JP4207485B2 - 棒状繊維成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、棒状繊維成形体に関する。更に詳しくは掃除用棒、インクタンク用詰物、油吸着材、フィルター等に好適に使用することのできる棒状繊維成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から棒状の繊維成形体はマジックペンのインクタンク用詰物やタバコ用のフィルター等に使用されている。このような棒状の繊維成形体を製造する方法としては、繊維を熱接着して棒状繊維成形体とする方法が知られている。例えば特公昭53−47730号公報には、ポリエチレン成分とポリプロピレン成分とからなるポリオレフィン系複合繊維の繊維束を加熱処理し、ポリエチレン成分により熱融着させて繊維束の外周面を固着すると共に、繊維束内部の熱融着の度合いを少なくしたインクタンク用詰物が開示されている。また特公昭55−40231号公報には、融点の異なる2種類以上の成分を複合紡糸し、これを前記両成分の融点間の温度で熱処理したタバコフィルターが開示されている。更に特開2001−214388公報には、芯鞘比率が50/50〜90/10wt%の複合繊維トウを収束した後、芯鞘両成分の融点間の温度で加熱処理した成形棒の製造法が開示されている。
【0003】
また、特許第3227388号公報には、直方体以外の形状を有する繊維塊の表面を熱処理したインクジェット用インクタンクが開示され、特開平11−192246号公報には、歯牙の平滑面と隣接面に付着したヤニやステイン、歯垢等を除去する歯牙清掃具が開示されている。
【0004】
しかしこれらの棒状繊維成形体を構成する繊維は、比較的太い繊度であり、タバコフィルター等の比較的高い通気性が求められる用途では好ましく用いられるものの、ワイピング用途では、汚れの掻き取り効果が弱く、またインクの保液性を高める上でも繊維表面積は多いことが好ましく、これまで満足できる性能を有する棒状繊維成形体は得られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、汚れ等の払拭性の他、吸水性、吸油性に優れ、掃除用棒、インクタンク用詰物に好適に使用できる、形成安定性に優れた棒状繊維成形体を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、熱可塑性樹脂からなる分割型複合繊維を含む繊維の接点の一部が融着または溶着した棒状繊維成形体であって、該分割型複合繊維の一部分が分割し、該棒状繊維成形体中に未分割状態の分割型複合繊維と分割細繊化した繊維とが含まれており、未分割状態の分割型複合繊維の繊度は0.5〜20dtexであり、分割細繊化した繊維の繊度は0.5dtex未満である棒状繊維成形体とすることにより、前記課題を解決できることを知り、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の構成からなる。
(1)熱可塑性樹脂からなる分割型複合繊維を含む繊維の接点の一部が融着または溶着した棒状繊維成形体であって、棒状繊維成形体の長軸方向と、該棒状繊維成形体を構成する繊維の繊維軸方向との配向度が36度以下であり、該分割型複合繊維の一部分が分割し、該棒状繊維成形体中に未分割状態の分割型複合繊維と分割細繊化した繊維とが含まれており、未分割状態の分割型複合繊維の繊度は0.5〜20dtexであり、分割細繊化した繊維の繊度は0.5dtex未満であることを特徴とする棒状繊維成形体。
【0008】
削除
【0009】
(2)棒状繊維成形体が、45〜95%の空隙率である前記(1)項記載の棒状繊維成形体。
【0010】
(3)棒状繊維成形体に機能剤が付着または包含されていることを特徴とする前記(1)〜(2)のいずれか1項に記載の棒状繊維成形体。
【0011】
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の棒状繊維成形体を用いた掃除用棒。
【0012】
(5)前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の棒状繊維成形体を用いたインクタンク用詰物。
【0013】
(6)前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の棒状繊維成形体を用いた油吸着材。
【0014】
(7)前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の棒状繊維成形体を用いたフィルター。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の棒状繊維成形体は、熱可塑性樹脂からなる分割型複合繊維を含む繊維の接点の一部が融着または溶着した繊維集合体からなる棒状繊維成形体である。この棒状繊維成形体中には、分割型複合繊維の一部分が分割し、未分割状態の分割型複合繊維と分割細繊化した繊維とが含まれており、未分割状態の分割型複合繊維の繊度は0.5〜20dtexであり、分割細繊化した繊維の繊度は0.5dtex未満である。
【0016】
