JP4273965B2 - 抗血栓性組成物およびそれを有する医療用具 - Google Patents
抗血栓性組成物およびそれを有する医療用具 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4273965B2 JP4273965B2 JP2003501386A JP2003501386A JP4273965B2 JP 4273965 B2 JP4273965 B2 JP 4273965B2 JP 2003501386 A JP2003501386 A JP 2003501386A JP 2003501386 A JP2003501386 A JP 2003501386A JP 4273965 B2 JP4273965 B2 JP 4273965B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- heparin
- ammonium salt
- carbon atoms
- salt
- aliphatic groups
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61L—METHODS OR APPARATUS FOR STERILISING MATERIALS OR OBJECTS IN GENERAL; DISINFECTION, STERILISATION OR DEODORISATION OF AIR; CHEMICAL ASPECTS OF BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES; MATERIALS FOR BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES
- A61L33/00—Antithrombogenic treatment of surgical articles, e.g. sutures, catheters, prostheses, or of articles for the manipulation or conditioning of blood; Materials for such treatment
- A61L33/0005—Use of materials characterised by their function or physical properties
- A61L33/0011—Anticoagulant, e.g. heparin, platelet aggregation inhibitor, fibrinolytic agent, other than enzymes, attached to the substrate
-
- B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
- B29—WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
- B29K—INDEXING SCHEME ASSOCIATED WITH SUBCLASSES B29B, B29C OR B29D, RELATING TO MOULDING MATERIALS OR TO MATERIALS FOR MOULDS, REINFORCEMENTS, FILLERS OR PREFORMED PARTS, e.g. INSERTS
- B29K2067/00—Use of polyesters or derivatives thereof, as moulding material
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Epidemiology (AREA)
- Materials Engineering (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Hematology (AREA)
- Surgery (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Public Health (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Materials For Medical Uses (AREA)
Description
本発明は、抗血栓性組成物に関する。本発明の抗血栓性組成物は、血液に接触して使用される医療用具の血液接触表面に塗布することにより、医療用具本来の機能を損なうことなく優れた抗血栓性を医療用具に付与することができる。
より詳細には、本発明は、▲1▼医療用具に、長期にわたる優れた抗血栓性と抗菌性とを付与することができる抗血栓性組成物、ならびに▲2▼血液が極めて速く流れかつその動きが激しい条件下での使用が意図される医療用具に、長期にわたる優れた抗血栓性を付与することができる抗血栓性組成物に関する。
また、本発明は、上記抗血栓性組成物を有する医療用具に関する。
背景技術
従来から、医療用具(例えば、血液用回路チューブ、サンプリングモニター用チューブ、大動脈内バルーンポンプ、人工心臓用血液ポンプ、血管造影用カテーテル、人工肺、静脈リザーバー、人工腎臓、動脈フィルター等)の血液に接触する表面に、血液が凝固しないよう抗血栓性を付与する技術が開発、実用化されてきた。医療用具の抗血栓性向上のために主に検討されてきたのは、抗凝血作用を有するヘパリンまたはヘパリン誘導体を医療用具の血液接触表面上に何らかの方法で固定することにより、抗血栓性を付与する手法である。
ヘパリンまたはヘパリン誘導体を医療用具の血液接触表面に導入する方法としては、ヘパリンまたはヘパリン誘導体に種々の官能基を導入し、医療用具の血液接触表面の基材上に導入された官能基との共有結合により固定化させる方法が挙げられる。このような方法として、例えば、特開平4−197264には、ヘパリンのアミノ基を、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの一方の末端グリシジル基と共有結合させた後、他方の末端グリシジル基を、基材上に導入されたアミノ基と共有結合させる方法が開示されている。
また、特開昭58−147404には、ヘパリンを低分子化して生じる遊離の末端アルデヒド基と医療用具の血液接触表面の基材上のアミノ基とを共有結合させた後、当該共有結合を還元反応にて安定化させる方法が開示されている。
しかし、これらの方法では、医療用具の基材上にヘパリンまたはヘパリン誘導体と反応し得る基を導入する工程を要するという問題、およびヘパリンまたはヘパリン誘導体が基材に強く結合しすぎてその自由度が失われ、抗凝血活性を十分に発揮することができないという問題があった。さらに、これらの方法は多段階の工程を必要とするので、医療用具のコストが非常に高くなり、医療費が高騰している現状では大きな問題となる。
一方、医療用具に抗血栓性を付与するための別の方法としては、例えば、ヘパリンまたはヘパリン誘導体のもつ負電荷(スルホン酸基やアミノスルホン酸基)にアンモニウム塩やホスホニウム塩等の有機カチオン化合物を結合させて、水に不溶かつ有機溶媒に可溶な複合体を形成し、これを医療用具にコーティングする手法も提案されている。例えば、特公昭48−13341には、ヘパリンとカチオン性界面活性剤とを反応させて水に不溶かつ有機溶剤に可溶なヘパリン複合体を調製し、これを単独でまたはプラスチックとともに有機溶媒に溶解させた溶液を医療用具の血液接触表面に塗布し、次いで乾燥することによって、抗血栓性を付与する方法が開示されている。
上記特公昭48−13341において、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド等のアンモニウム塩が挙げられている。しかし、これらのアンモニウム塩とヘパリンとの複合体は、血液中に曝した場合に複合体が早期に溶出し、短時間で抗血栓性が消失してしまうことが判明している。
