JP4248889B2 - 研磨材粒子の品質評価方法、研磨方法及びガラス研磨用研磨材 - Google Patents
研磨材粒子の品質評価方法、研磨方法及びガラス研磨用研磨材 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス研磨用研磨材に関し、さらに詳しくは各種ガラス材料の仕上げ研磨に好適であり、特に酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする高い研磨速度の持続耐久性に優れたガラス研磨用研磨材及びその品質の評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な用途にガラス材料が用いられている。この中で特に光ディスクや磁気ディスク用ガラス基板、アクティブマトリックス型LCD、液晶TV用カラーフィルター、時計、電卓、カメラ用LCD、太陽電池等のディスプレイ用ガラス基板、LSIフォトマスク用ガラス基板、あるいは光学用レンズ等のガラス基板や光学用レンズ等においては、高精度に表面研磨することが要求される。
【0003】
従来より、これらのガラス基板の表面研磨に用いられている研磨材としては、希土類酸化物、特に酸化セリウムを主成分とする研磨材が用いられている。これは、研磨砥粒として酸化セリウムは、酸化ジルコニウムや二酸化ケイ素に比べてガラスの研磨効率が数倍優れているという利点からである。また、近年、研磨材の研磨能力も、さらに高品質のものが求められている。例えば、画像情報や動画情報量の増大につれて、パソコン、DVDレコーダー、カーナビゲーション等に内蔵されているHDD(ハードディスク駆動装置/磁気ディスク)では、ますます高記録密度(数十ギガ程度ないし100数十ギガ)が要求され、より基板表面を高精度で平滑に研磨しなければならない。ちなみに、HDDにおいては、いわゆるCSS(Contact Start Stop)により浮上する磁気ヘッドと磁性面との間隔は、今や0.1μm以下とされている。
【0004】
なお、ガラス研磨用の酸化セリウムを主成分とする研磨材は、研磨性能が向上するという理由から、フッ素分を含有していることが、一般的である。
【0005】
従来、フッ素分を含有させる研磨材の製造方法としては、種々の製法が知られている。
例えば、出発原料として、元々フッ素分を含有する原料として、例えば、バストネサイト精鉱(フッ化炭酸希土)を選定使用する製法では、精鉱中にフッ素を含有しているため、最終の研磨材中にもフッ素を含有するものが得られる。
【0006】
また、フッ素分として、研磨材中にフッ化セリウムを、添加・含有させる製法(特許文献1)も提案されている。
【0007】
一方また、炭酸希土を出発原料として、フッ酸により部分フッ素化した後、乾燥及び焼成して、酸化セリウムを主成分とし、フッ素を含有する研磨材とする製造方法が知られており、又は、フッ酸で部分フッ素化しない製法として、アルカリ金属やアルカリ土類金属、放射性物質を化学的に分離し、これらの含量が低減されたセリウムを主成分とする軽希土類原料に、フッ化希土類を添加した後、焼成する酸化セリウムを主成分とする製造方法が提案されている(特許文献2)。
【0008】
また、上記の特許文献2の製造方法の技術的範囲に属する一例と解される製法も提案されており、炭酸希土類を出発原料として、仮焼して酸化希土類へと熱分解した後、それにフッ化希土類を添加した後、粉砕、焼成、解砕、分級の操作を行なう製造方法が開示されている(特許文献3)。
【0009】
なお、研磨材中のフッ素分の含有量としては、例えば、3〜9質量%程度の範囲が望ましいとされている。フッ素の含有量が少な過ぎると、酸化ランタンを充分に酸フッ化ランタン(LaOF)に変化させて、固定化することができないため、研磨速度が遅くなる。塩基性の強い酸化ランタンの存在は、研磨時に研磨パッドの目詰まりを生じせしめ、研磨面への研磨材スラリー循環によるリフレッシュに悪影響を与えるのである。一方、フッ素含量が多すぎると、過剰のフッ化希土が焼成中に焼結を起こしてしまうので好ましくない(特許文献2)。
【0010】
さらに、酸化セリウムを主成分とする研磨材においては、粉末X線回折分析の特性において、X線回折の最大ピーク(酸化希土)強度に対する酸フッ化希土等のピーク強度の比率が、特定の範囲を示す研磨材が、研磨特性が良好であるという提案もなされている(特許文献4及び特許文献3参照。)。
【0011】
なお、一般的に、研磨材の粒子径分布については、平均粒子径及び累積粒度分布のd90/d10の比率数値に関し、特定範囲のものを使用すると、研磨速度を高く、研磨表面の傷等の発生を少くすることが出来るとされている(特許文献5)。
【0012】
しかしながら、上記のような従来の酸化セリウムを主成分とする研磨材は、フッ素含有量、粉末X線回折パターン及び粒子径分布などを、上記提案されているような望ましい範囲のものとした場合においても、なお、以下に述べるような不都合な現象が起こるために、ガラスの研磨面の品質を維持しつつ、高い研磨速度を継続・維持する研磨性能の耐久性の面からいえば、必ずしも、満足のいくものではなかった。
【0013】
ここで、ガラス研磨における基本的なメカニズム及び基体成分の溶出について説明すると次のようになる。すなわち、
【0014】
ガラス研磨用の研磨材としては、通常、酸化セリウム系等の研磨材粒子(砥粒)を水等の液体に分散させて、研磨材スラリーとして使用する。また、ガラス板の連続、かつ、大量の表面研磨の場合は、当該研磨材スラリーを循環使用すると共に、研磨されたガラス板に付着して系外に持ち出される研磨材スラリーのロス分相当量を、系外からフレッシュなスラリーとして補給しながら使用するのが、一般的な使用方法である。
【0015】
酸化セリウム系研磨材によるガラスの研磨は、通説によると、機械的研磨と化学的研磨との組み合わせであるとされており(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照。)、当該文献には、ガラス研磨における機械的研磨機構と化学的研磨機構の両方が総説として述べられている。
【0016】
まずガラスの機械的な研磨作用の側面では、研磨速度に関し、次式(Preston式)が紹介されている。
【0017】
(Preston式)
ΔH/Δt=Kp*(L/A)*(Δs/Δt)
ここに、ΔH/Δt:Δt時間に変化する研磨される基材の高さΔH
L :全荷重
A :研磨される基材の面積
Δs :研磨される表面を動く、ガラス表面での研磨具の相対移動距離
Kp :Preston定数
【0018】
(Preston式の別表現式)
ΔH/Δt=(2E)-1*P*(Δs/Δt)
ここに、ΔH/Δt:Δt時間に変化する研磨される基材の高さΔH
E :ガラス基材のヤング率
P :荷重がかかる面積あたりの圧力
Δs :研磨される表面を動く、ガラス表面での研磨具の相対移動距離
1/(2E):Preston定数 = Kp
【0019】
上記式のごとく、機械的メカニズムに基づく研磨速度(ΔH/Δt)は、全荷重(又は圧力)、研磨具の相対的移動速度、及びガラス基材のヤング率等により表現される。
【0020】
一方、ガラスの化学的な研磨作用としては、次のような逐次的メカニズムのモデルが提案されている。すなわち、
【0021】
▲1▼まず、研磨材粒子の荷重がかかっているガラス表面に柔らかい水和層が形成され、▲2▼この水和相が研磨砥粒による荷重下で、研磨砥粒表面の活性点と弱い結合を生じてガラス表面からこすりとられ、▲3▼かくして研磨砥粒表面に吸着したガラス水和相は加水分解して研磨砥粒から脱離し、溶媒である水へガラス成分が溶解し(主成分は、シリカである。)、▲4▼当該溶解したシリカの研磨剤粒子への吸着、シリカの再析出などのプロセスが起こるとされている。
【0022】
ここで、水に溶解したシリカの再析出現象については、シリカ化学関係の著名なアイラーの著書(非特許文献3)にも詳述されている。すなわち、溶解シリカの重合速度は、溶解シリカ濃度が高いと大きく、また、液のpH依存性が大きく、特にpHが中性付近の領域では、溶解シリカの重合・ゲル化速度が大きいとされている。
【0023】
このように、重合・ゲル化したシリカは、研磨材粒子を含有する溶媒である水中に再析出してくるが、このヒドロゲル状シリカ(以下、ヒドロゲル状シリカをゲル状シリカと云う。)は、微細で粘着性があり、また、研磨材粒子に対して、結着剤のような作用をする。従って、研磨の進行とともに、重合・ゲル化したシリカが、液中に蓄積してくると、研磨材粒子をあたかも結着するような形で、被研磨ガラス表面を、部分的に被覆したり、砥粒が研磨パッド上を塗りつぶすような形で硬くなり、パッドが目詰まり状態となって、研磨対象物の表面に傷を生じさせる要因となり、結果として、研磨面品質や研磨速度を低下させるという不都合な現象の原因となると考えられる。
【0024】
このような問題を解決する方法として、研磨材粒子に第二リン酸カルシウム等を添加することによって、砥粒を容易に再分散させ易くすることが提案されている(特許文献6)。しかしながら、かかる成分の添加は、砥粒粒子の分散性を是正する点においては有効であるが、研磨面品質に対しては、潜傷が多く発生し、特に高精度が要求されるガラス基板には、充分満足のいくものではないという問題がある。
【0025】
また、さらに別の方法として、酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材において、フッ化セリウム及び少量のカルシウム化合物を含有せしめたスラリー状のガラス研磨用研磨剤が提案されている(特許文献1、特許文献7)。
【0026】
この方法においては、当該研磨材スラリー中に溶解しているカルシウム化合物が、カルシウムイオンの状態で、効果を発現するとされている。
【0027】
上記したこれらの方法は、いずれも、問題点の改善にある程度効果があるものの、酸化セリウムを主成分とする研磨材を製造する出発原料の選定や、合成方法・条件によって、微妙に異なる生成粒子の物性の影響をかなり受けやすく、汎用性という観点からは、安定して効果を発現しにくいという難点があり、本質的解決にはならない。
【0028】
本発明者らは、かかる問題を解決するため、鋭意検討したところ、酸化セリウムを含む希土類酸化物をガラス用の研磨材として用いる場合に、発生する上記した溶解シリカの重合による研磨速度の低下や研磨面品質の低下等の問題点に関しては、研磨材のシリカ吸着率が、大きく関係しているという意外な事実を見出した。そして、驚くべきことに、酸化セリウムを主体とする粒子は、基本的に当該シリカを吸着する能力があり、しかも、当該個々の酸化セリウムに特有の何らかの物性により、当該粒子へのシリカの吸着能(ηで表示する。)には大幅な差異があって、このηが特定の値以下の場合、ゲル化が実質的に抑制されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされるに至ったものである。
【0029】
【特許文献1】
特開平6−330025号公報
【特許文献2】
特開平9−183966号公報
【特許文献3】
特開2002−224949号公報
【特許文献4】
特開2002−97457公報
【特許文献5】
特開2002−194334公報
【特許文献6】
特開昭50−13405号公報
【特許文献7】
特許第2832270号公報
【非特許文献1】
泉谷徹郎著、「光学ガラス」、共立出版、昭和59年、P114-131
【非特許文献2】
Lee M. Cook, Chemical Processes In Glass Polishing Journal of Non-Crystalline Solids, North-Holland 120(1990) p152-171
【非特許文献3】
Ralph K. Iler The Chemistry of Silica John Wiley & Sons, 1979(reprint edition)
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決すべくなされたものであって、特に酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材において、溶解シリカの重合による研磨速度の低下を抑制し、高い研磨速度を、維持・継続しつつ、しかも、研磨品質に優れたガラス研磨用研磨材を提供することを目的とする。