本発明の棒状繊維成形体に用いる繊維を形成する熱可塑性樹脂は、溶融紡糸工程で繊維成形性を有するものであれば特に限定されない。例えばポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、プロピレンとエチレンの共重合体、プロピレンと他のαオレフィンとの2〜3元共重合体等をはじめとするチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒を用いて重合されたポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酸成分をテレフタル酸以外にイソフタル酸を併用して共重合した低融点ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド系樹脂、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等のエラストマー系樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートアジペート等の生分解性樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリケトン等の樹脂が挙げられる。また前記以外の熱可塑性樹脂としては、例えばビニル系重合体が挙げられ、具体的には、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン無水マレイン酸グラフト共重合体も使用することができる。
【0017】
本発明に使用する熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲内で更に、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、親水剤等の添加剤を適宜必要に応じて添加しても良い。
【0018】
本発明の棒状繊維成形体を構成する分割型複合繊維について説明する。前記分割型複合繊維の断面構造は、図1〜7に例示したような、前記熱可塑性樹脂の異なる二成分が交互に配列された断面構造をとる。便宜的に、異なる二成分の一方をA成分とし、もう一方をB成分として表すと、図1〜図7の分割型複合繊維は、−A−(B−A)n−B−で表すことができ、両末端は連結していても、していなくてもどちらでもよい(nは正の整数)。具体的には、図1及び図2に例示したような各成分が交互に配列された放射状分割型断面、図3及び図4に例示したような各成分が交互に配置された中空状分割型断面、図5及び図6に例示したような各成分が交互に層状に配置された層状分割型断面、図7に例示したような各成分が交互に配列されて繊維断面が屈曲、湾曲または扁平形状となった分割型断面形状を挙げることができる。もちろん、多成分の樹脂から構成される分割型複合繊維にあっては、同成分が隣り合うことなく多成分が配列した断面構造を形成する。尚、図1〜7に例示した分割型複合繊維の断面構造及び形状はモデル図であり、実際の繊維製造時には、該複合繊維は種々の外部応力を受け断面形状に変形が生じている場合があるが実用上、特に問題はない
【0019】
前記分割型複合繊維の樹脂成分の組合せとしては、ポリエステル系樹脂/ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂/ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂を例示することができる。これらの組合せは、目的、用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば高温条件下で使用する場合には、ポリエチレンテレフタレート樹脂/ナイロン66樹脂の組合せが好ましく、またインクジェット用インクタンクや、耐薬品性が要求される分野、油等の吸着、掃除用途には、特にポリプロピレン樹脂/ポリエチレン樹脂の組合せが好ましい。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂の樹脂成分の組合せにおいて、ポリエチレン系樹脂/ポリプロピレン樹脂の組合せを用いた分割型複合繊維にあっては、ポリプロピレン樹脂の融点よりも低いポリエチレン樹脂が低融点樹脂となり、ポリプロピレン樹脂が高融点樹脂となる。ポリエチレン樹脂としては、具体的には、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンを例示することができる。またポリエチレン樹脂は、これら2種以上の混合物であっても良い。前記分割型複合繊維において、2成分の熱可塑性樹脂より構成される複合繊維の複合比は、容量比で10/90〜90/10の範囲で、より好ましくは30/70〜70/30である。
【0021】
本発明において重要なことは、前記分割型複合繊維の一部分が分割していることである。本発明では、分割細繊化した繊維の繊度が0.5dtex未満となることが必要であり、0.3dtex未満であることが更に好ましい。該分割型複合繊維の分割セグメント数は、分割細繊化した繊維の平均繊度が0.5dtex未満となるように適宜設定すれば良い。なお、分割型複合繊維のセグメント数が多ければ分割後の繊度を小さくすることができるが、繊維製造上の容易さから実際にはセグメント数を4〜32にすることが好ましい。また個々のセグメントの繊度は、同一である必要はなく、複数の異なった繊度の繊維が混在していても良い。これは、分割型複合繊維が完全に分割されずに、未分割状態の分割型複合繊維と分割細繊化した繊維とが混合された状態となっている。
