JP4198531B2 - 硬化性組成物及びこれを用いて得られる鋳物砂組成物並びに鋳型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性フェノール樹脂を有機エステル化合物にて硬化せしめる硬化性組成物、特に、エステル硬化型の自硬性鋳型やガス硬化性鋳型の造型において、鋳型用有機粘結剤として有利に採用され得る硬化性組成物、及び、そのような硬化性組成物を用いて得られる鋳物砂組成物並びに鋳型、更には、かかる鋳型から鋳物砂を再生する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水溶性フェノール樹脂、具体的には、水溶性アルカリレゾール樹脂を粘結剤とし、これを、有機エステル化合物で硬化せしめる手法が、有機自硬性鋳型造型法やガス硬化性鋳型造型法等の鋳型造型法において、採用されている。また、それらの鋳型造型法において用いられる粘結剤組成物としては、特開昭50−130627号公報(特許文献1)や、特公昭61−43132号公報(特許文献2)、特公昭61−37022号公報(特許文献3)等を始めとし、これまでに、種々のものが提案されてきている。そして、近年、特に、鋳鋼分野においては、従来から水ガラスを主成分とする粘結剤(例えば、水ガラス/CO2 系:水ガラスを炭酸ガスで硬化させるもの等)が使用されてきているのであるが、その一部が、上述せる如き、水溶性フェノール樹脂を用いたエステル硬化型の鋳型造型法に転換されつつある。
【0003】
しかしながら、そのような水溶性フェノール樹脂を用いたエステル硬化型の鋳型造型法で造型され、鋳造に供された鋳物砂を再利用して、鋳型を造型すると、得られる鋳型の強度が、再使用する毎に、次第に低下する傾向があることが明らかとなっている。また、エステル硬化型の鋳型造型法に用いられる粘結剤組成物に由来するアルカリ成分、特にアルカリ金属が、鋳物砂に強固に付着するところから、焙焼式再生処理では鋳物砂表面の付着物を除去し難く、摩耗式再生処理をせざるを得なくなっており、発生するダストが問題となっている。このように、水溶性フェノール樹脂を用いたエステル硬化型の鋳型造型法では、鋳物砂の再生特性(一旦鋳造された鋳型を取り壊し、再び鋳物砂として使用するときの再利用のし易さ)が極端に悪くなるところから、その改善が、強く要望されている。
【0004】
また、かかるエステル硬化型の鋳型造型法に用いられる粘結剤組成物は、注湯時の熱による分解が著しく、得られる鋳物に対して、焼き付き等の欠陥を発生せしめて、鋳肌に悪影響を及ぼす事象が多いところから、造型後、コーティングによる塗型を厚塗りしなければならないといった欠点をも有するものであったのである。
【0005】
【特許文献1】
特開昭50−130627号公報
【特許文献2】
特公昭61−43132号公報
【特許文献3】
特公昭61−37022号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、優れた耐熱分解性を有する硬化性組成物を提供することにある。更に、本発明は、そのような硬化性組成物からなる、鋳造時における耐熱分解性が顕著に優れ、且つ、得られる鋳物に対して、焼き付き等の欠陥の発生を有利に低減し得ると共に、優れた鋳物砂の再生特性を実現し得る鋳型用有機粘結剤、及び、これを用いてなる鋳型砂組成物並びに鋳型、更には、かかる鋳型から鋳物砂を再生する方法を、提供することをも、課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そして、本発明者は、そのような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水溶性フェノール樹脂を主成分とする硬化性組成物には、一般に、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が、水溶性フェノール樹脂を製造する際のアルカリ触媒として、また、硬化性組成物のpHを塩基性に調整するためのアルカリ調整剤として、含有せしめられているのであるが、このようなアルカリ金属の水酸化物に由来するアルカリ金属イオンによって、耐熱分解性が著しく低下せしめられることを知見し、それらアルカリ金属イオンの含有量を、零とするか、或いは可及的に低くすると共に、かかるアルカリ金属の水酸化物に代えて、有機強塩基を用いることによって、還元性雰囲気下での熱分解が著しく抑制され、従来に比して、極めて優れた耐熱分解性が実現され得ることを見出したのである。また、本発明者の更なる検討の結果、上述せる如き硬化性組成物を鋳型造型における有機粘結剤として用いれば、再使用される回収後又は再生後の鋳物砂のpH上昇が抑えられ、また、鋳物砂を再使用する毎に鋳型強度が低下するようなことも有利に防止され得ると共に、更に、焙焼式再生処理が有効となり、鋳物砂の再生特性が著しく改善され得ることを見出したのである。
【0008】
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、フェノール化合物とアルデヒド化合物とをアルカリ触媒の存在下に反応せしめて得られる水溶性フェノール樹脂の水溶液を用いて調製され、水系媒体中に、該水溶性フェノール樹脂が主成分として含有せしめられてなる、有機エステル化合物にて硬化せしめられる硬化性組成物であって、水酸化アルキルアンモニウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機強塩基を含有し、且つ、該硬化性組成物中のアルカリ金属イオンの含有量が、0〜2重量%となるように調整したことを特徴とする硬化性組成物にある。
