JP4276589B2 - 電極段差吸収用印刷ペースト及び積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

電極段差吸収用印刷ペースト及び積層セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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本発明は、積層セラミック電子部品を製造するために用いる電極段差吸収用印刷ペーストと、該ペーストを用いた積層セラミック電子部品の製造方法とに、関する。
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、通常、キャリアシート上に誘電体ペーストを用いてドクターブレード法などによりセラミックグリーンシートを形成し、この上に内部電極形成用の導電性ペーストを所定パターンで印刷し、乾燥させて内部電極パターンを形成する。その後、キャリアシートからセラミックグリーンシートを剥離しこれを所望の層数まで積層する。
ここで、積層前にセラミックグリーンシートをキャリアシートから剥離する方法(シート法)と、積層圧着後にキャリアシートを剥離する方法(印刷法)の2種類の積層法が知られているが、両者ともに大きな違いはない。最後にこの積層体をチップ状に切断してグリーンチップが作成される。これらのグリーンチップを焼成後、外部電極を形成し積層セラミックコンデンサが得られる。
ところで近年、電子機器の軽薄短小化が進んできている。これに伴い、その電子機器に使用される積層セラミックコンデンサにおいても、より一層の小型化・高容量化が進められている。積層セラミックコンデンサを小型化・高容量化するために最も効果的な方法は、内部電極と誘電体層を双方ともに可能な限り薄くし(薄層化)、かつそれらを可能な限り多く積層する(多層化)ことである。
しかしながら、積層セラミックコンデンサのように、セラミックグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層する場合には、セラミックグリーンシートの間に挟まれる内部電極パターンの同列上には、電極が形成されない隙間(余白パターン部分)が形成される。この余白パターン部分のために、内部電極パターンが存在する部分との間で段差を生じ、それが原因で、製品チップの変形、クラック、シート間のデラミネーションなどが問題になる。特に、コンデンサの高容量化を狙って、さらに1層あたりの誘電体層厚みを内部電極の厚み程度にまで薄くした場合、段差が生じた部分で誘電体層が切断されやすくなり、その結果、内部電極間の短絡などによるショート不良を生じ易く、不良率が増大する傾向にあった。
そこで近年、このような段差によって生じる諸問題を解決するために、内部電極(内部電極パターン)の形成に引き続き、内部電極が形成されていない隙間(余白パターン部分)に、電極段差吸収用印刷ペーストからなる余白パターン層を形成し、形成面を平坦化しつつ積層していく技術が知られている。内部電極パターンと余白パターン層は、写真フィルムのネガティブとポジティブの関係になる。
電極段差吸収用印刷ペーストとしては、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストと同様に、有機バインダを溶剤に溶解させた有機ビヒクル中にセラミック粉末を分散させたものが用いられる。
セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストでは、有機ビヒクル中の有機バインダとして、たとえばブチラール樹脂などが使用されるが、電極段差吸収用印刷ペーストでは、これに対応する有機ビヒクル中の有機バインダとしてエチルセルロースが使用される。その理由は、スクリーン印刷などによる印刷適正を考慮したものである。その一方で、有機ビヒクル中の溶剤としては、ターピネオールなどが使用されてきた(特許文献1,2参照)。
しかしながら、ターピネオールを溶剤に使用した電極段差吸収用印刷ペーストを、ブチラール樹脂を有機バインダとしたセラミックグリーンシートと組み合わせて使用した場合に、ペースト中の溶剤がセラミックグリーンシート中の有機バインダを膨潤または溶解させる、いわゆる「シートアタック」現象が生じる。
こうしたシートアタック現象は、セラミックグリーンシートの厚みが比較的厚いうちは実用上問題とならない。しかしながら、セラミックグリーンシートの厚みがたとえば5μm以下と薄い場合にシートアタック現象が生じると、電極段差吸収用印刷ペーストを印刷後にセラミックグリーンシートをPETフィルムなどのキャリアシートから剥離する際に、セラミックグリーンシートが剥がれにくくなる。セラミックグリーンシートが剥がれにくくなると、この影響を受けてセラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生し、積層工程で正常な積層体が得られない。正常な積層体が得られないと、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)や、誘電体層と内部電極層との間に層間剥離現象(デラミネーション)が発生し、歩留まりの低下を招いていた。
電極段差吸収用印刷ペーストではないが、内部電極形成用の導電性ペーストに関し、このシートアタック現象を改善できるブチラール樹脂を溶解しない溶剤として、特許文献3ではジヒドロターピネオールを用い、特許文献4ではジヒドロターピニルアセテートを用いた導電性ペーストが提案されている。これらの溶剤については、特許文献2にも開示されている。
ところで、スクリーン印刷法を用いて余白パターン層を形成する方法を説明すると、まず、内部電極パターンと同一パターンの版膜(レジスト)を持つスクリーンメッシュを準備し、これをセラミックグリーンシート上に、所定間隔をもって配置する。次に、スクリーンメッシュ上に電極段差吸収用印刷ペーストを載せた後、スキージと呼ばれるヘラ状のゴム板を用い、これをスクリーンメッシュの内面に加圧しながら移動させる。このとき、スキージにより加圧されているメッシュ部分はスキージの移動方向に連動して下凸状に湾曲し、セラミックグリーンシートに接触すると同時に、スクリーンメッシュ上に載せられたペーストはスクリーンメッシュの版膜のない部分(余白パターン層を形成する部分)から押し出されて、内部電極パターンとはネガティブとポジティブの関係となる余白パターン層がセラミックグリーンシート表面に形成される。
