JP4281545B2 - トロイダル型無段変速機とその製造方法 - Google Patents

トロイダル型無段変速機とその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、例えば自動車の自動変速機用の変速ユニットとして、或は各種産業機械用の変速機として、それぞれ利用できるトロイダル型無段変速機とその製造方法の改良に関する。
自動車用自動変速機としてトロイダル型無段変速機を使用する事が研究され、一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば特許文献1に記載されている様な構成を有する。図1〜2は、このトロイダル型無段変速機の基本構成を略示している。この図1〜2に示した構造では、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。又、トロイダル型無段変速機を納めたケーシング(図示省略)の内側に、上記入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン6、6を設けている。
上記各トラニオン6、6は、長さ方向(図1〜2の表裏方向)両端面に上記枢軸5、5を、各トラニオン6、6毎に互いに同心に、各トラニオン6、6毎に1対ずつ設けている。これら各枢軸5、5の中心軸は、上記各ディスク2、4の中心軸と交差する事はないが、これら各ディスク2、4の中心軸の方向に対し直角若しくはほぼ直角方向である、捩れの位置に存在する。又、上記各トラニオン6、6の中心部には支持軸7、7の基半部を支持し、上記枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させる事により、上記各支持軸7、7の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオン6、6に支持された支持軸7、7の先半部周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ8、8を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4a同士の間に挟持している。
上記入力側、出力側両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧若しくはこの様な円弧に近い曲線を回転させて得られる、断面円弧状の凹面をなしている。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ8、8の周面8a、8aを、上記内側面2a、4aに当接させている。又、上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム装置9を設け、このローディングカム装置9によって上記入力側ディスク2を、出力側ディスク4に向け弾性的に押圧しつつ、回転駆動自在としている。
上述の様に構成されるトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴って上記ローディングカム装置9が上記入力側ディスク2を、上記複数のパワーローラ8、8に押圧しつつ回転させる。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
入力軸1と出力軸3との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5、5を中心として前記各トラニオン6、6を揺動させ、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図1に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、前記各支持軸7、7を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン6、6を揺動させ、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図2に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各支持軸7、7を傾斜させる。これら各支持軸7、7の傾斜角度を図1と図2との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
