以下、本発明の新規な特徴と利益を、図面を参酌して説明する。ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施例は、適宜組み合わせることができる。
図1は本発明のキャピラリ電気泳動装置の概要を示す。本例のキャピラリ電気泳動装置は、単数又は複数本のキャピラリ101を含むキャピラリアレイ102、キャピラリ101をポリマーに注入するためのポリマー充填ユニット103、キャピラリ101内のサンプルに光を照射し、サンプルの蛍光を検出するための照射検出部120、キャピラリ101に高電圧を加えるための高圧電源105、キャピラリ101を恒温に保つための恒温装置106、移動ステージ107を備えた搬送機115を有する。
キャピラリ101は交換可能な部材であり、測定手法を変更する場合、キャピラリ101に破損や品質の劣化がみられたとき、交換する。キャピラリ101は、内径が数十から数百ミクロン、外径が数百ミクロンのガラス管で構成され、表面はポリイミドでコーティングされている。キャピラリ101の内部は、電気泳動時に泳動速度差を与えるための分離媒体が充填される。分離媒体は流動性と非流動性の双方が存在するが、本実施例では流動性のポリマーを用いる。
キャピラリ101の一端にはキャピラリヘッド205が設けられ、他端にはキャピラリ陰極端206が形成されている。キャピラリヘッド205は、キャピラリ101の端部を束ねたものであり、ポリマー充填ユニット103とキャピラリ101を接続させる機能を有する。キャピラリ陰極端206は、試料、溶液等に接触する。キャピラリ陰極端側では、キャピラリ101はロードヘッダ203によって固定されている。ロードヘッダ203には陰極電極114が設けられている。
照射検出部120は、照射系と検出系からなる。照射系は、キャピラリ101のポリイミド被膜が除去されている部分、即ち、検出部に励起光を照射する機能を有する。検出系は、キャピラリ101の検出部内のサンプルからの蛍光を検出する機能を有する。検出系によって検出された光によって試料を分析する。
ポリマー充填ユニット103は、シリンジ108、ポリマーブロック109、逆支弁110、ポリマー容器111及び陽極バッファ容器112を有する。キャピラリヘッド205をポリマーブロック109に接続することで、キャピラリ101とポリマーブロック109内の流路が接続される。シリンジ108の操作により、ポリマー容器111内のポリマーがポリマーブロック109内の流路を経由してキャピラリ101に充填され又は詰め替えられる。キャピラリ101中のポリマーの詰め替えは測定の性能を向上するために測定毎に実施される。
陽極バッファ容器112には陽極電極113が配置されている。高圧電源105は、陽極電極113と陰極電極114の間に15kV程度の高圧電圧を印加する。
恒温装置106は、断熱材とヒータが取り付けられた温度制御部材より、キャピラリアレイ102を平面状に挟み込んで、キャピラリの温度を一定に保つ。温度制御部材にはフィードバック用の温度センサが取り付けられている。また、キャピラリヘッド205及びロードヘッダ203を恒温装置106に固定することで、キャピラリアレイ102は所望の位置に固定することができる。
搬送機115は、移動ステージ107を移動させるための3つの電動モータとリニアガイドを備えており、移動ステージ107を上下、左右、および奥行きの3軸方向に移動可能である。移動ステージ107は、バッファ容器116、洗浄容器118、廃液容器およびサンプルプレート117を必要に応じてキャピラリ陰極端206まで搬送できる。
図2(a)は、図1のキャピラリ電気泳動装置のキャピラリアレイ102の詳細を示す。キャピラリ101の一端には、キャピラリヘッド205が設けられ、他端には、キャピラリ陰極端206が形成されている。ロードヘッダ203には金属製の中空電極が装着されている。キャピラリ陰極端206は中空電極を貫通し、その先から突出している。キャピラリ101はアレイシート207上にテープ210を用いて固定されている。アレイシート207は、樹脂製のリベット211等により、ロードヘッダ203に固定されている。ロードヘッダ203に掴み部209が設けられているが、これについては後に説明する。
照射検出部120の第1の例を説明する。本例の照射検出部120は、コーンレンズ208、及び、基準ベース204を有する。基準ベース204は、樹脂製のリベット211等を用いてアレイシート207に固定されている。キャピラリ101の検出部は基準ベース204上に保持される。光源からの励起光はコーンレンズ208を経由してキャピラリ101の検出部に照射される。
照射検出部120の第2の例を説明する。ここではキャピラリアレイ102は、複数のキャピラリ101を含むものとする。キャピラリ101は基準ベース204上に互いに平行に並んで配列される。照射系は、アルゴンイオンレーザ等のレーザ光源を用いる。光源からのレーザ光は、ビームスプリッタおよびミラーによって2つに分割される。2つのレーザ光は、それぞれ、集光レンズによって集光されて、キャピラリ101に照射される。
2つのレーザ光は、キャピラリ配列の両側から、即ち、キャピラリ101に直交する方向から照射される。尚、レーザ光を分割しないで、キャピラリ配列の片側のみから照射してもよい。
レーザ光は、キャピラリ101の配列によって形成される面に対して平行となるように、キャピラリ101に照射される。即ち、レーザ光は、キャピラリ101を保持する基準ベース204の面に対して平行となるように、キャピラリ101に照射される。
キャピラリ101に泳動媒体が充填されていると、レーザ光は、キャピラリ101を次々に伝播し、キャピラリ101の配列の一方の側から他方の側まで貫通する。従って、全てのキャピラリ101を同時に効率よく照射することができる。
照射系に、スプレッドビーム方式を用いてもよい。スプレッドビーム方式では、光源からのレーザ光をビームエキスパンダーによって広げ、シリンドリカルレンズによってライン状に収束させる。こうして収束したレーザ光を、キャピラリ101の配列によって形成される面に対して垂直方向からキャピラリ101に照射する。この方式では、全てのキャピラリ101に対してレーザ光を同時に照射するから、キャピラリ101のばらつきに関係なく、全てのキャピラリ101に対して略同一のレーザ強度の光を照射することが可能となる。
図2(b)は、キャピラリヘッド205の拡大図を示す。キャピラリヘッド205は、先端部205a、円錐部205b、円柱部205c、及び、鍔部205dを有し、これらは、同軸上に配置されている。先端部205a、円柱部205c、及び、鍔部205dはこの順に外径が大きくなっている。先端部205a、及び、円柱部205cはこれらは円形断面を有する。鍔部205dは、直径方向の両側に切り欠き205eを有する円板形状を有する。キャピラリヘッド205には、中心軸線に沿って孔205fが形成されており、この孔205fにキャピラリ101が配置されている。キャピラリ101とキャピラリヘッド205は接着剤等で固定してよい。キャピラリ101は、先端部205aより僅かに突出している。