特公昭48−13341にはまた、この問題の解決手段として、ベンザルコニウム塩(1本の長鎖アルキル基、2個のメチル基および1個のベンジル基を有するアンモニウム塩)の長鎖アルキル基の炭素数が18であるベンジルジメチルステアリルアンモニウム塩とヘパリンとの複合体(本願比較例6に対応)も開示されており、この複合体は、従来の複合体において短時間で抗血栓性が消失してしまうという問題をある程度までは改善し得るものであった。しかし、上記複合体を用いても、十分に長期間にわたって優れた抗血栓性を付与するという課題は解決できなかった。
また、J.Biomater.Sci.Polymer Edn,vol 6には、医療用具に長期間にわたる優れた抗血栓性を付与することを目的として、ヘパリンとジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミドとのイオン性複合体(本願比較例7に対応)が記載されている。このイオン複合体を含む組成物は、ヘパリンに結合した有機カチオン化合物(ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド)の疎水性が非常に高いために、ヘパリンを医療用具の表面に長時間保持することができる一方、ヘパリンの抗血栓性が著しく抑えられ、医療用具にコーティングした場合に、血液の滞留部や段差等に血栓が生じやすいという問題を有していた。
これまで検討されてきたヘパリン−有機カチオン化合物のイオン性複合体における問題は、親水性が高すぎる有機カチオン化合物(例えば、ベンザルコニウム塩等の水に可溶性のアンモニウム塩)を用いた場合にはヘパリンが短時間で溶出するので長時間にわたる抗血栓性の維持ができないことであり、一方、疎水性が高すぎる有機カチオン化合物(例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド)を用いた場合にはヘパリンの抗凝血活性が抑制されて十分な性能を発揮できないことであった。
本発明者らは、これらの問題が現在まで解決できなかった原因は、従来のイオン性複合体に、ヘパリンまたはヘパリン誘導体と1種類のみのアンモニウム塩とを用いたことであったと考えた。ヘパリンまたはヘパリン誘導体と1種類のみのアンモニウム塩とのイオン性複合体は、アンモニウム塩の4つの脂肪族基(例えば、アルキル基)の炭素の総数およびその構造が単一であるので、このイオン性複合体の性質が親水性または疎水性のどちらかに偏りすぎてしまう。その結果、ヘパリンまたはヘパリン誘導体が短時間で血液中に溶出してしまうか、あるいはヘパリンまたはヘパリン誘導体の溶出が著しく抑えられてしまい、いずれの場合にも期待された抗血栓性を発揮できないのである。すなわち、医療用具において優れた抗血栓性を発揮するためには、イオン性複合体が親水性と疎水性との適度なバランスを有することが必要とされるのである。
このような課題を解決するために、本発明者らは、4つの脂肪族アルキル基の炭素の総数が異なる2種類のアンモニウム塩とヘパリンまたはヘパリン誘導体とを結合させたイオン性複合体とすることによって、イオン性複合体の親水性と疎水性とのバランスを調整し、医療用具において必要かつ十分な抗血栓性を長期間にわたり維持することを試みた。具体的には、本発明者らは、少なくとも2つのアンモニウム塩(ジメチルジドデシルアンモニウム塩と、炭素原子総数が30〜38であり炭素数10以上のアルキル基を少なくとも2つ有するアンモニウム塩)とヘパリンまたはヘパリン誘導体とのイオン性複合体(本願比較例4および5に対応)を開発し、これが上記の問題点を解決できることを見出した[特許第3228409号(特開平11−164882)]。
上記特許第3228409号記載のイオン性複合体を含むコーティング用組成物は、従来のヘパリンコーティング材と比較すると、血液の流速がそれほど速くなくかつその動きが穏やかな条件下で使用される医療用具(カテーテル等)にコーティングした場合には極めて高い抗血栓性を発揮する。しかし、上記イオン性複合体は、近年使用が増加している、長期間にわたり血液と接触して使用され、血液が極めて速く流れかつその動きが激しい条件下での使用が意図される医療用具(例えば、埋め込み型人工心臓や体外設置の補助人工心臓等の人工臓器)に用いるには、未だ抗血栓性が十分ではないことが判明した。すなわち、上記イオン性複合体を含む組成物を用いたコーティングは、血液の速い流れと激しい動きに曝された場合に、ヘパリンが血液中に速やかに流失してしまうので、長期間にわたる優れた抗血栓性を維持することが困難であった。
従って、上記のような苛酷な条件下での使用が意図される医療用具においても、長期にわたる優れた抗血栓性を付与できるような抗血栓性組成物が必要とされている。このような医療用具では、血液の流れが速いために血栓が基本的に発生しにくい環境にあることから、抗血栓性自体は、本発明者らが上記特許第3228409号に示した材料より低くても良いが、抗血栓性が従来よりも長期間にわたって維持されることが必要である。
また、これまでに述べたような医療用具では、使用中の菌感染による種々の合併症も問題となる。従って、抗血栓性に加えて抗菌性を有する抗血栓性組成物もまた必要とされている。
発明の開示
本発明の目的は、医療用具に、長期にわたる優れた抗血栓性を付与することができる抗血栓性組成物を提供することである。
本発明の1つの目的は、医療用具に、長期にわたる優れた抗血栓性と抗菌性とを付与することができる抗血栓性組成物を提供することである。
さらに、本発明のもう1つの目的は、血液が極めて速く流れかつその動きが激しい条件下での使用が意図される医療用具に、長期にわたる優れた抗血栓性を付与することができる抗血栓性組成物を提供することである。
本発明者らは、上記目的達成のために、有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とから形成されるイオン性複合体を含む抗血栓性組成物であって、当該有機カチオン混合物が、少なくとも2種のアンモニウム塩の混合物である抗血栓性組成物が有用であることを見出した。具体的には、本発明者らは、上記抗血栓性組成物において、有機カチオン混合物として、(a)水に可溶性のアンモニウム塩と(b)水に不溶性のアンモニウム塩との混合物を用いることにより、医療用具に長期にわたる優れた抗血栓性に加えて抗菌性を付与できることを見出した。また、本発明者らは、上記抗血栓性組成物において、有機カチオン混合物として、下記で詳述する特定のアンモニウム塩(c)および(d)の混合物を用いることにより、血液が極めて速く流れかつその動きが激しい条件下での使用が意図される医療用具に、長期にわたる優れた抗血栓性を付与できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とから形成されるイオン性複合体を含む抗血栓性組成物であって、
当該有機カチオン混合物が、少なくとも2種のアンモニウム塩の混合物であることを特徴とする、抗血栓性組成物。
[ただし、上記有機カチオン混合物が、ジドデシルジメチルアンモニウム塩と、4つの脂肪族基を有するアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基の炭素原子の総数が30〜38でありかつ4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数10以上のアルキル基であるアンモニウム塩から選択される少なくとも1種のアンモニウム塩との混合物である場合を除く。]
詳細には、本発明は以下の▲1▼および▲2▼である。
▲1▼有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とから形成されるイオン性複合体を含む抗血栓性組成物であって、
当該有機カチオン混合物が、少なくとも1種の(a)水に可溶性のアンモニウム塩と、少なくとも1種の(b)水に不溶性のアンモニウム塩との混合物である、抗血栓性組成物、
▲2▼有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とから形成されるイオン性複合体を含む抗血栓性組成物であって、
当該有機カチオン混合物が、以下に示す少なくとも1種のアンモニウム塩(c)と少なくとも1種のアンモニウム塩(d)との混合物である、抗血栓性組成物。
(c)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基の炭素原子の総数が40以上であり、かつ少なくとも2つの脂肪族基がそれぞれ炭素数12以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩、
