JP4206551B2 - 車両用自動変速機 - Google Patents

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    • F16H2200/20Transmissions using gears with orbital motion
    • F16H2200/2097Transmissions using gears with orbital motion comprising an orbital gear set member permanently connected to the housing, e.g. a sun wheel permanently connected to the housing

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される自動変速機に関し、特に、そのギヤトレインにおける各変速機構成要素の配置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用自動変速機の多くは、プラネタリギヤセットの変速要素としてのサンギヤ、キャリア及びリングギヤに入力軸の回転を伝達すべく3つのクラッチを備えている。これらクラッチの配置として種々のものがあるが、プラネタリギヤセットを挟んで、一方側に2つ、他方側に1つのクラッチを配置したコンパクトな4速のギヤトレイン構成を採るものとして、特開平5−172222号公報に開示のものがある。
【0003】
他方、上記と同様のクラッチ配置において、他方側の1つのクラッチに隣接せて減速用のプラネタリギヤを配置し、その減速回転を該クラッチを介してプラネタリギヤセットの変速要素に入力する構成を採ることで、前進5速を達成する構成のものが特開平4−125345号公報に見られる。
【0004】
更に、2つの減速回転をプラネタリギヤセットの2つの変速要素に入力する構成を採ることで、前進6速を達成する構成のものが特開平4−219553号公報において提案されている。このギヤトレインでは、3つのクラッチをプラネタリギヤセットの一方側にまとめて配置し、減速用のプラネタリギヤを経た減速回転を非減速回転の入力クラッチを跨いでプラネタリギヤセットに入力する構成が採られている。
【0005】
このように、従来の自動変速機では、達成する変速段の数に応じてギヤトレイン構成も変更され、個々に合理性を追求したものとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近時の自動変速機には、ドライバビリティの確保や省エネルギに不可欠な燃費の向上のために多段化の要求がある反面、軽量かつコスト低減の要求もある。こうした両面性を持つ要求に応えるには、重量やコスト面で有利な3速から多段の6速まで、車種毎に異なる要求に幅広く適応可能なギヤトレインを実現することができれば有効である。こうした面から従来の構成を見ると、共通して3つのクラッチを配置する構成を採りながら、減速プラネタリギヤの有無や、減速回転入力の数により異なるギヤトレイン配置を採っており、車種への適応性において改善すべき問題点を残している。
【0007】
そこで、クラッチ配置と減速プラネタリギヤとの関連について考察するに、上記5速を達成する減速プラネタリギヤ配置を踏襲して2対1のクラッチ配置による2つの減速入力による6速化を図った場合、減速プラネタリギヤの一方の減速回転はそのまま近傍のクラッチに連結して伝達するとして、他方の減速回転については、一旦プラネタリギヤセットの内周側を通して反対側のクラッチに導き、更にクラッチを経た出力をプラネタリギヤセット側に戻す連結関係となり、減速により増幅されたトルクの伝達部材の引回しが長くなり、部材強度維持のために重量増加となる問題点を生じる。
【0008】
本発明は、こうした事情に鑑みなされたものであり、不自然なトルク伝達部材の引回しを生じずに、減速プラネタリギヤを要しない4速から減速プラネタリギヤを要する5、6速まで実質上基本的なトレイン構成を変更せずに適宜対応可能な自動変速機を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、4つの変速要素を有するプラネタリギヤセットと、該プラネタリギヤセットの3つの異なる入力経路を係脱自在に連結する3つのクラッチと、少なくとも2つの係止要素とを備え、各クラッチの係脱による入力経路の選択と、係止要素の係脱の選択による適宜の変速要素の固定により多段の変速段を達成する車両用自動変速機であって、必要に応じて少なくともいずれかのクラッチへの入力を減速する減速プラネタリギヤが配設されるものにおいて、前記プラネタリギヤセットの一方側に2つのクラッチが配置され、前記プラネタリギヤセットの他方側に1つのクラッチが配置され、前記減速プラネタリギヤは、前記2つのクラッチが配置された側に、変速機ケース側のボス部先端に1つの要素を固定させて配置され、少なくとも前記2つのクラッチのいずれか一方に連結され、前記2つのクラッチの一方の油圧サーボは、前記減速プラネタリギヤの一方側で前記ボス部上に配置され、前記2つのクラッチの他方の油圧サーボは、前記減速プラネタリギヤの他方側で入力軸上に配置されることを特徴とする。
【0010】
次に、互換性を向上させる意味で、前記プラネタリギヤセットと前記2つのクラッチの内周側を通る入力軸を備え、該入力軸と、前記2つのクラッチを経た入力経路を構成する部材は、前記プラネタリギヤセットと前記2つのクラッチとの間で、軸方向に着脱自在に連結された構成とするのが有効である。
【0012】
次に、軸長の短縮の意味から、前記2つのクラッチの一方の摩擦部材は、減速プラネタリギヤの外周側に配置され、前記2つのクラッチの他方の摩擦部材は、他方のクラッチの油圧サーボの外周側に配置された構成とするのが有効である。
【0013】
次に、径方向のコンパクト化の意味で、前記係止要素は、バンドブレーキを包含し、該バンドブレーキのバンドは、前記2つのクラッチの一方のドラムの外周に係合するものとされ、該ドラムは、変速機ケース側のボス部で支持された構成とするのが有効である。
【0014】
更に、軸長短縮の意味で、前記変速機ケース側のボス部は、変速ケース自体のボス部と、該ボス部を超えて延在するステータシャフトからなり、前記減速プラネタリギヤは、そのサンギヤを前記ステータシャフトの先端部に固定され、前記2つのクラッチの一方のドラムは、前記サンギヤと径方向に重なる位置で前記変速機ケース自体のボス部に支持された構成とするのが有効である。
【0015】
次に、変速段数の変更に伴う2つのクラッチの変更を最小限に抑える意味で、前記プラネタリギヤセットは、その各変速要素の位置をギヤ比に対応させた横軸方向の間隔で縦軸として表すとともに、該縦軸上に各変速要素の回転数比を表した速度線図に基づき横軸方向にその一端から順次各要素を第1〜第4変速要素と称したときに、第1変速要素は、前記2つのクラッチのうちの他方のクラッチにより入力経路を連結され、第2変速要素は、出力部材に連結され、第3変速要素は、プラネタリギヤセットの他方側に配置された前記1つのクラッチにより入力経路を連結されるとともに、第2係止要素により係止可能とされ、第4変速要素は、前記2つのクラッチのうちの一方のクラッチにより入力経路を連結されるとともに、第1係止要素により係止可能とされた構成とするのが有効である。
【0016】
特に、6速構成とする場合、前記2つのクラッチは、共に前記減速プラネタリギヤの出力要素に連結された構成とするのが有効である。
【0017】
また、5速構成とする場合、前記2つのクラッチの一方は、減速プラネタリギヤの出力要素に連結され、前記2つのクラッチの他方は、入力軸に連結された構成とするのが有効である。
【0018】
次に、コンパクト化する意味で、前記2つのクラッチの他方の油圧サーボは、他方のクラッチのドラムをプラネタリギヤセットの変速要素に連結する動力伝達部材で構成するのが有効である。
【0019】
同様の意味で、前記2つのクラッチは共通のハブを有し、該ハブは前記減速プラネタリギヤの出力要素に連結された構成とするのが有効である。
【0020】