アレイシート207は、先端に、互いに平行な2つの突起部207aと底部207bを有するコ形形状部を有する。突起部207aの先端には、互いに向かい合うように設けられた爪部207cが形成されている。2つの突起部207aは、キャピラリヘッド205の鍔部205dの切り欠き205eに係合している。
キャピラリヘッド205の鍔部205dの端面205gと、アレイシート207の先端のコ形形状の底部207bの間に隙間221が形成されている。突起部207aの爪部207cと、鍔部205dの円周状面205hの間に隙間222が形成されている。2つの突起部207aとキャピラリヘッド205の鍔部205dの切り欠き205eの間には隙間223が設けられている。
軸線方向の隙間221、222を設けることによって、キャピラリヘッド205は、アレイシート207に対して、軸線方向に沿って相対的に移動することができる。キャピラリヘッド205の鍔部205dの端面205gがアレイシート207の先端のコ形形状の底部207bに当接することによって、キャピラリヘッド205がアレイシート207に対してそれ以上移動することが阻止される。キャピラリヘッド205の鍔部205dの円周状面205hが、アレイシート207の突起部207aの爪部207cに当接することによって、キャピラリヘッド205がアレイシート207より離れる方向に、それ以上移動することが阻止される。
半径方向の隙間223を設けることによって、キャピラリヘッド205は、アレイシート207に対して、半径方向に沿って相対的に移動することができる。キャピラリヘッド205の鍔部205dの切り欠き205eが、アレイシート207の突起部207aに当接することによって、キャピラリヘッド205が半径方向にそれ以上移動することが阻止される。
図3を参照して、恒温装置106の構造及びキャピラリアレイ102を装着する方法を説明する。図3(a)に示すように、恒温装置106は、本体フレーム304とドアフレーム305を有し、本体フレーム304内には温度制御部材303が装着されている。本体フレーム304には、高精度に加工された光学検出部ホルダ310とそれを覆うための光学検出部ホルダカバー320が配置されている。本体フレーム304には、切り欠き部309が形成され、そこに突起309aが設けられている。本体フレーム304には、溝308が形成されている。
ドアフレーム305には、キャピラリアレイ押さえ用スポンジ306が装着されている。ドアフレーム305を閉じると、本体フレーム304のロック307aとドアフレーム305のロック307bが係合する。
次に、恒温装置106にキャピラリアレイ102を装着する方法を説明する。ロードヘッダ203の掴み部209を片手で持つことにより、キャピラリアレイ102の全体を保持することができる。ロードヘッダ203の掴み部209を持ったまま、キャピラリアレイ102を本体フレーム304内に挿入する。このとき、図3(b)に示すように、照射検出部120の基準ベース204が光学検出部ホルダ310の基準ベース溝に係合し、ロードヘッダ203が切り欠き部309に係合し、キャピラリヘッド205が溝308に係合するように、キャピラリアレイ102を配置する。
次に、光学検出部ホルダカバー320を光学検出部ホルダ310に装着する。最後に、ドアフレーム305を閉め、恒温装置106内を密閉する。
キャピラリ101は、本体フレーム304の温度制御部材303とドアフレーム305のキャピラリアレイ押さえ用スポンジ306の間に挟まれて保持されているため、常に一定の温度に保持される。温度調整機能については後に説明する。
図4を参照して、キャピラリヘッド205を恒温装置106の本体フレーム304の溝308に装着する方法を説明する。図4(a)に示すように、本体フレーム304の溝308の底面には更に円弧状の底面を有する円弧溝308aが形成されている。図4(b)に示すように、キャピラリヘッド205の鍔部205dが円弧溝308aに係合するように、キャピラリヘッド205を本体フレーム304に装着する。円弧溝308aの円弧の径は、キャピラリヘッド205の鍔部205dの外径より1.5mm程度大きい。また、円弧溝308aの幅は、キャピラリヘッド205の鍔部205dの厚さより1.5mm程度大きい。キャピラリヘッド205は、鍔部205dが円弧溝308a内にて移動することができる範囲にて、移動することができる。
上述のように、キャピラリヘッド205は、アレイシート207に対して、軸線方向及び半径方向に沿って相対的に移動することができる。従って、アレイシート207を本体フレーム304内の最適な位置に配置すると、キャピラリヘッド205の鍔部205dは、本体フレーム304の円弧溝308aの縁に沿って自動的に移動する。そのため、キャピラリヘッド205は本体フレーム304の溝308内に配置される。
図5を参照して本発明によるキャピラリ電気泳動装置のポリマー充填ユニット103の構造を説明する。本例のポリマー充填ユニット103は、シリンジ108、ポリマーブロック109、逆支弁110、ポリマー容器111、陽極バッファ容器112及びスライド機構601を有する。陽極バッファ容器112には陽極電極113が配置されている。ポリマーブロック109には、キャピラリヘッド205が挿入する孔109aが形成されている。この孔109aの形状は、キャピラリヘッド205の先端部205a及び円錐部205bに対応した形状であり、この孔109aの内径は、キャピラリヘッド205の先端部205aの外径より僅かに大きい。孔109aの入口には、面取り部が形成されており、面取り部の角度は、キャピラリヘッド205の円錐部205bの角度より僅かに大きい。
スライド機構601は、2本のスライドガイド602、第1ステージ603a、第2ステージ603b、ばね604、ブロック支持部材605、第1棒607、第2棒608、三角部材609、及び、レバー610を有する。スライドガイド602は、平行に並んだ2本の円柱の棒によって構成されている。スライドガイド602はキャピラリ電気泳動装置の筐体に固定されている。
第1及び第2ステージ603a、603bには、スライドガイド602の外径に略等しい内径の2つの孔が、それぞれ形成されている。第1及び第2ステージ603a、603bの孔に、スライドガイド602が貫通しており、第1及び第2ステージ603a、603bは、スライドガイド602に沿って移動することができる。第1及び第2ステージ603a、603bは、ばね604によって互いに連結されている。