【0031】
そして、また、このような高品質のガラス研磨用研磨材の研磨能の評価・選択・判別をするために好適に使用される、ガラス研磨用研磨材の研磨品質(本明細書において単に「品質」と称することがある。)の新規な評価方法を提供することである。
【0032】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0033】
(1) シリカを溶解した水性媒体に、被測定対象の研磨材粒子を添加し、当該シリカが当該水性媒体中で実質的に重合しない条件下に当該シリカを当該研磨材粒子に吸着せしめ、当該研磨材粒子を固液分離した母液中に残存するシリカ濃度を測定することにより、シリカの当該研磨材粒子への吸着率(η)を測定することを特徴とするガラス研磨用研磨材粒子の品質評価方法。
【0034】
(2) (1)に記載の方法により測定したシリカ吸着率(η)が特定の値(η0)以下の研磨粒子を選択又は判別してガラスの研磨に使用するガラスの研磨方法。
【0035】
(3) η0が50%である(2)に記載のガラスの研磨方法。
【0036】
(4) 酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材において、(1)に記載の方法により測定した当該研磨材粒子のシリカ吸着率(η)が50%以下であることを特徴とするガラス研磨用研磨材。
【0037】
(5) さらにフッ素化合物を含有する(4)に記載のガラス研磨用研磨材。
【0038】
(6) さらにアルカリ土類金属の硫酸化合物及び/又はアルカリ土類金属のリン酸化合物を含有する(4)又は(5)に記載のガラス研磨用研磨材。
【0039】
(7) アルカリ土類金属がカルシウム、バリウム、マグネシウム及びストロンチウムからなる群から選ばれる1種以上である(6)に記載のガラス研磨用研磨材。
【0040】
(8) 研磨材として、粒子径が2〜3μmの研磨材粒子を含み、その粒子径が2〜3μmである研磨材粒子の微少圧縮試験機による平均粒子強度の測定値が10〜300MPaであるものを使用する(2)又は(3)に記載のガラスの研磨方法。
【0041】
(9) 粒子径が2〜3μmの研磨材粒子を含み、その粒子径が2〜3μmである研磨材粒子の微少圧縮試験機による平均粒子強度の測定値が10〜300MPaである(4)〜(7)のいずれかに記載のガラス研磨用研磨材。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0043】
図1は、本発明において、ガラス研磨用研磨材粒子の吸着シリカ分析による、品質評価方法、及び当該評価方法に基づき、特定の品質の研磨材を選択し、ガラス研磨工程に使用する過程を示す流れ図である。
【0044】
すなわち、この研磨材の品質評価方法においては、まず、シリカを溶解した水性媒体1に、被測定対象のガラス研磨用研磨材粒子3を添加し、当該シリカが当該水性媒体中で実質的に重合しない条件下に当該シリカを当該研磨材粒子に吸着5せしめる。
【0045】
本発明における中心的な技術思想の一つは、研磨材の品質の評価に使用するための、水性媒体に溶解したシリカの研磨材粒子への吸着量を、正確に測定する点にある。
【0046】
(シリカ溶解水性媒体)
酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材スラリー(一般的には、水性媒体のスラリー)により、ガラス基板を研磨すると、研磨の過程で、ガラスの成分(主成分のシリカ及び他のガラス成分元素)が溶媒である水性媒体(水または一般的には水を主体とする水性媒体)中に溶出、溶解する。このシリカは、シリカの超微粒子の前駆的な状態から、当該水性媒体中で、徐々に重合し、成長してゆくと推定されている。
【0047】
しかして、水性媒体中の各種のイオン濃度は、重合速度に影響する可能性があり、また、液中での研磨材粒子の表面電位は、研磨材粒子へのシリカの吸着性能に影響を及ぼす可能性が考えられるため、実際の研磨材スラリーにおけるシリカの吸着挙動は、複雑であり、これを再現性よく測定することは容易ではない。
【0048】
そこで、本発明においては、研磨材スラリーのpHに近い、pH7の溶解しているシリカのモデル液(「溶解」とは、シリカ超微粒子生成の前駆的な状態となっているものを含む。以下、同じ。)を調整し、当該液中でのシリカ吸着率を測定する。
【0049】
当該モデル液は、シリカを、Si換算で、100mg/l含有する、pHが7.0の中性の液である。下記に詳述するように、これは、pH約13のシリカが、完全に溶解した状態の原液を出発点にして、当該原液に酸水溶液を添加し、イオン交換水で希釈して、pHを7.0のシリカ溶解試験液としたものである。
【0050】
(吸着工程)
このシリカ溶解水性媒体(シリカ溶解試験液)に、ガラス研磨用研磨材粒子3を添加して、当該研磨材粒子に、溶解しているシリカを吸着させる。
【0051】
研磨材粒子に吸着されたシリカ量は、当該水性媒体中の溶解しているシリカ濃度を測定することにより算出することができる。すなわち、基本的には、初期のシリカ濃度をC0、t時間後のシリカ濃度をCtとすれば、当然のことながら、吸着が起こらなければ、Ctは、C0と同じはずであり、吸着が起これば、その差ΔC=C0−Ctが研磨材粒子により吸着されたシリカ量に相当することになる。
【0052】
しかしながら、吸着工程と平行して、シリカの重合が進行するという問題があり、重合によっても溶解しているシリカ濃度は減少するので、当該重合シリカ量を考慮し、吸着量を算出する必要がある。
【0053】
すなわち、当該シリカ溶解試験液においては、pHを中性とした時点を起点として、最初は、シリカは、完全な溶解状態にあるが、時間の経過とともに、徐々にシリカの重合が進行する。試験液中でシリカの重合が進行すると、重合し粒子成長したシリカは、濾過残渣となるので、当該濾過残渣量を測定することにより、重合速度を算出することができる。
【0054】
本発明者らが慎重に検討したところ、当該試験液を、孔径0.5μmのメンブレンフィルターで全量濾過した場合の、試験液中の初期の総シリカ量に対する濾過残渣として残るシリカ量(重合シリカ量)は、pHを中性とした時点を起点として、室温下の液温度20〜25℃において、経過時間0時間では、0%、2時間では、約10%、3時間では、約20%、8時間では、約80%のごとくであり、かかる経過時間に渡って重合が進行することを見出した。
【0055】
かくして、本発明においては、シリカが水性媒体中で実質的に重合しない条件として、シリカの重合が実質的に無視できると考えられる、およそ1.5時間の経過時間帯を選択し、当該試験液を用いて、シリカ吸着率の測定を行えばよいことが見出された。なお、この経過時間帯で、シリカの吸着率は、ほぼ平衡に達していることを確認した。
【0056】
このようにして、シリカが溶解した水性媒体(シリカ溶解試験液)に研磨材粒子3を添加して、上記シリカの重合が実質的に無視できる条件で接触・吸着操作を行わしめ、シリカが吸着された当該研磨材粒子9を固液分離7した母液11中に残存するシリカ濃度を測定13することにより、シリカの当該研磨材粒子への吸着率(η)15を求めることができる。
【0057】
吸着操作は、撹拌槽や反応容器を使用して実施してもよいが、ビーカーまたは試験管を振盪機にセットすることにより行うことが好ましい。研磨材粒子と母液(濾液)との固液分離操作としては、通常濾過、遠心分離等が適用される。
【0058】
(シリカ吸着率の具体的な測定方法)
▲1▼本発明における、シリカ吸着率の具体的な測定方法は、以下のとおりである。
水性媒体としては、通常水を用い、シリカが水に溶解している原液としては、原子吸光分析用のケイ素標準原液〔例えば、関東化学社製、Si 1000 ケイ酸カリウム・水酸化カリウム(0.5mol/l)、pH13〕を用いる。
【0059】
なお、ここで、炭酸ナトリウム系の溶液やケイ酸ナトリウム(水ガラス)の希釈液は、用いてはならない。シリカ吸着率に影響を及ぼし、見かけ上吸着率が低い数値となってしまうからである。
【0060】
▲2▼上記の標準原液20mlをビーカーに分取し、それにイオン交換水約50mlを加えた後、1Nの塩酸水溶液を添加し、液のpHを7に調整し、次いで、全液をメスフラスコを用いて、イオン交換水を加えて100mlとする。この段階で、液中のSi濃度は、200mg/lである。
【0061】
▲3▼次に、当該Si濃度200mg/lの液3mlと、イオン交換水3mlとの計6ml(Si濃度100mg/l)を、例えばポリエチレン製試験管(蓋付き)に分取する。この段階で、液中のSi濃度は、100mg/lである。これがシリカ溶解試験液となる。
【0062】
▲4▼次いで、シリカ吸着率を測定したい乾燥した研磨剤粒子粉末1.0gを、上記試験管に入れた後、振盪機を用いて、1.5時間振盪する。
【0063】
なお、上記のSi濃度100mg/lの液6mlに、研磨材粉末を1g添加して混合した際に、スラリーのpHは、通常は、7.0〜7.5程度であるが、スラリーpHが、この範囲を外れる場合には、スラリーのpHが、7.0〜7.5になるように、上記のイオン交換水3mlに、予めHClまたは、KOHを添加しておいてから、研磨材1gを添加する手順に変えれば良い。但し、酸として硫酸は、研磨剤粒子に対するシリカ吸着率に影響を及ぼし、見かけ上シリカ吸着率が低い数値となるので用いない。
【0064】
▲5▼次いで、上記の1.5時間振盪後の液は、試験管ごと卓上遠心分離機(例えばKOKUSAN社製、H-103N型)を用いて、回転数3000rpmで、10分間遠心分離する。上記の操作は、すべて、室温下である液温度(20〜25℃)で実施する。
【0065】
▲6▼当該試験管の上澄み液1mlを分取し、イオン交換水で10倍に希釈した後、その液をプラズマ発光分析装置(ICP)を用いて、上澄み液中のSi濃度を分析する。
【0066】
かくして、研磨剤粒子のシリカ吸着率(η)は、次式で算出される。
シリカ吸着率(η)=((10−上澄み液中Si濃度)/10 )×100 (%)
【0067】
(シリカ吸着率η、η0)
本発明においては、図1の流れ図に示したように、上記した方法によりそれぞれの研磨材粒子について、シリカ吸着率(η)を測定し、工程20において、測定したηとη0 を比較し、そのうち、測定したシリカ吸着率(η)が当該特定の値(η0)以下の研磨粒子を選択又は判別してガラスの研磨工程23に使用する。
【0068】
そして、本発明においては、好ましくは、シリカ吸着率(η)が50%以下(すなわち、η0 =50% )である研磨材粒子をガラスの研磨に使用するものである。
【0069】
なお、測定した研磨材粒子が当該特定の値(η0)を超える場合は、研磨材粒子の合成条件を最適化25して、図1のフローのライン30に従い、そのシリカ吸着率が、η0以下になるまで、再度シリカ吸着率の測定を繰り返えせばよい。
【0070】
研磨材のシリカ吸着率(η)が、特定の値(η0)以下のもの、特にη0が50%である充分小さい数値の研磨材粒子は、これをガラス研磨用に使用した場合、研磨材スラリー中の溶解シリカの重合によりゲル状シリカが生成し研磨速度が低下すること、及び研磨面の品質の低下等が起こることを、充分抑制することができる。
【0071】
研磨材のシリカ吸着率(η)は、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、より一層好ましくは20%以下である。
【0072】
研磨材粒子の表面活性を維持しつつ、シリカ吸着率を小さくすることが望ましく、実質的には、その下限は、1%以上、より好ましくは、5%以上であれば充分である。
【0073】
なお、本発明者らが、上記方法で検討したところによれば、従来のガラス研磨用の酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材微粒子は、例えば後述する比較例1のように、そのシリカ吸着率が58.3%と、本発明の研磨材よりはるかに大きいものであった。
【0074】
(対象研磨材粒子)
本発明の対象とする研磨材粒子は、ガラスの研磨に使用する研磨材であり、より具体的には、酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とするガラス研磨用研磨材粒子である。