また、変速段数に応じて変速機外形をコンパクト化する場合、変速機ケースの後端部にリアケースが設けられ、前記2つのクラッチと、前記減速プラネタリギヤは、前記リアケース内に配置された構成とするのが有効である。
【0021】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1記載の構成では、減速プラネタリギヤの配設側を2つのクラッチの配設側とすることで、機構のコンパクト化のために3つの要素の関連配置を工夫することができるため、1つのクラッチの配設側において2つの要素の関連配置を工夫する場合に比べて工夫の自由度が増すため、変速機ケースやギヤトレインの大幅な変更なしに、減速プラネタリギヤの配設・非配設と、それに伴う2つのクラッチの部分的な変更で変速段数の増減への対応が可能となる。また、減速プラネタリギヤの配設により増幅されたトルクを伝達することになる入力経路を短く構成することができ、それにより入力経路を構成する部材の強度保持のための厚肉化を防いで、変速段数の増加による重量増加を抑えることができる。さらに、他方のクラッチの油圧サーボについて、その入力軸上への配置により内径方向への寸法を確保することができるため、油圧サーボの受圧面積を大きく採ることができ、それに合わせて摩擦部材の構成枚数を減らすことができるため、軸長を短縮することができる。また、特に減速プラネタリギヤ配設に伴い、他方のクラッチを減速トルクの入力クラッチとする場合、上記の理由で油圧サーボの受圧面積を大きく採ることができることから、クラッチの容量の確保が容易となる。
【0022】
次に、請求項2記載の構成では、減速プラネタリギヤの配設・非配設に伴い変更される部分と、変更を要しない部分とのユニット化が可能となり、組立の作業性を向上させることができる。
【0024】
次に、請求項記載の構成では、2つのクラッチの摩擦部材減速プラネタリギヤと他のクラッチの油圧サーボとの重合配置にすることにより、軸方向寸法の短縮が可能となる。
【0025】
次に、請求項記載の構成では、係止要素をバンドブレーキ化することで、その径方向寸法を殆ど増加させない配置が可能となり、変速機を小径化することができる。また、バンドブレーキ化に伴うドラムに係る荷重の支持を確実に行うことができる。
【0026】
次に、請求項記載の構成では、通常アルミ製とされる変速機ケースに対して強度の高い鋼製とされるステータシャフトでサンギヤを固定することにより、固定部の嵌合長さを短くできるので、サンギヤの内周側に空間を設けることができ、該空間を利用して2つのクラッチの一方のドラムを支持することで、バンドブレーキによるドラム締結部の内径側により近い位置でブレーキ締結時の荷重を支持して、ドラムに係るモーメントを減らすことができ、しかも、軸方向寸法の短縮も可能となる。
【0027】
次に、請求項記載の構成では、2つのクラッチの出力側の連結関係を変更することなく、ギヤトレイン構成を変更することができるため、2つのクラッチの構成の変更を最小限に抑えることができる。
【0028】
次に、請求項記載の構成では、プラネタリギヤセットに減速プラネタリギヤ経由の2つの減速入力を行うことができるため、6速構成の自動変速機を実現することができる。
【0029】
一方、請求項記載の構成では、プラネタリギヤセットに減速プラネタリギヤ経由の1つの減速入力を行うことができるため、5速構成の自動変速機を実現することができる。
【0030】
次に、請求項記載の構成では、2つのクラッチの他方の油圧サーボを、該クラッチの摩擦部材とプラネタリギヤセットとを連結する動力伝達部材を利用して構成することができるため、油圧サーボを軸方向に短縮することができ、減速プラネタリギヤを配設した場合の軸長の伸びを最小限に抑えることができる。したがって、逆に変速段数を減らした場合のデッドスペースの発生を少なく抑えることができる。
【0031】
次に、請求項10記載の構成では、2つのクラッチのハブの共通化により径方向横断部材の数を減らすことができ、それによる軸長の短縮が可能となる。また、減速トルクの伝達経路の共通化により、軽量、コンパクト化も可能となる。
【0032】
次に、請求項11記載の構成では、リアケース部を変更することで、変速段数の変更への対応が可能となるため、各変速段数に対して変速機の外形を最小限に抑えるコンパクト化が可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿い、本発明の実施形態を説明する。図1〜図18は本発明を具体化した第1実施形態を示す。図1〜図4に6〜3速のギヤトレイン構成をスケルトンで示すように、この自動変速機は、主軸X、カウンタ軸Y、デフ軸Zが互いに並行に配置された3軸構成のトランスアクスルの形態で具体化されている。
【0034】
この変速機は、ラビニヨタイプのプラネタリギヤセットGを構成する各要素、すなわち、サンギヤS2,S3、キャリアC2(C3)、リングギヤR2(R3)を変速要素とし、それらのうちの3つの変速要素に3つのクラッチC−1,C−2,C−3を介してそれぞれ適宜の回転を入力し、1つの要素R2から変速回転を出力させる構成とされ、そのために2つの係止要素B−1,B−2(F−1)の係脱により2つの変速要素に反力を取る構成とされている。
【0035】
この形態では、プラネタリギヤセットGは、入力要素となる小径のサンギヤS3と、入力要素兼反力要素となる大径のサンギヤS2と、互いに噛合して一方が大径のサンギヤS2に噛合し、他方が小径のサンギヤS3に噛合するロングピニオンP2及びショートピニオンP3と、それらを支持する入力要素兼反力要素となるキャリアC2(C3)と、ロングピニオンP2に噛合して出力要素となるリングギヤR2(R3)とで構成されている。
【0036】
このプラネタリギヤセットGを挟んで、その一方側(本形態においてエンジンの動力がトルクコンバータを介して入力される側、本明細書を通じてこの側を前側という)には、2つの入力クラッチC−1,C−3が配置され、他方側(同じく後側という)には、1つの入力クラッチC−2が配置されている。そして、これら各クラッチは、その入力側をプラネタリギヤセットGの内周を通る入力軸11に直接又は間接的に連結され、出力側を各変速要素に連結されている。周知のように、入力軸11は、図示しないエンジンの動力をポンプインペラ41からタービンランナ42に伝達するロックアップクラッチ43付のトルクコンバータ4のタービンランナ42に連結されている。
【0037】
他方、プラネタリギヤセットGの出力要素としてのリングギヤR2(R3)は、カンタドライブギヤ19に連結され、その出力は、カンタドライブギヤ19に噛合する大径のカウンタドリブンギヤ21、カウンタ軸20、小径のデフドライブピニオンギヤ22により減速され、デフリングギヤ31を経てデフケース32に伝達され、その内部の差動ギヤからデフ軸30を経て車輪に伝達される構成とされている。
【0038】
プラネタリギヤセットGの反力要素をケース10に必要に応じて固定する係止合要素は、この形態では、大径サンギヤS2を固定するバンド・ドラム構成のブレーキB−1と、キャリアC2(C3)をケース10に固定する多板構成のブレーキB−2と、それに並列するワンウェイクラッチF−1とで構成されている。
【0039】
こうした配列を基本とするギヤトレインにおいて、図1に示す6速構成の場合、2つのクラッチC−1,C−3に隣接させてシングルピニオン構成の減速プラネタリギヤG1が配置される。この場合、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1は反力要素としてケース10に固定され、リングギヤR1が入力要素として入力軸11に連結され、サンギヤS1とリングギヤR1に噛合するピニオンP1のキャリアC1が減速回転の出力要素としてクラッチC−1の入力側とクラッチC−3の入力側に連結されている。したがって、このトレインでは、両クラッチC−1,C−3が共に減速回転を入力するクラッチを構成している。
【0040】
