JP4269778B2 - 圧延加工の金属組織予測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料に対する圧延加工時の金属組織を数値解析によって予測するための金属組織予測方法に関し、特に金属組織予測精度を高める技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧延加工、たとえば熱間圧延加工を金属材料に対して施す場合、その金属材料の機械的性質に密接に関連する金属組織を最適なものとすることが望まれる。たとえば金属材料がニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼である場合、γ鉄固溶体であるオーステナイトの結晶が金属材料の全断面において均一な微細粒となることが望まれる。従来、オーステナイトの結晶粒は圧延加工条件によってその結晶粒の大きさが変化させられることから、実験や試作を繰り返して、経験的にその圧延加工条件が設定されて来た。しかし、このような方法では、新しい製品を得るための新しい材料や加工工程を適用しようとする際には、製造工程で実施しようとするまでに長時間の実験や試作を必要とするとともに、費用も大きなものとなっていた。特に、設定条件が複雑な多段の圧延加工工程を導入しようとする場合には、各段における条件の組み合わせが無限に存在するので、上記の不都合が顕著となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し、特許文献1に示すように、有限要素法変形解析を用いて、圧延加工の被加工材料内の各要素毎の変形解析を行うとともに、その要素毎の変形解析結果と全ひずみ形組織予測解析とを連成させる技術が提案されている。このような解析は、全要素毎に、そのひずみに基づいて金属組織を予測するので、多段圧延工程を経た被加工材料における圧延加工の金属組織が予測可能とされる。しかしながら、このような解析技術では、被加工材料の加工前の状態と加工終了後の状態との全変形量(全ひずみ)から各要素毎の歪みを求めてそれから組織予測を行う全ひずみ形組織予測法と称されるものであるため、加工中の温度やひずみ速度の変動に対応できないので、金属組織の解析精度が十分に得られないという欠点があった。すなわち、金属材料ではその変形中の条件に応じて再結晶挙動が変化するのであるが、上記全ひずみ形組織予測法では、加工中の動的な組織変化を正確に予測できないため、金属組織の解析精度が十分に得られないのである。
【0004】
また、上記に対し、特許文献2に示すように、数値解析による熱間加工時の金属組織の予測方法が提案されている。これによれば、各要素に対応する節点の歪み速度が予め設定された判定値を超える場合は予め記憶された変形中の再結晶挙動に関するデータベースたとえば変形中の再結晶モデルを用いて再結晶挙動すなわち動的な組織変化を計算単位(インクリメント)毎に逐次算出し、上記節点の歪み速度が予め設定された判定値以下である場合は変形後の無負荷状態において進行する再結晶挙動、静的再結晶完了後の粒成長挙動、または未再結晶領域における転位や歪みの残留挙動に関するデータベースたとえば非変形中の再結晶モデルを用いて再結晶挙動を計算単位毎に算出する技術が提案されている。このような解析技術では、計算単位毎の温度、歪み、歪み速度から得られる温度増分、歪み増分、歪み速度増分に基づいて、変形中であれば変形抵抗挙動および変形中の再結晶挙動を示す予め記憶された関係(データベース)から変形抵抗および再結晶の増分を逐次算出し、非変形中(インターバル)であれば、変形後の無負荷状態において進行する再結晶挙動、静的再結晶完了後の粒成長挙動、または未再結晶領域における転位や歪みの残留挙動に関する予め記憶された関係(データベース)から、再結晶、粒成長、或いは転位や歪みの増分を逐次算出するものであるので温度や歪みの変化に対応でき、被加工材料の異なる部分を逐次変形する工程が繰り返される鍛造加工のような場合でも粒度の不均一な分布を見過ごすことがなくなり、組織予測が正確となる。しかしながら、このような解析技術は、インクリメントを持たない定常解析には適用できないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−225405号公報