【0022】
細繊化した繊維を製造する方法としては、メルトブロー法が一般に知られている。しかし、メルトブロー法で作製した極細繊維ウェブ(細繊化した繊維ウェブ)を用い、これを棒状に成形した成形体は、繊維間が狭く油のような高粘性液の吸収を阻害し、またインクタンク用詰物に用いた場合には、毛細管現象による吸液性が高く、インクタンク内にインクを保持してしまい、インクタンク寿命を短くしてしまう不具合がある。これに対して本発明の分割型複合繊維を使用して製造された棒状繊維成形体には、棒状繊維成形体に、0.5dtex未満の分割細繊化した繊維と0.5〜20dtexの繊維とが含まれることで、油等の高粘性液の吸収性、掻き取り効果、毛細管現象、機能剤の包含等に適度に優れた効果を発揮する。このことから、掃除棒、インクタンク用詰物、油吸着材、フィルターの素材として好ましく使用することができる。特にインクタンク用詰物や油吸着剤に使用する場合には、分割型複合繊維が部分的に分割していることが好ましい。分割型複合繊維が部分的に分割細繊化していることで、繊維間に狭い所と広い所がランダムに存在し、前記メルトブロー極細繊維ような弊害は生じない。なお、分割細繊化は、分割型複合繊維の分割率で調整しても良いし、他の繊維の混綿で調整しても良い。
【0023】
本発明において前記分割型複合繊維の分割前の単糸繊度は、0.5〜20dtexであり、好ましくは1dtex〜10dtexである。分割前の単糸繊度が0.5dtex未満であると溶融紡糸工程での曳糸性が低下する傾向にある。更に分割前の単糸繊度が0.5dtexを大きく下回ると繊維間隔のコントロールが難しくなる。また20dtexを大幅に超えると、得られた棒状繊維性形体の空隙率をコントロールすることが難しく、また分割細繊化した繊維(分割後)の単糸繊度を0.5dtex未満にするために分割数を多くする必要があり、製造が難しくなる。なお、本発明では、吸水性、吸油性の点から、棒状繊維成形体中に、0.5dtex未満の分割細繊化した繊維が10〜95重量%含まれていることが好ましく、15〜75重量%含まれていることがより好ましい。
【0024】
前記分割型複合繊維の分割細繊化する方法は特に限定されないが、例えば捲縮加工時に、クリンプエッジ部を捲縮付与時の応力により部分的に分割させても良い。また、カード機でウェブを作製する際に、捲縮付与した短繊維をカード機のシリンダー回転の応力により一部分を分割させても良い。更にニードルパンチや水流交絡法によりウェブを分割させた後、棒状繊維成形体に加工しても良い。また棒状繊維成形体とした後に応力を加えて分割させたい部分のみを分割細繊化させることもできる。特に細かい部分や凹凸部分の掃除用に使用する場合には、本発明の棒状繊維成形体が好適に使用でき、汚れを掻き取る時に、応力が掛かるため分割が更に進行し、汚れを掻き取るほど分割するので、結果として掻き取り性能は更に向上する。
【0025】
本発明の棒状繊維成形体は、分割型複合繊維と、前記熱可塑性樹脂からなる繊維とから、混綿または混繊により構成されていても良い。これらは、2種類以上併用しても良い。混綿される熱可塑性樹脂からなる繊維としては、特に制限がなく、例えば成分単一型、複合型の繊維を利用できる。前記熱可塑性樹脂からなる繊維の断面形状は、円形、異形のいずれであっても良い。また、複合型(複合繊維)の断面構造は、鞘芯型、偏心鞘芯型、並列型、多層型、海島型、放射状型、中空放射状型等のいずれであっても良い。接着成分または溶着成分として繊維を混綿する場合には、分割型複合繊維を接着し棒状繊維成形体とするために、熱可塑性樹脂からなる繊維が分割型複合繊維を構成している熱可塑性樹脂と同種類の樹脂を含む繊維であることが好ましい。また混綿した繊維を熱処理により溶融し、接着加工する場合には、分割型複合繊維の低融点樹脂よりも低い温度で溶融する樹脂を接着成分とすることで、該分割型複合繊維を構成する成分樹脂を溶融することなく、棒状繊維成形体を成形でき、更に分割細繊化も進み易くなるために好ましい。また接着繊維として複合型の繊維を用いることで、繊維成形体の強度を更に高くすることができる。なお、混綿、混繊の量は、最終的に得られる棒状繊維成形体中に、0.5dtex未満の分割細繊化した繊維が少なくとも10、好ましくは少なくとも15重量%含まれるように調整を行う必要がある。
【0026】
棒状繊維成形体に親水性を付与する場合には、親水性繊維を混綿または混繊するとよい。ここで親水性繊維は、親水性を示す繊維であれば限定されることはなく、例えば、レーヨン、キュブラに代表される再生繊維、アセテート、トリアセテートに代表される半合成繊維、ポリアミド、アクリル等の合成繊維、綿、羊毛、麻等の天然繊維が利用できる。また、棒状繊維成形体に親水性の薬剤を含浸することでも、棒状繊維成形体に親水性を付与することができる。
【0027】
