JP4216654B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用シートに関し、さらに詳しくは、電飾看板等の、透過光で鑑賞される用途に適するインクジェット記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータ利用技術の普及により、コンピュータにより作成した資料をプリンターなどを用いてプリントアウトすることが頻繁に行われるようになってきた。その際使用されるプリンターとしては、ドットインパクトプリンター、レーザープリンター、サーマルプリンター、インクジェットプリンターなどが挙げられるが、プリントアウト時の機械的騒音がほとんどなく、かつプリントアウトに伴うランニングコストの低さから、インクジェットプリンターの利用が拡大されている。
【0003】
透光性を有する基材にインク受理層を設けてなるインクジェット記録用シートの用途の1つに、電飾看板等の、透過光で画像を観察する用途がある。この場合、透過光による画像の濃度(透過濃度と称することがある)が高いことが求められる。
透過濃度は、インクの噴射量を多くすることによって向上させることができるが、その場合、インクジェット記録用シートにはより高いインク吸収性が求められる。インク吸収性を向上させる方法としては、インク受理層中の結着剤に対する填料の量比を大きくする必要があるが、その結果として、インク受理層の強度が低下するという問題が生じる。
インク吸収性とインク受理層の強度をバランスよく満足させる技術としては、結着剤として、特性が異なる2種類のポリビニルアルコールを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、結着剤として特性が異なる2種類のポリビニルアルコールを適宜用いると、インク吸収性とインク受理層の強度の両立がある程度可能であるが、インク受理層の強度の点では、いまだ不充分である。
【0004】
さらに、電飾看板等の透過光で画像を観察する用途においては、画像の透過濃度に優れることが求められる。電飾の効果を発揮する為には、インクジェット記録用シートはある程度の透光性を有することが必要である。透光性を向上させると画像の透過濃度は低下しやすいが、美観を損なわないためには画像の透過濃度の維持も重要である。
また、電飾看板等は、日中は背後の照明を消して通常の看板と同様に反射光で観察される用途も多く、画像の反射濃度の向上も求められる。
すなわち、上記用途に用いられるインクジェット記録用シートに求められる透過濃度、インク吸収性、インク受理層の強度及び画像の反射濃度等の要求性能を高度にバランスよく満たすものは、これまでに存在していない。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−129112(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透過光で鑑賞される用途に適するインクジェット記録用シートのインク受理層の強度、インク吸収性、画像の透過濃度及び画像の反射濃度等の諸特性に優れるインクジェット記録用シートを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、インク受理層に特定のアクリル系添加剤及び特性の異なる二種類のポリビニルアルコールを含有させることで、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
<1>透光性基材とインク受理層を有し、かつ前記インク受理層が、(a)アクリルアミドとジアリルアミンとの共重合物を1〜10質量%、(b)(イ)ケン化度85〜90モル%のポリビニルアルコールと(ロ)ケン化度95〜100モル%のポリビニルアルコールとをそれぞれ5〜15質量%、及び(c)填料を55〜70質量%含むことを特徴とするインクジェット記録用シート、
<2> (b)(イ)成分のケン化度85〜90モル%のポリビニルアルコールと(ロ)成分のケン化度95〜100モル%のポリビニルアルコールとの質量比が、 3:1 〜 1:3 である前記<1>に記載のインクジェット記録用シート、
<3> (b)成分であるポリビニルアルコールの重合度が2500〜4000である前記<1>または<2>に記載のインクジェット記録用シート、
<4> (c)成分である填料の粒度分布の標準偏差が0.2以下である前記<1>または<2>に記載のインクジェット記録用シート、を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録用シートは、基材の少なくとも一方の面に、インク受理層を有するものである。
本発明において、基材は、透光性を有するものが使用されるが強度の点からプラスチックフィルムが好ましい。透光性は、一般的に透明プラスチックフィルムとして販売されているものと同程度のものが好ましい。しかし、用途及びインク受理層の透光性の調整により、それよりも透光性が小さいものも使用可能である。