上述の様に構成し作用するトロイダル型無段変速機の運転時に、上記両ディスク2、4の内側面2a、4aと上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aとの転がり接触部(トラクション部)には、トラクションオイルの油膜を介在させる。このトラクションオイルは、このトラクション部で動力の伝達を行なわせる役目の他、各転がり軸受等の可動部を潤滑する役目を有する為、構成各部材から離脱したバリや摩耗粉等の硬質金属製の異物が混入する事が避けられない。この様な異物の存在は、上記トラクション部を構成する上記各面2a、4a、8aの転がり疲れ寿命を低下させる原因となる。この為、異物が混入したトラクションオイルを使用した場合にも上記各面2a、4a、8aの転がり疲れ寿命を確保する為に従来から、上記両ディスク2、4及び上記各パワーローラ8、8の表面の残留オーステナイト量を高くする事が行なわれている。そして、この残留オーステナイト量を高くする為に、従来からトロイダル型無段変速機以外の分野で広く行なわれていた熱処理である、浸炭処理や浸炭窒化処理を、上記各部材2、4、8の表面処理にもそのまま利用していた。これら各部材にこの様な熱処理を施す事に就いては、例えば、特許文献2、3等に記載されている。
ところで、トロイダル型無段変速機を構成する入力側、出力側各ディスク2、4や各パワーローラ8、8は、相手部材との転がり接触部分で、上記油膜を介して、大きな動力を伝達する。従って、この転がり接触部分、即ち、上記両ディスク2、4の内側面2a、4aと上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aとのうち、上記油膜を介して互いに相手面と接触する部分で発生する剪断応力は、一般的な転がり軸受を構成する軌道輪の軌道面或は転動体の転動面で発生する剪断応力に比較して、深い部分にまで達する。従って、上記両ディスク2、4の内側面2a、4a部分、並びに、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8a部分に形成する硬化層の深さは、一般的な転がり軸受を構成する軌道輪の軌道面部分或は転動体の転動面部分に形成する硬化層よりも深くする必要がある。そして、この為には、上記内側面2a、4a部分及び周面8a、8a部分に硬化層を形成する為の浸炭処理又は浸炭窒化処理を、長時間に亙って行なう必要がある。
この結果、一般的な転がり軸受を構成する軌道輪或は転動体と比較して、熱処理直後の部材表面に、粗大な初析炭化物が生成され易い。特に、図3に於いて丸で囲った上記各部材2、4、8の隅角部(エッジ部)では、素材内部に向けて炭素が、2方向乃至3方向から拡散浸透する為、上記粗大な初析炭化物が生成され易い。この様な粗大な初析炭化物は、割れや亀裂の発生原因となり、上記各部材2、4、8の耐久性低下の原因となる為、好ましくない。尚、動力伝達の際の転がり接触面となる上記各面2a、4a、8aは、熱処理後に切削や研削等、必要とする面精度を確保する為に表面を削り取る加工を行なう為、仮に上記熱処理に伴って粗大な初析炭化物が生成されてもこの加工によりこの初析炭化物が除去される為、特に問題を生じない。これに対して、上記隅角部は、コスト低減等の為、上記熱処理後に加工を施さない場合が考えられる。この様な場合には、当該部材の隅角部から、割れや欠け等の損傷が発生する可能性がある。トロイダル型無段変速機は大きな動力を伝達する為、上記各部材2、4、8に入力される力も大きく、上記隅角部に発生した割れや欠け等の損傷が応力集中を引き起こし、当該部材2、4、8全体の割れに進展する可能性もある。
この様な不都合を生じる粗大な初析炭化物の析出は、これら各部材2、4、8の隅角部に防炭剤を塗布した状態で上記熱処理を施す事により抑制する事ができる。但し、防炭剤の塗布作業は煩雑であり、上記各部材2、4、8の生産性を低下させる原因となるだけでなく、過って、硬度が必要な上記各面2a、4a、8aに防炭剤が付着する可能性を生じる。これら各面2a、4a、8aに防炭剤が付着した場合、熱処理を行なっても当該部分に浸炭層や浸炭窒化層が形成されず、必要とされる硬度を得られない。この結果、当該部分の転がり疲れ寿命が確保されず、当該部材2、4、8の耐久性が低下する。