(d)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数3以下の脂肪族アルキル基であり、かつ残り2つがそれぞれ炭素数10〜14の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩。
また、本発明は、上記抗血栓性組成物が少なくとも血液接触面の一部にコーティングされている医療用具である。
以下の説明において、本発明▲1▼または本発明▲2▼として言及されている場合には、各々の発明に関する事項を表し、格別言及のない場合には、本発明▲1▼および本発明▲2▼についての共通事項を表す。
本発明において用いられるアンモニウム塩は、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンとの塩であり、好ましくはアンモニウムクロリド、アンモニウムブロミドである。
本発明において、「抗血栓性」とは、特に、血液が医療用具等の表面に接触した場合に凝固しにくく、血栓を形成しにくい性質を意味する。
本発明における「イオン性複合体を含む抗血栓性組成物」および「抗血栓性組成物」は、上記有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とから形成されるイオン性複合体の他に、上記以外の有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とから形成されるイオン性複合体を含んでいてもよく、その他にも抗菌性物質などの生理活性物質や、バインダーとなる高分子物質や、その他の添加剤を上記イオン性複合体の性質に実質的に影響を及ぼさない範囲で含んでいてもよい。
本発明▲1▼の抗血栓性組成物は、少なくとも1種の(a)水に可溶性のアンモニウム塩と、少なくとも1種の(b)水に不溶性のアンモニウム塩との混合物である有機カチオン混合物を、ヘパリンまたはヘパリン誘導体と結合させて得られるイオン性複合体を含むことを特徴とする。このような抗血栓性組成物は、(b)水に不溶性のアンモニウム塩が、ヘパリンまたはヘパリン誘導体を医療用具の血液接触表面に強く保持する一方で、(a)水に可溶性のアンモニウム塩が、イオン性複合体が疎水性に偏りすぎるのを防ぎヘパリンまたはヘパリン誘導体の放出速度を適度に調節するので、医療用具に長期間にわたる優れた抗血栓性を付与することができる。
また、本発明▲1▼の抗血栓性組成物は、(a)水に可溶性のアンモニウム塩が血液中に徐放されてその抗菌性を発揮するので、医療用具における菌の付着や繁殖を防止し、菌感染による種々の合併症を防止することができる。
ここで、本発明▲1▼における「抗菌性」とは、菌の発生、生育および増殖を抑制する(好ましくは減少させる)ことを意味する。
本発明▲1▼で用いられる有機カチオン混合物に含まれる、(a)水に可溶性のアンモニウム塩としては、ベンゼトニウム塩およびベンザルコニウム塩が挙げられ、例えば、デシルベンジルジメチルアンモニウム塩、ドデシルベンジルジメチルアンモニウム塩、テトラデシルベンジルジメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウム塩、オクタデシルベンジルジメチルアンモニウム塩、C8−C18アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩混合物の水溶液(オスパン等の商品名で市販されている消毒用水溶液)およびベンゼトニウム塩等が好ましく、より好ましくはドデシルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンゼトニウムクロリドおよびテトラデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリドである。
上記(a)水に可溶性のアンモニウム塩の使用量は、有機カチオン混合物全重量[すなわち、(a)水に可溶性のアンモニウム塩と(b)水に不溶性のアンモニウム塩との重量の合計]に対して、通常5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜30重量%の割合である。有機カチオン混合物中で(a)水に可溶性のアンモニウム塩が70重量%を越えると、医療用具の使用初期に大量に溶出してしまうので好ましくない。また、3重量%未満では、イオン性複合体が疎水性に偏りすぎてヘパリンを放出しにくくなるので医療用具の抗血栓性が低くなり、しかも医療用具に十分な抗菌性を付与することもできないので、好ましくない。
本発明▲1▼で用いられる有機カチオン混合物中の(b)水に不溶性のアンモニウム塩としては、4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩が挙げられ、具体的には、該4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数12以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩、および該4つの脂肪族基のうち3つがそれぞれ炭素数10以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩が好ましい。
ここで、本発明▲1▼における「水に不溶性」とは、体内温度に近い40℃の純水中1%濃度のアンモニウム塩を含む混合物を撹拌した時に、透明な均一溶液にならず、該アンモニウム塩がオイル状になって水と分離するかまたは分散した白濁状態のままであることを意味する。
本発明▲1▼における、「4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数12以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩」としては、例えばジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩、ジオクタデシルジメチルアンモニウム塩、ジエイコサニルジメチルアンモニウム塩、ジメチルジパルミチルアンモニウム塩、ジドコサニルジメチルアンモニウム塩、ジテトラエイコサニルジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、好ましくはジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩、ジメチルジパルミチルアンモニウム塩およびジオクタデシルジメチルアンモニウム塩であり、より好ましくはジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミドである。
本発明▲1▼における、上記「4つの脂肪族基のうち3つがそれぞれ炭素数10以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩」としては、例えば、トリデシルメチルアンモニウム塩、トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリテトラデシルメチルアンモニウム塩、トリヘキサデシルメチルアンモニウム塩、トリオクタデシルアンモニウム塩、トリエイコサニルメチルアンモニウム塩等が挙げられ、好ましくはトリドデシルメチルアンモニウム塩、トリヘキサデシルメチルアンモニウム塩である。
本発明▲2▼の抗血栓性組成物は、少なくとも1種の(c)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基の炭素原子の総数が40以上であり、かつ少なくとも2つの脂肪族基がそれぞれ炭素数12以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩と、少なくとも1種の(d)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数3以下の脂肪族アルキル基であり、かつ残り2つがそれぞれ炭素数10〜14の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩との混合物である有機カチオン混合物を、ヘパリンまたはヘパリン誘導体と結合させたイオン性複合体を含むことを特徴とする。このようなイオン性複合体は、上記(c)のアンモニウム塩が従来よりも高い疎水性を有し、ヘパリンまたはヘパリン誘導体を医療用具表面により強く保持する一方、上記(d)のアンモニウム塩が、イオン性複合体が疎水性に偏りすぎるのを防ぎヘパリンまたはヘパリン誘導体の放出速度を適度に調節する。従って、本発明▲2▼の抗血栓性組成物は、血液の流れが速くかつその動きが激しい条件下での使用が意図される医療用具(例えば、人工心臓等の人工臓器)にコーティングした場合でも、長期間にわたる優れた抗血栓性を維持することができる。
