JP4271840B2 - 光ディスク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチックや木材製品等の基材表面の硬度等を向上させるために用いられるコート剤の有効成分に最適な新規なジメチルシロキサン化合物、および当該ジメチルシロキサン化合物を含み、これが重合硬化することにより基材表面にハードコート膜を形成できるコート剤、ならびに耐擦傷性、耐溶剤性および透明性に優れるハードコート膜が形成された光ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックは、軽量、易加工性および低価格等の利点により、多くの産業分野で利用されている。プラスチックは、その用途によっては、基材表面の耐擦傷性、耐溶剤性等の向上を図ること、即ち表面の改質を必要とする場合がある。プラスチックの表面改質は、プラスチックの用途を拡大するにあたり、今後ますます重要になると予想される。同様のことは木材についてもいえる。
【0003】
プラスチック等の基材の表面改質に用いるコート剤の代表的なものに、紫外線(UV)硬化型アクリルコート剤と熱硬化型シリコーンコート剤がある。このうち、硬化時間の短いUV硬化型アクリルコート剤は生産性に優れていることから多用されている。また、最近では、ハードコート膜の耐擦傷性等の特性を更に向上させるべく、UV硬化型アクリルコート剤に平均粒子径10〜30nmのコロイダルシリカを添加したものが開発され、上市されるに至っている(工業材料、1996年12月号Vol.44No.14,101頁〜117頁)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
コート剤の特性が製品の品質に重要な影響を及ぼす例として、光ディスクが挙げられる。近年、光ディスクの分野においては高密度記録技術が著しく進歩しており、コンパクトディスク(CD)サイズ程度の小径の光ディスクに長時間の動画を収録することが可能となっている。そして、高密度記録を達成するためには、光ディスクに記録される信号の長さ(記録ピット長)を微少なものにする必要がある。
【0005】
記録信号の長さが短くなるほど、レーザ光で記録信号を正確に読み取ることが難しくなる。例えばレーザ光がディスク表面で少しでも散乱すると、多数の信号の読み取りが欠落するといったエラーが発生することもあり得る。レーザ光の散乱は、レーザ光が入射される側のディスク表面に擦り傷がある場合にも生じるので、光ディスク表面はダメージを受けにくいように改質する必要がある。このため、光ディスクには、光が照射される側(または光が入射する側)の最外層(最表層)に耐擦傷性に優れるハードコート膜を形成するのが一般的である。光ディスクのハードコート膜は、クリーニング剤による面荒れを防止し、また、反射光の減衰による信号強度の低下を防止するために、耐溶剤性および透明性においても優れたものでなければならない。
【0006】
一方、次世代メディアとして期待されているDVD-RAMの基材は0.6mm厚のポリカーボネート板を2枚貼り合わせたものであるため、機械的強度が弱い。そのため、ハードコート膜のように異質なものを最外層として形成すると基板に反りが発生しやすいという問題がある。そこで、DVD-RAMにハードコート膜を形成するに際しては、膜厚を通常の厚さ(5〜10μm)よりも薄くすること(例えば0.3〜3μm)、ならびに硬化収縮率ができるだけ小さい材料を有効成分とするコート剤を使用すること等が不可欠になると考えられる。
【0007】
しかし、上記の平均粒子径10〜30nmのコロイダルシリカを添加したUV硬化型アクリルコート剤によりハードコート膜を形成した場合、膜厚が7〜8μm程度であると、所定の耐擦傷性は確保されるものの、基板に反りが発生しやすい。また、膜厚が1〜2μm程度であると、基板の反りは発生しないが、硬度が低下して所定の耐擦傷性を確保できないという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、優れた耐擦傷性、耐溶剤性および透明性を有する膜厚の小さなハードコート膜を基材表面に形成し得るコート剤の有効成分として有用な化合物、当該化合物を含むコート剤、および当該コート剤により形成されたハードコート膜が光を照射する側で光ディスクの最外層を形成している光ディスクを提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するべく、本発明は、一般式(a):
【化5】