【0075】
そして、さらに好ましくは、フッ素化合物を含有するガラス研磨用研磨材であり、これに、アルカリ土類金属の硫酸化合物及び/又はアルカリ土類金属のリン酸化合物を含有せしめたガラス研磨用研磨材であることが一層望ましい。なお、アルカリ土類金属としては、後記するように、カルシウム又はバリウムが特に好ましく選択されるが、マグネシウム及びストロンチウムも使用できる。
【0076】
本発明においては、酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とし、一部が希土類フッ化物になっているものを包含して、「研磨材主成分粒子」(或いは単に「主成分粒子」)と称し、それ以外のアルカリ土類金属の硫酸化合物及び/又はアルカリ土類金属のリン酸化合物を含む補助成分を、「研磨材副成分粒子」(或いは単に「副成分粒子」)と称するものとする。
【0077】
(研磨材主成分粒子)
(1)本発明における研磨材主成分粒子の主要な成分の組成を酸化物換算質量%で示すと、例えば、CeO2 50〜65%、La2 O3 25〜35%、Pr6 O11 5〜6.5%、Nd2 O3 0.3〜15%程度のものが好ましい。
【0078】
また、フッ素分(F)の含有量は、3〜9質量%が好ましく、より好ましくは5〜8質量%である。すでに述べたように、フッ素分(F)の含有量が少な過ぎると、塩基性の強い、酸化ランタンを充分フッ化ランタンに変化・固定化することができないため、研磨速度が遅くなる。一方、フッ素分(F)が多すぎると、過剰のフッ化希土が焼成中に焼結を起こしてしまうため望ましくない。
【0079】
(2)研磨材主成分粒子の平均粒子径(d50)は、0.3〜3μmが好ましく、0.5〜2μmがより好ましく、0.5〜1.5μmがさらに好ましい。この平均粒子径は、レーザー散乱法(例えば、日機装社製、商品名:マイクロトラック、型式:9320−X100型使用)により測定する。
【0080】
さらに、研磨材粒子の粒子径分布については、累積粒度分布において、小粒子径から10%、90%の粒子径(μm)を、それぞれd10、d90とした場合のd90/d10が、15以下であるものが好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下であるものが最も好ましい。
【0081】
(3)研磨材粒子の結晶学的物性については、CuKα線を用いた粉末X線回折分析による結晶ピークにおいて、2θが、28.3deg付近に、立方晶複合酸化希土の最大ピーク(A)と、2θが、26.6deg付近に、酸フッ化希土のピーク(B)が現れるが、それら二つのピークのB/Aのピーク高さの比率が、0.2〜0.8が好ましく、0.3〜0.6がより好ましい。
【0082】
なお、ここで「ピーク高さ」とは、ピーク曲線のベースラインからピーク頂点までの高さを示すものである(以下、同じ。)。
【0083】
(4)さらに主成分粒子についてその他の物性は、以下のとおりである。
▲1▼結晶子径(Scherrer法による。)については、150〜300Åが、好ましく、170〜250Åが、より好ましい。
【0084】
▲2▼研磨材粒子の細孔構造については、BET法による比表面積(例えば、島津製作所製、装置名:Micro Meritics Flow SorbII 2300などで測定)として、1〜10m2/gが好ましく、1.5〜6m2/gがより好ましい。
【0085】
▲3▼また、研磨材主成分粒子の機械的強度については、例えば、粒子の機械的強度の一般式として、次の平松らの式 (平松、岡,木山:日本鉱業会誌,81,1024
(1965))により測定・算出する。
【0086】
St=2.8P/(πd2 )
(ここに、St:測定値として得られる破壊時の粒子の機械的強度(MPa )、P:圧縮荷重(N)、d:粒子径(mm))
【0087】
上記式から明らかなように、粒子の破壊時の機械的強度は、粒子径により大幅に変化するものであって、当該粒子径の2乗に反比例し、粒子径が小さくなると、粒子強度が急激に大きくなる。
【0088】
本発明においては、研磨材主成分粒子の機械的強度は、この平松らの式を使用して島津製作所製、微小圧縮試験機 (MCT−W−500型) などにより測定される。
【0089】
当該方法は、粒子径dの粒子に一定速度で負荷をかけていき、変化の急激な増加の点で試料粒子が圧裂したことを示すことから求めるものである。このようにして、粒子径d1 ,d2 ,・・・,dn についてそれぞれ測定を行い、平均値を求める。なお、粒子径は、下記のようにして光学顕微鏡で測定した値である。
【0090】
すなわち、本発明においては、研磨材中から、これに含有される上記測定装置により測定可能な最小粒子径に近い粒子径dが2〜3μmの粒子を、当該試験装置付属の光学顕微鏡の視野において20個を選び出し、それぞれについてそのまま機械的強度を測定して、その平均値を算出した。なお、上記の粒子径とは、本発明における研磨剤粒子は、その粒子形状が球形ではなく不定形なので、測定する粒子を顕微鏡観察で、長径と短径をそれぞれ測定し、長径と短径の平均値を、粒子直径とし、それが、2〜3μmの粒子のみを研磨材中から選びだして粒子強度を測定する。
【0091】
かくして測定される本発明の研磨材主成分粒子の機械的強度としては、圧力の単位をMPaで表現すると、10〜300MPaのものが好ましく、30〜200MPaがより好ましく、50〜200MPaがさらに好ましい。最も好ましくは、90〜200MPaである。粒子の機械的強度が、300MPaを越えると、ガラスの研磨面に傷が生ずるおそれが増える。また、粒子強度が10MPa未満であると、研磨材の使用中に、粒子径分布が変化し、初期の好ましい範囲から外れ易くなる。(なお、上記研磨材粒子の機械的強度の範囲は、少なくとも本発明の研磨材に含有され、かつ、実際に測定が可能である最小粒子径2〜3μmの粒子についての測定値を基準として規定しているものであるが、それ以外の任意の粒径、例えば粒子径1μmの粒子を基準とする強度範囲は、上記平松の式から容易に換算でき、規定することが可能である。)
【0092】
本発明の研磨材粒子の機械的強度の範囲が、このように、従来の研磨材粒子の機械的強度よりもずっと広い範囲をカバーしているものである点も、本発明の一つの大きな特徴である。
【0093】
(研磨材副成分粒子)
本発明においては、主成分粒子に、副成分粒子を配合・共存させることが好ましい。副成分粒子とは、基本的に主成分粒子の研磨能を補助するために添加されるものであって、上記したように、アルカリ土類金属の硫酸化合物及び/又はアルカリ土類金属のリン酸化合物を主成分粒子に配合することが好ましい。これにより、後記するように、ゲル化を抑制したり、研磨材粒子のシリカ吸着率をより容易に低下させ、主成分粒子の研磨性能をより向上させる効果を有する。当該アルカリ土類金属としては、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウムなどが適用可能であり、その中でも、カルシウム、バリウムが、特に好ましい。
【0094】
具体的化合物の形態としては、例えば、水への溶解度が極めて小さな硫酸バリウム、第二リン酸カルシウムが好ましく、又は、水へのある程度の溶解度をもつ硫酸カルシウムなどが望ましい。
【0095】
これらの副成分粒子を、研磨材の主成分粒子と粉末状態で共存させる場合には、これらは、硫酸バリウム(BaSO4)、硫酸カルシウム二水和物(CaSO4・2H2O)、第二リン酸カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)などの形態で用い、別途調製した主成分粒子に配合・混合した研磨材スラリーとするのが、好ましい。
なお、上記の硫酸バリウム(BaSO4)、硫酸カルシウム二水和物(CaSO4・2H2O)、第二リン酸カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)等の副成分粒子の平均粒子径としては、0.1〜15μm、好ましく、0.3〜10μmである。これらの粒径は、主成分粒子と同様の機器(例えば、日機装社製、商品名:マイクロトラック、9320−X100型)等を使用し、同様にレーザー散乱法により測定する。
【0096】
(研磨材組成、スラリーのpH等)
本発明おいては、酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする、「研磨材主成分粒子」の質量として、主要な希土類化合物(酸化物、フッ化物)を、すべて、酸化物(CeO2 +La2 O3 +Pr6 O11 +Nd2 O3 +Sm2O3+Gd2O3等)に換算した総質量を基準(以下、「(研磨材)主成分粒子の質量」と記す。)とし、副成分粒子の含有量(配合量)を表示することにする。
【0097】
研磨材中の副成分粒子の含有量としては、主成分粒子の質量を基準として、副成分粒子の無水物換算量が、0.1〜5.0質量%が好ましく、0.2〜5.0質量%がより好ましい。副成分粒子の含有量が、0.1質量%未満では、後記するような、副成分粒子の配合による作用・効果が少なく、また、副成分粒子の含有量が、5.0質量%をあまり超えると、研磨速度レベルが低下するため好ましくない。
【0098】
本発明においては、研磨材粒子(研磨材の主成分粒子単独あるいは研磨材の主成分粒子に副成分粒子共存の場合のいずれであってもよい。)を水スラリーとして使用するが、当該水スラリーのpHについては、固形分濃度10質量%の水スラリーの室温におけるpHは、6.0〜9.0が好ましく、6.2〜8.0がより好ましく、6.5〜7.5が最も好ましい。
【0099】
なお、本発明における研磨材スラリーにおける、水性媒体中には、粒子の分散性をよくするために、例えば高分子ポリカルボン酸アンモニウム塩や高分子ポリスルホン酸アンモニウムなど有機高分子系の分散剤を添加して使用してもよい。
【0100】
(研磨材粒子等の硬度)
本発明における研磨材の構成粒子(主成分粒子、副成分粒子)や被研磨材料たるガラス基板についての硬度(モース硬度)は、以下のとおりである。
【0101】
すなわち、ガラスは、4〜7、酸化セリウムを含む希土類研磨材は、5.5〜6.5、さらに、硫酸バリウムは、2.5〜3.5、硫酸カルシウムは、2前後、第二リン酸カルシウムは、1.5前後である。従って、これら数値から明らかなごとく、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、第二リン酸カルシウムのモース硬度は、酸化セリウムを含む希土類研磨材に比較して、いずれも十分硬度が小さく、柔らかいものであるので、これら副成分粒子によるガラス研磨面への傷等の悪影響は、実質的に認められないと推定される。(なお、上記した硫酸バリウム等の副成分粒子のモース硬度の数値は、酸化セリウム等と異なり、化学分野における代表的な成書である化学便覧・基礎編の最新版(改訂4版、平成13年6月15日発行。)等にも掲載されていない数値である。)
【0102】
(シリカ吸着とゲル状シリカ生成)
本発明において規定する方法により測定したシリカ吸着率(η)が特定の値(η0)以下、例えば50%以下の研磨材粒子により、溶解シリカの重合に基づくゲル状シリカ生成に起因する研磨速度の低下を、効果的に抑制することができるが、このメカニズムは、現在のところ完全には明確ではない。ただし、本発明者らは、一応つぎのようであろうと推測している。すなわち、
【0103】
研磨されるガラス板から研磨材スラリー中に溶解したシリカは、すでに述べたように、一般に、シリカ超微粒子生成の前駆的な状態にあるが、これは、酸化セリウムを含む希土類研磨材粒子のpH中性付近の水中での表面電位等の影響により、酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材粒子の表面に吸着・濃縮される。このように、研磨材粒子表面においては、シリカ濃度が、バルク中におけるよりも遙かに濃縮された状態にあり、当然のことながら、反応速度的に、当該シリカが高濃度の領域で、シリカの重合が、促進されるのである。このように、シリカを粒子表面に吸着した希土類研磨材粒子は、シリカ重合促進の核粒子のような作用をすると考えられる。
