れた蒸発性能と凝縮性能とがバランス良く具備せしめられ得て、従来管では得られない高度な管内熱伝達性能が有利に発揮され得るのであり、また、熱交換器に組込む際の拡管工程におけるフィンの変形が可及的に抑制され得て、熱交換器に組み込まれた状態下でも、優れた管内熱伝達性能が有利に確保され得ると共に、放熱フィンが確実に拡管装着され得るため、熱交換器単体性能を更に効果的に向上させることが可能となっているのである。
【0015】
ところで、このような本発明に従う内面溝付伝熱管の好ましい態様の一つによれば、前記第二のフィンの頂角が、15〜60°とされている。このような構成を採用すれば、拡管力が及ぼされる第二のフィンの厚さが適度に設定され、それによって、第二のフィンの拡管プラグとの接触による変形が確実に防止され得て、第一のフィンの変形がより効果的に阻止され得るのであり、また、管内面において、第二のフィンが占める割合が低く抑えられ得て、第一のフィンの数が十分に確保され得、以て、第一のフィンによる管内伝熱性能の向上効果が、更に一層有利に高められ得るのである。
【0016】
また、本発明に従う内面溝付伝熱管によれば、前記第一のフィンと前記第二のフィンとの高さの差が、0.01〜0.1mmとされている。かかる構成を有する内面溝付伝熱管にあっては、第二のフィンが、第一のフィンの成形性を損ねない程度の高さの範囲内で、第一のフィンよりも十分に高くされ得、それによって、第一のフィンの一つ一つが、優れた管内伝熱促進効果を発揮するのに十分な大きさをもって構成され得るばかりでなく、例え、第二のフィンが、拡管プラグとの接触により変形せしめられるようなことがあっても、第一のフィンの拡管プラグとの接触が有利に回避されるか、若しくは最小限に抑えられ得ることとなり、以て、第一のフィンによる管内伝熱性能の向上効果が効果的に確保され得るのである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより具体的に明らかにするために、本発明に係る内面溝付伝熱管の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0018】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する内面溝付伝熱管の一例が、管軸方向に垂直な方向で切断した横断面形態における端面図において示されており、また、図2には、図1の要部を拡大した図が示され、更に、図3には、そのような内面溝付伝熱管を管軸方向に平行に切断した縦断面図が示されている。なお、図3は、溝とフィンの配設形態の理解を容易と為す上で、それら溝とフィンとが誇張されて示されており、そのために、図3の縦断面図においては、溝とフィンとが、図1及び図2に比して、少ない配設条数で示されていることが、理解されるべきである。
【0019】
そして、それら図1乃至図3からも明らかなように、内面溝付伝熱管10は、全体として、円形横断面を有する中空の直管形状を呈しているのである。なお、この内面溝付伝熱管10は、蒸発管や凝縮管、或いはヒートパイプ本体等として採用されるものであって、冷媒等の伝熱媒体の流通路を管内部に形成し得るように、円形の他、楕円形や偏平な長円形等の適当な断面形状を呈する中空管体構造において、構成されるものである。そして、かかる内面溝付伝熱管10においては、その構成材料として、要求される伝熱性能や採用される伝熱媒体の種類等に応じて、例えば、銅や銅合金、アルミニウム合金等の適当な金属材が、適宜に用いられることとなる。
【0020】
また、かかる内面溝付伝熱管10にあっては、その外周面が平滑面とされている一方、内周面に、多数の溝12が形成されており、更に、それら多数の溝12が形成されていることによって、管内面における管周方向に互いに隣り合う溝12同士の間に、突条形態を有するフィン16が、それぞれ1つずつ形成されている。
【0021】
より具体的には、多数の溝12は、管軸14に対して直角な断面において、何れも、底部に向かうに従って次第に狭幅となる略台形形状とされていると共に、管軸14に対して傾斜して、周方向に連続して螺旋状に延び、且つ管軸14方向で互いに一定の距離だけ離間する形態をもって、設けられている。一方、それらの溝12間に形成された多数のフィン16は、それぞれ、各溝12の形状に対応して、先端に向かうに従って狭幅となると共に、その先端面が平坦面とされた略台形形状を呈する管軸直角断面形状を有しており、それぞれの溝12に沿って、管軸14に対して傾斜して、周方向に連続して螺旋状に延び、且つ管軸14方向で互いに等間隔をおいて離間する形態をもって、設けられている。
