しかしながら、特許文献1では、パララックスバリア素子をステレオグラム表示面よりも背面側(すなわちバックライト側、鑑賞者とは反対側)に配置した場合には、3次元画像の表示時に、パララックスバリア素子のバリア性能が不十分となる。このため、立体映像のクロストーク(二重像)が目立ってしまい表示品位が低下してしまうという問題点を有している。
一方、パララックスバリア素子をステレオグラム表示面よりも前面側(すなわち鑑賞者側)に配置した場合には、バリア遮光性が向上し、良好な3次元画像を表示することができる。しかしながら、2次元画像表示時には、パターニングされた透明電極の有無によって光の透過率が変化してしまうため、モアレ現象が発生してしまい、表示品位が著しく低下するという問題点を有している。
これは、パララックスバリア素子は、ほぼ透明であるものの透明電極の有無によって僅かに透過率差が存在するためである。すなわち、パララックスバリア素子をステレオグラム表示面の背面側に配置した場合には、この僅かな透過率差による影響はメインパネルでぼやけてしまうものの、前面側に配置した場合には、僅かな透過率差がモアレ現象として観測されるためである。
また、従来の2次元画像のみを表示する液晶表示装置においても、一般に帯状の透明電極が形成されている(例えば、特許文献2および3参照)。特許文献2では、基板上にSiOxなどの金属酸化物膜を形成した後にITO膜からなる透明電極が形成されている。
このように、一般に透明電極が形成される基板上には、ITOのみ、または、ITO+SiO2が形成されている。ITOをパターニングした場合には、ITOの光吸収性および他の膜との光干渉によって透過率に変化が生じる。上記のように、膜構成が2層または3層の場合には、ITOの光吸収性の影響の方が光干渉性よりも強く現れ、ITOの無い部分の透過率が有る部分の透過率よりも高くなる。すなわち、透過率差が現れてしまう。
また、特許文献3では、銀あるいは銀の合金の薄膜上に、SiO2膜と、SiN膜やITO膜とが形成されている。この場合、透明な膜はSiO2膜とSiN膜やITO膜の2層のみであり、SiN膜やITO膜をパターニングした場合には、必然的にその形状が透過率差となって表れてしまう。
従って、上記特許文献2および3に示すような、従来の2次元画像用の液晶表示装置に用いられた構成を、2次元画像および3次元画像を表示する表示装置に適用したとしても、上記特許文献1の場合と同様に、表示品位が低下してしまうこととなり、適用することはできない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光の透過率を基板全体で一様に保つことができるパララックスバリア素子と、専用の眼鏡を必要としない3次元画像を表示することができると共に、2次元画像も良好に表示することができる表示装置とを実現することにある。
本発明に係るパララックスバリア素子は、上記課題を解決するために、互いに対向して設けられた透光性を有する一対の基板と、該一対の基板における対向面とは反対側の各面に設けられた偏光板と、該一対の基板間に挟持され、電圧の印加により光学変調する媒質からなる媒質層とを備えたパララックスバリア素子であって、一方の基板は、透明基板と、該透明基板上に設けられた透光膜と、該透光膜上の一部に設けられた透明電極とを備えており、上記透光膜の屈折率が、該透明電極の屈折率よりも大きい材質にて該透光膜を形成するとともに、該透明電極の有る部分と無い部分の透過率が同じになるように該透光膜の膜厚を設定したことを特徴としている。
上記の構成によれば、一対の基板は透光性を有しており、一対の基板間に挟持された媒質層に対する電圧印加の有無によって光の透過および遮光が切り換えられるようになっている。
具体的には、媒質層に対する電圧の印加は、透明電極を用いて行われ、この透明電極は、透光膜上の一部に設けられている。このため、媒質層は、透明電極が有る部分の基板間に挟持された領域(遮光領域)と、透明電極が無い部分の基板間に挟持された領域(透過領域)とに分けられる。この場合、電圧印加時には、遮光領域には電圧が印加され、透過領域には電圧が印加されない。従って、遮光領域の媒質は光学変調するが、透過領域の媒質は光学変調しないこととなる。なお、透明基板上に設けられた透光膜とは、透明基板面上に設けられていることの他に、透明基板と透光膜との間に他の膜が設けられている場合も含むものとする。
