JP4246958B2 - 発光触媒活性を有する触媒抗体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学発光分析および生物発光分析に関する技術分野に属する。詳しくは、発光基質への酸素付加反応を触媒して、発光を生じさせる発光触媒活性を有する触媒抗体およびその製造法に関する。本発明によれば、天然または非天然を含めた発光基質の酸素付加反応を触媒し、発光を生じさせる抗体を容易に製造することができるので、化学発光分析および生物発光分析における新たな分析技術の開発に貢献することができる。
【0002】
【従来の技術】
化学発光反応およびルシフェラーゼを用いた生物発光反応は、検出感度が高く、且つ非放射性であること等から安全性が高いために、例えば免疫検定法における有用な分析手段の一つとして知られている。特に、ホタルルシフェリン−ルシフェラーゼ反応等の生物発光、ルミノール等の化学発光を利用する発光分析法は近年、微量物質の分析が要求される生物学および医学を含む分野での基礎研究目的であるいは日常検査法として利用されている。一方、イミダゾピラジノン系ルシフェリンとしては、セレンテラジン、ウミホタルルシフェリン等が知られており、これらはルシフェリン、酸素およびルシフェラーゼのみの単純な反応系で発光を示す特徴を有している。
【0003】
ここで、ルシフェラーゼとは発光を触媒する酵素であり、酸素添加酵素に分類され、例えば空気(酸素)の存在下でルシフェリンを酸化し、オキシルシフェリンと二酸化炭素とを生じる反応を触媒して発光を生じさせる酵素である。発光は、発光反応過程で生じる酸素添加化合物のヒドロペルオキシドまたはジオキセタノンの遷移状態の分解過程で放出されると考えられる。
【0004】
一方、触媒抗体は酵素様抗体とも呼ばれ、抗体に触媒活性を与える目的で作製されるものであり、結合した基質に化学変化を誘導する抗体のことである。このものは、目的の化学反応の遷移状態化合物に対する立体的・電子的類似化合物、いわゆるアナログをハプテンとすれば、該ハプテンに特異的なモノクローン抗体は目的の化学反応の遷移状態を認識して安定化し、反応の触媒として作用するであろうとの考えに基づく。これまでに、例えばエステル誘導体の加水分解反応を触媒する触媒抗体が知られている(例えば、Lener, R. A.によるScience, 252, 659 (1991))を参照)。しかし、酸素添加反応による発光反応を直接に触媒する触媒抗体については報告されておらず、未解決な領域である。
【0005】
さらに、該触媒抗体技術を利用して種々の発光基質における発光遷移状態化合物のアナログをハプテンとして用いることによって発光触媒活性を有する触媒抗体を製造し得ると期待されるが、発光遷移状態については未解明な点も多く、遷移状態の構造も特定されていない。一方、遷移状態化合物に対して立体的・電子的に類似するハプテンの設計が重要であることが示唆されているにも関わらず、一般的なハプテンに関するアイデアも提案されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これまでに知られているホタル、ウミホタル、レニラ、細菌、ラチア、ディプロカーディア(ミミズ)、渦べん毛藻由来のルシフェラーゼは、その基質特異性が高いために特定のルシフェリンを基質として用いなければならなかった。更にこれらルシフェリンはその構造が複雑であることから合成が非常に困難であって、且つ経済的な費用もかかる。また現在、ルシフェラーゼは遺伝子組み換え法によって製造されているが、その精製法は煩雑であるという難点を有するために、より簡便な製造法が望まれている。すなわち、天然のルシフェラーゼに代わる、任意の発光基質について発光反応を触媒する機能を持つ新規タンパク質の創出法が望まれている。
【0007】
また、現在汎用されているホタルまたは細菌由来のルシフェリン−ルシフェラーゼの発光システムは、ルシフェリンおよび酸素以外に例えば、補酵素(例えば、ATPやFMNH)および金属イオン(例えば、マグネシウムイオン)等の他の構成要素を必要とする複雑な系である。
【0008】
更に、ルシフェラーゼをイムノアッセイ法やハイスループットアッセイ法に適用する場合には、ルシフェラーゼの修飾が必要となるが、その化学修飾において個々のルシフェラーゼについて詳細な修飾条件等を検討する必要もある。
【0009】
ここで、イムノアッセイ法とは、抗原−抗体反応を利用して、タンパク質をその特異的な抗体によって検定する方法である。イムノアッセイ法としては、非標識イムノアッセイ法および標識物質を含む標識イムノアッセイ法を含む。該標識イムノアッセイ法としては、例えば放射性同位体を含むラジオイムノアッセイ法、酵素を含むエンザイムイムノアッセイ法、蛍光物質を含む蛍光イムノアッセイ法および発光物質を含む発光イムノアッセイ法等を含む。
【0010】
また、ハイスループットアッセイ法とは、ロボットを用いたアッセイシステムの自動化により、大量のサンプルを効率的にスクリーニングする方法である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは触媒抗体技術を使って天然または非天然を含めた発光基質の酸素付加反応を触媒して発光を生じさせる触媒抗体の製造を企図した。
【0012】
本発明における発光反応は、分子状酸素が発光基質に付加する反応である。本発明者らは、分子状酸素が発光基質に付加した発光遷移状態の立体的・電子的類似化合物であるアナログをハプテンとして設計し、合成した。次いで、該ハプテンと担体タンパク質とを結合させた縮合体を調製して、得られた縮合体を抗原として哺乳動物に免疫させて特異抗体を産生した。上記方法により、該ハプテン部を抗原決定基として認識する、新規な発光触媒活性を有する触媒抗体を製造することに成功した。
【0013】
すなわち、本発明は発光基質の酸素付加反応を触媒し、発光を生じさせる、発光触媒活性を有する触媒抗体に関する。
本発明は、発光基質、酸素および触媒抗体のみで発光する発光触媒抗体システムにも関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に記載する。
本明細書で使用する用語「発光触媒活性」とは、発光基質の酸素付加による酸化反応を触媒して発光を生じさせる、本発明の触媒抗体が有する活性を意味する。
発光基質とは、化学発光または生物発光に関与する被酸化物質の総称である。特に、生物発光においてルシフェラーゼ反応に使用される「発光基質」を「ルシフェリン」と呼ぶ。ルシフェリンとしては、ホタルルシフェリン、イミダゾピラジノン系ルシフェリン(例えば、セレンテラジン、オプロフォーラスルシフェリン、ホタルイカルシフェリン、ウミホタルルシフェリン等)、発光バクテリアルシフェリン、ラチアルシフェリン、ディプロカーディアルシフェリン(ミミズルシフェリン)、渦べん毛藻ルシフェリンなどが知られている。本明細書で使用する用語「発光基質」にはこれらルシフェリンを含む。
【0015】
発光基質の典型的な例は式III:
【化9】
Figure 0004246958
[式中、
、R、RおよびRの少なくとも1つが非環式炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基であって、残余が水素原子、特性原子団、非環式炭化水素基、環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ環式基であるか、または
およびRの少なくとも1つが非環式炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基であって、残余が水素原子、特性原子団、非環式炭化水素基、環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくはヘテロ環式基であり、RおよびRが一緒になって基:
【化10】
Figure 0004246958
(式中、
環Aはイミダゾピラジノン環と縮合した環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくはヘテロ環式基であり、環Aは更に場合により、環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくはヘテロ環式基である環Bと縮合し得る)
を形成する]
で示されるイミダゾピラジノン骨格を有する化合物である。
【0016】
ここで、「特性原子団」とは、通常有機化学の分野で使用される、炭素−炭素以外の結合で直結している原子または原子団を意味する。具体的には、該特性原子団とは、例えばハロゲン(すなわち、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、オキソ、ホルミル、ヒドロペルオキシ、ジアゾ、アジド、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、スルファニル、アミノ、イミノ、ニトリル、並びにカルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、チオカルボン酸、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物)を含む。
【0017】
