以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。ここでは、荷電粒子線装置として走査型電子顕微鏡を例にとって説明する。
図1に、本発明による荷電粒子線装置の一例である走査型電子顕微鏡の概要を示す。電子源18から一次電子線を発生させて、電子レンズ19によって収束させ、偏向器20によって試料21表面上を走査する。このときに発生した二次電子は検出器22によって検出される。この信号は試料表面の特に形状・成分等を反映しており、画像生成器23へ入力される。図中には無い偏向アンプの動作と同期されて二次元像を作成する画像生成器23にて、検出器の信号は走査型電子顕微鏡(以下、SEM)像として観察される。これらの仕組みは他の走査型電子顕微鏡と同様である。
試料ステージ1はモータ2及び3により直交XY方向に駆動される。試料ステージ1には、その可動範囲に同一支持体(ウェーハ)上に焼き付けて作成してある複数の試料(チップ)4a,4b…をnx×ny個(図1では3×3=9)を搭載してある。試料ステージ制御装置5は、試料ステージ1の機械原点S1(0,0)を基準として、所要の距離だけモータ2及び3を駆動することにより、任意の位置に試料ステージ1を移動することができる。本実施例では、半導体製造工程でウェーハ(支持体)21上に焼き付けされたチップパターン(試料)4が3×3のみ配置されている。
ここで図2に示す制御盤(A)7には、座標指示をチップ配列とチップ内座標で指示できるようになっている。すでに観察位置が座標値として判明しているときには、座標値入力窓8に座標値を入力する。座標値が不明であったり観察・測定するパターンの位置を正確に決めていないときには、SEM画像の上でポインティングペン27によって指示する。その際には現ステージ位置にあるチップが自動的に指定されたチップ配列となる。したがって、位置の指示をする前に必ず所望のチップ位置へチップ配列座標10上で指示してステージを移動させておく必要がある。チップ配列指示座標10には設計データに基づいたチップ配列レイアウト図が描かれている。またチップ内位置指示座標11にはやはり設計データに基づいたチップレイアウトが描かれている。なお、チップ内位置指示は、表示のみチップ配列指示座標10上で行い、実際の指示をSEM画像9に見えている視野内で行っても良い。
一方、本発明の特徴である位置ずれ補正機能は、観察試料として生産枚数の多いDRAM等のように全く同じ種類のチップ焼付けを多数枚のウェーハ上に行うものに特に有効である。すなわち、多数枚のウェーハから一定量の抜き取り検査を行う際に、検査枚数は多数に上る。同じ半導体工程によって製造されたチップでは、ウェーハ上でのチップ位置精度までほぼ同じ条件で焼付けを行われたと考えられる。同じ工程により焼き付けされたウェーハのうちの多数枚に渡って観察する必要がある際には、異なるウェーハ上でチップの互いに相当する同一個所の観察を繰り返し行うこととなるので、1回目の観察での試料ステージ位置に生じた位置ずれを次回から補正すれば良い。その結果、本発明の機能によって1回目又は特に初回テストでの位置ずれ発生を次回から補正するので、以降の観察ではステージ送りを高精度で行うことが可能となる。
しかし、それ以外で例えばASIC等のように生産枚数の少ない場合には、検査枚数も少なく、場合によっては1回の検査にて焼き付け条件が決定される場合もある。こうした場合では、1回目での位置精度を必ずしも高精度化し得ない本発明の機能は有効で無い。そこで、この機能を場合によってはOFFとする必要がある。
本発明の機能のON/OFFの切り替えによって、試料ステージの位置精度の高い場合と低い場合が生じると、試料ステージの移動終了後に行う観察パターンの探索を画像処理によって自動的に行う必要のあるウェーハ面上での領域の広さに違いを生じる。すなわち、高い位置精度で試料ステージが停止した後では、すでに停止位置は観察パターンに近い位置に達しているので、探索を行う必要のある領域は必然的に狭くなる。また、逆に低い位置精度で試料ステージが停止した後では、停止位置と観察パターンの間には距離を大きく残しているので、探索を行う必要のある領域は必然的に広くなる。
本発明では、これに対処するために位置ずれ補正機能のスイッチングON/OFFを行う機能を付属させる。図3に示すように、制御盤(B)15には位置ずれ補正機能をON又はOFFとするスイッチを付加している。これを操作者が操作することによって位置ずれ補正機能を有効又は無効として本発明の走査型電子顕微鏡を操作することを可能とする。また、図2に示すように制御盤(A)7には、位置ずれ補正機能の現在実行状態を操作者へ伝えるための位置ずれ補正機能実行状態表示器65を備えている。操作者は、観察する試料の種類によって機能の選択に誤りが無いかを確認しながら操作を行うことができる。一方、本発明の走査型電子顕微鏡では手動による操作の他に、観察手順記憶装置40(レシピ)に記録された手順に従ってコンピュータ等の制御装置により自動的に観察を行う場合もある。本発明では、観察手順記憶装置40に位置ずれ補正機能ON/OFF登録記憶装置を備えている。位置ずれ補正機能ON/OFF登録記憶装置には図6に示すようにON/OFF状態が登録されており、観察手順記憶装置40を使って自動観察する際に位置ずれ補正機能の実行状態ON/OFFを切り替えることを可能としている。
また、位置ずれ補正機能の実行に際して、観察している試料の種類により補正に使用する過去の位置ずれ量測定結果をどの時点まで遡るかによって補正の効果による結果を変えることが可能となる。すなわち、例えば観察表面で電子線照射によりチャージアップしやすい場合には、滞留電荷の発生する電位分布のゆがみとその刻々と変化する状態によって走査型電子顕微鏡によって観察されている視野位置の試料表面で刻々と変化して行く現象が発生する。これをドリフトと呼ぶ。ドリフト現象の頻度が多くかつ程度の大きい試料の観察では、試料ステージと走査型電子顕微鏡視野との相対的な位置関係で常に不確定な変動を生じており、例えば、それが傾向としてある方向へと刻々と移動して行く。こうしたドリフト現象の位置ずれへ与える影響が大きい場合に、本発明の機能において過去の位置ずれ量測定結果を時間的に長期に渡って遡ると、ずれ量に含まれる偏差が大きくなり、本来の目的である正確な位置へのステージ送りを行うことができない。そこで本発明では過去に遡る位置ずれ量測定結果の数、すなわちそれらは一定の間隔でサンプリングされているので、測定点数分に相当する時間を限り、観察を行う試料によって操作者の判断により位置ずれ量測定点数を調整する機能を付加する。本発明では、図2に示すように制御盤(A)上に位置ずれ補正有効データ点数pcjの表示を行い、かつ同時に操作者によってpcjを入力するための入力窓を兼ね備えた補正有効データ点数入力窓66を備えている。