また、各基板の対向面とは反対側の面(背向面)には偏光板が設けられているため、光は一方の偏光板によって直線偏光化された状態で媒質層に入射する。そして、媒質層を透過した後に他方の偏光板に入射する。光学変調しない媒質層を透過する光は、その偏光面が媒質層によって所定の角度だけ旋回する。これに対して、光学変調した媒質層を透過する光は、偏光面が旋回せずに偏光状態が保持される。
このため、一対の偏光板を、各透過軸が所定の軸配置となるように設定することにより、偏光面が旋回した光を透過し、偏光状態が保持された光を遮光することが可能になる。従って、電圧を印加した場合には、透過領域では光を透過するものの、遮光領域では光を透過しないこととなる。すなわち、基板間を透過する光の一部を遮光(分離)することができる。
一方、電圧を印加しない場合には媒質が光学変調しないため、基板を透過する光は遮断されることなく全て透過する。なお、透明電極は透光膜上の一部に設けられているため、従来の構成では透明電極の光吸収性によって基板の透過率が変化してしまう。すなわち、透明電極が有る部分の透過率よりも、透明電極の無い部分の透過率の方が大きくなってしまう。この場合、透過率の変化によるモアレ現象が発生してしまうこととなる。
しかしながら、上記の構成では、透明電極の屈折率よりも高い屈折率を有する透光膜が、透明電極の下に設けられている。光の透過率は、透明電極や透光膜の光吸収性に加えて、透明電極および透光膜の光干渉性の影響をも受ける。光の干渉は、各膜の屈折率が異なることによって生じるものである。隣り合う膜の屈折率差が大きい程干渉効果も大きくなり、光干渉性が大きい場合には、光吸収性の影響を小さくすることができる。すなわち、透明電極を、透明電極よりも高い屈折率の膜上に設けることで、光吸収性よりも光干渉性の影響を大きくすることができる。
その結果、透光膜上の一部に透明電極を設けた場合であっても、透明電極が有る部分と無い部分との透過率差を干渉によって一致させることが可能となり、基板全体で透過率が一様のパララックスバリア素子とすることができる。
本発明に係るパララックスバリア素子では、上記透光膜の屈折率は、2以上であることが好ましい。また、本発明に係るパララックスバリア素子では、上記透光膜は、TiO2またはSiNであることが好ましい。透明電極として用いられる代表的な材質として、例えばITO(インジウム錫酸化物)が挙げられる。このITOの屈折率は1.8程度である。従って、上記透光膜の屈折率を2以上とすることにより、透明電極と透光膜との屈折率差を大きくすることができる。これにより、透明電極の有無に関係なく透過率を一様にすることができる。なお、屈折率が2以上の透光膜として用いることのできる材質としては、例えばTiO2やSiNが挙げられる。
本発明に係るパララックスバリア素子では、上記媒質は、ねじれネマチック配向の液晶性物質であることが好ましい。上記媒質が、ねじれネマチック(Twisted Nematic)配向の液晶性物質であるため、媒質層を透過する光は液晶層の旋光性によって、偏光面を回転させることができる。また、電圧印加時には、透明電極の有る部分と無い部分とに分かれており、偏光面が回転されない光と回転される光とが存在することになる。このため、一対の偏光板を、各透過軸が所定の軸配置となるように設定することにより、偏光板を透過できない光とできる光とに分けることが可能となる。すなわち、媒質層を遮光領域と透過領域とに分けることができる。
本発明に係る表示装置は、上記課題を解決するために、上記いずれかに記載のパララックスバリア素子と、該パララックスバリア素子の後面に配置され、第1の画像を表示する第1画素部および第2の画像を表示する第2画素部を有する画像表示手段とを備え、上記パララックスバリア素子の光シャッター機能により、該画像表示手段の第1の画像および
第2の画像を基にして3次元画像を表示することを特徴としている。
上記の構成によれば、表示装置は上記パララックスバリア素子を備えているため、電圧の印加によって光の透過/遮光が切り換えられる。電圧を印加した場合には、透明電極の有無によって光を透過する領域と遮光する領域とに分けられる。従って、光遮光用のパララックスバリアを設けることができる。
また、画像表示手段は、第1の画像および第2の画像を表示する。第1の画像および第2の画像とは、表示装置が3次元画像を表示する場合には、各々右目用画像および左目用画像に相当する。一方、表示装置が2次元画像を表示する場合には、右目用画像や左目用画像といった区別はなく、第1の画像と第2の画像とを併せて通常の2次元画像となる。