ここで、「非環式炭化水素基」とは、炭素数が1〜10個の飽和または不飽和の炭化水素基を意味する。該非環式炭化水素基は場合により、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素―炭素三重結合を含み得る。該非環式炭化水素基は直鎖または分枝であり得て、そしてそれら全ては場合により置換され得る。該置換基は上記の特性原子団から選ばれ、具体的には、例えばハロゲン、オキソ、ホルミル、ヒドロペルオキシ、ジアゾ、アジド、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、スルファニル、アミノ、イミノ、ニトリル、並びにカルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、チオカルボン酸、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物)を含む。具体的には、該非環式炭化水素基は例えば、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、neo−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、エテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、エチニル、2−プロピニル、2−ヒドロキシエチル、2−メチルー1−プロペニル、3−ヒドロキシプロパン−1−イルおよび3−グアジニノプロピルが好ましい。
【0018】
また、「環式炭化水素基」とは、炭素数が3〜7員の単環またはその環からなる多環で飽和または不飽和の非芳香族性の炭化水素基を意味する。該環式炭化水素基は、場合により該環内に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し得る。該環式炭化水素基はまた、非環式炭化水素基と環式炭化水素基との組み合わせ(例えば、シクロペンチルメチル)を含む。また、それら全ては場合により置換され得る。該置換基は上記の特性原子団または非環式炭化水素基から選ばれ、具体的には、例えばハロゲン、オキソ、ホルミル、ヒドロペルオキシ、ジアゾ、アジド、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、スルファニル、アミノ、イミノ、ニトリル、アルキル(例えば、メチル)、並びにカルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、チオカルボン酸、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物)を含む。具体的には、該環式炭化水素基は例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、シクロヘキセン−2−イル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチルおよびアダマンチルメチルが好ましい。
【0019】
また、「芳香族炭化水素基」とは、少なくとも1つの環が共役パイ電子系を有する芳香族環基を意味する。該芳香族炭化水素基は、単環、多環(縮合環を含む)の芳香族環基、非環式炭化水素基と芳香族炭化水素基との組み合わせ(例えば、ベンジルなどのアラルキル)および環式炭化水素基と芳香族炭化水素基との組み合わせ(例えば、インデニル)を含む。また、それら全ては場合により、置換され得る。該置換基は上記の特性原子団、非環式炭化水素基または環式炭化水素基から選ばれ、具体的には、例えばハロゲン、オキソ、ホルミル、ヒドロペルオキシ、ジアゾ、アジド、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、スルファニル、アミノ、イミノ、ニトリル、アルキル(例えば、メチル)、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、並びにカルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、チオカルボン酸、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物)を含む。具体的には、該芳香族炭化水素基は例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、インデニル、フルオレニル、ビフェニル、4−アミノフェニル、4−ニトロフェニル、(2−、3−または4−)ヒドロキシフェニルおよびスルフェート(スルフェート金属塩(例えば、ナトリウムスルフェートなどのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩)を含む)、4−メトキシフェニル、4−フルオロフェニル、3,3−ジフルオロフェニル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、ベンジル、2−ナフチルメチル、フェネチル、4−ヒドロキシベンジルおよびスルフェート(スルフェート金属塩(例えば、ナトリウムスルフェートなどのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩)を含む)、4−トリフルオロメトキシベンジル、4−トリフルオロメチルベンジル、4−ニトロベンジル、4−クロロベンジル、4−ブロモベンジル、4−ヨウ化ベンジル、4−フルオロベンジル、3,4−ジフルオロベンジル、α−ヒドロキシベンジル、フェニルエチニル、3−フェニルプロピル、4−メトキシフェニルエチニル、スチリル(EおよびZ異性体を含む)が好ましい。
【0020】
また、「ヘテロ環」とは、環内に少なくとも1つのヘテロ原子を含有する環式炭化水素基または芳香族炭化水素基を意味する。該へテロ原子とは、例えば酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素からなる群から選ばれる。ここでの環式炭化水素基および芳香族炭化水素基とは、上で定義する通りである。また、それらは全て場合により、置換され得る。該置換基は上記の特性原子団、非環式炭化水素、環式炭化水素または芳香族炭化水素基から選ばれ、具体的には、例えばハロゲン、オキソ、ホルミル、ヒドロペルオキシ、ジアゾ、アジド、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、スルファニル、アミノ、イミノ、ニトリル、アルキル(例えば、メチル)、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、フェニル、ベンジル、並びにカルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、チオカルボン酸、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物)を含む。具体的には、該ヘテロ環式基は例えば、ピロリジニル、ピペリジル、イミダゾリル、キノリル、フリル、ベンゾフリル、ピロリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、ピロリル、クロマニル、インドリル(2−または3−インドリルを含む)、1−メチル−3−インドリル、チエニル(2−チエニルおよび3−チエニルを含む)、ピペラジニル、モルホリルおよびプリニルが好ましい。
【0021】
基:
【化11】
Figure 0004246958
において、環Aはイミダゾピラジノン環と縮合した環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくはヘテロ環式基であり、そして環Bと環Aと縮合した環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくはヘテロ環式基であり得る。また、これらの基は全て場合により、置換され得る。該置換基は上記の特性原子団から選ばれ、具体的には、例えばハロゲン、オキソ、ホルミル、ヒドロペルオキシ、ジアゾ、アジド、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、スルファニル、アミノ、イミノ、ニトリル、並びにカルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、チオカルボン酸、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物)を含む。環Aは環式炭化水素基または芳香族炭化水素基が好ましく、環Bは芳香族炭化水素基が好ましい。具体的には、下式:
【化12】
Figure 0004246958
で示される通り、環Aはシクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルがより好ましく、環Bはフェニルがより好ましい。置換基Rは2−ヒドロキシまたは2−メトキシが特に好ましい。
【0022】
具体的な好ましい発光基質を以下に示す。
【化13】
Figure 0004246958
【化14】
Figure 0004246958
【化15】
Figure 0004246958
【0023】
好ましい態様によれば、発光基質はRがメチルであり、RおよびRが共に水素であってRが4−メトキシフェニルである、3−メチル−6−(4−メトキシフェニル)−3,7−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3−オン(以下、MCLAと略す)である。
【0024】
発光基質の他の代表的な例は式:
【化16】
Figure 0004246958
で表わされるホタルルシフェリンである。
【0025】