本発明▲2▼の抗血栓性組成物において、「(c)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基の炭素原子の総数が40以上であり、かつ少なくとも2つの脂肪族基がそれぞれ炭素数12以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩」としては、例えば、ジエイコサニルジメチルアンモニウム塩、ジエイコサニルジエチルアンモニウム塩、ジドコサニルジメチルアンモニウム塩、ジテトラエイコサニルジメチルアンモニウム塩、トリテトラデシルメチルアンモニウム塩、トリヘキサデシルメチルアンモニウム塩等が挙げられ、好ましくはジエイコサニルジメチルアンモニウムブロミド、ジエイコサニルジエチルアンモニウムブロミドおよびジドコサニルジメチルアンモニウムブロミドである。
本発明▲2▼の抗血栓性組成物において、「(d)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数3以下の脂肪族アルキル基であり、かつ残り2つがそれぞれ炭素数10〜14の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩」としては、例えば、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジエチルアンモニウム塩、ジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジエチルアンモニウム塩、ジドデシルジプロピルアンモニウム塩、ジデシルジプロピルアンモニウム塩等が挙げられ、好ましくはジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩およびジテトラデシルジメチルアンモニウム塩であり、より好ましくはジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジデシルジメチルアンモニウムブロミドおよびジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミドである。
本発明▲2▼において、上記(c)と(d)との重量比は、好ましくは1:1〜10:1であり、より好ましくは1:1〜5:1である。
本発明で用いられるイオン性複合体には、ヘパリンまたはヘパリン誘導体を用いることができる。ヘパリン誘導体としては、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカリウム、ヘパリンリチウム、ヘパリンカルシウム、ヘパリン亜鉛、低分子ヘパリン、エポキシ化ヘパリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、医療用具基材の材料としては、通常使用される全ての材料を用いることができ、例えば、樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、架橋部を有するポリジメチルシロキサン等のシリコーンゴム、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ポリスチレン、ABS樹脂およびこれらの樹脂の混合物等)、金属(例えば、ステンレス、チタニウム、アルミニウム等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の抗血栓性組成物は、例えば以下の方法で医療用具の血液接触表面に付与されるが、これらの方法に限定されない。
(方法1)
まず、有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とを溶媒中で攪拌して混合し、イオン性複合体を含む沈殿物を得る。この沈殿物を回収、洗浄して、未反応のヘパリンまたはヘパリン誘導体およびアンモニウム塩を除去し、次いで残留物を公知方法により精製して、イオン性複合体を得る。このイオン性複合体を有機溶媒に溶解して、溶液を得る。この溶液を、後述の方法により医療用具の血液接触表面に塗布し、次いで溶媒を乾燥除去すると、該表面に最適化された抗血栓性を付与することができる。
本方法において、医療用具の表面に上記溶液を塗布する方法としては、浸漬法、スプレーを吹き付ける方法、刷毛等で塗布する方法等が挙げられるが、これらの方法に限定されない。
本方法で用いられる有機溶媒としては、イオン性複合体の抗血栓性を損なわず、かつ、医療用具の基材表面にできる限り損傷を与えないものであれば特に限定されないが、一般的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン(以下、THFという)、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
(方法2)
あるいは、本発明の抗血栓性組成物は、有機カチオン混合物を適当な有機溶媒に溶解した溶液を医療用具の血液接触表面に塗布し、有機溶媒を乾燥除去し、次いでヘパリンまたはヘパリン誘導体の水溶液を塗布して、血液接触表面上でイオン性複合体を含む抗血栓性組成物を形成させた後、水を乾燥除去する方法によっても付与することができる。
本方法において、有機溶媒は、方法1で上述した有機溶媒と同じものを用いることができる。
実施例
以下に、本発明を実施形態に基づいて説明する。
(実施例1)
ドデシルベンジルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)20重量部およびジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)60重量部をメタノール150重量部に溶解した。完全に溶解したことを確認した後、この有機アンモニウムのメタノール溶液に、水を、[メタノール溶液:水]=[30:70(重量比)]の割合となるまで添加した。この際、溶液中にアンモニウム塩が一部析出したが、溶液の温度を50℃に上げることにより均一溶液になった。
ヘパリン30重量部をイオン交換水150重量部に溶解した。続いて、このヘパリン水溶液に、メタノールを、[ヘパリン水溶液:メタノール]=[70:30(重量比)]の割合となるまで添加した。この際、溶液中にヘパリンが一部析出して溶液が懸濁したが、70℃に温度を上げることにより均一溶液になった。
得られたヘパリン溶液を攪拌しながら、これに上記アンモニウム塩溶液を滴下した。反応物は溶液中ですぐに沈殿した。沈殿物を回収し、十分に洗浄し、未反応のヘパリンおよびアンモニウム塩を除去した。残留物を遠心分離して水分を除去し、次いで凍結乾燥して、本発明で用いられるイオン性複合体(実施例1)を得た。
(実施例2)
ベンゼトニウムクロリド(アルドリッチ製)15重量部およびジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)72重量部をメタノール150重量部に溶解し、実施例1と同様の方法により、本発明で用いられるイオン性複合体(実施例2)を得た。
(実施例3)
テトラデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(東京化成製)20重量部およびジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド(東京化成製)40重量部をメタノール150重量部に溶解し、実施例1と同様の方法により、本発明で用いられるイオン性複合体(実施例3)を得た。
(比較例1)
トリドデシルメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)60重量部をメタノール150重量部に溶解し、実施例1と同様の方法により、イオン性複合体(比較例1)を得た。
