肺気腫、慢性気管支炎等の呼吸器系疾患の治療法として最も効果的なものの1つに濃縮酸素空気などの呼吸用気体(以下、単に“ガス”とも称する)を吸引する酸素吸入療法があり、近年この療法のために酸素ボンベあるいは呼吸用気体供給装置が使用されるようになってきた。また、このような療養とは別に、健常者に対しても、疲労回復やリラクゼーションを目的として、このような装置が用いられるようになってきた。
以上に述べた呼吸用気体の供給装置として、空気中からゼオライトなどの吸着剤によって窒素ガスを選択的に吸着除去して濃縮酸素ガスを製造する吸着型濃縮酸素生成装置を使用するものがある。この種の装置で使用されるゼオライトなどの吸着剤は、高圧下で空気中の窒素ガスを選択的に吸着し、低圧下で吸着した窒素ガスを放出する性質をもっているために、空気から濃縮酸素を製造するために好適に使用される反面で、高圧下で窒素ガスと同時に水分も吸着する好ましくない性質を有している。このため、製造された濃縮酸素ガスは、湿度がほとんどゼロに近い絶乾状態となっている。なお、このことは酸素ボンベに注入された濃縮酸素についてもいえることである。ところが、このような絶乾状態に近い呼吸用ガスが使用者に供給されると、鼻腔粘膜を乾燥させ、使用者に苦痛を与えるという問題を惹起する。
そこで、前記のようにして製造された濃縮酸素ガスを精製水中へバブリングすることなどにより加湿し、所望の程度に調湿した後、使用者へ供給することが一般的に行われている。ところが、このような目的で装置本体に取付けられた加湿器は、ほぼ毎日のように水の補給や水の交換のために装置本体に対して着脱される。このため、特に、装着時において、体力の乏しい患者の力では加湿器の蓋が締めきれずにリークが起こったり、装置本体への加湿器の取付けが不完全になされたりすることが生じる。そうすると、呼吸用ガスが途中で漏れてしまって所定流量のガスが使用者に送出されないこととなるが、呼吸用気体供給装置においては、使用者に対して適切な量のガスが確実に供給されていることが大前提であることは言うまでもない。
そこで、特開平9−66107号公報において、酸素ガスの供給源から送出する酸素ガスの流量を設定するための流量設定器と加湿器とを経由させた後、加湿後の酸素ガス流量を検知して表示する流量計を配設する技術が開示されている。しかしながら、この従来技術は、酸素ガスの供給回路中に流量計、具体的には流量の検出精度の低いフロート式流量計を配設するものであり、しかも、流量の確認(チェック)を使用者の目視により行うものである。したがって、使用者が常に流量異常を監視する必要があり、使用者に対して負担となる。しかも、近年のように、患者の酸素吸入量の処方が病状や疾患などにより細分化されてくると、この面からも大まかな流量値ではなく、精度の高い流量の確認をフロート式流量計で目視により行うことは測定精度上からも困難である。
また、特開平7−171216号公報には、ガス供給源と加湿器との間に送出するガス流量を設定するための流量設定器を配設するとともに、この流量設定器の前後の差圧(又は流速)を検出し、ガス供給回路中のガス流量を感知する技術が開示されている。しかしながら、この従来技術では、加湿器の不具合に基づいて発生する、加湿器からのガスのリークや、取付け不完全さに基づく供給ガス量の変動を正しく検出することができないという問題がある。
また、実開平6−39008号公報には、加湿器の取付けが不完全なときに、警報を発生して操作者などに知らせるようにした医療用酸素濃縮気体供給装置が開示されている。しかしながら、この従来技術は加湿器の取付け時の不具合については解消されるが、これ以外の原因による流量異常を検出することができないという問題がある。
また、特開平10−290836号公報には、加湿器の受器と蓋との間に生じる酸素ガスのシール洩れを可視化したものが提案されている。しかしながら、この従来技術では、加湿器を取付けた時の酸素ガスのリークを注視していれば感知することができるが、注視していないと気がつかないため、使用中にリークが発生した場合には感知できないという問題がある。
そこで、特開2000−262619号公報において、酸素ガスを使用者に供するために流量設定器により所定流量を設定し、さらに、加湿器を経由させて酸素吸入手段により加湿された酸素ガスを供給する際に、加湿器の下流側に加湿酸素ガスの流量を検知する流量検出手段を配設することが提案されている。なお、この従来技術では、流量設定器で設定した設定流量値(a)と流量検出手段により実測された実測流量値(b)とを比較し、流量異常(a≠b)を検出し、異常が検出されたら、警報表示を行ったり、警報アラームを作動させたりすることが提案されている。また、この従来技術では、流量検出手段として層流式流量計、乱流式流量計(ベンチュリー管式またはオリフィス式など)、または、ガスの流量を重さ(質量流量、マスフロー)で検知する質量流量計が提案されている。
確かに、このような従来技術によると、加湿器にリークや流動抵抗の異常(例えばフィルターの目詰りなど)、あるいはカニューラなどの酸素吸入手段に異常(例えばカニューラやチューブの潰れ、閉塞など)があると、これを検知することができる。
しかしながら、例えばカニューラやチューブの潰れの場合には,ガスが系外に漏出している訳ではないから、加湿器に発生したリークや流動抵抗の異常(例えばフィルターの目詰りなど)とは異なり、正常なガス流量が使用者に供給されている限り、装置を継続して使用しても全く問題がない。それにもかかわらず、全て一律に流量異常と判断して装置の使用を一時停止して、装置の異常を確認するために、加湿器の異常からチューブ潰れまでを一律にチェックすることには問題がある。
