JP4287109B2 - エンボスロールの製造方法、及びエンボスロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンボスロールに関し、さらに詳しくは、表面に微細な凹凸を形成するエンボスロールの製造方法、及びエンボスロールに関するものである。
【0002】
【従来技術】
(技術の概要)パソコン、ワープロ、液晶テレビなどの液晶表示装置は、液晶自体が発光しないので、面光源装置(バックライトともいう)で裏側から照明する。該バックライトは、通常、液晶画面の全体を均一に照射させるため、線状光源からの光を、光散乱パターンが設けられた導光板の側端面より入射させて、面状に光らせるエッジライト方式である。
このような面光源装置は、例えば、裏面側に反射板を有する導光板の側面から、入射した光源からの光を、光出射面から出射させ、さらに、光を散乱、拡散させ、照射面の輝度を均一にするために、光拡散フィルム、偏光分離フィルム、レンズフィルム、保護光拡散フィルムなどの光学機能を有する光学フィルムが設けられ、さらに表面側には外光の写り込みを防止する防眩フィルムを有している。このような光学フィルムは、光散乱性及び拡散性、光線透過率、並びに演色性がよく、導光板の光散乱パターンを隠せる等が要求され、また、他の偏光分離フィルムやレンズフィルムと組み合されて使用する際には、接触しても干渉縞が発生しないことが要求される。
また、カラー液晶表示装置で要求される充分な明るさは、なお一層の光透過性と、正面方向への出射光が要求される。このため、光拡散フィルム、保護光拡散フィルム、防眩フィルムなどの光学フィルムの1種として、透明な基材フィルムへ表面に微細な凹凸を有する光学機能層を形成したものがある。
この微細な凹凸を形成する方法として、微細凹凸形状を形成したエンボスロールを回転させ、該エンボスロールの凹部に電離放射線硬化性樹脂液を充填し、エンボスロールの回転方向に同期して走行する透明基材を接触させて、接触している間に電離放射線を照射して硬化させ、該硬化と同時に電離放射線硬化樹脂と透明基材とを密着させ、エンボスロールから剥離する方法がある。該エンボスロールの凹凸は、必要面積内で均一で、所望の光学機能を有する凹凸形状を有することが、重要である。
【0003】
(先行技術)従来、エンボスロールは、ロール芯材(単にロールという)、板材、フィルムの表面へ微細な凹凸形状を形成し、その方法としては、彫刻、電鋳、サンドブラスト処理、放電加工処理、エッチング処理が、知られている。しかしながら、必要面積の全域にわたって、ムラなく均一な凹凸形状を形成することは極めて難しいという欠点がある。
また、レジストを用いるブラスト法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、ロール芯材(エンボスロールに相当する)などの表面凹凸形状を転写する光拡散部材の製造法において、凹凸形状をサンドブラスト処理工程後、エッチング工程及び/又は薄膜の積層工程で作成することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、廃液処理を伴うエッチング工程、高価な真空装置を使用する薄膜積層工程を行うために、工程が増え、高コストになるという欠点がある。また、凹凸形状の面内のムラをなくしたり、さらに、サンドブラスト処理前に金属メッキ層を設けることは記載も示唆もされていない。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−144364号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開2000−284106号公報(第1頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、安定した光学特性を賦型することのできる均一で微細な凹凸を有し、反射防止フィルム、防眩フィルムなどの光学機能を有する部材を連続で製造でき、かつ、凹凸形状の耐久性が高く多くの数量を賦型できるエンボスロールの製造方法、及びエンボスロールを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わるエンボスロールの製造方法は、表面に微細な凹凸を形成したエンボスロールの製造方法において、(a)ロール芯材の表面にニッケル又はクロムからなる厚さが50μm以上の金属メッキ層を形成する工程、(b)前記金属メッキ層の表面を鏡面研磨する工程、(c)前記鏡面研磨を施した金属メッキ層面へ、セラミックビーズを用いて前記金属メッキ層の表面粗さRzが0.05μm以下となるようにブラスト処理する工程からなるようにしたものである。