しかしながら、ジヒドロターピネオールやジヒドロターピニルアセテートを、電極段差吸収用印刷ペーストの溶剤に用いた場合、ペーストの経時的粘度変化が大きいという問題がある。このため、印刷当初は、所望粘度でセラミックグリーンシート上に内部電極パターンと同じ所定厚みで余白パターン層を形成することができるが、所定時間経過後には増粘し、印刷当初の印刷条件では同じ厚みを形成できない。さらに、ペースト自身のタック力が強いため、版離れ性が悪く、スクリーンメッシュがセラミックグリーンシートから離れる際、セラミックグリーンシートをキャリアシートから引き剥がそうとする力が働き、場合によってはセラミックグリーンシートがキャリアシートから引き剥がされ、シワや亀裂などが生じる。
上述したペーストの経時的粘度変化、版離れ性不良、セラミックグリーンシートに皺や亀裂などの問題は、近年の薄層多層化を必要とされる積層セラミック電子部品により顕在化する傾向にある。
従って、こうした従来の電極段差吸収用印刷ペーストを用いている限りは、積層セラミック電子部品の小型化・高容量化に限界があった。
特開平9−106925号公報 特開2001−167971号公報 特開平9−17687号公報 特許2976268号公報
本発明の目的は、積層セラミック電子部品を製造するために用いられ、経時的粘度変化が少なく、版離れ性が良好であり、セラミックグリーンシートとの接着性が適度であり、しかもシートアタックを生じない電極段差吸収用印刷ペーストと、該ペーストを用いた積層セラミック電子部品の製造方法とを、提供することである。
本発明者らは、電極段差吸収用印刷ペーストに特定溶剤を使用することで、経時的粘度変化が少なく、その結果、余白パターン層形成時に膜厚の経時的変化を抑制できることを見出した。また、この溶剤を用いることで、スクリーン印刷で用いるスクリーンメッシュ版からの版離れ性を改善でき、その結果、製品チップの歩留まり低下を抑制できることを見出した。
すなわち、本発明によれば、積層セラミック電子部品を製造するために用いる電極段差吸収用印刷ペーストであって、
ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと組み合わせて使用され、
セラミック粉末と、有機ビヒクルとを含み、
前記有機ビヒクル中の溶剤が、ターピニルアセテートを主成分とすることを特徴とする電極段差吸収用印刷ペーストが提供される。
本発明によれば、ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと所定パターンの電極層とを交互に複数重ねてグリーンセラミック積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を有する電子部品の製造方法であって、
前記積層体を形成する前に、所定パターンの前記電極層の隙間部分には、前記電極層と実質的に同じ厚みの余白パターン層を形成し、前記余白パターン層を形成するための電極段差吸収用印刷ペーストとして、上記の電極段差吸収用印刷ペーストを用いることを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法が提供される。
好ましくは、前記有機ビヒクル中の溶剤が、前記セラミック粉末100重量部に対して、50〜240重量部含有されている。
本発明の電極段差吸収用印刷ペーストには、通常、上記溶剤とともに、有機ビヒクルの構成成分として有機バインダが含まれる。そこで、好ましくは、前記有機ビヒクル中の有機バインダが、エチルセルロースを主成分とし、前記セラミック粉末100重量部に対して2.5〜16重量部含有される。
好ましくは、前記電極段差吸収用印刷ペーストに含まれるセラミック粉末が、前記セラミックグリーンシートを形成するためのペーストに含まれるセラミック粉末と同じである。余白パターン層は、グリーンシートと共に、焼成後に一体化される部分だからである。
好ましくは、前記電極段差吸収用印刷ペーストには、セラミック粉末が、ペースト全体に対して、30〜50重量%、さらに好ましくは40〜50重量%の割合で含まれる。セラミック粉末の含有割合が少なすぎると、ペーストの粘度が小さくなり、印刷が困難になる傾向にある。また、セラミック粉末の含有割合が多すぎると、印刷厚みを薄くすることが困難になる傾向にある。
本発明の電極段差吸収用印刷ペーストには、必要に応じて可塑剤や帯電除剤等の添加剤を含有していてもよい。
本発明で電極段差吸収用印刷ペーストの溶剤に用いるターピニルアセテートは、電極段差吸収用印刷ペーストの有機バインダに一般的に用いられるエチルセルロースを十分に溶解する(レオロジーが良好)。このため、本溶剤を用いた電極段差吸収用印刷ペーストは経時的粘度変化が少ない。
溶解性の高低は、たとえばクリープ特性やtanδなどで判断することができるが、本発明の電極段差吸収用印刷ペーストは、クリープ特性やtanδが優れている(実施例1参照)。このため、電極段差吸収用印刷ペーストにバインダとして含まれるエチルセルロースがセラミック粉末に吸着し易く、分散が安定し、その結果、電極段差吸収用印刷ペーストの経時的な粘度変化が少なくなるものと考えられる。経時的粘度変化が少なくなることで、余白パターン層形成時に膜厚の経時的変化を抑制することができる。
なお、クリープ特性やtanδは、いずれも溶解性の判断する指標となるものである。ある粘度のペーストを基材などに垂らすと、該基材上で垂らされたペーストは自然に平坦になろうとする(レベリングされる)が、クリープ特性とは、このペーストのレベリングのし易さを示す指標である。クリープ特性が良いと、レベリング性に優れていることを意味し、ひいては溶解性が高い(よく溶けている)ものと考えられる。本発明で用いるターピニルアセテートは、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテートなどと比較して、最もクリープ特性に優れていることを見出した(図3参照)。