【0009】
すなわち、このような本発明に従う硬化性組成物にあっては、水溶性フェノール樹脂を主成分とする硬化性組成物に含まれるアルカリ金属イオンの含有量が、可及的に小ならしめられ、アルカリ金属イオンによる悪影響を実質的に受けないようにされているところから、耐熱分解性が、効果的に向上せしめられているのである。
【0010】
従って、かかる硬化性組成物を、鋳型造型における有機粘結剤として用いれば、鋳造時において、耐熱分解性が著しく向上するようになるところから、得られる鋳物に対して、焼き付き等の欠陥を発生せしめるようなことも、極めて効果的に防止され得るようになるのである。
【0011】
しかも、本発明にあっては、従来より水溶性フェノール樹脂の合成におけるアルカリ触媒や、pH調整のためのアルカリ調整剤として、一般的に含有せしめられるアルカリ金属の水酸化物に代えて、有機系の強塩基を用いるようにしているところから、水溶性フェノール樹脂の形成や、有機エステル化合物による硬化も、充分高度に実現されるようになっているのである。
【0012】
加えて、本発明に従う硬化性組成物を用いて、鋳型を造型し、そして、その鋳型に使用された鋳物砂を回収乃至は再生して、再び、その回収砂乃至は再生砂を用いて、本発明に従う硬化性組成物にて鋳型造型を行なう操作を繰り返しても、鋳型強度の低下が有利に防止され、極めて良好な鋳型強度が実現され得る、換言すれば、鋳物砂の再生特性が格別顕著に向上せしめられ得ることとなる。従って、本発明に従う硬化性組成物を鋳型造型用の有機粘結剤として用いれば、鋳物砂を繰り返し再使用して鋳型の造型を行なっても、鋳型の強度が高度に確保されることとなり、以て、鋳物砂の再使用することが可能な回数を、有利に増大せしめることも可能となる。
【0013】
なお、かかる本発明に従う硬化性組成物の好ましい態様の一つによれば、前記有機強塩基として、水酸化アルキルアンモニウムが、有利に採用され得る。
【0014】
また、本発明における好ましい態様の他の一つによれば、前記有機強塩基は、前記水溶性フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対して、モル比で、0.3〜1.5となるように含有せしめられることが望ましく、これにて、耐熱分解性が高度に確保されると共に、より一層優れた鋳型強度が実現され得ることとなる。
【0015】
さらに、本発明に従う硬化性組成物の好ましい態様の別の一つによれば、前記水酸化アルキルアンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド及びコリンからなる群より選ばれる少なくとも1種が、より一層好適に採用され得る。
【0016】
加えて、本発明は、(A)上述せる如き硬化性組成物を、鋳型の造型に使用される鋳型用有機粘結剤として用い、これを、鋳物砂に対して混練せしめてなることを特徴とする鋳物砂組成物、更には、(B)上述せる如き硬化性組成物を、鋳型の造型に使用される鋳型用有機粘結剤として用いて、鋳物砂に対して混練せしめる一方、かかる硬化性組成物を、有機エステル化合物にて硬化させて、造型せしめられてなることを特徴とする鋳型をも、それぞれ、要旨とするものである。このように、上述せる如き硬化性組成物を用いて得られる鋳物砂組成物や鋳型にあっては、上記した各種の効果が、何れも、有利に享受され得るのである。
【0017】
また、本発明は、上述せる如き鋳型を用いて鋳造を行なった後、かかる鋳型から鋳物砂を回収し、焙焼処理を施して再生砂を得ることを特徴とする鋳物砂の再生方法も、要旨とするものである。
【0018】
すなわち、上述せる如き鋳型は、有機粘結剤として、アルカリ金属イオンの含有量が可及的に小さくされ、且つ、熱分解温度が比較的に低い有機強塩基(熱分解温度:180〜400℃程度)を含有する硬化性組成物を用いて造型されているところから、そのような鋳型から回収される鋳物砂にあっては、摩耗式の再生処理を行なわなくとも、焙焼式再生処理にて、アルカリ成分が充分に除去され得るようになるのである。
【0019】
なお、かかる本発明に従う鋳物砂の再生方法の好ましい態様の一つによれば、前記焙焼処理は、180〜400℃の温度範囲で行なわれることが、望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
ところで、上記せるような本発明に従う硬化性組成物は、水を主体とする水系媒体、例えば、水のみからなる媒体や、水にアルコール類、ケトン類、エーテル類等を含有させた媒体等の中に、アルカリ触媒下で製造される水溶性フェノール樹脂を主成分として含有する硬化性組成物であって、特に、有機エステル化合物と接触せしめられ、かかる有機エステル化合物の加水分解作用により、硬化せしめられるものである。このため、有機エステル化合物を混練或いは通気せしめた際に、かかる有機エステル化合物の加水分解反応が良好に実現され得るように、従来より、硬化性組成物のpHが適宜に調整されているのであるが、本発明においては、そのような硬化性組成物のpHが有機強塩基にて調整され、且つ、アルカリ金属イオンの含有量が、零とされるか、或いは実質的に影響しない程度まで、可及的に少なくされているのであり、そこに、大きな特徴を有しているのである。
