JP4196627B2 - エポキシ樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術】
本発明は、回収エピハロヒドリンを原料とするエポキシ樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などの優れた硬化物となり、半導体封止材料を始め、接着剤、塗料、積層板、成型材料、注型材料等、幅広い分野に使用されている。
【0003】
エポキシ樹脂は、工業的にはフェノール化合物と過剰量のエピハロヒドリンとの反応により生産されており、工業的エポキシ樹脂製造プロセスでは、エポキシ樹脂合成後、未反応成分として系内に残存するエピハロヒドリンを蒸留回収し、その回収エピハロヒドリンを次の製造バッチ以降に再利用する生産システムが一般的である。
【0004】
このようなエピハロヒドリンを主として含む回収成分中は、通常、エピハロヒドリンがアルカリと反応することによって生ずるグリシドールが混入する。この回収エピハロヒドリン中に含まれるグリシドールは、生成エポキシ樹脂中のエポキシ基濃度の低下を招く他、半導体封止材料分野における電気特性低下の原因となっていた。更に、エポキシ基濃度の低下に伴い硬化反応時の硬化速度を著しく低下させるものであった。
そこで、例えば特開2000−72845号公報には、原料フェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応粗生成物から蒸留によりエピハロヒドリンを含む一次回収液を得、次いで残渣からエピハロヒドリンを含む留分を再度蒸留により二次回収し、更にこの二次回収した留分を精留してエピハロヒドリンを回収、これを前記一次回収液と混合してグリシドール含有量の低い回収エピハロヒドリンを得、これを原料として使用してエポキシ樹脂を合成する方法が開示されている。
【0005】
しかし、前記特開2000−72845号公報記載の如く、蒸留によってのみエピハロヒドリンを回収する方法では、回収留分中のグリシドール量を低減させるために多大なエネルギーコストを要するものであった。また、多段階の蒸留操作が必要なため工業的規模での生産性に劣る他、回収留分の精留工程では、該回収留分中に含まれるエピハロヒドリンとグリシドールの熱重合によりゲル化が不可避であることに加え、二次回収留分の精留工程においても必ずエピハロヒドリンが残渣として残るためエピハロヒドリンの再利用効率に劣るものであった。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−72845号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明が解決しようとする課題は、グリシドール含有量の低い回収エピハロヒドリンを用いたエポキシ樹脂の製造方法において、エネルギーコストを低減させること、更に、エピハロヒドリンの再利用効率及び工業的生産性を飛躍的に向上させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、多価フェノール化合物とエピハロヒドリンとをアルカリ性反応触媒の存在下に水溶性有機溶媒中で反応させてエポキシ樹脂を製造する方法において、反応終了後に粗反応生成物から溜出成分を連続的に溜出させ乍ら、先ず副生成グリシドール量の少ない第一回収溜分を回収した後、続いて水溶性有機溶媒量の少ない第二回収溜分を回収し、更に第二回収溜分を水洗した精製溜分を得、これを第一回収溜分と共にエポキシ樹脂合成原料として使用することにより、エピハロヒドリンの消失が殆どなく、かつ、簡便な装置により回収エピハロヒドリンを用いたエポキシ樹脂の工業的生産が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、多価フェノール化合物とエピハロヒドリンとをアルカリ性反応触媒の存在下に水溶性有機溶媒中で反応させてエポキシ樹脂を製造する方法において、
(1)前記反応により得られる粗反応生成物から溜出成分を連続的に溜出させて、前記水溶性有機溶媒と未反応エピハロヒドリンと該未反応エピハロヒドリン1質量部あたり0.01質量部以下の副生成グリシドールとを含有する第一回収溜分を回収した後、
(2)更に溜出成分を連続的に溜出させて、副生成グリシドールと未反応エピハロヒドリンと該未反応エピハロヒドリン1質量部あたり0.1質量部以下の前記水溶性有機溶媒とを含有する第二回収溜分を回収し、
(3)前記第二回収溜分を水洗して該溜分から前記水溶性有機溶媒と前記副生成グリシドールとを除去することにより前記エピハロヒドリンを回収し、