パララックスバリア素子に電圧が印加されると、パララックスバリア素子には光遮光用のバリアが設けられると共に、第1画素部は第1の画像を表示し、第2画素部は第2の画像を表示する。これにより、第1の画像は画像を鑑賞する鑑賞者の右目に到達し、第2の画像は鑑賞者の左目に到達することとなる。その結果、専用の眼鏡を必要としない3次元画像を表示することが可能となる。
これに対して、パララックスバリア素子に電圧が印加されない場合には、パララックスバリア素子にはパララックスバリアが設けられないため全ての光が透過する。この場合、パララックスバリア素子は、透明電極の有無に関係なく透明電極基板全体で透過率が一様になっている。また、第1画素部および第2画素部は、2次元画像用の画像を表示する。これにより、明るく表示品位の良好な2次元画像を表示することが可能となる。
その結果、専用の眼鏡を必要としない3次元画像と、明るく表示品位の良好な2次元画像との双方を表示可能な表示装置を得ることができる。
本発明に係る表示装置では、上記パララックスバリア素子の透明電極は、縞状に設けられており、上記第1画素部および第2画素部は、交互に配置されていると共に、縞状に設けられており、上記各透明電極の間隔と、各第1画素部の間隔と、各第2画素部の間隔とが同じであることが好ましい。上記の構成によれば、透明電極、第1画素部および第2画素部は、縞状に設けられている。縞状とは、棒縞状(いわゆるストライプ状)である。また、第1画素部と第2画素部とが交互に配置されている。従って、1つの透明電極は、1組の第1画素部および第2画素部の組合せと対応するように配置されている。
これにより、表示装置が3次元画像を表示する場合には、透明電極の部分がバリアとなり、各透明電極に対応する第1画素部および第2画素部が表示する第1の画像および第2の画像を、それぞれ鑑賞者の右目および左目に到達させることができる。その結果、専用の眼鏡を必要としない3次元画像を表示することが可能となる。
本発明に係る表示装置では、上記パララックスバリア素子は、画像表示手段よりも、画像を鑑賞する鑑賞者側に設けられていることが好ましい。パララックスバリア素子が画像表示手段よりも鑑賞者側に設けられているため、バリア性能が不十分となることに起因するクロストークの発生を防止することが可能となる。また、パララックスバリア素子は透明電極の有無に関係なく透過率が一様になっているため、画像表示手段よりも鑑賞者側に配置された場合であっても、モアレの発生を防止することが可能となる。その結果、表示品位の良好な2次元画像と3次元画像との双方を表示可能な表示装置とすることができる。
本発明に係る表示装置では、光を出射する光源をさらに備え、上記パララックスバリア素子、画像表示手段および光源は、この順に配置されていることが好ましい。光源は、画像表示手段の、パララックスバリア素子とは反対側に配置されている。このように配置することにより、光源から出射された光を、画像表示手段、パララックスバリア素子の順に透過させることが可能となる。その結果、表示品位の良好な2次元画像と3次元画像との双方を表示可能な表示装置とすることができる。
本発明に係る表示装置では、上記パララックスバリア素子に供給される電気信号に応じて、上記画像表示手段による2次元画像と3次元画像とを切り換えて表示するようになっていることが好ましい。パララックスバリア素子に対して電気信号が供給されると、パララックスバリア素子に電圧が印加され、または電圧が印加されなくなり、光の透過/遮光が切り換えられる。すなわち、表示装置は、電気信号に従って、2次元画像と3次元画像とを切り換えて表示することができる。
本発明に係るパララックスバリア素子は、以上のように、互いに対向して設けられた透光性を有する一対の基板と、該一対の基板における対向面とは反対側の各面に設けられた偏光板と、一対の基板間に挟持され、電圧の印加により光学変調する媒質からなる媒質層とを備えたパララックスバリア素子であって、一方の基板は、透明基板と、該透明基板上に設けられた透光膜と、該透光膜上の一部に設けられた透明電極とを備えており、上記透光膜の屈折率が、透明電極の屈折率よりも大きいものである。これにより、基板全体で透過率を一様にすることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る表示装置は、以上のように、上記いずれかに記載のパララックスバリア素子と、第1の画像を表示する第1画素部および第2の画像を表示する第2画素部を有する画像表示手段とを備えているので、専用の眼鏡を必要としない3次元画像と、明るく表示品位の良好な2次元画像との双方を表示することができるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について図1ないし図6に基づいて説明すると以下の通りである。