【0021】
具体的には、本発明に従う硬化性組成物は、従来から公知の水溶性フェノール樹脂を用いたエステル硬化型の硬化性組成物と同様に、水系媒体に、水溶性フェノール樹脂が主成分として含有せしめられ、更に必要に応じて、公知の各種の添加剤が含有せしめられて、構成されるものであるが、本発明にあっては、そのような硬化性組成物中のアルカリ金属イオンの含有量が、0〜2重量%とされているのである。
【0022】
なお、従来より、アルカリ金属イオンは、アルカリ金属の水酸化物が、水溶性フェノール樹脂を合成する際の触媒として、また、硬化性組成物を塩基性に調整するためのアルカリ調整剤(pH調整剤)として、用いられることによって、組成物中に必然的に存在せしめられてきているのであるが、本発明においては、そのような水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機強塩基に代えて、アルカリ金属イオンを含まない有機強塩基を用いるようにしたのである。
【0023】
このようにして、硬化性組成物中のアルカリ金属イオンの含有量を、0〜2重量%と為すことで、アルカリ金属イオンによって惹起せしめられると推察される、耐熱分解性の悪化等の問題を有利に解消することが出来、以て、硬化性組成物の耐熱分解性を効果的に向上せしめることが可能となるのである。また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物(無機強塩基)の代替として、有機強塩基を用いるようにしているところから、有機強塩基が上記したアルカリ触媒やpH調整剤としての作用を奏し、水溶性フェノール樹脂の製造や、有機エステル化合物による硬化反応も、充分に実現され得るようになっているのである。
【0024】
なお、上述せる如き硬化性組成物に含まれるアルカリ金属イオンの含有量が2重量%を超えるようになると、所望とする耐熱分解性が実現されなくなって、例えば、かかる硬化性組成物を、有機粘結剤として用いて鋳型を作製した場合には、得られる鋳物に焼き付き等の欠陥が惹起せしめられたり、鋳物砂の再生特性が悪化するようになるのである。従って、アルカリ金属イオンの含有量は、可及的に少なくされることが望ましく、上記した範囲の中でも、特に、0〜1重量%とされることが、より一層望ましい。
【0025】
また、アルカリ金属の水酸化物の代替として用いられる、有機強塩基としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム(コリン)等の水酸化アルキルアンモニウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)を挙げることが出来、これらのうちの1種若しくは2種以上が適宜に選択されて使用されるのである。これらの中でも、水に溶解すると水酸化物イオンとカチオンに略完全に解離する、TMAHやTPAH、コリン等の水酸化アルキルアンモニウムにあっては、鋳型強度が顕著に向上せしめられるところから、特に好適に用いられることとなる。因みに、有機の塩基であっても、弱塩基に分類されるアンモニアやトリエチルアミン(TEA)を用いた場合には、硬化性組成物が充分に硬化せず、実用に供することが出来ないものとなる。
【0026】
また、硬化性組成物中における有機強塩基の含有量としては、特に制限されるものではないものの、水溶性フェノール樹脂の製造に用いられる触媒としての含有分と、アルカリ調整剤としての含有分とを合わせた合計量において、水溶性フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対して、モル比で、0.3〜1.5、好ましくは、0.6〜1.2となる割合において、含有せしめられることが望ましい。何故ならば、かかる有機強塩基の含有量が少な過ぎる場合には、有機エステル化合物の加水分解が充分に行なわれなくなって、硬化し難くなる傾向があるからであり、また、有機強塩基の含有量が多過ぎる場合には、水溶性フェノール樹脂の含有量が相対的に低くなって、硬化し難くなる傾向があるからである。
【0027】
一方、本発明に従う硬化性組成物の主成分である水溶性フェノール樹脂は、有機エステル化合物にて硬化することが可能な樹脂であり、従来から公知の各種の水溶性フェノール樹脂と同様に、アルカリ触媒の存在下で、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを、付加・縮合させることによって得られるものである。具体的に、かかる水溶性フェノール樹脂の原料であるフェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、3,5−キシレノール、その他置換フェノール等、公知の各種のフェノール化合物を例示することが出来、これらのうちの1種が単独で、或いは2種以上が混合されて、用いられることとなる。一方、アルデヒド化合物にあっても、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン、ポリオキシメチレン、グリオキザオール、フルフラール等、従来から公知のアルデヒド化合物を例示することが出来、これらのうちの1種が単独で、或いは2種以上が混合されて、用いられることとなる。なお、これらフェノール化合物とアルデヒド化合物は、必要に応じて、水系媒体に溶解され、水溶液の形態で製造に供されることも可能である。また、上記したフェノール化合物とアルデヒド化合物は、従来と同様な配合割合、即ち、フェノール化合物に対するアルデヒド化合物のモル数が、1.2〜2.5倍モル程度、好ましくは0.6〜1.2倍モル程度となる配合割合にて、用いられる。