また、位置ずれ補正機能のスイッチングON/OFFと同様に、観察手順記憶装置40(レシピ)に記録された手順に従ってコンピュータ等の制御装置により自動的に観察を行う場合もある。本発明では、図1に示すように観察手順記憶装置40には位置ずれ量補正使用点数登録記憶装置62を備えている。この位置ずれ量補正使用点数登録記憶装置62には、図7に示すように位置ずれ補正有効データ点数pcjの必要なときに読み出し可能で、記憶しておきたいときに書き込み可能な状態で記録されている。
本発明では、過去の一定期間に位置ずれ量を測定し続けて、ある時点からその測定結果を用いて移動目標位置に補正を行うことで新たな移動目標位置を決定し、その後の移動時での試料ステージ位置精度を向上させる方法もある。
本発明では、位置ずれ量測定機能をON又はOFFする機能によってこれを可能とする。図3に示すように、制御盤(B)15には位置ずれ測定機能をON又はOFFとするスイッチを付加している。これを操作者が操作することによって位置ずれ量測定機能を有効又は無効とすることで本発明の走査型電子顕微鏡を操作することを可能とする。
また、図2に示すように制御盤(A)7には位置ずれ量測定機能のその時点での実行状態を操作者に対して伝えるための位置ずれ量測定機能実行状態表示器68を備えている。操作者は、その都度に観察の目的に沿って機能の選択に誤りが無いかを確認しながら操作を行うことができる。
一方、本発明の走査型電子顕微鏡では手動による操作の他に図12に示している観察手順記憶装置40(レシピ)に記録された手順に従ってコンピュータ等の制御装置により自動的に観察を行う場合もある。本発明では、観察手順記憶装置40に位置ずれ量測定機能ON/OFF登録記憶装置68を備えている。位置ずれ量測定機能ON/OFF登録記憶装置68には図21に示すようにON/OFF状態が登録されており、観察手順記憶装置40を使って自動観察される際に位置ずれ量測定機能の実行状態ON/OFFを切り替えることを可能としている。
これらは走査型電子顕微鏡本体のSEM制御装置6を動かしているソフト上に実現しても良い。したがって本発明では図1のように別に実物として制御盤を設けるのみならず、あらゆる形での制御盤実現方法を含むものである。操作者は制御盤(A)7及び(B)15の画面上に相当する表示を見たり、そこで必要な指示を与えることができる。制御盤(A)7にて予め登録された観察部分のチップ内座標値(xs,ys)と、観察しようとする試料の配置位置(nx,ny)が出力される。すると座標値変換器12にて、その位置の指示座標Xa-Yaの原点位置S2(0,0)からの距離を出力するようになっている。
他に手動操作によって試料ステージを動かすために、ステージ制御装置5にはスイッチ類としてトラックボール13等が接続されている。トラックボール13が操作された場合は、その回転に従って試料ステージ1が移動するようにモータ2又は3を駆動する。
トラックボール13又は制御盤(A)7での操作者の指示を受けて移動指令が実行されると、ステージ制御装置5はリニアスケール24の座標読み取り値をリニアスケールコントローラ14より受け取り、この座標値が移動指示値(xst,yst)に相当する値と一致するまでモータ2及び3を駆動する。
操作者は必要に応じて制御盤(B)15の各種スイッチを押してその都度必要な機能を実行する。図3に各種スイッチの搭載状況を示す。操作者が配置用座標較正点AP1登録スイッチを押すと、SEM制御装置6ではその時点での試料ステージ位置をリニアスケール24にて読み取り、その値を較正点登録装置16へ登録記憶する。また、配置用座標較正点AP2登録スイッチを押すとAP1と同様の方法にて登録記憶される。一方、測長点登録MPスイッチを押すと、上記較正点登録時と同様にその時点での試料ステージ位置をリニアスケール24にて読み取り、その値を測長点登録記憶装置17へ登録記憶する。以上のスイッチ類では、操作者がスイッチを押すとその時点での試料ステージ位置が各々の目的のために登録・記録される。
上記の登録操作後に観察を行うために改めてウェーハを搭載し直したときに、操作者が座標較正AP1を押すと、上記操作で記憶登録されている位置とその時点での試料ステージの位置との関連付けが行われる。また座標較正AP2でも同様に記憶登録されている位置とその時点での試料ステージ位置との関連付けを行う。AP1とAP2についてともに関連付けが終了すると、自動的に観察位置を指定するための指示座標Xa-Yaとステージ座標Xst-Ystの間での座標較正が行われる。
位置ずれ補正機能ON/OFFスイッチを操作者が押すと、位置ずれ補正機能をON又はOFFとすることができる。また、位置ずれ量測定機能ON/OFFスイッチを操作者が押すと、試料ステージの移動終了毎に視野位置の位置ずれ量の測定を実行する機能をON又はOFFとすることができる。
一方、図12の観察手順記憶装置40には自動測長シーケンスを実行するための各種データが収められている。ここに含まれる較正点登録記憶装置16、測長点登録記録装置17には、自動測長シーケンスを実行する際の較正点AP及び測長点MPに関する、例えばチップ内位置座標値(xa,ya)(xm,ym)・チップ配列位置(nxa,nya)(nxm,nym)・画像照合による位置特定を実行する際に使うSEM画像記録等が操作者の意図に従って登録されている。
図4に較正点登録記憶装置の一例を示す。較正点登録記憶装置16内には、較正点の数だけAP1,AP2と各々についての自動観察を行うために必要とされる情報が登録されている。例えば、AP1では、ウェーハ21上での観察点AP1を含んだあるチップに移動してポインティングペン27にてSEM像上で具体的に指示を行って求められた観察位置をチップ内座標値に変換して登録する。すなわち、SEM制御装置6側で、その時点でのステージ座標値(xst,yst)とチップ配列(nx,ny)から観察したい部分の位置をポインティングペンで指示された位置座標のチップ内座標値(xa,ya)へ変換して求める。このようにして求められたチップ内座標値(xa,ya)とチップ配列(nx,ny)は、画像照合に用いる観察部分像とともに図5に示すように登録記憶される。AP2についても同様である。
図5に測長点登録記憶装置の一例を示す。測長点登録記憶装置17A内には、測長点の数だけMP1,MP2,…,MPjと各々についての自動観察を行うために必要とされる情報が登録されている。例えば、MP1では、ウェーハ21上での観察点MP1を含んだあるチップに移動してポインティングペン27にてSEM像上で具体的に指示を行って求められた観察位置をチップ内座標値に変換して登録する。すなわち、SEM制御装置6側でその時点でのステージ座標値(xst,yst)とチップ配列(nx,ny)から観察したい部分の位置をポインティングペンで指示された位置座標のチップ内座標値(xm,ym)へ変換して求める。このようにして求められたチップ内座標値(xm,ym)とチップ配列(nx,ny)は、画像照合に用いる観察部分像とともに図5に示すように登録記憶される。MP2,…,MPjについても同様である。
