JP4227275B2 - 高い毒性を有するアミロイドβ蛋白質の調製方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製方法、および該方法で調製された高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質に関する。
【0002】
【従来の技術】
アミロイドβ蛋白質はアミノ酸約40残基の非常に凝集性の高い蛋白質であり、アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)の主要な病理学的変化のひとつである老人斑の主要な構成成分である。また、この蛋白質は、突然変異によって早期発症型アルツハイマー病の原因遺伝子となるアミロイド前駆体蛋白質(APP)からプロテアーゼによるプロセッシングにより産生されることが判明している(Kang,J.et al.,Nature,325,733−736(1987);Goldgaber,D.et al.,Science,235,877−880(1987);Robakis,N.K.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,4190−4194(1987))。
【0003】
このプロセッシングによりアミロイドβ蛋白質は水溶性のペプチドとして細胞外に放出されるが、その状態では神経細胞死誘発活性(以下、本明細書において神経細胞死誘発活性を「毒性」と称することがある。)を発揮せず、自己会合してアミロイドβ線維を形成することにより初めて毒性を獲得することが知られている(Lorezo,A.and Yanker,B.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,12243−12247(1994);以下、自己会合して毒性を示すアミロイドβ蛋白質を「自己会合型アミロイドβ蛋白質」又は「毒性アミロイドβ蛋白質」と呼ぶ場合がある。)。Lorezoらの方法は、アミロイドβ1-40を超純水に700μMになるように溶解し、同量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で塩濃度を調節した後、37℃で5日間インキュベートする工程を含んでいる。アミロイドβ1-42を用いる場合には、超純水に350μMになるように溶解し、37℃で3日間インキュベートする工程を含む。
【0004】
この自己会合型アミロイドβ蛋白質を神経系の培養細胞に高濃度で添加すると細胞を死に至らしめることができることから、アルツハイマー病においては自己会合して毒性を獲得した自己会合型アミロイドβ蛋白質が神経変性を誘発していると考えられている。従って、自己会合型アミロイドβ蛋白質の添加により神経系細胞等に細胞死を誘発する実験系は、アルツハイマー病における生体内での神経細胞死を反映していると考えることができ、神経細胞死の抑制剤のスクリーニング系などに有用である。
【0005】
しかしながら、上記のLozeroらによる細胞死を誘発する系において用いられた自己会合型アミロイドβ蛋白質はその毒性が低く、試験管内で神経細胞死を誘発するために必要な濃度は、アルツハイマー病等の患者の生体内に存在する毒性アミロイドβ蛋白質の1,000倍以上であった。また、上記の方法では毒性を有するアミロイドβ蛋白質含有液が再現性よく調製できず、調製された毒性を有するアミロイドβ蛋白質含有液を保存すると、ある期間を過ぎて毒性が失われるという問題もあった。従って、アルツハイマー病の研究に供するなどの目的のため、アルツハイマー病等の患者の生体内に存在するアミロイドβ蛋白質と同等の高い毒性を有し、かつその毒性が維持される自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製方法の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、アルツハイマー病等の患者の生体内に存在する自己会合型アミロイドβ蛋白質と同等の高い毒性を有し、かつその毒性が維持される自己会合型アミロイドβ蛋白質を提供することにある。また、本発明の別の課題は、上記アミロイドβ蛋白質の調製方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させて一定時間処理することにより、あるいは該水溶液中にアミロイドβ蛋白質の凝集媒体を添加してアミロイドβ蛋白質の自己会合を誘起させることによってアミロイドβ蛋白質の自己会合を再現性よく誘発できること、及びこの処理によって得られる自己会合型アミロイドβ蛋白質が生体内に存在する自己会合型アミロイドβ蛋白質と同等の高い毒性を有しており、かつその毒性が長期にわたって保持されることを見いだした。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させることにより得られる高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質、及びアミロイドβ蛋白質を含む水溶液中にアミロイドβ蛋白質の凝集媒体を添加することにより得られる高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質を提供するものである。この発明の好ましい態様によれば、アルツハイマー病等の患者の生体内に存在する自己会合型アミロイドβ蛋白質と実質的に同等の毒性を有する上記自己会合型アミロイドβ蛋白質;その毒性がアルツハイマー病等の患者の生体内に存在する自己会合型アミロイドβ蛋白質と実質的に同等の濃度で神経系細胞に細胞死を誘発するのに十分な毒性である上記の自己会合型アミロイドβ蛋白質;及び、500nM以下の濃度で神経系細胞に細胞死を誘発する上記自己会合型アミロイドβ蛋白質が提供される。
【0009】
別の観点からは、高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質の製造方法であって、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させる工程を含む方法が提供される。上記工程は、好ましくは、上記水溶液を含む容器を回転させることにより、さらに好ましくは一定速度で回転させることにより行うことができる。また、本発明により、高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質の製造方法であって、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液中にアミロイドβ蛋白質の凝集媒体を添加してアミロイドβ蛋白質の自己会合を誘起する工程を含む方法が提供される。凝集媒体としてはポリエチレングリコールが好ましい。さらに別の観点からは、上記の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液;該含有液を含む試薬;及び、上記の自己化合型アミロイドβ蛋白質を用いて神経系細胞に細胞死を誘発する方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製のための原料として用いられるアミロイドβ蛋白質の種類は特に限定されない。アミロイドβ蛋白質は、約40のアミノ酸残基からなる蛋白質であり、アミロイド前駆体蛋白質(APP)からプロテアーゼによるプロセッシングで産生される。このプロテアーゼの種類やその後の修飾によってさまざまな種類が存在することが知られているが、分泌直後にはC末端のアミノ酸残基の長さの違いによりアミロイドβ40(AβX-40)とアミロイドβ42(AβX-42)が存在する。
【0011】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製には、例えば、分泌直後のアミロイドβ蛋白質の全長の分子種であるアミロイドβ40(Aβ1-40:配列番号1)若しくはアミロイドβ42(Aβ1-42:配列番号2)、又はそれらの変異体、あるいはそれらの誘導体が好ましく用いられる。アミロイドβ蛋白質は、ペプチド合成機などを用いて合成したもの、市販のもの、又は生体内から抽出精製したもの、いかなるものを用いてもよい。アミロイドβ蛋白質の合成、抽出精製は、それ自体公知の通常用いられている方法で行うことができる。合成ペプチド等の精製は高速液体クロマトグラフィにおいて単一のピークが得られる程度行えば十分であるが、精製方法として、例えば、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィ等が用いられる。
【0012】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製は、通常、このようにして得られたアミロイドβ蛋白質を滅菌精製水に溶解し、得られた溶液に対流を惹起して維持することにより行われる。溶解に用いる滅菌精製水の量は、アミロイドβ蛋白質が溶解する範囲であればよいが、好ましくは水溶液中のアミロイドβ蛋白質の濃度が50nM〜2mM、好ましくは1μM〜1mM、さらに好ましくは100〜700μMとなる範囲である。この溶液を適当な塩濃度に調節することが望ましい。塩濃度は、アミロイドβ蛋白質が溶解される範囲であればいかなるものでもよいが、例えば、最終pHが3〜12、好ましくは5〜10で、塩が1M以下であることが好ましい。このような塩濃度に調節する方法として、例えば、PBS(−)をアミロイドβ蛋白質水溶液と等量加える方法が用いられる。溶解の方法はアミロイドβ蛋白質が適当な量の適当な塩濃度の溶液に完全に溶解する方法であれば特に制限はない。
【0013】
上記水溶液中のアミロイドβ蛋白質を自己会合させるために上記水溶液を対流させるが、対流の流速及び維持時間は、水溶液中のアミロイドβ蛋白質が自己会合し、アルツハイマー病の患者の生体内における毒性アミロイドβ蛋白質と同等の濃度で神経細胞死を誘導する活性を有するようになるものであれば特に制限はない。ここで、アミロイドβ蛋白質の自己会合とは、該蛋白質の2分子以上が共有結合以外の分子間相互作用によって結合し、1個の分子のように行動する現象を意味しており、通常は、さらに多数の分子が会合することにより、顆粒状、線維状等の分子が形成され、その結果としてアミロイドβ蛋白質の毒性が獲得される。
【0014】
例えば、アミロイドβ蛋白質水溶液を含む容器を、適当な温度範囲中で一定時間、適当な速度で回転し続ける方法が有効である。また、アミロイドβ蛋白質水溶液が常に対流し、かつ疎水性の界面に接触する状態を維持させてもよい。例えば、超音波分散機やスターラー等で該水溶液を攪拌する方法、またはアミロイドβ蛋白質水溶液を適当な流速で疎水性チューブ内で対流させる方法等も挙げられる。
【0015】
また、アミロイドβ蛋白質水溶液中にアミロイドβ蛋白質の凝集媒体を添加する方法では、凝集媒体としてポリエチレングリコール(PEG:分子量3000〜6000程度のもの)などを添加し、1M以下程度の適当な塩濃度の存在下で静置することによる方法が挙げられる。アミロイドβ蛋白質の自己会合を誘起する凝集媒体としては、一般的に、蛋白質の結晶化を誘起する物質を用いることができる。例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムセチルトリメチルアンモニウム塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどの無機塩類;PEG100、PEG4000、PEG6000、PEG10000などのポリエチレングリコール類;アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ブタノール、1,3−ブチロラクトン、1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、メタノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールなどの有機溶媒を挙げることができる。凝集媒体の添加方法としては、一般的に蛋白質の結晶化に用いられる添加方法を採用することができる。これらの技術については、例えば、「生命科学のための結晶解析入門−タンパク質結晶解析のてびき、平山令明著、丸善株式会社」などに記載されている。
【0016】
対流を維持するにあたり一定温度を維持することが望ましいが、その温度範囲はアミロイドβ蛋白質が変性しない範囲であれば特に制限はない。具体的には4〜50℃、好ましくは4〜40℃、さらに好ましくは4〜37℃の範囲が挙げられる。容器に回転を加え続ける方法としては、アミロイドβ蛋白質の水溶液を含む容器を回転培養機、攪拌機、振とう機等を用いて回転させる方法が用いられるが、この中で回転培養器を用いるのが最も好ましい。回転速度は、通常200rpm以下、好ましくは5〜50rpm、さらに好ましくは20〜40rpmで行われる。また、回転を維持する時間は、水溶液中のアミロイドβ蛋白質が自己会合して十分な毒性を獲得するまで行われるが、具体的には回転の速度等の条件により4時間〜7日程度行われる。
【0017】
アミロイドβ蛋白質水溶液を充填する容器としては、アミロイドβ蛋白質以外の蛋白質の混入が防げるものであればいかなるものでもよいが、一般的には、蛋白質が吸着しない素材の容器が望ましい。具体的には、プラスチック容器や、市販のエッペンドルフチューブ等がさらに望ましい。容量にも特に制限はない。また、他の蛋白質の混入を防ぐために、容器をあらかじめオートクレーブ等を用いて滅菌しておくことは効果的である。容器に充填するアミロイドβ蛋白質水溶液の量は、容器の全容積の30〜90%、さらには50〜80%が望ましい。容器中でアミロイドβ蛋白質水溶液に十分な対流を惹起させ、その対流を一定に維持することが望ましい。
【0018】
このようにして得られた自己会合型アミロイドβ蛋白質は、このままでも神経系細胞に細胞死を誘導することができ、薬理学や生化学の実験などに供することが可能である。もっとも、実験などの使用目的に応じて、さらにアミロイドβ線維を取り除く等の精製を行ってもよい。精製の方法としては、自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を遠心分離してその上清を分取する方法や、例えば0.45μm以上の孔径を有するフィルター(例えば0.65μmのフィルターと30kダルトン以上の分子量の物質をカットするフィルターとの組み合わせなど)で線維を除去する方法、LPFFD(βシート破壊ペプチドiAβ5、ペプチド研究所;アミノ酸配列は一文字標記で示した)やKLVFF(アミノ酸配列は一文字標記で示した)等のβシート破壊ペプチドで線維を分解して取り除く方法、ゲル濾過等なども用いることが可能である。
【0019】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を用いた神経細胞死の誘導は、神経系の細胞等の培養液に本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を添加し、通常の方法に従って培養することにより行うことができる。本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質により誘導される細胞死は、アポトーシス又はネクローシスのいずれでもよい。また、用いられる細胞としては、神経系細胞であれば特に制限はなく、哺乳動物(ヒト、ラット、マウス、サル、ブタ等)由来の神経系細胞や、これらの細胞に分化が可能な細胞等でもよい。また、初代培養細胞又は樹立培養株のいずれでもよい。初代培養細胞としては、上記した動物の海馬、および前脳基底野等から取得したものが好ましく、樹立培養株としては、例えば、PC−12細胞(ATCC CRL−1721)、B103(Schubert,D.et al.,Nature,249(454),224−227(1974))等が好ましい。また上記動物の海馬等の器官をそのまま用いることも可能である。