【0028】
さらに、かかる水溶性フェノール樹脂の製造時に用いられるアルカリ触媒としては、上述せるように、硬化性組成物中に含有されるアルカリ金属イオンの量が可及的に小さくなるように、前述せる如き有機強塩基が有利に採用されることとなる。また、アルカリ触媒は、一般に、フェノール化合物に対するアルカリ触媒のモル数が、0.01〜2.0倍モル程度、好ましくは0.05〜1.0倍モル程度となる配合割合にて、用いられる。
【0029】
そして、水溶性フェノール樹脂は、常法に従って、上記したフェノール化合物とアルデヒド化合物とを、アルカリ触媒の存在下で反応せしめることによって、一般に、500〜8000程度の重量平均分子量のものとされて、本発明に従う硬化性組成物の主成分として、用いられることとなる。なお、このようにして得られる水溶性フェノール樹脂には、ビスフェノール−ホルムアルデヒド樹脂が配合されても良く、また、尿素、メラミン、シクロヘキサノン等のホルマリン縮合が可能なモノマーを、主たる構成単位とならない程度において共縮合させることも可能である。
【0030】
かくして、得られた水溶性フェノール樹脂に対して、水系媒体が適宜に加えられることによって、水溶性フェノール樹脂の最終的な含有量が、一般に、30〜75重量%程度とされた硬化性組成物が調製されるのである。また、かかる硬化性組成物には、有機エステル化合物の加水分解を効果的に行なうことが出来るように、有機強塩基が適宜に加えられて、pHが調整されることとなる。
【0031】
なお、かかる硬化性組成物のpHの値としては、有機エステル化合物を効果的に加水分解して、水溶性フェノール樹脂の硬化反応を有利に実現することが出来る程度のアルカリ性であれば、特に限定されるものではないものの、硬化性組成物の可使時間や粘度等を考慮して、一般に、9以上、好ましくは、11以上となるように、調整されることが望ましい。但し、pH調整に用いられる有機強塩基の使用量としては、前述せるように、水溶性フェノール樹脂の製造に用いられる触媒分とを合わせて、水溶性フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対して、モル比で、0.3〜1.5とされることが望ましい。
【0032】
さらに、本発明に従う硬化性組成物には、上述せる如きpH調整剤以外の公知の各種の添加剤が、適宜に選択されて、通常の範囲内において含有せしめられていても、何等差し支えない。但し、それらの添加剤の配合によって、アルカリ金属イオンが含有せしめられる場合には、上述せるように、そのような添加剤由来のアルカリ金属イオンをも含めて、硬化性組成物中のアルカリ金属イオンの含有量を、0〜2重量%とする必要がある。
【0033】
なお、添加剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、尿素、メラミン等のホルムアルデヒド補足剤、メタノール、エチレングリコール等の可塑剤(粘度調整剤)等を、例示することが出来る。
【0034】
かくして、上述せる如き水溶性フェノール樹脂を主成分とし、更に必要に応じて各種の添加剤が添加,含有せしめられることによって調製される、本発明に従う硬化性組成物は、別途、準備される有機エステル化合物と接触せしめられることによって、硬化するのであり、そして、そのような硬化反応乃至は結合反応を利用した粘結剤、具体的には、鋳物砂、ガラス繊維、ガラスストランド、ロックウール、炭素繊維、ウィスカー、アラミド繊維、ポリアミド繊維、フェルト、再生古紙、鋸屑、パルプ、チップ、パーティクル、ハニカム、シラスバルーン、パーライト、フライアッシュ、発泡スチレンビーズ、発泡サランビーズ、カーボン粒子、産業廃棄物ダスト、砂利、セメント等の粘結剤等として、有利に用いられることとなるのである。
【0035】
特に、かかる硬化性組成物を、鋳型造型における有機粘結剤として用いれば、耐熱分解性が著しく向上するところから、そのような有機粘結剤を用いて造型された鋳型にて鋳造される鋳物に対して、焼き付き等の欠陥を発生せしめるようなことも、極めて効果的に防止され得るようになるのである。
【0036】
また、本発明に従う硬化性組成物にあっては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムに由来するアルカリ金属イオンが実質的に存在せず、有機強塩基が用いられているところから、鋳造後や再生処理の後に、有機強塩基が鋳物砂に残留するようなことがなく、再使用される鋳物砂のpH上昇が有利に抑制され得るのである。このため、鋳物砂の再使用を繰り返す毎に鋳型強度が低下するようなことも効果的に回避され得て、鋳物砂の再生特性が格別顕著に向上せしめられ得ることとなる。従って、本発明に従う硬化性組成物を鋳型造型用の有機粘結剤として用いれば、鋳物砂を繰り返し再使用して鋳型造型を行なっても、鋳型強度が高度に確保され得て、鋳物砂の再使用回数を、増加させることも可能となるといった特徴が発揮され得るのである。
【0037】