【0104】
すなわち、研磨材粒子の比表面積に対する粒子の外表面積の比率は、かなり大きいため、スラリー状態で研磨に使用される際には、シリカを吸着した研磨材粒子は、研磨作用により研磨剤粒子の粒子相互の衝突、摩擦などの機械的作用も加わるので、シリカが吸着された粒子外表面から一部脱離し、粒子の表面更新が行われるという現象も加わる。かくして、研磨工程中、研磨材粒子の表面においては、シリカ吸着粒子の表面更新と当該表面更新された新しい粒子表面への更なるシリカの吸着及び重合が繰り返されるので、当該研磨材粒子は、シリカの重合を促進するシリカ重合の核粒子のような作用をすると考えられる。かくして、当該溶解したシリカは、希土類研磨材粒子のシリカ吸着作用により、シリカの重合によるゲル状シリカの生成が促進され、このゲル状シリカが、粘着性の粒子結着剤のような好ましくない作用をするようになると推察される。
【0105】
このように、シリカ吸着率の大なる研磨材粒子の表面において、シリカの重合が促進され、希土類研磨材粒子がシリカ重合促進の核粒子のようになり、研磨速度の持続性が大幅に損なわれるのである。
【0106】
これに対して、本発明においては、シリカ吸着率(η)として、特定の値(η0)以下、特に50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに一層好ましくは20%以下の研磨材粒子を選択することにより、当該シリカの研磨材粒子への吸着量が充分少なく、従って、上記メカニズムに基づくゲル状シリカの析出量が極めて抑制されるものである。
【0107】
本発明者らの検討によれば、本発明で規定するように、上記シリカ吸着率50%以下の研磨材粒子を選択・特定して使用することにより、シリカ吸着率が50%を超えている通常の研磨材粒子に比較して、遙かに、ゲル状シリカの生成が低下し、研磨速度の持続耐久性が顕著に向上するのである。これは、後記する実施例、比較例より明らかである。
【0108】
(シリカ吸着のメカニズムについての補足)
上記したごとく、従来から酸化セリウムを含む希土類酸化物をガラス用の研磨材として用いる場合に、研磨されたガラス中のシリカ分は、一旦溶解した後、例えば非特許文献2等によると、研磨材粒子表面へのシリカの吸着・再析出などの過程が進行し、最終的にはゲル状のシリカとなるのではないかとする概念的な考え方が提案されている。しかしながら、実験的な確認データや証拠は、充分には示されていない。
【0109】
また、研磨材スラリー中の溶解したシリカ及び重合過程にあるシリカが、研磨材粒子と具体的にどのような関わりを有するか、また、どの程度関わりを有するかについても、従来、ほとんど確認されてはいなかった。
【0110】
研磨材粒子径は、0.2〜数μm程度の大きさであり、溶解したシリカは、モノマーに近い状態では、せいぜい数量体であるが、重合の進行とともに、いわゆる活性ケイ酸のような超微粒子の前駆的状態(粒子径1nm前後程度)から、超微粒子の粒子径が大きくなり、3次元的に粒子成長がおこる。超微粒子状態のシリカ粒子の水への飽和溶解度は、粒子径が、10nm以下では、粒子径との依存性が極めて大きく、粒子径が小さくなるほど、飽和溶解度は、大きくなる(非特許文献3、P55参照。)。したがって、飽和溶解度の面からも、シリカの重合が進むと、研磨材スラリー液中にゲル状のシリカ粒子が析出してくる。
【0111】
また、さらに付言すれば、研磨材スラリー中の溶解したシリカ及び重合過程にあるシリカが、研磨材粒子にどの程度吸着するか否かということも、従来、全く知られていなかったことにも注意すべきである。
【0112】
すなわち、酸化セリウム(CeO2)粒子とシリカ(SiO2)粒子とが水中に分散しているという極めて単純な系であれば、粒子の表面電位が零になる液のpHに対応する等電点pHは、CeO2では、pH6.75であり、SiO2では、pH1.8(G.Parks,Chem.Rev.65,p177〜198(1965)参照。)であるので、pHが、中性付近では、表面電位が相互に異なるので、CeO2にSiO2が吸着することは、容易に推察できる。
【0113】
しかしながら、実際の系は、このような単純な系ではない。実際のガラス研磨用の酸化セリウムを含む希土類酸化物からなる研磨材は、酸化セリウムを含む混合酸化希土であり、固溶体で形成されており、しかも、フッ素分を含有し、それも酸フッ化希土(オキシフロライド希土)も存在するという、はるかに複雑な粒子である。このような研磨材粒子が、水スラリー状態で存在する系において、これに対する溶解シリカ分の吸着挙動は、到底予測不可能である。
【0114】
さらに、当該シリカの吸着挙動を測定すること自体、従来は困難であり、本発明者らがここで提案しているように、研磨材スラリーを用いてガラスを研磨する際に液中のシリカが、研磨材粒子へ吸着する実際の挙動に近いモデル試験評価方法によって、当該シリカ吸着率の測定が初めて可能となったものである。
【0115】
(アルカリ土類金属硫酸化合物等の作用)
本発明において、酸化セリウムを含有する希土類酸化物を主成分とする研磨材主成分粒子に対し配合する、副成分粒子たるアルカリ土類金属の硫酸化合物及び/又はアルカリ土類金属のリン酸化合物は、すでに述べたように、当該研磨材の研磨性能をより向上させる効果を有するが、これは、以下のメカニズムに基づくものと推定される。すなわち、
【0116】
希土類研磨材粒子に比較して、水に極めて難溶性の硫酸バリウム粒子あるいは第二リン酸カルシウム粒子は、まず、それらの粒子自体のシリカ吸着率は、相対的に大幅に小さく、それら自体、溶解シリカの重合促進の核粒子としては、作用することがないため、硫酸バリウム等を副成分粒子として配合・共存させることにより、シリカ吸着率を低下させる効果がある。
【0117】
また、硫酸バリウム粒子あるいは第二リン酸カルシウム粒子は、水性媒体に難溶性の粒子として、これが、主成分粒子に対し、ガラス研磨面において共存し、粒子相互の接触や衝突が繰り返されると、粘着性のある粒子結着剤のような作用をするゲル状シリカに対して、硫酸バリウム粒子あるいは第二リン酸カルシウム粒子が、粘着性のあるゲル状シリカを解砕して、非粘着性を付与するフィラーのような働きをするものと推察される。
【0118】
一方、硫酸カルシウムの場合は、小さいながら水に対しある程度の溶解度を有しているため、これと異なるメカニズムである。当該硫酸カルシウムを研磨材の副成分粒子として配合・共存させると、研磨材の水スラリーの状態では、硫酸カルシウムは水に溶解し、かくして水中に溶解した硫酸カルシウムが存在することにより、なんらかの理由で、シリカ吸着率を低下せしめるように作用すると考えられ、また、実際に測定してみると、シリカ吸着率が、大幅に低下する現象が認められる。いずれにせよ、かくして溶解した硫酸カルシウムの添加により、シリカ吸着率をより低下せしめることができるため、研磨材スラリー中のシリカの重合を抑制するものと推察されるのである。
【0119】
以上のごとく、酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材中に、副成分粒子である、アルカリ土類金属の硫酸化合物及び/又はアルカリ土類金属のリン酸化合物を、配合し共存させることにより、シリカ吸着率の測定数値を、安定して、より容易に50%以下の範囲にすることができる。すなわち、ゲル状シリカの生成に基づく研磨速度の低下や研磨面品質の低下等の悪影響を、より効果的に抑制することが可能となると推定される。
【0120】
(研磨材粒子の製造方法)
本発明における研磨材、特にシリカ吸着率が本発明で規定する範囲にある研磨材粒子は、以下のごとき方法で製造される。
【0121】
(研磨材主成分粒子)
本発明における酸化セリウムを主成分とする研磨材の原料は、主に、バストネサイト、モナザイト、ゼノタイム、中国複雑鉱等の希土類含有鉱石から製造される。これらの中で、通常用いられるのは、バストネサイト鉱、モナザイト鉱、中国複雑鉱等の鉱石であるが、もちろん、これらに限定されるものではない。
【0122】
まず、これらの希土類含有鉱石を選鉱した後、バストネサイト精鉱、モナザイト精鉱、中国複雑精鉱などの希土類精鉱を得、得られた希土類精鉱に、放射性元素等の不要な鉱物を取り除くための化学処理、及び必要により溶媒抽出をした後、沈殿ろ過、さらには焼成等の従来から用いられている工程を組み合わせることにより、酸化セリウムを主成分とする研磨材の原料である、炭酸希土、酸化希土、水酸化希土、フッ化希土等の研磨材の原料を得るのである。
【0123】
なお、フッ化希土の場合は、塩化希土の水溶液へフッ酸を添加して、フッ化希土の沈殿を生成させて製造する方法が一般的である。
【0124】
(i)本発明における望ましい研磨材の主成分粒子の製造方法の一例は、これに限定されるものではないが、炭酸希土を加熱分解して得られる酸化希土とフッ化希土とを出発原料とする方法である。すなわち、
【0125】
上記の原鉱石から得られる炭酸希土を、酸素含有雰囲気下で、まず、400〜840℃において、30分〜48時間、好ましくは1〜24時間程度焼成(仮焼)して、加熱分解せしめて酸化希土とする。このように、炭酸希土を、いきなり焼成(本焼成)するのでなく、後記する本焼成温度よりも低い温度で仮焼して酸化希土とすることが好ましい工程の一つである。なお、この酸化希土には、炭酸希土が一部残存していてもよい。
【0126】
ここで、炭酸希土を焼成(仮焼)して、得られる酸化希土と炭酸希土との混合物としては、酸化物換算全希土(TREO)が、50〜97質量%のものが好ましく、70〜95質量%のものがより好ましく、80〜93質量%のものがさらに好ましい。
【0127】
一方、フッ化希土については、上記したごとく塩化希土の水溶液へフッ酸を添加して、フッ化希土の沈殿を生成させて製造する一般的な製法で得られるものを使用することが好ましいが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0128】
仮焼した酸化希土については、通常、以下のとおり、フッ化希土添加、原料混合スラリー化、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級などの工程が行われる。
【0129】
まず、上記の仮焼して得られた酸化希土にフッ化希土を添加する。フッ化希土の添加量は、最終的に得られる研磨材の主成分粒子中の含有量が、すでに述べたように、(F)換算量として、3〜9質量%となるようにすることが好ましく、5〜8質量%がより好ましい(添加工程)。
【0130】
かくして酸化希土にフッ化希土を添加した後、水を加えて混合し、固形分濃度30〜60質量%のスラリーとし、当該スラリーを、1〜10時間程度湿式粉砕して、粒子径0.2〜10μm程度の粒子からなるスラリーとする(原料混合スラリー化、湿式粉砕工程)。
【0131】
次に、当該湿式粉砕したスラリーを乾燥した後、酸素含有雰囲気下で焼成する。この焼成は、前記した仮焼に対し、本焼成とも称すべきものであって、焼成条件としては、加熱温度500℃以上の昇温速度を、0.3〜5℃/min、保持する高温度としては、850〜1100℃、及び当該高温度範囲での保持時間を、0.5〜6時間とすることが好ましい。
【0132】
さらに、焼成条件としては、加熱温度500℃以上の昇温速度を、0.5〜3.5℃/min、保持する高温度としては、900〜1000℃、及び当該高温度範囲での保持時間を、2〜5時間とすることがより好ましい。
【0133】
仮焼又は本焼成を実施するための焼成装置としては、上記粉砕・乾燥原料を収容し、ここで規定する温度で昇温し、かつ、当該高温を保持して焼成しうるものであれば、如何なる形式の炉であってもよく、例えば、回分式あるいは連続式の、箱型炉、回転炉、トンネル炉等を適用することができ、また、加熱の方法としては、電気加熱式、直火式(燃料はガスまたは燃料油など)のいずれも適用できる(乾燥、焼成工程)。
【0134】
かくして、焼成後は、解砕し、所望により分級して、所定粒子径の範囲を有する研磨材主成分粒子が得られる(解砕、分級工程)。
【0135】