ところで、チップ内座標値(xm,ym)とチップ配列(nx,ny)によって表される観察位置への試料ステージ移動を所定の回数だけ繰り返すと、移動目標位置への試料ステージ移動終了後に残った視野位置ずれ量を各測長点MP1,MP2,…,MPjについて、観察回数に従って記憶登録する。例えばMP1では、(dxm11,dym11),(dxm12,dym12),…,(dxm1i,dym1i)とi回の移動分の視野位置ずれ量を登録記憶する。MP2,…,MPjについても同様である。
一方、本発明の位置ずれ補正機能を自動測長シーケンス実行時に実現するための位置ずれ補正機能ON/OFF登録記憶装置61と位置ずれ補正使用点数登録記憶装置62を観察手順記憶装置40に備えている。それらを図6及び図7に示す。これらは自動測長シーケンス上では図8に示すシーケンスにて実行される。すなわち以下の通りとなる。
ステップSA001:観察手順記憶装置に記憶してあるON/OFF登録内容の読取り
ステップSA002:ステップSA001の結果でON/OFFチェック
ステップSA003:制御盤(A)の位置ずれ補正機能実行状態登録内容の読み取り
ステップSA004:ステップSA003の結果でON/OFFチェック
ステップSSA001:位置ずれ補正ON/OFF機能をON
ステップSSA002:位置ずれ補正ON/OFF機能をOFF
また、位置ずれ量測定を自動測長シーケンス実行時に平行して行うかどうかを予め決定又は設定しておくための位置ずれ量測定機能ON/OFF登録記録装置を観察手順記憶装置40に備えている。それを図21に示す。これは図22に示すシーケンスにて実行される。すなわち以下の通りとなる。
ステップSD001:観察手順記憶装置に記憶してある位置ずれ量測定機能実行状態ON/OFF読取り
ステップSD002:ステップSD001の結果でON/OFFチェック
ステップSD003:制御盤(A)の位置ずれ量測定機能実行状態登録内容の読み取り
ステップSD004:ステップSD003の結果でON/OFF手動スイッチのチェック
ステップSSD001:位置ずれ量測定機能ON/OFFをON
ステップSSD002:位置ずれ量測定機能ON/OFFをOFF
図9に画像照合により測長点位置を求める仕組みを示す。SEM画像を取り込んだ画像メモリ9上には目的とするパターン以外にも種々の像を映し出している。画像メモリ9では、予め測長点登録記憶装置17に例えばMP1に登録された測長点位置を特定するためのSEM像と同じサイズの領域(以下では画像枠30と呼ぶ)を上記の画像メモリ9上から画像枠位置指示器31からの指示による任意の位置から切り出して、画像照合装置32へ送る。
画像照合装置32では、測長点登録記憶装置17に登録された画像26-2とこれの相関値を求めてその一致度を求める。これがある一定レベル値以上を超えており「一致」と判断すると、画像照合一致時ON信号adjをONとしてゲート33からこの時点で画像枠位置指示器31の指示している画像位置(xg,yg)をSEM制御装置6へ出力する。ただし(xg,yg)は一次電子線走査範囲に対応した画像全体を含む画像メモリ9上の座標XG-YGでの値である。
一方、偏向オフセット量指示器34では、この時の一次電子線走査範囲の試料上での位置を示す座標値(xdof,ydof)を偏向指示器35へ出力する。偏向指示器35では、SEM制御装置6で生成されているSEM像倍率に連動した振幅値を持つ「のこぎり波」信号に加えるオフセット量を座標値(xdof,ydof)に連動するように変化させて、偏向器20によって走査される一次電子線の試料上での走査位置を任意に変化させる。実際には、アンプ36での増幅時に発生する誤差等の問題を抱えることを防ぐために偏向器を上記のものとは別に用意して、オフセット量分の一次電子線の偏向をそこで行うようにする。このとき上記の偏向器には倍率連動振幅の「のこぎり波」をそのまま加えるようにする。
以上の一連の動作によって、もし画像の「一致」の得られない場合には画像照合一致時ON信号adjがOFFとなりゲート33は閉じられて、位置信号(xg,yg)は出力されない。さらに、この時の画像枠位置指示器31は1ステップ分のみx方向又はy方向にずらされて、再び上記の一連の画像照合の動作が繰り返される。もし、画像枠30の移動によって画像メモリ上の全ての領域を覆い尽くしてしまい、新たな移動先の無い場合には、画像照合装置32は偏向オフセット量指示器34へオフセット量を変更するように指示信号を出力する。
偏向オフセット量指示器34では、1ステップ分のみx方向又はy方向に偏向信号のオフセット量を変更する。もし、一次電子線走査可能範囲全域に渡って走査範囲を移動させても、なおSEM画像の「一致」が得られない場合には、SEM制御器は試料ステージ位置を1ステップ分のみx方向又はy方向に移動させるようにステージ制御装置5への指示位置を変更する。以上の一連の動作によって測長点の位置を特定する特徴的なパターンを写したSEM像を探索する。
SEM像上で目的とするパターンが抽出されたら、較正点登録記憶装置16に記憶されているSEM画像上での較正点の位置(十字印)が特定されるので、このときに画像メモリ9に付属されているスケール38によって画像枠30上での座標の原点(例えば画像枠の重心)からの距離(ddix,ddiy)が自動的に求められる。これはスケール38を制御しているスケール制御器37によってSEM制御装置6へ(ddix,ddiy)が出力される。一方、偏向オフセット量指示器34からは、この時の偏向走査範囲のオフセット量を示す信号(xdof,ydof)がSEM制御装置6へ出力されている。
ここまでの一連の動作によって、SEM制御装置6には求める測長点の位置を求めるために必要な座標値の全てが入力された。それらは、すなわち、(xg,yg)、(xdof,ydof)、(ddx,ddy)である。先ずウェーハ上に置かれた指示座標Xa-Yaで表される画像枠の位置(xm,ym)を、(xg,yg)と(xdof,ydof)から〔数2〕により求める。なお、f1とf2は式右辺から左辺への変換を表す関数である。
〔数2〕
xm=f1(xdof,xg)
ym=f2(ydof,yg)
さらに、やはり指示座標Xa-Yaで表される測長点の位置(xxst,yyst)を上記と求めた(xm,ym)と(ddix,ddiy)から〔数3〕により求める。なお、f3とf4は式右辺から左辺への変換を表す関数である。
〔数3〕
xxst=f3(xm,ddix)
yyst=f4(ym,ddiy)
以上の動作シーケンスをフローチャートに示すと図11となる。このフローチャートは、目標位置へのステージ移動終了後に視野のずれ量を求める一連の処理の流れを示している。
ステップS001:目標位置へのステージ移動終了
ステップS002:視野内での目標パターン有無は?
ステップS003:位置ずれ量検出機能状態ON/OFF
ステップS004:視野ずれ量を検出
ステップS005:目標位置に対する視野ずれ量出力
ステップS006:視野ずれ量記憶・登録
ステップS007:視野内で新たに画像枠の移動は可能か?
ステップS008:視野内で画像枠を一定量移動
ステップS009:新たにイメージシフトによる走査範囲の移動は可能か?
