JP4283045B2 - 赤外吸収スペクトルによる物品の識別標識 - Google Patents

赤外吸収スペクトルによる物品の識別標識 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、赤外線を用いた拡散反射法によって識別される標識をブランド品、著作権保護対象物、宝石類、硬貨、貴金属塊、社員章、タグ、絵画、美術品、著名人の使用品、医薬品、金券などの物品に対して予め付与し、真贋判定に利用する赤外吸収スペクトルによる物品の識別標識に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
安定同位体の含有比率を天然のものと異なるように制御した物質を標識として用いて物品の偽造防止を行う方法が提案されている。例えば、特開平10−287075号では、13Cの含有比率を天然の値よりも大きくした標識、コードを用いることが提案されている。特開2000−43460では、13Cの含有比率を天然の値と異なる値とすることにより、C60の光吸収スペクトルの***度合いが異なることを利用した、C60からなる標識、コードを用いることが提案されている。また、WO 02/29705では、構成元素の少なくとも一つについて複数の安定同位体を有し、そのうち少なくとも一つの安定同位体の含有比率が天然存在比率以下のものと、この安定同位体の含有比率が天然存在比率以上のものとを含む物質であり、振動スペクトルが、構成元素の安定同位体の含有比が天然存在比である物質の振動スペクトルと異なる物質である非破壊読取用同位体標識が提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−287075号公報
【特許文献2】
特開2000−43460号公報
【特許文献3】
WO 02/29705
【0004】
これらの技術は、識別材料を混入させたインキを印刷したものや付与対象物の構成材料の一部を識別材料としたものなどである。これらは偽造困難性が高く、偽造防止に非常に有効であるが、その真贋判定は識別材料の振動スペクトルを赤外線吸収法やラマン散乱法で測定して行われる。また、識別材料が変質し易い識別材料である場合、それを含む識別標識を物品に付与すると、物品使用中に変質する恐れがあるので、それを保護する保護層が必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、識別のために物品に付与し、保護層で保護した識別標識の赤外吸収スペクトルを赤外線吸収法で測定すると、識別材料自体の赤外吸収スペクトル以外に、保護層の赤外吸収スペクトルが測定結果に影響する場合があり、識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが保護層の赤外吸収スペクトルに覆い隠されてしまい、識別標識として無意味となってしまうことが分かった。また、真正品で識別のための情報を表現するために用いられている希少性の高い識別材料を回収し、改竄情報を表現するために再利用した変造品については、真正品として判断してしまう恐れがあることが分かった。
【0006】
そこで、本発明は、安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した変質し易い識別材料を用いる場合における上記問題を解決するためになされたものであり、物品に対して予め付与する該識別材料を保護し、且つ、識別材料の赤外線吸収法による赤外吸収スペクトルの測定に対して悪影響を及ぼさない保護層を有する赤外吸収スペクトルによる識別標識を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した変質し易い識別材料からなり、赤外線を用いた拡散反射法によって物品を識別するための標識であって、該識別材料を該識別材料の赤外吸収スペクトルピークに悪影響を及ぼさない保護層で覆うことにより、耐環境性を高めるとともに、識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが明確に現れるようにしてなることを特徴とする赤外吸収スペクトルによる物品の識別標識を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の識別標識は、安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した変質し易い識別材料、すなわち安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した物質であって、該物質が変質し易い物質である識別材料からなり、且つ、赤外線を用いた拡散反射法によって識別される標識である。そして、該識別材料を保護し且つ該識別材料の赤外吸収スペクトルピークに悪影響を及ぼさない保護層で覆うことにより、耐環境性を高めるとともに、識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが明確に現れるようにしてなることを特徴とする。
【0009】
ここで、安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した変質し易い識別材料としては、水素、炭素、窒素及び酸素から選ばれた少なくとも一つを含み、その安定同位体比率を天然の値と異なる値に制御してなる物質を用いる。その例としては、尿素、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。これらは一種とは限らず、二種以上を併用して用いることができる。これらの物質は吸湿性であり、また、例えば尿素は酸やアルカリでアンモニアを発生し、炭酸水素ナトリウムは二酸化炭素を発生する。本発明においては、まず、このように識別材料としての使用環境で変質し易い物質を保護層により保護するものである。
【0010】
そして、本発明においては、保護層を備えた上で、識別に寄与する赤外吸収スペクトルピークが明確に現れるようにすることが特に重要であり、これにより変造防止機能が高い識別標識とするものである。図1〜2はこの構成を説明する図で、図1は本発明を適用しない場合、図2は本発明を適用した場合である。
【0011】
