以下、本発明の燃料噴射弁を、ガソリンエンジンへ燃料を供給するものに適用して具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の燃料噴射弁の構成を示す断面図である。図2は、図1中の弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。なお、図1および図2は閉弁状態を示し、コイルへ通電を停止した状態を示している。
図1に示すように、燃料噴射弁2は、内燃機関、特にガソリンエンジンに用いられる。燃料噴射弁2は、例えば多気筒(例えば4気筒)ガソリンエンジン(以下、エンジンと呼ぶ)の吸気管または各気筒に取付けられて、気筒内の燃焼室に燃料を噴射供給する。なお、本実施形態では、燃料噴射弁2は各気筒に設けられているものとする。燃料噴射弁2には、図示しない燃料ポンプにより加圧された燃料が、燃料分配管(図示せず)を介して供給される。燃料分配管には、一般に、図示しない燃料タンク内の燃料を燃料ポンプ(図示せず)により吸い上げ吐出し、その吐出された燃料が導かれている。なお、吐出される燃料は、図示しないプレーシャレギュレータ等の調圧装置によって所定の圧力に調圧されて、燃料分配管へ送られる。なお、エンジンが直噴エンジンの場合には、内燃機関の燃焼室へ供給する燃料の圧力が約2MPa以上とするため、燃料ポンプによって燃料タンクから吸上げられた所定の低圧(例えば0.2MPa)の燃料を、図示しない高圧ポンプで加圧し、この加圧された所定の高圧の燃料(例えば、2〜13MPaの範囲の所定の燃料)が、燃料分配管を介して燃料噴射弁2に供給されている。燃料ポンプから吐出される燃料、高圧ポンプから燃料分配管へ供給された燃料は、図示しないプレーシャレギュレータ等の調圧装置によって所定の圧力に調圧されている。なお、以下、本実施例で説明するエンジンは、ガソリン直噴エンジンとする。
燃料噴射弁2は、図1に示すように、略円筒形状であり、一端から燃料を受け、内部の燃料通路を経由して他端から燃料を噴射する。燃料噴射弁2は、燃料の噴射を遮断および許容する弁部と、弁部を駆動する電磁駆動部とを備えており、一端から燃料通路内に流入した燃料を弁部Bからエンジンの気筒に噴射供給する。
弁部は、図1に示すように、弁ボディ12と、弁部材としてのニードル30とを含んで構成されている。弁ボディ12の内周には、上記内部燃料通路内を流れる燃料が導かれている。弁ボディ12は燃料流れ方向の噴孔21側に向けて縮径する内周面としての円錐面13を有している。円錐面13には、ニードル30が離座および着座可能である。なお、ここで、円錐面13は、ニードル30が離座および着座可能な弁座14を構成する。具体的には、弁座14には、ニードル30の当接部31が離座および着座する。なお、ここで、弁座14と当接部31は、弁部が燃料の噴射を停止するための油密機能の働きをするシート部を構成している。
弁座14の中央側には、弁座14の燃料流れの下流側に向かって、内部燃料通路と連通可能な噴孔21が配置されている。この噴孔21は、要求される燃料の噴霧の形状、方向、数などに応じて、その大きさ、噴孔軸線の方向、噴孔配列等が決定される。また、噴孔の開口面積は、開弁時の流量を規定する。したがって、燃料噴射弁2の燃料噴射量は、噴孔21の開口面積、ニードル30のリフト量HD1と、開弁期間とによって調量されている。ニードル30が弁座14に着座すると噴孔21からの燃料噴射が停止され、ニードル30が弁座14から離座すると噴孔21から燃料が噴射される。
なお、弁ボディ12は、弁ハウジング16の燃料噴射側端部の内壁に溶接等により固定されている。弁ボディ12は段付きの略有底円筒状に形成され、弁ハウジング16の下端部の内周側に挿入されている。弁ボディ12の外周は、段付きを境に下方に向かって縮径している。そして段付きが、弁ハウジング16の内周側に形成された段差と当接することにより、燃圧で弁ボディ12が弁ハウジング16から脱落するのを防止している。
また、一般に、弁ボディの弁座14には、燃料噴射毎に繰り返しニードル30が着座および離座する等のため、比較的強い耐摩耗性が要求される。これに対し、本実施形態では、弁ボディのうち、弁座14側の部分つまり弁ボディ12を耐摩耗性の比較的強い特定の材料で、電磁駆動部(詳しくは筒部材40)に接続する側の弁ハウジング16を、その特定材料以外の、例えば安価な材料を用いることができる。