(比較例2)
ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)65重量部をメタノール150重量部に溶解し、実施例1と同様の方法により、イオン性複合体(比較例2)を得た。
(比較例3)
ドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(東京化成製)30重量部をメタノール150重量部に溶解し、実施例1と同様の方法により、イオン性複合体(比較例3)を得た。
(試験1・抗血栓性の評価)
実施例1〜3および比較例1〜3で得られたイオン性複合体を含む組成物の抗血栓性を、以下の方法で評価した。
上記実施例および比較例で得られたイオン性複合体を各々、濃度1.0重量%になるようにTHFに溶解した。この溶液を内径3mmのポリ塩化ビニルチューブ内面に通し、次いで乾燥することにより、チューブにイオン性複合体をコーティングした。
実際の使用状態に近い環境下での抗血栓性を観察するために、上記イオン性複合体をコーティングしたチューブの内部に、37℃に加温した生理食塩液をローラーポンプにて循環させ、1日経過後にサンプルを採取した。採取したサンプルにクエン酸加牛血を充填し、37℃にてインキュベートした。次いで、サンプルに1/40規定の塩化カルシウム溶液を加えて、血液の凝固を開始させた。3分後、クエン酸三ナトリウムをサンプルに加えて、血液の凝固を停止させた。凝固した血液(血栓)を採取し、凍結乾燥して、重量を測定した。結果を表1の「抗血栓性」欄に示す。ここで、「抗血栓性」欄における数値は、本試験で用いたポリ塩化ビニルチューブと同一の直径を有するガラス管内に生成した血栓量を1としたときの、ポリ塩化ビニルチューブ内に生成した血栓量の相対重量比を示す。
なお、比較として、未コーティングの塩化ビニルチューブの抗血栓性も同様の方法で評価した。
(試験2・抗菌性の評価)
実施例1〜3および比較例1〜3で得られたイオン性複合体を含む組成物の抗菌性を、以下の方法にて評価した。なお、本試験における一連の操作は、全て無菌的に行った。
滅菌生理食塩水で50倍希釈されたブロース液により約1×107個/mlの濃度に調整した緑膿菌液(以下、この菌液を菌原液と呼ぶ)を調製した。
この菌原液の細菌数は次のように測定した。菌原液の104倍希釈溶液100μlを普通寒天板上に播き、24時間後に形成された緑膿菌のコロニー数を計測した。このコロニー数をN個とすると、菌原液の濃度Cは
C=104×N/0.1=105×N(個/ml)
と示される。
この菌原液100μlを、ブロース液(滅菌生理食塩液で40倍希釈)で希釈して、全量を40mlに調整した(以下、この液を浸漬原液と呼ぶ)。この浸漬原液に、予め5cm×5cmに裁断してEOG滅菌した塩化ビニル製フィルム(以下、フィルムAという)を浸漬し、37℃で24時間培養した。培養後、浸漬原液を、滅菌生理食塩水を用いて、10倍系列で104倍まで希釈した(以下、10n倍希釈液と略記する)。それぞれの希釈液100μlを普通寒天培地上にまき、24時間後、普通寒天培地上に形成された緑膿菌のコロニー数が30〜300個のプレートについて菌数を計測した。すなわち、計測されたコロニー数をNn個とすると、25cm2のフィルムAとの接触後の菌数Naは次の式で与えられる。
Na=40×10n×Nn/0.1
フィルムAと接触する前の菌原液の濃度は前記Cの通りであり、使用した原液量は100μlであるから、フィルムA接触前の菌数Nbは次式で示される。
Nb=C×0.1=104×N
浸漬原液40ml中での25cm2の大きさのフィルムAとの接触によるNb→Naの個数変化を表2に示す。接触によって菌数が減少するということは、フィルムA表面に付与されたイオン性複合体の抗菌性が発揮されていることを示す。ここで「N.D.」は、菌が全く観察されなかったことを示す。
実施例のイオン性複合体を含む組成物は、長期間にわたる優れた抗血栓性と高い抗菌性とを兼ね備えていた。これは、実施例のイオン性複合体を含む組成物では、(b)水に不溶性のアンモニウム塩が、ヘパリンまたはヘパリン誘導体を医療用具の血液接触表面に強く保持する一方で、(a)水に可溶性のアンモニウム塩が、イオン性複合体が疎水性に偏りすぎるのを防ぎヘパリンの放出速度を適度に調節するので、長期間にわたる優れた抗血栓性を発揮するとともに、(a)水に可溶性のアンモニウム塩に起因する抗菌性も発揮されるからであると考えられる。
一方、比較例のイオン性複合体を含む組成物には、長期間にわたる優れた抗血栓性と抗菌性とを兼ね備えているものは全くなかった。
(実施例4)
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)20重量部およびジエイコサニルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)65重量部をエタノール140重量部に溶解した。完全に溶解したことを確認した後、この有機アンモニウムのエタノール溶液に、水を、[エタノール溶液:水]=[30:70(重量比)]の割合となるまで添加した。この際、溶液中にアンモニウム塩が一部析出したが、溶液の温度を50℃に上げることにより均一溶液となった。
ヘパリン35重量部をイオン交換水150重量部に溶解し、続いてこのヘパリン水溶液に、エタノールを、[ヘパリン水溶液:エタノール]=[70:30(重量比)]の割合となるまで添加した。この際、溶液中にヘパリンが一部析出して溶液が懸濁したが、溶液の温度を70℃に上げることにより均一溶液となった。
得られたヘパリン溶液を攪拌しながら、これにアンモニウム塩溶液を滴下した。反応物は溶液中ですぐに沈殿した。沈殿物を回収し、十分に洗浄し、未反応のヘパリンおよびアンモニウム塩を除去した。残留物を遠心分離して水分を除去し、次いで凍結乾燥して、本発明で用いられるイオン性複合体(実施例4)を得た。
(実施例5)
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)18重量部およびジエイコサニルジエチルアンモニウムブロミド(東京化成製)72重量部をエタノール140重量部に溶解し、実施例4と同様の方法で、本発明で用いられるイオン性複合体(実施例5)を得た。
(実施例6)
ジデシルジメチルアンモニウムブロミド16重量部(東京化成製)およびジドコサニルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)40重量部をエタノール150重量部に溶解し、実施例4と同様の方法により、本発明で用いられるイオン性複合体(実施例6)を得た。
(実施例7)
ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)15重量部およびジエイコサニルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)45重量部をエタノール150重量部に溶解し、実施例4と同様の方法により、本発明で用いられるイオン性複合体(実施例7)を得た。
(比較例4)
ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)15重量部およびジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)40重量部をエタノール150重量部に溶解し、実施例4と同様の方法により、イオン性複合体(比較例4)を得た。
(比較例5)
ジドデシルジメチルアンモニムブロミド(東京化成製)15重量部、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)38重量部をエタノール150重量部に溶解し、実施例4と同様の方法により、イオン性複合体(比較例5)を得た。
(比較例6)
ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロミド(東京化成製)60重量部を水150重量部に溶解し、実施例4と同様の方法により、イオン性複合体(比較例6)を得た。
(比較例7)
ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成製)45重量部をエタノール150重量部に溶解し、実施例4と同様の方法により、イオン性複合体(比較例7)を得た。