ステップS010:イメージシフト一定量移動
ステップS011:ステージ一定量移動
ステップS012:次観察位置へ移動
さらに座標較正点位置の特定でも上記の探索動作は基本的には全く同じものである。
ここで図10に、ステージ座標Xst-Ystと指示座標Xa-Yaの間の座標値変換の仕組みを示す。2点鎖線の内側が座標値変換器12の構造を示している。
SEM制御装置6では、制御盤(A)7から観察位置を指示する信号(xs,ys)(nx,ny)を測長点登録記憶装置17Aからは測長点NOのMP.NO、観察位置を示す(xs,ys)(nx,ny)、また前回の観察までに相当する位置で発生した視野ずれを示す(dx,dy)、測長点の位置を特定するのに用いるSEM画像を受け取っている。必要に応じてこれらの値の表示盤への表示の際や、登録記憶する必要のある時には上記とは逆方向にSEM制御装置6から出力される。
SEM制御装置6では、これらのデータを受けて、先ず観察位置を示す(xs,ys)(nx,ny)をBuff2及びBuff3を経由してADD1へ出力する。ADD1ではチップ設計情報であるピッチ(px,py)、オフセット量(xoffset,yoffset)を基に仮指示座標値(xaa,yaa)を出力する。Buff1経由で出力された視野ずれ量(dx,dy)は上記仮指示座標値(xaa,yaa)とともにADD2にて算術されて指示座標値(xa,ya)となる。指示座標値(xa,ya)はCONV1にてステージ座標値(xst,yst)へ変換され、試料ステージ制御装置5へ出力される。
上記の一連の流れは、SEM制御装置6からステージ制御装置5へ観察位置の座標値を指示する際のものを示したものである。ここで逆にリニアスケール24を読み取ったステージ座標値をSEM制御装置6側へ戻す必要がある。これは、先ずリニアスケール24の読み取り座標値であるステージ座標値(xxst,yyst)をCONV2によって指示座標値(xxa,yya)へ変換する。DIV1は、ADD1と同様にSEM制御装置6からチップ設計情報であるピッチ(p x,py)、オフセット量(xoffset,yoffset)を受け取っており、これを基に(xxa,yya)で示されている現ステージ位置をチップ配列(nnx,nny)とチップ内座標値(xxs,yys)で表されるように変換する。チップ内座標値(xxs,yys)は、Buff6に受けられているその観察位置にてSEM制御装置6のステージ制御装置5へ指示している座標値との間でDIF1において差(ddx,ddy)の算術に使われる。この差(ddx,ddy)は、観察位置を指示したものの実際には観察視野上で位置ずれを生じた距離を表している。こうして求められた(ddx,ddy)、(xxs,yys)、(nnx,nny)は測長点登録記憶装置17A・較正点記憶装置16等へ記憶登録処理される。
以上、上記の実施の形態は過去の一定期間に収得した位置ずれ量を記憶しておくことで、ある時点からの試料ステージ移動目標位置の補正に用いるものであった。一方、試料ステージの観察位置への移動終了毎に、測定される位置ずれ量を用いてその移動時に採用されていた移動目標位置をその都度に補正して新たな補正後移動目標位置を求めかつ記憶し続ける方法による実施の形態がある。その実施の形態では、次回の同一個所又は相当する観察位置への移動時には、それまでに記憶されて来た過去の補正後移動目標位置を用いて統計学的な処理によって新たな移動目標位置を求める。
この実施の形態では、図1に示す本発明の前記実施の形態とは特に測長点登録記憶装置が異なる。すなわち、視野位置ずれ量(dxm,dym)ではなく補正後移動目標位置(xmt,ymt)の履歴を各測長点毎に記憶する。図23に測長点登録記憶装置の一例を示す。
測長点登録記憶装置17内には、測長点の数だけMP1,MP2,…,MPjと各々についての自動観察を行うために必要とされる情報が登録されている。例えば、MP1では、ウェーハ21上での観察点MP1を含んだあるチップに移動してポインティングペン27にてSEM像上で具体的に指示を行って求められた観察位置をチップ内座標値に変換して登録する。すなわち、SEM制御装置6側でその時点でのステージ座標値(xst,yst)とチップ配列(nx,ny)から観察したい部分の位置をポインティングペンで指示された位置座標のチップ内座標値(xm,ym)へ変換して求める。このようにして求められたチップ内座標値(xm,ym)とチップ配列(nx,ny)は、画像照合に用いる観察部分像とともに図23に示すように登録記憶される。MP2,…,MPjについても同様である。これらの仕組みは図5に示した例と同様である。
ところで、チップ内座標値(xm,ym)とチップ配列(nx,ny)によって表される観察位置への試料ステージ移動を所定の回数だけ繰り返すと、移動目標位置への試料ステージ移動終了後に残った視野位置ずれ量を各回数時毎に測定する。また同時に、これらの値を補正値として、その時点で採用されていた移動目標位置の補正・再決定を行う。これらの補正後移動目標位置座標値(xmt,ymt)は、各測長点MP1,MP2,…,MPjについて、観察回数に従って記憶登録される。それは、例えばMP1では、(xmt11,ymt11),(xmt12,ymt12),…,(xmt1i,ymt1i)とi回の移動分の視野位置ずれ量を登録記憶する。MP2,…,MPjについても同様である。
一方、本発明の走査型電子顕微鏡では手動による操作の他に、図24に示した観察手順記憶装置40B(レシピ)に記録された手順に従ってコンピュータ等の制御装置により自動的に観察を行う場合もある。本発明では、観察手順記憶装置40Bに位置ずれ量測定機能ON/OFF登録記憶装置68を備えている。位置ずれ量測定機能ON/OFF登録記憶装置68には図21に示すようにON/OFF状態が登録されており、観察手順記憶装置40Bを使って自動観察する際に位置ずれ量測定機能の実行状態ON/OFFを切り替えることを可能としている。これらの基本的な仕組みは上記した本発明の実施形態である「過去の一定期間に収得した位置ずれ量を記憶しておき、ある時点からの試料ステージ移動目標位置の補正に用いる」方法の場合と同様である。異なる点は、そこに備えられた測長点登録記憶装置が17Aではなく17Bとなっており、視野位置ずれ量(dxm,dym)を記憶するのではなく補正後移動目標位置(xmt,ymt)を記憶する点にある。
なお、画像照合により測長点位置を求める仕組みは図9に示した実施の形態と同じものである。ここでも、この実施の形態の方法によって求められた視野位置ずれ量を用いて移動目標位置の補正を行う。これらは走査型電子顕微鏡本体のSEM制御装置6を動かしているソフト上に実現しても良い。したがって本発明は図1のように別に実物として制御盤を設けるのみならず、あらゆる形での制御盤実現方法を含むものである。
ところで、図25にステージ座標Xst-Ystと指示座標Xa-Yaの間の座標値変換の仕組みを示す。2点鎖線の内側が座標値変換器12の構造を示している。SEM制御装置6では、制御盤(A)7から観察位置を指示する信号(xs,ys)(nx,ny)を測長点登録記憶装置17Bからは測長点NOのMP.NO、観察位置を示す(xs,ys)(nx,ny)、また前回の観察までに相当する位置で発生した視野ずれを示す(dx,dy)、測長点の位置を特定するのに用いるSEM画像を受け取っている。必要に応じてこれらの値の表示盤への表示の際や、登録記憶する必要のある時には上記とは逆方向にSEM制御装置6から出力される。
SEM制御装置6では、これらのデータを受けて、先ず観察位置を示す(xs,ys)(nx,ny)をBuff2及びBuff3を経由してADD1へ出力する。ADD1ではチップ設計情報であるピッチ(px,py)、オフセット量(xoffset,yoffset)を基に仮指示座標値(xaa,yaa)を出力する。Buff1経由で出力された補正後移動目標位置(xmt,ymt)は上記仮指示座標値(xaa,yaa)とともにCONV3にて変換されて指示座標値(xa,ya)となる。指示座標値(xa,ya)はCONV1にてステージ座標値(xst,yst)へ変換され、試料ステージ制御装置5へ出力される。
上記の一連の流れはSEM制御装置6からステージ制御装置5へ観察位置の座標値を指示する際のものを示したものである。ここで逆にリニアスケール24を読み取ったステージ座標値をSEM制御装置6側へ戻す必要がある。これは、先ずリニアスケール24の読み取り座標値であるステージ座標値(xxst,yyst)をCONV2によって指示座標値(xxa,yya)へ変換する。DIV1は、ADD1と同様にSEM制御装置6からチップ設計情報であるピッチ(px,py)、オフセット量(xoffset,yoffset)を受け取っており、これを基に(xxa,yya)で示されている現ステージ位置をチップ配列(nnx,nny)とチップ内座標値(xxs,yys)で表されるように変換する。チップ内座標値(xxs,yys)は、Buff6に受けられているその観察位置にてSEM制御装置6のステージ制御装置5へ指示している座標値との間でDIF1において差(ddx,ddy)の算術に使われる。この差(ddx,ddy)は、観察位置を指示したものの実際には観察視野上で位置ずれを生じた距離を表している。ここで、SEM制御装置6ではその時点で採用していた移動目標位置に対してその視野位置ずれ量(ddx,ddy)を用いた補正を行い新たな補正後移動目標位置(xmt,ymt)を求める。こうして求められた(xmt,ymt)、(xxs,yys)、(nnx,nny)は測長点登録記憶装置17B・較正点記憶装置16等へ記憶登録処理される。
以下、本実施の形態での操作手順を説明する。いったん実際にウェーハを試料ステージに搭載した様子を図1に示す。このときに一時的に固定されたステージ座標Xst-Ystと指示座標Xa-Yaの位置関係をもって位置基準とする。以降、観察しなければならない位置を示す座標値(Xa,Ya)を実際にステージの動く移動距離を示す座標値(Xst,Yst)へ変換を行う。
走査型電子顕微鏡制御装置側では、このときの座標Xa-Yaを基準としてウェーハ上にチップ設計データに基付いた位置関係でチップ大きさ・配置・ウェーハ面内での回転方向等を四角形であるチップ外形を枠に、その複数個の並びを格子状として仮想的に登録する。図1では、3×3の並びになっている。これらの格子で表されるチップのうちの2つには座標較正を行うのに適した位置確定用の特徴点4aと4b(十字印で表示)を含んでいる。また、他の1の格子には観察するパターン位置を示す4c(十字印で表示)が含まれている。
この格子を基準として各々に定義されるチップ内座標Xt-Ytによって以降でのチップ内での観察部分(パターン)の位置座標値を表現する。図1では(Xs,Ys)で表されている。同じ観察部分でもチップの異なる位置を観察するときには、チップ内座標値にチップ配列ピッチ分のオフセットを考慮することで、観察位置の座標値を求める。
まず、ステージ座標Xst-Ystと指示座標Xa-Yaとの間の座標較正のための特徴点の登録を行う。トラックボール13を操作して、第一の試料4aの特徴的な場所AP1(チップパターン上の一部又は露光位置合わせ用タグ等)を顕微鏡の視野の中央へ移動し、座標較正点AP1登録スイッチを操作する。これによって、ステージ制御装置6は、制御盤(A)7からの指示座標値入力待ちの状態となる。次に、制御盤(A)7のSEM画像9上で、座標較正に使用する特徴点の場所をポンティングペン12で指示する。制御盤(A)7ではSEM画像9に写し出されている視野の座標Xm-Ymでの座標値を出力する。このときの座標Xm-Ymは例えば視野中心に原点を持っており、試料ステージの停止位置と一致している。SEM制御装置6では、この座標値(xm1,ym1)と試料ステージの位置を示すリニアスケール24の読み取り値(xL1,yL1)との算術により配置用座標較正点AP1登録位置(xch1,ych1)を求め、これを記憶する。算術は例えば〔数4〕のように両者の和となる。
〔数4〕
xch1=xm1+xL1
ych1=ym1+yL1
これら座標位置に関する処理の他に同時に、そのときのSEM画像を記録し、このときAP1と画像を関連付けして登録する。その様子を図4中の較正点登録記憶装置16に示す。例えば較正点登録NO1であるAP1では、観察点のチップ内座標値は(xa1,ya1)でチップ配列は(nxa1,nya1)となっている。また画像照合するパターン位置はSEM登録画像中の十字印で示されている。これにより、以後の観察では走査型電子顕微鏡制御装置側で特徴点位置のチップ内座標値(xa,ya)と予め登録されているチップ配列位置(nxa,nya)から自動的に試料ステージを移動させるべき位置座標値(xst,yst)を求め、さらにこの部分に関連付け記憶されている較正点部分像26-1との画像照合によって座標較正点の自動特定を行う。次に同様にして第二の試料4bの特徴的な場所AP2についても登録を行い、(xch2,ych2)を記憶する。また、やはり第一の特徴点AP1と同様にSEM画像を記録する。
ここで実際に試料であるウェーハ21を試料ステージ1に搭載したまま走査型電子顕微鏡で観察しながら手動、例えばトラックボール13により移動し、予め観察したい部分の位置を実際の試料上にて手動でポインティングペン27にて指示する。さらに制御盤(B)15の測長点登録MPスイッチを押すと、これをSEM制御装置6側でその時点でのステージ座標値(xst,yst)とチップ配列(nx,ny)から観察したい部分の位置をチップ内座標値(xs,ys)に変換して求めて、観察部分SEM画像とともに関連付けされて記憶する。その様子を図5中の測長点登録記憶装置17に示す。例えば測長点登録NO1であるMP1では、観察点のチップ内座標値は(xm1,ym1)でチップ配列は(nxm1,nym1)となっている。また測長する位置はSEM登録画像中の十字印で示されている。これにより、以後の観察ではSEM制御装置6側で観察部分位置のチップ内座標値(xs,ys)と予め登録されているチップ配列(nx,ny)位置から自動的に試料ステージを移動させるべき座標値(xst,yst)を求め、さらにこの部分に関連付け記憶されている観察部分像26-2との画像照合によって観察部分の自動特定を行う。上記の特徴点の登録を終えると、次回からのウェーハの試料ステージ1の搭載の際には、登録された特徴点の位置を照合することで座標較正を行い、座標指示位置精度を高くする。
次に、観察を行う段階に入る。まず、ステージ座標Xst-Ystと指示座標Xa-Yaとの間の座標較正を行う。トラックボール7を操作して、第1の試料4aの特徴的な場所AP1を顕微鏡の視野の中央へ移動し、座標較正AP1スイッチを操作する。これによって、SEM制御装置6は制御盤(A)7からの入力待ちの状態となる。次に、制御盤(A)7のSEM画像9上で、座標較正に使用する特徴点の場所をポインティングペン12で指示する。制御盤(A)7ではSEM画像に写し出されている視野の座標Xm-Ymでの座標値を出力する。このときの座標Xm-Ymは例えば視野中心に原点を持っており、試料ステージの停止位置と一致している。SEM制御装置6では、この座標値(xm1,ym1)と試料ステージの位置を示すリニアスケール24の読み取り値(xL1,yL1)との算術により配置用座標較正点AP1位置(x1,y1)を上記登録時と同様の方法によって求める。第2の特徴点AP2についても、AP1と同様の方法により(x2,y2)として求める。
以上のように(x1,y1)と(x2,y2)を求めたら、登録時の位置(xch1,ych1)と(xch2,ych2)との間で各々比較・算術することにより、座標指示手段上の座標Xa-Yaと試料ステージ座標Xst-Ystとの間の座標較正を行う。座標較正は特公昭63−94548号公報と同様の方法で行うことができる。
測頂点登録記憶装置17に記憶されているチップ配列(nx,ny)とチップ内座標値(xs,ys)、視野ずれ量(dx,dy)を受け取ったSEM制御装置6は観察・測長すべきパターン部分の指示座標値(xa,ya)を求め、これを座標値変換装置12へ出力する。この際には〔数5〕による変換を行う。
〔数5〕
dx=fsx(dxm(1),dxm(2),…)
dy=fsy(dym(1),dym(2),…)
ところで、実用的には記憶容量をある程度に限る必要があるので、実際には無限数に視野ずれ量を保持し用いることはできない。そこで〔数6〕を用いる。
〔数6〕
dx=fsx(dxm(1),dxm(2),…dxm(j))
dy=fsy(dym(1),dym(2),…dym(j))
ただし、fsx、fsyは本発明における統計処理方法を表す関数である。さらにj=mpj(mpj:登録されている位置ずれ補正有効データ点数)となる。ここで、統計処理方法のうち簡便に実現する方法の一例として所定数の結果について平均化する方法がある。これは〔数7〕の通りである。
〔数7〕
dx=(dxm(1)+dxm(2)+…+dxm(j))/j
dy=(dym(1)+dym(2)+…+dym(j))/j
ただし、j=mpj(mpj:登録されている位置ずれ補正有効データ点数)となる。また、他の統計処理方法の一例として所定数の結果について、得られた時間の現在に近い方に重い荷重平均を得る方法がある。これは〔数8〕のとおりである。
〔数8〕
dx=(D1・dxm(1)+D2・dxm(2)+…+Dj・dxm(j))/j
dy=(D1・dym(1)+D2・dym(2)+…+Dj・dym(j))/j
ただし、D1<D2<…<Djかつ(D1+D2+…+Dj)/j=1、また、j=mpj(mpj:登録されている位置ずれ補正有効データ点数)となる。また得られた時間はdxm(j)が最も現在に近く、次にdxm(j-1)以下…dxm(2)、dxm(1)と続く。dyを得るための各要素に付けられた番号も同様な並びとなっている。
ところで、一方で試料ステージの移動終了の毎に測定された視野位置ずれ量測定結果をその都度に移動目標位置へ反映させた補正後移動目標位置を求めて、これを記憶しておき次回の同じ又は相当する個所への移動の際に使用することを繰り返す方法による実施の形態がある。この実施の形態では、指示座標Xa-Yaを用いて観察したい位置を指示する方法、ステージ座標Xst-Ystとの間で行う座標較正の取る方法、測長点位置を表す(nxm,nym)と(xm,ym)を求めて測長点登録記憶装置17Bへ登録する等の基本的な仕組みは前記実施の形態と同様である。測定された視野位置ずれ量(dxm,dym)より次回観察時の移動目標位置(xmt(j+1),ymt(j+1))を求める式は〔数9〕となる。
〔数9〕
xmt(j+1)=xmt(j)−dxm(j)
ymt(j+1)=ymt(j)−dym(j)
この算術を観察位置への試料ステージの移動を終了する毎に繰り返すことで時系列的に移動目標位置を求めて行く。また、その結果は自動的に測長点登録記憶装置17Bへ記憶される。
このようにして試料ステージ移動終了毎に視野位置ずれ量からその時点での移動目標位置を求めるが、次回に同じ又は相当する観察点への移動に際しては過去に時系列的に求められまた記憶されている複数の移動目標位置をやはり測長点登録記憶装置17Bより読み出して、さらに統計学的な処理を施して新たな移動目標位置を求め、かつその移動目標位置へ移動させることで安定した試料ステージの停止精度を確保することができる。すなわち、測頂点登録記憶装置17Bに記憶されているチップ配列(nx,ny)とチップ内座標値(xs,ys)、移動目標位置(xmt,ymt)を受け取ったSEM制御装置6は観察・測長すべきパターン部分の指示座標値(xa,ya)を求め、これを座標値変換装置12へ出力する。この際には〔数10〕による変換を行う。
〔数10〕
xmt=fssx(xmt(S−1),xmt(S−2),…)
ymt=fssy(ymt(S−1),ymt(S−2),…)
ただし、次観察のための試料ステージ移動直前の時点を表すS、以下S−1,S−2,…へと時間を遡る。ところで、実用的には記憶容量をある程度に限る必要があるので、実際には無限数に移動目標位置を保持し用いることはできない。そこで〔数11〕を用いる。
〔数11〕
xmt=fssx(xmt(S−1),xmt(S−2),…xmt(S−j))
ymt=fssy(ymt(S−1),ymt(S−2),…ymt(S−j))
ただし、fssx、fssyは本発明における統計処理方法を表す関数である。さらにj=mpj(mpj:登録されている位置ずれ補正有効データ点数)となる。ここで、統計処理方法のうち簡便に実現する方法の一例として所定数の結果について平均化する方法がある。これは〔数12〕の通りである。
〔数12〕
xmt=(xmt(S−1)+xmt(S−2)+…+xmt(S−j))/j
ymt=(ymt(S−1)+ymt(S−2)+…+ymt(S−j))/j