ニードル30は略軸状に形成され、弁ボディ12内を軸方向に往復移動可能である。ニードル30は、図1および図2に示すように、噴孔21の周縁全周をシートするように配置されている。詳しくは、本実施例では、ニードル30の当接部31と、弁座14を形成する円錐面13するように構成されている。これにより、噴孔21を通じて外部から圧力を受けるニードル30の受圧面積は、噴孔21もしくはニードル30にシートされた噴孔21の周縁の面積に限定することができる。
なお、噴孔21もしくは噴孔21の周縁を全周ニードル30によりシートする方法は、当接部31と弁座14を円錐面状等に形成し互いに面シールするものに限らず、複数個からなる噴孔21全体の周縁をニードル30で全周シートするように構成するもの、あるいは噴孔21全体の周縁をその周縁に沿ってニードル30に形成しされた環状の段差部などいわゆる線シールするものであってもよい。
電磁駆動部は、図1に示すように、筒部材40、可動コア50、固定コア54、およびコイル60とを有する。
筒部材40は、弁ボディ12(詳しくは弁ハウジング16)の反噴孔側の内周壁に挿入され、溶接等により弁ボディ12に固定されている。筒部材40は、噴孔21側から第1磁性筒部42、非磁性筒部44、および第2磁性筒部46により構成されている。非磁性筒部44は第1磁性筒部42と第2磁性筒部46との磁気的短絡を防止する。この磁気的短絡防止により、コイル60の通電により発生する電磁力による磁束を、可動コア50、および固定コア54に効率的に流れるようにしている。
可動コア50は磁性材料で段付きの略円筒状体に形成されており、ニードル30の反噴孔側の端部と溶接等により固定されている。可動コア50はニードル30とともに往復移動する。可動コア50の筒壁を貫通する流出孔52は、可動コア50の筒内外を連通する燃料通路を形成している。
固定コア54は磁性材料で略円筒状に形成されている。固定コア54は筒部材40内に挿入されており、筒部材40と溶接により固定されている。固定コア54は可動コア50に対し反噴孔側に設置され、可動コア50に向きあっている。アジャスティングパイプ56は固定コア54の内周に圧入され、内部に燃料通路を形成している。付勢部材としてのスプリング58は一端部でアジャスティングパイプ56に係止され、他端部で可動コア50に係止されている。アジャスティングパイプ56の圧入量を調整することにより、可動コア50に付勢するスプリング58の荷重が変更される。スプリング58の付勢力により可動コア50およびニードル30は弁座14に向けて付勢されている。言い換えると、スプリング58は可動コア50をニードル30の着座方向に付勢する付勢手段を構成する。
コイル60はスプール(図示せず)等に巻回されている。図示しないターミナルはコネクタ(図示せず)等にインサート成形されており、コイル60と電気的に接続している。コイル60に通電すると、可動コア50と固定コア54との間に磁気吸引力が働き、圧縮スプリング58の付勢力に抗して可動コア50は固定コア54側に吸引される。
上述の構成を有する燃料噴射弁2の作動について以下説明する。車両のエンジンキーをIG位置にして、図示しないイグニッションスイッチがオン(ON)等することで、燃料ポンプが駆動され、燃料タンク内の燃料が燃料ポンプにより吸い上げられる。吸い上げられた燃料は、プレッシャレギュレータにより調圧され、所定の低圧燃料が高圧ポンプへ供給される。高圧ポンプによって低圧燃料は加圧され、加圧された燃料が燃料分配管へ供給される。燃料分配管へ供給された燃料は、プレッシャレギュレータにより所定の燃料に調圧されて、燃料分配管内の各分配口から燃料噴射弁2へ供給される。
燃料噴射弁2の燃料噴射時には、燃料噴射弁2のコイル60に電流が供給され、ニードル30が弁座14から離座しリフトを開始すると、弁部は開弁され燃料の噴射を開始する。燃料は、噴孔21から噴射され噴霧化されてエンジンの燃焼室等へ供給される。一方、燃料噴射停止時には、コイル60への電流供給が停止され、スプリング58によりニードル30のリフトが減少する。そして、ニードル30が弁座14に着座すると、噴射が終了する。コイル60への通電期間を調節することにより、燃料噴射弁2から噴射される燃料(燃料噴霧)の噴射期間つまり燃料噴射量が調節される。