識別に寄与する赤外吸収スペクトルピークが保護層の赤外吸収スペクトルに覆い隠されてしまう場合の赤外吸収スペクトルは図1に示すモデルのようになる。図1(a)は識別材料の赤外吸収スペクトル(図中赤外線スペクトルと記載)であり、そのピークの有無により真贋等が判定される。図1(b)は保護層の赤外吸収スペクトル(図中赤外線スペクトルと記載)である。図1(c)は両スペクトルを合わせたスペクトルである。図1(c)のとおり、保護層の赤外吸収スペクトル(図中赤外線スペクトルと記載)の影響で識別材料の赤外吸収スペクトルが相殺され、識別材料による識別標識としての役割を果たさなくなってしまう。
【0012】
本発明においては、保護層によるそのような悪影響を無くし、識別に寄与する赤外吸収スペクトルピークが明確に現れるようにする。すなわち、保護層として、識別材料の赤外吸収スペクトルに影響しない赤外吸収スペクトルを有する材料を用いる。この場合の赤外吸収スペクトルは図2に示すモデルのようになる。図2(a)は識別材料の赤外吸収スペクトル(図中赤外線スペクトルと記載)であり、そのピークの有無により真贋等が判定される。図2(b)は保護層の赤外吸収スペクトル(図中赤外線スペクトルと記載)である。図2(c)は両スペクトルを合わせたスペクトルである。図2(c)のとおり、保護層の赤外吸収スペクトル(図中赤外線スペクトルと記載)以外に、識別材料の赤外吸収スペクトルピーク(図中識別に寄与する赤外線スペクトルピークと記載)が明確に現れる。これを測定、観察することで当該識別材料を明確に識別できる変造防止機能が高い識別標識とするものである。
【0013】
保護層の構成材料としては、(A)安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した変質し易い識別材料を保護し、且つ、(B)識別材料の赤外吸収スペクトルに影響しない赤外吸収スペクトルを有するプラスチック材料を用いる。このプラスチック材料として安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御してなるプラスチック材料を用いてもよい。プラスチック材料には各種あるが、そのうち本発明の保護層としては、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに悪影響を及ぼさず、識別に寄与する赤外吸収スペクトルが明確に現れるプラスチック材料だけが用いられる。いずれのプラスチック材料が各識別材料の赤外吸収スペクトルピークに悪影響を及ぼさないかは予測不可能であり、各識別材料毎に個々に現実の実験により決める必要がある。
【0014】
例えば、識別材料が安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御してなる尿素の場合、ポリプロピレンやポリ酢酸ビニル、あるいはポリメタクリル酸メチルでは、識別に寄与する赤外吸収スペクトルピークがそれらポリプロピレンやポリ酢酸ビニル、あるいはポリメタクリル酸メチルの赤外吸収スペクトルに覆い隠されてしまうので、保護層としては使用できない。
【0015】
そこで、識別材料が安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御してなる尿素である場合には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデンのうちのいずれかを主構成材料として含む保護層を用いる。これにより、湿気、酸やアルカリの浸入を防止し、尿素の変質を防止して保護するとともに、識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが明確に現れるようにすることができる。
【0016】
また、他の例として、識別材料が安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御したギ酸ナトリウムである場合には、例えばポリスチレンは、その赤外吸収スペクトルが識別に寄与するギ酸ナトリウムの赤外吸収スペクトルピークを覆い隠してしまうので、保護層としては使用できない。そこで、識別材料が安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御したギ酸ナトリウムの場合には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル及びポリテトラフルオロエチレンのうちのいずれかを主構成材料として含む保護層を用いる。これにより、大気中の湿気の浸入を防止し、吸湿性であるギ酸ナトリウムの変質を防止して保護するとともに、識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが明確に現れるようにすることができる。
【0017】
本発明の識別標識は物品に付与して用いられる。本発明においては、物品に付与された識別標識の赤外吸収スペクトルを非破壊的に読み取ることにより識別標識の情報を読み取る。識別材料は、その周囲を保護層や、付与対象物品の構成材料すなわち付与対象物品の構成材料からなる保護層で覆われているので、これらの被覆物の外側から、識別材料の赤外吸収スペクトルを非破壊的に読み取る必要がある。この読み取りには赤外線吸収法が用いられる。赤外線吸収法では、一般に広く用いられている赤外線吸収法である拡散反射法を用いて、赤外線を識別材料に照射し、吸収強度を受光素子にて検知することにより、赤外吸収スペクトルを取得する。
【0018】
識別標識を付与する物品としては、識別標識の付与が必要な物品であれば限定はなく、その例としては、目的別あるいは形状別等相互に重複する例もあるが、以下(1)〜(6)のような例を挙げることができる。
(1)ブランド品として鞄、靴、財布、装飾品、衣類、時計、指輪、ネックレスなど。(2)著作権保護対象物としてCD、光ディスク、コンピュータソフトなど。(3)宝石類、貴金属等として硬貨、貴金属塊、社員章、タグ、絵画、美術品、著名人の使用品、医薬品など。(4)金券として紙幣、印紙、切手、商品券、債券、株券、手形、小切手、証券、図書券など。(5)シート類として旅券(パスポート)、各種免許証、身分証明書、名刺、スポーツ等の観戦用チケット、観劇等用チケット、処方箋、診断書、検査票、公文書など。(6)カード類としてクレジットカード、テレホンカード、鉄道やバス等の交通機関で使用される乗車券又は乗車カード、ハイウェイカード、パチンコカードその他の各種機能、機構を組み込んだカード類など。
【0019】