触媒抗体とは、抗体が触媒活性を有するように製造され、結合した基質に化学変化を誘導する抗体を意味する。酵素様抗体またはアブザイムとも呼ばれる。触媒抗体を製造する場合には、一般に基質の遷移状態のアナログをハプテンとして用いて動物を免疫して抗体を得る。ハプテンとは、一般に低分子量の化合物であってそのもの自身は免疫原性を有しないが、担体と呼ばれるより高分子量の化合物(例えば、タンパク質)と結合させたりまたは吸着させて動物を免疫すると、該化合物と特異的に反応する抗体を産生する化合物を意味する。
本発明者は発光基質の遷移状態のアナログを設計し、製造してこれをハプテンとして用いて本発明の触媒抗体を得た。本発明の発光基質の遷移状態のアナログは、発光基質に分子状酸素が付加したヒドロペルオキシド又はジオキセタノンのアナログである。
ハプテンの設計:
例えば、ホタルルシフェリンについての発光は、下式に示す通り、ジオキセタノン(1)を経由することが強く示唆されている。したがって、該ジオキセタノン(1)の安定なアナログをハプテンとして設計する。すなわち、ジキセタノンのペルオキソの1個をメチレン基で置換した、β−プロピオラクトン含有化合物(2)または1,3−エポキシ−2−プロパノン含有化合物(3)を、ハプテンとして設計する。次いで、該ハプテンを免疫することにより、ホタルルシフェリンの発光反応を触媒する触媒抗体を作製することができる。
【化17】
Figure 0004246958
【0026】
また、イミダゾピラジノン系発光基質についてのハプテンを設計する。イミダゾピラジノン系化合物の代表的な化合物であるMCLAについての発光機構を下式に示す。該式に示す通り、該機構は遷移状態化合物としてヒドロペルオキシド(4)、更にジオキセタノン(5)を経由すると考えられている。すなわち、MCLAは酸素付加反応により、まずヒドロペルオキシド(4)を生成する。次いで、該ヒドロペルオキシド(4)は分子内環化反応により、ジオキセタノン(5)を生成する。そして、該ジオキセタノン(5)が分解することにより、発光が観察される。
【化18】
Figure 0004246958
従って、これらの発光機構において最も重要な遷移状態化合物であると考えられるヒドロペルオキシドの安定なアナログをハプテンとして用いる。すなわち、ヒドロペルオキシド(4)のアナログである、式Iの新規な2−ヒドロキシメチルインダノール骨格を有する化合物をハプテンとして用いる。
【化19】
Figure 0004246958
該式Iにおける1位のヒドロキシ基と2位のヒドロキシメチル基とがトランス異性の関係であることが好ましい。
ここで、式I中、R、R、RおよびRの少なくとも1つが、基:
【化20】
Figure 0004246958
(式中、
Rは水素、メチルまたはエチルであり、mは0〜10の整数である)
で示される末端カルボキシ基を含有する非環式炭化水素基、もしくは基:
【化21】
Figure 0004246958
(式中、
Rxは、水素、フルオロ、ヒドロキシまたはスルフェートであり、pは0または1であって、mは上記の通りである)
で示される末端カルボキシ基を有する芳香族炭化水素基であって、
残余が水素原子、特性原子団、非環式炭化水素基、環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくはヘテロ環式基であるか、または
およびRの少なくとも1つが、上で示される末端カルボキシ基を含有する非環式炭化水素基もしくは末端カルボキシ基を含有する芳香族炭化水素基であって、残余が水素原子、特性原子団、非環式炭化水素基、環式炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくはヘテロ環式基であり、RおよびRが一緒になって、基:
【化22】
Figure 0004246958
(式中、
環Aは2−ヒドロキシメチルインダノール環と縮合した環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ環式基であり、環Aは更に場合により、環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ環式基である環Bと縮合し得る)
を形成する。
すなわち、式Iのハプテンにおける置換基R、R、RおよびRのうちリンカー分子と結合する基を除く3個の置換基が、式IIIの発光基質の置換基R、R、RおよびRのうちの3個の置換基と同一であることが好ましい。
【0027】
上記式Iにおいて、置換基Rはmが2である末端カルボキシ基を含有する非環式炭化水素基であり、置換基RおよびRは共に水素であって、置換基Rは4−メトキシフェニルである発光基質のMCLAの発光遷移状態アナログである、式II:
【化23】
Figure 0004246958
の2−ヒドロキシメチルインダノール化合物が特に好ましい。
【0028】
本発明の発光触媒活性を有する触媒抗体は、以下の工程によって産生し得る。
(1)ハプテンを製造する;
(2)上記のハプテンと結合し得る連結部分を有する担体タンパク質を製造して、上記で製造したハプテンと結合させて縮合体を得る;
(3)上記で得た縮合体を免疫抗原として哺乳動物に免疫させる;
(4)上記の免疫させた動物からリンパ球を含有する組織を取り出し、ミエローマ細胞と細胞融合させてハイブリドーマを得て、抗体の検出を行なうことにより、抗体産生ハイブリドーマを得る;そして、
(5)上記で得た抗体産生ハイブリドーマを培養して目的とする触媒抗体を得る。本発明の触媒抗体はポリクローナル抗体であっても、またはモノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。また、本発明の触媒抗体は抗体分子全体ではなく、ハプテン化合物との結合部位を有する分子であってもよく、その例としてFab部分またはFabの中のハプテン化合物との結合部位等が挙げられる。
【0029】
以下に発光基質として上記のイミダゾピラジノン系ルシフェリンを用いる場合を例にとって、本発明の触媒抗体の製造方法を具体的に説明する
1)ハプテンおよび免疫抗原の製造
ハプテンの製造
発光基質として上記のイミダゾピラジノン系化合物を用いる場合のハプテンである、2−ヒドロキシメチルインダノール骨格を有する化合物の合成例を下記スキーム1に示す。
【0030】
【化24】
Figure 0004246958
インダン−1−オン誘導体をアルカリ性試薬(例えば、水酸化ナトリウム)を用いて処理した後、ハロゲン化アルコキシレートと縮合させ、アルカリ加水分解(例えば、水酸化ナトリウムを使用)して化合物を得る。該化合物をアルカリ性試薬(例えば、水酸化ナトリウム)を用いて処理した後、ホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応を行ない、次いで還元試薬(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)を用いて還元する。ここで、得る化合物は1位のヒドロキシ基および2位のヒドロキシメチル基について、シスおよびトランス異性の関係である異性体混合物である。該異性体混合物をクロマトグラフィー(例えば、分取TLC)を用いて、トランス異性体であるハプテンを単離精製する。最後に、該ハプテンをリンカー分子と縮合させることによって、連結基を有する化合物を製造する。
【0031】
ハプテンと担体タンパク質との結合方法としては、アミノ基とカルボキシ基とのペプチド結合生成反応を利用する方法、およびマレイミド基内の二重結合ヘのスルファニル基の付加反応を利用する方法等が知られている。したがって、式Iにおける置換基R、R、RおよびRの少なくとも1つは担体タンパク質の官能基と連結可能な結合基を有することが必要とされる。よって、上記の式Iにおける基:
【化25】
Figure 0004246958
で示される末端カルボキシ基を有するアルキル鎖に、担体タンパク質の官能基と連結可能な官能基を有するリンカー分子を導入することを企図する。該リンカー分子としては、例えば式:
【化26】
Figure 0004246958
(式中、nは1〜5の整数である)
で示される、一方の末端に該末端カルボキシ基と結合可能なアミノ基を有し、且つ他方の末端に担体タンパク質の官能基と連結可能な官能基Xを有する分子を選ぶ。該官能基Xとしては、例えばカルボキシ基、アミノ基、スルファニル基、カルボン酸活性エステル基(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル)、マレイミド基、チオイソシアネート基、ジチオピリジル基、ハロゲン化アセチル基、アジド基およびホルミル基が挙げられる。スルファニル基が特に好ましい。
【0032】
該リンカー分子を上記の式Iの末端カルボキシ基と反応させてアミド結合を生成させることにより、担体タンパク質と連結することが可能な結合基を得る。
【0033】
スキーム1では、上記のマレイミド基内の二重結合ヘのスルファニル基の付加反応を利用する結合方法を選び、2−ヒドロキシメチルインダノール骨格上に、結合基としてスルファニル含有置換基を有する化合物を製造する場合を示している。
【0034】
ハプテンと担体タンパク質との縮合体との製造
上記のハプテンと結合し得るように修飾した担体タンパク質を製造し、次いで該ハプテンと結合させて縮合体を得る。ここで、本明細書で使用する用語「担体タンパク質」とは、上記のハプテンと結合して縮合体を生成して免疫抗原として作用し得るタンパク質を意味する。担体として用いるタンパク質としては、例えばスカシガイ血青素(KLH)またはウシ血清アルブミン(BSA)を含むが、これらに限定しない。