本発明の棒状繊維成形体は、短繊維の分割型複合繊維、または長繊維の分割型複合繊維のいずれから構成されていても良く、また、該分割型複合繊維からなる不織布で構成されていても良い。分割型複合繊維からなる長繊維ウェブは、スパンボンド法、トウ開繊法、メルトブロー法等で製造することができる。また分割型複合繊維からなる短繊維ウェブは、カーディング、エアレイド、湿式積層等の方法で製造することができる。これらのウェブを用いて、熱処理や溶剤処理により繊維交点を接着することで棒状繊維成形体にすることができる。なお、不織布とは分割型複合繊維からなるウェブが、交絡、融着、接着され、繊維間が結合された成形体をさす。繊維間を結合する接着の方法としては、熱的接着、機械的接着、または化学的接着等が例示できる。熱的接着法は従来公知の方法を採用することができ、具体的には熱風循環法(スルーエアー法)、ポイントボンド法、カレンダー法等を例示できる。ここでウェブや不織布は前記繊維を混綿したものでも良いし、積層したものでも良い。
【0028】
本発明の棒状繊維成形体の空隙率を製造時にコントロールし易くするためには、分割型複合繊維に捲縮を付与することが好ましい。捲縮を付与することにより均一な空隙を持つ棒状繊維成形体に成形することができる。また機能剤を棒状繊維成形体に包含させる場合は、より空隙率が高いほうが機能材の充填率を高めることができ、かつ捲縮により3次元的に繊維のネットワークができるので、充填した機能材の脱落を抑えることができる。
【0029】
次に本発明の棒状繊維成形体の成形方法について説明する。成形方法は従来公知の方法が利用できる。分割型複合繊維を含む布帛(ウェブまたは不織布)を棒状に成形し、熱処理または溶剤処理により繊維成形体に成形する。前記布帛を棒状に成形する方法としては、布帛の機械方向と直交するように布帛を巻く方法、布帛の機械方向と直交するように布帛を収束する方法、布帛の機械方向に平行に布帛を巻く方法、布帛の機械方向と直交するように布帛を収束する方法が例示できる。布帛の機械方向と直交するように布帛を巻く方法は、棒状繊維成形体の長軸方向に繊維を配向させ難いが、機械方向に平行に布帛を収束する方法では、棒状繊維成形体の長軸方向に繊維方向が略一致するため好ましい。その他の方法として、一旦任意の形に成形した後、それを任意の棒状の形状に切断し、製造しても良い。
【0030】
本発明の棒状繊維成形体は、該棒状繊維成形体の長軸方向と、それを構成する繊維の繊維軸方向との配向度が45度以下であることが好ましい。これにより繊維成形体の長軸方向の引張り強力を高くでき、更に折れ難くすることができる。配向度が45度であれば掃除用棒として使用する際の形態安定性が得られ易く、高温で長時間の加熱成形が不要となる。配向度を45度以下にした棒状繊維成形体の製造方法としては、トウやスライバー状のウェブを加熱成形する方法が例示できる。
【0031】
本発明の棒状繊維成形体を構成する分割型複合繊維の製造方法の一例として、以下に、ポリプロピレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂との2成分を組み合わせた分割型複合繊維の製造方法を例示する。前記2成分を通常の溶融紡糸機で紡糸し、長繊維として紡出する。紡糸に際し、紡糸温度は180〜300℃の範囲とすることが良く、引き取り速度は40m/分〜1500m/分程度とすることが良い。延伸は必要に応じて多段延伸を行っても良く、延伸倍率は通常3〜9倍程度とするのが良い。更に得られたトウは必要に応じて捲縮を付与した後、所定長に切断して短繊維として利用する。以上は短繊維の製造工程を開示したが、トウを切断せず、長繊維トウを分繊ガイド等によりウェブとすることもできる。その後は必要に応じて公知公用の高次加工工程を経て、種々の用途に応じた棒状繊維成形体に成形される。また単繊維とせずマルチフィラメント糸としても良い。
【0032】
かかる工程において、繊維を紡出後、繊維の静電気発生防止、繊維成形体への加工性向上、平滑性付与、親水性の付与等を目的として、界面活性剤や親水化剤を用いることができる。界面活性剤の種類、濃度は用途に合わせて適宜調整する。界面活性剤は、繊維表面に適量付着されることで利用でき、その付着の方法は、ローラ法、浸漬法等を用いることができる。付着は、紡糸工程、延伸工程、捲縮工程のいずれで付着させても差し支えない。更に短繊維、長繊維を問わず、紡糸工程、延伸工程、捲縮工程以外に、例えば繊維成形体に成形後に界面活性剤を付着させることもできる。
【0033】
次に棒状繊維成形体の製造方法の一例を示す。前記分割型複合繊維の短繊維を用いて、カード法で必要な目付のウェブを作製する。カード機で作製したウェブを、公知の方法で任意の径のスライバーとし、分割型複合繊維を構成する低融点樹脂が溶融する温度で熱処理を行い、棒状繊維成形体を作製する。なお、この時にウェブに予めウェブを構成する繊維よりも低融点で融解する樹脂パウダーを混ぜておき、スライバーにした後、筒状容器内でこれを該パウダーが融解する温度で熱処理を行い、棒状繊維成形体に成形した後、取り出すことで製造することもできる。
【0034】
溶着には前記熱可塑性樹脂を溶解する溶剤を必要に応じて適宜選択し利用すれば良く、該繊維を溶解して繊維間を溶着することにより棒状繊維成形体に成形することができる。例えばポリオレフィン系繊維の場合は、トリクロルエチレン、トルエン、シクロヘキサン、キシレン、石油エーテル等を使用して繊維間を融着し棒状繊維成形体に成形することができる。