特開2003−222216号公報 特開平9−79337号公報 特開平10−103440号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、異物が混入したトラクションオイルを使用した場合でも十分な転がり疲れ寿命を確保でき、しかも隅角部に割れや亀裂の発生原因となる粗大な初析炭化物が存在しない入力側、出力側各ディスクやパワーローラを備えたトロイダル型無段変速機を、低コストで実現すべく発明したものである。
本発明の対象となるトロイダル型無段変速機は、それぞれが鋼製である入力側、出力側両ディスクの、それぞれが断面円弧状の凹面である内側面に、それぞれが鋼製である複数のパワーローラの部分球面状の周面を、トラクションオイルの油膜を介して転がり接触させる事により、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間で動力を伝達する。
特に、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機に於いては、上記両ディスクと上記各パワーローラとの少なくとも何れかの(好ましくは総ての)部材のうちで、少なくとも隅角部の表面層部分に存在する炭化物の平均粒径が、表面側で小さく、心部に向かう程大きくなる分布を有する。又、上記隅角部に粒径が10μmを越える炭化物が存在せず、且つ、上記両ディスクと各パワーローラとの少なくとも何れかの部材の表面のうち、相手部材と転がり接触する面部分の表面からの深さが0.03mm部分、及び、最大剪断応力位置でのそれぞれのビッカース硬さが、Hv700以上である。尚、上記表面層とは、転がり疲れ寿命確保の為に必要な硬度を確保すべき部分で、具体的には、当該部材の表面から例えば深さ1.0mmまでの範囲を言う。
又、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機の製造方法は、上記両ディスクと上記各パワーローラとの少なくとも何れかの(好ましくは総ての)部材に浸炭処理又は浸炭窒化処理を施す事により、この部材の表面に硬化層を形成する際に、この浸炭処理又は浸炭窒化処理の工程の少なくとも後期を脱炭雰囲気中で行なう事により、上記部材の表面に脱炭層を形成する。
上述の様に本発明のトロイダル型無段変速機とその製造方法の場合には、異物が混入したトラクションオイルを使用した場合でも十分な転がり疲れ寿命を確保でき、しかも隅角部に割れや亀裂の発生原因となる粗大な初析炭化物が存在しない入力側、出力側各ディスクやパワーローラを備えたトロイダル型無段変速機を、低コストで実現できる。
先ず、両ディスクと各パワーローラとの少なくとも何れかの部材に浸炭処理又は浸炭窒化処理を施す事により、この部材の表面に硬化層を形成している為、この部材表面の残留オーステナイト量を高くして、微小な異物存在下での上記部材の転がり疲れ寿命確保を図れる。
又、上記部材の隅角部の表面層部分に存在する炭化物の平均粒径を、表面側で小さくし、更に、この隅角部に、粒径が10μmを越える炭化物が存在しない様にしているので、隅角部に割れや亀裂の発生原因となる粗大な初析炭化物が存在しない状態となる。しかも、この状態を造る為に、上記部材に防炭剤を塗布する必要がない為、この部材の製造作業を面倒にしたり、硬度が必要な部分に防炭剤を過って塗布し、この部分の硬度が不足する事も防止できる。この結果、必要とする強度並びに耐久性を備えた入力側、出力側各ディスクやパワーローラを組み込んだトロイダル型無段変速機を、低コストで実現できる。