【0035】
上記のスルファニル含有置換基を有するハプテンと結合し得るマレイミド基によって修飾した担体タンパク質を製造する。担体タンパク質の溶液(例えば、PBS溶液)および3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシサクシイミドエステルを混合し、撹拌して反応させる。得られた反応液を透析(例えば、PBSを使用)する。
【0036】
次いで、該得られた溶液に上記の連結基を有する化合物を加え、撹拌して反応させる。得られた縮合体を透析(例えば、PBS溶液を使用)して目的のハプテンと担体タンパク質との縮合体を得る。
【0037】
得られた縮合体のタンパク質濃度は、例えばBCAタンパクアッセイ法(P. K. Smithらによる、Anal, Biochem., 150, 76 (1985))を用いて決定する。
【0038】
2)触媒抗体の製造
上記で製造した免疫抗原を、触媒抗体に関する公知の方法(例えば、Lerner, R.A.によるScience, 252, 659 (1991))に従って哺乳動物に免疫させて、抗体を製造する。哺乳動物は、研究目的、使用する抗原の種類および抗血清に必要な量などを考慮して選択されるべきである。本明細書における哺乳動物とは、例えばウサギ、モルモット、ラット、マウスおよびニワトリを含むが、マウスが好ましく、Balb/cマウスが特に好ましい。
【0039】
免疫
上記の通り製造した免疫抗原を哺乳動物に免疫する。該哺乳動物としては、例えばBalb/cマウス(雌性、8週齢)を用いる。上記の免疫抗原の生理食塩水水溶液をBalb/cマウスに免疫する。通常、免疫は2〜3週間の間隔で数回にわたって追加免疫を行なう。免疫は、例えば皮下、腹腔内、静脈内に注射するか、または脾臓に直接に注射することによって行なうことができる。腹腔内注射によって免疫を行なうことが好ましい。これら免疫の操作を行なう際に必要に応じてアジュバント(例えば、RIBIアジュバント)を用いることができる。また、これら免疫操作は、免疫後の動物血清について、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法によって目的の抗原に対する高い抗体価の抗体の出現が確認されるまで行なう。
【0040】
ハイブリドーマの製造
ハイブリドーマの製造は例えば、以下の通り行なう。
先ず、最終免疫の数日後に免疫された動物からリンパ球を含有する組織(例えば、脾臓)を摘出する。次いで、該組織細胞と予め培養させたミエローマ細胞とを電気細胞融合装置を用いて細胞融合させる。細胞融合とは、一般に2種類の異なった細胞を融合させて両方の遺伝子を含有する雑種細胞を得る技術を意味し、例えば該技術はウイルス(例えば、センダイウイルス)、ポリエチレングリコールまたは電気的パルス(例えば、電気細胞融合装置)等を用いることによって、達成することができる。電気的パルス(例えば、電気細胞融合装置)を用いることが好ましい。該方法はまた、ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の産生において使用することができる。
続いて、選択培養液(例えば、HAT選択培地)を加えた96マイクロウェルプレート中で選択培養することによって、ハイブリドーマを得る。
【0041】
次いで、細胞融合後にコロニーを形成したウェルの上清を採取する。該上清について、ELISA法によりスクリーニングを行なって抗体の存否または抗体の特異性について検討を行なって、陽性クローンである抗体産生ハイブリドーマを得る。
【0042】
モノクローナル抗体の製造
上記の通り製造したハイブリドーマについて、完全培地(例えば、10%牛胎児血清RPMI培地)中で限界希釈法を用いて培養してモノクローンIgG産生ハイブリドーマを得て、続けてそれら培養上清を抗マウスIgG+Mアフィニティークロマトグラフィーによって精製して、本発明の触媒抗体を製造する。
【0043】
3)触媒抗体の特定
次に、上記で得た抗体の触媒活性についてスクリーニングする。すなわち、本発明の抗体が以下の反応式に示す本発明の酸素付加による酸化反応に及ぼす影響について調べる。
【化27】
Figure 0004246958
該触媒抗体の存在下、当量の基質:MCLAと反応させてそれぞれの場合の発光量をルミノメータを用いて測定する。また、同様な反応条件下、該触媒抗体の存在しない場合での発光量を測定し、両者の結果を比較して本発明の抗体が上記反応に及ぼす影響について調べる。
【0044】
次いで、上記反応式の反応生成物であるアミド化合物の生成量を経時的に追跡して、本発明の触媒抗体が上記酸化反応を触媒し得ることを確認する。
【0045】
本発明は、発光基質、酸素および触媒抗体のみで発光する発光触媒抗体システムにも関する。本明細書で使用する用語「発光触媒抗体システム」とは、発光に必要な構成要素として、発光基質、酸素および触媒抗体を組み合わせたシステムを意味する。本発明のシステムでは、発光基質、酸素および触媒抗体のみで発光する。即ち、補酵素(例えば、ATP、FMNH)および金属イオン(例えば、マグネシウムイオン)等の他の構成要素を必要としない。
【0046】
更に、本発明により提供されたモノクローナル抗体に対する該遺伝子の単離は容易であり、遺伝子組換え技術との併用により、抗体の発光触媒能の増強への(技術的)基盤を提供することも可能となる。
【0047】
以下に本発明を実施例をもって説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではないことは無論である。本発明におけるルミノメータは、AB−2200(アトー株式会社製)を使用した。
【0048】
【実施例】
実施例1
ハプテン10の製造
以下のスキーム2に従って、ハプテン10、および連結基を有する化合物11を製造した。
【化28】
Figure 0004246958
【0049】
(i)化合物7の製造
三臭化ホウ素(25mL、1Mジクロロメタン溶液、25mM)の乾燥ジクロロメタン(50mL)溶液に撹拌下、−78℃で6−メトキシインダン−1−オン(2g、12mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液をゆっくりと滴下した。5時間後、室温まで昇温し、室温にて12時間攪拌した。反応溶液に水を加えた後、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた粗生成物(0.92g、6.2mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解し−78℃に冷却後、トリエチルアミン(1.6g、6.2mmol)とDMAP(15mg、触媒量)を加えた。この溶液に無水トリフルオロメタンスルホン酸(1.6g、6.2mmol)を5分間かけて加えた。混合溶液を−78℃で30分撹拌した後、室温まで昇温して2時間撹拌した。反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)に注ぎ、有機層と水層を分離した。水層をジクロロメタンで抽出して有機層を合わせた後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過により硫酸マグネシウムを除いた後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムにより精製して化合物を得た(1.4g、43%)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3 ):δ = 2.78 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.20 (2H, t, J = 6.0 Hz), 7.27 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.49 (1H, dd, J = 8.4、2.0 Hz), 7.64 (1H, d, J = 2.0 Hz);
IR (CHCl3) ν最大値 1720, 1686, 1610, 1498, 1296, 1144 cm -1
HRMS (EI)(C10H7O4F3Sとして計算)計算値 280.0017、測定値 280.0018。
【0050】
(ii)化合物8の製造
上記の化合物(0.7 g, 2,5 mmol)、4−メトキシフェニルボロン酸(0.5 g, 3 mmol)、2M 炭酸ナトリウム水溶液(1.6 mL、3.2 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(164 mg、0.12 mmol) のベンゼン(5 mL)/ メタノール(2 mL)溶液を80℃で1時間加熱撹拌した。溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮した。残渣についてシリカゲルクロマトグラフィーにより化合物を黄色のアモルファス状固体として得た(0.5g、85%)。
融点:139-141 ℃;
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ= 2.74 (2H, t, J=6.0 Hz), 3.18 (2H, t, J=6.0 Hz), 3.87 (3H, s), 6.99 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.52 (1H, d, J=8.4 Hz), 7.54 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.80 (1H, dd, J=8.4, 2.0 Hz), 7.93 (1H, d, J=2.0 Hz);