ただし、j=mpj(mpj:登録されている位置ずれ補正有効データ点数)となる。また、他の統計処理方法の一例として所定数の結果について、得られた時間の現在に近い方に重い荷重平均を得る方法がある。これは〔数13〕のとおりである。
〔数13〕
xmt=(D1・xmt(S−1)+D2・xmt(S−2)+…+Dj・xmt(S−j))/j
ymt=(D1・ymt(S−1)+D2・ymt(S−2)+…+Dj・ymt(S−j))/j
ただし、D1<D2<…<Djかつ(D1+D2+…+Dj)/j=1、また、j=mpj(mpj:登録されている位置ずれ補正有効データ点数)となる。また得られた時間は、例えばxmtではxmt(S−1)が最も現在に近く次にxmt(S−2)以下…xmt(S−j+1)、xmt(S−j)と続く。ymtを得るための各要素に付けられた番号も同様な並びとなっている。
一方、座標値変換装置12では、これを実際に試料ステージ1の移動すべき位置を示すステージ座標値(xst,yst)へと変換して、ステージ制御装置5へと出力する。ステージ制御装置5では、この座標値にリニアスケール24の示す座標値(xL,yL)が一致、又は相当する位置座標値と一致するまで試料ステージ1をXY方向各々に接続されているモータ2及び3を駆動する。所定の位置へ試料ステージ1の移動を終了したら走査型電子顕微鏡の像にて観察又は測長等の所定の動作を行い、終了後に次段の観察点への移動を開始する。
以上の方法では、特徴点登録終了後の次回観察からのウェーハ再搭載では、特徴点の指定を手動によってポインティングペン27等を用いて行っていた。しかし、これをSEM画像に写し出されている特徴点付近のパターン形を特徴点登録時にその位置に関連付けされて記憶されていた特徴点SEM画像と画像照合することで、自動認識を行うことも可能である。これにより顕微鏡の自動観察において、自動座標較正・自動観察位置抽出・自動観察・自動測長を迅速に正確に行うことを可能とする。また、これら画像照合による自動認識は観察位置の指定でも同様に適用される。
以上の本発明を実施することによって、例えば図19に示すように、破線で示されている設計データによる格子の中で実線で示されている実チップ全体が常にある角度で傾いている場合や、図20に示すように破線の設計データ格子に対して実線の実チップ毎に傾いている場合にも、各チップとともに傾いて位置されている等の種々の要因により理想的な位置より位置ずれを生じている測長点mp1〜mp9の位置を正確に走査型電子顕微鏡視野内に捉えることが可能となる。
以上、本発明の実施により図30に示すように位置ずれ量は観察回数を重ねる毎に0付近へと収束される。従って、同じ試料を繰り返し観察するような用途に適した顕微鏡等において、試料ステージのより正確な位置決め動作を行うことが可能となる。
ところで、以上の実施例においては異なる装置間で全く同じ観察手順に従って自動観察を行いたい場合のことを考慮していない。一方で、同種の観察装置を複数台並べて、同じ観察手順に従って自動観察を行いたいという要求も多い。こうした要求に対して、観察手順記録(較正点記憶と測長点記憶を含む)を交換して使用することで実現する。
複数の走査型電子顕微鏡間では、その試料ステージの製作の精度にバラツキを生じることが多い。そこで、記録された位置ずれ量検出結果がどの装置で検出したものかを常に明らかにしておく必要がある。本発明では、装置識別記号(例えば装置製造番号)を観察手順記憶装置40に位置ずれ量(dxm,dym)検出結果と同時に登録させる。
図13に、試料ステージ移動開始前に次の観察位置で試料ステージの移動目標位置のチップ配列(nxm1,nxm2)、チップ内座標値(xm1,ym1)が判明した後に、すでに位置ずれ量(dxm,dym)が装置識別記号(例えば装置製造番号)と関連付けされて観察手順記憶装置40Aに記憶されており、それをSEM制御装置へ読み込んでステージ位置の補正データとして利用するときのブロック図を示す。
SEM制御装置より装置識別装置52−1に位置ずれ補正データの読み込み要求信号rreqを受け取ると、装置識別装置52−1は本発明の走査型電子顕微鏡装置B(51)に個別に備えられている装置識別記憶部67より装置識別記号「B」を読み取り、これを観察手順記憶装置40−1へ伝える。観察手順記憶装置40−1では、デバイス番号DevNoBと関連付けされている位置ずれ補正データ(dxmb1,dymb1),(dxmb2,dymb2),…,(dxmbi,dymbi)をSEM制御装置へ出力し、本発明の特徴である位置ずれ補正を行う。これを実線矢印で示す。ここで、例えば装置識別記憶部67より装置識別記号「A」の記憶されている時には、破線矢印のようにデバイス番号DevNoAと関連付けされている位置ずれ補正データ(dxma1,dyma1),(dxma2,dyma2),…,(dxmai,dymai)をSEM制御装置へ出力する。
以上の処理の流れを図14のフローチャートに示す。
ステップSB001:試料ステージ移動指令発生
ステップSB002:SEM制御本体よりずれ量要求発生
ステップSB003:ずれ量記憶コントローラは予め観察手順記憶装置内に格納してある装置名Bを読み取って、DvNoBに相当するずれ量データを格納している場所にアクセスする。
ステップSB004:前記格納場所からずれ量データをSEM制御本体側へ送る。
ステップSB005:SEM制御本体では、受け取ったデータを基に試料ステージ移動目標位置を補正して新たな目標位置とする。
ステップSB006:前記目標位置へ試料ステージ移動開始
図15に、すでに試料ステージ停止後に、観察位置で試料ステージの移動目標位置のチップ配列(nxm1,nxm2)、チップ内座標値(xm1,ym1)であるときに、測定される位置ずれ量(dxm,dym)が装置識別記号(例えば装置製造番号)と関連付けされて観察手順記憶装置40に記憶される様子をブロック図で示す。
SEM制御装置より装置識別装置52−1が位置ずれ補正データの書き込み要求信号wreqを受け取ると、装置識別装置52−1は本発明の走査型電子顕微鏡装置B(51)に個別に備えられている装置識別記憶部67より装置識別記号「B」を読み取り、これを観察手順記憶装置40−1へ伝える。観察手順記憶装置40−1では、デバイス番号DevNoBと関連付けされている位置ずれ補正データ記憶場所(dxmb1,dymb1),(dxmb2,dymb2),…,(dxmbi,dymbi)へSEM制御装置より出力された位置ずれ量を順次格納される。これを実線矢印で示す。ここで、例えば装置識別記憶部67より装置識別記号「A」が記憶されている時には、破線矢印のようにデバイス番号DevNoAと関連付けされている位置ずれ補正データ記憶場所(dxma1,dyma1),(dxma2,dyma2),…,(dxmai,dymai)へSEM制御装置より位置ずれ量を出力する。
以上の処理の流れを図16のフローチャートに示す。
ステップSC001:試料ステージ移動終了
ステップSC002:観察位置ずれ量測定結果確定