【0022】
すなわち、ここでは、管内面に多数の溝12と多数のフィン16とが、管周方向に交互に位置し、且つ螺旋状形態をもって管軸14方向に延びるように形成されており、それによって、内面溝付伝熱管10が、管内面の限られたスペース内で、伝熱面積が効率的に増大せしめられた内面螺旋溝付伝熱管として、構成されているのである。
【0023】
なお、このような内面溝付伝熱管10においては、多数の溝12のそれぞれの断面形状や管軸14に対する傾斜角度(図3において、θにて示される角の大きさ)が、特に限定されるものではなく、伝熱管10の用途や採用される伝熱媒体の種類、管内を流通せしめられる伝熱媒体の質量速度等に応じて適宜に決定されることとなり、例えば、溝12の断面形状としては、上述の如き台形形状の他、V字形状やU字形状、或いは真円や楕円、長円等の円形の一部を為す円弧形状等の形状が採用され得るものである。また、管軸14に対する傾斜角度:θは、好ましくは、5〜35°の範囲内に設定されることとなる。このような設定値を採用することによって、多数の溝12の形成による伝熱面積の増大が更に有効に図られ得ると共に、伝熱媒体が、管内をよりスムーズに案内されて、流通せしめられることとなるのである。
【0024】
そして、このような内面溝付伝熱管10においては、多数の溝12のピッチ(図2において、Pにて示される寸法)が、0.17〜0.34mmと、極めて狭く設定されている。何故なら、管内面に、溝12を0.17mmよりも狭いピッチで形成することは、極めて困難であるからであり、また、溝12を0.34mmよりも広いピッチで形成すると、管内面における伝熱面積を、従来の伝熱管よりも増大させることが出来なくなるからである。つまり、本実施形態では、溝12のピッチ:Pとして、上記設定値が採用されていることによって、溝12の条数と隣接する溝12間に形成されるフィン16の数とが、従来の伝熱管よりも飛躍的に増加せしめられ、以て、管内面における伝熱面積がより一層効率的に増大せしめられているのである。なお、この溝12のピッチは、0.2〜0.3mmとされていることが、望ましく、そうすることによって、多数の溝12の形成がより容易となり、内面溝付伝熱管10の良好な成形性をより有利に確保しつつ、管内面における伝熱面積の増大が効果的に図られ得ることとなる。
【0025】
加えて、かかる内面溝付伝熱管10にあっては、特に、多数のフィン16が、高さとフィン頂角(フィン16を形成する幅方向両側面の交差角)の大きさとが互いに異なる2種類のフィン16a,16bにて、構成されているのである。即ち、多数のフィン16が、高さが低く且つフィン頂角の大きさ(図2において、αにて示される角の大きさ)が小さな第一のフィンとしての小型フィン16aと、該小型フィン16aよりも高さが高く且つフィン頂角の大きさ(図2において、βにて示される角の大きさ)が大きな第二のフィンとしての大型フィン16bとから構成されているのである。そして、内面溝付伝熱管10の内面に対して、かかる大型フィン16bが、管周方向に等間隔をおいて、管軸方向に向かって螺旋状に延びるように、1周当たり6条形成されており、また、小型フィン16aが、管周方向に互いに隣り合う大型フィン16b同士の間に、相互に等間隔をあけて、それら大型フィン16bに沿って螺旋状に延びる状態で、それぞれ、14条ずつ、合計で、1周当たり84条形成されているのである。
【0026】
さらに、ここでは、そのような多数の小型フィン16aのそれぞれの高さ(図2において、hにて示される寸法)が、0.01〜0.3mmとされている。けだし、その高さ:hが0.01mmよりも低い小型フィン16aを形成することは非常に困難であるからであり、また、例え、そのような高さの低い小型フィン16aを形成し得たとしても、高さが低過ぎるため、管内面における伝熱面積を、従来管よりも大きく為すことが出来ないからである。一方、高さ:hが0.3mm以下とされているのは、小型フィン16aを0.3mmよりも高くした場合、伝熱媒体の熱流束が、高さの高い小型フィン16aの先端で集中してしまい、小型フィン16aの表面全体が有効に活用され得なくなり、そのために、伝熱面積の増大効果を十分に得ることが出来ないばかりか、却って、かかる効果を低下せしめる恐れさえもあるからである。つまり、管内面に形成される多数のフィン16の殆どが、適度な高さを有する小型フィン16aにて構成されていることによって、管内面における伝熱面積の増大効果が、より有効に享受され得るようになっているのである。なお、小型フィン16aの優れた成形性を確保しつつ、管内面における伝熱面積の増大効果を更に高めるためには、小型フィン16aの高さ:hが、0.03〜0.25mmとされていることが、より望ましい。