プラスチックの素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等の一般的な熱可塑性樹脂のフィルム等から選択することが可能である。
また、基材として、本発明のインクジェット記録用シートに適する透光性を有する物であれば、プラスチック中に炭酸カルシウム等の無機粉末を内添させたもの、有機ピグメントを内添させた物、生分解性プラスチック及び合成紙等から選択することが可能である。
本発明の特に好ましいプラスチックフィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムが適用される。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、強度、剛性、加工適性、耐熱性等に優れ、例えば、電飾看板などは、光源の熱により耐熱性を要求される場合が多いが、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることで上記要求性能を満足することができる。
【0009】
同様に、基材として、本発明のインクジェット記録用シートに適する透光性を有する物であれば、発泡プラスチックも使用可能である。
ここで、発泡プラスチックフィルムとは、フィルムの表面や内部に形成させる亀裂や欠所、或いは、細かな気泡や空洞などを有するプラスチックフィルムをいうが、これらの気泡や空洞などは、炭酸カルシウム等の無機粉末を含有したフィルムを延伸して無機粉末の周囲に発生させたり、発泡剤を含有させたフィルムにおいて発泡剤を発泡させたりして形成したものなど様々なものがある。
本発明においては、亀裂や気泡の大きさや形成方法或いは気泡や空洞の生成形態は問わない。また、ここでいう発泡プラスチックフィルムには、ミクロボイドフィルムと称されるものも含まれる。
【0010】
また、プラスチックフィルムから成る基材は、単層構造でも多層構造でもよく、多層構造を形成する方法としては、例えば、接着剤を介して層同士を貼り合せる方法、複数の押し出し機から複数の原料を押し出し合流させて製膜するいわゆる共押出方法、フィルムの上に押出機から直接フィルムを押し出しながら貼り合わせて積層するいわゆる押し出しラミネート方法など、公知の方法の何れで形成したものも用いることができる。
【0011】
さらに、インク受理層等との密着性や濡れ性を向上させるなどの目的で、所望により、基材の片面または両面に、酸化法や凹凸法などにより表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、熱風処理、などが挙げられ、また、凹凸法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果および操作性などの面から好ましく用いられる。また、基材表面に易接着処理を施すこともできる。
【0012】
本発明において、前記透光性基材の少なくとも一方の面に設けられるインク受理層は、添加剤として(a)アクリルアミドとジアリルアミンとの共重合物、結着剤として(b)(イ)ケン化度85〜90モル%のポリビニルアルコールと(ロ)ケン化度95〜100モル%のポリビニルアルコールとの組み合わせ及び
(c)填料等を含有する層である。
【0013】
本発明においてインク受理層に含有される添加剤は、(a)成分であるカチオン性樹脂であるアクリルアミドとジアリルアミンとの共重合物が必須成分として用いられが、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤を混合して用いることができる。
使用できる添加剤としては、アクリルアミドとジアリルアミンとの共重合物以外のカチオン性樹脂、水溶性アルミニウム塩、水和アルミニウム酸化物等が挙げられる。
かかるカチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアミン、モノアリルアミン塩酸塩の重合体、ジアリルアミン塩酸塩の重合体、モノアリルアミン塩酸塩−ジアリルアミン塩酸塩の共重合体、(メタ)アクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩の重合体、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミド縮合物、2級アミンとエピハロヒドリン・の付加重合物、ポリエポキシアミン、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミン塩酸塩、アリルアミン−ジアリルアミン共重合体、エピクロルヒドリンポリアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ジシアンジアミドポリエチレンアミンおよびポリジメチルアミンアンモニウムエピクロルヒドリンなどの化合物を挙げることができる。これらのカチオン性樹脂は、インク中の色材等の成分を定着させるために好ましい。