【0035】
本発明の繊維成形体の空隙率は、特に限定されるものではないが、45〜95%の範囲が好ましい。空隙率が45%以上であれば、例えば油吸着材、掃除用棒に使用する場合、隙間が充分になり、油やゴミを収集保持する空間が確保でき、空隙率が95%以下であれば棒状繊維成形体の剛性が強く、例えば掃除用として使用する際、折れにくくなる。また均一な空隙を作ることが容易である
【0036】
本発明の棒状繊維成形体を掃除用に用いる場合は、先端部を円錐状に研磨しても良いし、棒状繊維成形体の先端部を該棒状繊維成形体の長軸方向に対して30〜150度の範囲で鋭角に切り落としても良い。先端部を鋭角にすることで細かな部分の汚れを取り易くすることができる。
【0037】
更に本発明の棒状繊維成形体に機能剤を付着または包含させることにより、他の繊維の混繊、混綿では付与しにくい機能を付与することができる。機能剤としては従来公知のものを使用することがきる。例えば抗菌防臭剤、防カビ剤、消臭剤、吸着剤、研磨剤、イオン交換樹脂、高分子吸水ポリマー等を挙げることができる。前記機能剤が溶液の場合は、多孔質基材に含浸して使用しても良い。多孔質基材としては、アロフェン、イモゴライト、人工ゼオライト、天然ゼオライト、合成ゼオライト、活性炭等が例示できる。また吸着剤としては、前記多孔性基材を用いることができる。棒状繊維成形体に機能剤を包含させる方法としては、機能剤がゼオライト等の粉末の場合、ウェブに加工した分割型複合繊維を水流交絡処理により分割細繊化と不織布化させ、これを熱風等で乾燥した後、機能剤を篩等で不織布上に均一になるように散布し、その後、不織布をガラス管に詰め、適当な温度で加熱、冷却する方法が例にできる。このとき、機能剤表面に空隙が生ずるように機能剤を包含させて棒状繊維成形体を製造することで、機能剤の性能を充分に発揮させることができる。
【0038】
抗菌防臭剤、防カビ剤としては、銀、銅、亜鉛に代表される無機系抗菌剤、塩化ベンザルコニウム、有機シリコン系第4級アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジンに代表される有機系抗菌剤、キチン、キトサン、ポリリジン、ヒバ油、ユーカリ、カテキン、アロエ等の天然系抗菌剤が例示できる。消臭剤としては、ベタイン系両面活性剤、カルボニル系化合物、二酸化チタンに代表される光触媒、活性炭、ゼオライト、カテキン、無機系消臭剤、銅−フタロシアニン、鉄−フタロシアニン、金属イオン等が例示できる。
【0039】
研磨剤としては、ガーネット、エメリー、溶融アルミナ、炭化ケイ素等が例示できる。
【0040】
機能剤を包含させる場合は、機能剤との親和性に優れる熱可塑性樹脂からなる繊維を併用することにより、機能剤の脱落を更に抑えることができる。このような熱可塑性樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン無水マレイン酸グラフト共重合体が例示できる。
【0041】
本発明の棒状繊維成形体は、油吸着剤やろ過用フィルターに好適に使用することができるが、機能剤を付着または包含させることにより、更に性能を上げることができる。例えば人工ゼオライトを包含させた棒状繊維成形体は吸油量を大幅に向上させることができ、また陽イオン吸着能にも優れ、特定の物質を選択的に吸着できるフィルターとしても好適に用いることができる。
【0042】
以上、本発明の棒状繊維成形体は、分割型複合繊維の一部分が分割細繊化しているため掃除用棒やインクタンクにも好適に使用できる。またインクタンク用詰物に使用する場合、特に水溶液系のインクを使用する場合は、棒状繊維成形体を親水性にすることが好ましい。その方法としては、親水性繊維の混繊、混綿、界面活性剤の付着、親水化剤の練り込み等が例示できる。また繊維加工用に塗布した界面活性剤が不都合な場合には、棒状繊維成形体に加工する前後で洗い落としておけば良く、水流交絡処理を使用して分割細繊化する場合は、その処理時点で、該界面活性剤が殆ど洗い落とされるため、別途、洗い落とす処理は不要となる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によって説明を行うが、本発明はこれらにより限定されるものではない。尚、実施例、比較例における用語と物性の測定方法は以下の通りである。
【0044】
(a)融点:デュポン社製熱分析装置DSC10(商品名)を用い、JIS K7122に準拠して測定を行った。
【0045】
(b)メルトフローレート(MFR):JIS K 7210に準拠して測定した。
原料ポリプロピレン樹脂:表1の条件14
原料ポリエチレン樹脂:表1の条件4
【0046】
(c)密度:JIS K 6760に準拠して密度勾配管による測定を行った。
【0047】
(d)ポリエチレンテレフタレートの固有粘度:フェノールと四塩化エタンの等重量混合溶媒を用い、濃度0.5g/100ml、温度20℃で測定した。
【0048】
(e)分割後繊度:以下の式より算出した。
分割後繊度(dtex)=分割前繊度/分割数