なお、ここで、エンジンの燃焼室に燃料噴射弁2から燃料を噴射する場合、燃料噴射弁は燃焼室内に臨んで配置されるため、特に始動時の燃料圧力が低いときに筒内圧力の上昇時に閉弁時にも係わらず開弁しないようにする必要がある。図18の比較例に示す燃料噴射弁2では、例えばニードル930の弁座側端面は円錐面935と円錐台面とで形成され、円錐面935と円錐台面に接続する稜線は、弁座を形成する円錐面913に着座および離座する当接部を構成している。この当接部は理想的には直径Dsの円の形状となっている(図19参照)。ニードル30が着座し閉弁状態において、ニードル30および弁ボディ912の両円錐面935、913で区画される燃料無駄容積部919と噴孔21は常に連通している。そのため、噴孔21を通じて筒内圧力が、図19に示す比較的広い受圧面積領域(詳しくは円錐面935)に加わってしまうので、筒内圧力によりニードル935が開弁するおそれがある。筒内圧力によりニードル935が開弁しないために、スプリング58の付勢力を増強させる必要があった。なお、円錐面935は直径Ds円状の当接部より下流側の弁座側端面を構成している。
これに対し、本実施形態の燃料噴射弁2では、噴孔21を通じて筒内圧力が作用するニードル30の受圧面領域が噴孔21に限られているので、上記比較例などの従来技術に比べて、ニードル30の筒内圧力を受ける受圧面積を減少させられる。これにより、筒内圧力によるニードル935の開弁防止のために、従来技術のようにスプリング58の付勢力を増強させる必要がない。したがって、筒内圧力の影響を受ける場合があっても、開弁のための電磁駆動部の吸引力の増大を図ることなく、ニードル30の閉弁状態を維持することができる。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)燃料通路を形成する内周面に弁座14を有する弁ボディ12と、弁座14に着座および離座するニードル30と、弁座14の下流側に配置され、燃料通路から供給される燃料を噴射する噴孔21と、可動コア50およびスプリング58を有し磁気吸引力によりニードル30を直接駆動する電磁駆動部とを備え、閉弁時にスプリング58の付勢力でニードル30を弁座14に着座させる燃料噴射弁2において、噴孔21の周縁全周をニードル30でシートするようにしている。これにより、噴孔21を通じて筒内圧力を受けるニードル30の受圧面積を、ニードル30にシートされる噴孔21自身もしくは噴孔21周辺等の噴孔部の面積に限定することができる。
したがって、従来技術に比べて、同一の筒内圧力を燃料噴射弁2の閉弁時に受ける場合において、筒内圧力によるニードルを開弁させる力を減少させることができる。言い換えると、従来技術のように筒内圧力に抗して閉弁時に閉弁を維持するためのスプリング58の付勢力増大、およびその様なスプリング58に抗して開弁時に開弁のための電磁駆動部の吸引力増大をする必要はない。したがって、エンジンの筒内圧力の影響を受ける場合があっても、開弁のための電磁駆動部の吸引力増大を図ることなく、ニードル30の閉弁状態を維持することができる。
(2)また、上記のようにニードル30の筒内圧力を受ける受圧面積を減少させられるので、筒内圧力に抗して閉弁時に閉弁を維持するためのスプリング58の付勢力を低減することが可能である。したがって、電磁駆動部にて一定の磁気吸引力を可動コア50に作用させてニードルをリフトさせる場合で従来技術と比較すると、可動コア50つまりニードル30の開弁応答性の向上が図れる。
(3)さらに、上記のようにスプリング58の付勢力増強が不要であるため、電磁駆動部の吸引力増大を図る必要がないため、電磁駆動部を大型化する必要もなく、電磁駆動部の小型化が可能となる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰返さない。
第2実施形態では、第1の実施形態で説明したニードル30で噴孔21の周縁全周を直接シートする構成に代えて、図3に示すように、噴孔121の上流側で噴孔121と連通する中間噴孔22の周縁全周をニードル30でシートするようにする。図3は、本実施形態に係わる弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。
図3に示すように、中間噴孔22は、弁座の下流側に配置され、当接部31と弁座14の面シールにより中間噴孔22からの燃料流出が停止される。噴孔121は、噴孔121の下流側に配置される弁ハウジング116の先端部に設けられている。中間噴孔22と噴孔121との間には、弁ボディ12と弁ハウジング116で区画される燃料溜り室18が形成されている。これにより、図3に示すように、噴孔121と中間噴孔22は一対で対応する必要はない。噴孔121は、図3に示すように、円錐面13の頂部に対応する弁ハウジング116の底面の頂部にも配置することが可能である。また、噴孔121は、図3に示すように、ニードル30の外径Dnの外側に配置することも可能である。