tanδとは、動的粘弾性を判断する指標であり、tanδ値が低いほど弾性的でありレベリングしにくく、その一方で、tanδ値が高いほど非弾性的でありレベリングしやすいというものである。tanδが大きいほど動的粘弾性に優れ、すなわちレベリング性に優れ、ひいては溶解性が高いものと考えられる。本発明で用いるターピニルアセテートは、ターピネオールを除く非相溶系のジヒドロターピネオールやジヒドロターピニルアセテートと比較してtanδが高く、優れていることを見出した(図4参照)。
また、本発明の電極段差吸収用印刷ペーストは、スクリーン印刷で用いるスクリーンメッシュからの版離れ性が改善されている。このため、製品チップの歩留まり低下を効果的に抑制することが可能である。
また、本発明の電極段差吸収用印刷ペーストは、ペーストの版離れ特性とともに、セラミックグリーンシートに対する接着性が適度に制御されている。このため、スクリーン印刷終了後にスクリーンメッシュが元の位置に戻るときに、セラミックグリーンシートがキャリアシートから引き剥がされることがなく、セラミックグリーンシートに皺や亀裂などを発生させることがない。
また、電極段差吸収用印刷ペーストの溶剤に用いるターピニルアセテートは、セラミックグリーンシートに有機バインダとして含まれるブチラール樹脂を溶解または膨潤させない(非相溶)。このため、本溶剤を用いた電極段差吸収用印刷ペーストは、副次的にではあるが、シートアタック防止効果も有する。このため、セラミックグリーンシートの厚みがたとえば5μm以下と薄い場合でも、電極段差吸収用印刷ペーストを印刷後にセラミックグリーンシートをPETフィルムなどのキャリアシートから剥離するに際して、セラミックグリーンシートの剥離性が向上し、セラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生することを効果的に抑制できる。すなわち、セラミックグリーンシートを今まで以上に薄層化しても、シートアタック現象が発生することはない。その結果、厚みが5μm以下と極めて薄いセラミックグリーンシートを適用しても正常な積層体が得られ、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)や、誘電体層と内部電極層との間に層間剥離現象(デラミネーション)を発生させるおそれが少なくなる。
以上のことから、本発明の電極段差吸収用印刷ペーストは、最終物たる積層セラミック電子部品の小型化・高容量化に極めて有益である。
すなわち、本発明によれば、積層セラミック電子部品を製造するために用いられ、経時的粘度変化が少なく、版離れ性が良好であり、セラミックグリーンシートとの接着性が適度であり、しかもシートアタックを生じない電極段差吸収用印刷ペーストと、該ペーストを用いた積層セラミック電子部品の製造方法とを、提供することができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2(A)〜図2(C)は図1の積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す断面図、
図3は各溶剤ごとのクリープ特性を示すものであり静置日数に対する最大クリープ値の変動を示すグラフ、
図4は各溶剤ごとのtanδを示すものであり静置日数に対するtanδ値の変動を示すグラフ、である。
本実施形態では、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示して説明する。
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素体10を有する。このコンデンサ素体10の両側端部には、素体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4,4が形成してある。内部電極層3は、各側端面がコンデンサ素体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4,4は、コンデンサ素体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
コンデンサ素体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
誘電体層2は、後述する図2(A)〜図2(C)に示すセラミックグリーンシート30を焼成して形成され、その材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。誘電体層2の厚みは、本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
内部電極層3は、後述する図2(B),図2(C)に示す所定パターンの導電性ペーストで構成される電極層40を焼成して形成される。内部電極層3の厚さは、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下に薄層化されている。
外部電極4の材質は、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。外部電極4の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
誘電体ペーストの準備
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層2を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
本実施形態では、誘電体ペーストは、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
セラミック粉末としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末は、通常、平均粒子径が2.0μm以下、好ましくは0.1〜0.8μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いセラミックグリーンシートを形成するためには、セラミックグリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルに用いられるバインダは、本実施形態ではポリビニルブチラールが用いられる。そのポリビニルブチラールの重合度は、好ましくは300〜2400、より好ましくは500〜2000である。また、樹脂のブチラール化度は、好ましくは50〜81.6mol%、より好ましくは63〜80mol%であり、その残留アセチル基量は、好ましくは6%未満、より好ましくは3%以下である。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も、特に限定されるものではなく、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどが用いられる。