水溶性アルミニウム塩としては、塩基性乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウムが挙げられる。画像濃度の面で塩基性乳酸アルミニウムが特に好ましい。また、水和アルミニウム酸化物は、塗工液の安定性やインク受理層の強度を向上させることができる。
インク受理層の(a)成分であるアクリルアミドとジアリルアミンとの共重合物の含有量は、インク受理層全固形分含有量に対して、1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは、2〜6質量%である。(a)成分の含有量が前記範囲内にあることで、インク受理層の強度が増し、ひび割れなどの無い安定した形状の塗工層が得られる。
【0014】
本発明においてインク受理層に含有される結着剤は、(b)成分である(イ)ケン化度85〜90モル%のポリビニルアルコールと(ロ)ケン化度95〜100モル%のポリビニルアルコールとを組み合わせたものが必須成分として用いられる。
ポリビニルアルコールは、一般に、ポリ酢酸ビニルを加水分解(ケン化)して得られるポリマーである。本発明においては、(イ)ケン化度が85〜90モル%の範囲である部分ケン化ポリビニルアルコール及び、(ロ)ケン化度が95〜100モル%の範囲であるポリビニルアルコールを併用して使用する。(イ)成分のポリビニルアルコールの好ましいケン化度の範囲は87〜89モル%である。また、(ロ)成分のポリビニルアルコールは、ケン化度が95モル%を越えてケン化されており、そのケン化度は、通常、97〜100モル%であり、ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニル基の殆ど全てがケン化されている。このポリビニルアルコールの好ましいケン化度の範囲は97〜99モル%の範囲である。
また、(イ)成分の部分ケン化ポリビニルアルコールと(ロ)成分のポリビニルアルコールの質量比は、3:1〜1:3が好ましく、さらに好ましくは2:1〜1:2の範囲である。
さらに、(イ)及び(ロ)成分の二種類のポリビニルアルコールの重合度は、いずれも、2500〜4000のものが好ましく、より好ましい範囲は3000〜3500である。二種類のポリビニルアルコールの重合度の範囲を上記範囲内にすることでインク吸収性とインク受理層の強度を向上させるので好適である。さらに、(c)填料としてシリカを用いる場合は、(イ)成分と(ロ)成分のいずれかまたは両方がシラノール変性ポリビニルアルコールであると、インク受理層の強度がより向上するので好ましい。
【0015】
結着剤は、ポリビニルアルコールのみを用いればよいが、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、他の結着剤を混合して用いても良い。その場合、使用できる結着剤としては、例えば、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、バーサチック酸ビニル樹脂、これらの共重合物、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、などが挙げられる。
これらは単独、又は混合して使用できる。
インク受理層の(b)(イ)ケン化度85〜90モル%のポリビニルアルコールと(ロ)ケン化度95〜100モル%のポリビニルアルコールの含有量は、インク受理層全固形分含有量に対して、それぞれ5〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは、7〜12質量%である。(イ)成分の含有量が、5質量%未満だとインク吸収性が低下することがあり、15質量%を超えると耐水性が低下することがある。一方(ロ)成分の含有量が5質量%未満だと耐水性が低下することがあり、15質量%を超えるとインク吸収性が低下することがある。すなわち、(イ)成分と(ロ)成分では相反する効果を示しており、両者を併用し、上記範囲内で用いることによりインク吸収性、及び耐水生の優れたインク受理層を得ることができる。
【0016】
本発明において、インク受理層に(c)成分である填料が必須成分として用いられる。填料としては、従来インク受理層に填料として使用される公知の無機又は有機の物質の中から、任意の物を適宜選択して用いることができるが、レーザー解析法により測定した粒度分布の標準偏差が0.2以下である填料を用いることが好ましい。より好ましいのは、0.17以下の範囲のものである。
填料として使用できる物質としては、有機、無機の制限はなく、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、けいそう土、水酸化アルミニウム、ポリスチレン、ポリメタクリレート、酸化チタン、焼成カオリン、含水マグネシウムシリケート
