JP4201469B2 - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版用支持体の製造方法に関し、詳しくは、用いられたアルミニウム圧延板の圧延方向を容易に判別することができるため、取扱い性に優れる平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平版印刷版として、アルミニウム板に粗面化処理を施し、感光層を設けたものが用いられている。この平版印刷版は、画像を設ける製版作業の後、両端を折り曲げられ、印刷機の版胴に機械的に取り付けられて用いられるが、印刷を行っていくうちに、その固定部分が変形しまたは破損して印刷ずれ等の障害を起こしたり、その曲げ部分が切れて(くわえ切れ)、印刷不能となったりするという問題があった。
これに対して、アルミニウム板の合金成分を特定の範囲にすることにより、疲労強度を向上させることが提案されている(特公平3−11635号公報)。
しかしながら、アルミニウム板は、圧延方向とそれと直交する方向とでは強度特性が異なるため、通常、上記問題が生じない場合でも、製版工程や印刷機への取付け時に誤って平版印刷版の縦横を逆にすると、曲げに弱い圧延方向に沿って折り曲げて印刷機に取り付けられてしまうことになり、くわえ切れが生じてしまうことがある。したがって、製版作業中や印刷機への取付け作業中に縦横の認識を誤ることがない平版印刷版が望まれている。
【0003】
一方、平版印刷版の感光層を有しない面に、数字、文字、模様、意匠等を施す方法が数多く提案されている。例えば、特開平7−76800号公報および特開平6−286352号公報には、平版印刷版用支持体の感光層を設けない面(以下「裏面」ともいう。平版印刷版についても同様に用いることがある。)に電気化学的粗面化処理を施す方法が開示されており、特開平7−205563号公報には、平版印刷版用支持体の裏面にアルカリエッチング処理を施す方法が開示されており、特開平6−305271号公報等には、平版印刷版用支持体の裏面に転写ロールによるプレス処理を施す方法が開示されている。
また、特開平6−73478号公報には、陽極酸化処理によりアルミニウム合金板に特定の色調を有する不連続模様を得る方法が記載されている。
しかしながら、これらの方法は、いずれも電気化学的粗面化処理、アルカリエッチング処理、転写ロールによるプレス処理または陽極酸化処理という処理工程が必要不可欠であり、これらの方法を用いて裏面に数字、文字、模様、意匠等を施して平版印刷版を製造すると、工程数が多くなるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、製版作業中や印刷機への取付け作業中に縦横の認識を誤ることがなく、取扱い性に優れる平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体の製造方法、特に、製版作業中や印刷機への取付け作業中に縦横の認識を誤ることがなく、取扱い性に優れ、かつ、製造工程数が少ない平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、双ロール連続鋳造および冷間圧延により得られるアルミニウム圧延板に表面処理を施して平版印刷版用支持体を製造する平版印刷版用支持体の製造方法であって、
上記平版印刷版用支持体が、粗面化処理を施す面に感光層を設けてなる平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体であり、
上記アルミニウム圧延板の鋳造時に上側であった面に少なくとも粗面化処理を施す工程と、
上記アルミニウム圧延板の鋳造時に下側であった面にアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施して木目状模様を設ける工程と
を具備する平版印刷版用支持体の製造方法を提供する。
【0006】
また、本発明は、上記アルカリエッチング処理が、pH13以上のカセイソーダ水溶液を用いて、アルミニウム溶解量が0.1〜5g/m 2 となるように施され、
上記デスマット処理が、硝酸濃度1質量%以上の酸性水溶液をシャワー状にかける方法で施されるのが好ましい。
【0007】
また、本発明は、上記粗面化処理が、アルカリエッチング処理、デスマット処理、電気化学的粗面化処理および陽極酸化処理をこの順に施す処理であり、
上記粗面化処理における上記アルカリエッチング処理および上記デスマット処理と、上記木目状模様を設ける工程における上記アルカリエッチング処理および上記デスマット処理とが、それぞれ同時に施されるのが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、粗面化処理を施す面に感光層を有し、他方の面に木目状模様またはスジ状模様を有する平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体の製造方法を提供する。
本発明の製造方法により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版(以下、「本発明の平版印刷版」という。)は、感光層を有しない面、即ち、裏面に木目状模様またはスジ状模様を有する。図1は、裏面に木目状模様を有する本発明の平版印刷版1の一例を示す図である。また、図2は、裏面にスジ状模様を有する本発明の平版印刷版2の一例を示す図である。
本発明の平版印刷版は、図1および図2に示したように、裏面に木目状模様またはスジ状模様を有するので、用いられたアルミニウム圧延板の圧延方向を、模様と圧延方向との関係から極めて容易に判別することができ、製版作業中や印刷機への取付け作業中に縦横の認識を誤ることがない。したがって、印刷機への取付け時に曲げに弱い圧延方向に沿って折り曲げて、くわえ切れを生じさせてしまうことがない。即ち、本発明の平版印刷版は、取扱い性に優れる。
【0009】
裏面に木目状模様またはスジ状模様を設ける方法としては、下記(1)および(2)の方法が好適に例示される。
(1)双ロール連続鋳造および冷間圧延により得られる厚さ0.1〜0.6mmのアルミニウム圧延板に、アルカリエッチング処理およびデスマット処理を施して、裏面に木目状模様を設けてなる平版印刷版用支持体を用いて平版印刷版を製造する方法。
(2)双ベルト連続鋳造、熱間圧延および冷間圧延により得られる厚さ0.1〜0.6mmのアルミニウム圧延板に、アルカリエッチング処理およびデスマット処理を施して、裏面にスジ状模様を設けてなる平版印刷版用支持体を用いて平版印刷版を製造する方法。
【0010】
上記(1)または(2)の方法によれば、用いられるアルミニウム圧延板のアルミニウム結晶構造に由来する木目状模様またはスジ状模様が得られる。
即ち、▲1▼平版印刷版用支持体の粗面化処理を施された面に感光層を設けてなる前記平版印刷版であって、該平版印刷版用支持体が、双ロール連続鋳造および冷間圧延により得られる厚さ0.1〜0.6mmのアルミニウム圧延板の一方の表面に少なくとも粗面化処理を施し、他方の面にアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施して木目状模様を設けてなることを特徴とする平版印刷版、および、▲2▼平版印刷版用支持体の粗面化処理を施された面に感光層を設けてなる前記平版印刷版であって、該平版印刷版用支持体が、双ベルト連続鋳造、熱間圧延および冷間圧延により得られる厚さ0.1〜0.6mmのアルミニウム圧延板の一方の表面に少なくとも粗面化処理を施し、他方の面にアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施してスジ状模様を設けてなることを特徴とする平版印刷版は、それぞれ本発明の平版印刷版の好適な態様の一つである。
特に、上記(1)または(2)の方法により、アルカリエッチング処理およびデスマット処理を感光層を設ける面と裏面とに対して同時に施せば、特別な処理工程を必要とせずに裏面の木目状模様またはスジ状模様が得られるので、そのようにして得られる上記▲1▼および▲2▼の平版印刷版は、特に好適である。
【0011】
更に、具体例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
本発明の平版印刷版に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。 純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
【0012】
以下の説明において、上記に挙げたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。 前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
【0013】
本発明においては、純アルミニウム板を用いるのが好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材もの、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A3005、JIS A3004、国際登録合金 3103A等のアルミニウム合金板を適宜利用することができる。 また、本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0. 1〜0. 6mm程度である。 この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさおよびユーザーの希望により適宜変更することができる。
【0014】
上記のアルミニウム板を得るには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所望の成分に調製したアルミニウム溶湯に、常法に従い、清浄化処理を施す。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要ガスを除去するために、フラックス処理、Arガス、Clガス等を使った脱ガス処理や、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を使った、または、脱ガスとフィルタリングを組み合わせた処理が行われる。
【0015】
ついで、アルミニウム合金溶湯を、双ロール連続鋳造または双ベルト連続鋳造により鋳造し、アルミニウム鋳造板とした後、圧延してアルミニウム圧延板を得る。
【0016】
初めに、本発明に用いられる双ロール連続鋳造について説明する。まず、溶解保持炉において、インゴットが溶解保持される。溶解保持炉から双ロール方式連続鋳造機にアルミニウム溶湯が供給され、双ロール方式連続鋳造機により直接、アルミニウム鋳造板が製造される。このアルミニウム鋳造板を直接コイラーに巻き取ってコイルを形成してもよいし、引き続いて冷間圧延機、熱処理装置、矯正装置により処理した後、コイラーに巻き取ってもよい。
【0017】
製造条件について説明する。溶解保持炉ではアルミニウムの融点以上の温度に保持させる必要があり、その温度はアルミニウム合金成分によって変化するが、一般に、800℃以上である。双ロール連続鋳造機の鋳造方式としては、例えば、ハンター法、3C法が挙げられる。鋳造温度は鋳型の冷却条件にもよるが、一般に、700℃付近が最適である。双ロール連続鋳造機により製造されるアルミニウム鋳造板の厚さは、例えば、1〜30mmとすることができる。連続鋳造後の結晶粒径、冷却条件、鋳造速度、鋳造中の板厚変化量は、適宜制御される。このようにして双ロール連続鋳造によって得られたアルミニウム鋳造板は、冷間圧延機によって、所望の厚さに圧延され、アルミニウム圧延板とされる。その後、結晶粒を所望の大きさにそろえるため、中間焼鈍等として熱処理装置で処理し、更に、冷間圧延機による処理を行ってもよい。つぎに、矯正装置によって矯正処理を行い、所望の平面性を与えることができる。この矯正処理は最後の冷間圧延機で行ってもよい。アルミニウム圧延板の最終板厚は0.1〜0.6mmとするのが好ましい。
【0018】
つぎに、本発明に用いられる双ベルト連続鋳造について説明する。まず、溶解保持炉において、インゴットが溶解保持される。溶解保持炉から双ベルト方式連続鋳造機にアルミニウム溶湯が供給され、双ベルト方式連続鋳造機によりアルミニウム鋳造板が製造される。このアルミニウム鋳造板を熱間圧延機で厚みを減少させてアルミニウム圧延板とした後、コイラーに巻き取ってコイルを形成してもよいし、引き続いて冷間圧延機、熱処理装置、矯正装置により処理した後、コイラーに巻き取ってもよい。なお、双ベルト連続鋳造は、上記双ロール連続鋳造に比べて生産能力が非常に大きいという利点を有する。
【0019】
製造条件について説明する。双ベルト連続鋳造機の鋳造方式としては、例えば、金属ベルトを用いるハズレー法、キャタピラ状のブロックを用いるアルスイスキャスターIIが挙げられる。双ベルト連続鋳造機により製造されるアルミニウム鋳造板の厚さは、例えば、10〜100mmとすることができ、熱間圧延機により圧延されたアルミニウム圧延板の厚さは、例えば、1〜30mmとすることができる。他の鋳造条件は、上述した双ロール連続鋳造の場合と同様である。双ベルト連続鋳造および熱間圧延によって得られたアルミニウム圧延板は、冷間圧延機によって、所望の厚さに圧延される。その後の処理は、上述した双ロール連続鋳造の場合と同様である。アルミニウム圧延板の最終板厚は0.1〜0.6mmとするのが好ましい。
【0020】
以上のようにして得られたアルミニウム板は、ついで、平版印刷版用支持体とするために粗面化処理を施される。本発明に用いられるアルミニウム板は、電解粗面化処理を含む粗面化処理を施されるのが好ましいが、電解粗面化処理のみを施してもよく、電解粗面化処理と、機械的粗面化処理または化学的粗面化処理とを組み合わせて施してもよい。中でも、電解粗面化処理と機械的粗面化処理とを組み合わせるのがより好ましく、特に、機械的粗面化処理の後に、電解粗面化処理を施されるのが好ましい。
本発明の平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体において、以下の表面処理を施される面は特に限定されないが、アルミニウム板として、双ロール連続鋳造および冷間圧延により得られるアルミニウム圧延板を用いる場合は、鋳造時に上側であった面が感光層を設ける面とされて以下の表面処理を施され、鋳造時に下側であった面が裏面とされてアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施されるのが、裏面の模様の視認性に優れるので好ましい。
【0021】
機械的粗面化処理は、アルミニウム板表面を、一般的には平均表面粗さ0.35〜1.0μmとする目的で施される。本発明においては、この機械的粗面化処理の諸条件は特に限定されず、例えば、ボールグレイン、ワイヤーグレイン、ブラッシグレイン、液体ホーニング法によることができる。また、特開平6−135175号公報、特公昭50−40047号公報に記載されている方法に従って行うこともできる。機械的粗面化処理を施すと、通常、アルミニウム板の表面の粗さを、平均算術粗さ(Ra)0.35〜1.0μmにすることができる。この機械的粗面化処理を施すことで、印刷中の非画像部の保水性を高めることができる。一方、化学的粗面化処理も特に限定されず、公知の方法に従うことができる。例えば、アルミニウム板をアルカリ浴に浸せきする方法、アルカリ液をスプレイする方法、アルカリ液を塗布する方法が挙げられる。
【0022】
アルカリエッチング処理は、前記アルミニウム板の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜を除去することを目的として、また、機械的粗面化処理を行った場合は、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解し、滑らかなうねりを持つ表面を得ることを目的として施される。
アルカリエッチング処理は、アルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理である。アルカリ水溶液に用いられるアルカリとしては、水酸化ナトリウムや、特開昭57−16918号公報に記載されているように、水酸化カリウム、第三リン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等があり、これらを単独でまたは組み合わせて用いることができる。アルカリ水溶液の濃度は、5〜30質量%であるのが好ましく、20〜30質量%であるのが特に好ましい。アルカリ水溶液中に溶解しているアルミニウムの濃度は、0.5〜30質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液によるエッチングは、液温25〜90℃で1〜120秒処理するのが好ましい。アルミニウム溶解量は、2〜20g/m2 とする。
【0023】
一般に、アルカリエッチング処理によりアルミニウム板の表面にアルカリに不要な物質(スマット)が生成するので、この場合にはリン酸、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸、または、これらのうちの2種以上の酸を含む混酸でデスマット処理を施してスマットを除去するのが好ましい。デスマット時間は1〜30秒であるのが好ましい。液温は常温から70℃で実施される。
【0024】
電解粗面化処理はアルミニウム板の表面に微細な凹凸(ピット)を付与することが容易であるため、印刷性の優れた平版印刷版を作るのに適している。電解粗面化処理は、硝酸または塩酸を主体とする水溶液中で、直流または交流を用いて施される。
電解粗面化処理により平均直径約0.2〜20μmのクレーターまたはハニカム状のピットをアルミニウム板の表面に30〜100%の面積率で生成することができる。ピットは印刷版の非画像部の汚れにくさ(耐汚れ性)と耐刷力を向上させる作用がある。電解粗面化処理では、十分なピットを表面に設けるために必要なだけの電気量、即ち、電流と通電時間との積が重要な条件となる。より少ない電気量で十分なピットを形成できることは省エネの観点からも好ましい。本発明においては、電解粗面化処理の条件は限定されるものではなく、一般的な条件で行うことができる。
【0025】
本発明の平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体の好適な態様においては、上記電解粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理が施される。
このアルカリエッチング処理は、前段の電解粗面化処理で生成したスマット成分を速やかに除去する目的で施される。アルミニウム溶解量は0.05〜5g/m2 とするのが好ましい。エッチングに用いられる水溶液の組成、温度、処理時間等は、電解粗面化処理前のアルカリエッチング処理について上述した範囲から選択される。
【0026】
更に、デスマット処理が施されるのが好ましい。このデスマット処理の条件は、上述した電解粗面化処理前のアルカリエッチング処理後のデスマット処理について上述した範囲から選択される。
【0027】
上記の粗面化処理、および、必要に応じて行われるその他の処理に引き続き、通常はアルミニウム板の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理を施して陽極酸化皮膜を形成するが、本発明においても陽極酸化処理を施すことが好ましい。陽極酸化皮膜は、アルミニウム板を電極として電解液中に浸せきし、これに電流を通じることによって形成できる。
陽極酸化処理において通じる電流としては、直流交流等、種々の波形の電流を目的に応じて選択する。陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成するものならば、いかなるものでも使用することができ、一般には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはこれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は、電解質の種類によって適宜決めることができる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質の濃度は1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度は1〜60A/dm2 、電圧は1〜100V、電解時間は10秒〜5分の範囲にあれば適当である。陽極酸化処理によって形成される陽極酸化皮膜量は、通常、1〜6g/m2 であるのが好ましい。
【0028】
陽極酸化処理後、所望により、封孔処理を施してもよい。封孔処理は、陽極酸化処理されたアルミニウム板を、熱水または無機塩もしくは有機塩を含む熱水溶液へ浸せきする方法、水蒸気浴に曝す方法等によって施される。
【0029】
また、陽極酸化処理後、所望により、親水化処理等の界面制御処理を施してもよい。
界面制御処理としては、米国特許第2714066号明細書、同第3181461号明細書、同第3280734号明細書および同第3902734号明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)法が挙げられる。この方法においては、平版印刷版用支持体がケイ酸ナトリウム水溶液中に浸せき処理され、または、電解処理される。ほかに、特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムや、米国特許第3276868号明細書、同第4153461号明細書および同第4689272号明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
【0030】
上記の各項目で記載した各処理の詳細については、公知の条件を適宜採用することができる。また、本明細書に挙げた文献の内容は、引用して本明細書の内容とする。
【0031】
以上のようにアルミニウム板の感光層を設ける面に少なくとも粗面化処理を含む表面処理を施す一方、裏面にアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施す。このアルカリエッチング処理およびデスマット処理により、図1および図2に示すように裏面に木目状模様または筋状模様が生じ、これを用いて得られる本発明の平版印刷版において、用いられたアルミニウム板の圧延方向を容易に判別することができるようになる。
【0032】
裏面のアルカリエッチング処理は、上述した感光層を設ける面についてのアルカリエッチング処理と同様に施すことができるが、特に、pH13以上のカセイソーダ水溶液を用いて、アルミニウム溶解量を0.1〜5g/m2 とするのが好ましい。
裏面のデスマット処理は、上述した感光層を設ける面についてのデスマット処理と同様に施すことができるが、特に、硝酸濃度1質量%以上の酸性水溶液をシャワー状にかける方法が好ましい。
裏面のアルカリエッチング処理の後およびデスマット処理の後には、それぞれ水洗処理を施すのが好ましい。
【0033】
裏面のアルカリエッチング処理およびデスマット処理は、感光層を設ける面についての表面処理と別々に施してもよいが、同一の工程で施すのが、処理工程を少なくすることができるので好ましい。
アルカリエッチング処理を同一の工程で施す方法としては、例えば、アルカリ水溶液をアルミニウム板の両面に対してスプレー等によりシャワー状にかける方法や、アルミニウム板をアルカリ水溶液浴中を通過させて浸せきする方法が挙げられる。
デスマット処理を同一の工程で施す方法としては、例えば、酸をアルミニウム板の両面に対してスプレー等によりシャワー状にかける方法が挙げられる。
また、アルカリエッチング処理の後およびデスマット処理の後の水洗処理も、同一の工程で施すのが好ましい。例えば、水をアルミニウム板の両面に対してスプレー等によりシャワー状にかける方法が挙げられる。
【0034】
以上のようにして平版印刷版用支持体が得られる。これを本発明の平版印刷版とするには、表面に感光剤を塗布、乾燥して感光層を形成すればよい。感光剤は特に限定されるものではなく、通常、感光性平版印刷版に用いられるものを使用することができる。そして、リスフィルムを用いて画像を焼付け、現像処理、ガム引き処理を行なうことで、印刷機に取付け可能な印刷版とすることができる。また、高感度な感光層を設けると、レーザを使って画像を直接焼付けることもできる。
【0035】
感光剤としては、露光の前後で現像液に対する溶解性または膨潤性が変化する感光性化合物またはその組成物であれば、いずれも使用することができる。以下、その代表的なものについて説明する。
【0036】
(A)o−キノンジアジド化合物からなる感光層
ポジ型感光性組成物に用いられる感光性化合物としては、例えば、o−キノンジアジド化合物が挙げられ、o−ナフトキノンジアジド化合物が具体的に例示される。
o−ナフトキノンジアジド化合物としては、特公昭43−28403号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが好ましい。米国特許第3,046,120号明細書および同第3,188,210号明細書に記載されている1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好ましい。その他の公知のo−ナフトキノンジアジド化合物を用いることもできる。
【0037】
特に好ましいo−ナフトキノンジアジド化合物は、分子量1,000以下のポリヒドロキシ化合物と1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロライドとの反応により得られる化合物である。このo−ナフトキノンジアジド化合物を合成する際は、ポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基1当量に対して、1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロライドが0.2〜1.2当量の割合となるように反応させるのが好ましく、0.3〜1.0当量の割合となるように反応させるのがより好ましい。1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロライドとしては、1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホン酸クロライドが好ましいが、1,2−ジアゾナフトキノン−4−スルホン酸クロライドを用いることもできる。
また、得られるo−ナフトキノンジアジド化合物は、1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロライドの置換基の位置および導入量の種々異なるものの混合物となるが、ヒドロキシル基がすべて1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステルに転換されたものが混合物に占める割合(完全にエステル化されたものの含有率)が5モル%以上であるのが好ましく、20〜99モル%であるのがより好ましい。
【0038】
また、o−ナフトキノンジアジド化合物を用いずに、ポジ型に作用する感光性化合物として、例えば、特公昭56−2696号公報に記載されているo−ニトロカルビノールエステル基を有するポリマー化合物を用いることもできる。更に、光分解により酸を発生する化合物と、酸により解離する−C−O−C−基または−C−O−Si−基を有する化合物との組み合わせ系を用いることもできる。
例えば、光分解により酸を発生する化合物とアセタールまたはO,N−アセタール化合物との組み合わせ(特開昭48−89003号公報)、オルトエステルまたはアミドアセタール化合物との組み合わせ(特開昭51−120714号公報)、主鎖にアセタールまたはケタール基を有するポリマーとの組み合わせ(特開昭53−133429号公報)、エノールエーテル化合物との組み合わせ(特開昭55−12995号公報)、N−アシルイミノ炭素化合物との組み合わせ(特開昭55−126236号公報)、主鎖にオルトエステル基を有するポリマーとの組み合わせ(特開昭56−17345号公報)、シリルエステル化合物との組み合わせ(特開昭60−10247号公報)およびシリルエーテル化合物との組み合わせ(特開昭60−37549号公報、特開昭60−121446号公報)が挙げられる。
【0039】
感光層の感光性組成物中に占めるポジ型に作用する感光性化合物(前記のような組み合わせ系も含む。)の割合は10〜50質量%であるのが好ましく、15〜40質量%であるのがより好ましい。
【0040】
o−キノンジアジド化合物は単独でも感光層を構成し得るが、結合剤(バインダー)としてのアルカリ水に可溶な樹脂とともに使用するのが好ましい。アルカリ水に可溶な樹脂としては、ノボラック樹脂が挙げられ、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂;m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれであってもよい。)混合−ホルムアルデヒド樹脂等のクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂;フェノール変性キシレン樹脂;ポリヒドロキシスチレン;ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン;特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性ヒドロキシル基を含有するアクリル系樹脂;特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂;ウレタン系樹脂等の種々のアルカリ可溶性の高分子化合物を含有させることができる。アルカリ可溶性の高分子化合物は、重量平均分子量が500〜20,000で、数平均分子量が200〜60,000のものが好ましい。
【0041】
アルカリ可溶性の高分子化合物は、全組成物の70質量%以下の割合で含有される。更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂のような炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの重縮合で得られる樹脂を併用することは画像の感脂性を向上させる点で好ましい。
【0042】
感光性組成物には、感度を高めるための環状酸無水物、露光後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料その他のフィラー等を含有させることができる。
環状酸無水物は、例えば、米国特許第4,115,128号明細書に記載されているように、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−△4 −テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸が挙げられる。
環状酸無水物を全組成物の質量に対して1〜15質量%含有させることによって、感度を最大3倍程度に高めることができる。
【0043】
露光後直ちに可視像を得るための焼出し剤としては、例えば、露光によって酸を放出する感光性化合物と塩を形成し得る有機染料との組み合わせが挙げられる。
具体的には、例えば、特開昭50−36209号公報、特開昭53−8128号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料との組み合わせや、特開昭53−36233号公報、特開昭54−74728号公報、特開昭60−3626号公報、特開昭61−143748号公報、特開昭61−151644号公報、特開昭63−58440号公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組み合わせが挙げられる。
【0044】
画像の着色剤としては、前記の塩形成性有機染料以外の他の染料を用いることもできる。塩形成性有機染料を含めて好適な染料としては、油溶性染料および塩基染料が挙げられる。
具体的には、例えば、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(いずれもオリエント化学工業社製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、ローダミンB(CI45170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)が挙げられる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。
【0045】
感光性組成物は、上記各成分を溶解しうる溶媒に溶解させて溶液として、上記で得られた平版印刷版用支持体に塗布されて用いられる。
溶媒は、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、水、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフルフリルアルコール、アセトン、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
溶液中の上記各成分の濃度(固形分)は、2〜50質量%である。また、塗布量は用途により異なるが、例えば、感光性平版印刷版についていえば、一般的に固形分として0.5〜3.0g/m2 となる量が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて感光性は増大するが、感光膜の物性が低下する。
【0046】
感光性組成物には、塗布性を向上させるために界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤の含有量は、全感光性組成物の0.01〜1質量%であるのが好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ましい。
【0047】
(B)ジアゾ樹脂とバインダーとからなる感光層
ネガ作用型感光性ジアゾ化合物としては、米国特許第2,063,631号明細書および同第2,667,415号明細書に開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールのような反応性カルボニル基を有する有機縮合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とホルムアルデヒドとの縮合生成物(いわゆる感光性ジアゾ樹脂)が好適に用いられる。
他の有用な縮合ジアゾ化合物は特公昭49−480001号公報、特公昭49−45322号公報、特公昭49−45323号公報等に記載されている。この型の感光性ジアゾ化合物は、通常、水溶性無機塩の形で得られるので、水溶液として塗布することができる。また、水溶性ジアゾ化合物を特公昭47−1167号公報に記載されている方法により、1個またはそれ以上のフェノール性ヒドロキシル基、スルホン酸基、またはその両者を有する芳香族化合物または脂肪族化合物と反応させ、その反応生成物である実質的に水不溶性の感光性ジアゾ樹脂を用いることもできる。
ジアゾ樹脂の含有量は、感光層中おいて5〜50質量%であるのが好ましい。含有量が少なくなると感光性は増大するが、経時安定性が低下する。最適のジアゾ樹脂の含有量は約8〜20質量%である。
【0048】
一方、バインダーとしては、種々の高分子化合物を用いることができる。
中でも、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、スルホンアミド基、活性メチレン基、チオアルコール基、エポキシ基等の官能基を有するものが好ましい。例えば、英国特許第1,350,521号明細書に記載されているシェラック、英国特許第1,460,978号明細書および米国特許第4,123,276号明細書に記載されているようなヒドロキシエチル(メタ)アクリレート単位を主たる繰り返し単位として含むポリマー、米国特許第3,751,257号明細書に記載されているポリアミド樹脂、英国特許第1,074,392号明細書に記載されているフェノール樹脂および、例えば、ポリビニルフォルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のようなポリビニルアセタール樹脂、米国特許第3,660,097号明細書に記載されている線状ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコールのフタレート化樹脂、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂、ポリアミノスチレンやポリアルキルアミノ(メタ)アクリレートのようなアミノ基を含むポリマー、酢酸セルロース、セルロースアルキルエーテル、セルロースアセテートフタレート等のセルロース誘導体が挙げられる。
【0049】
ジアゾ樹脂とバインダーとからなる組成物には、更に、英国特許第1,041,463号明細書に記載されているようなpH指示薬、米国特許第3,236,646号明細書に記載されているリン酸、染料等の添加剤を含有させることができる。
【0050】
平版印刷版用支持体上に設けられる感光層の膜厚は0.1〜30μmであるのが好ましく、0.5〜10μmであるのがより好ましい。感光層の量(固形分)は約0.1〜約7g/m2 であるのが好ましく、0.5〜4g/m2 であるのがより好ましい。
【0051】
平版印刷版は画像露光された後、常法により現像を含む処理によって樹脂画像が形成される。例えば、感光層(A)を有するポジ型感光性平版印刷版の場合には、画像露光後、米国特許第4,259,434号明細書および特開平3−90388号公報に記載されているようなアルカリ水溶液で現像することにより露光部分の感光層が除去されて、印刷版が得られる。
また、ジアゾ樹脂とバインダーとからなる感光層(B)を有するネガ型感光性平版印刷版の場合には、画像露光後、例えば、米国特許第4,186,006号明細書に記載されているような現像液で現像することにより、未露光部分の感光層が除去されて、印刷版が得られる。また、特開平5−2273号公報または特開平4−219759号公報に記載されたネガ型感光性平版印刷版の場合には、これらの公報に記載されているように、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液で現像することができる。
【0052】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版の製造
(実施例1)
双ロール方式連続鋳造機を用いて、厚さ7mmのアルミニウム鋳造板を形成させ、その後、厚さが2mmとなるように冷間圧延し、480℃で熱処理(焼鈍)した後、厚さが0.24mmとなるように冷間圧延および矯正を行い、JIS 1050材を形成した。
得られたアルミニウム圧延板の鋳造上面について、アルカリエッチング処理、デスマット処理、電気化学的粗面化処理および陽極酸化処理を順次施す一方、鋳造下面を裏面として、アルカリエッチング処理およびデスマット処理を施し、平版印刷版用支持体を得た。両面のアルカリエッチング処理およびデスマット処理は、同時に施した。
裏面のアルカリエッチング処理は、pH13のカセイソーダ水溶液を用いて、アルミニウム溶解量を1g/m2 として施した。裏面のデスマット処理は、硝酸濃度1質量%の酸性水溶液をシャワー状にかけ、これによりアルカリエッチング処理で生じたスマットを除去した。なお、各処理の後には、それぞれ水洗処理を施した。
得られた平版印刷版用支持体の粗面化処理を行った面に感光層を設けて、本発明の平版印刷版を得た。得られた平版印刷版の裏面には、木目状模様が表れていた。
【0053】
参考例1
得られたアルミニウム圧延板の鋳造上面を裏面とした以外は、実施例1と同様の方により、本発明の平版印刷版を得た。得られた平版印刷版の裏面には、木目状模様が表れていた。
【0054】
参考例2
双ベルト方式連続鋳造機および熱間圧延機を用いて、厚さ15mmのアルミニウム圧延板を形成させ、その後、厚さが2mmとなるように冷間圧延し、400℃で熱処理(焼鈍)した後、厚さが0.24mmとなるように冷間圧延および矯正を行い、JIS 1050材を形成した。
得られたアルミニウム圧延板の鋳造下面を裏面として、実施例1と同様の方法により、両面に各処理を施し感光層を設けて、本発明の平版印刷版を得た。得られた平版印刷版の裏面には、スジ状模様が表れていた。
【0055】
参考例3
得られたアルミニウム圧延板の鋳造上面を裏面とした以外は、参考例2と同様の方により、本発明の平版印刷版を得た。得られた平版印刷版の裏面には、スジ状模様が表れていた。
【0056】
(比較例1)
裏面のアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施さなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版を得た。
【0057】
(比較例2)
裏面のアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施さなかった以外は、実施例2と同様の方法により、平版印刷版を得た。
【0058】
(比較例3)
DC鋳造法により、厚さ500mmの鋳魂を形成し、得られた鋳塊の表面を面削機を用いて平均10mm削り取った後、約5時間、550℃で加熱して、均熱化処理を施した。温度が400℃まで低下したところで、厚さが3mmとなるように熱間圧延し、更に、連続焼鈍機を使って500℃で熱処理を行った後、厚さが0.24mmとなるように冷間圧延して、JIS 1050材を形成した。
得られたアルミニウム圧延板の一方の面を裏面として、実施例1と同様の方法により、両面に各処理を施し感光層を設けて、平版印刷版を得た。
【0059】
(比較例4)
裏面のアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施さなかった以外は、比較例3と同様の方法により、平版印刷版を得た。
【0060】
2.裏面の模様の視認性
各実施例および比較例の平版印刷版の裏面の模様の視認性について評価した。
模様が鮮明でアルミニウム圧延板の圧延方向が判別できるものを「良好」、模様がやや不鮮明だが圧延方向が判別できるものを「やや劣るが良好」、模様が不鮮明で圧延方向が判別しにくいものを「不良」とした。
【0061】
結果を第1表に示す。
本発明の平版印刷版は、裏面に木目状模様またはスジ状模様を有するため、視認性に優れ、用いられたアルミニウム圧延板の圧延方向の判別が容易であることが分かる(実施例1、参考例1〜3)。
これに対し、裏面に木目状模様またはスジ状模様を有しない平版印刷版は、視認性に劣る(比較例1〜4)。
【0062】
【表1】
Figure 0004201469
【0063】
【発明の効果】
本発明の平版印刷版は、一方の面に感光層を有し、他方の面に木目状模様またはスジ状模様を有するので、用いられたアルミニウム圧延板の圧延方向の判別が容易であるため製版作業中や印刷機への取付け作業中に縦横の認識を誤ることがなく、取扱い性に優れる。
特に、平版印刷版用支持体に用いるアルミニウム板として、双ロール連続鋳造および冷間圧延により得られるアルミニウム圧延板、または、双ベルト連続鋳造、熱間圧延および冷間圧延により得られるアルミニウム圧延板を用い、アルカリエッチング処理およびデスマット処理により木目状模様またはスジ状模様を設ける場合は、製造工程数を少なくすることができ、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 裏面に木目状模様を有する本発明の平版印刷版の裏面の一例を示す図である。
【図2】 裏面にスジ状模様を有する本発明の平版印刷版の裏面の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 裏面に木目状模様を有する本発明の平版印刷版
2 裏面にスジ状模様を有する本発明の平版印刷版

Claims (3)

  1. 双ロール連続鋳造および冷間圧延により得られるアルミニウム圧延板に表面処理を施して平版印刷版用支持体を製造する平版印刷版用支持体の製造方法であって、
    前記平版印刷版用支持体が、粗面化処理を施す面に感光層を設けてなる平版印刷版に用いられる平版印刷版用支持体であり、
    前記アルミニウム圧延板の鋳造時に上側であった面に少なくとも粗面化処理を施す工程と、
    前記アルミニウム圧延板の鋳造時に下側であった面にアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施して木目状模様を設ける工程と
    を具備する平版印刷版用支持体の製造方法。
  2. 前記アルカリエッチング処理が、pH13以上のカセイソーダ水溶液を用いて、アルミニウム溶解量が0.1〜5g/m2となるように施され、
    前記デスマット処理が、硝酸濃度1質量%以上の酸性水溶液をシャワー状にかける方法で施される請求項1に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  3. 前記粗面化処理が、アルカリエッチング処理、デスマット処理、電気化学的粗面化処理および陽極酸化処理をこの順に施す処理であり、
    前記粗面化処理における前記アルカリエッチング処理および前記デスマット処理と、前記木目状模様を設ける工程における前記アルカリエッチング処理および前記デスマット処理とが、それぞれ同時に施される請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
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