スライドガイド602は、第1及び第2ステージ603a、603bの移動経路を形成している。スライドガイド602によって形成される移動経路は、ポリマーブロック109に形成されたキャピラリヘッド205が挿入する孔109aの軸線に平行である。即ち、ポリマーブロック109の孔109aとスライドガイド602は互いに平行となるように配置される。
第1ステージ603aはブロック支持部材605を介してポリマーブロック109に連結されている。従って、第1ステージ603a、ブロック支持部材605及びポリマーブロック109は、一体的に移動する。即ち、第1ステージ603a、ブロック支持部材605及びポリマーブロック109は、スライドガイド602に平行に移動する。尚、ポリマーブロック109には、シリンジ108、逆支弁110、ポリマー容器111、陽極バッファ容器112等が接続されている。これらの部材及び部品は、ポリマーブロック109と共に、スライドガイド602に平行に移動する。
第1棒607の一方の端には長方形の溝612が形成されており、他方の端には突起部613が設けられている。第1棒607は、ピン621によってキャピラリ電気泳動装置の筐体に回転可能に装着されている。即ち、第1棒607は、ピン621周りに枢動可能である。
第2棒608は第1の部分608aと第2の部分608bを有し、この2つの部分は、ばね611によって互いに連結されている。従って、第2棒608の第2の部分608bは第1の部分608aに対して同軸上を移動することができる。第2棒608の第1の部分608aは、ピン622によって、第2ステージ603bに回転可能に装着されている。即ち、第2棒608は第2ステージ603b上のピン622周りに枢動可能である。
三角部材609の第一端はレバー610に装着されている。レバー610はキャピラリ電気泳動装置の筐体に回転可能に装着されている。三角部材609の第二端は、ピン623によって、第2棒608の第2の部分608bに回転可能に装着されている。三角部材609の第三端には、ピン624が設けられ、このピン624は第1棒607の長方形の溝612に係合している。
本例のスライド機構601を用いてポリマーブロック109の孔109aにキャピラリヘッド205を挿入するには、レバー610を反時計方向に回転させる。レバー610を反時計方向に回転させると、三角部材609はレバー610と共にレバー610の中心軸線周りに回転する。三角部材609が回転すると、第1棒607はピン621周りに枢動し、第2棒608はピン622周りに枢動する。レバー610を反時計方向に1回転させると、第1棒607及び第2棒608は1回の往復運動を行う。
第1棒607がピン621周りに枢動すると、突起部613が第2ステージ603bに当接し、第2ステージ603bが押し上げられる。第1棒607は、ピン624を力点、ピン621を支点、突起部613の先端を作用点とする梃子を形成する。突起部613は梃子の原理によって大きな力を得ることができる。即ち、三角部材609の第三端のピン624に作用する力が小さくても、梃子の原理により、突起部613の先端には大きな力が作用する。従って、レバー610を回転させる力が小さくても、突起部613の先端には大きな力が作用する。
第2ステージ603bはスライドガイド602に沿って斜め上方に移動する。第2ステージ603bと第1ステージ603aはばね604によって接続されているから、第1ステージ603aもスライドガイド602に沿って移動する。第1ステージ603aが移動すると、ポリマーブロック109がスライドガイド602に平行に移動する。ポリマーブロック109と共にシリンジ108、逆支弁110、ポリマー容器111、及び、陽極バッファ容器112が移動する。
一方、恒温装置106に装着されているキャピラリヘッド205は所定の位置に保持されている。ポリマーブロック109が移動すると、キャピラリヘッド205がポリマーブロック109の孔109aに係合する。
図6を参照して、本発明によるキャピラリ電気泳動装置のポリマー充填ユニット103の動作、特に、スライド機構601の動作を説明する。ここでは、スライド機構601とキャピラリヘッド205とポリマーブロック109に形成された孔109aのみを示す。図6(a)に示すように、操作者は、手でレバー610を反時計方向に回転させる。レバー610が反時計方向に回転すると、レバー610に装着された三角部材609は、レバー610の中心軸線周りに回転する。三角部材609の第二端のピン623及び第三端のピン624もレバー610の中心軸線周りに弧を描くように移動する。
三角部材609の第三端のピン624は第1棒607の長方形の溝612内に係合した状態で、円弧を描く。それによって、第1棒607は、ピン621周りに枢動する。三角部材609の第二端のピン623は、第2棒608の第2の部分に装着された状態で、円弧を描く。それによって、第2棒608は、第2ステージ603b上のピン622周りに枢動する。このとき、第2の部分608bは第1の部分608aに対して相対的に軸線方向に沿って移動することによって、三角部材609の第二端のピン623と第2ステージ603b上のピン622の間の距離の変化を吸収する。
三角部材609の第二端のピン623及び第三端のピン624が下側にあるとき、第1及び第2ステージ603a、603bは、2本のスライドガイド602の下側に配置されている。このとき、ポリマーブロック109はキャピラリヘッド205から離れた位置にある。レバー610が反時計方向に回転すると、三角部材609の第二端のピン623及び第三端のピン624は上側に移動し、第1及び第2ステージ603a、603bは、2本のスライドガイド602上を斜め上方に向かって移動する。ポリマーブロック109はキャピラリヘッド205に近づいた位置にある。
図6(b)に示すように、レバー610を反時計方向に更に回転させる。三角部材609の第二端のピン623及び第三端のピン624は更に上方に移動する。ポリマーブロック109はキャピラリヘッド205に更に近づいた位置にある。
図6(c)に示すように、レバー610を反時計方向に更に回転させる。三角部材609の第二端のピン623及び第三端のピン624は下方に移動する。ポリマーブロック109はキャピラリヘッド205に更に近づいた位置にある。このとき第1棒607の下端の突起部613が第2ステージ603bに当接する。レバー610を反時計方向に更に回転させると、第1棒607は更に枢動し、突起部613を介して、第2ステージ603bは押し上げられる。上述のように、梃子の原理によって、三角部材609の第三端のピンに作用する力が小さくても、突起部613には大きな力が作用する。
第2ステージ603bがスライドガイド602に沿って斜め上方に押し上げられるとばね604を介して第1ステージ603aがスライドガイド602に沿って斜め上方に押し上げられる。第1ステージ603aがスライドガイド602に沿って移動すると、ポリマーブロック109の孔109aにキャピラリヘッド205が係合する。