などが挙げられる。これらは単独、又は混合して使用することができる。
中でも、インクの吸収スピード及びポリビニルアルコールとの併用でインク受理層の強度を上げるシリカが、好ましい。シリカとしては湿式法、非晶質のシリカが好ましく、最も好ましいのは、粒度分布における標準偏差が0.2以下のシリカである。より粒子径が整うことでインクの浸透がスムーズとなり、結果として高い透過濃度が得られるものと推測される。
インク受理層の(c)成分である填料の含有量は、インク受理層全固形分含有量に対して、55〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは、60〜65質量%である。
(c)成分の含有量が前記範囲内にあることで、インクの吸収性が高く、強度の高いインク受理層を得ることができる。
さらに、インク受理層には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、防腐剤、顔料分散剤、増粘剤などの各種添加剤を含有させることができる。
【0017】
インク受理層の厚さ(乾燥後)は、15〜30μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜25μmの範囲である。この範囲より薄いと、インク吸収容量が不足して、にじみが発生し易くなり、逆に、この範囲より厚いと、塗工層強度が低下することがある。
【0018】
本発明の透光性基材とインク受理層を有するインクジェット記録用シートは、基材の少なくとも一方の面にインク受理層を有するものであり、インク受理層は基材の片面に設けてもよいし、カール防止等の目的で両面に設けてもよい。また本発明に用いられるインク受理層は、ひび割れ防止の目的等により、基材の1つの面に二層以上設けてもよい。
さらに、インク受理層以外の層も設けてもよい。例えば、インク受理層と基材の中間に、密着力を向上させる目的でアンカーコート層を設けてもよい。また、隠蔽性を向上させる目的で、適当な不透明度を有する層を設けてもよく、紫外線吸収層を設けてもよい。また、カール防止のための層を設けてもよい。
また、本発明のインクジェット記録用シートは、印画した面から鑑賞するフロントタイプのインクジェット記録用シートとして用いることができるが、インク受理層の成分の調整により、透光性基材側から鑑賞するバックプリントタイプ用のものを製造することも可能である。
【0019】
前記、インク受理層と基材との中間に設けて密着を向上させるアンカーコート層は、結着剤を主成分として形成することができるが、さらにブロッキング防止等の目的で、填料をも含有させてよい。
本発明のインクジェット記録用シートは、インク受理層の強度に優れるという特徴を持つ。従って、インク受理層及び基材との密着性に優れるアンカーコート層を設けるとによって、結果的に、剥離強度に優れる。ここで言う剥離強度とは、インクジェット記録用シートのインク受理層にラミネートフィルム等を貼着して積層した後、ラミネートフィルムを引き剥がそうとしたときに層の破壊も界面からの剥離も生じないで耐える力のことである。また、透過光で鑑賞する用途に用いるために、アンカーコート層の不透明度が大き過ぎないことも好ましい。これらの点から、好適なアンカーコート層の例を挙げると、例えば、アンカーコート層の全固形分質量に対して、炭酸カルシウムを20〜77質量%、アクリル系樹脂を20〜60質量%、基材との溶解度パラメーターの差が0.5以下である樹脂を3〜20質量%含有する構成のものが好ましい。
アンカーコート層の厚み(乾燥後)は、3〜15μm、特に7〜10μmであることが好ましい。このアンカーコート層の厚みはラミネート剥離強度と密接な関係があり、アンカーコート層が薄くとも、厚くともラミネート剥離強度は弱くなる。
【0020】
かかる本発明のインクジェット記録用シートのインク受理層は、次のようにして形成することができる。
インク受理層、アンカーコート層などは、必要な成分を分散させたり、溶解させた塗工液を塗工して乾燥させることなどによって形成することができ、塗工は、リバースロールコート、エアナイフコート、グラビアコート、ブレードコート等の従来公知の種々の方法を用いることが可能である
【0021】
本発明に対しては、色材として顔料を用いた顔料インクも、染料を用いた染料インクも、何れも使用可能であるが、特に顔料インクを使用した場合に優れた効果を発揮することができる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、印画方法及び各種の性能評価の方法は、次の如くである。
(1)印画
プリンターとしてヒューレットパッカード社製の顔料タイプのインクジェットプリンター(機種名DJ5000CP)及びセイコーエプソン社製の顔料タイプのインクジェットプリンター(機種名MC9000)を使用した。又インクについては、それぞれ純正の顔料タイプのインクを使用した。