誘電体ペースト中の各成分の含有量は、特に限定されるものではなく、たとえば、約1〜約50重量%の溶剤を含むように、誘電体ペーストを調製することができる。
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。
本実施形態では、有機ビヒクル中の有機バインダにポリビニルブチラールを用いるので、この場合の可塑剤の含有量は、有機バインダ100重量部に対して、約25〜約100重量部であることが好ましい。
セラミックグリーンシートの形成
(2)次に、この誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、図2(A)に示すように、キャリアシート20上に、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度の厚みで、セラミックグリーンシート30を形成する。
キャリアシート20としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、シリコーンなどがコーティングしてあるものが好ましい。キャリアシート20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
セラミックグリーンシート30は、キャリアシート20に形成された後に乾燥される。セラミックグリーンシート30の乾燥温度は、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜20分である。
乾燥後のセラミックグリーンシート30の厚みは、乾燥前に比較して、5〜25%の厚みに収縮する。本実施形態では、乾燥後のセラミックグリーンシート30の厚みが、5μm以下、好ましくは3μm以下となるように形成する。近年望まれている薄層化の要求に応えるためである。
電極層の形成
(3)次に、図2(B)に示すように、キャリアシート20上に形成されたセラミックグリーンシート30の表面に、焼成後に図1に示す内部電極層3となる所定パターンの電極層(内部電極パターン)40を形成する。
電極層40の厚さは、2μm以下、好ましくは0.5〜1.5μmである。電極層40の厚さが厚すぎると、積層数を減少せざるをえなくなり取得容量が少なくなり、高容量化しにくくなる。一方、厚みが薄すぎると均一に形成することが困難であり、電極途切れが発生しやすくなる。
電極層40の厚さは、現状の技術では前記範囲の程度であるが、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。
電極層40の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる導電性ペーストは、導電性粉末と有機ビヒクルとを含有する。
導電性粉末としては、特に限定されないが、Cu、Niおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金、さらにはこれらの混合物で構成される。
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
このような導電性粉末は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導電性粉末の粒子径は、通常、球状の場合、平均粒子径が0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.4μm程度のものを用いる。より一層確実に薄層化を実現するためである。
導電性粉末は、導電性ペースト中に、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜50重量%含まれる。
有機ビヒクルは、有機バインダと溶剤とを主成分として含有するものである。
有機バインダとしては、例えばエチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体などが例示されるが、本実施形態ではエチルセルロースを主成分とすることが好ましい。有機バインダとしてエチルセルロースを主成分とする場合の、バインダ中のエチルセルロースの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、エチルセルロースと組み合わせて用いることが可能な樹脂としては、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などがある。
有機バインダは、導電性ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部で含まれる。
溶剤としては、例えばターピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン等公知のものはいずれも使用可能であるが、本実施形態ではターピニルアセテートを主成分とすることが好ましい。ターピニルアセテートを主成分とすることで、後述する電極段差吸収用印刷ペーストにおける場合と同様の作用効果を奏することができるからである。
溶剤としてターピニルアセテートを主成分とする場合の、溶剤中のターピニルアセテートの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。微量であるが、ターピニルアセテートと組み合わせて用いることが可能な溶剤としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどがある。
溶剤は、導電性ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは50〜150重量部、より好ましくは80〜100重量部で含まれる。