【特許文献2】
特開2003−064457号公報
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、圧延加工される被加工材料の金属組織を正確に予測可能な金属組織予測方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、所定の圧延加工を受けた被加工材料内の金属組織を予測する方法であって、(a) 前記被加工材料内を有限の要素に分割し、要素上の節点毎に温度、歪み、歪み速度を含む節点情報を代表させるとともに、予め記憶された圧延シミュレータから、前記圧延加工後の定常的変形状態を表す節点情報を該節点毎に算出する定常解析工程と、(b) 予め記憶された過渡変化モデルから、その定常解析工程において算出された圧延加工後の節点情報と圧延加工前の節点情報に基づいてそれらの間の過渡的な温度、歪み、歪み速度を順次示すために経過時間情報を有する節点情報を生成する節点情報生成工程と、(c) その節点情報生成工程において算出された経過時間情報を有する節点情報に基づいて、前記圧延加工に関連して流線に沿ってその圧延加工前の値から加工後の値へ逐次変化する前記温度、歪み、経過時間の増分を前記節点毎に逐次算出する増分算出工程と、(d) 予め記憶された増分形組織予測モデルから、該増分算出工程により逐次算出された流線上の節点毎の温度、歪み、経過時間の増分に基づいて、前記流線に沿ってそれぞれ位置する全節点について、圧延加工前から圧延加工後における前記被加工材料の再結晶率および平均粒径の少なくとも一方を算出する組織予測算出工程とを、含むことにある。
【0008】
【発明の効果】
このようにすれば、圧延シミュレータからの圧延加工前の節点情報と圧延加工後の節点情報とから、流線に沿ってその圧延加工前の値から加工後の値へ逐次変化する前記温度、歪み、歪み速度の経過時間毎に節点情報が生成され、増分形組織予測モデルから経過時間の増分に基づいて圧延加工前から圧延加工後における前記被加工材料の再結晶率および平均粒径の少なくとも一方が算出されることから、圧延による塑性変形途中において逐次変化する温度、歪み、歪み速度から被加工材料の再結晶率および平均粒径の少なくとも一方が算出されて、その分の動的再結晶も加味されるので、金属材料内の粒成長が正確に見積もられる傾向となって、金属組織の解析精度が十分に得られ、正確に金属組織を予測することが可能となる。
【0009】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記組織予測算出工程は、前記流線上の節点の歪み速度が予め設定された判定値を超える場合は変形中の再結晶挙動に関する動的再結晶予測モデルを用いて再結晶率および平均粒径の少なくとも一方を逐次算出し、その流線上の節点の歪み速度が予め設定された判定値以下である場合は変形後の無負荷状態において進行する再結晶挙動、静的再結晶完了後の粒成長挙動、または未再結晶領域における転位や歪みの残留挙動に関する静的再結晶予測モデルを用いて再結晶率および平均粒径の少なくとも一方を逐次算出するものである。このようにすれば、歪み速度すなわち変形速度の大きい節点部分では変形中の再結晶挙動に関する動的再結晶予測モデルから動的再結晶の計算が行われ、歪み速度すなわち変形速度の小さい節点部分では変形後の無負荷状態において進行する再結晶挙動、静的再結晶完了後の粒成長挙動、または未再結晶領域における転位や歪みの残留挙動に関する静的再結晶予測モデルから静的再結晶の計算が行われるので、被加工材料の断面内において変形域と未変形域とが混在しても計算が可能となる利点がある。
【0010】
また、好適には、前記所定の圧延加工は多段階の圧延加工を行うための複数組の圧延ロールを用いた熱間多段圧延加工である。このようにすれば、熱間多段圧延加工において、数値解析によって金属組織の解析が行われ、正確に金属組織を予測することが可能となる。
【0011】