本発明によれば、前記金属メッキ層がニッケル又はクロムであり、その厚さが50μm以上であり、その表面粗さRzが0.05μm以下であるようにしたものである。本発明によれば、ブラスト前にメッキ層を設けることで、傷がなく平滑で、セラミックビーズのブラストに負けない下地が形成され、また、従来ブラスト処理後に行っていたクロムメッキが不要となり、このことでメッキによる凹凸形状の変化がなく、耐久性が高く、安定した光学特性を賦型することのできる微細な凹凸を有するエンボスロールの製造方法が提供される。
請求項2の発明に係わるエンボスロールは、表面に微細な凹凸を形成したエンボスロールであって、(a)ロール芯材の表面にニッケル又はクロムから成る厚さが50μm以上の金属メッキ層を形成する工程、(b)前記金属メッキ層の表面を鏡面研磨する工程、(c)前記鏡面研磨を施した金属メッキ層面へ、セラミックビーズを用いて前記金属メッキ層の表面粗さRzが0.05μm以下となる様にブラスト処理する工程からなる表面に微細な凹凸を形成するエンボスロールの製造方法で、製造されてなるようにしたものである。
本発明によれば、安定した光学特性を賦型することのできる微細な凹凸を有し、反射防止フィルム、防眩フィルムなどの光学機能を有する部材を連続で製造でき、かつ、凹凸形状の耐久性が高く多くの数量を賦型できるエンボスロールが提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示すエンボスロールの断面図である。
(基本の構成)エンボスロール1は、円筒ロールの中心を貫くように軸を有するロール芯材21で、円筒ロールの表面は金属メッキ層23からなり、該金属メッキ層23には微細な凹凸(エンボス版)を形成したものである。
円筒状のロールの材料としては、亜鉛、銅、真鍮、鉄、アルミニウム等の金属が使用できるが、機械的な強度や硬さから鉄が好ましい。円筒ロールの表面は金属メッキ層23としては、ニッケル、クロム、又はニッケルとクロムの積層であってもよい。該金属メッキ層23面に、微細な凹凸25を形成する。エンボスロールの微細な凹凸25は、賦型された製品の凹凸のネガ状であるが、本明細書では外観的には同様なので、両方とも微細な凹凸と呼ぶ。なお、微細な凹凸25を、図1では作図の都合上、不規則な点線で示している。
また、エンボスロール1の形状は、一般的には円筒状のエンボスロール(エンボス版)として使用され、円筒状で示しているが、平板状であっても同様の効果を発揮する。
【0008】
(発明のポイント1)予め金属メッキ層を設けた後に、セラミックビーズでブラスト処理をすることで、表面に微細な凹凸を形成したエンボスロールを作成する本発明のエンボスロールの製造方法で、製造した本発明のエンボスロールは、安定した光学特性を賦型することのできる微細な凹凸を有し、反射防止フィルム、防眩フィルムなどの光学機能を有する部材を連続で製造でき、かつ、凹凸形状の耐久性が高く多くの数量を賦型することができる。該エンボスロールを用いて賦型した光学機能を有するフィルムは、微細な凹凸が適正に賦型されており、安定した光学特性を発揮する。
微細な凹凸が適正に賦型されていないと、例えば、防眩フィルムや反射防止フィルムとして、ディスプレイの前面へ配置した場合、ディスプレイへ入射する外光の散乱がムラとなって、外光が部分的に映り込んだり、また、ヘイズの不均一性から反射防止機能が特定部分の輝度が高くなる不自然な「ぎらつき」を緩和させることができない。従って、微細な凹凸が適正に賦型されていれば、ヘイズが低く、ディスプレイの表示画像の視認性がゆく、実用性に優れる。