本実施の形態では、表示装置として液晶表示装置を例に挙げて説明する。図1は、本実施の形態に係る液晶表示装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態の液晶表示装置(表示装置)30は、液晶パネル(パララックスバリア素子)10と、画像表示素子(画像表示手段)20と、バックライト(図示せず)とを備えており、これら各部材は、液晶パネル10、画像表示素子20、バックライトの順に配置されている。すなわち、液晶パネル10は、画像表示素子20よりも前面側(液晶表示装置30を鑑賞する鑑賞者側)に配置されている。従って、バックライトから照射された光は、画像表示素子20を透過した後に、液晶パネル10を透過するようになっている。また、液晶パネル10および画像表示素子20は、各々の最大面が平行になるように配置されている。なお、本実施の形態における画像とは、いわゆる映像の意味も含む。
液晶パネル10は、互いに対向して配置された一対の基板1・2(以下、対向電極基板1・透明電極基板2とも称する)を備え、これら一対の基板1・2の外側、すなわちこれら両基板1・2の対向面とは反対側の面に偏光板3・4がそれぞれ設けられている。また、液晶パネル10は、上記一対の基板1・2間に電圧を印加することにより光学変調する液晶材料(媒質;以下、液晶分子とも称する)からなる液晶層(媒質層)11を挟持した構成を有している。
上述のように、一対の基板1・2は、共に透光性を有する透明電極基板2および対向電極基板1からなっている。図2は、透明電極基板2の概略構成を示す断面図である。図2に示すように、透明電極基板2は、ガラス等からなる透明基板15上に、第1透光膜14と第2透光膜(透光膜)13と透明電極12とがこの順で形成されたものである。また、対向電極基板1は、ガラス基板上に共通電極(図示せず)が形成されたものである。なお、図1や後述する図5および図6では、説明の便宜上、透明電極12が透明電極基板2上に設けられているように記載しているが、図2に示すように、透明電極12は透明電極基板2を構成する部材である。
これら透明電極基板2および対向電極基板1は、各電極が設けられている面が対向するようにして配置されており、各電極間に電圧を印加するようになっている。各電極間に電圧を印加することによって、液晶層11には所定の方向(例えば、透明電極基板に対して略垂直方向)に向いた電界が発生する。これにより、液晶層11の液晶材料が光学変調するようになっている。なお、上記透明電極12は、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の電極材料からなっており、後述する画像表示素子20の各画素部のパターンに対応して、縞状にパターニングされている。なお、縞状とは、棒縞状(いわゆるストライプ状)のことである。
透明電極基板2の第1透光膜14は、透明基板15および第2透光膜13の密着力を高めるための膜であり、透明基板15および第2透光膜13の双方に対して密着性に優れた材質が用いられる。本実施の形態では、第1透光膜14としてSiO2が用いられている。
第2透光膜13は、透明電極基板2の透明基板15側から入射した光の透過率を、透明電極基板2全体にて一様にするための膜である。このため、第2透光膜13には、第1透光膜14や透明電極12に用いられる材質の屈折率よりも大きい屈折率を有する材質が用いられる。例えば、第1透光膜14にSiO2を用い、透明電極12にITOを用いる場合には、第2透光膜13は、屈折率が2以上の材質を用いて形成することが好ましく、このような材質としては例えば屈折率が2.3のTiO2や屈折率が2.0のSiNを挙げることができる。
なお、上記第2透光膜13は、所定の膜厚にて形成されていることが好ましい。透過率は、透明電極基板2の各膜そのものの光吸収性と、隣接する膜との干渉との影響を受けるため、第2透光膜13の膜厚を所定の値とすることによって、透過率を制御することが可能となる。すなわち、屈折率の異なる膜を積層すると光の干渉が起こり、各膜同士の界面を透過する光と反射する光との割合が変化する。この割合の変化は、各膜の屈折率および膜厚に依存するため、透明電極12の有無によらず透明電極基板2全体で透過率が一様となる所定の膜厚が存在する。従って、所定の膜厚とは、透明電極基板2全体で透過率が一様になる膜厚であり、第1透光膜14および透明電極12の屈折率や膜厚に応じて適宜設定することができる。なお、第2透光膜13を製膜する際に、温度や時間等の製膜条件を適宜変更することにより、所望の膜厚に製膜することができる。