なお、中間噴孔22の配置位置としては、第1の実施形態と同様に、中間噴孔22の燃料入口側開口部による外径Dsoが、ニードル30の外径Dn以下に制限される。
なお、噴孔121が形成されている弁ハウジング116は、中間噴孔22が形成されている弁ボディ12を覆うように、弁ボディ12の外周に固定されている。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)この様に構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(2)一般に、噴孔は、内燃機関により要求される燃料の噴霧の形状、方向、数などに応じて、その大きさ、噴孔軸線の方向、噴孔配列等が決定されるため、例えば弁部材の外径の範囲側に噴孔を配置したい場合がある。
これに対して本実施形態では、筒内圧力によるニードル30を開弁させる力を減少させる手法として、ニードル30で噴孔121周縁を直接全周シートせず、噴孔121の上流側に配置され噴孔121に連通する中間噴孔22の周縁をニードル30で全周シートするようにする。そのため、中間噴孔22を配置する範囲はニードル30内に制約されるが、噴孔121はニードル30内に制約されることはなく、エンジンの要求に応じて配置等するための噴孔121設計自由度の向上が図れる。
(3)なお、本実施形態では、中間噴孔22と噴孔121とを連通する方法として、中間噴孔22と噴孔121との間に燃料溜め室18を設けているので、中間噴孔22と噴孔121の個数を一致させる必要がなく、中間噴孔22と噴孔121の各個数を変えて配置することが可能である。
(4)さらになお、本実施形態では、中間噴孔および噴孔を複数個有している場合において、噴孔121を、複数の中間噴孔22に囲まれる領域(詳しくは直径Dsoの円)との比較において、前記領域つまり直径Dsoの円の外側に噴孔121を配置するようにすることも可能である。なお詳しくは、噴孔121は、前記領域を噴孔121側の下流へ投影する投影領域に対して、その投影領域の外側に配置することが可能である。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明したニードル30で噴孔21の周縁全周をシートする構成において、図4に示すように、ニードル130の噴孔21と対向する位置に溝部36を追加するように構成する。図4は、本実施形態に係わる弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。図5は、図4中の弁部材の筒内圧等の圧力を受ける受圧面を示す模式図である。
ニードル130には、図4および図5に示すように、噴孔21と対向する位置に略環状(本実施例では円状)の溝部36が設けられている。この円状の溝部36の両周縁には、図4に示すように、外周側当接部32と内周側当接部33が設けられており、噴孔21周縁(詳しくは噴孔21の外周側周縁と内周側周縁)に当接し、円錐面13に油密可能にシートする。
なお、円錐面13と、外周側当接部32および内周側当接部33とは、弁部が燃料の噴射を停止するための油密機能の働きをするシート部を構成している。なお、以下の本実施形態の説明では、外周側当接部32を外周側シート部と呼び、内周側当接部33を内周側シート部と呼ぶ。円錐面13は、外周側シート部32と内周側シート部33が着座および離座する弁座を構成する。外周側シート部32の直径をDso、内周側シート部33の直径をDsiとすると、図5に示すように、ニードル130の筒内圧力を受ける受圧面積は、外周径Dsoおよび内周径Dsiの円周溝状の溝部36の面積に限定されている。
なお、本実施形態では、噴孔21は、溝部36の円周上に沿って複数個(図5では作図の便宜上2個)環状に配置されている。