このうち、上記(5)のシート類自体の材質には限定はなく、通常硬質紙その他各種紙類が使用され、プラスチックも使用される。また、上記(6)のカード類自体の材質には限定はなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン(ポリ塩化ビニル等を含む)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂等の合成樹脂のほか、アルミニウム(合金を含む)などの金属や紙類などの各種材料が使用される。
【0020】
本発明の識別標識は、識別材料と保護層とで構成され、付与対象物品に付与される。識別材料に対する保護層は、(1)変質し易い識別材料に対して耐環境性を有し、(2)識別に寄与する赤外吸収スペクトルピークが明確に現れ、これにより(3)変造防止機能を発揮できるように配置される。以下、付与対象物品に対する識別材料及び保護層の配置態様について説明する。
【0021】
〈保護層の配置態様1〉
保護層を、付与対象物品の面上に配置された識別材料を覆って配置する。図3は本態様を説明する図である。図3のとおり、識別材料が付与対象物品の面上に配置され、そして保護層が識別材料を覆って配置される。保護層はシート状等の薄膜を貼付してもよく、プレポリマーを溶液あるいは懸濁液として塗布するなどして成膜してもよい。
【0022】
〈保護層の配置態様2〉
保護層を付与対象物品の面の凹部に配置された識別材料を覆って配置する。図4は本態様を説明する図である。図4のとおり、識別材料が付与対象物品の面の凹部に配置され、そして保護層が識別材料を覆って配置される。保護層はシート状等の薄膜を貼付してもよく、プレポリマーを溶液あるいは懸濁液として塗布し、成膜してもよい。
【0023】
〈保護層の配置態様3〉
保護層で識別材料を包装し、当該識別材料を包装した保護層を付与対象物品の面に配置する。図5は本態様を説明する図である。図5のとおり、保護層で識別材料を包装し、当該識別材料を包装した保護層が付与対象物品の面に配置される。識別材料の包装は、付与対象物品の面に対応した形状のカプセルとするなど適宜の仕方で行うことができる。
【0024】
〈保護層の配置態様4〉
保護層に識別材料を分散し、当該識別材料を分散した保護層を付与対象物品の面に配置する。図6は本態様を説明する図である。図6のとおり、識別材料を保護層に分散し、当該識別材料を分散した保護層が付与対象物品の面に配置される。識別材料の分散は、識別材料の懸濁液を付与対象物品の面に塗布するなど適宜の仕方で行うことができる。
【0025】
〈保護層の配置態様5〉
識別材料を付与対象物品の構成材料に分散し、当該識別材料を分散した構成材料に保護層を兼ねさせる。図7は本態様を説明する図である。図7のとおり、識別材料を付与対象物品の構成材料に分散する。そして、当該識別材料を分散した構成材料に保護層を兼ねさせる。
【0026】
〈保護層の配置態様6〉
識別材料を付与対象物品の構成材料中に埋め込み、当該識別材料を埋め込んだ構成材料に保護層を兼ねさせる。図8は本態様を説明する図である。図8のとおり、識別材料を付与対象物品の構成材料中に埋め込む。そして、当該識別材料を埋め込んだ構成材料に保護層を兼ねさせる。
【0027】
〈保護層の配置態様7:変造防止〉
本発明の識別標識は、その使用環境すなわち空気中で変質し易い識別材料を用いて、識別のための情報を物品の表面に表現しておき、これを保護層で覆った形の識別標識として構成する。この場合、保護層を剥がして識別材料を回収し、改竄情報を表現して変造した場合、保護層を剥がした段階で識別材料が変質するので、真正品と明確に区別される。図9はその態様例を示す図である。
【0028】
図9のとおり、付与対象物品の面に、空気中で変質し易い識別材料を含むインキで印刷した識別のための情報、例えば人物像を付与し、これを覆って保護層を配置する。この識別標識について、変造者が保護層を剥がして識別材料を回収し、改竄情報を表現して変造した場合、保護層を剥がした段階で識別材料が変質するので、真正品と明確に区別される。
【0029】
本発明によれば、以上の構成により、下記(a)〜(e)のとおりの各種有用な効果が得られる。(a)水溶性や高い反応性を有する識別材料を含む識別標識を、長期間安定して使用することができる。(b)保護層を通して識別材料へ赤外線を当てる方法を用いて、識別に寄与する明確なピークを含む赤外吸収スペクトルを、非破壊的に取得することができる。(c)保護層の主構成材料の安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御しておくことにより、偽造や変造がより困難な識別標識となる。(d)保護層を一度剥がすと識別材料が変質するので、識別材料を用いて写真等の識別のための情報を表現し物品に付与しておくことにより、重要情報の改竄による変造を非破壊的かつ迅速に発見することができる。(e)保護層として例えばシリコン製薄板を用いた場合、折り曲げや衝撃に弱いが、本発明によれば、保護層としてプラスチック材料の薄膜を用いることにより、折り曲げや衝撃に強い識別標識とすることができる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明が実施例に限定されないことはもちろんである。比較例(識別材料の赤外吸収スペクトルに対して保護層の赤外吸収スペクトルが悪影響を及ぼす例)、実施例の順に記載している。比較例1〜4、実施例1〜11の各例毎に、それぞれ塩化ビニル樹脂製物品(薄板)を三個用いて各サンプルを作製した。また、各図中、横軸は波長、縦軸は光吸収強度〔任意単位(Arbitrary Unit=A.U.)〕である。
【0031】
〈比較例1〉
本例は、識別材料として尿素を用い、保護層としてポリプロピレンを用いた例である。尿素として炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御した尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該尿素層の上にポリプロピレン製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリプロピレン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプル、すなわち、▲1▼塩化ビニル樹脂製物品の表面に該尿素を塗布したサンプル、▲2▼塩化ビニル樹脂製物品の表面に該尿素を塗布し、その上にポリプロピレン製フィルムを貼り付けたサンプル、▲3▼塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリプロピレン製フィルムのみを貼りつけたサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図10はその結果である。