(ii)なお、上記のごとく酸化希土とフッ化希土を別々に調製して混合する代わりに、炭酸希土を原料として用い、この一部をフッ酸水溶液で部分フッ素化させる方法を採用することも可能である。この製法の場合には、炭酸希土に水を添加してスラリー化し、これにフッ化水素を添加して部分的にフッ素化し、これを上記と同様にして、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級などの工程を行えばよい。
【0136】
(副成分粒子の配合)
アルカリ土類金属の硫酸化合物及び/又はアルカリ土類金属のリン酸化合物からなる副成分粒子は、上記の研磨材主成分粒子に配合され、主成分粒子と副成分粒子が共存するスラリー状態で、研磨材スラリーとして使用する。
【0137】
(i)ここに、共存副成分を、研磨材スラリー中に配合・共存せしめるには、種々の方法が採用できるが、もっとも容易で簡便に実施できるのは、まず研磨材主成分粒子の水スラリーを調整し、それに副成分粒子を後添加して、スラリーを均一混合し、主成分粒子と副成分粒子が、共存するスラリーとする方法である(以下「後添加法」と称する。)。
【0138】
(なお、副成分粒子が水溶性の場合は、当該副成分粒子の配合量によっては、その一部または全部が水溶液になる場合もあるが、本発明において、「副成分粒子の共存」とは、かかる状態のものをも包含する意味で使用する。)
【0139】
後添加法を実施する場合の装置としては、通常の固体−液体の混合操作を行う、固液混合装置がいずれも好適に使用することができ、例えば、リボン型撹拌翼ミキサー、パドルミキサー、撹拌翼の動作が自転と公転の両方をする方式のミキサー、ガス噴流方式によるミキサー、回転円筒方式のミキサーなどが適用できるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
(ii)一方、後添加法の代わりに、研磨材主成分粒子を製造する途中の工程で、予め副成分粒子を配合・共存させておき、すでに述べた研磨材主成分粒子の製造法と同じ製造工程を適用することにより、研磨材主成分粒子に副成分粒子を配合・共存させる方法を採用することもできる(以下「前添加法」と称する。)
【0141】
前添加法を、例えば、セリウムを主成分とする炭酸希土または酸化希土及びフッ化希土を、出発原料とする場合を例にして説明すると、すでに述べた、フッ化希土添加、原料混合スラリー化、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級などのいずれかの工程の前、または、後に、当該副成分粒子を添加し、各工程を実施すればよい。
【0142】
これらの副成分粒子を、前添加法で配合する場合には、副成分粒子として通常の後添加法の場合に添加される、硫酸バリウム(BaSO4)、硫酸カルシウム二水和物(CaSO4・2H2O)、第二リン酸カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)などのうち、硫酸カルシウム等の二水和物は、焼成工程における高温での熱処理を受けて、無水物の形態となるが、全く問題はない。
【0143】
例えば、硫酸カルシウム二水和物等を、製造工程中の湿式粉砕工程の前に添加すると、発泡現象をほぼ完全に抑制できる利点や、それ以後の工程である乾燥、焼成、解砕、分級工程を経て最終的に得られる研磨材粒子の機械的強度を、大幅に向上できるなどの利点がある。なお、この発泡現象とは、研磨材スラリーの調製工程において、副成分粒子等を配合・混合した場合、大量の発泡が起こり、甚だしき場合は、発生した当該泡が反応容器や混合容器の上部から溢れ出る現象である。実際の操業においては、発泡が起こると、それ以上粒子を追加的に添加することができず、円滑な混合操作の実施が著しく阻害される。
【0144】
(iii)なお、炭酸希土を原料として用い、この一部をフッ酸水溶液で部分フッ素化させる方法を採用する場合は、フッ酸水溶液による、部分フッ素化が、終了した以降の工程、すなわち、炭酸希土に水を添加してスラリー化し、これにフッ酸水溶液を添加して部分的にフッ素化し、ひき続き行う、湿式粉砕、乾燥、焼成、解砕、分級などのいずれかの工程の前または後に、当該副成分粒子を添加し、各工程を実施すればよい。副成分粒子を炭酸希土に添加してから、上記部分フッ素化を行った場合は、CaF2等が生成するため好ましくない。
【0145】
また、上記のいずれの製造法において、焼成工程で、研磨材主成分粒子へ副成分粒子の固溶等が起こった場合でも、本発明の効果は、なんら妨げられるものではない。
【0146】
(iv)さらに別の方法として、研磨材主成分粒子と副成分粒子とを混合したものを、特定の複合化装置(例えば、ホソカワミクロン社のメカノフュージョン装置など)により、粒子複合化させる方法により、3次元的な循環と圧縮・せん断処理を高速で繰り返して両粒子を圧着・粒子複合化させる方法を適用することもできる。
【0147】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これらは単なる実施の態様の一例であり、本発明の技術的範囲がこれらによりなんら限定的に解釈されるものではない。
【0148】
〔実施例1〕(仮焼・本焼成された主成分粒子単独使用)
(研磨材用の主成分粒子の調製)
【0149】
(1)中国の希土高科社製、炭酸希土、〔酸化物換算全希土(TREO)42質量%、CeO2/TREO 60質量%〕45kgを、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、加熱温度750℃、2時間焼成(仮焼)し、酸化物換算全希土(TREO)90.5質量%の酸化希土焼成品を得た。
【0150】
(2)次いで、上記焼成品16kgと中国の甘粛希土公司社製フッ化希土〔酸化物換算全希土(TREO)83質量%、CeO2/TREO 61質量%、(F)含有量 25質量%、平均粒子径10μm〕、5.0kgを秤り取り、両方を、水27.2kgを入れた撹拌槽に投入し、撹拌してスラリーとした。次に、当該スラリーを、粉砕媒体ボールを用いた湿式粉砕機に循環供給して、約5時間湿式粉砕し、粒子径を0.2〜6μmに粉砕した。
【0151】
(3)湿式粉砕後のスラリーは、バットに入れ、箱型乾燥機で、120℃で、20時間乾燥した。乾燥後の粉体は、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、焼成を行った。すなわち、加熱温度500℃以上の昇温速度を、2.3℃/min、保持する高温度としては、950℃で、上記温度での保持時間は、3.0時間という条件で焼成した。焼成後の粉体は、解砕機で解砕した後、風力分級機を用いて分級し、研磨材用の主成分粒子14.0kgを得た。
【0152】
(主成分粒子の組成及び諸物性値)
(1)この研磨材用の主成分粒子の組成を酸化物換算質量%で示すと、
CeO2 61.9%、La2 O3 31.5%、Pr6 O11 5.3%、Nd2 O30.9%、Sm2O3及びGd2O3は、それぞれ0.1%未満であり、また、CaO 0.20%、BaO 0.075%、P2O5 0.015%、及びフッ素分(F)の含有量は、5.7%であった。
【0153】
(2)平均粒子径(d50)は、0.95μmであった(日機装社製、商品名:マイクロトラック、9320−X100型により、レーザー散乱法で測定。)。
【0154】
また、粒子径分布については、累積粒度分布において、小粒子径から10%、90%の粒子径(μm)を、それぞれd10、d90とした場合のd90/d10は、3.4であった。
【0155】
(3)当該主成分粒子の、粉末X線回装置(リガク社製、CuKα線、Rint−2000型)を用いてX線回折スペクトル分析結果は、以下のとおりである。
【0156】
2θが28.3deg付近に、立方晶複合酸化希土の最大ピーク(A)が、2θが26.6deg付近に、酸フッ化希土のピーク(B)が現れる(なお、以下の実施例、比較例において、二つのピーク出現2θは、ほぼ同じであった。)。
【0157】
ピーク高さ(A)に対するピーク高さ(B)のピーク高さの比率(B/A)は、0.50であった。なお、X線回折分析測定では、フッ化セリウムの結晶ピークは全く認められなかった。
【0158】
(4)また、当該主成分粒子のその他の物性は以下のとおりである。
▲1▼結晶子径(Scherrer法)は、205Åであった。
▲2▼また粒子のBET法による比表面積(島津製作所製、装置名Micro Meritics Flow SorbII 2300による測定)は、2.8m2/gであった。
【0159】
▲3▼上記主成分粒子の微少圧縮試験機(島津製作所社製、MCT−W 500型)による粒子の機械的強度の測定(以下の実施例、比較例で同じ)では、(粒子径2〜3μmの粒子の20個平均値)は、55MPaであった。
【0160】
▲4▼また、当該主成分粒子の水スラリー(固形濃度10質量%)のpHは、7.0であった。
【0161】
▲5▼なお、主成分粒子の重要な物性値であるシリカ吸着率の測定値は、28.1%であった。
【0162】
(研磨試験)
研磨試験は、以下の方法・条件で行った。
【0163】
(i)研磨試験機は、スピードファム社製片面ポリシングマシン、32GPAW型を用いた。試験に用いた被研磨ガラス板は、旭硝子社製の無アルカリ硝子 商品名:AN−100(ガラス組成中のSiO2含有量約60質量%、試験板寸法(正方形):100mm/100mm/0.7mm)という小さい寸法のものを用いた。
【0164】
(ii)研磨パッドは、発泡ポリウレタン製を用い、研磨圧力は、150g/cm2で、定盤回転数50rpmで、片面研磨試験を実施した。
【0165】
(iii)研磨材スラリー中の研磨材の濃度は、10質量%とした。研磨機に供給する研磨材スラリーは、循環研磨することにより、研磨液中の溶解ガラスの濃度が増加する。実際の工業的規模の生産プラント(本プラント)においては、研磨材スラリー中のかかるシリカ濃度として1%程度に達し、これは重合が問題となる程度のかなり濃い濃度である。本研磨試験においては、このような実機における研磨条件に対応させ、小さい被研磨ガラスを使用する当該試験装置においても、実際の研磨ラインでの研磨スラリー中のガラス濃度に近い状態に数時間程度で到達するようにするため、試験に使用する全スラリー量(ホールドアップ量)を、200mlという小さい量とした。
【0166】
すなわち、研磨機盤上にスラリー液溜めの囲いを設け、そこに、研磨材スラリーを、スラリー容器から、小型ポンプを用いて、70ml/minで供給し、研磨機盤上のスラリー液溜めからオーバーフローするスラリーは、上記のスラリー容器へと戻し循環研磨に使用した。
【0167】
また、小型ポンプで循環され研磨機に供給される研磨材スラリーの液温度は、約40℃になるように循環液配管を恒温槽に入れて加温・制御して、研磨試験を実施した。
【0168】
(iv)上記の方法で、研磨を行いつつ、1時間後ごとに、研磨されたガラス板の厚み及び研磨スラリー中に蓄積される溶解ガラス濃度を求めた。なお、上記被研磨ガラス板サンプルは、研磨1時間ごとに、新品に交換しながら、研磨試験を実施した。
【0169】
(試験結果)
試験結果を、表1に示した。
【0170】
表中で、研磨されたガラス板の厚み及び研磨スラリー中に蓄積される溶解ガラス濃度は、研磨前後のガラス板の質量差から求めたものである。
【0171】
また、ガラス表面(研磨面)の表面状態は、40万ルクスのハロゲンランプを光源として用い、傷の数を肉眼で数えて評価したが、研磨面には、傷などの欠陥は全く認められなかった。
【0172】
表1の結果を、シリカ吸着率の値が大きい研磨材粒子を使用した後記比較例1(表13に示す)と比較検討すると、研磨回数(時間)の進行に対して、いずれも研磨スラリー中の溶解ガラス濃度は、蓄積して増加していくが、本実施例1においては、比較例1に比較して経時ごとの(研磨回数ごとの)研磨されたガラスの厚みの低下量は小さい。すなわち、研磨速度の低下割合は低く、全研磨時間のあいだに渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0173】
【表1】
【0174】
なお、以下の実施例2〜12及び比較例1において、研磨材主成分粒子に共存副成分粒子を添加する場合の、当該混合装置、研磨材粉末のX線回折分析、粒度分布測定、研磨試験の装置、及び研磨されたガラス面の観察方法等は、実施例1と基本的に同様にして行った。
【0175】
〔実施例2〕(本焼成された主成分粒子単独使用)