また、本発明者らは、鉄のロール芯材をガラスビーズでブラスト処理した後に、クロムメッキして微細な凹凸を形成したエンボスロールを製造した。しかしながら、該凹凸形状は、クロムメッキの微妙な厚さの差が影響して、凹凸形状が大きく変化してしまった。ムラやギラツキなどのない安定した光学機能を発現する微細な凹凸は得られなかった。さらに、クロムメッキには微細なクラックが発生しやすく、このクラックによる外観不良も発生した。
そこで、さらに研究を進めて、金属メッキしてからセラミックビーズでブラスト処理をする本発明に至ったものである。
【0009】
図2は、本発明の1実施例を示す製造方法の工程図である。
(発明のポイント2)本発明の製造方法は、図2に示すような、(a)ロール芯材の表面に金属メッキ層を形成する工程101、(b)前記金属メッキ層の表面を鏡面研磨する工程103、(c)前記鏡面研磨を施した金属メッキ層面へセラミックビーズを用いてブラスト処理する工程105、さらに必要に応じて(d)金属及び/又はセラミックビーズを用いてピーニング処理をする工程107からなっている。
従来と全く異なるのは、ブラスト処理する前に、金属メッキを行い、さらに、ブラスト処理をセラミックビーズで行うことで、均一な凹凸形状が得られることである。
【0010】
(製造工程)製造工程毎に、その方法、材料、作用について説明する。
(a)ロール芯材の表面に金属メッキ層を形成する工程、
金属メッキ層23としては、表面硬度、ブラストに対する耐磨耗性、賦型樹脂や保存中の耐蝕性などからニッケル、クロム、ニッケルとクロムの積層が好ましい。また、その厚さは50μm以上が好ましく、これ以下ではセラミックビーズによるブラスト処理に負けて、中の鉄心が露出したり、微細な凹凸27にムラが発生しやすい。メッキ法としては公知のメッキ法が適用できる。
【0011】
(b)前記金属メッキ層の表面を鏡面研磨する工程、
次に、ブラスト処理で形成する微細な凹凸27にムラが発生しにくいように、金属メッキ層23の表面を鏡面研磨し、表面粗さRzを0.05μm以下とする。これ以上の表面粗さでは、ブラスト処理で形成する微細な凹凸27にも下地の粗さの影響がでてしまう。
研磨方法としては、バーチカル研磨法、又はバフ研磨法が適用できる。
該表面粗さは、JIS−B0601に準拠し、表面粗さRaは中心線平均粗さで、Rmaxは凹凸の断面形状の中心線に対しての最高値と最低値の差で、Rzは10点平均法による値で最高上位5点平均値と最低上位5点平均値の差である。このように、ブラスト前にメッキ層を設け、鏡面研磨することで、傷がなく平滑な層が得られ、セラミックビーズのブラストに負けない下地が形成される。
【0012】
(c)前記鏡面研磨を施した金属メッキ層面へセラミックビーズを用いてブラスト処理する工程、
金属メッキ層23へ、セラミックビーズでブラスト処理する。該ブラスト処理に用いる粒子としては、平均粒子径1〜100μm程度の炭化珪素、アルミナ、酸化クロム、酸化ジルコニウム等の粒子を用いられるが、本発明では、粒子としてセラミックビーズを用い、少なくとも、白色溶融アルミナ、緑色炭化珪素、白色ジルコンの1つを含むようにする。このようにすることで、ニッケル又はクロムからなる金属メッキ層へ効率よくブラストすることができる。また、鉄などの不純物を含まないので凹凸表面を汚染させないように、白色、緑色などの淡色系のセラミックビーズが好適である。
【0013】
ここで、エンボスロールのブラスト処理について、説明する。
図3は、本発明のブラスト処理を模式的に説明する断面図である。
図3のように、エンボスロール1はエンボスロール軸27によって、コンベア31上の台座33上に、左右の軸受け部35によって、回転自在に固定される。エンボスロール1は、既に金属メッキ層を設け、鏡面研磨されている。該エンボスロール1は、図示しない駆動源でエンボスロール軸27を経て回転され、また、コンベア31に左右揺動される。該回転と揺動により、エンボスロール1の表面の全面にわたって、圧搾空気等の力で噴射ノズル37の先端から、セラミックビーズが吹き付けられる。該ブラスト処理により、エンボスロール1の金属メッキ層23の表面の全面に、微細な凹凸25が砂目状に形成される。ロールの回転と揺動の量、セラミックビーズが吹き付け量、吹き付け時間は、所望の凹凸形状に合わせて適宜選択すればよい。