なお、本実施形態では、図4に示すように、ニードル130の噴孔側端面の形状として、円錐面35と円錐台面とで形成され、円錐台面に溝部36が形成されるように構成されている。ニードル130の噴孔側端面の形状は、円錐面35と円錐台面とで形成されるものに限らず、円錐面で形成されるものであってもよい。ニードル130の噴孔側端面を円錐面35と円錐台面とで形成する場合には、図4に示すように両円錐面35、13とで区画される燃料無駄容積部19が形成されることになるが、燃料無駄容積部19と噴孔21は常に連通していることはなく、ニードル130が閉弁している状態では燃料無駄容積部19と噴孔21の間は分離されている。これにより、ニードル130を弁ボディ12に着座および離座させるために両円錐面35、13の頂部を当接可能に形成する必要がなくなるので、ニードル130および弁ボディ12の加工が容易となり生産性向上が図れる。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)この様に構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、複数個の噴孔21を有する燃料噴射弁2において、第1実施形態では噴孔21もしくは噴孔21の周縁毎にニードル30で全周シートしていたが、第2の実施形態では、複数個の噴孔21もしくは噴孔21の周縁を、全体としてニードル30で全周シートする。
(2)なお、具体的には本実施形態では、噴孔21の周縁を全周ニードル130でシートするニードル130のシート部形状として、噴孔21と対向する位置に形成される溝部36の両周縁を外周側シート部32および内周側シート部33とし、噴孔21の周縁を溝部36の両周縁でいわゆる二重シートすることが可能である。したがって、噴孔21の周縁を二重シートすることでニードル130に筒内圧力が加わる受圧面積を減少させることができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第3の実施形態で説明したニードル130で噴孔21の周縁を全周シートする構成に代えて、図6に示すように、噴孔121の上流側で噴孔121と連通する中間噴孔22の周縁をニードル30で全周シートするようにする。図6は、本実施形態に係わる弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。
図6に示すように、中間噴孔22は、円錐面13の下流側に配置され、外周側シート部32および内周側シート部33と円錐面13のシールにより中間噴孔22からの燃料流出が停止される。噴孔121は、噴孔121の下流側に配置される弁ハウジング116の先端部に設けられている。中間噴孔22と噴孔121との間には、弁ボディ12と弁ハウジング116で区画される燃料溜り室18が形成されている。
これにより、この様に構成しても、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、図7に示すように、ニードル230の弁座114に着座する当接部131より下流側でかつ噴孔21よりも上流側に形成される開口部122を、噴孔21の下流側で生じている筒内圧力により閉塞可能にする閉弁補助部材23、24を設けるように構成している。図7は、本実施形態の燃料噴射弁の構成を示す断面図である。図8は、図7中の弁部材および噴孔周りを示す模式的部分断面図である。図9は、本実施形態の燃料噴射弁における燃料噴射のための開閉過程を示す模式図であって、弁部材の閉弁時における作動状態を示す模式的部分断面図である。なお、図7および図8は燃料噴射のための開閉過程において閉弁状態を示すものである。
図7に示すように、燃料噴射弁2は、複数の噴孔21を有する薄板状部材(以下、噴孔プレートと呼ぶ)20を有している。噴孔プレート20は弁ボディ112の先端側に配置されている。なお詳しくは、噴孔プレート20は、図7および図8に示すように、略平板状に形成され、弁ボディ112の先端部に固定されている。噴孔プレート20の形状は、略平板状のものに限らず、有底筒状に形成されているものであってもよい。
ニードル230は、その当接部131が弁ボディ112の円錐面13(詳しくは弁座114)に着座および離座するように配置されている。
図8に示すように、弁ボディ112は弁ハウジング16の内壁に溶接等により固定されている。弁ボディ12は段付きの略有底円筒状に形成され、弁ハウジング16の下端部側の内周側に挿入されている。弁ボディ112には、当接部131に対応する位置にある弁座14より下流側でかつ噴孔21の上流側に開口部122が形成されている。そして、開口部122の下流側には、燃料流れ方向の噴孔21側に向けて拡径する内周面としての円錐面15が設けられている。なお、この円錐面15は、図7に示すように弁ボディ112と弁ハウジング16の別部材を組付けることで、これら別部材112、16を一体的に形成されるものであっても、弁ボディ112と弁ハウジング16が一体に形成されるものであってもいずれでもよい。なお、以下本実施形態で説明する円錐面15は弁ボディ112と弁ハウジング16が一体に形成されているものとする。