有機ビヒクル中の上記バインダ及び溶剤の合計含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、バインダ及び溶剤とともに有機ビヒクル中に含有させることが可能なものとしては、可塑剤、レベリング剤などがある。
導電性ペースト中には、上記誘電体ペーストに含まれるセラミック粉末と同じセラミック粉末が共材として含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。共材として用いるセラミック粉末は、導電性ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは5〜30重量部で含まれる。共材量が少なすぎると、導電性粉末の焼結抑制効果が低下し、焼成後の内部電極層3のライン性(連続性)が悪化し、見かけの誘電率が低下する。一方で、共材量が多すぎると、焼成後の内部電極層3のライン性が悪化しやすくなり、見かけの誘電率も低下する傾向にある。
接着性の改善のために、導電性ペーストには、可塑剤が含まれてもよい。可塑剤としては、特に限定はないが、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。可塑剤は、有機ビヒクル中の有機バインダ100重量部に対して、好ましくは25〜150重量部、より好ましくは25〜100重量部で含有される。可塑剤の添加により、そのペーストを用いて形成される電極層40の接着力は高まり、電極層40とセラミックグリーンシート30との接着力が向上する。このような効果を得るためには、可塑剤の添加量は、25重量部以上が好ましい。ただし添加量が150重量部を越えると、そのペーストを用いて形成される電極層40から過剰な可塑剤が滲み出すため好ましくない。
導電性ペーストの粘度は、BROOKFIELD社製 VISCMETER HBDVI+を用いてスピンドル(SC4−14)/チャンバー(6R)、液温 25℃、ズリ速度4S−1の条件で測定した場合に、好ましくは1〜20Pa・s、より好ましくは3〜15Pa・sである。
導電性ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
余白パターン層の形成
(4)本実施形態では、セラミックグリーンシート30の表面に、所定パターンの電極層40を印刷法で形成した後、またはその前に、図2(B)に示す電極層40が形成されていないセラミックグリーンシート30の表面隙間(余白パターン部分50)に、図2(C)に示すように、電極層40と実質的に同じ厚みの余白パターン層60を形成する。余白パターン層60の厚さを電極層40と実質的に同じ厚みとするのは、実質的に同じでないと段差が生じるからである。
余白パターン層60の形成方法は、本実施形態では電極段差吸収用印刷ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる電極段差吸収用印刷ペーストは、セラミック粉末と有機ビヒクルとを含有する。
セラミック粉末としては、セラミックグリーンシート30に含まれるセラミック粉末と同じ組成かつ同じ平均粒径を有するものが用いられる。
セラミック粉末は、電極段差吸収用印刷ペースト中に、好ましくは25〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%含まれる。セラミック粉末の含有割合が少なすぎるとペースト粘度が小さくなり印刷が困難にある。また、セラミック粉末の含有割合が多すぎると、印刷厚みを薄くすることが困難になる傾向にある。
有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを主成分として含有するものである。
バインダとしては、本実施形態ではエチルセルロースを主成分とすることが好ましい。バインダ中のエチルセルロースの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、エチルセルロースと組み合わせて用いることが可能な樹脂としては、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などがある。
バインダは、電極段差吸収用印刷ペースト中に、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは2.5〜16重量部で含まれる。バインダ量は多すぎても少なすぎても、レベリング、版離れ性等の印刷適正、精度が劣化する。
溶剤は、ターピニルアセテートを主成分とする。溶剤中のターピニルアセテートの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。微量であるが、ターピニルアセテートと組み合わせて用いることが可能な溶剤としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどがある。
溶剤は、電極段差吸収用印刷ペースト中に、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは50〜240重量部、より好ましくは80〜200重量部で含まれる。溶剤量が少なすぎると粘度が高く印刷適正、精度が悪化し厚さが厚くなる。多すぎると粘度が低く、スクリーンメッシュからペーストが垂れ、印刷適正、精度が悪化する不都合がある。
また、電極段差吸収用印刷ペーストには、分散剤、可塑剤および、または粘着剤、帯電除剤、といった各種添加剤が含有されても良い。
分散剤としては、特に限定はないが、たとえば、エステル系重合体、カルボン酸といった高分子材料が用いられ、その含有量は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは0.25〜1.5重量部、さらに好ましくは0.5〜1.0質量部含有される事が好ましい。
可塑剤としては、特に限定はないが、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。本実施形態では、好ましくは、アジピン酸ジオクチル(DOA)、フタル酸ブチルブチレングリコール(BPBG)、フタル酸ジドデシル(DDP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、セバシン酸ジブチルなどが用いられる。中でも、フタル酸ジオクチル(DOP)が特に好ましい。可塑剤の含有量は、有機ビヒクル中のバインダ100重量部に対して、10〜200重量部、さらに好ましくは50〜100重量部で含有されることが望ましい。
帯電除剤としては、特に限定はないが、例えば、イミダゾリン系帯電除剤などが用いられ、その含有量は、セラミック粉末100重量部に対して0.1〜0.75重量部、さらに好ましくは0.25〜0.5重量部で含有されることが好ましい。
電極段差吸収用印刷ペーストの粘度は、BROOKFIELD社製 VISCMETER HBDVI+を用いてスピンドル(SC4−14)/チャンバー(6R)、液温 25℃、ズリ速度4S−1の条件で測定した場合に、好ましくは1〜20Pa・s、より好ましくは3〜15Pa・sである。
電極段差吸収用印刷ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
本実施形態の電極段差吸収用印刷ペーストは、溶剤としてターピニルアセテートを含むので、経時的粘度変化が少ない。具体的には、調製時の粘度V0と、静置1日後の粘度V1と、静置7日後の粘度V7と、静置30日後の粘度V30とを、それぞれ測定したときの粘度変化率が極めて小さく、経時的粘度変化が抑制されている。
本実施形態の電極段差吸収用印刷ペーストは、スクリーン印刷で用いるスクリーンメッシュ版からの版離れ性と、セラミックグリーンシート30に対する接着性が適度に制御されている。その詳細は実施例3を参照されたい。
この電極段差吸収用印刷ペーストは、図2(B)に示す電極層40間の余白パターン部分50に印刷される。その後、電極層40および余白パターン層60は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜120℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜15分である。
グリーンチップの作製、焼成など
(5)次に、以上のような、所定パターンの電極層40と余白パターン層60が表面に形成されたセラミックグリーンシート30を複数積層して、グリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素体10に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4,4を形成して、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
本実施形態の作用効果
本実施形態では、電極段差吸収用印刷ペーストの溶剤にターピニルアセテートを用いる。このため、電極段差吸収用印刷ペーストの経時的な粘度変化が少なくなり、余白パターン層形成時に膜厚の経時的変化を抑制することができる。
また、本実施形態の電極段差吸収用印刷ペーストは、スクリーン印刷で用いるスクリーンメッシュ版からの版離れ性が改善されている。このため、製品チップの歩留まり低下を効果的に抑制することが可能である。
また、本実施形態の電極段差吸収用印刷ペーストは、ペーストの版離れとともに、セラミックグリーンシートに対する接着性が適度に制御されている。このため、スクリーン印刷終了後にスクリーンメッシュが元の位置に戻るときに、セラミックグリーンシートがキャリアシートから引き剥がされることがなく、セラミックグリーンシートに皺や亀裂などを発生させることがない。
また、電極段差吸収用印刷ペーストの溶剤に用いるターピニルアセテートは、セラミックグリーンシートにバインダとして含まれるポリビニルブチラールを溶解または膨潤させない。すなわちシートアタックを生じさせないので、セラミックグリーンシートの厚みがたとえば5μm以下と薄い場合でも、電極段差吸収用印刷ペーストを印刷後にセラミックグリーンシートをキャリアシートから剥離するに際して、セラミックグリーンシートの剥離性が向上し、セラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生することを効果的に抑制できる。
すなわち、セラミックグリーンシートを今まで以上に薄層化しても、シートアタック現象が発生することはない。その結果、厚みが5μm以下と極めて薄いセラミックグリーンシートを適用しても正常な積層体が得られ、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)や、誘電体層と内部電極層との間に層間剥離現象(デラミネーション)を発生させるおそれが少なくなる。
以上より、本実施形態の電極段差吸収用印刷ペーストは、最終物たる電子部品の小型化・高容量化に極めて有益である。
その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、多層セラミック基板などにも適用できることは勿論である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
有機ビヒクルの作製
有機バインダとしてのエチルセルロースと、表1に示す溶剤を準備し、各溶剤100重量部に対して8重量部のバインダを溶解させて、有機ビヒクルを得た。
クリープ特性とtanδの評価
得られた有機ビヒクルの「クリープ特性」と「tanδ」の変動を観察した。
「クリープ特性(クリープ測定)」は、得られた有機ビヒクルに1Paの応力を与えたときの最大クリープ値の変動を、粘度・粘弾性測定装置(レオストレスRS1、英弘精機社製)にて測定し、結果を図3に示した。静置日数に対する最大クリープ(変位)値が大きいほどクリープ特性に優れ、すなわちレベリング性に優れ、溶解性が高い(よく溶けている)ものと考えられる。溶解性が高いと経時的粘度変化が少ない。
図3に示すように、ターピニルアセテートを用いた試料は、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテートを用いた試料と比較して、最もクリープ特性に優れていることが確認できた。
「tanδ(動的粘弾性測定)」は、得られた有機ビヒクルに10Paの応力を与えたときのtanδ値の変動を、上記同様の装置にて測定し、結果を図4に示した。tanδ値が低いほど弾性的でありレベリングしにくく、その一方で、tanδ値が高いほど非弾性的でありレベリングしやすいというものである。静置日数に対するtanδ値が大きいほど動的粘弾性に優れ、すなわちレベリング性に優れ、溶解性が高いものと考えられる。溶解性が高いと経時的粘度変化が少ない。
図4に示すように、ターピニルアセテートを用いた試料は、ターピネオールを除く非相溶系のジヒドロターピネオールやジヒドロターピニルアセテートを用いた試料と比較してtanδが高いことが確認できた。
電極段差吸収用印刷ペーストの作製
上記バインダ及び各溶剤の他に、セラミック粉末としての平均粒径が0.5μmのBaTiO3 系セラミック粉末を準備し、該セラミック粉末100重量部に対して、上記有機ビヒクルを75重量部添加し、ボールミルで混練し、スラリー化して電極段差吸収用印刷ペーストを得た。
静置日数別粘度の測定
得られた電極段差吸収用印刷ペーストを用い、調製時の粘度V0と、静置1日後の粘度V1と、静置7日後の粘度V7と、静置30日後の粘度V30とを、それぞれ、BROOKFIELD社製 VISCMETER HBDVI+装置を用いてスピンドル(SC4−14)/チャンバー(6R)、液温 25℃、ズリ速度4S−1の条件で測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004276589
表1に示すように、ターピニルアセテートを用いたペーストは、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテートを用いたペーストと比較して、最も、経時的な粘度変化が少ないことが確認できた。
実施例2
誘電体ペーストの作製
実施例1で電極段差吸収用印刷ペーストの作製に用いたセラミック粉末と同じセラミック粉末と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール(PVB)と、溶媒としてのメタノールを準備した。次に、セラミック粉末に対して、10重量%の有機バインダと、150重量%の溶媒とを秤量し、ボールミルで混練し、スラリー化して誘電体ペーストを得た。
試験用試料の作製
得られた誘電体ペーストをPETフィルム上にドクターブレード法によって、所定厚みで塗布し、乾燥することで、厚みが3μmのセラミックグリーンシートを形成した。
次に、得られたセラミックグリーンシートの上に、実施例1で用いたうちのターピニルアセテートを含む電極段差吸収用印刷ペーストを、スクリーン印刷法によって所定パターンで形成、乾燥し、厚さ約1.5μmの余白パターン層を持つセラミックグリーンシート(試験用試料)を得た。
試験用試料の評価
得られた試験用試料を用い、「シートアタックの有無」と、「セラミックグリーンシートからのPETフィルムの剥離性」を評価した。
「シートアタックの有無」は、セラミックグリーンシートの余白パターン層側とは反対面(PETフィルムに接する面)を電子顕微鏡(SEM)により観察し、変形度合いと色合いによりセラミックグリーンシートの溶解度合いを確認することにより行った。その結果、セラミックグリーンシートの溶解を観察できなかった。
「セラミックグリーンシートからのPETフィルムの剥離性」については、試験用試料からPETフィルムを剥がす際の剥離強度を測定することにより行った。剥離強度の測定は、9cm×20cmのPET付グリーンシートの端(剥離のきっかけを作るのりしろ部分)にロードセルを粘着テープでつけて、上に移動させながら荷重(負荷)を計るようにして行った。その結果、剥離強度が0.57gf以下と適正な値を示した。これにより、セラミックグリーンシートに対する必要な保持力を維持できるとともに、剥離作業の効率性が期待できる。
実施例3
実施例2で用いた誘電体ペーストをPETフィルム上にドクターブレード法によって塗布し、乾燥することで、厚みが3μmのセラミックグリーンシートを形成した。
スクリーンメッシュ版からの版離れ性の評価
準備された各セラミックグリーンシート上に、実施例2と同様にスクリーン印刷法によって、実施例1で用いた各溶剤を含む電極段差吸収用印刷ペーストを所定パターンで形成、乾燥し、厚さ約1.5μmの余白パターン層を得た。
その結果、ターピニルアセテート以外の他の溶剤(ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート)を用いた余白パターン層にはいずれも皺が入った。これに対し、ターピニルアセテートを用いた余白パターン層には皺がなく、版離れ性に優れていることが確認できた。
以上より、ターピニルアセテートを用いたペーストは、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテートを用いたペーストと比較して、最も、版離れ性がよく、しかもセラミックグリーンシートからの接着性(易剥離性に優れる)が適度に制御されていることが確認できた。
実施例4
導電性ペーストの作製
導電性粉末としての平均粒径が0.3μmのNi粒子と、バインダとしてのエチルセルロースと、溶剤としてのターピニルアセテートを準備した。
次に、溶剤100重量部に対して8重量部のバインダを溶解させて、有機ビヒクルを準備した。
次に、導電性粉末100重量部に対して、50重量部の有機ビヒクルを添加し、ボールミルで混練し、スラリー化して導電性ペーストを得た。
積層セラミックチップコンデンサ試料の作製
実施例2で作製した誘電体ペーストと、実施例1で作製した電極段差吸収用印刷ペーストと、本実施例で作製した導電性ペーストを用い、以下のようにして、図1に示す積層セラミックチップコンデンサ1を製造した。
まず、PETフィルム上に誘電体ペーストをドクターブレード法によって、所定厚みで塗布し、乾燥することで、厚みが20μmの外装用グリーンシートを作成した。また同様に厚みが3μmの内装用セラミックグリーンシートを形成した。本実施例では、この外装用グリーンシート5枚(100μm)で内装用グリーンシートを挟むような構成とする。内装用セラミックグリーンシートを第1グリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、得られた第1グリーンシートの上に、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法により厚さ約1.5μmの電極層(内部電極パターン)40(図2(B)参照)を形成した後、第1グリーンシート上の前記電極層40が形成されていない余白パターン部分50(図2(B)参照)に、電極段差吸収用印刷ペーストを用いたスクリーン印刷法により電極層40と実質的に同じ厚みの余白パターン層60(図2(C)参照)を形成し、図2(C)に示すような電極層40及び余白パターン層60を持つセラミックグリーンシート30を得た。本実施例では、このセラミックグリーンシート30を第2グリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、外装用グリーンシートを厚さが100μmになるまで積層してグリーンシート群を形成した。このグリーンシート群の上に、第2グリーンシートを200枚積層し、この上にさらに、外装用グリーンシート群を積層、形成し、温度60℃及び圧力1.0トン/cmの条件で加熱・加圧してグリーンセラミック積層体を得た。