次に、5速構成の場合、図2に示すように、2つのクラッチC−1,C−3に隣接させてダブルピニオン構成の減速プラネタリギヤG1が配置される。この場合、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1は反力要素としてケース10に固定され、互いに噛合して一方がサンギヤS1に噛合し、他方がリングギヤR1に噛合する一対のピニオンP1,P1’のキャリアC1が入力軸11に連結され、一方のピニオンP1’に噛合するリングギヤR1が、減速回転の出力要素としてクラッチC−3の入力側に連結される。したがって、このトレインでは、クラッチC−3が減速回転を入力するクラッチを構成している。また、非減速回転の入力要素としてのクラッチC−1は入力軸11に連結される。両クラッチの出力側の連結関係は6速構成の場合と同様である。
【0041】
更に、4速構成の場合、図3に示すように、減速プタネタリギヤは配置されず、クラッチC−1とクラッチC−3の入力側は共に入力軸11に連結され、クラッチC−1の出力側は、6速、5速構成の場合と同様で、サンギヤS3に連結され、同様にクラッチC−3の出力側もサンギヤS2に連結される。
【0042】
また、例外的ではあるが、3速構成とする場合、図4に示すように、更に1つのクラッチC−2を除去した構成が採られる。
【0043】
こうした構成からなる自動変速機は、図示しない電子制御装置と油圧制御装置とによる制御で、運転者により選択されたレンジに応じた変速段の範囲で車両負荷と車速に基づき、変速を行う。図5〜図8は、上記各変速段構成に対するクラッチ及びブレーキ(又はワンウェイクラッチ)の係合と、それにより達成される変速段の関係を図表化して示す。図の○印は係合を表し、括弧付の○印は、エンジンブレーキ達成のための係合を表す。なお、図5に示す5速構成の係合図表に関して、第5速達成のための係合要素は、クラッチC―3に代えてブレーキB―1とすることができるし、6速構成の係合図表における第4速を抜く形態での5速構成とすることもできる。
【0044】
ここで、本発明の主題とは若干離れるが、ワンウェイクラッチF−1の配設理由について説明する。上記の第1速と第2速時の両ブレーキB−1,B−2の係合・解放関係に見るように、これら両ブレーキは、両変速段間でのアップダウンシフト時に、一方の解放と他方の係合が同時に行われる、いわゆる掴み替えされる摩擦係合要素となる。こうした摩擦係合要素の掴み替えは、それらを操作する油圧サーボの係合圧と解放圧の精密な同時制御を必要とし、こうした制御を行うには、そのためのコントロールバルブの付加や油圧回路の複雑化等を招くこととなる。そこで、本形態では、第1速と第2速とで、キャリアC3にかかる反力トルクが逆転するのを利用して、ワンウェイクラッチF−1の係合方向を第1速時の反力トルク支持方向に合わせた設定とすることで、ワンウェイクラッチF−1に実質上ブレーキB−2の係合と同等の機能を発揮させて、第1速時のブレーキB−2の係合に代えて(ただし、ホイール駆動の車両コースト状態ではキャリアC3にかかる反力トルクの方向がエンジン駆動の状態に対して逆転するので、エンジンブレーキ効果を得るためには、図6〜図8に括弧付きの○印で示すようにブレーキB−2の係合を必要とする)、キャリアC2(C3)の係止を行っているわけである。したがって、単に変速段を達成する上では、ワンウェイクラッチを設けることなく、ブレーキB−2の係合により第1速を達成する構成を採ることもできる。
【0045】
図9〜図12は、上記各ギヤトレインの作動をプラネタリギヤセットの各変速要素の位置をギヤ比に対応させた横軸方向の間隔で縦軸として表すとともに、該縦軸上に各変速要素の回転数比を表した速度線図で示す。図の●印は各クラッチ及びブレーキの係合表し、○印は達成される変速段と、そのときの各変速要素の回転数比との関係を示す。図9に示す6速構成の場合、まず、第1速は、図5の係合図表に示すクラッチC−1とブレーキB−2の係合により達成される。これにより図1に示す入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−1経由で小径サンギヤS3に入力され、ワンウェイクラッチF−1の係合により係止されたキャリアC3に反力を取って、リングギヤR3の最大減速比の減速回転がカウンタドライブギヤ19に出力される。その後の動力伝達については、先にスケルトンを参照して説明した通りである。
【0046】
次に、第2速(2ND)は、クラッチC−1 とブレーキB−1の係合により達成される。この場合、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−1経由で小径サンギヤS3に入力され、ブレーキB−1の係合により係止された大径サンギヤS2に反力を取って、リングギヤR3の減速回転がカウンタドライブギヤ19に出力される。このときの減速比は、図5にみるように、第1速(1ST)より小さくなる。
【0047】
また、第3速(3RD)は、クラッチC−1とクラッチC−3の同時係合により達成される。この場合、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−1とクラッチC−3経由で同時に大径サンギヤS2と小径サンギヤS3に入力され、プラネタリギヤセットGが直結状態となるため、両サンギヤへの入力回転と同じリングギヤR2(R3)の回転が、入力軸11の回転に対しては減速された回転として、カウンタドライブギヤ19に出力される。
【0048】
更に、第4速(4TH)は、クラッチC−1とクラッチC−2の同時係合により達成される。この場合、一方で入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−1経由でサンギヤS3に入力され、他方で入力軸11からクラッチC−2経由で入力された非減速回転がキャリアC3に入力され、2つの入力回転の中間の回転が、入力軸11の回転に対しては僅かに減速されたリングギヤR3の回転としてカウンタドライブギヤ19に出力される。
【0049】
次に、第5速(5TH)は、クラッチC−2とクラッチC−3の同時係合により達成される。この場合、一方で入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−3経由でサンギヤS2に入力され、他方で入力軸11からクラッチC−2経由で入力された非減速回転がキャリアC2に入力され、リングギヤR2の入力軸11の回転より僅かに増速された回転がカウンタドライブギヤ19に出力される。
【0050】
そして、第6速(6TH)は、クラッチC−2とブレーキB−1の係合により達成される。この場合、入力軸11からクラッチC−2経由で非減速回転がキャリアC2にのみ入力され、ブレーキB−1の係合により係止されたサンギヤS2に反力を取るリングギヤR2の更に増速された回転がカウンタドライブギヤ19に出力される。
【0051】
なお、後進(REV)は、クラッチC−3とブレーキB−2の係合により達成される。この場合、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−3経由でサンギヤS2に入力され、ブレーキB−2の係合により係止されたキャリアC2に反力を取るリングギヤR2の逆転がカウンタドライブギヤ19に出力される。
【0052】
このようにして達成される各変速段は、図9の速度線図上で、リングギヤR2,R3の速度比を示す○印の上下方向の間隔を参照して定性的にわかるように、各変速段に対して比較的等間隔の良好な速度ステップとなる。この関係を具体的に数値を設定して、定量的に表すと、図5に示すギヤ比となる。この場合のギヤ比は、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1とリングギヤR1の歯数比λ1=44/78、プラネタリギヤセットGの大径サンギヤ側のサンギヤS2とリングギヤR2(R3)の歯数比λ2=36/78、小径サンギヤ側のサンギヤS3とリングギヤR3の歯数比λ3=30/78に設定すると、入出力ギヤ比は、
第1速(1ST):(1+λ1)/λ3=4.067
第2速(2ND):(1+λ1)(λ2+λ3)/λ3(1+λ2)=2.354
第3速(3RD):1+λ1=1.564
第4速(4TH):(1+λ1)/(1+λ1−λ1・λ3)=1.161
第5速(5TH):(1+λ1)/(1+λ1+λ1・λ2)=0.857