また、好適には、前記被加工材料はニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼であり、前記組織予測算出工程は、そのニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼のオーステナイト組織の最適化のためにその再結晶率および平均粒径の少なくとも一方を算出するものである。このようにすれば、ニッケル基耐蝕性耐熱性合金またはオーステナイト系耐熱鋼オーステナイト組織の再結晶率および平均粒径の少なくとも一方に基づいてその金属組織が予測される。
【0012】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は簡略化されており、それら各部の寸法等は必ずしも正確に描かれていない。
【0013】
図1は、本発明の一例が実行される装置例である金属組織予測装置10の構成を概略示す図である。この金属組織予測装置10は、CPU(演算制御装置)12,RAM(一時記憶装置)14、ROM(読出専用記憶装置)16、モニタ装置(画像表示装置)18、圧延条件値などが入力されるキーボード(キー入力装置)20、たとえば外部に接続された大容量記憶装置22などが、互いにデータバスライン24を介して相互に接続されている所謂ストアードプログラム式のコンピュータ(電子制御装置)であり、CPU12は、RAM14の一時記憶機能を利用しつつ、予めROM16などに記憶されたプログラムに従って演算処理を実行し、予測した金属組織をモニタ装置18上に表示させたり、或いは他のコンピュータへ出力させる。
【0014】
上記大容量記憶装置22には、たとえば図2に示す熱間多段圧延装置26による熱間圧延加工が施される被加工材料28の金属組織を予測するための、圧延シミュレータ40、過渡変化モデル42、増分形組織予測モデル44がそれぞれ予め記憶されている。上記熱間多段圧延装置26は、たとえば図3に示すような孔型の圧延ロール30が直列配置された6ステップの圧延場所毎に6組備え、一対の圧延ロール30の環状溝32により形成された孔を通して被加工材料28を送ることにより、図4の左から右へ向かう断面形状に示すように順次オーバル形状ー丸形状を繰り返し且つ径が順次小さくなるように圧延する。
【0015】
上記圧延シミュレータ40は、理論式に基づく計算プログラムであって、被加工材料28内を有限の要素に分割し、要素上の節点毎に温度T、歪みε、歪み速度ε(=dε/dt)を含む節点情報Fを代表させるとともに、上記圧延加工前後の変形(寸法差)から圧延加工後の定常的変形状態を表す節点情報FA (TA ,εA ,ε A )をその節点毎に算出するために用いられる変形解析プログラムである。この圧延シミュレータ40から得られる節点情報Fには、温度TA 、歪みεA 、歪み速度ε A が含まれるが、圧延加工開始からの経過時間tは含まれない。
【0016】
上記過渡変化モデル42は、上記圧延加工前の定常的変形状態を表す節点情報FF (TF ,εF ,ε F )および圧延加工後の定常的変形状態を表す節点情報FA (TA ,εA ,ε A )から、それら節点情報FF とFA との間の過渡的な温度、歪み、歪み速度を順次示すために経過時間情報tを有する節点情報Fn (Tn ,εn ,ε n ,tn )を逐次生成するために用いられる。ここで、tn (=L/Vm )は節点の平均速度Vm と要素の稜線長さLとから算出される。たとえば図5の節点情報F2 (T2 ,ε2 ,ε 2 ,t2 )および節点情報F1 (T1 ,ε1 ,ε 1 ,t1 )はその一例であり、節点情報F2 (T2 ,ε2 ,ε 2 ,t2 )は節点情報F1 (T1 ,ε1 ,ε 1 ,t1 )の所定の時間増分(t2 −t1 )後すなわち計算時間単位Δt後の情報を示している。
【0017】
上記増分形組織予測モデル44は、過渡期間内を逐次表すように生成された上記経過時間情報tを有する節点情報Fn (Tn ,εn ,ε n ,tn )の各流線に沿った増分から節点毎に組織予測をするために用いられる予め実験的に求められた関係である。この増分形組織予測モデル44には、節点Fn の歪み速度ε n がたとえば0.05/s程度の所定の判定値εj を超える場合に用いられる動的再結晶予測モデル46と節点Fn の歪み速度ε n が所定の判定値εj 以下の場合に用いられる静的再結晶予測モデル48とが含まれている。
【0018】