HRMS (EI)(C16H14O2として計算):計算値238.0993, 測定値238.0987;
IR (CHCl3最大値 1702, 1608, 1482, 1269, 828 cm -1.
【0051】
(iii)化合物9の製造
水素化ナトリウム(240 mg, 10 mmol)、炭酸ジエチル(0.5 mL, 4.2 mmol)のベンゼン(20 mL)溶液を80℃で30分間攪拌した。この溶液に化合物(500 mg, 2.1 mmol)のベンゼン(5 mL)溶液を加えて混合溶液を80℃で3時間攪拌した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。粗生成物(240 mg, 0.7 mmol)をジメチルホルムアミド(4 mL)に溶解し、これに室温下、炭酸カリウム(106mg, 0.7 mmol)とメチル4−ヨウ化ブチレート(175 mg, 0.7 mmol)を加えて12時間攪拌した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を混合後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過により硫酸ナトリウムを除いた後、溶媒を減圧下留去した。粗生成物(196 mg)をエタノール(6 mL)と水(1 mL)に溶解し、3M水酸化ナトリウム水溶液(0.4 mL)を加えて室温で24時間反応させた。溶媒を減圧下留去後、残渣を1N塩酸で処理すると結晶が析出した。得られた結晶を濾過して集め水で洗った後、乾燥して化合物(20%、158mg)が黄色固体として得られた。
1 H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ=1.50-1.62 (1H, m), 1.82 (2H, t, J=7.2 Hz), 1.98-2.10 (1H, m), 2.46 (2H, t, J=7.2 Hz), 2.46-2.50 (1H, m), 2.87 (1H, dd, J =15.2, 2.0 Hz), 3.39 (1H, dd, J=15.2, 8.0 Hz), 3.88 (3H, s) 7.01 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.56 (1H, d, J=8.4 Hz), 7.57 (2H, d, J=8.4 Hz) 7.82 (1H, dd, J=8.4, 2.0 Hz), 7.93 (1H, d, J=2.0 Hz);
HRMS (EI)(C20H20O4として計算):計算値324.1362, 測定値 324.1349;
IR (KBr)ν最大値 3448, 2929, 2361, 2342, 1706, 1685, 1608, 1497, 1250, 812 cm-1,
元素分析(C20H20O4として計算):計算値 C, 70.23%; H, 6.39%;測定値 C, 70.26%; H, 6.22%。
【0052】
(iv)ハプテン10の製造
化合物(40 mg, 0.12 mmol)、2.5 M水酸化ナトリウム水溶液(0.10 mL, 0.25 mmol)、および37%ホルムアルデヒド溶液(0.02 mL, 0.25 mmol)を99.5%エタノール(5 mL)中、室温下2時間攪拌した。エタノールを減圧下留去後、残渣をジクロロメタンに溶解して塩酸で洗浄した。溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去した。残渣(40 mg)のメタノール溶液(2 mL)に2.5 M 水酸化ナトリウム水溶液(0.043 mL, 0.11 mmol)と水素化ホウ素ナトリウム(4.8 mg, 0.11 mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。混合溶液を1N塩酸で処理した後、濃縮した。残渣を分取用TLC(展開溶媒:ジクロロメタン−メタノール(9:1))で精製し、ハプテンのトランス体10(20 mg, 45%)およびシス体10(15 mg, 34%)をそれぞれ白色固体として得た。以下の実験にはトランス体10を用いた。
ハプテンのトランス体10のデータ:
1H-NMR (300 MHz, 9:1 CDCl3-CD3OD) δ=1.50-1.83 (4H, m), 2.35 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.72 (1H, d, J = 10.8 Hz), 2.74 (1H, d, J = 10.8 Hz), 3.78 (1H, d, J = 10.8 Hz), 3.65 (1H, d, J = 10.8 Hz), 3.86 (3H, s), 5.00 (1H, s), 6.98 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.21 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.44 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.54 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.56 (1H, s),
IR (KBr) ν最大値 3422, 2924, 2361, 2342, 1735, 1717, 1670, 1617, 1570, 1458, 1248, 821 cm-1,
融点:105-107℃,
HRMS (EI)(C21H24O5として計算):計算値356.1604, 測定値 356.1622。
シス体10のデータ:
1H-NMR (300 MHz, 9:1 CDCl3-CD3OD) δ=1.50-1.73 (4H, m), 2.34 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.68 (1H, d, J = 10.8 Hz), 2.80 (1H, d, J = 10.8 Hz), 3.53 (1H, d, J = 10.8 Hz), 3.66 (1H, d, J = 10.8 Hz), 3.85 (3H, s), 5.03 (1H, s), 6.98 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.54 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.44 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.56 (1H, s)および7.20 (1H, d, J = 8.4 Hz)。
【0053】
(v)化合物11の製造
ハプテンのトランス体10(20 mg, 0.06 mmol)、(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、WSCと略す)(12 mg, 0.06 mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、HOBTと略す)(8 mg, 0.06 mmol)とシスタミン二塩酸塩(13 mg, 0.06 mmol)をジメチルホルムアミド(1mL)中で室温下、12時間攪拌した。溶媒を減圧下留去した後、残渣をジクロロメタンに溶解し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。粗生成物(15 mg, 0.036 mmol)と0.5 Mトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEPと略す)(0.08 mL, 0.04mmol)のジオキサン(0.9 mL)とTHF(0.1 mL)の混合溶媒を室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧下留去して、残渣を分取用TLC(展開溶媒:ジクロロメタン−メタノール(9:1))で精製することにより化合物11(9 mg)を油状物として得た。
1H-NMR (300 MHz, 9:1 CDCl3-CD3OD) δ=1.47-1.68 (4H, m), 2.18-2.48 (2H, m), 2.61 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.72 (2H, ABq), 3.38 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.57 (2H, ABq), 3.85 (3H, s), 5.02 (1H, s), 6.97 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.20 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.42 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.53 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.56 (1H, s).