【0020】
これらの細胞や組織は、通常の培養法により培養することができる。具体的には、神経系細胞の初代培養、および神経系細胞の培養方法としては、Hoshi,M.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,93,2719−2723(1996)、およびSahubert,D.et al.,Nature,249(454),224−227(1974)に記載されている方法等を用いることができ、器官培養は、Gary Banker andKimbery Goslin,Culturing nerve cells,2nd Edition,MIT Press,Cambridge(1998)に記載された方法等を用いることができる。このようにして培養された神経系の細胞、および器官に細胞死を誘導するために添加する本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の量は適宜選択可能であるが、通常、アルツハイマー病等の患者の生体内に存在する毒性アミロイドβ蛋白質と実質的に同等の濃度で細胞死を誘導できる。例えば、初代培養(1.25×106個/ml)あたり10nM以上、400μm海馬スライス/1ml培養液あたり100pM以上などの量で細胞死を誘導できる。もっとも、上記の濃度は例示のためのものであり、この量に限定されることはない。
【0021】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質によって誘導される神経系細胞の細胞死は、通常の場合、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の有効量を添加した後、約6時間程度から起こり、48時間程度の後には顕著な細胞死の様子が観察できる。これらの細胞死を測定する方法としては、通常用いられる細胞死検出法を用いることができる。具体的には、被検体が細胞の場合、MTTアッセイ(Mossman,T.,J.Immunol.Methods,65,55,(1983)、またはトリパンブルーダイエクスクルージョン法(Woo,K.B.,W.K.Funkhouser,C.Sullivan,and O.Alabaster,Cell Tissue Kinet.,13(6),591−604(1980))、プロピディウムイオダイド等による染色法などが用いられ、器官スライス等の場合にはプロピディウムイオダイド等による染色法等が用いられる。
【0022】
神経系細胞または神経系器官の培養液に本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を添加することによりこれらの神経細胞死を誘導する系は、例えば、毒性アミロイドβ蛋白質による神経系細胞の細胞死に対して抑制作用を有する薬剤のスクリーニングに用いることが可能である。このようなスクリーニングは、例えば、神経系細胞または組織培養液に予め被検物質を添加した後、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を添加し、あるいは神経系細胞または組織培養液に本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を添加した後に被検物質を添加して、該神経系細胞や組織の細胞死が被検薬物により抑制されるか否かを検出することにより行うことができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の調製
(1)アミロイドβ(Aβ1-40:配列番号1)樹脂の製造
Fmoc−Val樹脂342mg(アミン含量0.73mmol/g樹脂)をパーキンエルマーアプライドバイオシステムズ社製A433型自動ペプチド合成機にセットし、これにFmoc−Val−OH,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Val−OH,Fmoc−Met−OH,Fmoc−Leu−OH,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Ile−OH,Fmoc−Ile−OH,Fmoc−Ala−OH,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Lys(Boc)−OH,Fmoc−Asn(Trt)−OH,Fmoc−Ser(tBu)−OH,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Val−OH,Fmoc−Asp(OtBu)−OH,Fmoc−Glu(OtBu)−OH,Fmoc−Ala−OH,Fmoc−Phe−OH,Fmoc−Phe−OH,Fmoc−Val−OH,Fmoc−Leu−OH,Fmoc−Lys(Boc)−OH,Fmoc−Gln(Trt)−OH,Fmoc−His(Trt)−OH,Fmoc−His(Trt)−OH,Fmoc−Val−OH,Fmoc−Glu(OtBu)−OH,Fmoc−Tyr(tBu)−OH,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Ser(tBu)−OH,Fmoc−Asp(OtBu)−OH,Fmoc−His(Trt)−OH,Fmoc−Arg(Pmc)−OH,Fmoc−Phe−OH,Fmoc−Glu(OtBu)−OH,Fmoc−Ala−OH,Fmoc−Asp(OtBu)−OHを供給し、HBTU[2−(1H−Benzotriazole−1−yl)−1,1,3,3,−tetramethyluronium hexafluorophosphate]を縮合剤として順次縮合させて上記の側鎖保護アミロイドβ(Aβ1-40)樹脂1.515gを得た。
【0024】
(2)トリフルオロ酢酸処理
上記(1)で得た側鎖保護アミロイドβ(Aβ1-40)樹脂中の304mgを採取し、これにフェノール0.75mlとチオアニソール0.5mlとトリフルオロ酢酸8.25mlとエタンジチオール0.25mlと蒸留水0.5mlを加え、氷冷下5分、続いて室温で1.5時間反応させた。反応終了後、氷冷したジエチルエーテル200mlを加えてペプチドを沈殿させた。全内容物をグラスフィルターで濾取し、冷ジエチルエーテルで洗浄した後、35%のアセトニトリルを含む0.1%トリフルオロ酢酸(約200ml)で抽出処理してH−Asp−Ala−Glu−Phe−Arg−His−Asp−Ser−Gly−Tyr−Glu−Val−His−His−Gln−Lys−Leu−Val−Phe−Phe−Ala−Glu−Asp−Val−Gly−Ser−Asn−Lys−Gly−Ala−Ile−Ile−Gly−Leu−Met−Val−Gly−Gly−Val−Val−OHで表される粗ペプチド191mgを得た。
【0025】
(3)ペプチドの精製
この粗ペプチドを35%のアセトニトリルを含む0.1%トリフルオロ酢酸(40ml)に溶解しODS(オクタデシルシラン)をシリカに結合した逆相系のカラム(内径2cm、長さ25cm)を用いたHPLCにより精製した。溶出は0.1%トリフルオロ酢酸中、アセトニトリル濃度を22%から42%へ直線的に20分間で上昇させることによりおこなった。精製物の収量は35mgであった。本物質の構造はMALDI−TOF質量分析により確認された。測定値[M+H]+4330.99、計算値(C194H295N53O58S1+H)4330.89。
【0026】
(4)自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の調製
上記(3)で精製を行ったアミロイドβ蛋白質0.4μmolを1.5ml容量のエッペンドルフチューブに入れ、これに532μlの超純水と532μlのPBS(SIGMA社製)を順次加え、アミロイドβ蛋白質を完全に溶解させた。このアミロイドβ蛋白質水溶液の入ったエッペンドルフチューブをダックローター(TAITEC社製、ローター:RT50)に取り付け、37℃において35rpmの速度で7日間回転させた。
【0027】
例2:自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の毒性の検定
(1)初代培養細胞の調製
ラット18日胎児(2腹分)の前脳基底野より分散培養によって初代培養細胞を調製した。この初代培養細胞をポリエルリジン(ナカライテスク社製)によりコーティングした24ウェルプラスチック細胞培養プレート中で培養した。コーティングは0.5mgポリエルリジン/1ml 0.15Mホウ酸バッファー(pH8.3)のポリエルリジン溶液に培養プレートを1晩浸漬した後、滅菌精製水で洗浄し、自然乾燥させて行った。初代培養細胞は培養プレート1ウェルの底面積に対して、3×105cells/cm2の密度となるように、5%牛胎児血清(ハイクローン社製)/5%馬血清(ライフテックオリエンタル社製)1mM Pyruvate/50μg/ml Gentamicin(ライフテックオリエンタル社製)/DMEM high glucose培地(ライフテックオリエンタル社製)で調製した。培養は37℃、10%CO2中で4日間行った。
【0028】
(2)自己会合型アミロイドβ蛋白質の添加
上記(1)で得られた初代培養細胞について、培養液をB27(ライフテックオリエンタル社製)、Neurobasal(ライフテックオリエンタル社製)、0.5mM L−Glutamine、50μg/ml Gentamicin(ライフテックオリエンタル社製)培地0.5ml/1ウェルに交換した。培地交換後、37℃、10%CO2中で3日間さらに培養を行った。この培養細胞に対し、例1で得られた自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を最終アミロイドβ蛋白質濃度が1、2、5、10μM/1ウェル、またコントロールとしてPBS/H2Oを等容量2ウェルのそれぞれ細胞外液に添加した。添加後、37℃、10%CO2中で16時間培養を行った。