上記被加工材料28は、たとえばニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼であり、前記金属組織予測装置10は、そのニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼のオーステナイト組織の最適化のために,すなわち熱間多段圧延装置26の最適な圧延条件を見いだすために、その圧延条件に応じて、被加工材料28の再結晶率Xおよび平均粒径d(μm)の少なくとも一方を算出する。すなわち、前記金属組織予測装置10は、たとえば図5に例示するように、(a) 被加工材料28内を有限の要素に分割し、要素上の節点毎に温度T、歪みε、歪み速度εを含む節点情報Fを代表させるとともに、予め記憶された圧延解析シミュレータ40から、圧延加工後の定常的変形状態を表す節点情報FF およびFA を節点毎に算出する定常解析工程と、(b) 予め記憶された過渡変化モデル42から上記定常解析工程において算出された圧延加工後の節点情報FA と圧延加工前の節点情報FF に基づいてそれらの間の過渡的な温度T、歪みε、歪み速度εを順次示すために経過時間情報tを有する節点情報Fn (Tn ,εn ,ε n ,tn )を生成する節点情報生成工程と、(c) その節点情報生成工程において算出された経過時間情報tを有する節点情報Fn (Tn ,εn ,ε n ,tn )に基づいて、金属組織予測装置10の圧延加工に関連して流線に沿って圧延加工前の値FF から加工後の値FA へ逐次変化する温度の増分dT、歪みの増分dε、経過時間の増分dtを節点毎に逐次算出する増分算出工程と、(d) 予め記憶された増分形組織予測モデル44から、その増分算出工程により逐次算出された流線上の節連毎の温度の増分dT、歪みの増分dε、経過時間の増分dtに基づいて、圧延加工前から圧延加工後における被加工材料28の再結晶率Xおよび平均粒径d(μm)の少なくとも一方を算出する組織予測算出工程とを順次実行する。
【0019】
図5は、有限の要素に分割された被加工材料28の軸線Cを含む断面であり、その断面において径方向において要素を分割しつつ軸方向に延びる曲線FL1 、FL2 、FL3 、FL4 が流線に対応している。上記定常解析工程では、すべての流線FL1 、FL2 、FL3 、FL4 にそれぞれ沿って位置する全節点について、節点情報FF およびFA が得られる。また、上記節点情報生成工程、増分算出工程、および組織予測算出工程は、上記流線FL1 、FL2 、FL3 、FL4 毎に繰り返し実行されることにより、全流線FL1 、FL2 、FL3 、FL4 に沿ってそれぞれ位置する全節点について、圧延加工前から圧延加工後における被加工材料28の再結晶率Xおよび平均粒径d(μm)などの金属組織情報[Xlmn ,dlmn ]が生成される。
【0020】
(1) 式は上記静的再結晶モデル48で用いられる増分形モデルの関数式すなわち粒成長式の一例である。(1) 式において、dは平均粒径、tは経過時間、Tは温度、C1 乃至C3 は係数、Qは活性エネルギ、Tm は( T1 +T2)/2である。係数C1 乃至C3 および活性エネルギQは、予め実験から求められる。
【0021】
d2 C1=d1 C1+
C2 ( t2 C3−t1 C3) ・exp(−Q/8.31 ・Tm ) (1)
【0022】
図6(a) 乃至(c) に示すように、オーステナイト組織などにおいては、塑性加工によって高密度の転位が生じた金属の融点の1/2程度の温度の焼きなまし過程では、再結晶により転位のほとんどない小結晶が順次発生して増加する。上記再結晶率Xとは、その小結晶の発生率を示す値であり、図6(a) に示すような未だ小結晶が生じない状態は再結晶率Xが零で示され、図6(c) に示すような全面に小結晶が生じた状態は再結晶率Xが1で示される。この小結晶の発生率が高くなる程小さな結晶が増加して結晶の平均粒径dが小さくなるので、再結晶率Xが大きくなるほど平均粒径dが小さくなる関係にある。
【0023】