さらに、本発明に従う硬化性組成物にあっては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムに由来するアルカリ金属イオンが実質的に存在せず、有機強塩基が用いられていることから、焙焼式再生処理にてアルカリ成分(有機強塩基)を除去することが可能となり、これにて、摩耗式再生処理が必要とされ得なくなって、かかる摩耗式再生処理で懸念となっていたダストの問題が、有利に解消されるといった利点も享受される。また、有機強塩基は、一般に、180〜400℃程度で熱分解して揮発するところから、焙焼式再生処理を、従来の焙焼処理に比して低温、特に180〜400℃程度で行なうことも可能となり、以て、エネルギーコストを抑えた焙焼式再生処理が出来るようにもなる。更に、低温度で焙焼処理を実施することによって、水溶性フェノール樹脂の熱分解を抑制することも可能となって、鋳物砂を繰り返し再使用して鋳型造型を行なう際に、熱分解されずに残った水溶性フェノール樹脂の粘結作用も発現されて、同量の水溶性フェノール樹脂を用いても鋳型強度が向上する傾向がみられるようになるのである。
【0038】
ところで、かかる硬化性組成物を用いて、エステル硬化型の自硬性鋳型やガス硬化性鋳型を造型するに際して、該硬化性組成物の使用量としては、特に限定されるものではなく、従来と同様な使用量が採用されるのであって、通常、後述する鋳物砂の100重量部に対して、硬化性組成物中に含有される水溶性フェノール樹脂(粘結剤)が、固形分換算で、0.2〜8重量部程度、好ましくは0.3〜3重量部程度となるように、用いられることとなる。
【0039】
また、上述せる如き、硬化性組成物を硬化せしめる硬化剤として採用される有機エステル化合物としては、従来から公知のものが、何れも用いられ得るものであり、例えば、カーボネート類、ラクトン類、炭素数1〜10の1価又は多価アルコールと炭素数1〜10の有機カルボン酸とから導かれる有機カルボン酸エステル等を例示することが出来、それらが、単独で或いは2種以上を組み合わせて、用いられることとなる。具体的には、自硬性鋳型造型法では、γ−ブチロラクトン、プロピオンラクトン、ε−カプロラクトン、ギ酸エチル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が好適に用いられ、また、ガス硬化性鋳型造型法では、ギ酸メチル等が好適に用いられる。
【0040】
なお、かかる有機エステル化合物の使用量としても、従来と同様な配合量若しくは通気量が採用され、一般に、水溶性フェノール樹脂(固形分)の100重量部に対して、0.01〜45重量部程度、好ましくは1〜30重量部程度となる割合、実用的には、後述する鋳物砂の100重量部に対して、0.05〜9重量部程度、好ましくは0.6〜5重量部程度となる割合が、好適に採用されることとなる。
【0041】
一方、鋳物砂としては、従来から鋳型用に用いられている耐火性粒状材料が、何れも用いられるのであり、具体的には、石英質を主成分とする珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナサンド、合成ムライト砂を挙げることが出来る。なお、これらの鋳物砂は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として、鋳型の造型に1回或いは複数回、使用された再生砂又は回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて混合した、混合砂であっても、何等差支えないのであるが、特に、回収砂又は再生砂を、鋳物砂として用いれば、鋳型強度の向上を有利に図ることが出来る。
【0042】
ここで、本発明において、「回収砂」とは、鋳型を鋳ばらし後、集められた鋳型塊を、クラッシャー等の従来から公知の破砕機を用いて、砂粒状になるまで、破砕したものを意味し、また、「再生砂」とは、そのような回収砂に対して、所定の再生処理操作を施したものを意図している。なお、再生処理としては、一般に、鋳物砂の粒子表面に付着した付着物を、研磨によって取り除く摩耗式再生処理や、熱処理を施すことによって取り除く焙焼式再生処理等を例示することが出来るが、それらに何等限定されるものではなく、従来から公知のものが、何れも採用され得る。
【0043】
而して、上述せる如き、有機粘結剤(硬化性組成物)、有機エステル化合物、及び鋳物砂が用いられ、常法に従って、エステル硬化型の自硬性鋳型やガス硬化性鋳型が造型されることとなるのである。
【0044】
具体的に、上述せる如き鋳型のうち、エステル硬化型の自硬性鋳型を造型するに際しては、先ず、鋳物砂に対して、有機粘結剤(硬化性組成物)と、硬化剤たる有機エステル化合物とを、それぞれ、適量において、充分に混練,混合することによって、鋳物砂表面を有機粘結剤でコーティングした、鋳物砂組成物(混練砂)が製造されることとなる。次いで、そのようにして得られた混練砂は、添加された有機エステル化合物によって硬化反応が促進されるところから、直ちに、所望とする形状を与える成形型内に供給されて、賦形され、自硬性鋳型が製造されることとなる。
【0045】
また、エステル硬化型のガス硬化性鋳型を造型するに際しても、上記自硬性鋳型の場合と同様に、先ず、鋳物砂表面を粘結剤で被覆してなる鋳物砂組成物(混練砂)が製造されることとなるのであるが、このガス硬化性鋳型造型法に用いる鋳物砂組成物には、混練時に、有機エステル化合物が混合せしめられず、かかる鋳物砂組成物を、所望とする形状を与える成形型内に供給して、賦形した後、これに対して、気化された有機エステル化合物(ガス)を通気せしめることにより、鋳物砂組成物の硬化が促進せしめられて、ガス硬化鋳型が製造されることとなる。