レバー610を反時計方向に更に回転させると、第2ステージ603bがスライドガイド602に沿って斜め上方に押し上げられる。この力は、ばね604を介して第1ステージ603aに作用するが、ポリマーブロック109の孔109aにキャピラリヘッド205が係合していると、第1ステージ603aはそれ以上斜め上方に移動することができない。従って、ばね604が圧縮される。このとき、ばね604の圧縮力に相当する力が、第1ステージ603aに作用している。即ち、ばね604の圧縮力に相当する力によって、ポリマーブロック109の孔109aにキャピラリヘッド205が係合している。
ばね604の弾性力は、少なくとも、可動部であるポリマーブロック109及びそれに接続された、シリンジ108、逆支弁110、ポリマー容器111、陽極バッファ容器112等を支持し且つキャピラリヘッド205がポリマーブロック109の孔109aに押し付けられるために十分大きい必要がある。
ポリマーブロック109の孔109aの入口の面取り部とキャピラリヘッド205の円錐部205bが接触することにより、ポリマーブロック109の孔109aがシールされる。このとき、キャピラリヘッド205の孔205fの内径が小さくなる。そのため、キャピラリ101の孔205fとその中に配置されているキャピラリ101の間がシールされる。キャピラリ101にポリマーを導入するとき、ポリマーに対して数MPa程度の圧力がかかる。この圧力は、キャピラリヘッド205をポリマーブロック109から引き離すように作用する。しかしながら、キャピラリヘッド205とポリマーブロック109は、ばね604の圧縮力に相当する力によって、互いに押し付けられているため、両者が引き離されることはない。
ポリマーブロック109をキャピラリヘッド205から引き離す場合には、操作者はレバー610を時計方向に回転させればよい。
図7を参照して、本発明によるキャピラリ電気泳動装置のポリマー充填ユニット103の第2の例の構造を説明する。本例では、装着部701とチューブ702を用いる。装着部701には、キャピラリヘッド205が挿入する孔701aが形成されている。チューブ702の両端には係合部702a、702bが設けられている。一方の係合部702aは、装着部701に形成された孔701aに装着され、他方の係合部702bは、ポリマーブロック109に形成された孔109bに装着されている。装着部701の孔701aからポリマーブロック109の孔109bまで流路が形成される。装着部701の孔701aにキャピラリヘッド205を挿入することによって、キャピラリ101とポリマーブロック109内の流路が接続される。
本例によると、装着部701にスライド機構601が装着されている。本例のスライド機構601の構成は、図5に示したスライド機構601の構成と同様であってよい。スライドガイド602は、第1及び第2ステージ603a、603bの移動経路を形成している。スライドガイド602によって形成される移動経路は、装着部701に形成されたキャピラリヘッド205が挿入する孔701aの軸線に平行である。即ち、装着部701に形成された孔701aとスライドガイド602は互いに平行となるように配置される。
第1ステージ603aはブロック支持部材605を介して装着部701に連結されている。従って、第1ステージ603a、ブロック支持部材605及び装着部701は、一体的に移動する。即ち、第1ステージ603a、ブロック支持部材605及び装着部701は、スライドガイド602に平行に移動する。本例では、ポリマーブロック109及びそれに接続された陽極バッファ容器112等は移動しない。
本例のポリマー充填ユニット103は、図5に示した第1の例に比べて、可動部の重量が十分小さい。従って、ばね604の弾性力は、図5の例と比較して、より小さくてよい。また、レバーを回転させる操作が容易になる。
図8を参照して、本発明によるキャピラリ電気泳動装置のポリマー充填ユニット103の第3の例の構造を説明する。本例では、スライド機構601は、2本のスライドガイド602、第1ステージ603a、第2ステージ603b、ばね604、ブロック支持部材605、モータ801及び送りねじ803を有する。モータ801の軸802には中空の孔が設けられている。この孔の内面には雌ねじが形成されている。この孔には、送りねじ803が装着されている。モータ801の軸802には中空の孔の内面には、円周方向に延びる溝が形成され、この溝と送りねじ803の間にはベアリングが装着されている。送りねじ803の先端は第2ステージ603bに接続されている。
モータ801の軸802が回転すると、送りねじ803が移動する。送りねじ803が移動すると第2ステージ603bが移動する。第2ステージ603bが移動すると、第1ステージ603aも移動する。第1ステージ603aはブロック支持部材605を介してポリマーブロック109に連結されている。従って、第1ステージ603a、ブロック支持部材605及びポリマーブロック109は、一体的に移動する。即ち、第1ステージ603a、ブロック支持部材605及びポリマーブロック109は、スライドガイド602に平行に移動する。尚、ポリマーブロック109には、シリンジ108、逆支弁110、ポリマー容器111、陽極バッファ容器112等が接続されている。これらの部材及び部品は、ポリマーブロック109と共に、スライドガイド602に平行に移動する。
本例では、モータ801の軸802の中心軸線がスライドガイド602に平行になるように、モータ801が配置される。即ち、モータ801の軸802の中心軸線がポリマーブロック109の孔109aの軸線に平行になるように、モータ801が配置される。
ポリマーブロック109の孔にキャピラリヘッド205を挿入する場合には、送りねじ803が上方に移動するようにモータ801を回転させる。ポリマーブロック109の孔からキャピラリヘッド205を引き離す場合には、送りねじ803が下方に移動するようにモータ801を回転させる。
キャピラリ101にポリマーを導入するとき、ポリマーには数MPa程度の圧力が印加される。この圧力に相当する力が、ポリマーブロック109の孔109aからキャピラリヘッド205を引き離すように作用する。従って、送りねじ803によって第2ステージ603bを押し上げる力が10MPa程度になるようにモータ801に印加する電流もしくは電圧を制御する。
ポリマーブロック109の孔109aとキャピラリヘッド205の接触部には、ばね604の弾性力が作用している。従って、モータの801の電源を落としたとき、送りねじ803に逃げがあるとき、シールが変形したとき、でも、ばね604の弾性力によって、ポリマーブロック109の孔109aとキャピラリヘッド205の間のシールは維持される。