実施例4〜7および比較例4〜7で得られたイオン性複合体を含む組成物の抗血栓性は、以下の方法で評価した。
(試験3・ヘパリン活性値の評価)
実施例4〜7および比較例4〜7で得られたイオン性複合体を、各々THFに濃度0.2重量%になるように溶解し、次いで、この溶液を、内径12mmのポリ塩化ビニル製チューブ内部にコーティングした。このチューブを一回拍出量70mlのダイアフラム型補助人工心臓(東洋紡績製補助人工心臓)の流入口および流出口に接続した。1000mlの血液バッグに生理食塩水を充填し、流入口、流出口に接続した上記チューブの片端を各々当該血液バッグに接続し、そしてこの血液バッグを37℃の水槽に入れて加温した。この補助人工心臓を、専用の駆動装置(東洋紡績製VCT−20)に接続して、陰圧−80mmHg、陽圧300mmHg、%systol37%で流量約7l/minの条件にて駆動させた。血液バッグに充填した生理食塩液は、遊離したヘパリンまたはヘパリン誘導体やアンモニウム塩が評価チューブに再結合しないように、毎日交換した。この条件下で、評価に必要な長さのチューブを定期的に採取しながら、2週間駆動させた。採取したチューブをイオン交換水で軽く洗浄した後、表面に残存するヘパリンの活性値を、テストチームヘパリンS(第一化学薬品製)を用いて測定した。結果を以下の表3に示す。
(試験4・抗血栓性の評価:血栓の生じるまでの日数)
実施例4〜7および比較例4〜7のイオン性複合体の0.2重量%THF溶液を調製し、これを一回拍出量70mlのダイアフラム型補助人工心臓(東洋紡績製)の内面に各々コーティングした。健常な成山羊に補助人工心臓(カニューレが皮膚を貫通し、血液ポンプが体外に設置された体外設置式補助人工心臓)を装着した。補助人工心臓の脱血カニューレを成山羊の左心房に挿入し、送血カニューレを人工血管を介して成山羊の大動脈に装着した。
補助人工心臓の血液ポンプ内を毎日観察し、血栓が生じていた場合には、血液ポンプを脱血および送血カニューレからはずし、新たな評価用の血液ポンプと交換した。抗血栓性は、血栓が発生した時点までの日数にて評価した。結果を以下の表3に示す。
上記結果から明らかなように、本発明のイオン性複合体を含む組成物は、従来技術であるヘパリンまたはヘパリン誘導体と1種類のみのアンモニウム塩とのイオン性複合体を含む組成物(比較例6および7)と比較して、良好な抗血栓性を有する。
また、本発明の組成物は、本発明者らが特許第3228409号で開示した組成物(比較例4および5)と比較して、より長期間にわたる優れた抗血栓性を付与することができる。
産業上の利用可能性
本発明の組成物は、少なくとも2種のアンモニウム塩の混合物である有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とから形成されるイオン性複合体を含むことにより、医療用具に長期間にわたる優れた抗血栓性を付与することができる。
特に、本発明▲1▼の組成物は、少なくとも2種のアンモニウム塩、すなわち少なくとも1種の(a)水に可溶性のアンモニウム塩と少なくとも1種の(b)水に不溶性のアンモニウム塩との混合物である有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とのイオン性複合体を含むことにより、医療用具に長期間にわたる優れた抗血栓性と抗菌性とを付与することができる。
また、本発明▲2▼の組成物は、少なくとも2種のアンモニウム塩、すなわち上述の特定のアンモニウム塩(c)および(d)との混合物である有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とのイオン性複合体を含むことにより、特に血液が極めて速く流れかつその動きが激しい条件下での使用が意図される医療用具においても、長期にわたる優れた抗血栓性を付与することができる。
本出願は日本で出願された特願2001−169978および特願2001−342335を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。また、本明細書において引用された特許および特許出願を含む文献は、引用したことによってその内容のすべてが開示されたと同程度に本明細書中に組み込まれるものである。
Claims (3)
- 有機カチオン混合物とヘパリンまたはヘパリン誘導体とから形成されるイオン性複合体を含む抗血栓性組成物であって、当該有機カチオン混合物が、
(a)ベンゼトニウム塩およびベンザルコニウム塩から選択される少なくとも1種の水に可溶性のアンモニウム塩と、
(b)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩の4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数12以上のアルキル基である、または4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩の4つの脂肪族基のうち3つがそれぞれ炭素数10以上のアルキル基である水に不溶性のアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基の炭素原子の総数が24〜32であり、かつ炭素数10以上のアルキル基を少なくとも2つ有するものを除くアンモニウム塩、
との混合物であるか、または、
(c)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基の炭素原子の総数が40以上であり、かつ少なくとも2つの脂肪族基がそれぞれ炭素数12以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩と、
(d)4つの脂肪族基が結合したアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数3以下の脂肪族アルキル基であり、かつ残り2つがそれぞれ炭素数10〜14の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩であって、4つの脂肪族基の炭素原子の総数が24〜32であり、かつ炭素数10以上のアルキル基を少なくとも2つ有するものを除くアンモニウム塩、
との混合物であり、
該アンモニウム塩のうち、4つの脂肪族アルキル基の炭素数の総数が22以上26以下であるアンモニウム塩の含有量が全アンモニウム塩の5%未満であるか、又は80%を超えるものである、抗血栓性組成物。 - アンモニウム塩(c)が、4つの脂肪族基のうち2つがそれぞれ炭素数2以下の脂肪族アルキル基であり、かつ残り2つがそれぞれ炭素数19以上の脂肪族アルキル基であるアンモニウム塩である、請求項1に記載の抗血栓性組成物。
- 請求項1または2に記載の抗血栓性組成物が少なくとも血液接触面の一部にコーティングされている、医療用具。
Applications Claiming Priority (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001169978 | 2001-06-05 | ||
JP2001169978 | 2001-06-05 | ||
JP2001342335 | 2001-11-07 | ||
JP2001342335 | 2001-11-07 | ||
PCT/JP2002/005542 WO2002098344A1 (fr) | 2001-06-05 | 2002-06-05 | Compositions antithrombotiques et instruments medicaux contenant lesdites compositions |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2002098344A1 JPWO2002098344A1 (ja) | 2005-04-07 |
JP4273965B2 true JP4273965B2 (ja) | 2009-06-03 |
Family
ID=26616382