【0046】
かくして、上述せる如き自硬性鋳型造型法或いはガス硬化性鋳型造型法にて製造された鋳型は、耐熱分解性に優れた有機粘結剤を用いて造型されているところから、焼き付き等の欠陥の発生が有利に低減されていると共に、強度等の物性も高度に確保するものであり、砂中子等の砂型として、各種金属からなる鋳物製品の鋳造に、有利に用いられることとなるのである。
【0047】
また、本発明においては、上述せるようにして作製された鋳型から、鋳物砂が有利に再生され得ることとなるのである。
【0048】
すなわち、本発明に従う有機粘結剤(硬化性組成物)によって造型された鋳型から鋳物砂を再生するに際しては、先ず、かかる鋳型を、鋳造に供した後、鋳ばらしを行なう。そして、鋳型塊を集め、集められた鋳物塊を、クラッシャー等の従来から公知の破砕機にて破砕することにより、砂粒状の回収砂を、回収するのである。次いで、得られた回収砂を、電気炉や焙焼炉等の従来から公知の加熱炉に投入して、所定の時間、熱処理乃至は焙焼処理を施すことにより、鋳物砂を再生するのである。
【0049】
なお、焙焼処理の温度としては、特に制限されず、一般的な温度が採用され得るのであるが、粘結剤中の有機強塩基が、一般に、180〜400℃程度で熱分解して揮発するところから、本発明においては、特に、180〜400℃、より好ましくは、250℃〜350℃で、焙焼処理を有効に行なうことが出来るのである。このため、従来より一般的に実施されている500℃以上の焙焼処理を採用する場合に比して、エネルギーコストを抑えた焙焼式再生処理が可能となる。
【0050】
また、上記した焙焼処理操作によって、アルカリ成分である有機強塩基が有利に除去され得るところから、摩耗式再生処理操作が不要となり、ダストの問題が解消されることとなる。また、焙焼処理を、特に、180〜400℃の低温度で実施することによって、水溶性フェノール樹脂の熱分解も抑えられることとなり、これによって、粘結剤としての機能も残されるところから、鋳物砂を繰り返し再使用して鋳型造型を行なう際に、同量の水溶性フェノール樹脂を用いても鋳型強度が向上する傾向がみられるようになる。
【0051】
【実施例】
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明は、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。なお、本実施例において、合成した水溶性フェノール樹脂の重量平均分子量、自硬性鋳型の鋳型強度、残炭率の測定は、以下のようにして行なった。
【0052】
−重量平均分子量の測定−
合成された水溶性フェノール樹脂に、少量のテトラヒドロフラン(THF)を加えた後、蟻酸を加えて、中和を行なった。これを、所定量のテトラヒドロフラン(THF)に溶解することにより、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)用のサンプルを調製した。そして、この調製されたGPC用サンプルを、東ソー(株)製のゲル濾過クロマトグラフにかけて、得られた分子量分布チャートより、重量平均分子量を求めた。なお、カラムとしては、サンプル導入側より順に、東ソー(株)製のガードカラム(TSK guardcolumn HXL-L)と、測定カラム(TSK gel G1000HXL、TSK gel G2000HXL)を接続したものを用いた。また、標準物質としては、東ソー(株)製のポリスチレンを採用し、溶出液:THF、流速:1ml/min(圧力:40〜70kg/cm2 )、カラム温度:40℃、検出器:UV検出器、分子量計算の為の分割法:時間分割(10秒)とした。
【0053】
−鋳型強度の測定−
鋳物砂として、石見5号硅砂の新砂を用い、この鋳物砂の100重量部に対し、有機エステル化合物(トリアセチン)の0.375重量部と、硬化性組成物(樹脂固形分49%、重量平均分子量1250)の1.5重量部とを、添加,混練することにより、鋳物砂組成物を調製した。その後、得られた鋳物砂組成物を、直径:50mm×高さ:50mmのテストピース用模型に充填し、混練後1時間乃至は24時間放置した後、抜型して、得られた抗圧力試験用テストピース(鋳型)の強度を、抗圧力試験機H3000D(高千穂精機社製)にて測定した。
【0054】
−残炭率の測定−
秤量したPt容器に、硬化性組成物を秤量して収容し、TG−DTAを用いて、窒素気流下、室温から10℃/minで昇温し、1100℃まで加熱した後の重量減少率(%)を測定した。そして、得られた重量減少率(%)から、残炭率(%)を、以下の式を用いて算出した。なお、「残炭率が高い」ことは、高温下においても、硬化性組成物(有機粘結剤)が分解されず残っていることを、示している。
残炭率(%)={100(%)−重量減少率(%)}/
{水溶性フェノール樹脂(固形分)の含有量(%)}×100
【0055】
なお、上記式中、水溶性フェノール樹脂の固形分の測定は、次のように行なった。まず、アルミ箔製皿(縦:90mm×横:90mm×高さ:15mm)内に、試料(水溶性フェノール樹脂水溶液)の10gを秤量して収容し、180±1℃に保持した加熱板上に置き、20分間放置した後、かかる試料皿を、反転させて、更に20分間、上記した加熱板上に放置した。そして、その試料皿を加熱板上から取り出して、デシケータ中で放冷した後、秤量を行なって、次式により求めた。