浸炭処理又は浸炭窒化処理の終了後に於ける上記両ディスクや上記各パワーローラの表面層部分の炭化物の平均粒径の分布を上述の様にする為には、上記浸炭処理又は浸炭窒化処理の全部又は一部を、脱炭雰囲気中で行なう。この様にして、浸炭初期段階でのカーボンポテンシャル値(CP値)を高く、浸炭後期段階でのCP値を初期の値よりも下げる事により、上記部材の表面のみを脱炭させる事ができる。尚、この工程により得られる脱炭層の深さは、動力伝達時に相手面とトラクションオイルの油膜を介して転がり接触する面、即ち、図4に破線を付した、上記両ディスク2(4)の内側面2a(4a)や上記各パワーローラ8の外周面8a、更にはスラスト転がり軸受を構成する為に、これら各パワーローラ8の軸方向片面に形成した軌道面10部分に、浸炭処理又は浸炭窒化処理後に施される仕上加工時の取代を越えない範囲に抑える事が好ましい(請求項3)。上記脱炭層の深さがこの取代を越えた場合には、仕上加工後に、上記転がり接触する面に、硬度が低い、上記脱炭層が残留する。そして、この転がり接触する面に脱炭層が残留する事自体好ましくないが、特にこの様にして残留した脱炭層の厚さが大きいと、上記転がり接触する面の寿命確保が難しくなる。本発明の場合、この転がり接触する面の寿命確保の為に、表面硬さHv700以上としている。この様な理由から、上記脱炭層の深さを上記取代以下に抑える事が好ましい。この深さをこの取代以下に抑える限り、上記浸炭処理又は浸炭窒化処理直後の状態で、上記両ディスクや上記各パワーローラの表面層部分の炭化物の平均粒径が、上記隅角部以外で上記分布となる事は差し支えない。
尚、本発明を実施する場合に於いて、上記両ディスクや上記各パワーローラの表面に硬化層を形成する為の熱処理として浸炭窒化処理を採用した場合は、上記脱炭層を形成する為に、処理中におけるCP値を下げる代わりにアンモニア流量を増やす事もできる。この様に、アンモニア流量を増やせば、上記両ディスクや上記各パワーローラの表面の硬度を低下させずに、表面層部分に存在する炭化物の粒径を小さくできる為、好ましい(請求項4)。
又、JIS記載の高炭素クロム軸受鋼や炭素工具鋼、合金工具鋼等の素材炭素量が高い鋼材の場合は、浸炭処理又は浸炭窒化処理の際のCP値を素材の炭素含有量よりも下げる事でも、粗大な析出炭化物の析出を抑制する事ができる(請求項5)。
本発明の効果を確認する為に行なった実験に就いて説明する。次の表1に、試料(ディスク及びパワーローラ)の熱処理条件を示す。
Figure 0004281545
この表1には、上記試料を作成する為に使用した材料と、浸炭処理或は浸炭窒化処理の際のカーボンポテンシャル値(CP値)と、浸炭窒化処理の際のアンモニア(NH3 )流量と、熱処理時間とを示した。又、同様に、脱炭工程の際の熱処理条件に就いても記載した。処理温度は、何れの工程に就いても、840〜950℃とした。又、何れの試料に就いても、脱炭工程終了後に、60℃の油中で焼き入れ(ズブ焼き入れ)を行なった。又、この焼き入れ後に、160〜180℃で2時間保持する焼き戻し処理を行なった。更に、これら一連の熱処理(浸炭処理或は浸炭窒化処理→焼き入れ処理→焼き戻し処理)の後、上記各試料のうちで、相手部材と転がり接触する面(図4の破線部分)に仕上加工(切削加工及び研削加工等)を施す事で、これら各試料を目的の形状に仕上げた。又、上記転がり接触する面部分の取代は、0.2mmとした。尚、上記表1に示した14種類の試料中、実施例1〜4は浸炭処理を、実施例5〜10は浸炭窒化処理を、それぞれ施したものである。又、このうちの実施例9、10は、JIS鋼種であるSUJ2に、素材中の炭素の炭素含有量(ベースカーボン)よりも低いCP値で浸炭窒化処理を施したものである。更に、比較例1、2は、浸炭処理或は浸炭窒化処理後に脱炭工程を行なわなかったもの、比較例3は、SUJ2にベースカーボンよりも高いCP値で浸炭窒化した後に脱炭工程を行なわなかったもの、比較例4は、長時間脱炭を行なったものである。
この様な条件で作成した、本発明に属する10種類(実施例1〜10)と本発明からは外れる4種類(比較例1〜4)との、合計14種類の試料に関して、それぞれの隅角部の性状と、それぞれの転がり接触する面部分の性状とを測定した。その結果を、次の表2に示す。尚、上記14種類の試料のそれぞれは、入力側、出力側両ディスクと2個のパワーローラとの組み合わせである。
Figure 0004281545
この表2には、各試料の隅角部の表面からの深さが0.05mm部分及び0.2mm部分での炭化物の平均粒径と、転がり接触する面部分の表面からの深さが0.03mm部分及び1.Omm部分での硬さと、耐久試験の結果とを示した。尚、転がり接触する面部分の表面からの深さが1.Omm部分とは、耐久試験の負荷条件により発生する最大剪断応力位置である。