(4)前記第一回収溜分と前記回収エピハロヒドリンとを前記反応の原料として再利用することを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法で使用する多価フェノール化合物は、例えばオルソクレゾールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂、臭素化フェノールフェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの重縮合物、ナフトールノボラック樹脂、フェノール類とジシクロペンタジエン重付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。これらのなかでも半導体封止材料用途において、耐熱性及び耐水性が良好で耐ハンダクラック性に優れるエポキシ樹脂が得られる点からクレゾールノボラック、ビナフトール、ジヒドロキシナフタレン、又はフェノール類とジシクロペンタジエン重付加物が好ましい。
【0011】
次に、上記多価フェノールと反応させるエピハロヒドリンは、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。なかでも入手の容易性からエピクロルヒドリンが好ましい。本発明の製造方法は、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みエピハロヒドリンの全てを新しいものを使用するが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分及び精製で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリンとを併用する。
【0012】
多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応は、水溶性有機溶媒の存在下に行う。このような水溶性有機溶媒を用いることにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜二種以上を併用してもよい。
【0013】
これらのなかでもとりわけ常圧(0.101MPa)における沸点が120℃以下の水溶性有機溶媒が、前記第二回収溜分における残存量が少なくなる点から好ましい。即ち、水溶性有機溶媒は、グリシドール及びエピハロヒドリンとの親和性が高いため、第二回収溜分に多量に存在すると水洗工程にてグリシドールと共にエピハロヒドリンをも消失し易くなる。よって沸点120℃以下のものを使用することにより、前記第一回収溜分に水溶性有機溶媒をほぼ完全に回収でき、前記第二回収溜分における残存量が低減され、第二回収溜分の水洗によりエピハロヒドリンを消失させることなくグリシドールを効果的に除去できる。
【0014】
このような沸点120℃以下の水溶性有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる。これらに中でも、ターシャリーブタノール、1、4−ジオキサン、又はアセトニトリルを用いた場合、最終的に得られるエポキシ樹脂中の不純物塩素量を低減できてエポキシ樹脂の高純度化を図ることができる点から好ましい。
【0015】
次に、アルカリ性反応触媒は、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられるが、特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましい。アルカリ金属水酸化物は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。使用に際しては、これらのアルカリ金属水酸化物を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0016】
多価フェノール化合物とエピハロヒドリンとをアルカリ性反応触媒の存在下に水溶性有機溶媒中で反応させてエポキシ樹脂を製造する方法としては、具体的には、内部に攪拌翼が配設されたバッチ式反応装置の反応槽にエピハロヒドリンと前記水溶性有機溶媒とを導入して混合液を得、ここに多価フェノール化合物を溶解して混合溶液とした後、アルカリ金属水酸化物を所定量加えることにより反応を行うことができる。尚、後述するように反応終了後、粗反応生成物を該反応装置を利用して前記(1)の工程および前記(2)の工程に供することが望ましいため、該反応装置は、蒸気排出口を具備するものであることが好ましい。また、ここで使用するエピハロヒドリン及び水溶性有機溶媒は、初バッチの際は新しいものを使用し、次バッチ以降は回収されたものを再利用する。但し、この場合、回収されたものと共に、反応及び精製で消失した分に相当する量の新しいエピハロヒドリン及び水溶性有機溶媒を反応系に加える。