次に、得られた積層体を所定サイズに切断した後、脱バインダ処理、焼成及びアニールを下記の条件にて行い、焼結体を得た。
脱バインダは、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、保持時間:8時間、処理雰囲気:空気雰囲気、の条件で行った。
焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1200〜1380℃、保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10−6PaにNとHとの混合ガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。
アニールは、保持温度:900℃、保持時間:9時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:加湿したN2ガス雰囲気、の条件で行った。焼成及びアニールにおけるガスの加湿には、ウェッターを用い、水温は35℃とした。
次に、得られた焼結体の端面をサンドブラストにて研磨した後、In−Ga合金を塗布して、試験用電極を形成し、積層セラミックチップコンデンサ試料を得た。
コンデンサ試料のサイズは、縦1.6mm×横0.8mm×高さ0.8mmであり、一対の内部電極層間に挟まれる誘電体層2の厚みは約2μm、内部電極層3の厚みは1.5μmであった。
コンデンサ試料の評価
得られたコンデンサ試料のショート不良特性、耐電圧特性(IR特性)及びデラミネーションの有無を評価した。
ショート不良特性については、絶縁抵抗計(HEWLETT PACKARD社製 E2377Aマルチメータ)を用いて25℃においてDC10Vを60印可した後の絶縁抵抗値を測定し、10Ω以下をショート不良とした。
デラミネーションの有無については、コンデンサ−試料100個を研磨し電子顕微鏡にて内部観察し評価した。デラミネーションのあったものの個数を示した。
結果を表2に示す。
Figure 0004276589
表2に示すように、ターピニルアセテートを使用したものは、ショート不良およびデラミネーションにおいて良好な結果が確認できた。
すなわち、その積層体を観察した結果、グリーンシート間における電極層の段差を良好に解消し、シート間のデラミネーションや積層体の変形などを有効に防止できていることが確認できた。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2(A)〜図2(C)は図1の積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す断面図である。 図3は各溶剤ごとのクリープ特性を示すものであり静置日数に対する最大クリープ値の変動を示すグラフである。 図4は各溶剤ごとのtanδを示すものであり静置日数に対するtanδ値の変動を示すグラフである。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
20… キャリアシート
30… セラミックグリーンシート
40… 電極層(内部電極パターン)
50… 余白パターン部分
60… 余白パターン層

Claims (6)

  1. 積層セラミック電子部品を製造するために用いる電極段差吸収用印刷ペーストであって、
    ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと組み合わせて使用され、
    セラミック粉末と、有機ビヒクルとを含み、
    前記有機ビヒクル中の溶剤が、ターピニルアセテートを主成分とすることを特徴とする電極段差吸収用印刷ペースト。
  2. 前記有機ビヒクル中の溶剤が、前記セラミック粉末100重量部に対して、50〜240重量部含有されている請求項1に記載の電極段差吸収用印刷ペースト。
  3. 前記有機ビヒクル中の有機バインダが、エチルセルロースを主成分とし、前記セラミック粉末100重量部に対して2.5〜16重量部含有されている請求項1または2に記載の電極段差吸収用印刷ペースト。
  4. 前記セラミック粉末が、前記セラミックグリーンシートを形成するためのペーストに含まれるセラミック粉末と同じである請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極段差吸収用印刷ペースト。
  5. ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと所定パターンの電極層とを交互に複数重ねてグリーンセラミック積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成する工程と、を有する電子部品の製造方法であって、
    前記積層体を形成する前に、所定パターンの前記電極層の隙間部分には、前記電極層と実質的に同じ厚みの余白パターン層を形成し、
    前記余白パターン層を形成するための電極段差吸収用印刷ペーストとして、請求項1〜4のいずれかに記載の電極段差吸収用印刷ペーストを用いることを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  6. 前記電極段差吸収用印刷ペーストに含まれるセラミック粉末が、前記グリーンシートを形成するためのペーストに含まれるセラミック粉末と同じである請求項5に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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