そこで、この従来技術では、前述の問題を解消するために、加湿器の下流側に加湿酸素ガスの流量を検知する流量検出手段を配設し、流量検出手段とカニューラなどの酸素吸入手段の間に、更に、半導体圧力センサー、容量変換型圧力センサーなどからなる圧力検出手段を配設することが提案されている。そして、圧力調整手段と流量設定器とによって設定された所定流量における正常圧力値(c)と前記圧力検出手段により実測された実測圧力値(d)とを比較し、圧力異常(c≠d)が検出されたとき、圧力検出手段より下流側のカニューラやチューブなどの酸素吸入手段において閉塞などの異常が発生していることを検出することが提案されている。確かにこの技術によれば、圧力検出手段より下流側のカニューラやチューブなどの酸素吸入手段において閉塞などの異常が発生していることを検出することができるという利点を有している。
しかしながら、前記特開2000−262619号公報に開示された従来技術では、チューブの潰れに係る異常と加湿器に係る異常とを判別するために、圧力検出手段とこれに関連するシステムを新たに設ける必要が生じる。また、この従来技術では、加湿器などに異常が発生したことを検知することはできても、流量を直接測定せずに圧力による間接的な異常検知であるために、検知された異常に対応して、使用者に供給するガス流量を供給することに関しては全く無力である。
しかも、この圧力異常検出システムでは、系外へのガス漏れとは直接関係がないカニューラに接続するチューブの潰れや折れ曲がりなどの一時的な問題は発生してはいるが、呼吸用ガスは使用者に正常に供給されているような場合であっても、警報器が作動する。更に、この従来技術では、流量異常が検知されても、それが一時的な問題であるか、あるいは、それ以外の問題であるかを警報器が作動した際に識別することはできず、このような判断は使用者に委ねられることとなり、その上、このような判断は、例えば、装置の使用を一旦停止してから行う必要がある。
ところが、使用者に対して適正なガス流量を供給することができる状態であるならば、使用者が引き続いて装置の使用を継続するようにすることが、装置の使用を一旦停止するよりも好ましいことは言うまでもない。何故ならば、カニューラに接続するチューブの潰れや折れ曲がりなどの一時的に発生した問題は、使用者が動き回ったり、誤ってチューブ上に置かれた障害物が取り除かれたりすると、その要因が除去されて直ぐに回復する性質を持つからである。
ただし、この場合には、前述のような一時的な問題が生じても、所定の処方に従った一定のガス流量が、使用者に安定に供給される技術が要求される。しかしながら、このような要望にもかかわらず、従来技術としては、一般的に、特開平9−66107号公報、あるいは特開2000−262619号公報などに開示されているようなオリフィス式の流量設定器を用いて一定流量のガスを供給する方式が広く用いられている。
なお、このオリフィス式の流量設定器を簡単に説明すると、この流量設定器は、呼吸用ガスを供給する流路上に、小さな孔を持つオリフィス板を設置し、このオリフィス板の前後に生じる圧力差を利用してガス流量を設定するものである。すなわち、オリフィス板の上流側の圧力が一定とすると、オリフィスを通過するガスの流量はその孔の大きさに依存するから、オリフィスの径を切り替えることによって。所定の流量に設定しようとするものである。
通常、前記オリフィス式の流量設定器は、供給されるガス流量の設定と同じ数だけのオリフィスを備え、使用者が流量設定を切り替えると、そのガス流量に対応した径を持つオリフィスに切り替わるものが一般的である。ただし、使用者が設定する各ガス流量に対するオリフィス径の大きさは、例えば呼吸用気体供給装置本体と使用者の間に6mのチューブを用いた場合などの一定の条件を設定して、この条件下で決定されたものである。また、使用者が流量設定を切り替える設定流量切り替え器は一般的にダイヤル式となっており、流量を調節するオリフィス部分と機械的に直結しているものがほとんどである。
ここで、このような呼吸用気体供給装置における実際の使用状況を想定すると、使用者は、呼吸用気体供給装置の本体を特定の箇所に固定して置いたまま歩き回ったり、スペースの問題から本体を別の部屋に置いて使用したりすることが多い。そうすると、このような実際の使用状況下では、使用者が装置本体から距離を置いて離れざるを得ず、どうしてもカニューラと装置本体との間のチューブを延長して使用することとなる。
ところが、延長されたチューブの長さが、当初に設定した長さよりも長くなると、チューブ内を呼吸用気体が流れる際の流路抵抗が増して、必然的にオリフィス以降の2次圧力が高くなるため、オリフィス前後の差圧は、当初に設定された時のガスの差圧より小さくなる。このため、使用者に供給されるガス流量が低下し、実際にチューブ中を流れるガス流量が当初に想定していたガス流量値を下回ってしまうことになる。
また、既に詳細に述べたように、カニューラおよびチューブが踏みつけられるなどして潰れた場合なども、オリフィス以降の2次圧が上昇し、使用者に供給されるガス流量が低下する。更には、呼吸用気体供給装置自体の性能低下によって使用者に供給されるガスの圧力が下がった場合も、オリフィスの1次圧、2次圧ともに低下するため、使用者に供給されるガス流量は低下してしまうという、既に述べた問題が再浮上してくる。