図7は、前記金属組織予測装置10の制御機能および作動を説明するフローチャートである。図6において、定常解析手段或いは前記定常解析工程に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1では、図5の上段に示すように被加工材料28内が有限の要素に分割され、分割された要素上の節点F毎に温度T、歪みε、歪み速度ε(=dε/dt)を含む節点情報Fを代表させるとともに、一連の圧延パス毎に、予め記憶された圧延シミュレータ40から前記熱間多段圧延装置26の圧延条件および被加工材料28の物性などに基づいてその圧延加工前の定常的変形状態を表す節点情報FF および圧延加工後の定常的変形状態を表す節点情報FA が節点毎にそれぞれ算出される。後述の図8は、上記圧延条件として、たとえば、被加工材料28の57mmφから28mmφへ全6パスの圧延、圧延ロール径360mm、初期温度1373K、最終圧延速度2m/sが設定された結果を示している。次いで、S2では、上記節点の平均速度Vm と稜線長さLが算出されるとともに、それらに基づいて経過時間tn (=L/Vm )が算出される。
【0024】
次に、節点情報生成手段或いは前記節点情報生成工程に対応するS3では、予め記憶された過渡変化モデル42から上記S1において算出された圧延加工後の節点情報FA と圧延加工前の節点情報FF に基づいてそれらの間の過渡的な温度T、歪みε、歪み速度εを順次示すために経過時間情報tを有する節点情報Fn (Tn ,εn ,ε n ,tn )が節点毎に生成される。次に、増分算出手段或いは前記増分算出工程に対応するS4では、上記S3において算出された経過時間情報tを有する節点情報Fn (Tn ,εn ,ε n ,tn )に基づいて、流線上の節点毎に、金属組織予測装置10の圧延加工に関連して圧延加工前の値FF から加工後の値FA へ逐次変化する温度の増分dT、歪みの増分dε、経過時間の増分dtが節点毎に逐次算出される。たとえば図5に示すように、所定の計算時間単位前後の所定の節点情報をF1 (T1 ,ε1 ,ε 1 ,t1 )およびF2 (T2 ,ε2 ,ε 2 ,t2 )とすると、上記温度の増分dTは(T2 −T1 )から求められ、上記歪みの増分dεは(ε2 −ε1 )から求められ、上記経過時間の増分dtは(t2 −t1 )から求められる。なお、歪み速度ε 2 はdε/dtである。
【0025】
続いて、組織予測算出手段或いは前記組織予測算出工程に対応するS5乃至S7では、予め記憶された増分形組織予測モデル44から、上記S4により逐次算出された計算時間単位毎の温度の増分dT、歪みの増分dε、歪み速度の増分dεに基づいて、圧延加工前から圧延加工後における被加工材料28の再結晶率Xおよび平均粒径d(μm)が節点毎に逐次算出される。すなわち、S5では、所定の節点Fn の計算時間単位Δt毎の歪み速度ε n が所定の判定値εj を超えるか否かに基づいて、その所定の節点Fn が変形状態であるか未変形状態であるかが判定される。S5において変形状態であると判定された場合すなわち計算時間単位Δt毎の節点の歪み速度ε n が予め設定された判定値εj を超える場合は、S6において、変形中の再結晶挙動に関する動的再結晶予測モデル46を用いて再結晶率Xおよび平均粒径dが逐次算出される。しかし、上記S5において未変形状態であると判定された場合すなわち上記計算時間単位Δt毎の歪み速度ε n が予め設定された判定値εj 以下である場合は、S7において、変形後の無負荷状態において進行する再結晶挙動、静的再結晶完了後の粒成長挙動、または未再結晶領域における転位や歪みの残留挙動に関する静的再結晶予測モデル48を用いて再結晶率Xおよび平均粒径dが逐次算出される。前記所定の節点F2 における再結晶率をX2 、平均粒径をd2 とすると、それら再結晶率X2 および平均粒径d2 は、前記温度の増分dT、歪みの増分dε、経過時間の増分dt、およびd0 の関数[X2 ,d2 ]=f[dT,dε,dt,d0 ]である。ここで、d0 は流線に沿った1つ前の組織情報[X1 ,d1 ]である。このような組織情報が、全流線毎に沿ってそれぞれ位置する全節点毎に算出される。
【0026】