HRMS (FAB)(C23H30NO4Sとして計算)(M+H):計算値416.1896, 測定値 416.1914;
IR (KBr) ν最大値 3309, 2928, 2810, 1647, 1609, 1559, 1541, 1248, 821 cm-1
【0054】
実施例2
ハプテンと担体タンパク質との縮合体の製造
次いで、上記の通り製造した化合物11と担体タンパク質とを結合させて、縮合体12(タンパク質がスカシガイ血素(KLH)の場合)または13(タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)の場合)を得た。スカシガイ血素(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)は共にPierce製である。
【0055】
(i)KLH縮合体12の製造
KLH(20 mg)のPBS(日水製薬株式会社製)(4 mL)に3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシサクシイミドエステル(Aldrich製, 12.5mg)のジメチルホルムアミド(0.4 mL)溶液を加え、室温で3時間攪拌した。得られた水溶液を1LのPBSで3回透析した。得られた水溶液の約半量(2.5 mL)に化合物11のジメチルホルムアミド(0.5 mL)溶液を添加し、室温で17時間穏やかに攪拌した。得られた縮合体をPBS(1L)で3回透析してKLH縮合体12を得た。該縮合体のタンパク質濃度は、BCAタンパクアッセイ法(P. K. Smithら, Anal. Biochem, 150, 76 (1985))によって決定した(3.6 mg / mL)。
【0056】
(ii)BSA縮合体13の製造
BSA(20 mg)のPBS(4 mL)に3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシサクシイミドエステル(12.5mg)のジメチルホルムアミド(0.4 mL)溶液を加え、室温で3時間攪拌した。得られた水溶液を1LのPBSで3回透析した。得られた水溶液の約半量(2.5 mL)に化合物11のジメチルホルムアミド(0.5 mL)溶液を添加し、室温で17時間穏やかに攪拌した。得られた縮合体をPBS(1L)で2回透析してBSA縮合体13を得た。該縮合体のタンパク質濃度は、上記のBCAタンパクアッセイ法によって決定した(3.0 mg / mL)。
【0057】
実施例3
触媒抗体の製造
(i)免疫
実施例2より製造した免疫抗原(KLH縮合体12)(100μg)の生理食塩水溶液(200μL)をRIBIアジュバント(RIBI製 Immunol, Res. Inst.製)と混和し、その混合液をBalb/cマウス(8週齢、雌)(日本SLCから購入)に腹腔内注射した。14日後および28日後に該免疫抗原(100μg)の生理食塩水溶液(200μL)とRIBIアジュバントとの混合液で追加免疫を行い、そのマウスの尾静脈より採血し、抗体価をBSA縮合体を用いた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法(二次抗体 抗マウスIgGペルオキシターゼ)により測定し、51200抗体価の値を得た。最終追加免疫より24日後に抗原(100μg)の生理食塩水溶液(200μL)とRIBIアジュバントとの混合液を腹腔内に投与(最終免疫)した。
【0058】
(ii)抗体産生ハイブリドーマの製造
最終免疫より3日後にマウスから脾臓を摘出し、次いで脾臓細胞と5×10個のミエローマ細胞(P3X63-Ag8.653、大日本製薬社製)とを電気細胞融合装置(島津電気細胞融合装置SSH-10)を用いて細胞融合し(条件:電極の距離、1.0 mm;振動数、1MHz;一次AC電圧、80 V;開始時間、10秒;パルス幅、40 μs;DC電圧、920 V;電解密度、2.30 kV/cm;二次AC電圧、80 V;パルス反復間隔、1秒;パルス数、1;VDC変化、+0 V;最終時間、10秒;AC電圧減少比率、0 %;吸着増感剤、なし)、HAT選択培地(100μMヒポキサンチン、0.4μMアミノプテリン、16μMチミジン、20%牛胎児血清RPMI培地)を加えた96ウェルプレート(10枚)を用いて得られた融合体の選別を行った(37℃、5%炭酸ガス)。8〜14日後にコロニーが現れてきたウェルより上清をとり、ELISA法によりスクリーニングを行い陽性クローンを得た。これらのクローンをクローニングを2回行い、最終的に70個のIgG産生クローンを得た。
【0059】
(iii)モノクローナル抗体の製造
上記実施例3(ii)において製造した70種のハイブリドーマを完全培地(10%牛胎児血清RPMI培地、GIBCO社製)においてそれぞれ約7日間培養した。その培養上清を抗マウスIgG+Mアフニティークロマトグラフィー(NGF Industries. Ltd.社製)により精製し、精製したモノクローナル抗体を得た。
【0060】
(iv)触媒抗体の特定
上記実施例3(iii)において製造した70個の精製抗体の50 mMトリス緩衝液、pH 8.0溶液(90μL)にMCLAの100 μMメタノール溶液(10 μL)(ナカライテスク(株)社製)を25℃で加え、混和し、抗体濃度10 μM、基質濃度10 μMとした。ルミノメータ(AB-2200、アトー株式会社製)により20秒間の発光量を求めた。また、抗体を加えない反応溶液中の自然酸化反応により生じるコントロールとしてのバックグラウンドの発光量を求めた。その結果、3A5、7D10、8G10、9B4、11D6、13G7、13H11、14C9、15B3、15C8、16B2、18F9、19B11、19D6の14個の抗体が該コントロールに比べて大きく発光量が増大していた。
【0061】
(v)モノクローナル抗体の酸化反応速度の測定
上記実施例3(iii)において製造した70個の精製抗体の50 mMトリス−HCl緩衝液、pH 8.0溶液(90 μL)に該MCLAの1mMメタノール溶液(10 mL)を25℃で加え、混和し、一定の抗体濃度(10μM)、一定の基質濃度(100μM)とした。HPLC(YMC AM-303:C-18、φ4.6 mm×250 mm、アセトニトリル:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液 = 40:60、1.0 mL/分、278 nm)により、反応溶液中に生成したアミド化合物(保持時間8.3分)の量を経時的に追跡し、酸化反応速度を測定した。また、抗体を加えない反応溶液中の自然酸化により生成したアミド化合物の量からコントロールとしてのバックグラウンドの酸化反応速度を決定した。その結果、1C6、3A5、5E11、7D10、11D6、13G7、13H11、14C9、15B3、15C8、15D6、16B2、18F9、19B11、19D6の15個の抗体がバックグラウンドに比べて酸化反応を加速することが明らかとなった。
【0062】
次に、一定の抗体濃度(10μM)で基質濃度を10 ~ 200 μMまで増減させて、反応加速初速度(このものは、抗体存在下での反応初速度から抗体が存在しない条件下での反応初速度を引いたものである)を測定し、ミカエリス−メンテン式(下記の式I)に当てはめて分子活性kcatおよびミカエリス定数Kmを算出した(図2を参照)。
【化29】
Figure 0004246958
上記式中、Vは反応速度を、[Ab]は抗体濃度を、[S]は基質濃度を、kcatは分子活性を、およびKはミカエリス定数を示す。
【0063】
最も強い発光量を示す触媒抗体7D10の場合は、kcat = 0.01 min-1、Km = 52 μMであった。