このように、従来の呼吸用気体供給装置に使用される流量設定手段では、ガス供給経路の圧力が変化することによって、設定どおりのガス流量が使用者に供給されなくなることが大きな問題となっている。また、ダイヤル式の設定流量切り替え器を用いて設定流量を切り替える際に、使用者がダイヤルを十分に回しきれなかったときなど、ダイヤルが隣り合う2つの設定の中間で止まった場合には、設定流量切り替え器に直結したオリフィスも途中で止まってしまい、ガス流路が塞がれた状態となり、使用者にガスが供給されなくなることもある。
そこで、カニューラおよびチューブが踏みつけられるなどして潰れた場合などにおいても、安定に所定のガス流量を使用者に供給する技術が、特開2003−144550号公報に提案されている。この従来技術では、呼吸用ガスを供給する配管途中に流量測定手段を設け、この流量測定手段によって検出されたガス流量の実測値と予め設定した流量値とが合致するように、コントロールバルブの開度を制御して、使用者に供給するガス流量を常に一定値に制御しようとするものである。
しかしながら、この従来技術は、加湿器の取付け不良などに起因するガス漏れを検知することについては,無力である。何故ならば、加湿器の取付け異常によってガス漏れが生じていても、実測したガス流量を制御変数として制御する方式を採用しているからである。つまり、このような方式では、制御変数として使用するガス流量は加湿器の上流側で実測されるために、加湿器部でガスが系外へ漏れたとしても、そのまま当初に設定されたガス流量が供給されてしまうだけである。
特開平2−198357号公報
特開平6−39008号公報
特開平6−213877号公報
特開平7−171216号公報
特開平7−209265号公報
特開平8−233718号公報
特開平9−66107号公報
特開平10−290836号公報
特開2000−262619号公報
特開2001−264137号公報
特開2002−214012号公報
特開2002−214203号公報
特開2002−306603号公報
特開2003−144550号公報
特公昭61−29449号公報
実開平6−39008号公報
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の概略装置構成を模式的に例示した説明図である。この図1において、1は呼吸用気体供給装置の本体部(破線で囲んだ部分)、2は呼吸補助具、そして、3は使用者をそれぞれ示す。また、前記本体部1は、図示したように異常処理手段10、気体供給手段11、調圧手段12、制御弁手段13、流量設定手段14、流量制御手段15、第1流量測定手段16、加湿手段17、フィルター18、第2流量測定手段19などを含んで構成される。また、前記呼吸補助具2は、チューブ21とカニューラ22を少なくとも含んで構成される。
ここで、前記異常処理手段10は,流量異常検知手段10a、異常警報手段10b、及び警報解除手段10cを含んで構成されている。ただし、流量異常検知手段10aは、本発明の呼吸用気体供給装置に流量異常が発生していることを検知する手段である。なお、この異常処理手段10については、その詳細を後述する。
また、前記気体供給手段11の具体例としては、5A型ゼオライトなどの吸着剤を使用して空気から窒素ガスを選択的に除去して濃縮された酸素ガスを生成する酸素濃縮器を挙げることができる。酸素ガスよりも窒素ガスを選択的に吸着するゼオライトなどの吸着剤を充填した吸着床を使用した圧力変動吸着型酸素濃縮装置が好適に使用される。しかしながら、本発明の装置は、このような手段に特に限定するものではなく、酸素ガスを選択的に透過する高分子酸素富化膜、固体電解質膜などを使用し空気を原料として酸素を分離する手段、あるいは酸素ガスを充填した高圧容器などにも適用可能である。また、前記調圧手段12の具体例としては、高圧ガスを低圧ガスに減圧するための減圧弁、供給するガスの圧力変動を吸収する定圧弁などを例示することができる。
なお、これらの呼吸用気体供給手段11や調圧手段12、特に調圧手段12は、これから詳細に説明する制御弁手段13を安定に作動させるための好ましい条件を現出させる役割を果たしている。したがって、例示の手段に限定されること無く、これ以外の手段を使用したり、必要に応じて付帯手段を付加したりして、より好ましい条件を現出させてもよいことは言うまでもない。
次に、加湿手段17としては、精製水を収納する容器と蓋とからなる加湿器を例示することができ、前記蓋は、前記容器に精製水を注入するための開口部を形成し、かつ、精製水の注入後には容器の内部からガスが漏れ出ないように気密状態に保つ役割を果たしている。したがって、この種の加湿器では、蓋の締め付け忘れなどが生じると、ガスが容器外へ漏れ出す事態を惹起する。なお、このような精製水を必須とする加湿器とは別に、空気中に自然に存在する水蒸気を選択的に取り出して、これを加湿するためのガス中に付加する方式の加湿器も知られている。
また、前記フィルター18は、呼吸用ガスを使用者3に供給する配管経路の何れの箇所から粉塵などの異物が侵入しても、呼吸用ガスが使用者3に供給する前に、混入した異物を除去するために設けられるものであって、周知のHEPAフィルターなどを好適に使用することができる。なお。このフィルター18を設置する箇所は、加湿手段17の下流側であって、かつ第二流量検出手段の上流側とすることが好ましい。