図9を参照して、本発明によるキャピラリ電気泳動装置の容器の例を説明する。本例の容器901は、試料とバッファを同時に収容することができる。搬送機115の移動ステージ107によって、容器901は鉛直方向に移動するものとする。図9(a)に示すように、本例の容器901は、複数の凹部902を有し、上端には鍔状部903が形成されている。
図9(b)は、凹部の例を示す。本例の凹部910は、下側の試料収納部910aと上側のバッファ収納部910bを有し、両者は連続的に接続されている。試料収納部910aの断面はバッファ収納部910bの断面より小さい。従って試料収納部910aとバッファ収納部910bの境界に肩部910cが形成されている。例えば、試料収納部910aは内径が2mmの円形断面を有し、バッファ収納部910bは内径が8mmの円形断面を有するように構成してよい。
この容器の使用法を説明する。操作者は、先ず試料951を試料収納部910aに注入する。試料収納部910aが満杯とならないように、上端に空間が残るように、試料951を注入する。次に、バッファ952を注入する。このとき、試料951とバッファ952の間に空気層953が形成される。バッファ952と空気層953の接触面は表面張力によって保持されており、バッファ952は試料収納部910aに落下しない。従って、試料951とバッファ952は分離された状態で容器に収納される。
試料951とバッファ952が収納された容器901をキャピラリ陰極端の下方に配置する。搬送機115の移動ステージ107によって容器901を上昇させる。キャピラリの陰極端は、バッファ952を通過し、試料951内に入る。この状態でキャピラリ101内に試料951を導入する。次に、搬送機115の移動ステージ107によって容器901を上昇させる。それにより、キャピラリの陰極端はバッファ952内に配置される。この状態で、電気泳動を行う。尚、搬送機115の移動ステージ107によって容器901を移動させる代わりに、キャピラリ101を移動させてもよい。
図9(c)は、凹部の他の例を示す。本例の凹部920は、上側部と下側部からなり、下側部は上側部の底面に形成された凹部である。上側部と下側部の境界には肩部が形成されている。凹部を2つの部分に分ける隔壁922が設けられている。隔壁922は、凹部の開口部から下側部の底面の近くまで延びている。隔壁922の下端と下側部の底面の間には間隙が設けられている。隔壁922と下側部の内壁の間に間隙が設けられている。従って、凹部内の空間は連続している。
本例によると、下側部によって試料収納部920aが形成されている。上側部と隔壁922によってバッファ収納部920bが形成されている。
この容器の使用法を説明する。操作者は、先ず試料951を試料収納部920aに注入する。試料収納部920aが満杯とならないように、試料951を注入する。試料951は、隔壁922の下端と下側部の底面の間を通って隔壁911と下側部の内壁の間に間隙に進入する。次に、バッファ952をバッファ収納部に注入する。このとき、隔壁と下側部の内壁の間に間隙にて、バッファ952と試料951との間に空気層953ができる。バッファ952と空気層953の接触面は表面張力によって保持されており、バッファ952は試料収納部910aに落下しない。従って、試料951とバッファ952は分離された状態で容器に収納される。
試料951とバッファ952が収納された容器901はキャピラリ陰極端の下方に配置される。搬送機115の移動ステージ107によって容器901を上昇させる。キャピラリの陰極端は、バッファ952を通過し、隔壁922と下側部の内壁の間に間隙を通り、試料951内に入る。この状態でキャピラリ101内に試料951を導入する。次に、搬送機115の移動ステージ107によって容器901を上昇させる。それにより、キャピラリの陰極端はバッファ952内に配置される。この状態で、電気泳動を行う。尚、搬送機115の移動ステージ107によって容器901を移動させる代わりに、キャピラリ101を移動させてもよい。
図10を参照して本発明によるキャピラリ電気泳動装置の容器の他の例を説明する。本例の容器は、試料とバッファを同時に収容することができる。搬送機115の移動ステージ107によって、容器は鉛直方向に移動するものとする。
図10(a)は本例の容器の横断面構成を示し、図10(b)は図1の線B−Bに沿って切断した縦断面構成を示す。本例の容器1001は、上側の試料収納部1010と下側のバッファ収納部1020を有し、両者は積み重ねられた構造を有する。試料収納部1010の底はフィルム1011によって形成されている。図10(b)に示すように、フィルム1011の下に、更に、フィルム1012が設けられてよい。このフィルム1012は水平面に対して傾斜して張られる。
試料収納部1010には仕切り部1013が設けられ、バッファ収納部1020には仕切り部1023が設けられている。こうして仕切り部を設けることにより、試料収納部1010及びバッファ収納部1020をそれぞれ複数の区画に分割することができる。試料収納部1010の仕切り部1013とバッファ収納部1020の仕切り部1023は対応した位置に設けられる。従って、試料収納部1010の各区画の下側にバッファ収納部1020の各区画が配置されている。
この容器がユーザに提供されるとき、バッファ収納部1020にバッファが予め封入されていてよい。ユーザは、使用時に試料を試料収納部1010に収納する。尚、この容器がユーザに提供されるとき、試料及びバッファが空の状態であってもよい。この場合には、容器の側壁には、バッファを注入するための注入孔1021が設けられている。
本例の容器は、ポリピロプレンによって形成されてよい。フィルム1011、1012はポリエチレンもしくはポリエチレンテレーフタラートによって形成されている。フィルム1011、1012は、厚さが0.07mmで、容器に熱溶着されている。
この容器の使用法を説明する。操作者は、先ず試料1051を試料収納部1010の各凹部に注入する。次に、バッファ1052を、注入孔1021を介してバッファ収納部1020の各凹部に注入する。予め、バッファ1052が封入されている場合には、この作業は不要である。
試料1051とバッファ1052が収納された容器1001をキャピラリ陰極端の下方に配置する。搬送機115の移動ステージ107によって容器1001を上昇させる。キャピラリの陰極端は、試料1051内に入る。この状態でキャピラリ101内に試料1051を導入する。次に、搬送機115の移動ステージ107によって容器1001を上昇させる。それにより、キャピラリの陰極端は試料1051を通過し、フィルム1011、1012を突き破りバッファ1052内に配置される。この状態で、電気泳動を行う。尚、搬送機115の移動ステージ107によって容器1001を移動させる代わりに、キャピラリ101を移動させてもよい。