(研磨材用の主成分粒子の調製)
【0176】
(1)中国の希土高科社製、炭酸希土〔酸化物換算全希土(TREO)含量41質量%、CeO2/TREO 60質量%〕45kgに水道水30kgを加え、湿式ボールミルで、5時間粉砕し、粒子径を0.2〜8μmに粉砕した。
【0177】
(2)次いで、このスラリーを、撹拌槽に入れて撹拌しながら、55質量%のフッ酸水溶液2275mlを徐々に滴下し、滴下終了後さらに約1時間撹拌して反応させることにより、部分フッ素化されたスラリーとした。
【0178】
(3)当該スラリーはろ過、予備乾燥後、乾式粉砕機でさらに粉砕し、空気雰囲気の電気炉中で、加熱温度500℃以上の昇温速度を、1.5℃/min、保持する高温度としては、920℃であり、上記温度での保持時間は、3.0時間という条件で焼成した。放冷後、粉砕及び分級して、研磨材の主成分粒子13.0kgを得た。
【0179】
(主成分粒子の組成及び諸物性)
(1)この研磨材用の主成分粒子の組成を酸化物換算質量%で示すと、CeO2 61.5質量%、La2 O3 31.5%、Pr6 O11 6.2%、Nd2O3 0.8%、Sm2O3及びGd2O3は、それぞれ0.1%未満であり、また、CaO 0.21%、BaO 0.079%、P2O5 0.015%、及びフッ素分(F)の含有量は、5.7%であった。
【0180】
(2)平均粒子径(d50)は、0.83μmであった(日機装社製、商品名:マイクロトラック、9320−X100型、によりレーザー散乱法で測定)。
【0181】
また、粒子径分布については、累積粒度分布において、小粒子径から10%、90%の粒子径(μm)を、それぞれd10、d90とした場合のd90/d10は、4.2であった。
【0182】
(3)当該主成分粒子の、粉末X線回装置(リガク社製、CuKα線、Rint−2000型)を用いてのX線回折スペクトル分析は、以下のとおりである。
【0183】
2θが28.3deg付近に、立方晶複合酸化希土の最大ピーク(A)が、2θが26.6deg付近に、酸フッ化希土のピーク(B)が現れる。
【0184】
ピーク高さ(A)に対するピーク高さ(B)のピーク高さ比率(B/A)は、0.53であった。なお、X線回折分析測定では、フッ化セリウムの結晶ピークは全く認められなかった。
【0185】
(4)また、当該主成分粒子のその他の物性は以下のとおりであった。
▲1▼結晶子径(Scherrer法)は、250Åであった。
▲2▼また粒子のBET法による比表面積(島津製作所製、装置名Micro Meritics Flow SorbII 2300による測定)は、3.7m2/gであった。
【0186】
▲3▼上記主成分粒子の機械的強度(粒子径2〜3μmの粒子の20個平均値)は、47MPaであった。
▲4▼また、当該主成分粒子の水スラリー(固形濃度10質量%)のpHは、7.3であった。
【0187】
▲5▼なお、主成分粒子の重要な物性値であるシリカ吸着率の測定値は、39.4%であった。
【0188】
(研磨試験)
当該研磨材の研磨試験を、実施例1と同じ方法・条件で行い、同様にして評価した。
試験結果を、表2に示した。
【0189】
研磨された研磨面には、傷などの欠陥は全く認められなかった。また、表から明らかなごとく、全研磨時間に渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0190】
【表2】
【0191】
〔実施例3〕(仮焼・本焼成された主成分粒子+CaSO41%+BaSO4 1%(後添加法))
【0192】
(研磨材粒子の調製)
(1)実施例1で合成したと同じ、シリカ吸着率28.1%の研磨材の主成分粒子の質量1kgに対して、共存する副成分粒子として、硫酸カルシウム二水塩(CaSO4・2H2O、和光純薬社製試薬)12.6g及び硫酸バリウム(BaSO4、堺化学工業社製、品名:BMH−40)10.0gを添加した。
【0193】
これを、撹拌羽根の動作が、自転と公転の両方式の粉体混合機(愛工社製作所製、ACM型)で均一混合して、研磨材粒子とした。この研磨材粒子は、主成分粒子に対して、無水塩換算の共存副成分として、CaSO4を1質量%、及びBaSO4を1質量%含有するものである。
【0194】
(2)この研磨材粒子のシリカ吸着率は、17.3%であり、上記研磨材中の主成分粒子単独のシリカ吸着率(28.1%)より低い数値であった。
【0195】
当該研磨材粒子により、実施例1と同じ方法・条件で研磨試験を行い、同様に評価した。なお、研磨試験は、研磨材スラリー中の硫酸カルシウムを、スラリー中の水に完全に溶解させた後に行なった。
【0196】
(試験結果)
試験結果を、表3に示した。
【0197】
研磨された研磨面には、傷などの欠陥は全く認められなかった。また、表から明らかなごとく、全研磨時間に渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0198】
【表3】
【0199】
〔実施例4〕(仮焼・本焼成された主成分粒子+CaSO40.5%+BaSO41%(後添加法))
【0200】
(研磨材粒子の調製)
(1)実施例1で合成したと同じ、シリカ吸着率28.1%の研磨材の主成分粒子の質量1kgに対して、共存する副成分粒子として、硫酸カルシウム二水塩(CaSO4・2H2O、和光純薬社製試薬)6.3g及び硫酸バリウム(BaSO4、堺化学工業社製、品名:BMH−40)10.0gを添加した。
【0201】
これを、撹拌羽根の動作が、自転と公転の両方式の粉体混合機(愛工社製作所製、ACM型)で均一混合して、研磨材粒子とした。この研磨材粒子は、主成分粒子に対して、無水塩換算の共存副成分として、CaSO4を0.5質量、%及びBaSO4を1質量%含有するものである。
【0202】
(2)この研磨材粒子のシリカ吸着率は、23.0%であり、上記研磨材中の主成分粒子単独のシリカ吸着率(28.1%)より低い数値であった。
【0203】
当該研磨材粒子により、実施例1と同じ方法・条件で研磨試験を行い、同様に評価した。なお、研磨試験は、研磨材スラリー中の硫酸カルシウムを、スラリー中の水に完全に溶解させた後に行なった。
【0204】
(試験結果)
試験結果を、表4に示した。
【0205】
研磨された研磨面には、傷などの欠点は全く認められなかった。また、表から明らかなごとく、全研磨時間に渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0206】
【表4】
【0207】
〔実施例5〕(本焼成された主成分粒子+CaSO41%(後添加法))
(研磨材粒子の調製)
【0208】
(1)実施例2で合成したと同じ、シリカ吸着率39.4%の研磨材の主成分粒子の質量1kgに対して、共存する副成分粒子として、硫酸カルシウム二水塩(CaSO4・2H2O、和光純薬社製試薬)12.6gを添加した。
【0209】
これを、撹拌羽根の動作が、自転と公転の両方式の粉体混合機(愛工社製作所製、ACM型)で均一混合して、研磨材粒子とした。この研磨材粒子は、主成分粒子に対して、無水塩換算の共存副成分として、CaSO4を1質量%含有するものである。
【0210】
(2)この研磨材粒子のシリカ吸着率は、25.2%であり、上記研磨材中の主成分粒子単独のシリカ吸着率(39.41%)より低い数値であった。
【0211】
当該研磨材粒子により、実施例1と同じ方法・条件で研磨試験を行い、同様に評価した。なお、研磨試験は、研磨材スラリー中の硫酸カルシウムを、スラリー中の水に完全に溶解させた後に行なった。
【0212】
(試験結果)
試験結果を、表5に示した。
【0213】
研磨された研磨面には、傷などの欠点は全く認められなかった。また、表から明らかなごとく、全研磨時間に渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0214】
【表5】
【0215】
〔実施例6〕(本焼成された主成分粒子+BaSO41%(後添加法))
(研磨材粒子の調製)
【0216】
(1)実施例2で合成したと同じ、シリカ吸着率39.4%の研磨材の主成分粒子の質量1kgに対して、共存する副成分粒子として、硫酸バリウム(BaSO4、堺化学工業社製、品名:BMH−40)10.0gを添加した。
【0217】
これを、撹拌羽根の動作が、自転と公転の両方式の粉体混合機(愛工社製作所製、ACM型)で均一混合して、研磨材粒子とした。この研磨材粒子は、主成分粒子に対して、無水塩換算の共存副成分として、BaSO41質量%を含有するものである。
【0218】
(2)この研磨材粒子のシリカ吸着率は、36.2%であり、上記研磨材中の主成分粒子単独のシリカ吸着率(39.4%)より低い数値であった。
当該研磨材粒子により、実施例1と同じ方法・条件で研磨試験を行い、同様に評価した。
【0219】
(試験結果)
試験結果を、表6に示した。
【0220】
研磨された研磨面には、傷などの欠点は全く認められなかった。また、表から明らかなごとく、全研磨時間に渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0221】
【表6】
【0222】
〔実施例7〕(本焼成された主成分粒子+CaHPO44.5%(後添加法))
(研磨材粒子の調製)
【0223】
(1)実施例2で得られたと同じ、シリカ吸着率39.4%の研磨材用の主成分粒子に、当該研磨材の主成分粒子の質量1kgに対して、共存する副成分粒子として、第二リン酸カルシウム二水塩(CaHPO4・2H2O、北星産業社製、平均粒子径3.3μm)56.9gを添加した。
【0224】
これを、撹拌羽根の動作が、自転と公転の両方式の粉体混合機(愛工社製作所製、ACM型)で均一混合して、研磨材粒子とした。この研磨材粒子は、主成分粒子の質量に対して、共存する副成分として、無水塩換算のCaHPO4を4.5質量%含有するものである。
【0225】
(2)この研磨材粒子のシリカ吸着率は、30.1%であり、上記研磨材中の主成分粒子単独の値(39.4%)より低い数値であった。
【0226】
当該研磨材粒子により、実施例1と同じ方法・条件で研磨試験を行い、同様に評価した。
【0227】
(試験結果)
試験結果を、表7に示した。
【0228】
研磨された研磨面には、傷などの欠点は全く認められなかった。また、表から明らかなごとく、全研磨時間に渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0229】
【表7】
【0230】
〔実施例8〕(本焼成された主成分粒子+CaSO41.5%+BaSO41%(後添加法))
【0231】
(研磨材粒子の調製)
(1)実施例2で合成したと同じ、シリカ吸着率39.4%の研磨材の主成分粒子の質量1kgに対して、共存する副成分粒子として、硫酸カルシウム二水塩(CaSO4・2H2O、和光純薬社製試薬)18.9g及び硫酸バリウム(BaSO4、堺化学工業社製、品名:BMH−40)10.0gを添加した。
【0232】
これを、撹拌羽根の動作が、自転と公転の両方式の粉体混合機(愛工社製作所製、ACM型)で均一混合して、研磨材粒子とした。この研磨材粒子は、主成分粒子に対して、無水塩換算の共存副成分として、CaSO4を1.5質量%、及びBaSO4を1質量%含有するものである。
【0233】
(2)この研磨材粒子のシリカ吸着率は、27.1%であり、上記研磨材中の主成分粒子単独のシリカ吸着率(28.1%)より低い数値であった。
【0234】
当該研磨材粒子により、実施例1と同じ方法・条件で研磨試験を行い、同様に評価した。なお、研磨試験は、研磨材スラリー中の硫酸カルシウムを、スラリー中の水に完全に溶解させた後に行なった。
【0235】
(試験結果)
試験結果を、表8に示した。
【0236】
研磨された研磨面には、傷などの欠点は全く認められなかった。また、表から明らかなごとく、全研磨時間に渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0237】
【表8】
【0238】
〔実施例9〕(仮焼・本焼された主成分粒子+CaSO40.5%(前添加法))
(研磨材粒子の調製)
【0239】