図3および図4は、第2透光膜13の膜厚の変化に応じた、透明電極12が有る部分の透過率および無い部分の透過率の変化を示すグラフである。図3は第2透光膜13がTiO2膜である場合を示し、図4は第2透光膜13がSiN膜である場合を示している。また、図3および図4では、実線が透明電極12の有る部分の透過率変化を示し、破線が透明電極12の無い部分の透過率変化を示している。図3および図4に示すように、第2透光膜13の膜厚の変化に応じて、透明電極12が有る部分の透過率と無い部分の透過率とは変化する。このため、第2透光膜13は、透明電極12が有る部分と無い部分との透過率が同じか、影響の無い程度の差となる膜厚にて形成されていることが好ましい。
図3および図4は、一例として、屈折率が1.5のSiO2からなる第1透光膜14の膜厚を20nm(200Å)とし、屈折率が1.8のITOからなる透明電極12の膜厚を80nm(800Å)とした場合について示したものである。
この場合、TiO2からなる第2透光膜13の膜厚は、図3に示すように、10nm以上35nm以下の範囲内であることが好ましく、15nm以上30nm以下の範囲内であることがより好ましく、25nmであることが特に好ましい。
また、第2透光膜13がSiNからなる場合には、図4に示すように、第2透光膜13の膜厚は、60nm以上80nm以下の範囲内であることが好ましく、65nm以上75nm以下の範囲内であることがより好ましく、70nmであることが特に好ましい。
偏光板3・4は、透明電極基板2に設けられた偏光板4の光の透過軸方向と、対向電極基板1に設けられた偏光板3の光の透過軸方向とが直交するように配置されている。また、本実施の形態における液晶層11は、正の誘電率異方性を有する平行(ホモジニアス)配向モードの液晶材料からなっており、これら液晶材料は電圧無印加時にはλ/2のレタデーションを有している。このような液晶材料としては、ねじれネマチック配向の液晶分子を用いることが好ましい。
すなわち、電圧無印加時には、液晶分子は各基板1・2に対して略平行に配向しており、電圧が印加されると、印加電圧に応じて液晶分子が平行配向状態から傾斜するようになっている。従って、電圧無印加時には、透明電極基板2を透過して液晶層11に入射した光は、液晶材料のレタデーション(λ/2)によって90°旋回するため偏光板3を透過することができる。
一方、電圧印加時には、透明電極12の無い部分の液晶材料の配向状態は変化しないものの、透明電極12が有る部分の液晶材料は光学変調して透明電極基板2に対して略垂直方向に配向する。このため、透明電極12の無い部分の透明電極基板2を透過して液晶層11に入射した光は、電圧無印加時と同様に偏光板3を透過することができる。これに対して、透明電極12が有る部分の透明電極基板2を透過して液晶層11に入射した光は偏光板3を透過することができない。
従って、液晶パネル10は、電圧を印加することによって、光を透過する部分(以下、透過領域とも称する)111と、遮光する部分(以下、バリア遮光領域とも称する)112とを有することとなる。すなわち、液晶パネル10は、光シャッター機能を有することとなる。
なお、対向電極基板1の共通電極は、ITO等を用いて形成されている。この共通電極は、対向電極基板1上の全面に渡って形成されている。また、ガラス基板および共通電極の密着力を高めるために、ガラス基板および共通電極の間にSiO2からなる膜を形成してもよい。
また、上記透明電極基板2および対向電極基板1には、各対向面上に配向膜(図示せず)が形成されている。各配向膜は、所定の方向に配向処理されており、上記両電極間に電圧が印加されていない状態において、両基板1・2間に配された液晶層11の液晶分子を、基板1・2表面に対して略平行であって、偏光板3・4の透過軸方向に対して45°に配向させている。
画像表示素子20は、右目用画素部(第1画素部)101と左目用画素部(第2画素部)102とを有している。右目用画素部101とは、液晶表示装置30が3次元画像を表示する場合に、右目用の画像(第1の画像)を表示する画素部であり、左目用画素部102とは、液晶表示装置30が3次元画像を表示する場合に、左目用の画像(第2の画像)を表示する画素部である。従って、液晶表示装置30が3次元画像を表示する場合には、各画素部101・102は各目に対応した互いに異なる画像を表示する。これに対して、液晶表示装置30が2次元画像を表示する場合には、各画素部101・102は、右目用の画像や左目用の画像といった区別はなく、通常の2次元画像を表示するようになっている。