なぜならば、粉塵などの異物やゴミが混入する箇所としては、加湿手段17部が大部分を占めるからである。しかも、加湿手段17に次いで、その下流側にフィルター18を設けることにすれば、加湿手段17部と併せてフィルター18部でのガス漏れやフィルター詰まりに係る異常も検出できるからである。更には、加湿手段17から水が入ってきても、フィルター18によって第2流量測定手段19に水が直接到達するのを阻止することができ、第2流量測定手段19を保護できるからである。
以上のように構成される本発明の呼吸用気体供給装置において、本発明の大きな特徴の一つは、所定量に設定したガス流量を使用者3へ供給するに際して、供給するガス流量を実測して所定のガス流量が供給されているかどうかを判断し、実測値が設定値から外れようとする場合には、実測値が設定値に一致するようにガス供給量を制御することにある。
また、後述するように、本発明の呼吸用気体供給装置では、加湿手段17の本体部1への取付け不良や加湿手段17を構成する精製水を収容する容器の蓋の締め忘れなどに起因して、系外へのガス漏れが発生したことを容易に検出できることを特徴とする。すなわち、本発明の装置では、加湿手段17に起因するガス漏れの検知を容易に行うことができることも大きな特徴である。そこで、このような本発明の特徴について、以下に詳細に説明する。
本発明の装置では、使用者3に所定流量に維持された呼吸用ガスを供給するために、先ず医師の処方などに従って、流量設定手段14によって、使用者3へ供給する呼吸用ガスの流量を設定することから始まる。なお、この流量設定手段14は、タッチキーなどのキー入力によって任意の設定流量をインプットできるようにしても良いし、また、予め細分化された流量区分に対応して個々に設けられた設定値を使用者3が選択することで、必要な流量値を設定できるようなインプット方式を採用しても良い。
次に、本発明の装置では、このようにして使用者3が設定したガス流量に対して、実際に供給されたガス流量が設定値となっているかどうかのチェックを、実際にガス供給回路を流れるガス流量を実測することによって行う。したがって、本発明の装置は、ガス流量を実測する必要があり、このための第1流量測定手段16と第2流量測定手段19とを加湿手段17の上流側と下流側とに加湿手段17を間に挟んで備えている。
ここで、前記第1流量測定手段16としては、超音波式流量計、層流式流量計や乱流式流量計(ベンチュリー管式など)、あるいは、ガス流量を重さ(質量流量、マスフロー)で検知する質量流量計、熱式流量計、差圧式流量計などを使用可能である。中でも、本発明の装置においては、特開平6−213877号公報、特開平7−209265号公報、特開2002−214012号公報、特開2002−214203号公報、特開2002−306603号公報などに提案されている超音波式流量計を使用することが好ましい。何故ならば、このような超音波式流量計を使用すれば、呼吸用ガスの流量と共に、安価かつ簡便に酸素濃度をも同時に測定することができるからである。
ここで、超音波式流量計を使用してガス流量を測定する原理について簡単に説明すると、測定に際して、測定しようとするガスの流れる配管中に互いに対向させて超音波を送受信する2つの超音波振動子を配置する。そして、この超音波振動子間を流れるガスに対して、ガスの流れる順方向とその逆方向とで、それぞれ超音波の伝播速度がV1[m/sec]とV2[m/sec]として測定する。そうすると、配管中を流れるガス流速V[m/sec]が、V=(V1−V2)/2 という式によって求めることができるのである。このようにして、ガス流速Vが求まると、これにガスが流れる配管の内面積[m2]を乗じれば、このガスの流量[m3/sec]を求めることができる。なお、さらに体積換算、時間換算を行えば、流量[L/min]を求めることも容易にできる。
また、ガス濃度の測定についても、超音波がガス中を伝播する速度Cは、そのガス温度T及びガス濃度Dによって変化することが知られており、気体の濃度Dは「D=f(C,T)」の式で表すことができる(例えば、特開平2−198357号公報参照)。したがって、ガス温度Tとガス中を伝わる超音波の伝播速度Cとを計測することにより気体の濃度Dを測定することができる。すなわち、被測定ガス中を伝播する音速と濃度との関係式、もしくは音速−濃度の関係テーブルを予め保持しておくことによって、測定した音速からガス濃度を容易に求めることができるのである。
また、酸素濃縮器のように使用者3に供給する呼吸用ガス(被測定ガス)が酸素ガスと窒素ガスで占められている場合のガス濃度の測定方法として、酸素ガス濃度をPとすれば、窒素ガス濃度は(1−P)と記述でき、被測定ガス中を伝播する音速は被測定ガスの温度と平均分子量の関数になることが知られているので、音速と温度を測定することで平均分子量を計算し、平均分子量=酸素分子量×P+窒素分子量×(1−P)から酸素ガス濃度Pを求める方法がある。
ところが、使用者3へ供給するガスが加湿器を通過した後に、このような超音波式測定装置でガス流量とガス濃度とを測定しようとすると、酸素濃度と水分濃度はそれぞれ独立に変化するという問題をクリアしなければならなくなる。このため、濃度と音速の関係式を導き出すためには、酸素濃度と水分濃度との間に想定される多種多様な濃度の組み合わせに対して音速を予め測定しておかなければならず、多大な労力を要することとなる。このような理由から、既に「背景技術」欄で説明した特開2000−262619号公報に提案されている従来技術のように、加湿器の後(下流側)に超音波測定装置を設置して、ガス流量とガス濃度とを測定する方法は、特に、超音波式流量計を用いてガス流量を測定しようとする限り極めて困難である。