(1)中国の希土高科社製、炭酸希土〔酸化物換算全希土(TREO)42質量%、CeO2/TREO 60質量%〕45kgを、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、加熱温度750℃、2時間焼成(仮焼)し、酸化物換算全希土(TREO)90.5質量%、強熱減量(1000℃、2時間)8.05質量%の酸化希土焼成品を得た。
【0240】
(2)次いで、上記仮焼品16kgと中国の甘粛希土公司社製フッ化希土〔酸化物換算全希土(TREO)83質量%、CeO2/TREO 61質量%、(F)含有量 25質量%、平均粒子径10μm〕、5.0kg、及び硫酸カルシウム2水塩(CaSO4・2H2O、和光純薬社製試薬)125gを秤り取り、これら粉体を、水27.2kgを入れた撹拌槽に投入し、撹拌してスラリーとした。次に、当該スラリーを、粉砕媒体ボールを用いた湿式粉砕機に循環供給して、約5時間湿式粉砕し、粒子径を0.2〜6μmに粉砕した。
【0241】
(3)湿式粉砕後のスラリーを、バットに入れ、箱型乾燥機で、120℃で、20時間乾燥した。乾燥後の粉体は、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、焼成を行った。すなわち、加熱温度500℃以上の昇温速度を、2.3℃/min、保持する高温度としては、950℃で、上記温度での保持時間は、3.0時間という条件で焼成した。焼成後の粉体は、解砕機で解砕した後、風力分級機を用いて分級し、研磨材用の主成分粒子14.0kgを得た。
【0242】
(主成分粒子の組成及び諸物性値)
(1)この研磨材用の主成分粒子の組成を酸化物換算質量%で示すと、CeO2 61.9%、La2 O3 31.5%、Pr6 O11 5.3%、Nd2 O30.9%、Sm2O3及びGd2O3は、それぞれ0.1%未満であり、また、CaO 0.20%、BaO 0.075%、P2O5 0.015%、及びフッ素分(F)の含有量は、6.1%であった。
【0243】
(2)平均粒子径(d50)は、0.98μmであった(日機装社製、商品名:マイクロトラック、9320−X100型により、レーザー散乱法で測定。)。
【0244】
また、粒子径分布については、累積粒度分布において、小粒子径から10%、90%の粒子径(μm)を、それぞれd10、d90とした場合のd90/d10は、3.4であった。
【0245】
(3)当該研磨材用の主成分粒子を、粉末X線回装置(リガク社製、CuKα線、Rint−2000型)を用いてのX線回折スペクトル分析結果は、以下のとおりである。
【0246】
2θが28.3deg付近に、立方晶複合酸化希土の最大ピーク(A)が、2θが26.6deg付近に、酸フッ化希土のピーク(B)が現れる。
【0247】
ピーク高さ(A)に対するピーク高さ(B)のピーク高さ比率(B/A)は、0.49であった。なお、X線回折分析測定では、フッ化セリウムの結晶ピークは全く認められなかった。
【0248】
(4)また、当該主成分粒子のその他の物性は以下のとおりであった。
▲1▼結晶子径(Scherrer法)は、215Åであった。
▲2▼また粒子のBET法による比表面積(島津製作所製、装置名Micro Meritics Flow SorbII 2300による測定)は、2.6m2/gであった。
【0249】
▲3▼上記主成分粒子の機械的強度(粒子径2〜3μmの粒子の20個平均値)は、101MPaであった。
▲4▼また、当該主成分粒子の水スラリー(固形濃度10質量%)のpHは、7.2であった。
【0250】
▲5▼なお、主成分粒子の重要な物性値であるシリカ吸着率の測定値は、25.2%であった。
【0251】
(試験結果)
当該研磨材の研磨試験を、実施例1と同じ方法・条件で行い、同様にして評価した。なお、研磨試験は、研磨材スラリー中の硫酸カルシウムを、スラリー中の水に完全に溶解させた後に行なった。
【0252】
試験結果を、表9に示した。
研磨された研磨面には、傷などの欠陥は認められなかった。また、高い研磨性能が持続出来ていることが判明した。
【0253】
この実施例9は、副成分粒子を「前添加法」で配合したものであって、炭酸希土の仮焼品にフッ化希土と副成分粒子である硫酸カルシウムを添加し、水スラリー状でよく混合・湿式粉砕し、乾燥後、本焼成して、副成分粒子を含有する主成分粒子としたものである。(これに対し、実施例3や4等においては、配合は「後添加法」により行われており、まず、炭酸希土等を仮焼・本焼成することにより、研磨材の主成分粒子を得、これに副成分粒子を添加して粉体混合(スラリー混合)するものである。)
【0254】
すでに述べたとおり、この「前添加法」によれば、最終研磨材製品(主成分粒子+副成分粒子)の機械的強度を、「後添加法」のものより、大幅に向上させることができた。また、研磨材粒子を湿式粉砕する場合に、発泡現象は完全に抑制されることが確認され、実際の操業において、ハンドリングが格段に向上する利点があることが推認された。
【0255】
【表9】
【0256】
〔実施例10〕(仮焼・本焼された主成分粒子+CaSO40.5%(前添加法))
【0257】
(研磨材粒子の調製)
(1)中国の希土高科技社製、炭酸希土〔実施例9で使用したものとは異なる製造ロット品であり、酸化物換算全希土(TREO)44質量%、CeO2/TREO 62.5質量%のもの。〕45Kgを、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、加熱温度780℃において、2時間焼成(仮焼)し、酸化物換算全希土(TREO)93.3質量%、強熱減量(1000℃、2時間)5.55質量%の酸化希土焼成品を得た。
【0258】
(2)次いで、上記仮焼品15.5kgと、中国の甘粛希土公司社製フッ化希土〔酸化物換算全希土(TREO)83質量%、CeO2/TREO 61質量%、(F)含有量 25質量%、平均粒子径10μm〕5.0kg、及び硫酸カルシウム2水塩(CaSO4・2H2O、和光純薬社製試薬)125gを秤り取り、これら粉体を、水27.2kgを入れた撹拌槽に投入し、撹拌してスラリーとした。次に、当該スラリーを、粉砕媒体ボールを用いた湿式粉砕機に循環供給して、約5時間湿式粉砕し、粒子径を0.2〜6μmに粉砕した。
【0259】
(3)湿式粉砕後のスラリーを、バットに入れ、箱型乾燥機で、120℃において、20時間乾燥した。乾燥後の粉体は、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、焼成を行った。すなわち、加熱温度500℃以上の昇温速度を、2.0℃/min、保持する高温度としては、950℃で、上記温度での保持時間は、3.0時間という条件で焼成した。焼成後の粉体は、解砕機で解砕した後、風力分級機を用いて分級し、研磨材用の主成分粒子12.8kgを得た。
【0260】
(主成分粒子の組成及び諸物性値)
(1)この研磨材用の主成分粒子の組成を酸化物換算質量%で示すと、CeO2 62.5%、La2 O3 29.8%、Pr6 O11 6.0%、Nd2 O30.2%、Sm2O3及びGd2O3は、それぞれ0.1%未満であり、また、CaO 0.10%、BaO 0.03%、P2O5 0.01%、及びフッ素分(F)の含有量は、6.0%であった。
【0261】
(2)平均粒子径(d50)は、0.95μmであった(日機装社製、商品名:マイクロトラック、9320−X100型により、レーザー散乱法で測定。)。
【0262】
また、粒子径分布については、累積粒度分布において、小粒子径から10%、90%の粒子径(μm)を、それぞれd10、d90とした場合のd90/d10は、4.4であった。
【0263】
(3)当該研磨材用の主成分粒子を、粉末X線回装置(リガク社製、CuKα線、Rint−2000型)を用いてのX線回折スペクトル分析結果は、以下のとおりである。
【0264】
2θが28.3deg付近に、立方晶複合酸化希土の最大ピーク(A)が、また、2θが26.6deg付近に、酸フッ化希土のピーク(B)が現れる。
【0265】
ピーク高さ(A)に対するピーク高さ(B)のピーク高さ比率(B/A)は、0.48であった。なお、X線回折分析測定では、フッ化セリウムの結晶ピークは全く認められなかった。
【0266】
(4)当該主成分粒子のその他の物性は以下のとおりであった。
▲1▼結晶子径(Scherrer法)は、205Åであった。
▲2▼また、粒子のBET法による比表面積(島津製作所製、装置名Micro Meritics Flow SorbII 2300による測定)は、2.9m2/gであった。
【0267】
▲3▼上記主成分粒子の機械的強度(粒子径2〜3μmの粒子の20個平均値)は、148MPaであった。
▲4▼また、当該主成分粒子の水スラリー(固形濃度10質量%)のpHは、7.4であった。
【0268】
▲5▼なお、主成分粒子の重要な物性値であるシリカ吸着率の測定値は、40.2%であった。
【0269】
(試験結果)
当該研磨材の研磨試験を、実施例1と同じ方法・条件で行い、同様にして評価した。なお、研磨試験は、研磨材スラリー中の硫酸カルシウムを、スラリー中の水に完全に溶解させた後に行なった。
【0270】
試験結果を、表10に示した。
研磨された研磨面には、傷などの欠陥は認められなかった。また、高い研磨性能が、持続出来ていることが判明した。
【0271】
この実施例10は、副成分粒子を実施例9と同様、「前添加法」で配合したものであり、炭酸希土の仮焼品にフッ化希土と副成分粒子である硫酸カルシウムを添加し、水スラリー状でよく混合・湿式粉砕し、乾燥後、本焼成して、副成分粒子を含有する主成分粒子としたものである。
【0272】
すでに述べたとおり、この「前添加法」によれば、最終研磨材製品(主成分粒子+副成分粒子)の機械的強度を、「後添加法」のものより、大幅に向上させることができ、また、研磨材粒子を湿式粉砕する場合に発泡現象は完全に抑制されることが確認された。
【0273】
【表10】
【0274】
〔実施例11〕(仮焼・本焼された主成分粒子+CaSO40.5%(前添加法))
(研磨材粒子の調製)
【0275】
(1)中国の希土高科技社製、炭酸希土〔実施例9、10とは異なる製造ロット品であり、酸化物換算全希土(TREO)45質量%、CeO2/TREO 61.0質量%のもの。〕45Kgを、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、加熱温度800℃、2時間焼成(仮焼)し、酸化物換算全希土(TREO)94.4質量%、強熱減量(1000℃、2時間)4.53質量%の酸化希土焼成品を得た。
【0276】
(2)次いで、上記仮焼品15.3kgと、中国の甘粛希土公司社製フッ化希土〔酸化物換算全希土(TREO)83質量%、CeO2/TREO 61質量%、(F)含有量 25質量%、平均粒子径10μm〕5.0kg、及び硫酸カルシウム2水塩(CaSO4・2H2O、和光純薬社製試薬)125gを秤り取り、これら粉体を、水27.2kgを入れた撹拌槽に投入し、撹拌してスラリーとした。次に、当該スラリーを、粉砕媒体ボールを用いた湿式粉砕機に循環供給して、約5時間湿式粉砕し、粒子径を0.2〜6μmに粉砕した。
【0277】
(3)湿式粉砕後のスラリーを、バットに入れ、箱型乾燥機で、120℃において、20時間乾燥した。乾燥後の粉体は、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、焼成を行った。すなわち、加熱温度500℃以上の昇温速度を、1.7℃/min、保持する高温度は、950℃とし、当該温度での保持時間は、3.0時間という条件で焼成した。焼成後の粉体は、解砕機で解砕した後、風力分級機を用いて分級し、研磨材用の主成分粒子12.5kgを得た。
【0278】
(主成分粒子の組成及び諸物性値)(1)この研磨材用の主成分粒子の組成を酸化物換算質量%で示すと、CeO2 61.0%、La2 O3 31.4%、Pr6 O11 6.1%、Nd2 O30.2%、Sm2O3及びGd2O3は、それぞれ0.1%未満であり、また、CaO 0.10%、BaO 0.03%、P2O5 0.01%、及びフッ素分(F)の含有量は、6.1%であった。
【0279】
(2)平均粒子径(d50)は、0.97μmであった(日機装社製、商品名:マイクロトラック、9320−X100型により、レーザー散乱法で測定。)。
【0280】