右目用画素部101および左目用画素部102は、公知の液晶表示装置に用いられる画素と同様の構成を有している。これら右目用画素部101と左目用画素部102とは、縞状に交互に配置されている。また、各画素部101・102は、上記透明電極12のパターンと対応するように配置されている。具体的には、各画素部101・102の境界面が上記パターニングされた各透明電極12の中心部分に相当する位置となるように配置されている。すなわち、透明電極12、右目用画素部101および左目用画素部102は、各透明電極12の間隔と、各右目用画素部101の間隔と、各左目用画素部102の間隔とが同じになるように配置されている。これにより、液晶表示装置30が3次元画像を表示する場合には、液晶パネル10の光シャッター機能によって、鑑賞者の右目には右目用画像が到達し、左目には左目用画像が到達するようになっている。
なお、本実施の形態では、透明電極12、右目用画素部101および左目用画素部102は、各々の間隔が同じになるように配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各透明電極12が、各右目用画素部101の間隔および各左目用画素部102の間隔と比べて小さい間隔で配置されていてもよい。すなわち、各透明電極12は、各右目用画素部101の間隔および各左目用画素部102の間隔と同じ間隔か、または小さい間隔にて配置されることとなる。これは、液晶表示装置30の仕様により適宜変更すればよく、輝度を優先させる場合には、各右目用画素部101の間隔および各左目用画素部102の間隔と同じ間隔で透明電極12を配置することが好ましく、3次元画像の見栄えを優先させる場合には、各右目用画素部101の間隔および各左目用画素部102の間隔よりも小さい間隔で透明電極12を配置することが好ましい。
次に、上記構成を有する液晶表示装置30が3次元画像および2次元画像を表示する表示原理について具体的に説明する。
まず、液晶表示装置30が3次元画像を表示する場合の表示原理について説明する。図5は、3次元画像を表示する場合における液晶表示装置30の概略構成を示す断面図である。液晶表示装置30が3次元画像を表示する場合には、透明電極12および共通電極間に電圧が印加される。これにより、図5に示すように、透明電極12と共通電極との間に存在する液晶分子は、各基板1・2に対して略垂直方向に配向する。一方、透明電極12の無い部分と共通電極との間には電圧が印加されないので、この部分に存在する液晶分子の配向状態は変化せず、平行配向であってλ/2のレタデーションを有する状態が維持されている。
バックライトから照射された光は、偏光板4によって直線偏光化されて透明電極基板3に入射する。透明電極基板2の透明電極12の無い部分においては、透明電極基板2に入射した光は、第2透光膜13を透過した後に液晶層11に入射する。液晶層11に入射した光は、液晶分子のレタデーション(λ/2)によって偏光方向が90°旋回した偏光となり、液晶層11および対向電極基板1を透過する。
なお、図5に示すXおよびYは、偏光面の方向を表しており、これらXおよびYはそれぞれの偏光面が略直交することを表している。また、透明電極基板2および対向電極基板1の部分にそれぞれ記載された偏光面を表す記号は、各基板1・2における各領域111・112を透過する光の偏光面を表している。従って、透明電極12の無い部分を透過する光の偏光面は、液晶層11を透過する前の光の偏光面と液晶層11を透過した後の光の偏光面とが略直交した状態になっている。
また、図5に示すWおよびZは、偏光板3および4の透過軸方向を表しており、これらWおよびZはそれぞれの透過軸が略直交することを表している。従って、偏光板3・4は、各透過軸方向が略直交するように配置されているので、液晶層11を透過した際に偏光方向が90°旋回した偏光は、偏光板4を透過することができる。すなわち、各基板1・2間における透明電極12の無い部分(透過領域111)は明状態となる。
一方、透明電極基板2の透明電極12の有る部分においては、透明電極基板2に入射した光は、第2透光膜13および透明電極12を透過した後に液晶層11に入射する。この部分の液晶分子は、上述のように、電圧印加によって各基板1・2に対して略垂直方向に配向しているため、屈折率異方性を有していない。従って、液晶層11に入射した光は、偏光方向が変化することなく、偏光状態を保持したまま液晶層11および対向電極基板1を透過し、偏光板3に入射する。