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003501386A Expired - Fee Related JP4273965B2 (ja) | 2001-06-05 | 2002-06-05 | 抗血栓性組成物およびそれを有する医療用具 |
Country Status (5)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20040213818A1 (ja) |
EP (1) | EP1402871B1 (ja) |
JP (1) | JP4273965B2 (ja) |
DE (1) | DE60231209D1 (ja) |
WO (1) | WO2002098344A1 (ja) |
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014168198A1 (ja) | 2013-04-12 | 2014-10-16 | 東レ株式会社 | 抗血栓性を有する人工血管 |
WO2015080177A1 (ja) | 2013-11-28 | 2015-06-04 | 東レ株式会社 | 抗血栓性材料 |
WO2015080176A1 (ja) | 2013-11-28 | 2015-06-04 | 東レ株式会社 | 抗血栓性材料 |
WO2019065947A1 (ja) | 2017-09-29 | 2019-04-04 | 東レ株式会社 | ニッケルチタン合金を用いた抗血栓性医療材料 |
US10251742B2 (en) | 2014-02-12 | 2019-04-09 | Toray Industries, Inc. | Artificial blood vessel |
KR20190065254A (ko) | 2016-09-30 | 2019-06-11 | 도레이 카부시키가이샤 | 공중합체 및 이것을 사용한 의료 재료 |
WO2019150937A1 (ja) | 2018-01-30 | 2019-08-08 | 東レ株式会社 | 平織物、その製造方法およびステントグラフト |
US10709822B2 (en) | 2015-03-31 | 2020-07-14 | Toray Industries, Inc. | Antithrombotic metallic material |
WO2020158847A1 (ja) | 2019-01-30 | 2020-08-06 | 東レ株式会社 | 心血管留置デバイス用の医療基材 |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
NZ553702A (en) * | 2004-09-27 | 2010-10-29 | Acadia Pharm Inc | Synthesis of N-(4-fluorobenzyl)-N-(1-methylpiperidin-4-yl)-N'-(4-(2-methylpropyloxy)phenylmethyl)carbamide and its tartrate salt and crystalline forms |
EP2745865B1 (en) | 2011-08-19 | 2018-05-02 | Toyobo Co., Ltd. | Medical tube |
WO2013156871A2 (en) | 2012-04-17 | 2013-10-24 | University College Dublin, National University Of Ireland, Dublin | Thromboxane receptor antagonists |
WO2013156861A2 (en) | 2012-04-17 | 2013-10-24 | University College Dublin, National University Of Ireland, Dublin | Methods and compounds for treating proliferative disorders and viral infections |
US20150352265A1 (en) * | 2013-01-07 | 2015-12-10 | Narayana GARIMELLA | Biocompatible coating composition |
CA2989271C (en) | 2015-06-16 | 2023-09-26 | University College Dublin, National University Of Ireland, Dublin | Thromboxane receptor antagonists |
Family Cites Families (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS4813341B1 (ja) * | 1969-06-13 | 1973-04-26 | ||
SE8200751L (sv) * | 1982-02-09 | 1983-08-10 | Olle Larm | Forfarande for kovalent koppling for framstellning av konjugat och hervid erhallna produkter |
US5069899A (en) * | 1989-11-02 | 1991-12-03 | Sterilization Technical Services, Inc. | Anti-thrombogenic, anti-microbial compositions containing heparin |
DE69129812T2 (de) * | 1990-07-12 | 1999-02-11 | Sts Biopolymers, Inc., Rush, N.Y. | Antithrombogene und/oder antimikrobielle zusammensetzung |
JPH04197264A (ja) * | 1990-11-28 | 1992-07-16 | Terumo Corp | 抗血栓性医療材料の製造方法および抗血栓性医療材料を備えた医療用器具 |
JPH07108061A (ja) * | 1993-10-14 | 1995-04-25 | Mitsubishi Cable Ind Ltd | 抗血栓性複合体および医療用器具 |
JPH09169801A (ja) * | 1995-10-17 | 1997-06-30 | Terumo Corp | ヘパリン複合体およびそれを被覆した医療器具 |
JP3722239B2 (ja) * | 1996-01-09 | 2005-11-30 | 東洋紡績株式会社 | 抗血栓性、抗菌性組成物および医用材料 |
JP3228409B2 (ja) * | 1997-12-05 | 2001-11-12 | 東洋紡績株式会社 | 血液適合性組成物および医療用具 |
JP4626005B2 (ja) * | 2000-01-27 | 2011-02-02 | 東洋紡績株式会社 | 血液適合性組成物およびそれを被覆した医療用具 |
-
2002
- 2002-06-05 US US10/479,596 patent/US20040213818A1/en not_active Abandoned
- 2002-06-05 JP JP2003501386A patent/JP4273965B2/ja not_active Expired - Fee Related
- 2002-06-05 EP EP02738623A patent/EP1402871B1/en not_active Expired - Fee Related
- 2002-06-05 WO PCT/JP2002/005542 patent/WO2002098344A1/ja active Application Filing
- 2002-06-05 DE DE60231209T patent/DE60231209D1/de not_active Expired - Lifetime
Cited By (14)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014168198A1 (ja) | 2013-04-12 | 2014-10-16 | 東レ株式会社 | 抗血栓性を有する人工血管 |