固形分(%)={乾燥後の重量(g)/乾燥前の重量(g)}×100
【0056】
実施例 1
添加するアルカリ種(塩基)の種類や添加量による違いを評価するために、各種のアルカリ種を用いて、硬化性組成物を調製した。
【0057】
−硬化性組成物A−
攪拌機、還流コンデンサー、温度計を備えた3つ口フラスコ内に、フェノールの467重量部と、92%パラホルムアルデヒドの324重量部(2モル/フェノール)とを加え、その後、アルカリ触媒として、25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の362重量部(0.2モル/フェノール)を、1時間かけて徐々に添加し、攪拌しながら湯浴上で80℃まで徐々に加熱した後、その温度を保持して、還流下で反応させ、重量平均分子量が1250である水溶性フェノール樹脂の水溶液を得た。その後、かかる水溶性フェノール樹脂を含有する反応液に対して、更に、アルカリ調整剤として、25%TMAH水溶液の995重量部(0.55モル/フェノール)、尿素の39重量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの 9.8重量部を、それぞれ、添加することにより、アルカリ金属イオンが含有せしめられていない、実施例1に係る硬化性組成物を調製した。なお、上記「モル/フェノール」は、フェノール性水酸基に対するモル比を示している。
【0058】
そして、得られた硬化性組成物AのpHと残炭率を測定すると共に、かかる硬化性組成物を用いて、上述せる如き抗圧力試験用テストピースを作製して、鋳型強度を測定し、得られた結果を下記表1に併せ示した。
【0059】
−硬化性組成物B〜M−
下記表1に示されるように、アルカリ種(アルカリ触媒とアルカリ調整剤)の添加量及び/又はアルカリ種の種類を変更した以外は、上記「硬化性組成物Aの調製」と同様にして、硬化性組成物B〜M(樹脂固形分:49%、重量平均分子量:1250)を調製した。なお、アルカリ種の添加量を変更する場合には、アルカリ触媒の添加割合を変えることなく、アルカリ調整剤の添加割合を変化せしめることによって行ない、また、水分量は、水を必要に応じて加えることによって調整した。
【0060】
そして、得られた硬化性組成物のpHと残炭率を測定すると共に、かかる硬化性組成物を用いて、上述せる如き抗圧力試験用テストピースを作製して、鋳型強度を測定し、得られた結果を下記表1に併せ示した。
【0061】
【表1】
【0062】
かかる表1の結果から明らかなように、有機弱塩基であるアンモニアやトリエチルアミンを用いた場合には、有機エステル化合物を加えても、充分な粘結作用が発揮されず(硬化が起きず)、鋳型を造型することが出来ないことが分かる。また、アルカリ金属イオンを発生する水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを用いた場合には、残炭率が低く、硬化性組成物(有機粘結剤)が分解されており、耐熱分解性に劣っていることが分かる。
【0063】
実施例 2
アルカリ金属イオン濃度の影響をみるために、上記で得られた、アルカリ金属イオンを何等含まない硬化性組成物Aと、カリウムイオン又はナトリウムイオンを含有する硬化性組成物L又は硬化性組成物Mとを、所定の比率で混合して、下記表2に示される各種アルカリ金属イオン濃度の試料1〜16を調製した。そして、それら各種試料の残炭率を、それぞれ、測定して、得られた結果を下記表2に示した。
【0064】
【表2】
【0065】
上記表2から明らかなように、1100℃における残炭率は、カリウムイオンやナトリウムイオンの増加と共に、少なくなる傾向があり、アルカリ金属イオンの含有量が高い程、硬化性組成物の耐熱分解性が悪くなっていることが分かる。特に、アルカリ金属イオンの含有量が、2重量%を超えると、耐熱分解性が著しく低下することが分かる。
【0066】
実施例 3
鋳物砂の再生性を評価するために、硬化性組成物Aと、硬化性組成物Lを、それぞれ、有機粘結剤として用いて、再生砂のpHと、再生砂からなる鋳型の強度を測定し、再生回数と鋳物砂のpHの関係を表わすグラフを図1に示すと共に、再生回数と鋳型強度の関係を表わすグラフを、図2に示した。なお、再生砂のpHの測定は、JACT試験法S−3に準じて測定を行なった。
【0067】
具体的には、先ず、石見5号硅砂或いは市販の合成ムライト砂:セラビーズ#650(伊藤忠セラテック株式会社製)の新砂100重量部を用い、これに、前記硬化性組成物の1.0重量部と、有機エステル化合物(トリアセチン)の0.2重量部とを、混合,混練せしめて、得られた鋳物砂組成物で、自硬性鋳型を造型し、混練後24時間経過した後の鋳型強度を測定し、得られた結果を、図2にプロットした。また、得られた鋳型を用いて、常法に従って、600℃のアルミニウム溶湯の鋳造を行ない、冷却の後、使用済みの鋳型を、砂粒状になるまでクラッシャーにて破砕することにより、回収砂を得た。更にその後、かかる回収砂をサンドヒーターで300℃に到達するまで5〜10分間焙焼することにより再生処理を施して、再生回数が1回の再生砂を得た。そして、かかる再生砂の一部を用いて、そのpHの測定を行なって、得られた結果を、図1にプロットすると共に、残りの再生砂を、鋳物砂として用いて、上記と同様の操作を繰り返した。