キャピラリの陰極端がフィルム1011を突き破ったとき、フィルム1011の孔から試料1051が漏れる可能性がある。しかしながら、漏れた試料は、傾斜して張られたフィルム1012に沿って流れ、下側のバッファ1052に入ることはない。フィルム1011がポリエチレン製の場合、キャピラリの陰極端がフィルム1011を突き刺したとき、突き刺した摩擦熱で、孔が収縮し、フィルム1011はキャピラリに密着し、孔から試料が漏れることはない。
キャピラリの陰極端がバッファ1052の液面に進入したとき、飛散が生じることがある。バッファ1052の飛散は、バッファ収納部1020に設けた仕切り部1023によって防止される。
図10に示した例では、容器は、上側の試料収納部1010と下側のバッファ収納部1020の2つの収納部を有する。しかしながら、本例の容器は、3つ以上の収納部の設けてもよい。ここでは、蒸留水を収納するための蒸留水収納部を、試料収納部1010の上側に設けた場合を説明する。蒸留水収納部の底部は試料収納部1010の底部と同様にフィルムによって形成される。蒸留水収納部の下方にはフィルムを傾斜させて張る。
このような3段の収納部を有する容器の使用方法を説明する。蒸留水、試料1051及びバッファ1052が収納された容器をキャピラリ陰極端の下方に配置する。搬送機115の移動ステージ107によって容器を上昇させる。キャピラリの陰極端は、蒸留水内に入る。それによってキャピラリの陰極端が洗浄される。次に、搬送機115の移動ステージ107によって容器を更に上昇させる。キャピラリの陰極端はフィルムを突き破り、試料1051内に入る。この状態でキャピラリ101内に試料1051を導入する。更に、搬送機115の移動ステージ107によって容器を上昇させる。それにより、キャピラリの陰極端は試料1051を通過し、フィルム1011、1012を突き破りバッファ1052内に配置される。この状態で、電気泳動を行う。尚、搬送機115の移動ステージ107によって容器を移動させる代わりに、キャピラリ101を移動させてもよい。
試料収納部1010の1つの凹部に収納された試料について電気泳動が終了し、隣接する凹部に収納された試料について電気泳動を行う場合には、搬送機115の移動ステージ107によって容器を下降させる。キャピラリの陰極端が容器より外れたら、搬送機115の移動ステージ107によって容器を横方向に移動させる。次に、上述のように、搬送機115の移動ステージ107によって容器を上昇させる。
上述のように、キャピラリの陰極端がフィルム1011を突き刺したとき、孔が収縮し、フィルム1011はキャピラリに密着し、孔から試料が漏れることはない。しかしながら、残った試料を試料収納部1010から排除したい場合もある。そこで、キャピラリの陰極端206にくさび状の部材を装着してよい。くさび状の部材は、キャピラリの陰極端206の先端より少し後退した位置又は中空電極に装着される。
搬送機115の移動ステージ107によって容器を上昇させる。キャピラリの陰極端は、試料1051内に入る。この状態でキャピラリ101内に試料を導入する。次に、搬送機115の移動ステージ107によって容器を上昇させる。それにより、キャピラリの陰極端は試料1051を通過し、試料収納部1010の底部であるフィルム1011を突き破る。キャピラリの陰極端がフィルム1011を突き破ると、続いてくさび状の部材が孔を広げる。くさび状の部材によってフィルム1011の孔が広げられると、孔から試料が流出する。試料は、傾斜したフィルム1012を伝わって流れ落ちる。
キャピラリの陰極端及び楔形部材は、傾斜したフィルム1012を突き破り、バッファ内に入る。この状態で、電気泳動を行う。
図11を参照してキャピラリの温度調節について説明する。泳動中はキャピラリ内の分離媒体に電流が流れ、キャピラリ内からの発熱がある。キャピラリ内からの発熱により、キャピラリの温度が変動し分析結果が悪化する可能性がある。そこでキャピラリに温度調節部を設けて、キャピラリの温度を一定に保持する。
図11(a)は、キャピラリの部位毎に、温調部を設けた場合を示す。各温調部は、自身の温調素子を有し、それに基づいて温度調整を行う。即ち、各温調部は独立に温度調整を実行する。このような場合、隣接する2つの温調部1101、1102の境界部1103では、2つの温調部による温度調節の影響を受けて、温度変化が大きくなる。
図11(b)は第1の温調部1101の温度、図11(c)は第2の温調部1102の温度、図11(d)は、2つの温調部1101、1102の境界部1103の温度を示す。
2つの温調部の境界部1103には、第1の温調部1101と第2の温調部1102の両者から熱が流れる。従って、境界部1103における温度変化は、第1の温調部1101の温度変化と第2の温調部1102の温度変化を加算した値となる。例えば、第1の温調部1101及び第2の温調部1102の温度の標準偏差が0.06度のとき、境界部1103における温度の標準偏差は、0.09度となる。
これは、2つの温調部の境界部では、温調部と比べて、温度が不安定であることを示している。つまり、キャピラリに複数の温調部を設け、各温調部を独立に作動させると、温調部の境界部では、キャピラリの温度が不安定になる。その結果、分析結果が悪化する可能性がある。
図12はキャピラリ電気泳動装置のキャピラリアレイ102の第2の例の詳細を示す。キャピラリ101の一端には、キャピラリヘッド205が設けられ、他端には、キャピラリ陰極端206が形成されている。キャピラリ101とキャピラリヘッド205は接着剤等で固定してよい。ロードヘッダ203には金属製の中空電極が装着されている。キャピラリ陰極端206は中空電極と貫通し、その先から突出している。キャピラリ101はアレイシート207上に固定されている。光学検出部は、コーンレンズ208、及び、基準ベース204を有する。キャピラリ101の検出部は基準ベース204上に保持される。光源からの励起光はコーンレンズ208を経由してキャピラリ101の検出部に照射される。
図13は本例の恒温装置106の例を示す。図13(a)に示すように、本例の恒温装置106は、本体フレーム304とドアフレーム305を有する。本体フレーム304内には、温度制御部材303が装着されている。温度制御部材303には孔が設けられ、そこに、高精度に加工された光学検出部ホルダ310が配置されている。
光学検出部ホルダ310には、それを覆うための光学検出部ホルダカバー320が蝶番で連結されている。光学検出部ホルダカバー320は、温度伝播部材321と基準ベース押し付け用ゴム322を有する。本体フレーム304には、キャピラリヘッダ用の溝308とロードヘッダ用の切り欠き部309が形成されている。ドアフレーム305には、キャピラリアレイ押さえ用スポンジ306が装着されている。