第6速(6TH):1/(1+λ2)=0.684
後進(REV):−(1+λ1)/λ2=−3.389
となる。そして、これらギヤ比間のステップは、
第1・2速間:1.73
第2・3速間:1.51
第3・4速間:1.35
第4・5速間:1.35
第5・6速間:1.25
となる。
【0053】
次に、図10に示す5速構成の場合、前進段である第1〜5速(1ST〜5TH)及び後進段(REV)について、6速構成の場合のそれらと入出力関係は同様となるが、クラッチC−1の係合による入力が入力軸11からの非減速回転となり、クラッチC−3の係合による入力が減速プラネタリギヤG1を経た減速回転となるため、減速比は異なってくる。すなわち、第1速(1ST)と第2速(2ND)では減速比が小さくなる。また、第3速(3RD)は、クラッチC−1経由の非減速入力に対してクラッチC−3経由の減速入力により直結とはならず、減速比の最も小さな減速段となる。そして、クラッチC−1とクラッチC−2の同時係合による第4速(4TH)が直結段となる。更に、オーバドライブの第5速(5TH)では、減速プラネタリギヤG1の減速比が6速構成の場合より大きいため、増速比は大きくなる。一方、後進(REV)については、減速プラネタリギヤG1の減速比が大きいことから、6速構成の場合より大きくなる。
【0054】
更に、図11に示す4速構成の場合、第1速(1ST)と第2速(2ND)については、5速構成の第1、第2速と入出力関係、減速比とも同じとなる。また、この場合、クラッチC−1とクラッチC−2の同時係合による入力時が直結段となる。そして、オーバドライブの第4速(4TH)については、6速構成のときの第6速と入出力関係、増速比ともに同じとなる。また、後進(REV)については、前2者と入出力関係については同様であるが、クラッチC−3経由の入力が非減速回転であることから、この場合の減速比は最も小さくなる。
【0055】
そして、図12に示す3速構成の場合、第1〜3速(1ST〜3RD)及び後進(REV)全ての変速段が4速構成の場合と同じ入出力関係、減速比となる。ただし、この場合の直結段の第3速(3RD)は、4速構成の場合と異なり、クラッチC−1とクラッチC−3の同時係合により達成される。
【0056】
次に、図13〜図16は、6〜3速を達成する各ギヤトレインを共通のケースに組み込んだ場合の実際の構成を断面で示す。以下、スケルトンに現れない細部について説明する。なお、本明細書を通じて、クラッチという用語は、摩擦部材と、それを支持してトルクを伝達するハブ及びドラムと、更にドラム内にそれをシリンダとして組み込まれる油圧サーボとを総称するものとし、ブレーキについても、摩擦部材、それを支持してケースにトルクを伝達するハブ及びケースをシリンダとして組み込まれる油圧サーボを総称するものとする。
【0057】
変速機構を収容するケース10は、後端壁部10eから前方に向かってテーパ状に拡径する周壁部10fを備えるケース本体10Bと、前端の開口を閉じるオイルポンプボディ10pと、それに固定のオイルポンプカバー10qからなり、ケース本体10Bにボルト止め固定される前端壁10Aとから構成されている。そして、本体10Bの周壁部10f内面には、前端の開口からほぼ後端壁部10eに達するスプライン10gが形成され、後端壁部10eには、入力軸11の後端を支持すべく、後端壁部から前方に突出する後側ボス部10bと、後に詳記するブレーキB−2の油圧サーボのシリンダの内周壁を構成する環状壁10e’が形成されている。ケース本体10Bの軸方向中央部には段差が形成され、この段差部にケース本体前側から別部材で構成されるセンタサポート10Dがボルト止め固定されている。センタサポート10Dには、その内周側で後方に延びるボス部10dが設けられ、カウンタドライブギヤ19をベアリングを介して支持する支持部を構成している。また、前端壁10Aには、オイルポンプカバー10qから後方に突出する前側ボス部10aが形成されている。
【0058】
入力軸11は、加工及び組付性の便宜上から前後2軸11A,11Bに分割され、スプライン係合で相互に連結一体化され、軸前半部11Aの軸内には、潤滑圧の供給油路11rとサーボ圧の供給油路11pが形成され、軸後半部11Bの軸内には、潤滑圧油路11sが形成されている。また、軸前半部11Aの後端寄りの外周には、フランジ11aが形成され、軸後半部11Bの後端寄りの外周には、フランジ11bが形成されている。そして、軸前半部11Aは、オイルポンプ配設位置の内周側と、フランジ11aの直前部で、それぞれブッシュを介して前側ボス部10aの内周に嵌挿されたスリーブ軸(ステータシャフト)13に支持され、軸後半部11Bは、前端を軸前半部11Aとのスプライン係合で、また後端をケース10の後側ボス部10bにベアリングを介して径方向支持され、支持部に隣接させて形成されたそれぞれのフランジ11a,11bと両ボス部先端との間に介装されたスラストベアリングにより軸方向支持されている。
【0059】
こうしたケース構成と、その全長に渡って延びる入力軸に対して、センタサポート10Dの前側には2つのクラッチC−1,C−3が配置され、後側にはプラネタリギヤセットGと1つのクラッチC−2が配置されている。次に、6速〜3速構成について共通の構成を採る(ただし、3速構成においては、クラッチC−2の除去に伴う若干の変更がなされる)センタサポート10Dより後側のトレイン構成について先に説明する。
【0060】
図14に拡大して詳細を示すように、プラネタリギヤセットGは、入力軸11の軸後半部11Bの外周に配置され、サンギヤS3は、そのギヤ部と延長軸部をそれぞれブッシュを介して軸後半部11Bに両端支持され、サンギヤS2は、そのギヤ部と延長軸部をそれぞれブッシュを介してサンギヤS3の延長軸部に両端支持されている。キャリアC2(C3)は、その前端側をブッシュを介してサンギヤS2の延長軸部に片持ち支持され、リングギヤR2は、フランジ部材を介するスプライン連結で、カウンタドライブギヤ19に支持されている。そして、プラネタリギヤセットGのサンギヤS2は、その延長軸部をスプライン係合で動力伝達部材14に連結され、動力伝達部材14は、クラッチC−3のドラム72に端面噛み合いで連結されている。また、サンギヤS3は、その延長軸部をクラッチC−1の油圧サーボのシリンダ60の延長部にスプライン係合で連結されている。そして、キャリアC2(C3)は、その後端に固定されてプラネタリギヤセットGの外周側を前方に向かって延びるクラッチC−2のハブ54とブレーキB−2のハブとワンウェイクラッチF−1のインナレースとを一体化した部材94に連結されている。
【0061】
並列配置のブレーキB−2とワンウェイクラッチF−1は、キャリアC3から軸方向に延長され、途中に段差を有する前記ハブ54の延長部94をブレーキハブ及びインナレースとする構成とされている。ワンウェイクラッチF−1のアウタレースは、ケース本体10Bの周壁内周に形成されたスプライン10gに係合支持されている。
【0062】
ブレーキB−2は、多板構成とされ、その摩擦部材93は、プラネタリギヤセットGの外周側における前方に配置され、ブレーキB−2の油圧サーボ9は、クラッチC−2の油圧サーボ5の外周側におけるケース10の後端壁部10eに配置され、クラッチC−2の摩擦部材53の外側を通してブレーキB−2の摩擦部材93を係合可能とされ、ワンウェイクラッチF−1と並べて配置されている。そして、ブレーキB−2の油圧サーボ9は、変速機ケース10の後端壁部10eに、ピストン91を内包するシリンダを内蔵させた形態で設けられている。更に詳しくは、摩擦部材93のセパレータプレートが、それらの外周をスプライン係合でケース10の周壁部10fに回り止め支持され、摩擦材ディスクが、それらの外周をスプライン係合でブレーキハブ94に回り止め支持されている。また、油圧サーボ9は、ケース10の周壁部10fと、後端壁部10eと、後端壁部10eから軸方向に延びる環状壁10e’とで画定されるシリンダに環状のピストン91を嵌挿した構成とされ、ピストン91の延長部がクラッチC−2のドラム52の外周を通って摩擦部材93に対峙する配置とされている。ブレーキB−2の油圧サーボ9のリターンスプリング96とその受け部96’は、ブレーキB−2の摩擦部材93を支持するスプライン10gの凹部に配置されている。このように、ブレーキB−2の油圧サーボ9のリターンスプリング96とその受け部96’を、ケース10のスプラインの凹部に配置することで、リターンスプリング96について、実質上配設スペースを要しない配置を実現でき、その分だけ変速機のケース外径が小さくなっている。