(2)インク受理層の強度1
25mm幅の試験被着体にラミネートフィルム[桜井(株)製PETラミネートフィルム「G03EV50C」]をラミネーターで貼り付け、23℃50%RH雰囲気下で24時間放置後、東洋精機(株)製万能試験機にて180°方向に剥がした際のJIS K 6854による剥離強度を測定した。好ましい剥離強度としては10N/25mm以上である。
(3)インク受理層の強度2
インク受理層上にセロハンテープ(ニチバン社製「CT405A−18」、長さ10cm)を2kgの圧着ロール3往復で貼り付け、45°の角度で逆行する向きに剥離した時の剥がれ具合を下記の基準で評価した。
○……セロハンテープに付着したインク受理層の面積が20%以下
Δ……セロハンテープに付着したインク受理層の面積が20%超50%以下
×……セロハンテープに付着したインク受理層の面積が50%超
(4)インク受理層の強度3
インク受理層にカッターで十字形の切れ目を入れ、セロハンテープを貼り、指で5回擦りつけ、剥がしたときのインク受理層の剥がれを、JIS K 5400に準じて目視で評価した。
(5)印画部の強度
ベタ印画後、東洋精機製作所社製の摩耗試験機(製品名:ロータリーアブレージョンテスタ 型式:T)を用い、同機に印画物と白色の紙をセットし、印画部を白色の紙に擦りつけ、インクが白色の紙に転写した量を目視で判定した。
○・・・転写が比較的少ない
×・・・転写が比較的多い
(6)インク吸収性
使用した色:シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック
印画した画像:階調パターン
印画後5分間放置した後に、印画部にPPC用紙を当て、その上で幅4cm、質量2kgのローラを2往復させて圧力を加え、画像の転写の度合いを目視で観察した。
◎・・・転写なし
○・・・転写が若干発生したが実用上支障無し
×・・・転写が発生し、実用上支障有り
(7)不透明度
インクジェット記録用シートの不透明度を、JIS P 8138によって測定した。好ましい不透明度の範囲は60〜80%である。
(8)印画濃度
使用した色
反射濃度:シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック
透過濃度:上記の色の混色による、レッド、グリーン、ブルー
印画した画像
反射濃度:単色ベタ印画、インク噴射量各100%
透過濃度:単色ベタ印画、インク噴射量各200%
透過濃度はマクベス濃度計TD−903、反射濃度はマクベス濃度計RD−918を用いて測定した。
数値の大きい方が印画濃度が優れていることを示す。
【0023】
実施例1
基材として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績社製、商品名:[コスモシャインA−8300、SP値10.5]を用いた。
アンカーコート層用塗工液として、次の成分の均一混合物を用いた。
(1)炭酸カルシウム:〔白石中央研究所社製、商品名:カルライト−SA、固形分濃度100質量%〕33質量部
(2)アクリル系樹脂:(スチレン−アクリル共重合体)〔BASFディスパージョン社製、商品名:アクロナールYJ6221D、固形分濃度49質量%、SP値15〜17〕45質量部
(3)ポリエステル:〔東洋紡績社製、商品名:バイロナールMD1200、固形分濃度35質量%、SP値10.35〕10質量部
【0024】
インク受理層用塗工液として、次の成分の均一混合液を用いた。
(1)填料
(c)成分 シリカ:〔富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア430、固形分濃度100質量%、粒度分布の標準偏差0.163〕22.40質量部
(2)結着剤
(b)成分(イ) ポリビニルアルコール:〔クラレ社製、商品名:クラレポバールPVA−235、固形分濃度100質量%、ケン化度86.5〜89.5モル%、重合度3500〕3.92質量部
(b)成分(ロ) シラノール変性ポリビニルアルコール:[クラレ社製、商品名:クラレRポリマーR−1130、固形分濃度100質量%、ケン化度98.0〜99.0モル%、重合度3000]3.92質量部
(3)添加剤
(a)成分 アクリルアミドとジアリルアミンの共重合物:〔住友化学工業社製、商品名:スミレーズレジン1001(Sumirez Resin 1001)、固形分濃度30質量%、アクリルアミド・ジアリルアミン塩酸塩共重合物〕5.0質量部
*特殊変性ポリアミン樹脂:〔昭和高分子社製、商品名:ポリフィックス700、固形分濃度60質量%、〕1.78質量部
*消泡剤:〔サンノプコ社製、商品名:SNデフォーマー480、固形分濃度100質量%〕0.22質量部
*水和アルミニウム酸化物:〔日産化学工業社製、商品名:アルミナゾル200、固形分濃度10質量%〕15.66質量部