(式中、mは1〜10の数を示し、nは6〜36の数を示し、Rは、
【化6】
を示し、R’は式(I)〜(VI):
【化7】
で示される基から選択される基を示す)
で示されるジメチルシロキサン化合物を提供する。この化合物は、コート剤の有効成分として有用なものである。
【0010】
上記一般式(a)は、mが1以上10以下の範囲内のいずれか1つの整数、およびnが6以上36以下の範囲内のいずれか1つの整数である種々の単一の化合物のほか、そのような種々の化合物の種々の組合せである混合物を含む。一般式(a)で示される化合物が混合物の状態である場合、一般式(a)のmおよびnは整数でない数として示されることがある。
【0011】
一般式(a)で示される1つの化合物において、式(I)〜(VI)で示されるR’はそれぞれ、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)および1,3‐ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)に由来する基である。このうち、2つのイソシアネート基が非対称に結合したジイソシアネート(例えばTDI、IPDIおよびTMDI)に由来する基は、一般に、1つの化合物において異なる態様で結合している。
【0012】
例えば、TDIに由来する式(II)で示される基は、一般式(a)の繰り返し単位において、
【化8】
または、
【化9】
のように結合して、2種類の繰り返し単位を構成する。一般に、1つの化合物には上記2種類の繰り返し単位が存在する。
【0013】
TDIに由来する式(II)で示される基は、一般式(a)において−R’NHCOORで示される末端においても、
【化10】
または
【化11】
のように結合する。
【0014】
したがって、R’が例えばTDIに由来する式(II)で示される基である場合、2種類の繰り返し単位と2種類の−R’NHCOORとの組合せに応じて、種々の態様の一般式(a)で示される化合物が得られる。R’がIPDIまたはTDIの場合も同様である。
【0015】
このようにR’が非対称構造のジイソシアネート化合物に由来する場合には、一般式(a)で示される化合物の繰り返し単位および末端においてR’の結合の態様が異なる種々の態様の化合物が、一般式(a)で示される化合物として存在し得る。本発明のジメチルシロキサン化合物は、それらすべての態様の化合物を含む。
【0016】
上記の式(IV)で示される基は、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネートのいずれかに由来する基であってよく、その意味において、式(IV)で括弧内にメチル基および水素を記載している。括弧内に記載したメチル基および水素がそれぞれ4位および2位の炭素に結合した基は、2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネートに由来する基に相当する。
【0017】
本発明は、上記一般式(a)で示されるジメチルシロキサン化合物を有効成分として含むコート剤を提供する。このコート剤を基材に塗布した後、加熱または紫外線照射すると、上記一般式(a)で示されるジメチルシロキサン化合物のR中のCH2=CH―において重合が進行し、ハードコート膜が形成される。なお、コート剤における有効成分とはハードコート膜を構成し得る成分に相当する。従ってコート剤に含まれる成分のうち、重合し得る成分であって重合により硬い樹脂皮膜を形成する成分、重合はしないがハードコート膜の特性向上に寄与する成分(例えば添加剤)、および重合に必要な硬化触媒が有効成分に該当する。
【0018】
更に、本発明は、上記本発明のコート剤から形成されたハードコート膜が、光が照射される側の最外層を形成している光ディスクであって、ハードコート膜においてコート剤中の重合硬化し得る成分が重合硬化して成る光ディスクを提供する。この光ディスクにおいて、ハードコート膜は0.3〜3μmの小さな膜厚で形成しても、その機能を十分に果たすので、ハードコート膜の形成に起因する反りは実質的に生じていない。また、ハードコート膜はその膜厚が小さいにも拘わらず優れた耐擦傷性等を発揮するのでレーザ光が散乱せず、従って、光ディスクに記録された信号を読み取る際のエラーが小さくなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
一般式(a)で示される本発明のジメチルシロキサン化合物は、下記一般式(b):
【化12】
(式中、nは6〜36の数を示す。)