ステップSC003:ずれ量記憶コントローラは予め観察手順記憶装置内に格納してある装置名Bを読み取って、DvNoBに相当するずれ量データを格納している場所にアクセスする。
ステップSC004:前記格納場所へ確定した位置ずれ量データをSEM制御本体側から送る。
ステップSC005:前記格納場所では、受け取ったデータを以前に格納してあるデータに続いて順番に格納する。
ステップSC006:終了
ところで、一方で試料ステージの移動終了の毎に測定された視野位置ずれ量測定結果をその都度移動目標位置へ反映させた補正後移動目標位置を求めて、これを記憶しておき次回の同じ又は相当する個所への移動の際に使用することを繰り返す方法による実施の形態がある。この実施の形態では、測定された視野位置ずれ量(dxm,dym)ではなく、そのずれ量を用いて補正を施した移動目標位置(xmt,ymt)を扱うことになる。
図26に試料ステージ移動開始前に次の観察位置で試料ステージの補正後移動目標位置のチップ配列(nxm1,nxm2)、チップ内座標値(xm1,ym1)が判明した後に、すでに補正後移動目標位置( xmt,ymt)が装置識別記号(例えば装置製造番号)と関連付けされて観察手順記憶装置40Bに記憶されており、それをSEM制御装置へ読み込んでステージ位置の補正データとして利用するときのブロック図を示す。
SEM制御装置より装置識別装置52−1が補正後位置目標位置データの読み込み要求信号rreqを受け取ると、装置識別装置52−1は本発明の走査型電子顕微鏡装置B(51)に個別に備えられている装置識別記憶部67より装置識別記号「B」を読み取り、これを観察手順記憶装置40−1へ伝える。観察手順記憶装置40−1では、デバイス番号DevNoBと関連付けされている補正後移動目標位置データ(xmtb1,ymtb1),(xmtb2,ymtb2),…,(xmtbi,ymtbi)をSEM制御装置へ出力し、本発明の特徴である位置ずれ補正を行う。これを実線矢印で示す。ここで、例えば装置識別記憶部67より装置識別記号「A」の記憶されている時には、破線矢印のようにデバイス番号DevNoAと関連付けされている位置ずれ補正データ(xmta1,ymta1),(xmta2,ymta2),…,(xmtai,ymtai)をSEM制御装置へ出力する。
以上の処理の流れを図27のフローチャートに示す。
ステップSE001:試料ステージ移動指令発生
ステップSE002:SEM制御本体よりずれ量要求発生
ステップSE003:ずれ量記憶コントローラは予め観察手順記憶装置内に格納してある装置名Bを読み取って、DvNoBに相当する補正後移動目標位置データを格納している場所にアクセスする。
ステップSE004:前記格納場所から補正後移動目標位置データをSEM制御本体側へ送る。
ステップSE005:SEM制御本体では、受け取ったデータを基に試料ステージ移動目標位置を補正して新たな目標位置とする。
ステップSE006:前記目標位置へ試料ステージ移動開始
図28に、すでに試料ステージ停止後に、観察位置で試料ステージの移動目標位置のチップ配列(nxm1,nxm2)、チップ内座標値(xm1,ym1)であるときに、測定される位置ずれ量(dxm,dym)より求められた補正後移動目標位置(xmt,ymt)が装置識別記号(例えば装置製造番号)と関連付けされて観察手順記憶装置40Bに記憶される様子をブロック図で示す。
SEM制御装置より装置識別装置52−1が補正後移動目標位置データの書き込み要求信号wreqを受け取ると、装置識別装置52−1は本発明の走査型電子顕微鏡装置B(51)に個別に備えられている装置識別記憶部67より装置識別記号「B」を読み取り、これを観察手順記憶装置40−1へ伝える。観察手順記憶装置40−1では、デバイス番号DevNoBと関連付けされている補正後移動目標位置データ記憶場所(xmtb1,ymtb1),(xmtb2,ymtb2),…,(xmtbi,ymtbi)へSEM制御装置より出力された補正後移動目標位置を順次格納する。これを実線矢印で示す。ここで、例えば装置識別記憶部67より装置識別記号「A」が記憶されている時には、破線矢印のようにデバイス番号DevNoAと関連付けされている補正後移動目標位置データ記憶場所(xmta1,ymta1),(xmta2,ymta2),…,(xmtai,ymtai)へSEM制御装置より位置ずれ量を出力する。
以上の処理の流れを図29のフローチャートに示す。
ステップSF001:試料ステージ移動終了
ステップSF002:観察位置ずれ量測定結果確定
ステップSF003:ずれ量記憶コントローラは予め観察手順記憶装置内に格納してある装置名Bを読み取って、DvNoBに相当する補正後移動目標位置データを格納している場所にアクセスする。
ステップSF004:前記格納場所へ確定した補正後移動目標位置データをSEM制御本体側から送る。
ステップSF005:前記格納場所では、受け取ったデータを以前に格納してあるデータに続いて順番に格納する。
ステップSF006:終了
以上のように、例えば図17に示すようなステージ位置決め誤差を持つ走査型電子顕微鏡装置Aと図18に示すようなステージ位置決め誤差を持つ走査型電子顕微鏡装置Bの間で観察手順記録を共有しても、位置ずれ量の異なることを原因とするステージ位置決め誤差を生じることはない。以上の本発明により、より高い位置精度での視野出しを走査型電子顕微鏡にて実現することが可能となる。なお、本発明は走査型電子顕微鏡のみならず試料ステージを備えた他の観察装置及び顕微鏡にも適用可能である。
1…試料ステージ、2…モータX、3…モータY、4…試料(チップ)、5…ステージ制御装置、6…SEM制御装置、7…制御盤(A)、8…座標値入力窓、9…SEM画像(画像メモリ)、10…チップ配列指示座標、11…チップ内位置指示座標、12…座標値変換器、13…トラックボール、14…リニアスケールコントローラ、15…制御盤(B)、16…較正点登録記憶装置、17…測長点登録記憶装置、18…電子源、19…電子レンズ、20…偏向器、21…ウェーハ、22…検出器、23…画像生成装置、24−1…Yリニアスケール、24−2…Xリニアスケール、26…登録記憶SEM画像、27…ポインティングペン、28…較正手順ファイル、29…測長手順ファイル、30…画像枠、31…画像枠位置指示器、32…画像照合装置、33…ゲート、34…偏向オフセット量指示器、35…偏向指示器、36…アンプ、37…スケール制御器、38−1…Xスケール、38−2…Yスケール、40…観察手順記憶装置、50…走査型電子顕微鏡装置A、51…走査型電子顕微鏡装置B、52…装置識別装置、53…装置記号記録装置、61…位置ずれ補正機能ON/OFF登録記憶装置、62…位置ずれ量補正使用点数登録記憶装置、65…位置ずれ補正機能実行状態表示器、66…補正有効データ点数入力窓、67…装置識別記憶部
adj…画像照合一致時ON信号、pcj(PCJ)…位置ずれ補正有効データ点数、rreq…読み込み時位置ずれ補正データ要求信号、wreq…書き込み時位置ずれ補正データ要求信号