尚、炭化物の平均粒径の測定は、各試料の隅角部(図3に丸で囲んだ部分)の断面をピクラール(ピクリン酸+エタノール)で腐食し、表面からの深さが0.05mm部分及び0.2mm部分のミクロ組織を1000倍の金属顕微鏡で10視野観察し、炭化物の粒径を円相当径に換算して平均値を求めた。尚、何れの試料に就いても、隅角部には切削、研削等の仕上加工は施さなかった、従って、上記隅角部の表面とは、熱処理を施された状態のままの表面である。又、10μmを超える炭化物の有無に就いては、各試料に存在する総ての隅角部の断面を500倍の金属顕微鏡で観察し、その有無を確認した。尚、観察は、各隅角部毎に1断面(1視野)ずつとした。又、転がり接触する面部分の硬さ測定は、マイクロビッカース硬さ試験機を使用し、荷重0.98N(100gf)で測定を行なった。測定は、転がり接触する面部分に就いて、各深さ毎に5点ずつ行ない、その平均値を示した。
更に、耐久試験は、トロイダル型無段変速機を構成する、動力伝達部のユニットを組み立て、下記の条件で耐久試験を行なった。この耐久試験はこのユニットの何れかの部位に破損を生じるか、或は50時間を経過するまで行なった。50時間経過するまで破損なく試験を終了したものを○、それ以外のものを×とした。潤滑油として、実際のトランスミッション各部から出る異物を摸して、鉄粉を混入したトラクションオイルを使用した。
入力側ディスクの回転速度 : 3500min-1 入力側ディスクのトルク : 300Nm
ユニット部分での変速比 : 1:1(等速伝達)
潤滑油 : 市販トラクションオイル
潤滑油供給温度 : 80℃
混入異物 : 粒径が74〜147μmで硬度がHv870の鉄粉を200ppm
前記表2の記載から明らかな通り、実施例1〜10は何れも、熱処理後に行なった脱炭処理の結果、各隅角部で、炭化物の平均粒径が表面側で小さく、心部に向かう程大きくなる分布を有し、しかも、10μmを超える粗大な炭化物も見受けられなかった。特に、浸炭窒化処理を施したものは、炭化物の平均粒径が小さくなる傾向が見られた。又、浸炭窒化処理を施す場合には、NH3 ガスの流量を増やす事でも、粗大な炭化物の析出を抑制する事ができる事が分かる。更に、相手面と転がり接触する面部分の転がり疲れ寿命(耐久寿命)に就いても、上記実施例1〜10は何れも、各比較例と同等以上の結果を得られ、粗大な炭化物の生成を抑制する事によっても、上記転がり疲れ寿命が低下しない事が確認された。
上述の様な実施例1〜10に対して、脱炭工程を行なわなかった比較例1〜3は、浸炭処理或は浸炭窒化処理の際のCP値が高く、何れも10μmを超える粗大な炭化物が析出した。この様な粗大な炭化物が、亀裂等の損傷の原因となる事は、前述した通りである。一方、脱炭工程の時間を長く、且つCP値を低く設定した比較例4は、脱炭の効果が過剰になって、熱処理後に行なう仕上加工の取代以上の厚さを有する脱炭層が、上記相手面と転がり接触する面部分に形成された為、上記仕上加工後の完成品で、この転がり接触する面部分に脱炭層が残留した。この結果、この転がり接触する面部分の表面から0.03mmの深さ部分での硬さがHv700を下回り、この転がり接触する面部分の耐久寿命が、上記各実施例よりも短くなった。
尚、図5に実施例1の、図6に比較例1の、それぞれ隅角部の炭化物の平均粒径の分布を示している。これら図5、6に示した分布曲線は、上記実施例1及び比較例1の隅角部の断面で、表面から0.05mm、O.1mm、0.15mm、O.2mm、0.5mm部分の深さの数値をグラフにプロットする事により得た。炭化物の平均粒径は、先に述べた通りの方法で測定した。表面から、炭化物の平均粒径の分布が逆転する(当該部分に於ける平均粒径が、この部分よりも深部に存在する炭化物の平均粒径よりも小さくなる=グラフが左下がりになる起点)部分までの深さを、脱炭深さと言う。図5に示した、上記実施例1の脱炭深さは、0.15mmである。この図5に示した、上記実施例1の場合には、表面が脱炭されており、炭化物の平均粒径が小さくなっている事が分かる。これに対して、上記図6に示した比較例1の場合、脱炭層は存在しない。