【0049】
(f)分割率:棒状繊維成形体の長軸に対して垂直にかみそりで棒状繊維成形体を切断し、その断面を電子顕微鏡で撮影した。得られた写真から、任意に50本の分割型複合繊維を選び、その平均繊度から以下の式を用いて算出した。
分割率(%)=(分割後繊度/平均繊度)×100
【0050】
(g)吸水性(mm):JIS L 1096記載のバイレック法に準じて測定した。即ち、試料片(試料長20cm、試料径15mm)を、20±2℃の水を入れた水槽に試料片の下端の1cmがちょうど水に浸かるようにする。10分間放置後の水の上昇した高さ(mm)を3回測定し、3点の平均値で吸水性を表した。なお、イオン交換樹脂に通して脱イオンした水を使用した。
【0051】
(h)吸水量:試料片(試料長5cm、試料径15mm)を、20±2℃の水に10分間浸漬して吸水させ、その後引き上げて吊り下げ、10分間水切りを行った後、重量を測定し絶乾試料1g当りに吸収された水の重量を測定し吸液量(g/g)とした。なお、イオン交換樹脂に通して脱イオンした水を使用した。
【0052】
(i)吸油性:JIS L 1096記載のバイレック法に準じて測定した。即ち、試料片(試料長20cm、試料径15mm)を、20±2℃のサラダオイルを入れた水槽に試料片の下端の1cmが油にちょうど浸かるようにする。10分間放置後の油の上昇した高さ(mm)を3回測定し、3回の平均値で吸油性を表した。
【0053】
(j)吸油量:試料片(試料長5cm、試料径15mm)を、20℃±2℃のサラダオイルに10分間浸漬して吸油させ、その後引き上げて吊り下げ、10分間油切りを行った後、重量を測定し絶乾試料1g当りに吸収された油の重量を測定し吸油量(g/g)とした。
【0054】
(k)油拭取性:5cm×5cmのガラス板上に0.5gのサラダオイルを垂らし、コットンネルでガラス表面に油膜を作る。棒状繊維成形体の試料片(試料長20cm、試料径12mm)を手で持ち、棒状繊維成形体の先端で油膜を拭き取ることができるかを以下の基準で判定した。
○:ガラス表面に筋を残さず拭き取れる。
△:ガラス表面に僅かに拭き残りがある。
×:明らかに拭き取れない。
【0055】
(l)形態安定性:(k)で行った試験で棒状繊維成形体が折れたり、歪んだりせず形態を保持したかどうかについて以下の基準で判定した。
○:拭取り時の応力で折れず、更に歪みがなく作業性が良い。
△:拭取り時の応力で僅かに歪むが作業性は大幅に低下しない。
×:拭取り時の応力で折れて作業性が悪い。
【0056】
(m)配向度:棒状繊維成形体の長軸に対して平行に切断して、棒状繊維成形体をまず2等分し、更に該長軸に対して平行に切断した面に垂直かつ長軸に対して平行に切断して2等分とし、棒状繊維成形体を計4等分する。この切断面を電子顕微鏡で観察し、任意に繊維を50本選び、棒状繊維成形体の長軸方向となす角度(0〜90度)を求める。他の3切片も同様に測定した。これらの平均値で配向度を表した。
【0057】
(n)水流交絡処理:ウェブを80メッシュの平織りからなるコンベアーベルト上に載せ、コンベアネット速度5m/分で、ノズル径0.1mm、ノズルピッチ1mmのノズル直下を通過させ、高圧水流を噴射した。まず、4MPaを1段、8MPaを4段処理した。ここで段とは、ノズル直下を通過した回数のことである。
【0058】
実施例1
ポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、融点163℃、MFR16g/10分)をA成分、高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR16g/10分)をB成分とし、分割型複合繊維用口金を用いて、容積比率50/50、図3のような断面構造をした、分割型複合繊維を紡糸し、引き取り工程において、未延伸の分割型複合繊維(未延伸糸)にアルキルフォスフェートカリウム塩を付着し、単糸繊度8dtexの未延伸糸とした。得られた未延伸糸を90℃、4倍で延伸し、トータル5万dtex、単糸繊度2dtexの延伸糸トウとした。このトウを開繊機で開繊して、直径15mmのガラス管に詰め、155℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0059】
実施例2
実施例1で作製した未延伸糸を90℃、4倍で延伸し、機械捲縮(15山/2.54cm)を付与した後、51mmに切断して、2dtexの短繊維とした。この短繊維をローラカード機でウェブにし、直径15mmのガラス管に詰め、155℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0060】
比較例1
ポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、融点163℃、MFR36g/10分)を芯成分、高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR26g/10分)を鞘成分とし、鞘芯型複合繊維用口金を用いて、容積比率50/50の鞘芯型複合繊維を紡糸した。引き取り工程において、未延伸の鞘芯型複合繊維(未延伸糸)にアルキルフォスフェートカリウム塩を付着し、単糸繊度8dtexの未延伸糸とした。得られた未延伸糸を90℃、4倍で延伸し、機械捲縮(13山/2.54cm)を付与した後、51mmに切断して、2dtexの短繊維とした。この短繊維をローラカード機でウェブにし、直径15mmのガラス管に詰め、155℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0061】