【0032】
図10のとおり、(1)ポリプロピレン製保護層のみの場合には凹凸はあるが比較的平坦なスペクトルが観察される。(2)尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。図10中右寄りに現れている二個のピークが本尿素に特有のスペクトルピークである。(3)ポリプロピレン製保護層付き尿素〔CO(NH2213C=99%)〕からなる識別標識の場合には、図10中、矢印(↓↓)で示す箇所に現れるはずの本尿素に特有のスペクトルピークは無く、保護層の赤外吸収スペクトルの影響で識別材料の赤外吸収スペクトルが相殺されている。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルが悪影響を及ぼし、識別標識としての役割を果たさなくなってしまっている。
【0033】
〈比較例2〉
本例は、識別材料として尿素を用い、保護層としてポリ酢酸ビニルを用いた例である。尿素として炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御した尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該尿素層の上にポリ酢酸ビニル製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリ酢酸ビニル製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図11はその結果である。
【0034】
図11のとおり、(1)ポリ酢酸ビニル製保護層のみの場合には平坦なスペクトルが観察される。(2)尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の場合にはそれに基づく二個のピークが観察される。図11中左右に現れている二個のピークが本尿素に特有のスペクトルピークである。(3)ポリ酢酸ビニル製保護層付き尿素〔CO(NH2213C=99%)〕からなる識別標識の場合には、図11中、矢印(↓↓)で示す箇所に現れるはずの本尿素に特有のスペクトルピークは無く、保護層の赤外吸収スペクトルの影響で識別材料の赤外吸収スペクトルが相殺されている。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルが悪影響を及ぼし、識別標識としての役割を果たさなくなってしまっている。
【0035】
〈比較例3〉
本例は、識別材料として尿素を用い、保護層としてポリメタクリル酸メチルを用いた例である。尿素として炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御した尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該尿素層の上にポリメタクリル酸メチルを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリメタクリル酸メチルのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図12はその結果である。
【0036】
図12のとおり、(1)ポリメタクリル酸メチル製保護層のみの場合にはやや右上がりの平坦なスペクトルが観察される。(2)尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の場合にはそれに基づく二個のピークが観察される。図12中左右に現れている二個のピークが本尿素に特有のスペクトルピークである。(3)ポリメタクリル酸メチル製保護層付き尿素〔CO(NH2213C=99%)〕からなる識別標識の場合には、図12中、矢印(↓↓)で示す二箇所に現れるはずの本尿素に特有のスペクトルピークは無く、保護層の赤外吸収スペクトルの影響で識別材料の赤外吸収スペクトルが相殺されている。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルが悪影響を及ぼし、識別標識としての役割を果たさなくなってしまっている。
【0037】
〈比較例4〉
本例は、識別材料としてギ酸ナトリウムを用い、保護層としてポリスチレンを用いた例である。ギ酸ナトリウムとして水素の安定同位体比1H:2H=1:99に制御したギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該ギ酸ナトリウム層の上にポリスチレン製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリスチレン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図13はその結果である。
【0038】
図13のとおり、(1)ポリスチレン製保護層のみの場合には平坦なスペクトルが観察される。(2)ギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリスチレン製保護層付きギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕からなる識別標識の場合には、図13中、矢印(↓)で示す箇所に現れるはずの本ギ酸ナトリウムに特有のスペクトルピークは無く、保護層の赤外吸収スペクトルの影響で識別材料の赤外吸収スペクトルが相殺されている。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルが悪影響を及ぼし、識別標識としての役割を果たさなくなってしまっている。
【0039】
〈実施例1〉
本例は、識別材料として尿素を用い、保護層としてポリテトラフルオロエチレンを用いた例である。尿素として水素の安定同位体比を1H:2H=1:99に制御した尿素〔CO(NH222H=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該尿素層の上にポリテトラフルオロエチレン製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリテトラフルオロエチレン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図14はその結果である。
【0040】