この様な脱炭深さは、熱処理後に上記転がり接触する面部分に施す仕上加工時の取代との関係で規制する必要がある。先に説明した各実施例の場合には、この取代を0.2mmとした。仮に取代を0.05mmにすると、上記実施例1の場合でも、脱炭された部分が上記転がり接触する面部分に残る事になり、この転がり接触する面部分の転がり疲れ寿命に悪影響を及ぼす事になる。従って、脱炭処理の条件は、熱処理後にこの転がり接触する面部分に施す仕上加工の取代によって決める必要があり、好ましくは、上記脱炭層が軌道面表面には含まれない様にして、上記転がり接触する面部分の表面硬さをHv700以上確保する。
以上に述べた実施例の説明からも明らかな様に、本発明によれば、入力側、出力側各ディスク及びパワーローラに関して、上記転がり接触する面部分の転がり疲れ寿命を確保しつつ、亀裂等の損傷の原因となる、粗大な炭化物の析出を抑制できる。
尚、本発明は、隅角部を有するパワーローラを備えたトロイダル型無段変速機であれば、図示の様なハーフトロイダル型に限らず、フルトロイダル型に対しても適用できる。
本発明の対象となるトロイダル型無段変速機の基本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。 同じく最大増速時の状態で示す側面図。 粗大な初析炭化物の生成を抑えるべき部分を示す、入力側、出力側両ディスク及びパワーローラの断面図。 運転時に相手面とトラクションオイルの油膜を介して転がり接触する面を示す、入力側、出力側両ディスク及びパワーローラの断面図。 実施例1に関して、隅角部の表面からの深さと炭化物の平均粒径との関係を示す線図。 比較例1に関して、隅角部の表面からの深さと炭化物の平均粒径との関係を示す線図。
符号の説明
1 入力軸
2 入力側ディスク
2a 内側面
3 出力軸
4 出力側ディスク
4a 内側面
5 枢軸
6 トラニオン
7 支持軸
8 パワーローラ
8a 周面
9 ローディングカム装置
10 軌道面

Claims (5)

  1. それぞれが鋼製である入力側、出力側両ディスクの、それぞれが断面円弧状の凹面である内側面に、それぞれが鋼製である複数のパワーローラの部分球面状の周面を、トラクションオイルの油膜を介して転がり接触させる事により、上記入力側ディスクと上記出力側ディスクとの間で動力を伝達するトロイダル型無段変速機に於いて、これら両ディスクと上記各パワーローラとの少なくとも一方の部材のうちで、少なくとも隅角部の表面層部分に存在する炭化物の平均粒径が、表面側で小さく、心部に向かう程大きい分布を有し、上記隅角部に粒径が10μmを越える炭化物が存在せず、且つ、上記両ディスクと各パワーローラとの少なくとも何れかの部材の表面のうち、相手部材と転がり接触する面部分の表面からの深さが0.03mm部分、及び、最大剪断応力位置でのそれぞれのビッカース硬さが、Hv700以上である事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 請求項1に記載したトロイダル型無段変速機の製造方法であって、両ディスクと各パワーローラとの少なくとも何れかの部材に浸炭処理又は浸炭窒化処理を施す事により、この部材の表面に硬化層を形成する際に、この浸炭処理又は浸炭窒化処理の工程の少なくとも後期を脱炭雰囲気中で行なう事により、上記部材の表面に脱炭層を形成するトロイダル型無段変速機の製造方法。
  3. 脱炭層の深さが、両ディスクと各パワーローラとの少なくとも一方の部材の表面のうちで相手部材と転がり接触する部分に浸炭処理又は浸炭窒化処理後に施される、仕上加工時の取代を越えない、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機の製造方法。
  4. 両ディスクと各パワーローラとの少なくとも何れかの部材の表面に硬化層を形成する為の熱処理として浸炭窒化処理工程を採用し、この浸炭窒化処理の工程の少なくとも後期に行なう脱炭雰囲気を、アンモニア流量を増やす事により実現する、請求項2〜3の何れかに記載したトロイダル型無段変速機の製造方法。
  5. 両ディスクと各パワーローラとの少なくとも何れかの部材を構成する素材が、素材炭素量が高い鋼材であり、浸炭処理又は浸炭窒化処理の際のカーボンポテンシャル値を上記素材の炭素含有量よりも下げる、請求項2〜3の何れかに記載したトロイダル型無段変速機の製造方法。
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