【0063】
プラネタリギヤセットGの一方側の1つのクラッチとしてのクラッチC−2は、入力側をクラッチドラム52とし、出力側をクラッチハブ54とする構成とされ、クラッチドラム52内周側がスリーブ状のシリンダ部材を介して入力軸11のフランジ部11bに連結支持されている。クラッチドラム52の径方向中央部はシリンダ部材と協働して後方に突出し、その内側がシリンダとされ、油圧サーボ5を構成している。クラッチドラム52の外周側の軸方向延長部内周には、セパレータプレートがスプライン係合支持され、摩擦材ディスクは、キャリアC3と一体のクラッチハブ54の外周にスプライン係合支持されている。
【0064】
クラッチC−2の油圧サーボ5は、プラネタリギヤセットGの後側、すなわち変速機構の最後部に配置され、内周側を入力軸後半部11Bのフランジ部11bに連結され、外周側を拡径延長してドラム52とされたシリンダ50と、シリンダ50に内包されたピストン51と、遠心油圧のキャンセルプレート55と、リターンスプリング56とで構成されている。この油圧サーボ5の油圧の給排は、変速機ケースの後側ボス部10bに形成されたケース内油路10tを介して行われる。
【0065】
クラッチC−2の摩擦部材53は、プラネタリギヤセットGの外周側における後方で、かつ、リングギヤのない部位に、内周側をハブ54にスプライン係合させ、外周側をドラム52にスプライン係合させた多板の摩擦材ディスクとセパレータプレートから構成され、ドラム52の先端に固定されたバッキングプレートと、油圧サーボ5内への油圧の供給によりシリンダ50から押し出されるピストン51とで挟持されるクラッチ係合作動により、ドラム52からハブ54にトルクを伝達する構成とされている。
【0066】
このように、クラッチC−2及びブレーキB−2に関して、減速されないトルクを伝達することでクラッチC−1,C−3に比べてトルク容量の小さなクラッチC−2の摩擦部材53を、プラネタリギヤセットGの外周側に配置することで大径化して摩擦部材側で容量を稼ぎ、その分だけ小径化したクラッチC−2の油圧サーボ5の外周側にブレーキB−2の油圧サーボ9を径方向に重ねた配置となるため、径方向スペースを有効に利用した両油圧サーボの配置により、更なる変速機軸長の短縮がなされている。
【0067】
次に、カウンタドライブギヤ19の支持に関しては、該ギヤ19は、その支持部材を構成するサポート10Dの内周を後方に延びるボス部10dの外周にベアリング12を介して支持されている。このサポート10Dは、ケース本体10Bのほぼ中間部を若干拡径して形成される段差部におけるスプラインの凸部の端面に外周側をボルト止めしてケース本体10Bに固定されている。
【0068】
こうした共通の構成を採る後部に対して、前側は変速段数に応じて変更される。以下、6速構成の場合から順次説明する。
【0069】
図15に示す6速構成の場合、減速プラネタリギヤG1はシングルプラネタリギヤとされる。減速プラネタリギヤG1は、前側ボス部10aの内周に嵌合固定されて前端部でトルクコンバータのステータをワンウェイクラッチを介してオイルポンプカバーに固定するステータシャフト13の後端部に反力要素としてのサンギヤS1をスプライン係合で固定し、入力要素としてのリングギヤR1を入力軸11のフランジ11aの外周にフレンジ部材を介して連結させて、変速機構の前側に配置されている。そして、出力要素としてのキャリアC1は、その前端側を、2つのクラッチC−1,C−3に共通のハブ74と一体化されている。
【0070】
次に、2つのクラッチC−1,C−3の油圧サーボ6,7は、減速プラネタリギヤG1を挟んでその両側に、前後に向かい合わせに配置されている。そして、クラッチC−1の油圧サーボ6は、入力軸の軸前半部11Aの後端部外周に回転自在に支持され、外周側にドラム62を固定されたシリンダ60と、シリンダ60に摺動自在に嵌挿されたピストン61と、ピストン61の背面にかかる遠心油圧を相殺するキャンセルプレート65と、リターンスプリング66とから構成されている。この油圧サーボに対するサーボ圧の給排は、軸前半部11Aの軸内油路11pを介して行われる。
【0071】
このクラッチC−1の油圧サーボ6は、該クラッチの摩擦部材63の内周側に配置され、プラネタリギヤセットGのサンギヤS3にシリンダ60の延長軸部でスプライン連結させて、クラッチC−1のドラム62からプラネタリギヤセットGのサンギヤS3に動力を伝達する構成とされている。そして、プラネタリギヤセットGのリングギヤR3からの出力をカウンタ軸20に伝達するカウンタドライブギヤ19の支持部材としてのサポート10Cの内周側で入力軸前半部10Aに支持されている。
【0072】
こうした構成により、クラッチC−1からプラネタリギヤセットGのサンギヤS3への動力伝達を、クラッチC−1の油圧サーボ6を利用して、動力伝達のための格別の部材を軸方向に介在させることなく行うことができ、それによる一層の軸長の短縮がなされている。また、クラッチC−1の油圧サーボ6を介するドラム62の支持部62aを、実質的な軸方向スペースを要しないように、動力伝達部材14の内周側に配置することで、油圧サーボ6の軸方向長を、該油圧サーボへのサーボ圧の供給路を軸方向両側で漏れ止めするシールリングの配置間隔に対応する軸方向長まで薄くして、クラッチドラム62を確実に支持しながら変速機構の軸長の短縮がなされている。
【0073】
クラッチC−3の油圧サーボ7は、前側ボス部10aの外周にブッシュを介して回転自在に支持され、外周側を拡径してドラム72とされたシリンダ70と、シリンダ70に摺動自在に嵌挿されたピストン71と、ピストン71の背面にかかる遠心油圧を相殺するキャンセルプレート75と、リターンスプリング76とから構成されている。この油圧サーボ7に対するサーボ圧の給排は、前側ボス部10aに形成されたケース内油路10qを介して行われる。
【0074】
クラッチC−1の摩擦部材63とクラッチC−3の摩擦部材73は、減速プラネタリギヤG1の外周側に並べて配置されている。そして、クラッチC−1の摩擦部材63は、内周側をハブ74にスプライン係合させ、外周側をドラム62にスプライン係合させた多板の摩擦材ディスクとセパレータプレートから構成され、ドラム62の先端に固定されたバッキングプレートと、油圧サーボ6内への油圧の供給によりシリンダ60から押し出されるピストン61とで挟持されるクラッチ係合作動により、ハブ74からドラム62にトルクを伝達する構成とされている。
【0075】
クラッチC−3の摩擦部材73は、内周側をハブ74にスプライン係合させ、外周側をドラム72にスプライン係合させた多板の摩擦材ディスクとセパレータプレートから構成され、ドラム72の先端に固定されたバッキングプレートと、油圧サーボ7内への油圧の供給によりシリンダ70から押し出されるピストン71とで挟持されるクラッチ係合作動により、ハブ74からドラム72にトルクを伝達する構成とされている。
【0076】
このように、減速プラネタリギヤG1から出力される減速トルクをプラネタリギヤセットGに伝達する2つのクラッチC−1,C−3を減速プラネタリギヤG1の直近に、しかも減速プラネタリギヤG1の外周側の摩擦部材63,73及び前後の油圧サーボ6,7で取り囲む構成となるため、減速プラネタリギヤG1から両クラッチC−1,C−3への動力伝達を取り囲まれた内部のみで、キャリアC1から両クラッチに共通のハブ74へ、格別の部材を配することなく直接行い、2つのクラッチを経た一方の動力のプラネタリギヤセットGへの伝達を油圧サーボ6を介して行うことができるようにし、動力伝達のために軸への支持を必要とし軸方向に重ねられる部材の数を、減速プラネタリギヤG1から両クラッチC−1,C−3への直接の動力伝達と、クラッチC−1の油圧サーボ6を利用した動力伝達により削減している。したがって、この構成により、変速機構の軸長が短縮されている。また、減速トルクの伝達経路を集約化し、プラネタリギヤセットGへの減速トルクの入力経路と非減速トルクの入力経路の錯綜によりプラネタリギヤセットGの内周側に動力伝達のための軸を通すような多軸構造をなくしているため、変速機の軽量、コンパクト化がなされている。