図13(b)は、キャピラリアレイ102を本体フレーム304内に装着した状態を示す。アレイシート207を温度制御部材303上に配置する。キャピラリヘッド205を本体フレーム304のキャピラリヘッダ用の溝308に挿入する。ロードヘッダ203を本体フレーム304のロードヘッダ用の切り欠き部309に挿入する。キャピラリアレイ102の基準ベース204を、光学検出部ホルダ310の基準ベース用の溝に係合させる。
次に、光学検出部ホルダカバー320を閉める。基準ベース押し付け用ゴム322によって、照射検出部120の基準ベース204は押圧される。それによって、電気泳動中、照射検出部120の基準ベース204が動くことが防止される。光学検出部ホルダカバー320の温度伝播部材321が温度制御部材303に接触する。それによって、温度制御部材303からの熱が、温度伝播部材321を経由してキャピラリ101の検出部に伝達される。
こうして、キャピラリアレイ102が本体フレーム304に装着されたら、ドアフレーム305を閉じる。キャピラリアレイ押さえ用スポンジ306によってアレイシート207は温度制御部材303上に押え付けられる。それによって、キャピラリ101は温度制御部材303に確実に接触する。従って、本例では、キャピラリ101は温度制御部材303からの熱によって常に一定の温度に保持される。
本体フレーム304のロック307aとドアフレーム305のロック307bが係合する。本体フレーム304とドアフレーム305が閉じられて状態にて、電気泳動が実行される。
図14は、温度制御部材303の構造を示す。温度制御部材303は、中央のヒートシンク板341、内側の放熱シート342、外側のヒータ343の3層からなる。ヒータ343は外気と接触しないように断熱材344で覆われている。温度制御部材303には、温度センサが設けられている。温度センサによって温度制御部材303の温度が検出され、フィードバック回路により、ヒータ343が制御される。
本例では、温度センサ、フィードバック回路及びヒータ343によって温調装置が構成される。この温調装置によって、温度制御部材303の温度が一定に保持される。本例によると、温度制御部材303に設けた温調装置によって、キャピラリばかりでなく、照射検出部120、光学検出部ホルダ310及び光学検出部ホルダカバー320の温調を行う。照射検出部120、光学検出部ホルダ310及び光学検出部ホルダカバー320に別個の温調装置を設けない。こうして本例では、単一の温調装置によってキャピラリ電気泳動装置の温調を行うから、図11に示したような境界部における温度変動に起因した誤差を排除することができる。
恒温装置106の温調範囲は、外気温からセ氏70度程度である。従って、恒温装置106を構成する部材の材料に、セ氏70度程度の耐熱性が必要である。本体フレーム304、及び、ドアフレーム305は耐熱性のあるPPO(ポリフェニレネーテル樹脂)によって形成され、断熱効果を上げるために低発泡成形により作成する。キャピラリアレイ押さえ用スポンジ306は、耐熱性が高く且つ圧縮永久歪が小さいシリコンスポンジによって形成される。
ヒートシンク板341は、恒温装置106内の一部の温度が揺らいだ場合にその揺らぎを素早く吸収し、恒温装置106内の温度を一定に保つ機能を有する必要がある。そこで、ヒートシンク板341の材料には、熱伝導率が高い材料が望ましく、例えば、金属、特に、銅やアルミが望ましい。
放熱シート342は、耐熱性の他に、キャピラリ101に接触しキャピラリ101からの発熱を吸収する機能が必要である。また、放熱シート342は、キャピラリ101との接触によりキャピラリ101の痕が残らないことが望ましい。そこで、放熱シート342の材料には、熱伝導率が高く、且つ、圧縮永久歪が小さい材料が好ましい。このような条件を満たす材料として、高熱伝導性(熱伝導率1〜3W/mK)のシリコンゴムがある。
温度制御部材303に設けられる温度センサは、温度制御部材303に接触している部分の温度を検出する。従って、温度制御部材303は、全体で温度差がないことが望ましい。そのため、ヒータ343の熱線の間隔は、ヒートシンク板341の周辺部では密で、それ以外では疎になっている。こうして、ヒータ343の熱線の密度を調整することにより、温度制御部材303全体の温度が一定になる。それによって、温度センサは温度制御部材303の真の温度を検出することができる。
本例の恒温装置における熱の流れを説明する。ヒータ343からの熱は、ヒートシンク板341に伝達され、更に、放熱シート342に伝達される。放熱シート342に伝達された熱は、光学検出部ホルダカバー320の温度伝播部材321へ伝達される。この熱は更に、基準ベース押し付けゴム322、照射検出部120の基準ベース204、キャピラリ101の検出部に伝達される。それにより、キャピラリ101の検出部の温度が上昇する。
従って、光学検出部ホルダカバー320の温度伝播部材321及び基準ベース押し付けゴム322の材料は、熱伝導性が高い材料がよい。基準ベース押し付けゴム322は、高耐熱性及び低永久圧縮歪が必要である。従って、基準ベース押し付けゴム322は、高熱伝導性(熱伝導率1〜3W/mK)のシリコンゴムによって形成されてよい。温度伝播部材321はアルミや銅等の金属によって形成されていることが望ましい。
照射検出部120の基準ベース204及びキャピラリ101の検出部の温度が上昇すると、光学検出部ホルダ310のうち、照射検出部120の基準ベース204に接触している側と反対側の外気に曝されている他の光学検出部に接触している側の間に温度差が生ずる。この温度差に起因して、照射検出部120の基準ベース204からの熱が、光学検出部ホルダ310を介して恒温装置106の外へ放出される。照射検出部120の基準ベース204から恒温装置106の外へ放出される熱量は、外気温と照射検出部120の基準ベース204の温度差に依存する。放出熱量の変動が大きいほど照射検出部120の基準ベース204の温度が変動し、キャピラリ101の検出部の温度が不安定になる。そこだ放出熱量を小さくすれば、キャピラリ101の検出部の温度が安定する。放出熱量を小さくする手段として、ここでは2つの例を示す。
放出熱量を小さくする手段の第1の例では、光学検出部ホルダ310の材料に、光学検出部ホルダカバー320の温度伝播部材321より熱伝導率が小さい材料を用いる。温度制御部材303からの熱は、光学検出部ホルダカバー320を経由して、照射検出部120の基準ベース204、及び、キャピラリ101の検出部に伝達される。しかしながら、光学検出部ホルダ310の熱伝導率は小さいから、光学検出部ホルダカバー320から光学検出部ホルダ310への熱伝達量は少ない。従って、光学検出部ホルダ310から外気への放熱量は少ない。光学検出部ホルダカバー320の温度伝播部材321の温度は、温度制御部材303の温度に近い値に維持することが可能になる。従って、照射検出部120の基準ベース204、及び、キャピラリ101の検出部の温度を適温に保持することができる。