そして、表示手段或いは表示工程に対応するS8では、節点毎に算出(予測)された再結晶率Xおよび平均粒径dが表示される。図8の実線は所定の節点における表示例である。図8の実線は再結晶率Xおよび平均粒径dの予測値を示し、過渡区間における節点情報を用いない従来の全ひずみ形組織予測モデルによる予測値を示す破線と対比して表示されている。図8において、P1 乃至P6 は、前記熱間多段圧延装置26における圧下(挟圧)パス区間を示し、その区間では塑性加工によって高密度の転位が生じるために再結晶率Xがその度に0に低下させられている。図8のA1 乃至A6 区間は熱間多段圧延装置26における圧下パスから次の圧下パスまでの再結晶区間を示し、再結晶率Xはこの再結晶区間毎に対数曲線的に上昇させられている。ここで、第4圧下パスP4 以後の再結晶区間において、実線に示す再結晶率Xが破線に示す再結晶率Xに対して上まわる結果、平均粒径dについて大きな差異が発生している。破線に示す全ひずみ形組織予測モデルによる予測値は、過渡区間における節点情報により動的再結晶が予測されない分だけ再結晶の完了時期が遅れて予測されるので、粒成長が小さく見積もられるのに対し、実線に示す本実施例の予測値では、過渡区間における節点情報により動的再結晶が予測されるので、図9の実線に示すように、実際の金属組織内の実測値に近似させられる。図9は、被加工材料28の中心から距離を横軸とし且つ平均粒径dを縦軸とした二次元座標であって、破線は上記全ひずみ形組織予測モデルによる予測値を示し、○点は実測値を示している。
【0027】
上述のように、本実施例によれば、圧延シミュレータ40からの圧延加工前の節点情報FF と圧延加工後の節点情報FA とから、その圧延加工前の値から加工後の値へ逐次変化する温度T、歪みε、歪み速度εの経過時間毎に経過時間情報tを有する節点情報Fn が生成され、増分形組織予測モデル44から流線に沿った経過時間単位毎の増分に基づいて圧延加工前から圧延加工後における被加工材料28の再結晶率Xおよび平均粒径dの少なくとも一方が算出されることから、圧延による塑性変形途中において逐次変化する温度T、歪みε、歪み速度εから被加工材料28の再結晶率Xおよび平均粒径dの少なくとも一方が算出されて、そのような動的再結晶加味されて予測されるので、被加工材料28内の粒成長が正確に見積もられる傾向となって、被加工材料28内の金属組織の解析精度が十分に得られ、正確に金属組織を予測することが可能となる。
【0028】
また、本実施例によれば、組織予測算出工程は、計算時間単位毎の節点の歪み速度εが予め設定された判定値εj を超える場合は変形中の再結晶挙動に関する動的再結晶予測モデル46を用いて再結晶率Xおよび平均粒径dの少なくとも一方を逐次算出し、その計算時間単位毎の節点の歪み速度εが予め設定された判定値εj 以下である場合は変形後の無負荷状態において進行する再結晶挙動、静的再結晶完了後の粒成長挙動、または未再結晶領域における転位や歪みの残留挙動に関する静的再結晶予測モデル48を用いて再結晶率Xおよび平均粒径dの少なくとも一方を逐次算出するものであることから、歪み速度εすなわち変形速度の大きい節点部分では変形中の再結晶挙動に関する動的再結晶予測モデル46から動的再結晶の計算が行われ、歪み速度εすなわち変形速度の小さい節点部分では変形後の無負荷状態において進行する再結晶挙動、静的再結晶完了後の粒成長挙動、または未再結晶領域における転位や歪みの残留挙動に関する静的再結晶予測モデル48から静的再結晶の計算が行われるので、被加工材料28の断面内において変形域と未変形域とが混在しても計算が可能となる利点がある。
【0029】
また、本実施例によれば、熱間多段圧延装置26による熱間多段圧延加工についての被加工材料28の金属組織の解析を、容易に且つ正確に予測することができる利点がある。
【0030】
また、本実施例の被加工材料28はニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼から構成されているので、そのニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼のオーステナイト組織の最適化のためにその再結晶率Xおよび平均粒径dの少なくとも一方が算出され、その金属組織が予測される利点がある。
【0031】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施される。
【0032】