*塩基性乳酸アルミニウム:〔多木化学社製、商品名:タキセラムM−160L、固形分濃度25質量%〕8.20質量部
(d)水 138.71質量部
基材の一方の面に、アンカーコート層用塗工液を乾燥後の厚みが8μmになるように塗工、乾燥処理した後、更にこのアンカーコート層上にインク受理層用塗工液を乾燥後の厚みが23μmになるように塗工し、乾燥処理することにより、インク受理層を設けインクジェット記録用シートを作製した。評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0025】
比較例1
実施例1におけるインク受理層用塗工液から、アクリルアミドとジアリルアミンの共重合物(スミレーズレジン1001)を除いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、インクジェット記録用シートを作製した。評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0026】
比較例2
実施例1におけるインク受理層用塗工液の、アクリルアミドとジアリルアミンの共重合物(スミレーズレジン1001)を、尿素・グリオキザール・アクリルアミド重縮合物〔住友化学工業社製、商品名:スミレーズレジン5004、固形分濃度45質量%〕3.33質量部に変えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、インクジェット記録用シートを作製した。評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0027】
比較例3
実施例1におけるインク受理層用塗工液の、アクリルアミドとジアリルアミンの共重合物(スミレーズレジン1001)を、ポリアミドポリ尿素樹脂〔住友化学工業社製、商品名:スミレーズレジン636、固形分濃度50質量%〕5.0質量部に変えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、インクジェット記録用シートを作製した。評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0028】
比較例4
実施例1におけるインク受理層用塗工液の、アクリルアミドとジアリルアミンの共重合物(スミレーズレジン1001)を、グリオキザール系樹脂水溶液〔住友化学工業社製、商品名:スミテックスレジンNS−11、固形分濃度40%〕3.75質量部に変えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、インクジェット記録用シートを作製した。評価結果を第1表及び第2表に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
第1表の結果から、実施例1は、インク受理層の強度3種の評価結果及び吸水性に優れていることがわかる。例えば、インク受理層の強度1においては、比較例1は剥離時にインク受理層が破壊された。実施例1はインク受理層は破壊されず、ラミネートフィルムとインク受理層の界面で剥がれた。
また、実施例1において、印画濃度は、反射濃度、透過濃度共に評価した色全てについて高度なレベルでバランスしていることがわかる(第2表)。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、インク受理層にアクリルアミドとジアリルアミンの共重合物及びケン化度の異なる二種のポリビニルアルコールを含有させることで、インク受理層の強度、インク吸収性、及び画像濃度(反射濃度、透過濃度)に優れ、特に、透過光で鑑賞される用途に適したインクジェット記録用シートを提供することができる。
Claims (4)
- 透光性基材とインク受理層を有し、かつ前記インク受理層が、(a)アクリルアミドとジアリルアミンとの共重合物を1〜10質量%、(b)(イ)ケン化度85〜90モル%のポリビニルアルコールと(ロ)ケン化度95〜100モル%のポリビニルアルコールとをそれぞれ5〜15質量%、及び(c)填料を55〜70質量%含むことを特徴とするインクジェット記録用シート。
- (b)(イ)成分のケン化度85〜90モル%のポリビニルアルコールと(ロ)成分のケン化度95〜100モル%のポリビニルアルコールとの質量比が、 3:1 〜 1:3 である請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- (b)成分であるポリビニルアルコールの重合度が2500〜4000である請求項1または2に記載のインクジェット記録用シート。
- (c)成分である填料の粒度分布の標準偏差が0.2以下である請求項1または2に記載のインクジェット記録用シート。
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