【0027】
また、かかる内面溝付伝熱管10においては、少数の大型フィン16bのそれぞれが、小型フィン16aよりも高い高さをもって構成されていることにより、伝熱管10内に、その内径よりも所定寸法大きな外径を有する拡管プラグ(図示せず)が挿入せしめられた際に、そのような拡管プラグが、先ず、各大型フィン16bの先端面に対して、所定の拡管力を及ぼしつつ、接触せしめられるようになっている。そして、ここでは、また、大型フィン16bが、小型フィン16aよりも大きなフィン頂角:βをもって構成されていることにより、大型フィン16bの厚さが小型フィン16aよりも厚くされ、以て大型フィン16bのそれぞれのものが、拡管プラグとの接触によって変形するようなことがなく、それら大型フィン16bにて前記拡管力が十分に受け止められるようになっているのである。その結果、多数の小型フィン16aに対して、拡管プラグが接触せしめられて、かかる小型フィン16aが潰れたり、倒れたりして、変形するようなことも、効果的に回避乃至は抑制され得て、それら多数の小型フィン16aによって達成される、前記した管内面における伝熱面積の増大効果が、十分に得られるようになっているのである。
【0028】
なお、このような大型フィン16bのフィン頂角:βは、小型フィン16aのフィン頂角:αよりも大きくされておれば、その大きさが、特に限定されるものではないが、好ましくは、15〜60°の範囲内に設定されることとなる。何故なら、大型フィン16bのフィン頂角:βが15°よりも小さいと、大型フィン16bの厚さが薄くなり過ぎて、内面溝付伝熱管10内への前記拡管プラグの挿入により生ずる拡管力を、かかる大型フィン16bにて受け止めきれなくなってしまい、大型フィン16bが変形してしまうからである。また、かかるフィン頂角:βが60°よりも大きい場合には、大型フィン16bの厚さが過剰に厚くなってしまうため、伝熱管10内面における大型フィン16bの占める割合が大きくなり、それによって、管内面の限られたスペース内に、小型フィン16aを多数形成することが困難となってしまうからである。
【0029】
また、大型フィン16bの高さも、小型フィン16aの高さ:hよりも高くされておれば、何等限定されるものではないものの、有利には、小型フィン16aの高さとの差分(図2において、dにて示される寸法)が0.01〜0.1mmの範囲内となるように設定される。けだし、かかる差分が0.01mmよりも小さいと、比較的にフィン頂角:βの小さな大型フィン16bが、前記拡管プラグとの接触により僅かに変形せしめられただけでも、拡管プラグが小型フィン16aと接触してしまい、小型フィン16aの変形が生ずることとなるからである。また、かかる差分が0.1mmよりも大きい場合には、各大型フィン16bの高さが過剰に高くなるため、それによって、管内面に限られたスペース内で、伝熱面積を有効に確保可能な適度な高さを有する小型フィン16aを十分に多く形成することが困難となるからである。
【0030】
さらに、本実施形態の内面溝付伝熱管10にあっては、かかる大型フィン16bが、管内面に、1周当たり6条形成されていると共に、小型フィン16aが、それら大型フィン16bのうち、管周方向に互いに隣り合うもの同士の間に、それぞれ、1周当たり14条ずつ形成されていたが、大型フィン16bは、1周当たり3〜10条の範囲内において形成され、また、小型フィン16aの条数は、互いに隣りあう大型フィン16b同士の間に、それぞれ12条以上形成されていなければならない。これは、大型フィン16bが、伝熱管10の内面において、1周当たりに1条若しくは2条しか形成されていないと、伝熱管10内に前記拡管プラグを挿入して、伝熱管10を拡管する際に、拡管力が、伝熱管10に対して、その周方向において均等に作用されず、そのために、部分的な拡管不足が生じて、かかる拡管操作により管外面に装着される放熱フィンの装着不良が発生する恐れが極めて高いからである。また、大型フィン16bが、管内面に、1周当たり11条以上形成される場合には、管内面における大型フィン16bの占める割合が大きくなって、かかる大型フィン16bと共に管内面に形成される小型フィン16aの条数が減少してしまい、それによって、小型フィン16aを多数形成して得られる、管内面における伝熱面積の増大効果が十分に享受され得ないようになってしまうからである。そして、そのような管内面における伝熱面積の増大効果を十分に得るために、小型フィン16aは、伝熱管10の内面において、管周方向に互いに隣り合う大型フィン16b同士の間に、それぞれ、少なくとも12条形成されていなければならないのである。
【0031】
また、そのような管内面における伝熱面積の増大効果を発揮し得る小型フィン16aと、拡管力を受け止める働きをする大型フィン16bのうち、大型フィン16bは、管軸14方向に向かって螺旋状に延びるように形成されていなければならないが、小型フィン16aは、必ずしも、そのような螺旋状形態を有している必要はなく、管軸14に対して傾斜して延びるように形成されておれば良い。何故なら、大型フィン16bが、螺旋状形態を有していることによって、伝熱管10内への拡管プラグの挿入により生ずる拡管力が、管周方向において、確実に均等に作用せしめられ得ることとなるからであり、一方、小型フィン16aは、少なくとも、管軸14に対して傾斜して延びるように形成されておれば、管内面における伝熱面積の増大効果を十分に発揮し得るからである。従って、本実施形態の内面溝付伝熱管10においては、管内面に、多数の溝12が管軸14方向に向かって螺旋状に延びるように形成されていることによって、それらの溝12間に形成される小型フィン16aと大型フィン16bとが、何れも、螺旋状形態をもって、管軸14方向に延びるように形成されていたが、例えば、伝熱管10の内面に、螺旋状形態を有する溝12を幾つか形成して、それら幾つかの螺旋状の溝12間に、大型フィン16bを形成し、またそれとは別に、松葉状形態を有する溝12を多数形成して、それら多数の松葉状の溝12間に、小型フィン16aを形成するようにしても、何等差し支えないのである。
【0032】
さらに、それら小型フィン16aと大型フィン16bのそれぞれの配置間隔、つまり、管周方向において互いに隣り合う小型フィン16a同士の離間距離や大型フィン16b同士の離間距離も、特に限定されるものではなく、それら2種類のフィン16a,16bを与える溝12のピッチ:Pによって、適宜に決定されるところではあるが、それぞれ、等間隔とされていることが、望ましい。そうすることによって、管内面における伝熱面積の増大効果が、管周方向においてバラツキなく有利に得られると共に、伝熱管10内への拡管プラグの挿入により生ずる拡管力が、管周方向において、更に一層確実に均等に作用せしめられ得るからである。
【0033】
このように、本実施形態の内面溝付伝熱管10にあっては、その内面に、溝12が極めて狭いピッチ:Pで多数形成されて、多数のフィン16が形成され、しかも、それら多数のフィン16の殆どが、伝熱面積を有効に確保し得る、適度な高さを有する小型フィン16aにて構成され、それによって、管内面における伝熱面積が極めて効率的に増大せしめられているところから、蒸発性能と凝縮性能の両方が、共にバランス良く、有利に高められ得ており、以て、従来管では得られない高度な管内熱伝達性能が効果的に発揮され得るのである。
【0034】
また、かかる内面溝付伝熱管10においては、多数のフィン16のうち、管内熱伝達性能の向上に大きく寄与する多数の小型フィン16aを除いた、数少ない残りのものが、かかる多数の小型フィン16aよりも高い高さと厚い厚さとを有する大型フィン16bからなり、そしてそれら大型フィン16bにて、管内に挿入される拡管プラグによる拡管力が受け止められることによって、小型フィン16aが、該拡管プラグとの接触によって潰れ変形したり、倒れ変形したりしないようになっているのである。更に、そのような大型フィン16bが、互いに等間隔をおいて、管軸14方向に向かって螺旋状に延びるように形成されていることにより、それら大型フィン16bにて受け止められる拡管力が、伝熱管10に対して、管周方向に略均等に作用せしめられるようになっているところから、管外面に放熱フィンが拡管装着せしめられて、所定の熱交換器に組み込まれる際にも、小型フィン16aの変形による伝熱促進効果の低下が生ずることなく、高度な管内熱伝達性能が有効に確保され得るのであり、また、伝熱管10の部分的な拡管不足による放熱フィンの装着不良等が惹起されて、熱交換器の熱交換効率が低下せしめられるようなことも、未然に防止され得るのである。そして、それらの結果として、熱交換器単体性能を更に効果的に向上させることが可能となっているのである。
【0035】
因みに、本発明に従う構造の内面溝付伝熱管を実際に用い、かかる内面溝付伝熱管について、上述の如き優れた特徴点に関する評価を行った。
【0036】
すなわち、先ず、多数の溝と、小型フィン及び大型フィンの2種類のものからなるフィンの多数とが、管内面に、管軸方向に向かって螺旋状に連続して延びる形態をもって管内面に形成されると共に、下記表1に示されるような寸法諸元を有して構成されてなる、本発明に従う構造とされた内面溝付伝熱管(実施例1)を準備した。また、比較のために、多数の溝と多数の小型フィンとが管内面に形成されてなる内面溝付伝熱管(比較例1)と、多数の溝と多数の大型フィンとが管内面に形成されてなる内面溝付伝熱管(比較例2)とを、それぞれ、下記表1に示されるような寸法諸元をもって形成して、準備し、更に、多数の溝と、小型フィン及び大型フィンの2種類のものからなるフィンの多数とが、管内面に形成されるものの、溝のピッチが本発明の規定範囲外とされた内面溝付伝熱管(比較例3)を、下記表1に示される寸法諸元をもって形成して、準備した。なお、これら準備された4種類の内面溝付伝熱管(実施例1及び比較例1,2,3)は、全て、銅材質のものとした。また、下記表1において、リード角は、フィンの管軸に対する傾斜角度の大きさを示し、条数は、1周当たりのフィンの条数、即ち、管軸に垂直な断面において、その端面に形成されるフィンの数を示す。
【0037】
【0038】
次いで、それら準備された4種類の内面溝付伝熱管(実施例1及び比較例1,2,3)と、従来より公知の伝熱性能試験装置と、冷媒としてのR−410Aとを用い、かかる伝熱性能試験装置の試験セクションに対して、各種伝熱管を単管で組み付けて、図4及び図5に示される如き冷媒の流通下で、下記表2に示される試験条件により、蒸発性能試験と凝縮性能試験とを、公知の方法に従って実施し、それら各種伝熱管の管内熱伝達率及び管内圧力損失を調べた。その結果を管内熱伝達率−冷媒質量速度線図及び管内圧力損失−冷媒質量速度線図として、図6及び図7にそれぞれ示した。なお、蒸発性能試験と凝縮性能試験における試験区間長さは、何れも、4mとした。
【0039】
【0040】
図6に示される結果から明らかなように、本発明に従う実施例1の伝熱管が、多数の溝間に小型フィン及び大型フィンの何れか一方のみが形成されてなる比較例1の伝熱管及び比較例2の伝熱管や、多数の溝間に小型フィンと大型フィンの両方が形成されているものの、それら多数の溝ピッチが、本発明の規定外の大きさとされた比較例3の伝熱管の何れのものよりも、蒸発性能試験と凝縮性能試験の両方において、明らかに優れた管内熱伝達率が得られることが、認められるのである。また、図7から明らかな如く、実施例1の伝熱管は、蒸発性能及び凝縮性能の両方の試験において、比較例1、比較例2、及び比較例3の各伝熱管と同程度に圧力損失が抑えられることが、認められる。そして、これらのことから、本発明に従う構造を有する内面溝付伝熱管が、蒸発性能と凝縮性能の両方において、従来管では得られない優れた性能が発揮され得るものであることが、明確に認識されるのである。
【0041】
次に、前述の如くして準備された4種類の内面溝付伝熱管(実施例1及び比較例1,2,3)を用い、従来法に従って、各種伝熱管の内部に拡管プラグを挿入し、管外面に放熱フィンを拡管装着せしめて、それら各種伝熱管をそれぞれ別の熱交換器に組み込んだ。これにより、本発明に従う内面溝付伝熱管(実施例1)が組み込まれてなる熱交換器(熱交換器1)と、フィンの構成や溝ピッチ等が本発明の規定外とされた3種類の内面溝付伝熱管(比較例1,2,3)がそれぞれ組み込まれてなる3種類の熱交換器(熱交換器2,3,4)を得た。かくして得られた4種類の熱交換器(熱交換器1〜4)について、その寸法諸元を、下記表3に示した。
【0042】
【0043】
そして、かくして得られた4種類の熱交換器(熱交換器1〜4)と、従来より公知の熱交換器単体性能試験装置と、冷媒としてのR−410Aとを用い、かかる熱交換器単体性能試験装置に対して、各種熱交換器を組み付けて、図8及び図9に示される如き冷媒の流通下で、下記表4に示される試験条件により、熱交換器単体性能における蒸発試験と凝縮試験とを、公知の方法に従って実施し、それら各種熱交換器単体における蒸発能力(冷房能力)と凝縮能力(暖房能力)とを調べた。その結果を熱交換器単体能力−前面風速線図として、図10に、それぞれ示した。
【0044】
【0045】