上述のように、偏光板3・4は、各透過軸方向が略直交するように配置されているので、透明電極12を透過した光は、偏光板3を透過することができない。すなわち、各基板1・2間における透明電極12が有る部分(バリア遮光領域112)は暗(バリア)状態となる。
従って、透明電極12および共通電極間に電圧を印加した場合には、液晶層11が明状態と暗状態との繰り返しになるため、パララックスバリアを形成することができる。これにより、液晶表示装置30は、良好な3次元画像を表示することができる。
次に、液晶表示装置30が2次元画像を表示する場合の表示原理について説明する。図6は、2次元画像を表示する場合における液晶表示装置30の概略構成を示す断面図である。液晶表示装置30が2次元画像を表示する場合には、透明電極12と共通電極との間には電圧は印加されない。この場合、図6に示すように、液晶層11の全ての部分における液晶分子は、平行配向であってλ/2のレタデーションを有する状態になっている。
バックライトから照射された光は、偏光板4によって直線偏光化され、透明電極基板2に入射する。透明電極基板2を透過した光は、透明電極12が有る部分を透過した光および無い部分を透過した光の双方とも、液晶層11を透過する際に液晶分子のレタデーション(λ/2)によって偏光方向が90°旋回された偏光となる。すなわち、光が透過する部分における透明電極12の有無に関わらず、全ての光が90°旋回した偏光となる。
また、図6に示すように、偏光板3・4は、各透過軸方向が互いに略直行するように配置されている。このため、液晶層11を透過することによって90°旋回した偏光は偏光板3を透過することができる。すなわち、透明電極12の有無に関わらず各基板1・2間の全ての領域(111・112共に)において明状態となる。
なお、透明電極12の下には、透明電極12の屈折率よりも高い屈折率を有する第2透光膜13が設けられている。このため、透明電極12が有る部分の透過率と無い部分の透過率とを同じすることが可能となり、透明電極基板2を透過する光の透過率を基板全体で一様にすることができる。従って、液晶表示装置30は、明るい2次元画像を表示することができると共に、モアレの発生しない良好な2次元画像を表示することができる。
また、液晶表示装置30は、透明電極12および共通電極間に供給される電気信号に応じて、各電極間への電圧印加/電圧無印加が制御される。これにより、パララックスバリアの形成/消滅が制御される。従って、液晶表示装置30は、この電気信号に応じて2次元画像と3次元画像とを切り換えて表示することができるようになっている。
以上により、本発明に係る液晶表示装置30は、専用の眼鏡を必要としない3次元画像を表示することができると共に、明るく表示品位の良好な2次元画像を表示することができる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
ガラス基板上に、膜厚が20nmのSiO2膜を形成し、このSiO2膜上に膜厚が30nmのTiO2膜を形成した。次いで、TiO2膜上に膜厚が80nmのITO膜をストライプ状にパターニングして透明電極基板を作製した。そして、この透明電極基板を用いて液晶パネルを作製した。さらに、この液晶パネルを、右目用画素部と左目用画素部とが交互に配置した画像表示素子の前面側(鑑賞者が液晶表示装置を鑑賞する場合の鑑賞者側)に配置して液晶表示装置を作製した。
この液晶表示装置を用いて2次元画像および3次元画像を表示させて鑑賞し、モアレやクロストーク(立体映像の二重像)の発生を調べた。その結果を表1に示す。表1において、「○」はモアレやクロストークが発生しなかったことを示し、「×」はこれらが発生したことを示す。本実施例では、表1に示すように、モアレやクロストークは発生せず、2次元画像および3次元画像共に良好な画像を表示することができた。
〔実施例2〕
ガラス基板上に、膜厚が20nmのSiO2膜を形成し、このSiO2膜上に膜厚が70nmのSiN膜を形成した。次いで、SiN膜上に膜厚が80nmのITO膜をストライプ状にパターニングして透明電極基板を作製した。そして、この透明電極基板を用いて液晶パネルを作製した。さらに、この液晶パネルを、右目用画素部と左目用画素部とが交互に配置した画像表示素子の前面側に配置して液晶表示装置を作製した。