また、粒子径分布については、累積粒度分布において、小粒子径から10%、90%の粒子径(μm)を、それぞれd10、d90とした場合のd90/d10は、4.3であった。
【0281】
(3)当該研磨材用の主成分粒子を、粉末X線回装置(リガク社製、CuKα線、Rint−2000型)を用いてのX線回折スペクトル分析結果は、以下のとおりである。
【0282】
2θが28.3deg付近に、立方晶複合酸化希土の最大ピーク(A)が、2θが26.6deg付近に、酸フッ化希土のピーク(B)が現れる。
【0283】
ピーク高さ(A)に対するピーク高さ(B)のピーク高さ比率(B/A)は、0.51であった。なお、X線回折分析測定では、フッ化セリウムの結晶ピークは全く認められなかった。
【0284】
(4)当該主成分粒子のその他の物性は以下のとおりであった。
▲1▼結晶子径(Scherrer法)は、203Åであった。
▲2▼また粒子のBET法による比表面積(島津製作所製、装置名Micro Meritics Flow SorbII 2300による測定)は、2.8m2/gであった。
【0285】
▲3▼上記主成分粒子の機械的強度(粒子径2〜3μmの粒子の20個平均値)は、177MPaであった。
▲4▼また、当該主成分粒子の水スラリー(固形濃度10質量%)のpHは、7.5であった。
【0286】
▲5▼なお、主成分粒子の重要な物性値であるシリカ吸着率の測定値は、49.8%であった。
【0287】
(試験結果)
当該研磨材の研磨試験を、実施例1と同じ方法・条件で行い、同様にして評価した。なお、研磨試験は、研磨材スラリー中の硫酸カルシウムを、スラリー中の水に完全に溶解させた後に行なった。
【0288】
試験結果を、表11に示した。
研磨された研磨面には、傷などの欠陥は認められなかった。また、高い研磨性能が、持続出来ていることが判明した。
【0289】
この実施例11は、副成分粒子を実施例9と同様に「前添加法」で配合したものであり、炭酸希土の仮焼品にフッ化希土と副成分粒子である硫酸カルシウムを添加し、水スラリー状でよく混合・湿式粉砕、乾燥後、本焼成して、副成分粒子を含有する主成分粒子としたものである。
【0290】
すでに述べたとおり、この「前添加法」によれば、最終研磨材製品の機械的強度が、「後添加法」のものより、大幅に向上する。また、研磨材粒子を湿式粉砕する場合に発泡現象が完全に抑制されることを確認した。
【0291】
【表11】
【0292】
〔実施例12〕(仮焼・本焼成された主成分粒子+CaSO40.5%+BaSO41%(後添加法))
【0293】
(研磨材粒子の調製)
実施例4と同じ研磨材粒子を使用し、研磨試験条件を変えて、別の研磨評価法を実施した。すなわち、研磨材の主成分粒子の質量に対して、無水塩換算の共存副成分として、CaSO4を、0.5質量%及びBaSO41質量%を含有させたシリカ吸着率23.0%の研磨材を用いた。
【0294】
(研磨試験)
研磨試験の条件を実施例1とは異なる以下の条件で試験した。
【0295】
(i)研磨試験機は、実施例1と同じスピードファム社製片面ポリシングマシン、32GPAW型を用いた。試験に用いた被研磨ガラス板は、実施例1と同じ旭硝子社製の無アルカリガラス(商品名:AN−100(試験板寸法(正方形):100mm/100mm/0.7mm)という小さい寸法のものを用いた。
【0296】
(ii)研磨パッドは、実施例1と同じ発泡ポリウレタン製を用い、研磨圧力は、150g/cm2で、定盤回転数50rpmで、片面研磨試験を実施した。
【0297】
(iii)研磨材スラリー中の研磨材の濃度は、25質量%とした。すなわち、研磨機に供する研磨材スラリーは、研磨することにより、増加する研磨液中の溶解ガラスの濃度を、短時間のうちに実機並に大きくするため、試験に使用する全スラリー量を、実施例1と同様にして、200mlという小さい量とした。
【0298】
実際の操作としては、研磨機盤上にスラリー液溜めの囲いを設け、そこに、研磨スラリーを、スラリー容器から、小型ポンプを用いて、70ml/minで供給し、研磨機盤上のスラリー液溜めからオーバーフローするスラリーは、上記のスラリー容器へと戻し、循環研磨に使用した。
【0299】
また、小型ポンプで循環され研磨機に供給される研磨材スラリーの液温度は、約40℃になるように循環液配管を恒温槽に入れて加温・制御して、研磨試験を実施した。
【0300】
(iv)上記の方法で、研磨を行いつつ、2時間後ごとに、研磨されたガラス板の厚み及び研磨スラリー中に蓄積される溶解ガラス濃度を求めた。なお、上記被研磨ガラス板サンプルは、研磨1時間ごとに、新品に交換しながら、研磨試験を実施した。
【0301】
(試験結果)
試験結果を、表12に示した。
【0302】
研磨された研磨面には、傷などの欠点は全く認められなかった。また、表から明らかなごとく、全研磨時間に渡って、高い研磨性能が、維持されていることが判明した。
【0303】
【表12】
【0304】
〔比較例1〕
(研磨材用の主成分粒子の調製)
(1)中国の希土高科社製、炭酸希土、(酸化物換算全希土(TREO)41質量%、CeO2/TREO 60質量%)45kg及び中国の甘粛希土公司社製フッ化希土(酸化物換算全希土(TREO)83質量%、CeO2換算/TREO 61質量%、F含有量25質量%、平均粒子径10μm)5.8kgを秤り取り、撹拌羽根の動作が、自転と公転の両方式の粉体混合機(愛工社製作所製、ACM型)で混合した後、混合後の粉体と水50.8kgを撹拌槽に入れ撹拌してスラリーとした。
【0305】
(2)次に、スラリーを粉砕媒体ボールを用いた湿式粉砕機に循環供給して、約5時間湿式粉砕し、粒子径を0.2〜6μmに粉砕した。
【0306】
(3)湿式粉砕後のスラリーは、バットに入れ、箱型乾燥機で、120℃で、20時間乾燥した。乾燥後の粉体は、サヤ容器(ムライト製)に入れ、空気雰囲気下で、焼成した。すなわち、加熱温度500℃以上の昇温速度を、1.0℃/min、保持する高温度としては、900℃で、上記温度での保持時間は、3.0時間という条件で焼成した。焼成後の粉体は、解砕機で解砕した後、風力分級機を用いて分級し、研磨材用の主成分粒子15.6kgを得た。
【0307】
(主成分粒子の組成及び諸物性)
(1)この研磨材用の主成分粒子の組成を酸化物換算質量%で示すと、CeO2 62.0%、La2 O3 31.6%、Pr6 O11 5.5%、Nd2 O30.9%、Sm2O3及びGd2O3は、それぞれ0.1%未満であり、また、CaO 0.22%、BaO 0.077%、P2O5 0.016%、及びフッ素分(F)の含有量は、4.6%であった。
【0308】
(2)平均粒子径(d50)は、0.86μmであった(日機装社製、商品名:マイクロトラック、9320−X100型により、レーザー散乱法にて測定。)。
【0309】
また、粒子径分布については、累積粒度分布において、小粒子径から10%、90%の粒子径(μm)を、それぞれd10、d90とした場合のd90/d10は、5.3であった。
【0310】
(3)当該主成分粒子の、粉末X線回装置(リガク社製、CuKα線、Rint−2000型)を用いてX線回折スペクトル分析結果は以下のとおりである。
【0311】
2θが28.3deg付近に、立方晶複合酸化希土の最大ピーク(A)が、2θが26.6deg付近に、酸フッ化希土のピーク(B)が現れる
【0312】
ピーク高さ(A)に対するピーク高さ(B)のピーク高さ比率(B/A)は、0.33であった。なお、X線回折分析測定では、フッ化セリウムの結晶ピークは全く認められなかった。
【0313】
(4)当該主成分粒子のその他の物性は以下のとおりである。
▲1▼結晶子径(Scherrer法)は、170Åであった。
▲2▼また粒子のBET法による比表面積(島津製作所製、装置名Micro Meritics Flow SorbII 2300による測定)は、4.0m2/gであった。
【0314】
▲3▼上記主成分粒子の機械的強度(粒子径2〜3μmの粒子の20個平均値)は、38MPaであった。
▲4▼また、当該主成分粒子の水スラリー(固形濃度10質量%)のpHは、7.5であった。
【0315】
▲5▼なお、主成分粒子の重要な物性値であるシリカ吸着率の測定値は、58.3%という大きな値であった。
【0316】
(研磨試験)
研磨試験は、実施例1と同じ方法・条件で行った。
【0317】
(試験結果)
試験結果を、表13に示した。
【0318】
研磨面には、傷などの欠点は認められなかったが、研磨速度の持続・耐久性は、実施例1に比較して、大幅に低い結果となった。
【0319】
【表13】
【0320】
【発明の効果】
本発明に従えば、上記実施例、比較例にも示されているように、酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材において、溶解シリカの重合による研磨速度の低下を抑制し、高い研磨速度を、維持・継続しつつ、しかも、研磨品質に優れた粒子の機械的強度の高いガラス研磨用研磨材を提供することができる。
【0321】
また、本発明に従えば、このような高品質のガラス研磨用研磨材の研磨能の評価・選択・判別をするために好適に使用される、ガラス研磨用研磨材の研磨品質の新規な評価方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるガラス研磨用研磨材粒子の吸着シリカ分析による、研磨品質評価方法を示す流れ図である。
Claims (6)
- ガラス研磨用研磨材粒子の品質評価方法であって、
(1)シリカを溶解した水性媒体をシリカ溶解試験液として調整し、これに、
(2)被測定対象の当該研磨材粒子を添加し、
(3)当該シリカが当該水性媒体中で実質的に重合しない条件下に当該シリカを当該研磨材粒子に吸着せしめ、
(4)シリカの吸着された当該研磨材粒子を固液分離し、
(5)母液中に残存するシリカ濃度を測定することにより、シリカの当該研磨材粒子への吸着率(η)を測定し、
(6)当該シリカ吸着率(η)により当該研磨剤粒子の品質を評価することを特徴とするガラス研磨用研磨材粒子の品質評価方法。 - 研磨材粒子によるガラスの研磨方法であって
(1)シリカを溶解した水性媒体をシリカ溶解試験液として調整し、これに、
(2)被測定対象の当該研磨材粒子を添加し、
(3)当該シリカが当該水性媒体中で実質的に重合しない条件下に当該シリカを当該研磨材粒子に吸着せしめ、
(4)シリカの吸着された当該研磨材粒子を固液分離し、
(5)母液中に残存するシリカ濃度を測定することにより、シリカの当該研磨材粒子への吸着率(η)を測定し、
(6)当該測定したシリカ吸着率(η)が50%以下の研磨材粒子を選択又は判別してガラスの研磨に使用することを特徴とするガラスの研磨方法。 - 酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材において、ガラスの研磨に適したガラス研磨用研磨材を選択又は判別する方法であって、
(1)シリカを溶解した水性媒体をシリカ溶解試験液として調整し、これに、
(2)対象研磨剤の研磨材粒子を添加し、
(3)当該シリカが当該水性媒体中で実質的に重合しない条件下に当該シリカを当該研磨材粒子に吸着せしめ、
(4)シリカの吸着された当該研磨材粒子を固液分離し、
(5)母液中に残存するシリカ濃度を測定することにより、シリカの当該研磨材粒子への吸着率(η)を測定し、
(6)当該測定したシリカ吸着率(η)が50%以下である研磨材粒子を選択又は判別することを特徴とするガラス研磨に適したガラス研磨用研磨材の選択又は判別方法。 - 前記酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材がさらにフッ素化合物を含有する請求項3に記載のガラス研磨用研磨材の選択又は判別方法。
- 前記酸化セリウムを含む希土類酸化物を主成分とする研磨材がさらにアルカリ土類金属の硫酸化合物及び/又はアルカリ土類金属のリン酸化合物を含有する請求項3又は4に記載のガラス研磨用研磨材の選択又は判別方法。
- 前記アルカリ土類金属がカルシウム、バリウム、マグネシウム及びストロンチウムからなる群から選ばれる1種以上である請求項5に記載のガラス研磨用研磨材の選択又は判別方法。
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