【0014】
また、従来、ブラスト処理後に行っていたクロムメッキは行わなくてもよい。即ち、ピーニング処理でエンボス処理と表面強化を兼用できるので、耐久性のために凹凸を形成後に行っていたクロムメッキが不要となる。このため、該メッキによって凹凸形状が変化を受けていたが、受けることもなくなる。
【0015】
(d)金属及び/又はセラミックビーズを用いてピーニング処理をする工程
ブラスト処理後に、さらに必要に応じて、ピーニング処理を行う。該ピーニング処理に用いる粒子としては、球形白色ジルコン、又は球形スチールビーズが好ましい。該ピーニング処理により、鋭く尖った部分が緩和されるため、離型性が向上する。また、凹凸形状の耐久性も向上し、多くの数量を賦型することでできるエンボスロール1が得られる。
【0016】
【実施例】
(実施例1)鉄材ロール(面長1600mm、直径300mm)の表面を公知の研磨法で傷やピット欠陥のない状態とし、該表面に公知のメッキ法で厚さ100μmのクロムをメッキした。該クロム表面をバーチカル研磨法でRzが0.02μmになるように研磨して鏡面を得た。該鏡面へ図3の装置でロールを回転及び揺動しながら、平均粒径100μmの白色溶融アルミナで30分間ブラスト処理して微細な凹凸を形成した後に、該ブラスト面に球形ジルコンをブラストしてピーニング処理して、光拡散機能を持つ微細な凹凸を有するエンボスロールを得た。
該エンボスロールの凹部へ、ウレタンアクリレートのプレポリマーを主成分とする紫外線硬化性樹脂を充填すると共に、エンボスロールの速度と同期させながら、帯状の厚さ125μmのエステルフィルムA4300(東洋紡社製、PETフィルム商品名)を接触させた。接触している間にPETフィルム側から、紫外線ランプDバルブ(フージョン社製、紫外線装置商品名)240W/cmを2灯用いて、走行速度10m/minで紫外線を照射し、エンボスロールとPETフィルムの間にある紫外線硬化性樹脂を硬化させることで、紫外線硬化性樹脂とPETフィルムとを接着させ、同時に紫外線硬化樹脂へエンボスロールの表面の凹凸を賦型させた。その後エンボスロールから剥離して、PETフィルム/紫外線硬化樹脂(厚さ5μm、表面に凹凸が賦型され光拡散機能を有する)の光拡散フィルムを得た。
【0017】
(比較例1)平均粒径75μmのスチールビーズを用いて1.5時間ブラスト処理して微細な凹凸を形成する以外は、実施例1と同様にして、微細な凹凸を有するエンボスロールを得た。該エンボスロールを用いて、実施例1と同様にして、光拡散フィルムを得た。
【0018】
(比較例2)平均粒径50μmのスチールビーズを用いて2.3時間ブラスト処理して微細な凹凸を形成する以外は、実施例1と同様にして、微細な凹凸を有するエンボスロールを得た。該エンボスロールを用いて、実施例1と同様にして、光拡散フィルムを得た。
【0019】
(比較例3)平均粒径100μmのガラスビーズを用いて4.5時間ブラスト処理して微細な凹凸を形成する以外は、実施例1と同様にして、微細な凹凸を有するエンボスロールを得た。該エンボスロールを用いて、実施例1と同様にして、光拡散フィルムを得た。
【0020】
(比較例4)厚さ125μmのエステルフィルムA4300(東洋紡社製、PETフィルム商品名)の一方の面へ、乾燥後の厚さが10μmになるように、下記インキをスリットリバースコーティング法で塗布し乾燥させて、光拡散フィルムを得た。
インキは、ポリエステル樹脂(屈折率1.55)100質量部、透光性ビーズ(屈折率1.49の架橋アクリル樹脂製、平均粒径5μm)8質量部を、溶剤(MEK:トルエン=1:1)でザーンカップ粘度計で27秒になるように稀釈調整したものである。
【0021】
評価は、実施例及び比較例のエンボスロールを用いて得られた光拡散フィルムのヘイズ、全光線透過率、傷付き性で評価した。