以上に述べたような理由から、本発明の呼吸用気体供給装置では、加湿手段17の前(上流側)に、第1流量測定手段16(特に、超音波式流量計)を設置することが肝要である。しかも、加湿手段17が正常に取付けられている場合には、系外にガスが漏出することがなく、更に加湿手段17の異常検知も必要ではないため、加湿手段17の後(下流側)に第1流量測定手段16を配設する理由は余りない。
以上のように構成される本発明の装置では、第1流量測定手段16によって、配管経路を流れるガス流量を実測し、このとき実測した流量値が予め設定した設定流量値と一致するように流量制御手段15によって制御弁手段13を操作して、使用者3へ供給するガス流量を適正にフィードバック制御する。
ただし、前記流量制御手段15については、本発明の主旨を満足する限り、公知の制御装置を使用することができる。例えば、マイクロコンピュータのように、中央演算処理手段と入力データを記憶する記憶手段とを少なくとも備え、更に、測定された各種データを取り込むためのトランスデューサやA/D変換器(アナログ信号/デジタル信号変換器)などが組み込まれたインターフェース手段を含んで構成することができる。
また、前記制御弁手段13としては、一般的に工業用ガスなどの流量制御に広く用いられている汎用のコントロールバルブを使用することができ、バルブに流す電流値などの電気信号を変化させることで連続的に開度を調節できるものが好ましい。そして、このような制御弁手段13を採用することによって、設定流量値に対して使用者3に供給される実測流量値が低下したことが検出されるとバルブの開度を上げ、実測流量値が増加した場合にはバルブの開度を下げることで、使用者3に供給するガス流量を常に一定に維持することができる。
したがって、装置本体1とカニューラ22の間に延長チューブ21を取付けて装置本体1から使用者3までの距離を長くした場合や、カニューラ22やチューブ21が折れたり潰れたりして、一時的にガス流量が低下した場合にも、安定かつ精度良く使用者3へ呼吸用ガスを供給することができる。以下、流量制御手段15の具体的な実施例について説明するが、この具体例では、制御弁手段13としてコントロールバルブを使用することを前提として説明する。
ここで、前記流量制御手段15は、第1流量測定手段16の測定結果から、制御弁手段13を制御するための操作量を演算、出力するものである。使用者3に供給されるガス流量が、設定流量に対し大きな偏差をもった場合、高い精度と応答性をもって設定通りのガス流量を使用者3に供給することが求められる。基本的に、設定流量に対する偏差をなくすためには、偏差の大きさに応じて出力を決定する比例制御(P制御)を用いればよいが、比例制御だけだと最終的にオフセットが残ってしまう。このオフセットを取り除くためにも積分動作を加えた制御(I制御)が必要になる。そこで、本発明の流量制御手段15は、その制御方法としてPI制御を用い、更に必要であれば微分動作(D制御)を加えたPID制御を用いても良い。
ここで、PID制御によって得られるコントロールバルブへの、時間tにおける出力u(t)を考えると、各制御パラメータとして、KP:比例ゲイン、TI:積分時間、TD:微分時間、そして、e(t):第1流量測定手段16による測定結果と設定流量の偏差とすると、u(t)=KP{e(t)+1/TI×∫e(t)dt+TDde(t)/dt}という式によって表すことができる。なお、このとき、TD=0とすることで、u(t)はPI制御によって得られる制御弁手段13への出力となる。
その際、使用者3へ呼吸用ガスを供給するのに、高い応答性、精度及び安定性を持ちながらも、使用者3に供給されるガス流量が発振しない、といったことが求められる。そこで、このような面からも、具体的な制御周期およびPIDパラメータとしては、用いる流量測定手段の精度にもよるが、たとえば超音波式流量計を用いてPI制御を行う場合には、制御周期3秒以内、KP=0.1〜0.5、TI=2.0〜5.0といった値を採用することが好ましい。また、第1流量測定手段16による測定結果がある一定の範囲に入っている場合には制御を行わない、不感帯を設けるようにしても良い。この場合、不感帯としては、設定流量の±10%以内とするのが適当である。
本発明の流量制御手段15は、電源投入時や設定ガス流量を切り替える時などのような制御開始時には、各設定ガス流量に応じて前記制御パラメータに初期値を出力するようにすることが好ましい。何故ならば、このような機能を付与することによって、より早く設定ガス流量に到達させることが可能になるからである。また、多数の呼吸用気体供給装置を製造する場合のように、制御弁手段13のバラツキなども考慮に入れて、このような初期値としては、たとえば記憶装置を設置し、装置ごとに最適な初期値をそれぞれ記憶させることも可能である。また、より安定した制御を可能とするために、本発明の流量制御手段15に送信される実測流量値として移動平均値を採用して、第1流量測定手段16での測定結果のばらつきやスパイク的なノイズを抑えることが好ましく、移動平均値を算出するためのデータ数としては5〜20点程度が望ましい。
ところで、カニューラ22やチューブ21が折れた場合には、使用者に供給されるガス流量は急激に減少する。そうすると、第1流量測定手段16による実測流量値が設定流量値から大きくずれる。このような場合には、流量制御手段15は、実測流量値と設定流量値との間の差に応じて、KPパラメータを変化させる。このようにして、KPパラメータを変化させることで、急激なガス流量の変化に対してより早く対応することが可能となる。また、カニューラ22やチューブ21が折れるなどしたときには、設定流量を維持するためにコントロールバルブの開度が上がった状態になるが、このようなカニューラ22やチューブ21の折れが取り除かれた場合にも、すばやく適切な開度まで戻すことが可能となる。
その際、KPパラメータを変化させる実測流量値の閾値としては、設定流量値が0.75LPM以上のときには設定流量値の±10%程度、設定流量値が0.75LPM未満では設定流量値の±20〜40%程度とするのが適当である。このとき、KPパラメータ値は、閾値を越えた場合には一定の増加量をもたせるか、もしくは設定流量との差に応じて比例的に増加させることが好ましく、KPパラメータ値を大きくしすぎると、コントロールバルブへの出力の変化量が大きくなりすぎ、使用者に供給される流量が常に閾値を越えた範囲で発振してしまうおそれがある。したがって、KPパラメータ値は平常の制御時の10倍以下で変化させることが好ましい。
本発明は、以上に述べたような装置構成とすることで、装置本体1とカニューラ22の間に延長チューブ21を取付けたり、装置本体1から使用者3までの距離を長くしたりした場合や、カニューラ22やチューブ21が折れたり潰れたりして、一時的にガス流量が低下する場合などにも十分に対応できる。すなわち、本発明では、実測したガス流量に基づいて使用者に供給するガス流量を制御しているために、ガス流量を低下させること無く安定かつ精度良く使用者3へ呼吸用ガスを供給することを可能とする。
しかしながら、本発明の前記構成だけでは、加湿手段17の本体部1への取付け不良や、加湿手段17の容器への蓋の締め付け忘れなどによって、使用者3へ供給するガスが漏れた場合などの異常事態に対処ができなくなる。そこで、このような事態を想定して本発明の装置では、第2流量測定手段19を設ける。以下、この第2流量測定手段19について、詳細に説明する。
前記第2流量測定手段19としては、前記第1流量測定手段16と同様の流量計を使用することができるが、中でも、熱式流量計を使用することが好ましい。何故ならば、従来、各種流体の流量(あるいは流速)を測定する流量センサー(あるいは流速センサー)として種々の形式のものが使用されているが、この熱式流量計は、簡易に流体流量を測定でき、しかも、低価格化が容易であるという理由から、前記熱式(特に傍熱型)の流量センサーが利用されるようになってきたのである。
この傍熱型流量センサーとしては、例えば特開2001−264137号公報に開示されているように、基板上に薄膜技術を利用して薄膜発熱体と薄膜感温体とを絶縁層を介して積層してなるセンサーチップを配管内の流体との間で熱伝達が可能なように配置したものが公知である。このような流量計では、感温体の温度上昇に基づく電気抵抗値の変化は、配管内を流れる流体の流量(流速)に応じて変化することが分かっているので、発熱体に通電することにより感温体を加熱し、該感温体の電気抵抗の値を変化させることによって、流体の流量を計測しようとするものである。つまり、発熱体の発熱量の一部が流体中へと伝達され、この流体中へ拡散する熱量は流体の流量(流速)に応じて変化し、これに応じて感温体へと供給される熱量が変化して、該感温体の電気抵抗値が変化することを利用するのである。なお、この感温体の電気抵抗値の変化は、流体の温度によっても異なるため、上記感温体の電気抵抗値の変化を測定する電気回路中に温度補償用の感温素子を組み込んでおき、流体の温度による流量測定値の変化をできるだけ少なくすることも行われている。
なお、このような熱式流量計の一般的なものとしては、被測定流体の上流側に配したヒーターとそのヒーターから所定間隔をおいて下流側に配した抵抗体とを有する物体を流量測定する流体中に置いて、そのヒーターに電力を供給して発熱させたときの抵抗体の抵抗値を計測することにより流量を測定するものもある。また、ガス流路内を加熱するヒーターと、ガス流路の上下流方向にそれぞれ設けられた温度センサーとを設けて、ヒーターの発する熱の上下流方向への伝達が流速の大きさによって変化することを利用して、ヒーターの上下流に設けた温度センサーにより間欠的に検知した温度差からなる物理量によって流速を間接的に測定する方式のものも知られている。
本発明は、以上に述べた第1流量測定手段16と第2流量測定手段19とを用いることによって、これら流量計16及び19の間に生じたガス漏れ、特に前記加湿手段17の取付け不良などに起因するガス漏れを検知することができる。以下、この点について、図1を参照しながら詳細に説明する。
まず、使用者3は、使用する呼吸用ガスの流量値を流量設定手段14により流量制御手段15による設定流量値(制御目標流量値)Q0として入力する。次いで、使用者3が呼吸用気体供給手段11に付属する元栓(図示せず)などの開閉手段を開けて、本発明の装置の使用を開始すると、直ちに、第1流量測定手段16によって使用者3に供給される配管経路を流れるガス流量値が実測され、実測された流量値Q1が例えばマイクロコンピュータからなる流量制御手段15へ、例えばシリアルポートを介して送信される。そして、流量値Q0と実測流量値Q1とが流量制御手段15によって比較され、実測流量値Q1が設定流量値Q0となるように制御弁手段13がフィードバック制御される。
その際、第1流量測定手段16によって測定される実測流量値Q1としては、その値が時々刻々と変化するため、瞬間的な変動の影響を受けるのを回避するために、移動平均値を採用することが好ましい。なお、この移動平均値の演算については、例えば、1秒間隔で10秒間に渡って流量制御手段15に取り込んだ最新の10個のデータから計算し、その際、最も古い最先の値を捨てて、この値を最新の値に更新しながら移動平均値を演算することによって行うことができる。
次に、流量異常検出手段10aは、第1流量測定手段16から送信される実測流量をトリガとして、第2流量測定手段19により実測される実測流量値Q2を取り込む。そして、これにより、加湿手段17より下流側の実測流量値Q2が1秒間隔で流量検出手段10aへ取得可能となる。このようにして、設定流量値Q0、実測流量値Q1、及び実測流量値Q2が測定されると、系外へのガス漏れ、フィルター詰りなどの異常検知などに係る異常処理が異常処理手段10によって、例えば下記のようにして行うことができる。
先ず、前記異常処理手段10の一部を構成する流量異常検知手段10aに係る異常検知のための最初のステップとして、第1流量測定手段16で測定された実測流量値Q1が使用者3によって予め入力された設定流量値Q0よりも低下していないかどうかを判定する。このために、C1=(Q1/Q0)×100という判定式(1)と、C2=(Q2/Q1)×100という判定式(2)を設定する。なお、このような判定式(1)及び判定式(2)を採用したのは、基準となる各流量値Q0とQ1に対して、実測流量値Q1とQ2とを百分率にそれぞれ換算して、各基準流量値Q0及びQ1に対して、実測流量値Q1とQ2がそれぞれどの程度低下しているかをレベル判定するためである。したがって、C1とC2とが異常検知のために予め設定した第1閾値Th1と第2閾値Th2の何れもよりも大きい値を維持している場合には、ガス漏れなどに起因した流量低下が無く正常と判断することができる。
なお、本発明においては、流量異常が検知された場合と同様に、流量異常検知手段10aによって流量異常が無いと判断された場合のいずれにおいてもガス流量が正常であることを知らせる表示をすることが好ましい。このようなTh1とTh2に係る具体的な数値としては、検知する異常の重要度などの条件に応じて、適宜設定するべき性質のものであるが、このような数値の一例を挙げるならば、Th1=80、Th2=80といった値をとることができ、また、更に一段と厳しい異常検知の管理においては、例えば、Th1=95、Th2=90といった値をとることもできる。
次に、前記ステップにおいて、C1≦Th1という状態を検知した時点で、C2の値は無視して、C1≦TH1という状態が一定時間t1に渡って継続した時に、カニューラ22の潰れによる異常であると流量異常検知手段10aが判別する。そして、このケースでは、生じた異常がカニューラ潰れによるガス流量低下と流量異常検知手段10aによって判別されたら、直ちに判別された異常部位を使用者3に知らせる警報を異常警報手段10bによって発することが好ましい。
ただし、異常警報手段10bによる警報中も、流量異常検知手段10aによる流量データの監視が継続され、C1>Th1という状態が一定時間t3の間継続すると、警報解除手段10cが作動して、異常原因が取り除かれたものとして異常警報手段10bによって出された警報を解除することが好ましい。なお、前記t1とt3の具体的な値としては、採用する流量異常検知手段10aに適した値を適宜使用すればよい性質のものであるが、例えば、t1=60秒、t3=1秒といった値を好適に使用することができる。
また、C1=(Q1/Q0)×100で定義されるC1値が予め設定した閾値Th1よりも大きくなっているために、この部分ではガス流量の低下異常が生じていないと、流量異常検知手段10aによって判定されたにもかかわらず、C2=(Q2/Q1)×100で定義されるC2値が予め設定した閾値Th2より小さくなっていると判定され、この状態が一定時間t2に渡って継続した時は、第1流量測定手段16と第2流量測定手段19との間の部位でガス漏れが発生していると流量異常検知手段10aが判別する。つまり、C1>Th1であって、かつ、C2≦Th2である状態がt2時間に渡って検知された場合に、第1流量測定手段16と第2流量測定手段19との間の部位で、加湿手段17の取付け不良などの要因によってガス漏れが発生していると流量異常検知手段10aが判断するのである。
そして、もし、このような流量異常が流量異常検知手段10aによって検出されると、加湿手段17の取付け不良などの要因によるガス漏れが検知されたものとして、流量異常の警報を発する。ただし、このようなケースでは、警報中であっても、流量データの監視を中断せずに継続し、C2>Th2となった状態が一定時間t4に渡って継続した時には、異常原因が取り除かれたものとして警報を解除することが好ましい。なお、前記t2とt4の具体的な値も、採用する異常検知システムに適した値を適宜使用すればよい性質のものであるが、例えば、t2=20秒、t4=1秒といった値を使用することができる。
以上に述べた流量異常の処理ステップにおいて、念のために少し補足説明を行うことにすると、チューブ21が折れ曲がったり、カニューラ22が潰れたりするなどの異常(以下、“カニューラ異常”と称する)が発生した時、例えば、第1実測流量値Q1と第2実測流量値Q2が、図2に示したグラフのような動きで変化することがある。すなわち、第2実測流量値Q2の方が先に反応して、ガス流量が低下していることを流量異常検知手段10aがいち早く検知するのに対して、第1実測流量値Q1の方は、反応が鈍く、第2実測流量値Q2に遅れて流量が低下していることを流量異常検知手段10aが検知するケースである。
このケースでは、例えば最初に、時刻T0の時点でカニューラ異常が発生し、第1実測流量値Q1と第2実測流量値Q2が図示したグラフのように低下する。また、このケースでは、第1実測流量値Q1よりも第2実測流量値Q2の方が急激に低下する。このために、第2実測流量値Q2が低下したことが先ず検知され、時刻T1において、(C2=Q2/Q1×100)という前記判定式(2)で定義されるC2によって、C2≦Th2であること、すなわち、流量異常の発生を流量異常検知手段10aが検知される。そして、この時刻T1からt2時間が経過した時刻T3において、カニューラ異常であるにもかかわらず、加湿手段17からのガス漏れ異常と自動的に判断されて、漏れ警報が作動する。
これに対して、第1実測流量値Q1は第2実測流量値Q2よりも遅れて低下するから、時刻T2において、C1=Q1/Q0×100)という前記判定式(1)で定義されるC1によって、C1≦Th1が検知される。そして、この時刻T2からt1時間が経過した時刻T4において初めて、流量異常検知手段10aによってカニューラ異常警報と判別されることとなる。したがって、このケースのようにt2時間及びt1時間を適切な数値に設定されていないと、加湿手段17からのガス漏れが生じていないにもかかわらず、加湿手段17からのガス漏れ警報が先に作動してしまうことが起こる。
そこで、以上に述べたような誤報を避けるために、本発明の流量異常検知手段10aとしては、加湿手段17からのガス漏れ異常、すなわち、C2≦Th2を検知した時刻T1から時刻T3になるまでのt2時間が経過するのをモニターしている間に、カニューラ異常、すなわち、C1≦Th1を検知した場合に、判定式(2)によるガス漏れ異常の判定機能を停止させる。その代わり、判定式(1)によるカニューラ異常の判定機能は生かして、カニューラ異常の判定はそのまま継続する。そして、t1時間が経過した時刻T4において、初めてカニューラ警報とする。なお、ちなみに、もし加湿手段17からのガス漏れ異常とカニューラ異常とが同時に発生した場合は、加湿手段17のガス漏れ部分から酸素ガスが流れ出ていくため、Q1は低下することなく、Q2のみが低下し、漏れ警報と判定される。
本発明の異常処理手段10によれば、前述のように加湿手段17の取付け不良などを検出できる。それでも、既に「背景技術」欄で説明した実開平6−39008号公報に提案されているように、加湿手段17の取付けが不完全なとき、あるいは加湿手段17が装着されていないときに、これを機械的に検出して異常警報手段10bによる警報を出して、使用者3などに異常を知らせるようにすることが好ましい。
したがって、このような場合において、本発明の装置では、加湿手段17が装着されていないときは、加湿手段17が装着されていないことを知らせる表示(加湿器装着警報)を異常警報手段10bによって行うことが好ましい。そして、このようにして加湿手段17が装着されていないことが流量異常検知手段10aによって検出された時には、C2値による判定ステップを中断し、異常警報手段10bによって、C2値に依らず加湿器装着警報を出すことが好ましい。なお、加湿手段17が装着されていない場合には、Q2が0となり、すなわち、C2=(Q2/Q1)×100 ≒0となることは言うまでも無い。
ただし、本発明の流量異常検知手段10aを使用せずに、機械的に加湿手段17を装着したことが検知された場合には、加湿手段17が装着されたことが検知されたとしても、本発明の異常警報手段10bによる加湿手段17の装着異常警報が発せられないこととなってしまう。しかし、これでは加湿手段17を構成する容器の蓋が締まっていない状態(すなわち、ガス漏れがある状態)でも、異常警報手段10bからの加湿器装着警報が発せられず、加湿手段17が正常に装着されたことを表示してしまうと言う問題がある。そこで、加湿手段17を装着した時は、加湿手段17の装着を検知したことに続いて、C2>Th2となることが、一定時間t5に渡って継続したことを流量異常検知手段10aが検知した後に、警報解除手段10cによって、異常警報手段10bによる加湿器装着警報を解除することが好ましい。
また、本発明の流量異常検知手段10aにおいては、以上の説明で使用した判別式(1)及び判別式(2)に代えて、C1’=(Q0−Q1)、及びC2’=(Q1−Q2)という判別式(1)’及び判別式(2)’を使用することもできることはいうまでもない。ここで、本発明において肝要なことは、どのような判別式を用いるにしても、流量異常の発生部位と発生要因を的確に検知できることである。したがって、このような機能を果たすことができる限り、本発明で使用する判別式を特定する理由は無いが、前述の判別式(1)、(2)、(1)’、及び(2)’は簡便であるという利点は有している。
なお、以上に述べた流量異常の判定ステップは、例えば、流量制御手段15としてマイクロコンピュータを採用し、このマイクロコンピュータに付設されたROMなどの半導体メモリ、あるいはハードディスクなどの磁気記録媒体などに内蔵されたプログラムにより行うことができる。