【0064】
抗体7D10を産生するハイブリドーマをハイブリドーマ7D10と命名した。該ハイブリドーマ7D10は、特許手続き上の微生物の寄託に関するブタベスト条約の下、独立行政法人産業技術総合研究所に受託番号FERM P−18668(寄託日は平成13年12月26日)として寄託されている。
【0065】
実施例4
触媒抗体7D10を用いた発光システム
(i)触媒抗体7D10の効果
次いで、(1)発光基質であるMCLAのみが自然酸化によって生じるバックグラウンドの発光量、(2)触媒抗体7D10の存在下で反応させた場合の発光量、および(3)更にMCLAの競合基質としてハプテン10の存在下で反応させた場合の発光量を経時的に比較することによって、本発明の発光量の増大が本発明の触媒抗体の効果によるものであることを確認した。
【0066】
以下のそれぞれの条件で発光量を測定し、それらの発光量を比較した(図1A)。
(1)コントロールとしてのバックグラウンドの反応については、発光基質であるMCLAの1mM エタノール溶液(10μL)のみを50 mMトリス−HCl(pH 8.0、490μL)中で25℃で混合して、発光量を測定した。
(2)触媒抗体7D10存在下での反応については、MCLAの1mM エタノール溶液(10μL)および触媒抗体7D10の10μM溶液(50 mM トリス−HCl、pH 8.0、490μL)を25℃で混合して、発光量を測定した。
(3)更にMCLAの競合基質であるハプテン10の存在下での反応については、MCLAの1mM エタノール溶液(10μL)、ハプテン10の1mM エタノール溶液(10μL)および触媒抗体7D10の10μM溶液(50 mM トリス−HCl)(pH 8.0、480μL)を25℃で混合して、発光量を測定した。
【0067】
上記の実験の結果、(2)の触媒抗体7D10の存在下での発光量は、発光基質MCLAのみである(1)の発光量と比較して、30倍以上の増大であることが観察された。一方で、MCLAの競合基質であるハプテン10が存在する(3)の発光量の増大はほぼ抑制された。このことは、本発明による発光が、本発明の触媒抗体との結合部位で起こっていることを示唆する。
【0068】
(ii)発光スペクトルの測定
また、発光スペクトルは、MCLAの1mM エタノール溶液(10μL)と触媒抗体7D10の10μM溶液(50 mM トリス−HCl)(pH 8.0、490μL)を25℃で混合して、直ちに測定することで得た。
【0069】
その結果、該触媒抗体の存在下で発光基質であるMCLAは、青色の発光を示し、その発光スペクトルは431nmに吸収極大を示した(図1B)。これは、イミダゾピラジノン系化合物に特徴的な発光スペクトルである。
【0070】
(iii)触媒抗体7D10の基質特異性
次いで、本触媒抗体7D10による発光反応の基質特異性を調べる目的で、下記式に示す同様なイミダゾピラジノン骨格を有する化合物14から17について、それぞれの場合の発光量を調べた。
【化30】
Figure 0004246958
実験は、上記の発光量の測定法と同様の方法に従って、これらの化合物1417およびMCLAのそれぞれの1mM エタノール溶液(10μL)および触媒抗体7D10の10μM溶液(50 mM トリス−HCl、pH 8.0、490μL)を25℃で混合し、発光量を測定して比較した。その結果、これら同様なイミダゾピラジノン骨格を有する化合物1417は、いずれの場合についても発光量は本発明のMCLAの発光量の5%以下であった。このことは、本発明の触媒抗体7D10の発光基質MCLAについての基質特異性を示唆する。
【0071】
(iv)発光反応に関与する酸素活性種の特定
触媒抗体による発光基質への酸素付加反応過程に関与する酸素活性分子種について、モデル系として触媒抗体7D10及び発光基質のMCLAを含む系を用いて、該反応系にいくつかの酸素活性分子種に特異的な阻害剤を添加することにより、それぞれの添加物が発光量に及ぼす影響を調べることによって、その酸素活性分子種を調べた。
【0072】
調べた発光反応系は、100μLの50 mM トリス−HCl(pH 8.0)、1μLの1mMMCLA、1μLの11μMの触媒抗体7D10より構成され、使用した阻害剤とその最終濃度は、以下のものを用いた。一重項酸素の阻害剤であるアジ化ナトリウム(最終濃度0.5 mM:和光純薬社製)、鉄イオンのキレート剤であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTAと略す)(最終濃度1mM:和光純薬社製)、過酸化水素の分解酵素であるカタラーゼ(最終濃度 0.02mg:シグマ社製)、スーパーオキシドアニオンの阻害酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(最終濃度 500nM:シグマ社製)。発光量は、ルミノメーター(AB2200型、アトー社製)を用い、阻害剤添加の1秒後から6秒までの発光量を積算し、相対発光値で評価した。
【0073】
その結果を表1に示す。
表1.添加物が触媒抗体7D10によるMCLAの発光量に及ぼす影響
【表1】
Figure 0004246958
脚注)反応条件: 50mM トリス−HCl(pH 8.0、0.1mL)、1mM MCLA(1μL)、11μL 7D10(1μL)および化学品/酸素(1μL)
【0074】
表1に記載の通り、添加剤を加えたいずれの場合にも添加剤を入れなかった場合に比べて約95%以上の発光量を示すことが明らかとなった。すなわち、本発明の方法により製造した触媒抗体による発光の酸素添加反応過程において関与する酸素活性種は、三重項の分子状酸素であり、通常のルシフェラーゼ酵素による生物発光反応系において関与する酸素活性種と同様であることが分かった。このことより、他の機能性タンパク質と同様に、本発明の製造法で単離された触媒抗体に対する遺伝子を取得後に改変することによって、さらに高効率を有する触媒抗体の製造が可能となろう。
【0075】
【発明の効果】
本発明によって得られる触媒抗体は、現在知られているルシフェラーゼに代わる発光触媒活性を有する触媒抗体である。また、該触媒抗体は熱的に安定であり、且つ通常の抗体精製技術を用いて容易に精製することができる。更に、本発明における発光触媒活性を有する触媒抗体をイムノアッセイ法(例えば、発光イムノアッセイ法)およびハイスループットアッセイ法(例えば、発光イムノアッセイ法に応用)に応用する場合にも、該触媒抗体に従来の確立された抗体の修飾法を適用することによって、分析目的に応じて触媒抗体の化学的な修飾が可能となろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1Aは、(1)発光基質であるMCLAのみが自然酸化によって生じるバックグラウンドの発光量、(2)触媒抗体7D10の存在下で反応させた場合の発光量、および(3)更にMCLAの競合基質としてハプテン10の存在下で反応させた場合の発光量を、経時的に比較した結果を示す図である。図1Aにより、(2)の触媒抗体7D10の存在下の発光量は、発光基質MCLAのみである(1)の発光量と比較して、30倍以上の増大であることが観察された。
図1Bは、触媒抗体7D10によるMCLAの発光スペクトルは431nmに吸収極大を有することを示す図である。
【図2】 図2は、一定の抗体濃度(10μM)で基質濃度を10〜200 μMまで増減させて、触媒抗体7D10による反応加速初速度を測定した場合の結果についてのミカエリスーメンテン速度論を示す図である。横軸は基質濃度(単位はμM)を表わし、縦軸は酵素反応の速度(単位はμM/分)を表わす。