参考例1
実施例2に準拠して、図4のような断面構造をした、12dtexの短繊維を作製した。得られた短繊維をローラカード機でウェブにし、水流交絡処理を行って分割細繊化するのと同時に不織布化を行った。得られた不織布を更に90℃で乾燥した後、直径15mmのガラス管に詰め、155℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0062】
比較例2
実施例2に準拠して、図4のような断面構造をした、22dtexの短繊維を作製し、この短繊維から繊維成形体を作製した。
【0063】
実施例3
ポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、融点163℃、MFR36g/10分)を芯成分、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(融点100℃、MFR30g/10分、密度0.910g/cm3)を鞘成分とし、鞘芯型複合繊維用口金を用いて、容積比率50/50の未延伸の鞘芯型複合繊維(未延伸糸)を紡糸した。引き取り工程において、未延伸の鞘芯型複合繊維にアルキルフォスフェートカリウム塩を付着し、単糸繊度7dtexの未延伸糸とした。得られた未延伸糸を90℃、3.5倍で延伸し、機械捲縮(13山/2.54cm)を付与した後、51mmに切断して、2dtexの短繊維とした。得られた短繊維(30重量%)と実施例2で作製した分割型複合繊維(70重量%)を混綿してローラカード機でウェブにし、直径15mmのガラス管に詰め、125℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0064】
実施例4
実施例2で作製した分割型複合繊維50重量%とレーヨン(1.7dtex、繊維長44mm)50重量%とを混綿して、ローラカード機でウェブにし、直径15mmのガラス管に詰め、125℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0065】
実施例5
実施例2に準拠して空隙率40%の棒状繊維成形体を作製した。
【0066】
参考例2
ポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、融点163℃、MFR16g/10分)をA成分、高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR16g/10分)をB成分とし、分割型複合繊維用口金を用いて、容積比率50/50、図3のような断面構造をした、分割型複合繊維を紡糸し、引き取り工程において、未延伸の分割型複合繊維(未延伸糸)にアルキルフォスフェートカリウム塩を付着し、単糸繊度35dtexの未延伸糸とした。得られた未延伸糸を90℃、5倍で延伸し、機械捲縮(15山/2.54cm)を付与した後、51mmに切断して、7dtexの短繊維とした。この短繊維をローラカード機でウェブにし、直径15mmのガラス管に詰め、155℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0067】
実施例6
相対粘度0.60のポリエチレンテレフタレート(鐘紡(株)製、K101)をA成分、ポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、融点163℃、MFR16g/10分)をB成分とし、容積比率50/50、図3のような断面構造をした、分割型複合繊維を紡糸し、引き取り工程において、未延伸の分割型複合繊維(未延伸糸)にアルキルフォスフェートカリウム塩を付着し、単糸繊度7dtexの未延伸糸とした。得られた未延伸糸を90℃、3.5倍で延伸し、機械捲縮(13山/2.54cm)を付与した後、38mmに切断して、2dtexの短繊維とした。得られた短繊維をローラカード機でウェブにし、直径15mmのガラス管に詰め、185℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0068】
実施例7
ポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、融点163℃、MFR16g/10分)をA成分、高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR26g/10分)と変性ポリエチレン(密度0.931g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンを幹ポリマーとした無水マレイン酸グラフト変性率0.15モル/kgのポリマー。MFR14g/10分)を重量比80/20でブレンドした樹脂をB成分とし、分割型複合繊維用口金を用いて、容積比率50/50、図3のような断面構造をした、分割型複合繊維を紡糸し、引き取り工程において、未延伸の分割型複合繊維(未延伸糸)にアルキルフォスフェートカリウム塩を付着し、単糸繊度7dtexの未延伸糸とした。得られた未延伸糸を90℃、3.5倍で延伸し、機械捲縮(15山/2.54cm)を付与した後、51mmに切断して、2dtexの短繊維とした。この短繊維をカード機で開繊してウェブにし、水流交絡処理を行って分割細繊化するのと同時に不織布化を行った。得られた不織布を更に90℃で乾燥した後、繊維重量の1/3の重量の人工ゼオライト(平均粒子径10〜30μm、平均細孔径20×10−8〜50×10−8cm、比表面積40〜100m2/g)を篩で均一に散布し、直径15mmのガラス管に詰め、155℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。この棒状繊維成形体は、極細繊維から構成されているため、棒状繊維成形体表面から、包含した人工ゼオライトの脱落が非常に少なかった。
【0069】
参考例3
実施例1で作製した未延伸糸を90℃、4倍で延伸し、機械捲縮(15山/2.54cm)を付与した後、5mmに切断して、2dtexの短繊維とした。この短繊維をエアレイド機で開繊してウェブにし、直径15mmのガラス管に詰め、155℃で15分間加熱し、冷却後、ガラス管から取り出した。得られた棒状繊維成形体の性能を表1に示す。
【0070】
実施例8
実施例1と比較例1の棒状繊維成形体を掃除棒として、工具の油汚れ落しに使用した。その結果、実施例の棒状繊維成形体は比較例1の棒状繊維成形体と比較して汚れ除去に優れていた。
【0071】
参考例4
参考例3で作製した棒状繊維成形体(直径15mm×長さ5cm)をシリコンチューブ(内径15mm、長さ15cm)の中心付近まで押し込め、簡易ろ過フィルターを作製する。前記吸油性試験で使用したサラダオイル50gと脱イオン水50gを混合して良く振とうし、この油水混合液をシリコンチューブの上部から注ぎ、自然ろ過して、下方から滴下した液体を捕集する。サラダオイルはフィルターに吸着されており、捕集された液体は水のみであった。
【0072】
以上、実施例1〜8からわかるように本発明の棒状繊維成形体は、吸水性、吸油性及び拭き取り性に優れるので、掃除棒、インクタンク用詰物、油吸着材に適している。またろ過機能にも優れているのでフィルターとしても適している。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
本発明の棒状繊維成形体は、分割型複合繊維の一部分が分割細繊化されて表面積が大きくなり、かつ分割細繊化した繊維間に空隙層を形成するので、汚れ等の払拭性の他、吸水性、吸油性に優れる。このため、掃除用棒、インクタンク用詰物に好適に使用できる。更に分割細繊化繊維の空隙層に、種々の機能剤を包含できるため、種々の機能付与ができる。また空隙が均一でないことから、分割細繊化繊維は油吸着材やフィルターとしても好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する分割型複合繊維の断面の1模式図である。
【図2】本発明で使用する分割型複合繊維の断面の1模式図である。
【図3】本発明で使用する分割型複合繊維の断面の1模式図である。
【図4】本発明で使用する分割型複合繊維の断面の1模式図である。
【図5】本発明で使用する分割型複合繊維の断面の1模式図である。
【図6】本発明で使用する分割型複合繊維の断面の1模式図である。
【図7】本発明で使用する分割型複合繊維の断面の1模式図である。
【符合の説明】
1:中空部
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂からなる分割型複合繊維を含む繊維の接点の一部が融着または溶着した棒状繊維成形体であって、棒状繊維成形体の長軸方向と、該棒状繊維成形体を構成する繊維の繊維軸方向との配向度が36度以下であり、該分割型複合繊維の一部分が分割し、該棒状繊維成形体中に未分割状態の分割型複合繊維と分割細繊化した繊維とが含まれており、未分割状態の分割型複合繊維の繊度は0.5〜20dtexであり、分割細繊化した繊維の繊度は0.5dtex未満であることを特徴とする棒状繊維成形体。
- 棒状繊維成形体が、45〜95%の空隙率である請求項1記載の棒状繊維成形体。
- 棒状繊維成形体に機能剤が付着または包含されている請求項1〜2のいずれか1項記載の棒状繊維成形体。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の棒状繊維成形体を用いた掃除用棒。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の棒状繊維成形体を用いたインクタンク用詰物。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の棒状繊維成形体を用いた油吸着材。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の棒状繊維成形体を用いたフィルター。
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