US9662233B2 (en) | 2013-04-12 | 2017-05-30 | Toray Industries, Inc. | Antithrombotic artificial blood vessel |
WO2015080177A1 (ja) | 2013-11-28 | 2015-06-04 | 東レ株式会社 | 抗血栓性材料 |
WO2015080176A1 (ja) | 2013-11-28 | 2015-06-04 | 東レ株式会社 | 抗血栓性材料 |
US9795721B2 (en) | 2013-11-28 | 2017-10-24 | Toray Industries, Inc. | Antithrombotic material |
US10251742B2 (en) | 2014-02-12 | 2019-04-09 | Toray Industries, Inc. | Artificial blood vessel |
US10709822B2 (en) | 2015-03-31 | 2020-07-14 | Toray Industries, Inc. | Antithrombotic metallic material |
KR20190065254A (ko) | 2016-09-30 | 2019-06-11 | 도레이 카부시키가이샤 | 공중합체 및 이것을 사용한 의료 재료 |
US11000636B2 (en) | 2016-09-30 | 2021-05-11 | Toray Industries, Inc. | Copolymer and medical material containing the same |
EP3845573A1 (en) | 2016-09-30 | 2021-07-07 | Toray Industries, Inc. | Copolymer and medical material containing the same |
WO2019065947A1 (ja) | 2017-09-29 | 2019-04-04 | 東レ株式会社 | ニッケルチタン合金を用いた抗血栓性医療材料 |
US11253539B2 (en) | 2017-09-29 | 2022-02-22 | Toray Industries, Inc. | Antithrombotic medical material using nickel titanium alloy |
WO2019150937A1 (ja) | 2018-01-30 | 2019-08-08 | 東レ株式会社 | 平織物、その製造方法およびステントグラフト |
WO2020158847A1 (ja) | 2019-01-30 | 2020-08-06 | 東レ株式会社 | 心血管留置デバイス用の医療基材 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
DE60231209D1 (de) | 2009-04-02 |
US20040213818A1 (en) | 2004-10-28 |
EP1402871B1 (en) | 2009-02-18 |
EP1402871A4 (en) | 2005-12-28 |
WO2002098344A1 (fr) | 2002-12-12 |
JPWO2002098344A1 (ja) | 2005-04-07 |
EP1402871A1 (en) | 2004-03-31 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4273965B2 (ja) | 抗血栓性組成物およびそれを有する医療用具 | |
US6340465B1 (en) | Lubricious coatings for medical devices | |
EP0781566B1 (en) | Organic solvent-soluble mucopolysaccharide, antibacterial antithrombogenic composition and medical material | |
US5004461A (en) | Methods for rendering plastics thromboresistant and product | |
US5098977A (en) | Methods and compositions for providing articles having improved biocompatability characteristics | |
JP5969484B2 (ja) | 抗血栓性材料および医療用具 | |
WO1993005825A1 (en) | Processes for reducing the thrombogenicity of biomaterials | |
US10022478B2 (en) | Medical device | |
US5017670A (en) | Methods and compositions for providing articles having improved biocompatibility characteristics | |
EP1057492B1 (en) | Blood-compatible composition and medical device using same | |
JP4626005B2 (ja) | 血液適合性組成物およびそれを被覆した医療用具 | |
JPH0236267B2 (ja) | ||
EP2540325B1 (en) | Peptide based antimicrobial coating | |
JP4347927B2 (ja) | 抗血栓性医療用具の製造方法 | |
JPH10155898A (ja) | 抗菌性付与抗血栓性材料 | |
JP4110429B2 (ja) | 抗菌性付与抗血栓性材料 | |
JP4691745B2 (ja) | 抗菌性抗血栓性材料のコーティング方法 | |
JP4110430B2 (ja) | 抗菌性付与抗血栓性材料 | |
JPH10152579A (ja) | 抗菌性付与抗血栓性組成物 | |
JP4258703B2 (ja) | 血液適合性組成物およびそれをコートした医療用具 | |
JP2003048840A (ja) | 抗菌性付与抗血栓性組成物およびそれをコートした医療用具 | |
JP2002360686A (ja) | 抗菌性を有する抗血栓性組成物およびそれをコートした医療用具 | |
WO2013136849A1 (ja) | 血液適合性材料および医療用具 | |
JPH10151191A (ja) | 抗菌性付与抗血栓性組成物 | |
JPH10158432A (ja) | 抗菌性付与抗血栓性材料 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050308 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081111 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090109 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20090210 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20090223 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120313 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120313 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130313 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140313 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |