JP4293742B2 - 透析用剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透析用剤及びその製造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
透析用剤は、透析液を作製するための薬剤である。透析液は、人工腎臓、血液透析、腹膜透析などにより、本来腎臓が行う機能に代わって体液の老廃物を取り去り、場合によっては血液中に必要な成分を補うために用いられるもので、体液に近い電解質組成を有する水溶液である。透析液としては、アルカリ化剤として重炭酸ナトリウムを用いる重曹透析液が生理的に好ましく、その需要が増加してきている。
【0003】
このような透析用剤は、従来液剤であったが、容積と重量が大きく、貯留、運搬や使用時の取扱に不便をきたすという問題があったので、近年では粉末剤に移行してきている。この粉末剤としては、一般に3剤式、2剤式、1剤式が知られている。
【0004】
3剤式の粉末透析用剤としては、例えば電解質成分の造粒物とブドウ糖と重炭酸ナトリウムとをそれぞれ別々に包装したものが主流となっている。しかし、この3剤式の透析用剤の場合には、3種類の薬剤を水に溶解混合させる必要があるので、透析液の作製作業が煩雑となり、人為的なミスが発生しやすいという問題があった。人為的なミスが発生すると、患者に血圧上昇、急激な血圧低下、四肢のしびれ感、心悸亢進、胸内苦悶、意識障害等の重篤な健康被害が生じるおそれもあるので、絶対に許されないことである。
【0005】
また、1剤式の透析用剤は、上述した電解質成分、ブドウ糖、重炭酸ナトリウムを全て1つの容器に包装したものであり、人為的なミスを低減できるが、重炭酸ナトリウムと電解質成分とによる不溶性の塩が生成しやすいという問題があった。
【0006】
そこで、電解質成分とブドウ糖からなる造粒物と重炭酸ナトリウムとをそれぞれ別々に包装する2剤式の透析用剤を使用することが考えられる。このような2剤式の透析用剤の例が、特許第2751933号公報に開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の2剤式の透析用剤では、電解質成分とブドウ糖からなる造粒物中のブドウ糖が変質し、長期保存に対する安定性が十分ではないという問題があった。
【0008】
この変質は、造粒物中で接触し合っている電解質成分とブドウ糖が水分を媒介として分解反応することによって生じるので、保存安定性を改善するためには、薬剤を十分に乾燥して水分含量を低くする必要がある。しかし、そのためには、多量の乾燥空気が必要になるなど、製造コストがかかり経済的ではないという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、保存安定性が向上された2剤式の透析用剤及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、透析用剤であって、重曹透析液に必要な電解質のうち、重炭酸ナトリウムを除く電解質成分とpH調整剤とを含む造粒物とブドウ糖とを気密容器に充填したA剤と、重炭酸ナトリウムを含有するB剤とからなることを特徴とする。
【0011】
また、上記透析用剤において、造粒物の平均粒径は0.1mm〜10mm、好ましくは0.3mm〜2mmであり、ブドウ糖の平均粒径は0.02mm〜2mm、好ましくは0.05mm〜1mmであることを特徴とする。
【0012】
また、透析用剤の製造方法であって、重曹透析液に必要な電解質のうち、重炭酸ナトリウムを除く電解質成分とpH調整剤とを含む造粒物を製造し、この造粒物とブドウ糖とを気密容器に充填してA剤とし、重炭酸ナトリウムを含有するB剤をA剤とは別に包装することを特徴とする。
【0013】
以上の各構成によれば、重炭酸ナトリウムを除く電解質成分とpH調整剤とを含む造粒物とブドウ糖とがともに気密容器に充填されているが、電解質成分とブドウ糖との接触面積を小さくすることができるので、ブドウ糖の変質を抑制でき、透析用剤の保存安定性を向上することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について説明する。
【0015】
本発明者らが、2剤式の透析用剤の保存安定性を向上するために種々検討した結果、重曹透析液に必要な電解質のうち、重炭酸ナトリウムを除く電解質成分とpH調整剤とを含む造粒物(A1剤)とブドウ糖(A2剤)とを気密容器の中に充填し、A剤とすることが有効であることを見いだした。
【0016】
ここで、pH調整剤は、薬理学的に許容される液体酸または固体酸であれば制限されない。液体酸としては、例えば、塩酸、酢酸等がある。また、固体酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸等がある。
【0017】
また、上記造粒物の平均粒径は0.1mm〜10mm、好ましくは0.3mm〜2mmである。また、上記ブドウ糖の平均粒径は0.02mm〜2mmとするのがよく、好ましくは0.05mm〜1mmである。造粒物の平均粒径をこのような範囲とすることにより、比表面積を制御し、保存安定性を向上することができる。
【0018】
なお、重炭酸ナトリウムを含有するB剤は、上記A剤とは別に包装を行う。
【0019】
以上のように、本実施形態にかかる透析用剤は、外観上はA剤とB剤との2剤式の透析用剤となっているが、実際にはA剤を充填した気密容器の中にA1剤とA2剤の2剤が充填される構成となっている。したがって、A1剤である電解質成分とA2剤であるブドウ糖とは、気密容器の中で接触していることになる。
【0020】
しかし、A剤中の電解質成分(A1剤)は造粒物となっているので、同一の気密容器中にブドウ糖(A2剤)とともに充填しても、A1剤とA2剤とが造粒物中で接触し合っている場合に比べて両者の接触面積を少なくすることができる。このため、A2剤であるブドウ糖の変質速度を抑制でき、長期保存に対する安定性を向上させることができる。なお、A1剤とA2剤とを気密容器中に充填する際に、まずA1剤を充填し、その上にA2剤を充填すれば、さらに両者の接触面積を少なくすることができる。
【0021】
また、電解質成分とブドウ糖との接触面積が小さくなるので、薬剤の乾燥を従来例ほど十分に行う必要がなくなり、乾燥のために余分なコストをかける必要がなくなる。このため、製造コストを低減させることもできる。
【0022】
さらに、上述したとおり、本実施形態は、形式的には2剤式となっており、しかも気密容器中の薬剤(A1剤、A2剤、B剤)の全量を溶解して使用することになるので、透析液作製作業が繁雑とならず、人為的ミスの危険性を低減することができる。
【0023】
以上に述べた本実施形態の具体例を以下実施例として説明する。
【0024】
実施例.
塩化ナトリウム222.7kg、塩化カリウム5.31kg、塩化カルシウム2水和物6.54kg、塩化マグネシウム6水和物3.62kg、無水酢酸ナトリウム23.36kgを混合し、50%粒径が約40ミクロンになるように粉砕する。なお、ここで述べた各電解質が、本発明にかかる重炭酸ナトリウムを除く電解質成分の例である。
【0025】
次に、上記粉砕した粉砕物を転動造粒した後流動槽で乾燥し、0.355mm(42メッシュ)以上1.7mm(10メッシュ)以下の粒径の造粒物とする。この造粒物に4.75kgの氷酢酸を添加し混合する。この造粒物2355.4gとブドウ糖315gを気密容器に充填し、本発明にかかるA剤とする。なお、この場合のブドウ糖の平均粒径は0.17mmであった。
【0026】
比較例.
塩化ナトリウム222.7kg、塩化カリウム5.31kg、塩化カルシウム2水和物6.54kg、塩化マグネシウム6水和物3.62kg、無水酢酸ナトリウム23.36kg、ブドウ糖11.868kgを混合し、50%粒径が約40ミクロンになるように粉砕する。
【0027】
次に、上記粉砕した粉砕物を転動造粒した後流動槽で乾燥し、0.355mm(42メッシュ)以上1.7mm(10メッシュ)以下の粒径の造粒物とする。この造粒物に4.75kgの氷酢酸を添加し混合する。この造粒物2670.4gを気密容器に充填する。
【0028】
保存安定性試験.
40℃の条件下で上記実施例及び比較例により製造した薬剤の安定性試験を行った。各薬剤からそれぞれ検体20.8gを採取する。なお、実施例では容器中に造粒物(A1剤)とブドウ糖(A2剤)とが充填されているので、容器内に充填された薬剤を均一に混合した後に検体採取を行う。次に、採取した検体に水を加えて溶解し、正確に100mlとする。この液を、吸光度測定法により波長284nmにおける吸光度を5−ハイドロキシメチルフルフラール類として測定した。電解質成分とブドウ糖との接触によりブドウ糖が変質した場合には、この5−ハイドロキシメチルフルフラール類が増加する。
【0029】
以上の試験の結果が表1に示される。
【0030】
【表1】
表1に示されるように、本実施例においては、5−ハイドロキシメチルフルフラール類に相当する吸光度が試験開始時から2ヶ月経過後までの間0.00を維持されている。したがって、本実施例では、ブドウ糖がほとんど変質していないことが分かる。
【0031】
これに対して比較例では、1ヶ月経過した時点での吸光度が0.35まで急激に増加し、2ヶ月経過時点では、1.29まで増加している。したがって、比較例では、ブドウ糖の変質が急速に生じていることが分かる。
【0032】
以上より、本発明にかかる透析用剤は、極めて高い保存安定性があることが分かる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電解質成分とブドウ糖との接触面積を小さくでき、透析用剤の保存安定性を大きく向上することができる。
Claims (3)
- 重曹透析液に必要な電解質のうち、重炭酸ナトリウムを除く電解質成分とpH調整剤とを含む造粒物とブドウ糖とを気密容器に充填したA剤と、重炭酸ナトリウムを含有するB剤とからなることを特徴とする透析用剤。
- 請求項1記載の透析用剤において、前記造粒物の平均粒径は0.1mm〜10mm、好ましくは0.3mm〜2mmであり、前記ブドウ糖の平均粒径は0.02mm〜2mm、好ましくは0.05mm〜1mmであることを特徴とする透析用剤。
- 重曹透析液に必要な電解質のうち、重炭酸ナトリウムを除く電解質成分とpH調整剤とを含む造粒物を製造し、前記造粒物とブドウ糖とを気密容器に充填してA剤とし、
重炭酸ナトリウムを含有するB剤を前記A剤とは別に包装することを特徴とする透析用剤の製造方法。
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JP2001190750A JP4293742B2 (ja) | 2001-06-25 | 2001-06-25 | 透析用剤及びその製造方法 |
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