例えば、前述の実施例において、増分形組織予測モデル44は、実験的に予め求められたものであり、予測を適用しようとする被加工材料28の構成などに応じて種々変形が加えられるものである。
【0033】
また、前述の実施例では、6パスの熱間多段圧延装置26について説明されていたが、圧延シミュレータ40、過渡変化モデル42、増分形組織予測モデル44とパス数や圧延形状などの異なる他の圧延加工形態の装置にも適用可能である。
【0034】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例が実行される装置例である金属組織予測装置の構成を概略示す図である。
【図2】図1の金属組織予測装置によって金属組織が予測される加工を行う熱間多段圧延装置を概略示す図である。
【図3】図2の熱間多段圧延装置に用いられる孔型の圧延ロールの一例を示す図である。
【図4】図2の熱間多段圧延装置において、各圧延パスにおいて加工される被加工材料の断面形状を説明する図である。
【図5】図1の金属組織予測装置における予測方法を説明する図である。
【図6】図1の金属組織予測装置によって予測される再結晶率の定義を説明する図である。
【図7】図1の金属組織予測装置による金属組織予測作動の要部を説明するフローチャートである。
【図8】図1の金属組織予測装置の金属組織予測出力の一例を示す図である。
【図9】図1の金属組織予測装置の金属組織予測の精度を説明する図である。
【符号の説明】
10:金属組織予測装置
26:熱間多段圧延装置
28:被加工材料
40:圧延シミュレータ
42:過渡変化モデル
44:増分形組織予測モデル
46:動的再結晶モデル
48:静的再結晶モデル
Claims (4)
- 所定の圧延加工を受けた被加工材料内の金属組織を予測する方法であって、
前記被加工材料内を有限の要素に分割し、要素上の節点毎に温度、歪み、歪み速度を含む節点情報を代表させるとともに、予め記憶された圧延シミュレータから、前記圧延加工後の定常的変形状態を表す節点情報を該節点毎に算出する定常解析工程と、
予め記憶された過渡変化モデルから該定常解析工程において算出された圧延加工後の節点情報と圧延加工前の節点情報に基づいてそれらの間の過渡的な温度、歪み、歪み速度を順次示すために経過時間情報を有する節点情報を生成する節点情報生成工程と、
該節点情報生成工程において算出された経過時間情報を有する節点情報に基づいて、前記圧延加工に関連して流線に沿って該圧延加工前の値から加工後の値へ逐次変化する前記温度、歪み、経過時間の増分を前記節点毎に逐次算出する増分算出工程と、
予め記憶された増分形組織予測モデルから、該増分算出工程により逐次算出された流線上の節点毎の温度、歪み、経過時間の増分に基づいて、前記流線に沿ってそれぞれ位置する全節点について、圧延加工前から圧延加工後における前記被加工材料の再結晶率および平均粒径の少なくとも一方を算出する組織予測算出工程と
を、含むことを特徴とする圧延加工の金属組織予測方法。 - 前記組織予測算出工程は、前記流線上の節点の歪み速度が予め設定された判定値を超える場合は変形中の再結晶挙動に関する動的再結晶予測モデルを用いて再結晶率および平均粒径の少なくとも一方を逐次算出し、該流線上の節点の歪み速度が予め設定された判定値以下である場合は変形後の無負荷状態において進行する再結晶挙動、静的再結晶完了後の粒成長挙動、または未再結晶領域における転位や歪みの残留挙動に関する静的再結晶予測モデルを用いて再結晶率および平均粒径の少なくとも一方を逐次算出するものである請求項1の圧延加工の金属組織予測方法。
- 前記所定の圧延加工は、多段階の圧延加工を行うための複数組の圧延ロールを用いた熱間多段圧延加工である請求項1または2のいずれか1の圧延加工の金属組織予測方法。
- 前記被加工材料はニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼であり、前記組織予測算出工程は、該ニッケル基耐蝕耐熱合金またはオーステナイト系耐熱鋼のオーステナイト組織の最適化のためにその再結晶率および平均粒径の少なくとも一方を算出するものである請求項1乃至3のいずれか1の圧延加工の金属組織予測方法。
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