本例では、光学検出部ホルダ310の材料に、ガラス繊維を配合したPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)を用いるとよい。この材料は、熱伝導率が0.2W/mK程度であり、光学検出部ホルダカバー320の温度伝播部材321の熱伝導率に比べて十分小さく、また耐熱性と強度に優れている。
放出熱量を小さくする手段の第2の例では、光学検出部ホルダ310に接触する光学系に、光学検出部ホルダ310より熱伝導率が小さい材料を用いる。温度制御部材303からの熱は、光学検出部ホルダカバー320の温度伝播部材321に伝達され、更に、照射検出部120の基準ベース204、及び、キャピラリ101の検出部に伝達される。しかしながら、光学検出部ホルダ310に接触する光学系の熱伝導率は小さいから、光学検出部ホルダ310からそれに接触する光学系への熱伝達量は少ない。従って、光学検出部ホルダ310に接触する光学系から外気への放熱量は少ない。照射検出部120の基準ベース204、及び、キャピラリ101の検出部の温度を適温に保持することができる。
図15を参照して、光学検出部ホルダ310の取り付け構造を説明する。図15(a)は、光学検出部ホルダカバー320を除去した状態を示す。図15(b)は、図15(a)の恒温装置を線B−Bに沿って切断した断面構造を示す。本体フレーム304は、温度制御部材303と断熱材344からなり、温度制御部材303は、中央のヒートシンク板341、内側の放熱シート342、外側のヒータ343の3層からなる。本体フレーム304には、孔304aが設けられている。孔304aは温度制御部材303と断熱材344を貫通している。この孔304aには、内側の開口部の周囲に、円周状の突出部304bが形成されている。
本例の光学検出部ホルダ501は、基準ベースホルダ502と温度伝播用ゴム503を有し、本体フレーム304の温度制御部材303の孔304aに配置されている。温度制御部材303のヒートシンク板341が温度伝播用ゴム503に接触している。温度伝播用ゴム503によって温度制御部材303と光学検出部ホルダ501の間の熱の伝播経路が形成される。本例では、光学検出部ホルダカバー320の温度伝播部材321は不要である。
ヒータ343からの熱は、ヒートシンク板341を介して温度伝播用ゴム503に伝達される。この熱は、更に、温度伝播用ゴム503から基準ベースホルダ502に伝達される。基準ベースホルダ502に伝達された熱は、基準ベースホルダ502に保持された照射検出部120の基準ベース204に伝達される。それによって、キャピラリ101の検出部が加熱される。
温度伝播用ゴム503及び基準ベースホルダ502は熱伝導性の大きな材料によって形成される。温度伝播用ゴム503は、耐熱性が高いこと、永久圧縮歪が小さいことも要求される。従って、温度伝播用ゴム503の材料は、高熱伝導性(熱伝導率1〜3W/mK)のシリコンゴムがよい。基準ベースホルダ502は、好ましくは、アルミや銅等の金属によって形成される。
本例では、光学検出部ホルダ501と接触する光学系504に、光学検出部ホルダ501より熱伝導率が小さい材料を用いる。温度制御部材303からの熱は、温度伝播用ゴム503を介して基準ベースホルダ502に伝達される。しかしながら、光学系504の熱伝導率は小さいから、基準ベースホルダ502から光学系504への熱伝達量は少ない。従って、光学系504から外気への放熱量は少ない。従って、照射検出部120の基準ベース204、及び、キャピラリ101の検出部の温度を適温に保持することができる。
本例では、光学検出部ホルダ501と接触する光学系504の部品にガラス繊維を配合したPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)を用いてよい。
以上、本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者であれば容易に理解されよう。
101…キャピラリ、102…キャピラリアレイ、103…ポリマー充填ユニット、105…高圧電源、106…恒温装置、107…移動ステージ、108…シリンジ、109…ポリマーブロック、109a、109b…孔、110…逆支弁、111…ポリマー容器、112…陽極バッファ容器、113…陽極電極、114…陰極電極、115…搬送機、116…バッファ容器、117…サンプルプレート、118…洗浄容器、120…照射検出部、203…ロードヘッダ、204…基準ベース、205…キャピラリヘッド、205a…先端部、205b…円錐部、205c…円柱部、205d…鍔部、205e…切り欠き、205f…孔、205g…端面、205h…円周状面、206…キャピラリ陰極端、207…アレイシート、207a…突起部、207b…底部、207c…爪部、208…コーンレンズ、209…掴み部、210…テープ、211…リベット、221、222、223…隙間、303…温度制御部材、304…本体フレーム、304a…孔、304b…突出部、305…ドアフレーム、306…キャピラリアレイ押さえ用スポンジ、307a、307b…ロック、308…溝、308a…円弧溝、309…切り欠き部、309a…突起、310…光学検出部ホルダ、320…光学検出部ホルダカバー、321…温度伝播部材、322…基準ベース押し付け用ゴム、341…ヒートシンク板、342…放熱シート、343…ヒータ、344…断熱材、501…光学検出部ホルダ、502…基準ベースホルダ、503…温度伝播用ゴム、504…光学系、601…スライド機構、602…スライドガイド、603a…第1ステージ、603b…第2ステージ、604…ばね、605…ブロック支持部材、607…第1棒、608…第2棒、609…三角部材、610…レバー、611…ばね、612…長方形の溝、613…突起部、621、622、623、624…ピン、701…装着部、701a…孔、702…チューブ、702a、702b…係合部、801…モータ、802…モータの軸、803…送りねじ、901…容器、902…凹部、903…鍔状部、910…凹部、910a…試料収納部、910b…バッファ収納部、910c…肩部、911…隔壁、920…凹部、920a…試料収納部、920b…バッファ収納部、920c…肩部、922…隔壁、951…試料、952…バッファ、953…空気層、1001…容器、1010…試料収納部、1011、1012…フィルム、1013…仕切り部、1020…バッファ収納部、1021…注入孔、1023…仕切り部、1051…試料、1052…バッファ、1101、1102…温調部、1103…境界部