Claims (9)

  1. 式I:
    Figure 0004246958
    [式中、
    、R、RおよびRの少なくとも1つが、基:
    Figure 0004246958
    (式中、
    Rは水素、メチルまたはエチルであり、mは0〜10の整数である)
    で示される末端カルボキシ基を含有する非環式炭化水素基、もしくは基:
    Figure 0004246958
    (式中、
    Rxは、水素、フルオロ、ヒドロキシまたはスルフェートであり、pは0または1であって、mは上記の通りである)
    で示される末端カルボキシ基を有する芳香族炭化水素基であって、
    残余基のR はフェニル基、ベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、3 , 4−ジフルオロベンジル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、シクロヘキシルメチル基またはメチル基であり、
    はフェニル基、ベンジル基、p−ヒドロキシフェニル基、α−ヒドロキシベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチルメチル基またはシクロペンチルメチル基であり、
    7 はベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、3 , 4−ジフルオロベンジル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、シクロヘキシルメチル基またはメチル基であり、
    は水素原子、置換または非置換のアルキル基であるか、または、
    およびRが一緒になって、基:
    Figure 0004246958
    式中、環Aはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはフェニルであり 、環Bはフェニル、2−ヒドロキシフェニルまたは2 - メトキシフェニルである
    を形成する]
    で示される2−ヒドロキシメチルインダノール骨格を有する化合物をハプテンとして認識する、発光基質の酸素付加反応を触媒し、発光を生じさせる、発光触媒活性を有する触媒抗体
  2. ハプテンが式II:
    Figure 0004246958
    で示される化合物である、請求項に記載の触媒抗体。
  3. 発光基質が式III:
    Figure 0004246958
    [式中、
    1 がフェニル基、ベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、3 , 4−ジフ、ルオロベンジル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、シクロヘキシルメチル基またはメチル基であり、
    2 がフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、ベンジル基、α−ヒドロキシベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチルメチル基またはシクロペンチルメチル基であり、
    3 は、ベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、3 , 4−ジフルオロベンジル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、シクロヘキシルメチル基またはメチル基であり、
    4 が、水素原子、置換または非置換のアルキル基であり、または、
    およびRが一緒になって基:
    Figure 0004246958
    式中、環Aはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはフェニルであり、環Bはフェニル、2−ヒドロキシフェニルまたは2 - メトキシフェニルである
    を形成する]
    で示される化学発光反応により発光可能なイミダゾピラジノン骨格を有する化合物である、請求項に記載の触媒抗体。
  4. 発光基質が式IV:
    Figure 0004246958
    で示される化合物である、請求項に記載の触媒抗体。
  5. モノクローナル抗体である、請求項1〜のいずれかに記載の触媒抗体。
  6. 受託番号がFERM P−18668であるハイブリドーマ7D10により産生される、請求項1〜のいずれかに記載の触媒抗体。
  7. 発光基質、酸素および触媒抗体のみで発光する、請求項1〜のいずれかに記載の触媒抗体を用いた発光システム。
  8. 発光基質としてイミダゾピラジノン系化合物を利用する、請求項に記載の発光システム。
  9. 式I
    Figure 0004246958
    [式中、
    、R 、R およびR の少なくとも1つが、基:
    Figure 0004246958
    (式中、
    Rは水素、メチルまたはエチルであり、mは0〜10の整数である)
    で示される末端カルボキシ基を含有する非環式炭化水素基、もしくは基:
    Figure 0004246958
    (式中、
    Rxは、水素、フルオロ、ヒドロキシまたはスルフェートであり、pは0または1であって、mは上記の通りである)
    で示される末端カルボキシ基を有する芳香族炭化水素基であって、
    残余基のR はフェニル基、ベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−フルオロベ ンジル基、p−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、3 , 4−ジフルオロベンジル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、シクロヘキシルメチル基またはメチル基であり、
    はフェニル基、ベンジル基、p−ヒドロキシフェニル基、α−ヒドロキシベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチルメチル基またはシクロペンチルメチル基であり、
    7 はベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、3 , 4−ジフルオロベンジル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、シクロヘキシルメチル基またはメチル基であり、
    は水素原子、置換または非置換のアルキル基であるか、または、
    およびR が一緒になって、基:
    Figure 0004246958
    (式中、環Aはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはフェニルであり、環Bはフェニル、2−ヒドロキシフェニルまたは2 - メトキシフェニルである)
    を形成する]
    で示される2−ヒドロキシメチルインダノール骨格を有する化合物をハプテンとして含有する免疫抗原を用いて哺乳動物を免疫し、細胞融合を行なってハイブリドーマを得て、次いで該ハイブリドーマを培養して請求項1に記載の触媒抗体を得る、発光触媒活性を有する触媒抗体の製造法。
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