ヘイズ及び全光線透過率(以降、Ttという)は、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定した。傷付き性は、実施例又は比較例の光拡散フィルムの光拡散面と、プリズムシート(ピッチ50μm、単位プリズム形状の断面が頂角90°の二等辺三角形、住友スリーエム社製)のプリズム面とを重ねて、500g/cm2の荷重をかけながら引きずった後に、目視で観察した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示すように、比較例1〜3では接触する他の部材を傷付けることはないが、ヘイズが低く全光線透過率とのバランスも悪く、また、比較例4では接触する他の部材を傷付けてしまう。実施例1は接触する他の部材を傷付けることなく、ヘイズ及び全光線透過率のバランスがよい光拡散フィルムのが得られた。
【0024】
(実施例2)鉄材ロール(面長1600mm、直径300mm)の表面を公知の研磨法で傷やピット欠陥のない状態とし、該表面に公知のメッキ法で厚さ100μmのニッケルをメッキ(ビッカース硬度170〜180)した。該ニッケル表面をバーチカル研磨法でRzが0.05μmになるように研磨して鏡面を得た。該鏡面へ図3の装置でロールを回転及び揺動しながら、ジルコンビーズB120(ジルコニア67%とシリカ30%とその他3%からなり、粒径70〜125μm)で、下記の噴射条件でブラスト処理して微細な凹凸を形成して、光防眩機能を持つ微細な凹凸を有するエンボスロールを得た。
噴射条件は、噴射ノズル6本から噴射圧力3N/cm2(0.3kg/cm2)で1回、噴射ノズル3本から噴射圧力3N/cm2で1回、噴射ノズル3本から噴射圧力2N/cm2で3回の、合計5回通した。
該エンボスロールの凹部へ、ユニディックRC20−049(大日本インキ化学工業社製、、紫外線硬化性樹脂商品名)を充填すると共に、エンボスロールの速度と同期させながら、帯状の厚さ188μmのエステルフィルムA4300(東洋紡社製、PETフィルム商品名)を接触させた。なお、該PETフィルムには、予め下記プライマ組成物インキを用いて、乾燥後の厚さが1μmのプライマ層を設けておいた。
プライマ組成物インキは、ケミカルマットニス用メジウム(ザインクテック社製、商品名)100質量部と、XEL硬化剤(ザインクテック社製、商品名)10質量部と、溶剤(MEK:トルエン=1:1)33質量部とからなる。
PETフィルムと紫外線硬化性樹脂が接触している間に、PETフィルム側から紫外線ランプDバルブ(フージョン社製、紫外線装置商品名)240W/cmを2灯用いて、走行速度10m/minで紫外線を照射し、エンボスロールとPETフィルムの間にある紫外線硬化性樹脂を硬化させることで、紫外線硬化性樹脂とPETフィルムとを接着させ、同時に紫外線硬化樹脂へエンボスロールの表面の凹凸を賦型させた。その後エンボスロールから剥離して、PETフィルム/紫外線硬化樹脂(厚さ5μm、表面に凹凸が賦型され防眩機能を有する)の防眩フィルムを得た。
【0025】
(比較例5)平均粒径60〜65μmのスチールビーズを用いてブラスト処理して微細な凹凸を形成する以外は、実施例2と同様にして、微細な凹凸を有するエンボスロールを得た。該エンボスロールを用いて、実施例2と同様にして、防眩フィルムを得た。
【0026】
(比較例6)平均粒径35〜40μmのスチールビーズを用いてブラスト処理して微細な凹凸を形成する以外は、実施例2と同様にして、微細な凹凸を有するエンボスロールを得た。該エンボスロールを用いて、実施例2と同様にして、防眩フィルムを得た。
【0027】
(比較例7)鉄材ロール(面長1600mm、直径300mm)の表面を公知の研磨法で傷やピット欠陥のない状態とし、平均粒径105μmのガラスビーズ#120を用いてブラスト後、厚さが5μmのクロムメッキを施して、表面に微細な凹凸を形成して、微細な凹凸を有するエンボスロールを得た。該エンボスロールを用いて、実施例2と同様にして、防眩フィルムを得た。
【0028】
評価は、実施例及び比較例のエンボスロールを用いて得られた防眩フィルムのヘイズ、全光線透過率、グロス、透過鮮明性評価、写り込み防止性評価、ギラツキ防止性評価、で評価した。
ヘイズ及び、全光線透過率の測定法は前述と同じである。
グロスは、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定した。
ヘイズ、全光線透過率、グロスのバラツキは、面積1m2内のランダム25箇所を測定した、最大値最少値から求めた。
透過鮮明性評価は、JIS−K7105に準拠して、ICM−1PD(スガ試験機社製、商品名)を用いて、光学くし4種類(0.25、0.5、1、2mm)で測定した数値の合計を透過鮮明度とし、数値が大きいほどよい。
写り込み防止性評価は、10×10cmの大きさに切断して、黒台紙の上に置き、外光の写り込みを目視で観察し、写り込みのないものを6点、鮮明に写り込むものを0点とした。
ギラツキ防止性評価は、ZaurusICRUISE(シャープ社製、モバイルパソコン商品名)の表示部上に置き、ギラツキを目視で観察し、ギラツキのないものを6点、ギラツキの著しいものを0点とした。
表面粗さRz(10点平均粗さ)は、JIS−B−0601に準拠して、測定機として表面粗さ計サーフコーダSE−30K(小坂研究所社製、商品名)を用いて測定を行った。
その結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
比較例5の防眩フィルムは、ヘイズが高く、Rzも大きく、ギラツキ防止性が悪い。比較例6の防眩フィルムは、Rzが小さく、写り込み防止性が悪い。比較例7の防眩フィルムは、比較的ヘイズが低く、写り込み防止性及びギラツキ防止性はよいが、ヘイズのバラツキが大きい。また、クロムメッキの微細なクラックで外観不良が発生した。
実施例2の防眩フィルムは、ヘイズが比較例5、6より比較的低く、特にギラツキ防止性がよい。また、透過鮮明、写り込み防止性もよく、液晶表示装置に表示された画面の視認性が良好で、防眩フィルムとして十分な機能を有していた。
【0031】
【発明の効果】
本発明のエンボスロールは、安定した光学特性を賦型することのできる、均一でムラのない微細な凹凸を有している。このため、反射防止フィルム、防眩フィルムなどの光学機能を有する部材を連続で製造することができ、かつ、凹凸形状の耐久性が高いので、多くの数量の光学機能フィルムを賦型することができる。また、本発明の光学機能フィルムは、他の偏光分離フィルムやレンズフィルムと組み合されて使用する際には、接触しても干渉縞が発生しないし、傷付けることも少ない。
本発明の製造方法によれば、微細な凹凸を形成した後に、クロムメッキを行わないので、凹凸形状がクロムメッキの微妙な厚さの差で大きく変化することがない。さらに、クロムメッキには微細なクラックが発生しやすいが、最終工程にメッキ工程がないので、このクラックによる外観不良も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1実施例を示すエンボスロールの断面図である。
【図2】 本発明の1実施例を示す製造方法の工程図である。
【図3】 本発明のブラスト処理を模式的に説明する断面図である。
【符号の説明】
1 エンボスロール
21 ロール芯材
23 金属メッキ層
25 微細な凹凸
27 エンボスロール軸
31 コンベア
33 台座
35 軸受け部
37 噴射ノズル
Claims (2)
- 表面に微細な凹凸を形成したエンボスロールの製造方法において、(a)ロール芯材の表面にニッケル又はクロムからなる厚さが50μm以上の金属メッキ層を形成する工程、(b)前記金属メッキ層の表面を鏡面研磨する工程、(c)前記鏡面研磨を施した金属メッキ層面へ、セラミックビーズを用いて前記金属メッキ層の表面粗さRzが0.05μm以下となるようにブラスト処理する工程からなることを特徴とするエンボスロールの製造方法。
- 表面に微細な凹凸を形成したエンボスロールであって、(a)ロール芯材の表面にニッケル又はクロムから成る厚さが50μm以上の金属メッキ層を形成する工程、(b)前記金属メッキ層の表面を鏡面研磨する工程、(c)前記鏡面研磨を施した金属メッキ層面へ、セラミックビーズを用いて前記金属メッキ層の表面粗さRzが0.05μm以下となる様にブラスト処理する工程からなる表面に微細な凹凸を形成するエンボスロールの製造方法で、製造されてなることを特徴とするエンボスロール。
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