【0068】
かかる図1のグラフから、TMAHを含有する硬化性組成物を使用すれば、再生により、鋳物砂のpHが中性に近づくことが、分かる。これは、TMAHが、鋳物砂表面に残留することなく、熱分解して、揮発するためであると推察される。これに対して、アルカリ金属イオンを含有する硬化性組成物では、鋳造や再生処理を行なっても、アルカリ金属が鋳物砂の表面に残留するために、鋳物砂のpHが上昇していることが、分かる。
【0069】
また、図2のグラフから明らかなように、アルカリ金属イオンを含有する硬化性組成物を使用した系では、再生により、pHが高くなって、鋳型強度が低下しているが、TMAHを含有する硬化性組成物を用いた系では、再生によって、鋳型強度が向上せしめられていることが、分かる。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明より明らかな如く、本発明によれば、水溶性フェノール樹脂を有機エステル化合物で硬化せしめる硬化性組成物において、かかる硬化性組成物のpHが有機強塩基にて調整され、且つ、アルカリ金属イオンの含有量が、零とされるか、或いは実質的に影響しない程度まで、可及的に少なくされているところから、耐熱分解性が大幅に改善せしめられるという特徴を発揮する。
【0071】
したがって、かかる硬化性組成物を、鋳型造型における有機粘結剤として用いれば、耐熱分解性が著しく向上するところから、得られる鋳物に対して、焼き付き等の欠陥を発生せしめるようなことも、極めて効果的に防止され得るようになるのである。
【0072】
また、本発明に従う硬化性組成物を用いて造型された鋳型から鋳物砂を再生するに際しては、低温度での焙焼処理が有利に採用され得るようになり、摩耗式再生処理で懸念となっていたダストの問題も解消され得る。また、再生後に、有機強塩基が鋳物砂に残留するようなことがなく、再使用される鋳物砂のpH上昇が有利に抑制され、鋳物砂の再生特性も顕著に向上せしめられるといった利点も享受され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3における再生回数と鋳物砂のpHの関係を表わすグラフである。
【図2】実施例3における再生回数と鋳型強度の関係を表わすグラフである。
Claims (10)
- フェノール化合物とアルデヒド化合物とをアルカリ触媒の存在下に反応せしめて得られる水溶性フェノール樹脂の水溶液を用いて調製され、水系媒体中に、該水溶性フェノール樹脂が主成分として含有せしめられてなる、有機エステル化合物にて硬化せしめられる硬化性組成物であって、
水酸化アルキルアンモニウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機強塩基を含有し、且つ、該硬化性組成物中のアルカリ金属イオンの含有量が、0〜2重量%となるように調整したことを特徴とする硬化性組成物。 - 前記水溶性フェノール樹脂が、500〜8000の重量平均分子量を有する請求項1に記載の硬化性組成物。
- 前記有機強塩基が、前記アルカリ触媒として用いられている請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
- 前記硬化性組成物がアルカリ調整剤の添加によって塩基性に調整されていると共に、該アルカリ調整剤として、前記有機強塩基が用いられている請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の硬化性組成物。
- 前記有機強塩基が、前記水溶性フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対して、モル比で、0.3〜1.5となるように含有せしめられている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の硬化性組成物。
- 前記水酸化アルキルアンモニウムが、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド及びコリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の硬化性組成物。
- 請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の硬化性組成物を、鋳型の造型に使用される鋳型用有機粘結剤として用い、これを、鋳物砂に対して混練せしめてなることを特徴とする鋳物砂組成物。
- 請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の硬化性組成物を、鋳型の造型に使用される鋳型用有機粘結剤として用いて、鋳物砂に対して混練せしめる一方、かかる硬化性組成物を、有機エステル化合物にて硬化させて、造型せしめられてなることを特徴とする鋳型。
- 請求項8に記載の鋳型を用いて鋳造を行なった後、かかる鋳型から鋳物砂を回収し、焙焼処理を施して再生砂を得ることを特徴とする鋳物砂の再生方法。
- 前記焙焼処理が、180〜400℃の温度範囲で行なわれる請求項9に記載の鋳物砂の再生方法。
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