図10に示される結果から明らかなように、本発明に従う構造の内面溝付伝熱管が組み込まれてなる熱交換器1にあっては、フィンの構成や溝ピッチ等が本発明の規定外とされた3種類の内面溝付伝熱管(比較例1,2,3)がそれぞれ組み込まれてなる熱交換器2、熱交換器3、及び熱交換器4の何れに比しても、蒸発能力と凝縮能力の両方において、同等以上の能力を発揮するものであることが認められる。このような事実から、本発明に従う構造の内面溝付伝熱管を用いることにより、熱交換器単体能力に優れた熱交換器が得られることが、明確に認識され得るのである。
【0046】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであり、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものである。そして、そのような実施形態が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に従う内面溝付伝熱管にあっては、優れた蒸発性能と凝縮性能とがバランス良く具備せしめられ得て、従来管では得られない高度な管内熱伝達性能が有利に発揮され得るのであり、また、熱交換器に組込む際の拡管工程におけるフィンの変形が可及的に抑制され得て、熱交換器に組み込まれた状態下でも、優れた管内熱伝達性能が有利に確保され得ると共に、管外面に対して放熱フィンが確実に拡管装着され得、以て熱交換器単体性能を更に効果的に向上させることが可能となっているのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う内面溝付伝熱管の一例を示す横断面の端面説明図である。
【図2】図1における部分拡大説明図である。
【図3】図1に示された内面溝付伝熱管の縦断面説明図である。
【図4】実施例又は比較例としての各種伝熱管の蒸発時の伝熱性能を測定する試験装置における冷媒の流通状態を示す説明図である。
【図5】実施例又は比較例としての各種伝熱管の凝縮時の伝熱性能を測定する試験装置における冷媒の流通状態を示す説明図である。
【図6】実施例及び比較例としての各種伝熱管について、管内熱伝達率を測定した結果を示すグラフである。
【図7】実施例及び比較例としての各種伝熱管について、管内圧力損失を測定した結果を示すグラフである。
【図8】実施例又は比較例としての各種伝熱管が組み込まれてなる各種熱交換器の蒸発時の単体性能を測定するための試験装置において、冷媒の流通状態を示す説明図である。
【図9】実施例又は比較例としての各種伝熱管が組み込まれてなる各種熱交換器の凝縮時の単体性能を測定するための試験装置において、冷媒の流通状態を示す説明図である。
【図10】実施例又は比較例としての各種伝熱管が組み込まれてなる各種熱交換器について、熱交換器単体能力を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10 伝熱管
12 溝
14 管軸
16 フィン
Claims (4)
- 管内面に、多数の溝が、管軸に対して傾斜して延びるように形成されると共に、それらの溝間に、突条形態を呈するフィンがそれぞれ形成されてなる内面溝付伝熱管において、
前記多数の溝が、0.17〜0.34mmのピッチで形成されている一方、前記フィンが、0.01〜0.3mmの高さを有する第一のフィンと、該第一のフィンよりも高さが0.01〜0.1mm高く、且つ該第一のフィンよりも、フィン幅方向両側面の交差角であるフィン頂角が大きな第二のフィンとから構成され、更に、該第二のフィンが、管周方向において互いに所定の間隔を隔てて、管軸方向に向かって螺旋状に延びるように3〜10条形成されていると共に、それら複数の第二のフィンのうち、管周方向において互いに隣り合うもの同士の間に、前記第一のフィンが12条以上形成されていることを特徴とする内面溝付伝熱管。 - 前記第二のフィンのフィン頂角が、15〜60°である請求項1に記載の内面溝付伝熱管。
- 前記フィンが、管軸直角断面形状において台形形状を呈している請求項1又は請求項2に記載の内面溝付伝熱管。
- 伝熱管の内部に拡管プラグを挿入して、拡管することにより、管外面に放熱フィンを装着せしめる拡管工程を含む熱交換器の製造方法において、
前記伝熱管として、請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の内面溝付伝熱管を用いることを特徴とする熱交換器の製造方法。
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