図14のとおり、(1)ポリテトラフルオロエチレン製保護層のみの場合には平坦なスペクトルが観察される。(2)尿素〔CO(NH222H=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリテトラフルオロエチレン製保護層付き尿素〔CO(NH222H=99%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図14中矢印(↓)で示すピークが識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0041】
〈実施例2〉
本例は、識別材料として尿素を用い、保護層としてポリスチレンを用いた例である。尿素として炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御した尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該尿素層の上にポリスチレン製フィルムを貼り付けた。また、三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリスチレン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図15はその結果である。
【0042】
図15のとおり、(1)ポリスチレン製保護層のみの場合には平坦なスペクトルが観察される。(2)尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリスチレン製保護層付き尿素尿素〔CO(NH2213C=99%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図15中矢印(↓)で示すピークが識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0043】
〈実施例3〉
本例は、識別材料として尿素を用い、保護層としてポリエチレンテレフタレートを用いた例である。尿素として窒素の安定同位体比14N:15N=1:99に制御した尿素〔CO(NH2215N=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該尿素層の上にポリエチレンテレフタレート製フィルムを貼り付けた。また、三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリエチレンテレフタレート製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図16はその結果である。
【0044】
図16のとおり、(1)ポリエチレンテレフタレート製保護層のみの場合にはほぼ平坦なスペクトルが観察される。(2)尿素〔CO(NH2215N=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリエチレンテレフタレート製保護層付き尿素〔CO(NH2215N=99%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図16中矢印(↓↓)で示す二箇所のピークが識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0045】
〈実施例4〉
本例は、識別材料として尿素を用い、保護層としてポリエチレンを用いた例である。尿素として炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御した尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該尿素層の上にポリエチレン製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリエチレン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図17はその結果である。
【0046】
図17のとおり、(1)ポリエチレン製保護層のみの場合には平坦なスペクトルが観察される。(2)尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の場合にはそれに基づく特有のスペクトルピークが観察される。(3)ポリエチレン製保護層付き尿素尿素〔CO(NH2213C=99%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図17中矢印(↓↓)で示す二箇所のピークが識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0047】
〈実施例5〉
本例は、識別材料として尿素を用い、保護層としてポリフッ化ビニリデンを用いた例である。尿素として炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御した尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。そのうち一個の物品表面の該尿素層の上にポリフッ化ビニリデン製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリフッ化ビニリデン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図18はその結果である。
【0048】
図18のとおり、(1)ポリフッ化ビニリデン製保護層のみの場合には平坦なスペクトルが観察される。(2)尿素〔CO(NH2213C=99%)〕の場合にはそれに基づく特有のスペクトルピークが観察される。(3)ポリフッ化ビニリデン製保護層付き尿素尿素〔CO(NH2213C=99%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図18中矢印(↓↓)で示す二箇所のピークが識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0049】
〈実施例7〉
本例は、識別材料としてギ酸ナトリウムを用い、保護層としてポリエチレンを用いた例である。ギ酸ナトリウムとして水素の安定同位体比1H:2H=1:99に制御したギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。このうち一個の物品表面の該ギ酸ナトリウム層の上にポリエチレン製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリエチレン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図19はその結果である。
【0050】
図19のとおり、(1)ポリエチレン製保護層のみの場合には平坦なスペクトルが観察される。(2)ギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリエチレン製保護層付きギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図19中矢印(↓)で示すピークであり、識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0051】
〈実施例8〉
本例は、識別材料としてギ酸ナトリウムを用い、保護層としてポリエチレンテレフタレートを用いた例である。ギ酸ナトリウムとして炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御したギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。このうち一個の物品表面の該ギ酸ナトリウム層の上にポリエチレンテレフタレート製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリエチレン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図20はその結果である。
【0052】
図20のとおり、(1)ポリエチレンテレフタレート製保護層のみの場合にはほぼ平坦なスペクトルが観察される。(2)ギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリエチレンテレフタレート製保護層付きギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=5%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図20中矢印(↓)で示すピークであり、識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0053】
〈実施例9〉
本例は、識別材料としてギ酸ナトリウムを用い、保護層としてポリテトラフルオロエチレンを用いた例である。ギ酸ナトリウムとして水素の安定同位体比1H:2H=1:99に制御したギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。このうち一個の物品表面の該ギ酸ナトリウム層の上にポリテトラフルオロエチレン製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリテトラフルオロエチレン製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図21はその結果である。
【0054】
図21のとおり、(1)ポリテトラフルオロエチレン製保護層のみの場合には平坦なスペクトルが観察される。(2)ギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリテトラフルオロエチレン製保護層付きギ酸ナトリウム〔HCOONa(2H=99%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図21中矢印(↓)で示すピークであり、識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0055】
〈実施例10〉
本例は、識別材料としてギ酸ナトリウムを用い、保護層としてポリ酢酸ビニルを用いた例である。ギ酸ナトリウムとして炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御したギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。このうち一個の物品表面の該ギ酸ナトリウム層の上にポリ酢酸ビニル製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリ酢酸ビニル製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図22はその結果である。
【0056】
図22のとおり、(1)ポリ酢酸ビニル製保護層のみの場合にはほぼ平坦なスペクトルが観察される。(2)ギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリ酢酸ビニル製保護層付きギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕からなる識別標識の場合には(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図22中矢印(↓)で示すピークであり、識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0057】
〈実施例11〉
本例は、識別材料としてギ酸ナトリウムを用い、保護層としてポリメタクリル酸メチルを用いた例である。ギ酸ナトリウムとして炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御したギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕の粉を二個の塩化ビニル樹脂製物品の表面にそれぞれ塗布した。このうち一個の物品表面の該ギ酸ナトリウム層の上にポリメタクリル酸メチル製フィルムを貼り付けた。三個目の塩化ビニル樹脂製物品の表面にポリメタクリル酸メチル製フィルムのみを貼りつけた。こうして作製した三個のサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトルを取得した。図23はその結果である。
【0058】
図23のとおり、(1)ポリメタクリル酸メチル製保護層のみの場合にはほぼ平坦なスペクトルが観察される。(2)ギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕の場合にはそれに基づくピークが観察される。(3)ポリメタクリル酸メチル製保護層付きギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=5%)〕からなる識別標識の場合には、(1)及び(2)の両スペクトルに基づくピークが観察される。図23中矢印(↓)で示すピークであり、識別に寄与する赤外吸収スペクトルのピークである。このように、本例の組み合わせの場合、識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して保護層の赤外吸収スペクトルの影響がなく、識別標識としての役割を果たしている。
【0059】
〈実施例12〉
本例は、保護層を配置した識別標識が変造防止としての役割を備えることを証する実施例である。識別材料としてギ酸ナトリウムを用い、保護層としてポリエチレンを用いた。ギ酸ナトリウムとして炭素の安定同位体比12C:13C=1:99に制御したギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕を用い、その粉をインキに分散した。この分散液を用いて、塩化ビニル樹脂製物品の表面に図9のような人物像の一部を描いた。その物品表面のギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕層の上にポリエチレン製フィルムを貼り付けた。こうして作製したサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトル(変造前のスペクトル)を取得した。
【0060】
次に、上記サンプルにおけるポリエチレン製フィルムを剥がし、ギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕入りのインキを回収し、その粉を溶剤に溶かして変造用のインキを調合した。この変造用インキを用いて、塩化ビニル樹脂製物品の表面に図9のような人物像の一部を描いた(変造)。こうして作製したサンプルについて赤外線を用いた拡散反射法によって赤外吸収スペクトル(変造後のスペクトル)を取得した。図24に変造前と変造後のスペクトルを示している。
【0061】
図24のとおり、変造前のスペクトルでは、図中左側に示されているとおり、ギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕に特有のピークが観察される。これに対して、変造後のスペクトルでは、矢印(↓)で示すとおり、ギ酸ナトリウム〔HCOONa(13C=99%)〕に特有のピークが僅かに観察されるだけである。ギ酸ナトリウムは水溶性で、吸湿性が高いので、空気中の水分を吸収し、スペクトル全体の形が大きく変化したものである。このように、改竄情報を表現して変造した場合、保護層を剥がした段階で識別材料が変質するので、真正品と明確に区別される。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、物品に対して予め付与する、安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した変質し易い識別材料を保護するとともに、各識別材料毎に保護層として特定のプラスチック材料を用いることにより、識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークに対して悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、本発明によれば、変造者が真正品で用いられている希少性の高い識別材料を回収し、改竄情報を表現するために再利用した変造品を容易に発見できるなど各種有用な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】保護層の付与により識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが隠れてしまう場合を説明する図
【図2】保護層を付与しながらも識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが明確に現れる構成を説明する図
【図3】保護層の配置態様1を説明する図
【図4】保護層の配置態様2を説明する図
【図5】保護層の配置態様3を説明する図
【図6】保護層の配置態様4を説明する図
【図7】保護層の配置態様5を説明する図
【図8】保護層の配置態様6を説明する図
【図9】保護層の配置態様7(変造防止)を説明する図
【図10】比較例1の結果を示す図
【図11】比較例2の結果を示す図
【図12】比較例3の結果を示す図
【図13】比較例4の結果を示す図
【図14】実施例1の結果を示す図
【図15】実施例2の結果を示す図
【図16】実施例3の結果を示す図
【図17】実施例4の結果を示す図
【図18】実施例5の結果を示す図
【図19】実施例6の結果を示す図
【図20】実施例7の結果を示す図
【図21】実施例8の結果を示す図
【図22】実施例9の結果を示す図
【図23】実施例10の結果を示す図
【図24】実施例11の結果を示す図

Claims (2)

  1. 安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した変質し易い尿素でなる識別材料からなり、赤外線を用いた拡散反射法によって物品を識別するための標識であって、前記識別材料を該識別材料の赤外吸収スペクトルピークに悪影響を及ぼさないポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデンのうちのいずれかを主構成材料として含む保護層で覆うことにより、耐環境性を高めるとともに、識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが明確に現れるようにしてなることを特徴とする赤外吸収スペクトルによる物品の識別標識。
  2. 安定同位体含有比率を天然の値と異なる値に制御した変質し易いギ酸ナトリウムでなる識別材料からなり、赤外線を用いた拡散反射法によって物品を識別するための標識であって、前記識別材料を該識別材料の赤外吸収スペクトルピークに悪影響を及ぼさないポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル及びポリテトラフルオロエチレンのうちのいずれかを主構成材料として含む保護層で覆うことにより、耐環境性を高めるとともに、識別に寄与する識別材料の赤外吸収スペクトルピークが明確に現れるようにしてなることを特徴とする赤外吸収スペクトルによる物品の識別標識。
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