【0077】
また、入力軸11の前後分割に伴うそれら相互の連結部と、入力軸11の外周とカウンタドライブギヤ内周との間を通してのクラッチC−1及びクラッチC−3のプラネタリギヤGとの連結に関して、入力軸前半部11Aと後半部11Bのスプライン連結部、サンギヤS3の延長軸部とシリンダ60の延長軸部とのスプライン連結部、及びサンギヤS2の延長軸部と動力伝達部材14とのスプライン連結部が、相互に軸方向にずらされているので、それら3つの連結部の径方向の重なりによる大径化が防がれ、コンパクトな構成となっている。
【0078】
次に、第1のブレーキB−1はバンドブレーキとされ、そのブレーキバンド83は、クラッチC−3のドラム72を締めつける構成とされている。これにより、ブレーキB−1は、軸方向スペースを要せず、しかも径方向寸法をほとんど増加させずに配置されていることになる。なお、このバンドブレーキの油圧サーボは、ブレーキバンド83と同じ軸方向位置で、ドラム72に対して接線方向に延びるものであるため、図示を省略している。このように、減速プラネラリギヤG1の外周側に配置されたクラッチC−3の摩擦部材73を支持するクラッチドラム72をブレーキB−1のドラムとし、しかも該ドラムの支持部を減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1と重なる位置に配置したため、ブレーキドラム配設のめの径方向スペースと、ドラム支持のための軸方向スペースを共に削減して、変速機構の外径と軸長の短縮がなされている。しかも、バンド83で締結されるドラムを締結部の内周側でケースの前側ボス部10aに支持した構成となるため、クラッチドラム72を利用しながら、安定したブレーキ性能を得ることができる。
【0079】
次に、図16に示す5速構成の場合、6速構成に対して減速プラネタリギヤG1がダブルピニオンタイプに変更されるため、入力軸11と2つのクラッチC−1,C−3に対する連結関係が変更されるが、図15と図17を対比して一見明らかなように、2つのクラッチC−1,C−3の構成と配置自体は6速構成の場合と同様とすることができる。したがって、以下変更点を主に説明する。
【0080】
減速プラネタリギヤG1は、キャリアC1が入力軸11と一体の径方向フランジ部11aに連結支持され、リングギヤR1が浮動状態に支持された配置とされている。クラッチC−1のハブ64はキャリアC1の外周の軸方向延長部とされ、その外周側に摩擦材ディスクをスプライン係合支持する構成とされ、内周にセパレータプレートをスプライン係合支持するドラム62は、6速構成の場合と同様の手法でサンギヤS3に連結されている。このクラッチC−1の油圧サーボ6についても、前記6速構成の場合と同様である。一方、減速回転の入力手段を構成するクラッチC−3は、リングギヤR1の外周をクラッチハブとして、その外周にスプライン係合で摩擦部材の摩擦材ディスクを連結支持する構成とされ、セパレータプレートを内周側にスプライン係合支持するクラッチドラム72と、油圧サーボ7の構成は6速構成の場合と同様である。また、ブレーキB−1については、6速構成の場合と実質同様であるので説明を省略する。
【0081】
更に、図17に示す4速構成の場合、減速プラネタリギヤG1の除去に伴い、2つのクラッチC−1,C−3の入力軸11に対する連結関係は更に単純化される。この場合も2つのクラッチC−1,C−3及びブレーキB−1の構成と配置は6、5速構成の場合と同様とすることができる。この4速構成の場合、2つのクラッチC−1,C−3のハブは1部材として共通化され、入力軸11の径方向フランジ部の外周に連結固定される。この連結位置がハブ内周側の軸方向中央位置とされているのは、ハブに係る荷重をバランス良く支持するためである。
【0082】
また、図18に示す3速構成の場合、4速構成に対して、オーバドライブ段用のクラッチC−2を除去することになるので、変速機構後部側の変更となる。この場合、単にクラッチC−2の組み込みをなくすことで対応可能である。なお、3速及び4速構成の場合、減速プラネタリギヤG1により増幅されたトルクがクラッチC−1,C−3に作用しないため、5速及び6速構成に較べ、変速機に入力されるトルクが減速プラネタリギヤG1のギヤ比倍の高トルク容量の変速機とすることができる。
【0083】
以上詳記したように、第1実施形態によれば、多段化時の減速プラネタリギヤG1の配設側を2つのクラッチC−1,C−3の配設側とすることで、機構のコンパクト化のために3つの要素C−1,C−3,G1の関連配置を工夫することができるため、1つのクラッチC−2の配設側において2つの要素C−2,G1の関連配置を工夫する場合に比べて工夫の自由度が増すため、変速機ケース10やギヤトレインの大幅な変更なしに、減速プラネタリギヤG1の配設・非配設と、それに伴う2つのクラッチC−1,C−3の部分的な変更で変速段数の増減への対応が可能となる。また、減速プラネタリギヤG1の配設により増幅されたトルクを伝達することになる入力経路を短く構成することができ、それにより入力経路を構成する部材の強度保持のための厚肉化を防いで、変速段数の増加による重量増加を抑えることができる。
【0084】
次に、図19〜図23は、プラネタリギヤセットGの構成と、2つのクラッチC−1,C−3の構成を若干変更した第2実施形態を示す。まず、図19にスケルトンで示すように、この形態のプラネタリギヤセットGは、第1実施形態のものと異なり、ロングピニオンP3がサンギヤS3に対する噛合部とショートピニオンP2に対する噛合部で径の異なる段付ピニオンとされている。そして、この場合、ショートピニオンP2は、段付ピニオンP3の小径部に噛合するとともに、更に大径サンギヤS2とリングギヤR2にも噛合する構成とされている。その余の後部構成は第1実施形態と同様であり、各クラッチ、ブレーキ及びワンウェイクラッチの係合に対して達成される変速段、更に、速度線図についても第1実施形態の場合と同様となるので、説明を省略する。
【0085】
この場合も共通の構成を採る後部に対して、前側は変速段数に応じて変更される。この形態においても6速構成の場合、図20にスケルトン、図22に断面で示すように、減速プラネタリギヤG1はシンプルプラネタリギヤとされ、そのサンギヤS1を前壁10Aを通して導入されているステータシャフト13の先端外周にスプライン嵌合支持され、入力要素としてのリングギヤR1を入力軸11と一体の径方向フランジ部11aに連結支持され、ピニオンP1を支持するキャリアC1がクラッチC−3のハブ74に連結されている。
【0086】
クラッチC−1のドラム62は、入力軸11の外周にブッシュを介して回転自在に支持されたシリンダ部材60の外周端部に固定され、その内周側にセパレータプレートをスプライン係合支持する構成とされ、外周に摩擦材ディスクをスプライン係合支持するクラッチハブ64は、サンギヤS3から延びる動力伝達部材にスプライン係合支持されている。このクラッチC−1の油圧サーボ6は、上記シリンダ部材60の一側をシリンダとし、それに外嵌するピストン61を備える構成とされ、ピストン61の外周側はクラッチドラム62と摩擦部材63の間まで径方向外方に延長されている。
【0087】
一方、クラッチC−3のハブ74は、一端側を減速プラネタリギヤG1のキャリアC1に連結され、他端側をクラッチC−1のドラム62に連結されてシリンダ部材60を介して入力軸11に支持され、その外周にスプライン係合で摩擦部材の摩擦材ディスクを支持する構成とされ、セパレータプレートを内周側にスプライン係合支持するドラム74は、軸方向後方に延長されて、その先端部に櫛歯状の噛み合い部で連結する板状の連結部材を介してサンギヤS2の延長軸部にスプライン係合支持されている。クラッチドラム74の前側は若干縮径された段差部を経て径方向に延長され、内周側で軸方向後方に折り返されて減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1の裏側まで延び、そこでステータシャフト13の先端部外周にブッシュを介して支持されている。クラッチC−3の油圧サーボ7は、ドラム74の段差部と折り返し部との間に形成されたシリンダ70と、そこに嵌挿されたピストン71で構成されている。なお、クラッチC−3のドラム74は、バンド構成のブレーキB−1のドラムも兼ねており、ブレーキB−1の油圧サーボは、他の油圧サーボと異なりバンドに対して接線方向に延びる配置となるため、図示されていない。
【0088】
次に、図23に示す5速構成の場合、減速プラネタリギヤG1は、ダブルピニオン構成とされ、キャリアC1が入力軸11と一体の径方向フランジ部11aに連結支持され、リングギヤR1が浮動状態に支持された配置とされている。この場合の非減速回転の入力クラッチとなるクラッチC−1のドラム62は、径方向フランジ部11aの外周端部に固定され、その内周側にセパレータプレートをスプライン係合支持する構成とされ、外周に摩擦材ディスクをスプライン係合支持するクラッチハブ64は、サンギヤS3から延びる動力伝達部材にスプライン係合支持されている。このクラッチC−1の油圧サーボ6は、入力軸11と一体の径方向フランジ部11aの一側をシリンダ60とし、径方向フランジ部11aに外嵌するピストン61を備える構成とされている。
【0089】
一方、減速回転の入力手段を構成するクラッチC−3は、リングギヤR1の外周をハブとして、その外周にスプライン係合で摩擦部材の摩擦材ディスクを支持する構成とされている。この場合のクラッチドラム72側の構成は、油圧サーボ7の構成も含めて、6速構成の場合と同様である。
【0090】
最後に、図24及び図25は、本発明の第3実施形態を示す。この形態は、前2形態のギヤトレイン配置とは逆に、1つのクラッチC−2が前側、2つのクラッチC−1,C−3が後側に配置された例である。こうした配置を採る場合の6速構成時の全体構成は、図24にスケルトンで示すようになる。このトレインを構成する各要素の機能は、前記第1実施形態における6速構成のものと全く同様となるので、各要素に同様の参照符号を付して対応関係を示し、係合図表、速度線図及びそれに基づくギヤ比、変速段の説明については、それらの参照を以て説明に代え、以下、具体的な構成について、相違点を主として図25の断面図に基づき説明する。
【0091】
まず、キャリアC2(C3)に入力軸11の回転を直接入力するクラッチC−2は、前記の説明から明らかなように、前進1速(1ST)〜3速(3RD)及び後進(REV)時に係合されないクラッチである。そのため、このクラッチC−2は、車両停止時のようなトルクコンバータ4からのエンジントルクを増幅したストールトルクを受けることはなく、また、図9の速度線図を参照して、他の2つのクラッチC−1,C−3との対比でわかるように、減速による増幅トルクを負担することはない。したがって、このクラッチC−2は、他のクラッチに比してトルク容量(この容量は、クラッチ径と摩擦部材の枚数により決まる)の小さなクラッチとすることができる。したがって、このクラッチ径を小さくすることで、図24に示す軸位置関係から、主軸Xとデフ軸Zの軸間距離に対して、クラッチ径を小さくした分だけデフリングギヤ31のギヤ径を大きくすることができる。
【0092】
また、本実施形態のクラッチC−2は、上記理由から他の2つのクラッチC−1,C−3に比べてコンパクトにすることができる関係を利用して、カウンタドライブギヤ19の一方側に配置されることで、結果的にギヤトレインの端部に位置させ、その摩擦部材と油圧サーボの間に障害物のない配置とすることができる。そこで、本形態では、クラッチC−2を操作する油圧サーボ5を、変速機ケース10にシリンダとピストンとを内蔵させた静止シリンダ型の油圧サーボとされている。詳しくは、シリンダ50は、変速機ケース10のトルクコンバータハウジング側の隔壁(オイルポンプボディを兼ねる)10aのカバー10b側に環状溝として形成されており、その内部に、同じく環板状のピストン51が軸方向摺動自在に嵌合された構成とされている。そして、このピストン51は、スラストベアリング57を介してプレッシャプレート58を押圧する構成とされ、入力軸11に一体化されたフランジ59との間でクラッチ摩擦部材(ディスクとセパレータプレート)53を挟持して、フランジ59側のハブからの入力回転をドラム52を介してキャリアC2,C3に入力することになる。
【0093】
ところで、こうした静止シリンダ型の油圧サーボ構成を採ると、一般的なドラム内配置の油圧サーボのようにサーボドラム内でサーボ力を閉ループさせることで、軸方向の不平衡力を相殺することができなくなるが、本形態では、減速プラネタリギヤG1を、その反力要素としてのサンギヤS1が変速機ケース10に固定され、その入力要素としてのリングギヤR1がフランジ16を介して入力軸11に連結されており、フランジ16とサンギヤS1との間にベアリング17が配設された構成により、静止シリンダ型油圧サーボ5のサーボ力は、入力軸11、フランジ16及びベアリング17を介してサンギヤS1に伝達されて、変速機ケース10のリアカバー10Cに支持されるようにしている。
【0094】
他方、クラッチC−1の摩擦部材63は、減速プラネタリギヤG1の外周側に配置されている。そして、クラッチC−3の摩擦部材73は、プラネタリギヤセットGの外周側に配置されている。このように、これらクラッチをそれぞれ減速プラネタリギヤG1及びプラネタリギヤセットGに対して外径側にオーバラップさせているのは、これらのクラッチが、エンジントルクを減速して増幅されたトルクを伝達することと、前記ストールトルク負荷の関係で、前記クラッチC−2より大容量のものであることから、減速プラネタリギヤG1とプラネタリギヤセットGに対して軸方向に並べた場合の小径化に伴う摩擦部材枚数の増加による軸方向寸法の増加を避ける意味合いを持っている。
【0095】
このように配置した両クラッチC−1,C−3の摩擦部材63,73に対して、減速プラネタリギヤG1の軸方向他方側に、クラッチC−1及びクラッチC−3を操作する油圧サーボ6及び油圧サーボ7が設けられている。これら油圧サーボ6,7は、それらの個々のピストン61,71を一方のドラム60の内側及び外側に嵌合させて個々に作動可能に配置されている。更に詳しくは、クラッチC−1を構成する摩擦部材63の外周を支持するドラム62の内周側がピストン61のシリンダとされ、ドラム62の外周側に被さるクラッチC−3のドラムが、ピストン71とされている。
【0096】
この配列の油圧サーボ構成では、ピストン61がクラッチC−1の摩擦部材63をドラム62との間で挟持し、それによりキャリアC1の減速回転をハブ64を介して小径のサンギヤS3に入力する作動を行う。このときのサーボ力は、ピストン61から摩擦部材63を経てドラム62に戻り、ドラム62にかかる油圧反力と相殺する閉ループを構成する。一方、ピストン71は、クラッチC−3の摩擦部材73をドラム62との間で挟持し、それによりキャリアC1の減速回転をハブ74を介して大径のサンギヤS2に入力する作動を行う。このときのサーボ力も、ピストン71から摩擦部材73を経てドラム62に戻り、ドラム62にかかる油圧反力と相殺する閉ループを構成する。
【0097】
このように、両クラッチC−1,C−3の摩擦部材63,73の位置を自動変速機の外端から離れた配置とし、比較的設計自由度が大きなそれらの操作用の油圧サーボ6,7を外端に配置することにより、搭載する車両との干渉が問題となる変速機端部の形状に自由度を与え、車両搭載性を向上させている。しかも、一方のクラッチC−1のドラム62の内側と外側をシリンダとして、それぞれのピストン61,71を内外位置関係に置いて、個々に作動可能とすることで、2つのクラッチC−1,C−3の掴み替え操作(こうした操作は、跳び変速時に必要となる)を可能としながら、両クラッチ油圧サーボ6,7のシリンダの共通化により、両油圧サーボの専有スペースをコンパクト化している。
【0098】
この第3実施形態のように1つのクラッチC−2を前側にし、2つのクラッチC−1,C−3をプラネタリギヤセットの後側に配置した構成を基本とする場合でも、前記2形態と同様に減速プラネタリギヤG1の有無と、それに応じた両クラッチC−1,C−3の入力側の連結構成の変更で変速段数の変更への対応が可能である。そして、特にこのトレイン配置を基本とする場合、リアケース10C部を変更することで、変速段数の変更への対応が可能となるため、各変速段数に対して変速機の外形を最小限に抑えるコンパクト化が可能となる。
【0099】
以上、本発明をプラネタリギヤセットを良好なギヤ比ステップが得られるラビニヨ式のギヤセットとした一実施形態を基に詳説したが、同様の良好なギヤ比ステップが得られるギヤセットは、これに限るものではなく、各変速要素の連結関係と入出力関係の工夫により、シンプルプラネタリギヤとダブルプラネタリギヤの組み合わせ、ダブルプラネタリギヤ同士の組み合わせによっても、同様の比較的良好なギヤ比ステップを実現できる。したがって、本発明は、こうした異なる形式のギヤセットにより同様のクラッチ数とブレーキ数により多段を達成するギヤトレインにも適用可能なものであり、例示した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動変速機の第1実施形態における6速ギヤトレインを展開して示すスケルトン図である。
【図2】第1実施形態における5速ギヤトレインの一部を示すスケルトン図である。
【図3】第1実施形態における4速ギヤトレインの一部を示すスケルトン図である。
【図4】第1実施形態における3速ギヤトレインを展開して示すスケルトン図である。
【図5】上記6速ギヤトレインの作動を表す係合図表である。
【図6】上記5速ギヤトレインの作動を表す係合図表である。
【図7】上記4速ギヤトレインの作動を表す係合図表である。
【図8】上記3速ギヤトレインの作動を表す係合図表である。
【図9】上記6速ギヤトレインの速度線図である。
【図10】上記5速ギヤトレインの速度線図である。
【図11】上記4速ギヤトレインの速度線図である。
【図12】上記3速ギヤトレインの速度線図である。
【図13】上記6速ギヤトレインを具体化した断面図である。
【図14】図13の部分拡大図である。
【図15】図13の他部の部分拡大図である。
【図16】上記5速ギヤトレインを具体化した部分断面図である。
【図17】上記4速ギヤトレインを具体化した部分断面図である。
【図18】上記3速ギヤトレインを具体化した断面図である。
【図19】本発明の自動変速機の第2実施形態における6速ギヤトレインを展開して示すスケルトン図である。
【図20】第2実施形態における5速ギヤトレインの一部を示すスケルトン図である。
【図21】第2実施形態における4速ギヤトレインの一部を示すスケルトン図である。
【図22】第2実施形態の6速ギヤトレインを具体化した断面図である。
【図23】第2実施形態の5速ギヤトレインを具体化した断面図である。
【図24】本発明の自動変速機の第3実施形態における6速ギヤトレインを展開して示すスケルトン図である。
【図25】第3実施形態における6速ギヤトレインを具体化した断面図である。
【符号の説明】
G プラネタリギヤセット
G1 減速プラネタリギヤ
C−3 一方のクラッチ
C−1 他方のクラッチ
C−2 1つのクラッチ
B−1 バンドブレーキ(第1係止要素)
B−2 ブレーキ(第2係止要素)
F−1 ワンウェイクラッチ(第2係止要素)
S1 サンギヤ(要素)
C1 出力要素
S3 サンギヤ(第1変速要素)
R2(R3) リングギヤ(第2変速要素)
C2(C3) キャリア(第3変速要素)
S2 サンギヤ(第4変速要素)
5,6,7 油圧サーボ
10 変速機ケース
10a 変速ケース自体のボス部
10C リアケース
11 入力軸
13 ステータシャフト
19 カウンタドライブギヤ(出力部材)
52,62,72 ドラム
53,63,73 摩擦部材
54,64,74 ハブ
60 シリンダ(動力伝達部材)
83 バンド

Claims (11)

  1. 4つの変速要素を有するプラネタリギヤセットと、該プラネタリギヤセットの3つの異なる入力経路を係脱自在に連結する3つのクラッチと、少なくとも2つの係止要素とを備え、各クラッチの係脱による入力経路の選択と、係止要素の係脱の選択による適宜の変速要素の固定により多段の変速段を達成する車両用自動変速機であって、必要に応じて少なくともいずれかのクラッチへの入力を減速する減速プラネタリギヤが配設されるものにおいて、
    前記プラネタリギヤセットの一方側に2つのクラッチが配置され、
    前記プラネタリギヤセットの他方側に1つのクラッチが配置され、
    前記減速プラネタリギヤは、前記2つのクラッチが配置された側に、変速機ケース側のボス部先端に1つの要素を固定させて配置され、少なくとも前記2つのクラッチのいずれか一方に連結され
    前記2つのクラッチの一方の油圧サーボは、前記減速プラネタリギヤの一方側で前記ボス部上に配置され、
    前記2つのクラッチの他方の油圧サーボは、前記減速プラネタリギヤの他方側で入力軸上に配置されることを特徴とする車両用自動変速機。
  2. 前記プラネタリギヤセットと前記2つのクラッチの内周側を通る入力軸を備え、
    該入力軸と、前記2つのクラッチを経た入力経路を構成する部材は、前記プラネタリギヤセットと前記2つのクラッチとの間で、軸方向に着脱自在に連結された、請求項1記載の車両用自動変速機。
  3. 前記2つのクラッチの一方の摩擦部材は、減速プラネタリギヤの外周側に配置され、
    前記2つのクラッチの他方の摩擦部材は、他方のクラッチの油圧サーボの外周側に配置された、請求項1又は2記載の車両用自動変速機。
  4. 前記係止要素は、バンドブレーキを包含し、該バンドブレーキのバンドは、前記2つのクラッチの一方のドラムの外周に係合するものとされ、
    該ドラムは、変速機ケース側のボス部で支持された、請求項1〜3のいずれか1項記載の車両用自動変速機。
  5. 前記変速機ケース側のボス部は、変速ケース自体のボス部と、該ボス部を超えて延在するステータシャフトからなり、
    前記減速プラネタリギヤは、そのサンギヤを前記ステータシャフトの先端部に固定され、
    前記2つのクラッチの一方のドラムは、前記サンギヤと径方向に重なる位置で前記変速機ケース自体のボス部に支持された、請求項記載の車両用自動変速機。
  6. 前記プラネタリギヤセットは、その各変速要素の位置をギヤ比に対応させた横軸方向の間隔で縦軸として表すとともに、該縦軸上に各変速要素の回転数比を表した速度線図に基づき横軸方向にその一端から順次各要素を第1〜第4変速要素と称したときに、
    第1変速要素は、前記2つのクラッチのうちの他方のクラッチにより入力経路を連結され、
    第2変速要素は、出力部材に連結され、
    第3変速要素は、プラネタリギヤセットの他方側に配置された前記1つのクラッチにより入力経路を連結されるとともに、第2係止要素により係止可能とされ、
    第4変速要素は、前記2つのクラッチのうちの一方のクラッチにより入力経路を連結されるとともに、第1係止要素により係止可能とされた、請求項1〜5のいずれか1項記載の車両用自動変速機。
  7. 前記2つのクラッチは、共に前記減速プラネタリギヤの出力要素に連結された、請求項1〜6のいずれか1項記載の車両用自動変速機。
  8. 前記2つのクラッチの一方は、減速プラネタリギヤの出力要素に連結され、
    前記2つのクラッチの他方は、入力軸に連結された、請求項1〜6のいずれか1項記載の車両用自動変速機。
  9. 前記2つのクラッチの他方の油圧サーボは、他方のクラッチのドラムをプラネタリギヤセットの変速要素に連結する動力伝達部材で構成された、請求項1〜8のいずれか1項記載の車両用自動変速機。
  10. 前記2つのクラッチは共通のハブを有し、
    該ハブは前記減速プラネタリギヤの出力要素に連結された、請求項記載の車両用自動変速機。
  11. 変速機ケースの後端部にリアケースが設けられ、
    前記2つのクラッチと、前記減速プラネタリギヤは、前記リアケース内に配置された、請求項1〜10のいずれか1項記載の車両用自動変速機。
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