この液晶表示装置を用いて2次元画像および3次元画像を表示させて鑑賞し、モアレやクロストークの発生を調べた。その結果を表1に示す。表1に示すように、モアレやクロストークは発生せず、2次元画像および3次元画像共に良好な画像を表示することができた。
〔比較例1〕
ガラス基板上に、膜厚が20nmのSiO2膜を形成し、このSiO2膜上に膜厚が30nmのTiO2膜を形成した。次いで、TiO2膜上に膜厚が80nmのITO膜をストライプ状にパターニングして透明電極基板を作製した。そして、この透明電極基板を用いて液晶パネルを作製した。さらに、この液晶パネルを、右目用画素部と左目用画素部とが交互に配置した画像表示素子の背面側(鑑賞者が液晶表示装置を鑑賞する場合の鑑賞者と反対側)に配置して液晶表示装置を作製した。
この表示装置を用いて2次元画像および3次元画像を表示させて鑑賞し、モアレやクロストークの発生を調べた。その結果を表1に示す。表1に示すように、2次元画像は良好に表示することができるものの、3次元画像表示時には、クロストークが発生して良好な3次元画像を表示することができなかった。
〔比較例2〕
ガラス基板上に、膜厚が20nmのSiO2膜を形成し、このSiO2膜上に膜厚が70nmのSiN膜を形成した。次いで、SiN膜上に膜厚が80nmのITO膜をストライプ状にパターニングして透明電極基板を作製した。そして、上記比較例1と同様にして液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置を用いて2次元画像および3次元画像を表示させて鑑賞し、モアレやクロストークの発生を調べた。その結果を表1に示す。表1に示すように、2次元画像は良好に表示することができるものの、3次元画像表示時には、クロストークが発生して良好な3次元画像を表示することができなかった。
〔比較例3〕
ガラス基板上に、膜厚が20nmのSiO2膜を形成し、このSiO2膜上に膜厚が80nmのITO膜をストライプ状にパターニングして透明電極基板を作製した。この場合、SiO2膜とITO膜との間に第2透光膜に相当する膜が形成されていない。すなわち、透過率は、図3および図4における膜厚が0nmの位置で表される。ITO膜の有無によって約3%の透過率差が生じていることが分かる。そして、この透明電極基板を用いて液晶パネルを作製した。さらに、この液晶パネルを、右目用画素部と左目用画素部とが交互に配置した画像表示素子の前面側に配置して液晶表示装置を作製した。
この液晶表示装置を用いて2次元画像および3次元画像を表示させて鑑賞し、モアレやクロストークの発生を調べた。その結果を表1に示す。表1に示すように、3次元画像は良好に表示することができるものの、2次元画像表示時には、モアレが発生して良好な2次元画像を表示することができなかった。
〔比較例4〕
上記比較例3で作製した液晶パネルを、画像表示素子の背面側に配置して液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置を用いて2次元画像および3次元画像を表示させて鑑賞し、モアレやクロストークの発生を調べた。その結果を表1に示す。表1に示すように、2次元画像は良好に表示することができるものの、3次元画像表示時に、クロストークが発生して良好な3次元画像を表示することができなかった。
なお、本発明は、透明電極がそれぞれ形成された一対の透明電極基板と、前記一対の透明電極基板を挟む一対の偏光板とを有し、前記一対の透明電極基板の間隙には、左目用画像の光および右目用画像の光をそれぞれ分離するバリア遮光部と、前記左目用画像の光および前記右目用画像の光をそれぞれ透過させる透過部とが形成されているパララックスバリア素子であって、前記透明電極基板は、膜上から、ITO+屈折率n≧2の透明膜+SiO2+ガラスで構成される基板であるパララックスバリア素子と表現することもできる。
また、前記透明膜は、SiNまたはTiO2であることが好ましく、前記液晶層は、ねじれネマチィック配向液晶層であることが好ましい。
また、本発明は、上記パララックスバリア素子と、左目用画素部および右目用画素部を有する映像表示素子とを備える立体映像表示装置と表現することもできる。この場合、前記パララックスバリア素子および前記映像表示素子よりも観察者から離れて配置された光源をさらに備えていることが好ましく、前記液晶層は、一対の前記透明電極に与えられる電気信号に従って遮光/透過が切り換えられることにより、3次元画像と2次元画像とが切り換えて表示されることが好ましい。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。