【0029】
(3)MTT活性測定
上記(2)で自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を添加していない2ウェルのうちの1つにTritonX−100を最終濃度が0.1%となるように添加し、37℃、10%CO2中で10分間培養した。このようにして毒性アミロイドβ蛋白質含有液を添加した4ウェル、コントロールの1ウェル、及びTritonX−100を添加してウェル内の培養細胞を死滅させた1ウェルの計6ウェルについて培地を除去し、250μg MTT(シグマ社製)/PBS50μlを注入した。これらを37℃、10%CO2中で3時間培養した後、20% SDS(ナカライテスク社製)、50% DMF(dimetylformamide)pH3.5/H2Oを50μl添加した。これをさらに37℃、10%CO2中で2時間静置し、細胞を完全に融解させた。この各ウェル中の細胞融解液について570nmの吸光度を測定した。この570nmの吸光度について、TritonX−100を加えて細胞をすべて死滅させたウェルにおける値をバックグラウンドとして他のウェルにおける値から差し引いた値の結果を図1(白丸)に示した。
【0030】
例3:アミロイドβ蛋白質水溶液を回転を加えず調製したアミロイドβ蛋白質含有液の毒性の検定
アミロイドβ蛋白質を可溶化後、回転を加えないで調製したアミロイドβ蛋白質含有液を用いた他は、例2と同様の実験を行った。結果を図1(黒四角)に示した。例2で得られた結果との比較から、アミロイドβ蛋白質を可溶化後、回転をさせて自己会合型アミロイドβ蛋白質を調製した場合にのみ、神経系細胞に細胞死を誘導する活性を有する毒性アミロイドβ蛋白質を調製できることが明らかになった。
【0031】
例4:自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液が有する毒性の持続性の検定
上記例1及び3で調製した自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液について、調製後それぞれ4℃に7〜14日間静置した。これらのアミロイドβ蛋白質含有液について、上記例2と同様の方法で毒性を検定した。ラット18日胎児の前脳基底野より分散培養によって調製した初代培養細胞の各細胞外液に対し、最終濃度5μMとなるようにアミロイドβ蛋白質含有液を添加した。添加後、37℃、10%CO2中で16時間培養を行った後、上記例2(3)に記載のとおりにMTT活性を測定した。この結果を図2に示した。以上の結果より、アミロイドβ蛋白質を可溶化後、容器を回転させて自己会合型アミロイドβ蛋白質を調製した場合にのみ、神経系細胞に細胞死を誘導する活性が14日保持されることが明らかになった。
【0032】
【発明の効果】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質は、アルツハイマー病患者の生体内に存在する毒性アミロイドβ蛋白質と同等の強い毒性を有しており、かつその毒性が保持される特性を有する。従って、神経系細胞又は神経系器官の培養液に本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を添加することにより、生体内で惹起されている神経細胞死をインビトロで忠実に再現することができる。また、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を用いることにより、神経系細胞の細胞死を抑制する作用を有する物質のスクリーニングを行うことができる。
【0033】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法で調製した自己会合型アミロイドβ蛋白質が神経系細胞に細胞死を誘導する高い毒性を有することを示した図である。図中、白丸は本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の結果を示し、黒四画はアミロイドβ蛋白質の溶液に回転を加えずに調製したアミロイドβ蛋白質溶液についての結果を示す。
【図2】 本発明の方法で調製した自己会合型アミロイドβ蛋白質を保存したときの毒性の変化を示した図である。
Claims (5)
- 自己会合型アミロイドβ蛋白質の製造方法であって、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させる工程を含む方法。
- 上記水溶液を含む容器を回転させる工程を含む請求項1に記載の方法。
- 前記工程が回転培養器を用いて行われる請求項2に記載の方法。
- 回転が5〜50rpmで4時間〜7日間行われる請求項2又は3に記載の方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法により得られた自己会合型アミロイドβ蛋白質を用意する工程および得られた自己会合型アミロイドβ蛋白質をインビトロで神経系細胞に添加する工程を含む神経系細胞の細胞死を誘発する方法。
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