で示される化合物とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)および1,3‐ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)などから選択されるジイソシアネート化合物を、触媒を使用せずに、反応混合物中のイソシアネート基の数が半減するまで60〜80℃で3〜6時間反応させる。反応混合物中のイソシアネート基の数はJIS K1556に準拠する試験方法で測定することができる。
【0020】
この反応によって得られる中間生成物は下記一般式(c):
【化13】
(式中、mは1〜10の数を示し、nは6〜36の数を示し、R’は式(I)〜(VI):
【化14】
から選択される基を示す)
で示される。
【0021】
一般式(c)で示される中間生成物を得た後、更にトリアクリル酸ペンタエリスリトールまたはペンタアクリル酸ジペンタエリスリトールを加え、ジラウリン酸ジブチル錫またはトリエチルアミン等を触媒として60〜100℃で5〜10時間反応させることにより、一般式(a)で示される化合物が得られる。
【0022】
上記の合成法により一般式(a)で示されるジメチルシロキサン化合物を合成した場合、一般に、一般式(b)で示されるジメチルシロキサンの1の水酸基とジイソシアネート化合物の1のイソシアネート基とが結合して成る繰り返し単位の数(m)は1〜10となる。即ち、生成物は、mが異なる化合物が混合した混合物として得られる。上記の合成法で合成した場合、一般にm=4のものが最も多く合成され、したがって、一般式(a)におけるmは一般に3.5〜4.5の範囲内にある数で示される。mの平均値は、混合物の数平均分子量から算出することができる。
【0023】
一般式(a)におけるnは、一般式(b)で示される化合物に応じて決定される。一般式(b)で示される化合物は、両末端アルコール変性ジメチルシロキサンともいえるものである。この化合物は、例えば、サイラプレーンFM-4411(チッソ株式会社製)、シリコーンオイルX-22-160AS(信越化学工業株式会社製)、シリコーンオイルBY16-201(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)等の商品名で種々の分子量のものが販売されている。本発明において、一般式(b)で示される化合物の分子量は、800〜3,000であることが好ましく、1,000〜2,000であることがより好ましい。分子量が800未満では、合成して得た化合物が重合する際に生ずる硬化収縮が大きくなりやすく、例えば光ディスク基板に塗布した後、重合すると基板に反りが生じるおそれがある。分子量が3,000を超えると、合成して得た化合物を含むコート剤を塗布する際に「はじき」が発生し、塗布状態が悪くなるおそれがある。一般式(b)で示される化合物が上記範囲の分子量を有するようにするには、nを6〜36、より好ましくは9〜22にする必要がある。一般式(b)で示される化合物は一般にnが異なる化合物の混合物として提供され、したがって、そのような混合物から合成される一般式(a)で示される化合物もまた、nが異なる化合物の混合物として得られる。
【0024】
本発明のコート剤は、一般式(a)で示される化合物を有効成分として含むものである。一般式(a)で示される化合物は、重合により樹脂を形成し、硬質の皮膜となる。従って、一般式(a)で示される化合物は樹脂成分ともいえるものである。
【0025】
本発明のコート剤は、その他の有効成分として重合性不飽和基を有する化合物を含有するものであってよい。重合性不飽和基を有する化合物は、それ自身または本発明のジメチルシロキサン化合物と重合して樹脂を形成するものであり、従って、当該化合物もまた樹脂成分といえる。重合性不飽和基を有する化合物を混合すると、樹脂成分の粘度が低下し、塗布状態が良好となるという利点がもたらされる。
【0026】
重合性不飽和基を有する化合物は、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸オリゴエステルプレポリマー、不飽和ニトリル、不飽和アミド、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、カルボン酸ビニルエステル、および芳香族ビニル化合物等から成る群から選択される1または複数の化合物であることが好ましい。これらの中で、特に好ましい化合物は、多官能(メタ)アクリル酸エステルであり、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましく用いられる。
【0027】
本発明のコート剤には、上記樹脂成分を重合させるための硬化触媒が含有されていることが好ましい。熱重合により有効成分を重合する場合、硬化触媒は、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスバレロニトリル等のアゾ系ラジカル重合開始剤、ならびに2-エチルヘキサン酸-1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシエステルおよび2-エチルヘキサン酸-tert-ブチルパーオキシエステル等の有機過酸化物系ラジカル重合開始剤から選択される。紫外線重合により有効成分を重合する場合、硬化触媒は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のラジカル系光重合開始剤とすることが好ましい。硬化触媒は、樹脂成分を100重量部としたときに、1〜5重量部の割合で添加することが好ましい。
【0028】
本発明のコート剤には必要に応じて密着性向上剤および/または無機超微粒子等を有効成分として添加することができる。密着性向上剤としてはγ-メタクリロキシアルキレンアルコキシシラン等のシランカップリング剤を使用できる。無機超微粒子はハードコート膜の耐擦傷性を向上させるために使用される。無機超微粒子としては、例えば平均粒子径10〜20nmのコロイダルシリカ等を使用できる。
【0029】
本発明のコート剤が、一般式(a)で示されるジメチルシロキサン化合物以外の化合物と硬化触媒の他に、有効成分として上述の重合性不飽和基を有する化合物を含む場合、その混合割合は、一般式(a)で示される化合物を100重量部としたときに5〜500重量部とすることが好ましく、10〜100重量部とすることがより好ましい。また、密着性向上剤を含む場合、その混合割合は、一般式(a)で示される化合物を100重量部としたときに0.5〜20重量部とすることが好ましく、1〜10重量部とすることがより好ましい。無機超微粒子を含む場合、その混合割合は、一般式(a)で示される化合物を100重量部としたときに5〜50重量部とすることが好ましく、10〜30重量部とすることがより好ましい。
【0030】
本発明のコート剤は、有効成分を固形分として、適当な溶媒に溶解または分散させた状態で提供することができる。溶媒としては、例えばエタノール、イソプロパノールおよびn−ブタノール等のアルコール類、または例えばエチレングリコールモノエチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類等が適している。固形分は、固形分濃度が1重量%以上、好ましくは10〜40重量%となるように、溶媒に溶解または分散させるとよい。あるいは、有効成分と硬化触媒とを混合したものをそのまま(溶媒に溶解等させずに)コート剤として提供してもよい。
【0031】
本発明のコート剤は、その使用に際し、必要に応じて適当な有機溶媒で更に希釈してもよい。希釈する場合、固形分濃度はハードコート膜の膜厚およびコート剤の塗布方法等に応じて決定される。希釈に用いる有機溶媒としては、例えば、先に挙げた溶媒を使用できる。
【0032】
本発明のコート剤をプラスチック基板等の表面に塗布する方法としては、ディツプ、スプレーおよびスピンコート等の常套的に採用されている方法が適用できる。塗布したコート剤の硬化は、樹脂成分を熱重合させる場合には60〜120℃で20〜60分間加熱することにより達成され、樹脂成分を紫外線照射により重合する場合には80W/cmの高圧水銀ランプで1〜20秒間、UV照射することにより達成される。
【0033】
本発明のコート剤によれば、耐擦傷性に優れたハードコート膜が、光が照射する側の最外層(または最表層)を形成している光ディスクを得ることができる。また、本発明のコート剤は、優れた耐溶剤性および透明性を有するハードコート膜を形成する。光ディスクのハードコート膜は、光ディスクの種類に応じて、常套的な方法(例えばスピンコート法)により形成される。本発明のコート剤により形成される光ディスクのハードコート膜の膜厚は、0.3〜3μmとすることが好ましい。0.3μm未満では十分な耐擦傷性が得られず、3μmを超えるハードコート膜を形成しようとすると、光ディスクに生じる反りの度合いが無視できないほど大きくなり好ましくない。本発明の光ディスクにおいて、ハードコート膜は、必要に応じて、光を照射する側とは反対側の最外層をも形成してよい。
【0034】
光ディスクは、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)および光磁気ディスク(MD)等であってよい。
【0035】
光ディスクが例えばDVD-RAMである場合、その構造は、第1の基板の上に記録層、反射層および保護膜がこの順で積層され、保護膜の上に接着剤層を介して第2の基板が積層され、この第1の基板の表面(記録層が形成されている面とは反対の面であって露出している面)にハードコート膜が積層されたものとなる。ハードコート膜と第1の基板との間には、帯電防止層が介在していてよい。
【0036】
本発明のコート剤は、光ディスクのハードコート膜のみならず、各種プラスチック製品および木材製品の表面に耐擦傷性、耐溶剤性、耐候性および耐薬品性を付与するために用いることができる。
【0037】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
<ジメチルシロキサン化合物の製造>
ジメチルシロキサン化合物1:本発明のジメチルシロキサン化合物として、下記化学式(a1):
【化15】
(式中、mは1〜10(平均値4.0)であり、nは6〜12(平均値9.5)であり、R1は(CH2=CHCOOCH2)3CCH2−を示す。)
で示される化合物を次のようにして合成した。
【0038】
数平均分子量1,000(一般式(b)においてn=6〜12(平均値9.5))の両末端アルコール変性ジメチルシロキサン(商品名:サイラプレーンFM-4411、チッソ株式会社製)100gとヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)33.6g(0.2モル)を70℃で反応混合物中のイソシアネート基の数が半減するまで約5時間攪拌して反応させた後、トリアクリル酸ペンタエリスリトール59.7g(0.2モル)、触媒としてジラウリン酸ジブチル錫0.2g(原料の合計重量を100重量部としたときに0.1重量部に相当)、および重合禁止剤としてパラメトキシフェノール0.2g(原料の合計重量を100重量部としたときに0.1重量部に相当)を更に加え、80℃で8時間攪拌して反応させ、無色透明の粘調な液体193gを得た。
【0039】
この液状化合物は、赤外分光分析(IR)およびゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、原料および副生成物を含まない上記化学式(a1)で示されるジメチルシロキサン化合物であることが判明した。この化合物の赤外スペクトルを図1に示す。
IR;脂肪族カルボン酸エステルの1725cm-1の吸収ピーク出現。
GPC;原料および副生成物検出されず。
【0040】
ジメチルシロキサン化合物2:トリアクリル酸ペンタエリスリトールに代えてペンタアクリル酸ジペンタエリスリトールを用いたこと以外は上記ジメチルシロキサン化合物1と同様にして下記化学式(a2)で示される化合物を合成した。
【化16】
【0041】
ジメチルシロキサン化合物3:HDIに代えてTDIを用いたこと以外は上記ジメチルシロキサン化合物1と同様にして下記化学式(a3)で示される化合物を合成した。
【0042】
【化17】
(式中、mは1〜10(平均値4.3)であり、nは6〜12(平均値9.5)であり、R1は(CH2=CHCOOCH2)3CCH2−を示し、R(III)は
【化18】
を示す)
【0043】
この液状化合物は、赤外分光分析(IR)およびゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、原料および副生成物を含まない上記化学式(a3)で示されるジメチルシロキサン化合物であることが判明した。この化合物の赤外スペクトルを図2に示す。
IR;脂肪族カルボン酸エステルの1725cm-1の吸収ピーク出現。
GPC;原料および副生成物検出されず。
【0044】
ジメチルシロキサン化合物4〜7:HDIに代えてIPDI、TMDI、XDIおよび水添XDIをそれぞれ用いたこと以外は上記ジメチルシロキサン化合物1と同様にして下記化学式(a4)〜(a7)で示される化合物を合成した。
【0045】
【化19】
(式中、mは1〜10(平均値4.2)であり、nは6〜12(平均値9.5)であり、R1は(CH2=CHCOOCH2)3CCH2−を示し、R(IV)は:
【化20】
を示す)
【0046】
【化21】
(式中、mは1〜10(平均値4.4)であり、nは6〜12(平均値9.5)であり、R1は(CH2=CHCOOCH2)3CCH2−を示し、R(V)は:
【化22】
を示す)
【0047】
【化23】
(式中、mは1〜10(平均値3.7)であり、nは6〜12(平均値9.5)であり、R1は(CH2=CHCOOCH2)3CCH2−を示す。)
【0048】
【化24】
(式中、mは1〜10(平均値3.8)であり、nは6〜12(平均値9.5)であり、R1は(CH2=CHCOOCH2)3CCH2−を示す。)
【0049】
<コート剤の調製>
コート剤1:化学式(a1)で示されるジメチルシロキサン化合物1が30重量%、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが0.9重量%の割合で含まれるように、これらをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解してコート剤1を調製した。
【0050】
コート剤2:ジメチルシロキサン化合物1に代えて、化学式(a2)で示されるジメチルシロキサン化合物2を溶解したこと以外はコート剤1と同様にして、コート剤2を調製した。
【0051】
コート剤3〜7:ジメチルシロキサン化合物1に代えて、化学式(a3)〜(a7)で示されるジメチルシロキサン化合物3〜7をそれぞれ溶解したこと以外はコート剤1と同様にして、コート剤3〜7を調製した。
【0052】
コート剤8:化学式(a1)で示されるジメチルシロキサン化合物が25重量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレートが5重量%、および光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが0.9重量%の割合で含まれるように、これらをPGMEに溶解してコート剤8を調製した。
【0053】
コート剤9:化学式(a1)で示されるジメチルシロキサン化合物が25重量%、無機超微粒子に相当する平均粒子径10〜20nmコロイダルシリカ(商品名:オルガノシリカゾルIPA-ST 日産化学工業(株)製)が5重量%、密着性向上剤に相当するγ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが1重量%、および光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが0.9重量%の割合で含まれるように、これらをPGMEに溶解してコート剤9を調製した。
【0054】
<光ディスクの製造>
光ディスク1:厚さ0.6mm、外径120mmであるCDと同形同寸のポリカーボネート基板上に、ZnS-SiO2(SiO2の割合20mol%)誘電体膜、GeSbTe記録膜、ZnS-SiO2(SiO2の割合20mol%)誘電体膜、およびAl膜をこの順でそれぞれスパッタリング蒸着により形成した。そして、Al膜上にアクリル樹脂をスピンコートし、UVを照射して硬化させ、保護膜を形成した。この保護膜の表面に前記ポリカーボネート基板と同形同寸のポリカーボネート基板をUV接着剤で貼り合わせて光ディスク(DVD-RAM)基板を作製した。そして、この光ディスク基板の光が照射される側の面にコート剤1をスピンコートし、UVを照射してコート剤を硬化させることにより、膜厚1μmのハードコート膜が最外層として形成された光ディスク1を得た。
【0055】
光ディスク2〜9:コート剤1に代えて、それぞれコート剤2〜9を用いたこと以外は光ディスク1と同様にして光ディスク2〜9を作製した。
【0056】
光ディスク10:光ディスク基板の光が照射される側の面に、帯電防止層としてアンチモンドープ酸化錫膜をスパッタリング蒸着で膜厚が30nmとなるように形成し、当該帯電防止層上にコート剤1でハードコート膜を形成したこと以外は光ディスク1と同様にして、光ディスク10を作製した。
【0057】
光ディスク11:光ディスク基板の光が照射される側の面に、コート剤1に代えて、平均粒子径10〜30nmのコロイダルシリカを添加したUV硬化型アクリルコート剤(商品名デソライトKZ7819A 日本合成ゴム(株)製)をスピンコートし、UVを照射して硬化させることにより、膜厚1μmのハードコート膜を形成したこと以外は光ディスク1と同様にして、光ディスク11を作製した。
【0058】
光ディスク12:ハードコートの膜厚を4μmとしたこと以外は光ディスク11と同様にして光ディスク12を作製した。
【0059】
光ディスク13:ハードコートの膜厚を8μmとしたこと以外は光ディスク11と同様にして光ディスク13を作製した。
【0060】
<光ディスクのハードコート膜の性能評価>
光ディスク1〜13のハードコート膜の性能を以下のようにして評価した。
【0061】
耐擦傷性:ハードコート膜の耐擦傷性は、光ディスクのハードコート膜上に試験用ダストとしてJISのZ8901-3のダスト((社)日本粉体工業技術協会製)0.01〜0.02gを均一に散布し、これを不織布(商品名リントフリー 旭化成工業(株)製)で覆った。そして不織布を介して4.9N(500gf)の荷重を加えた状態で光ディスクを1回転させた後の傷付きの程度を観察し、全く傷が無いものをA、浅い傷が数本程度のものをB、深い傷が多数見られるものをCとして評価した。
【0062】
光ディスクの反り:ドクターシェンク社(ドイツ)製光ディスク測定機Biref126で光ディスクの半径方向の傾き(ラジアルチルト)を測定し、ハードコート膜形成前後のチルト角の変化量が0.1°未満のものをA、0.1〜0.3°のものをB、0.3°を越えるものをCとして評価した。
【0063】
ハードコート膜の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0064】
本発明のジメチルシロキサン化合物を含むコート剤により形成されたハードコート膜は、薄い膜厚(1μm)であっても優れた耐擦傷性を示した。従来のコート剤を使用した光ディスク11は、ハードコート膜が1μmと薄いために光ディスクの反りは小さいが、耐擦傷性の点で劣るものであった。光ディスク12においては、膜厚が大きくなったことに伴って耐擦傷性は向上したものの、反りが大きくなった。光ディスク13は、大きな膜厚に起因して反りが最も大きくなったものであり、実用に適さないものであった。
【0065】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のジメチルシロキサン化合物を含む本発明のコート剤は、膜厚が例えば1〜2μmと小さくても優れた耐擦傷性を呈するハードコート膜の形成を可能にする。即ち、本発明のコート剤によれば、所定の耐擦傷性を有するハードコート膜を、従来のコート剤を用いる場合よりも薄い膜厚で提供することができる。従って、本発明のコート剤は、ハードコートの膜厚が大きいほど顕著となる基板の「反り」を抑制することが必要である製品、例えば光ディスクを構成するのに適している。また、本発明のコート剤は光ディスク以外のプラスチック製品および木材製品にも好ましく適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で製造したジメチルシロキサン化合物1の赤外分光分析結果を示す図である。
【図2】 実施例で製造したジメチルシロキサン化合物3の赤外分光分析結果を示す図である。
Claims (7)
- 前記ジメチルシロキサン化合物が、一般式(b):
で示される化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)および1,3‐ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)から選択される1種のジイソシアネートとを反応させて得られた中間生成物をトリアクリル酸ペンタエリスリトールまたはペンタアクリル酸ジペンタエリスリトールと反応させることにより得られる、請求項1に記載の光ディスク。 - 前記コート剤が、重合性不飽和基を有する化合物を有効成分として更に含有する請求項1または2に記載の光ディスク。
- 前記コート剤が、前記重合性不飽和基を有する化合物を、ジメチルシロキサン化合物100重量部に対して5〜500重量部含有する請求項3に記載の光ディスク。
- 前記重合性不飽和基を有する化合物が、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸オリゴエステルプレポリマー、不飽和ニトリル、不飽和アミド、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、カルボン酸ビニルエステル、および芳香族ビニル化合物から成る群から選択される1または複数の化合物である請求項3または請求項4に記載の光ディスク。
- 前記コート剤が、硬化触媒を有効成分として更に含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ディスク。
- 前記ハードコート膜の厚さが0.3〜3μmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ディスク。
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