本実施形態では、図8に示すように、開口部122下流側の円錐面15に、閉弁補助部材23、24が着座および離座可能に配置されている。閉弁補助部材23、24は、略半球状の第2の弁部材(以下、シート部材と呼ぶ)23と、シート部材23を円錐面15に付勢する弾性体24を有している。第2の弁部材23は、円錐面15にシートする形状が略球状に限らず、多角形状、楕円形状などいずれの形状であってもよい。弾性体24は、ばね材によるスプリング等の付勢部材、樹脂もしくはゴム材により弾性部材、もしくは形状記憶合金などであってもよく、シート部材23を円錐面15に付勢するものであればいずれのものであってもよい。
図8に示すように、燃料無駄容積部119は、ニードル230の噴孔側端面と噴孔プレート20と弁ボディ112とで区画される空間により形成されており、燃料無駄容積部119は、ニードル側容積部119aと、閉弁補助部材側容積部119bとから構成されている。ニードル側容積部119aは、閉弁状態のニードル230および閉弁補助部材23、24の外周と、円錐面13、15および開口部122の内周とで区画されているものである。また、閉弁補助部材側容積部119bは、閉弁補助部材23、24の外周と、円錐面15および噴孔プレート20の内周とで区画されているものである。
上述の構成を有する燃料噴射弁2の作動について以下説明する。燃料噴射弁2の燃料噴射時には、燃料噴射弁2のコイル60に電流が供給され、ニードル30が弁座14から離座しリフトを開始すると、弁部つまりニードル230は開弁される。ニードル230が開弁されると、燃料圧力により弁閉部材23、24が開弁され、開口部122を通じて燃料がニードル側容積部119a側から閉弁補助部材側容積部119b側へと噴出される(図9参照)。そして、開口部122を通じて燃料が噴出されると、噴孔21から燃料の噴射を開始する。燃料は、噴孔21から噴射され噴霧化されてエンジンの燃焼室等へ供給される。一方、燃料噴射停止時には、コイル60への電流供給が停止され、スプリング58によりニードル30のリフトが減少する。そして、ニードル30が弁座14に着座すると、ニードル側容積部119aへ燃料の供給が停止される。ニードル30が弁座14に着座すると、閉弁補助部材23、24が筒内圧力により円錐面15に着座し、開口部122を閉塞する。その結果、噴孔21からの噴射が終了する。したがって、筒内圧力が噴孔21に加わった状態では、シート部材23により開口部122がシールされているため、噴孔21を通じてニードル230に直接筒内圧等の圧力が加わることはない。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)本実施形態では、ニードル230の弁座114に着座する当接部131より下流側でかつ噴孔21よりも上流側に形成される開口部122を、噴孔21の下流側で生じている筒内圧力により閉塞可能にする閉弁補助部材23、24を設けるように構成している。これにより、
ニードル230の当接部131より下流側でかつ噴孔21よりも上流側に形成される燃料通路中の開口部122を、ニードル230の閉弁時に、噴孔21の下流側の筒内圧力等の圧力を利用し閉弁補助部材23、24によって閉じるようにする。したがって、筒内圧力等のニードル230を開弁させる力を、ニードル230の当接部つまりシート部131側に受けにくい構造とすることが可能である。
(2)本実施形態では、閉弁補助部材23、24にシート部材23を備えられているので、ニードル230の当接部より下流側にある開口部122内の圧力と、筒内圧力との差圧で閉弁する逆止弁構造とすることができる。したがって、筒内圧力等による弁部材を開弁させる力を弁部材のシート部に受けにくい構造とすることができる。
(3)なお、本実施形態では、噴孔21は、弁ボディ112の先端側に配置される、噴孔プレート20に設けられている。これにより、筒内圧力等によるニードル230を開弁させる力を当接部131側に受けにくい構造と、略薄板状で噴孔21を加工し易くする構造とを両立することができる。
(第6、第7、および第8の実施形態)
第6、第7、および第8の実施形態では、第5の実施形態で説明した閉弁補助部材の他の実施例を説明する。
第6の実施形態では、第5の実施形態で説明した閉弁補助部材23、24に代えて、図10に示すように、円錐状の弾性体123とする。図10は、第6の実施形態に係わる弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。図10に示すように、開口部112の下流側の円錐面115は、燃料流れ方向の噴孔21側に向かって縮径している。弾性体123の断面は、燃料流れ方向(図10中の下方向)に向かって縮径するように形成されている。弾性体123は弾性体123自身の弾性変形により円錐面115に当接および離間することで、開口部122を閉塞および開放する。なお、弾性体は、ニードル230閉弁時の筒内圧力により円錐面115に当接し、開口部122を閉塞する。
第7の実施形態では、第5の実施形態で説明した閉弁補助部材23、24に代えて、図11に示すように、円筒状の弾性体223とする。図11は、第7の実施形態に係わる弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。図11に示すように、弾性体223は弾性体223自身の径方向に弾性変形により円錐面115に当接および離間することで、開口部122を閉塞および開放する。
第6および第7の実施形態は、上記構成のようにするいずれの場合であっても、第5の実施形態と同様な効果を得ることができる。さらに、第6および第7の実施形態では、ニードル230の閉弁時に筒内圧力による弾性体の伸縮を利用し、簡素な構成で開口部122を閉じたり開いたりすることができる。
第8の実施形態では、第5の実施形態で説明した閉弁補助部材23、24のシート部材において、半球状のシート部材23に代えて、図12に示すように、多角形状のシート部材123とする。図12は、第8の実施形態に係わる弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。図12に示すように、シート部材123の円錐面115側端面は、円錐面と円錐台面とで形成されている。なお、円錐面と円錐台面に接続する稜線を、円錐面115に着座および離座する当接部122としている(図12参照)。
第8の実施形態では、上記構成のようにしても、第5の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、第3の実施形態で説明したニードル130において、図13に示すように、ニードル330に内外を貫通する燃料孔330aを設ける。図13は、本実施形態に係わる弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。図14は、図13中の弁部材にける筒内圧等の圧力を受ける受圧面を示す模式図である。なお、図15は、燃料圧力とこれを受ける受圧面との関係を表すグラフである。
一般に、燃料噴射弁2に供給する燃料圧力が増加すると、例えば図18の比較例のようにニードル930を閉弁方向に押圧する力が燃料圧力に比例して増加する。そのため、燃料の高圧化に対応して、開弁のために電磁駆動部の吸引力を増加する必要があった。
なお、例えば比較例の直径Dsの円錐面935の面積領域が、燃料圧力のニードル330へ作用する受圧面の面積領域となる。なお、燃料無駄容積部919と噴孔21は常に連通しており、閉弁時に燃料無駄容積部919つまり円錐面935には、燃料圧力が加わらない。
これに対し、本実施形態では、図13に示すように、ニードル330には、円錐面13に向かって開口し、ニードル330の内外を貫通する燃料孔330aが形成されている。燃料孔330aの内径は、内周側シート部33の直径Dsiより小さく形成されている。
なお、この燃料孔330aは、図13に示すニードル330の軸方向に延出するように貫通する貫通孔に限らず、図16の変形例に示すように円錐面935側つまり弁座側に向かって開口し、ニードル330の内外を貫通する連通孔330a、330bであってもよく、ニードル330の内部に弁座側に向かって開口し、ニードル330の内外を貫通する燃料孔が形成されるものであればいずれでもよい。この燃料孔によって内部燃料溜り室219が形成されている。なお、図16に示すように、変形例における連通孔330a、330bは、ニードル330を図中の左右方向に内外に貫通する貫通孔330bとこれに連通する燃料孔330aとで形成されている。
燃料噴射弁2に供給される燃料は、上記内部燃料通路を経由して内部燃料溜り室219へ導入される。そのため、内周側シート部33の直径Dsi内の領域には燃料圧力が満たされている。その結果、燃料圧力がニードル330へ作用する受圧面も、筒内圧力がニードル330へ作用する受圧面と同様に、外周径Dsoおよび内周径Dsiの円周溝状の溝部36の面積に限定することができる。
なお、ここで、燃料圧力による閉弁力Ffは、ニードル330の燃料圧力を受ける受圧面積をAf、燃料圧力をPfとすると、Ff=Af×Pfとなる。一方、ニードル330を開弁するための電磁駆動部の必要吸引力Fは、スプリング58の付勢力である荷重をFs、ニードル330の摺動抵抗等を考慮したいわゆる余裕力(燃料圧力に係わらずほぼ一定の力)をFrとすると、F=Fs+Ff+Frで表される。図15の燃料圧力Pfとジ受圧面積Afのグラフのように、閉弁力Ffをほぼ同一に維持する条件において、ニードル330に中空部を形成することで、受圧面積をAf1からAf2(Af1>Af2)を減らし、ニードル330に作用する燃料圧力を、Pf1からPf2へ増加させられる。これにより、燃料噴射弁2の燃料の高圧化対応が可能となる。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)ニードル330には、円錐面13に向かって開口し、内外を貫通する燃料孔330aを設けている。これにより、ニードル330のうち、円錐面13に向かって開口し、内外を貫通する燃料孔330aによる中空部を形成するので、燃料圧力によるニードル330の閉弁に働く力を減少させられる。したがって、電磁駆動部の開弁に必要な吸引力を低減できる。したがって、燃料噴射弁の燃料の高圧化対応が可能である。
(2)なお、燃料圧力を受けるニードル330の受圧面積を、外周径Dsoおよび内周径Dsiのいわゆる二重シート径にて調整できるので、従来通りの閉弁力を得るように設計することも可能である。
(3)さらになお、本実施形態では、電磁駆動部の吸引力低減が可能であるため、電磁駆動部の体格の小型化が可能である。また、例えば吸引力は可動コア50および固定コア54の磁性材料を変更等することで、計量化を図ることが可能である。
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、第9の実施形態で説明したニードル330で噴孔21の周縁を全周シートする構成に代えて、図17に示すように、噴孔121の上流側で噴孔121と連通する中間噴孔22の周縁をニードル330で全周シートするようにする。図17は、本実施形態に係わる弁部材および噴孔周りを示す部分断面図である。
図17に示すように、中間噴孔22は、円錐面13の下流側に配置され、外周側シート部32および内周側シート部33と円錐面13のシールにより中間噴孔22からの燃料流出が停止される。噴孔121は、噴孔121の下流側に配置される弁ハウジング116の先端部に設けられている。中間噴孔22と噴孔121との間には、弁ボディ12と弁ハウジング116で区画される燃料溜り室18が形成されている。
これにより、この様に構成しても、第9の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(その他の実施形態)
以上説明した本実施形態において、直噴エンジン用の燃料噴射弁2として説明したが、直噴エンジンのように気筒内の燃焼室に燃料を直接噴射供給するものに限らず、吸気管等に噴射することで燃焼室に間接的に噴射供給するものであってもよい。噴孔21に受ける筒内圧力等の圧力に対して、ニードルの閉弁状態を維持したいものに適用して好適である。
なお、以上説明した第2、第4、および第10の実施形態において、ニードル30、130、330で噴孔121周縁を直接全周シートせず、噴孔121の上流側に配置され噴孔121に連通する中間噴孔22の周縁をニードル30、130、330で全周シートするように構成した。そのため、中間噴孔22を配置する範囲はニードル30、130、300内に制約されるが、噴孔121はニードル30、130、330内に制約されることはなく、エンジンの要求に応じて配置等するための噴孔121設計自由度の向上が図れる。
さらになお、以上説明した第2、第4、および第10の実施形態において、噴孔121が形成されている弁ハウジング116は、中間噴孔22が形成されている弁ボディ12を覆うように、弁ボディ12の外周に固定されるように構成したが、噴孔121が形成されている部材は弁ハウジング116に限らず、弁ハウジング116とは別部材の第2の弁ハウジングで構成するものであってもよい。