【0017】
ここで、前記水性有機溶媒の使用量は、エピハロヒドリン100質量部に対して、5〜80質量部であることがエポキシ樹脂合成反応の反応速度が高まる点から好ましい。また、エピハロヒドリンの使用量は特に限定されるものではないが、通常、前記多価フェノールに対して過剰量使用される。過剰の程度は、目的とする分子量によって適宜選択されるが、半導体封止材料用途では低溶融粘度化を図る点からフェノール性水酸基1モルに対して2〜15倍モル量の範囲で使用することが好ましい。
【0018】
次に、アルカリ金属水酸化物は、例えば、多価フェノール化合物のフェノール性水酸基1モルに対して0.7〜1.5モルの量を、例えば液相の温度が20〜100℃となる温度で徐々に前記混合溶液に添加して反応を行うことが望ましい。このようにして得られた粗反応生成物は、そのまま第一回収溜分及び第二回収溜分を回収すべく次工程の蒸溜に供してもよいが、反応終了直後の状態は多量の生成無機塩を含んでいるため、該生成無機塩を溶解するに必要な量の水を系に加え、分液によって無機塩を除去することが好ましい。この工程において、反応器の容積効率を向上させる目的で、アルカリ金属水酸化物の添加、反応、生成した無機塩除去の操作を2〜5回に分割して繰り返して行うことが好ましい。
【0019】
このようにして得られた粗反応生成物は、次いで、下記(1)及び(2)の蒸溜工程に供され、第一回収溜分及び第二回収溜分が回収される。
即ち、
(1)粗反応生成物から溜出成分を連続的に溜出させて、水溶性有機溶媒と未反応エピハロヒドリンと該未反応エピハロヒドリン1質量部あたり0.01質量部以下の副生成グリシドールとを含有する第一回収溜分を回収した後、
(2)更に溜出成分を連続的に溜出させて、副生成グリシドールと未反応エピハロヒドリンと該未反応エピハロヒドリン1質量部あたり0.1質量部以下の水溶性有機溶媒とを含有する第二回収溜分を回収する。
前記(1)及び(2)の工程では溜出成分は連続的に溜出するが、その初期の溜分組成は水溶性有機溶媒と未反応エピハロヒドリンが主たる成分であり、後期の溜出組成は未反応エピハロヒドリンと副生成グリシドールが主たる成分となる。よって、本発明では、第一回収溜分中の副生成グリシドール含有量が未反応エピハロヒドリン1質量部あたり0.01質量部以下となる範囲であって、かつ、第二回収溜分中の水溶性有機溶媒の含有量が、第二回収溜分中の未反応エピハロヒドリン1質量部あたり0.1質量部以下となるように回収容器を切り替える等により第一回収溜分と第二回収溜分を分けるものである。
【0020】
ここで、前記(1)及び(2)の工程を行う具体的手段としては、粗反応生成物を反応装置内でそのまま加熱し、蒸気を系外へ排出することにより行う方法、或いは、粗生成物を一旦反応装置から取り出し、汎用の蒸溜塔、又は、流下膜式、上昇膜式蒸発器若しくはワイプドフィル蒸発器等に代表される薄膜蒸溜装置に導入して蒸溜処理を行う方法が挙げられる。本発明においては、蒸溜の温度条件及び圧力条件が比較的緩やかであっても良好にエピハロヒドリンを回収することができるため、専用の蒸溜塔を用いる必要はなく、前者のエポキシ樹脂合成を行った反応装置を用いて蒸溜を行う方法が製造コストの点から好ましい。
前記(1)の工程及び前記(2)の工程は、前記水溶性有機溶媒として沸点120℃以下のものを使用する場合、具体的には次の圧力条件及び温度条件にて行うことができる。
【0021】
即ち、先ず前記粗反応生成物について、0.08〜0.12MPaの圧力条件下、液相の温度が前記水溶性有機溶媒の沸点よりも30〜60℃高い温度となるまで液相の温度を上昇させながら蒸留を行い第一回収溜分を回収する。この工程では、このように常圧に近い状態で、前記温度条件になるまで液相の温度を上昇させながら蒸溜を行うことにより、第一回収溜分中に実質的にグリシドールが存在しない状態で、尚かつ、ほぼ完全に前記水溶性有機溶媒を回収することができる。
前記(1)の工程において反応装置から排出された加熱蒸気は、コンデンサーで濃縮、冷却されて液状にして適当な容器に第一回収溜分として回収することができる。ここで、この工程における水溶性有機溶媒の沸点とは、常圧(0.101MPa)における沸点をいう。更に、前記(1)の工程は、エピハロヒドリンの回収率がより良好なものとなる点から0.08〜0.12MPaの圧力条件下、液相の温度を前記水溶性有機溶媒の沸点よりも45〜60℃高い温度まで上昇させることがより好ましい。
【0022】
また、前記(1)の工程での液相の最終的な温度は、液相の温度が前記水溶性有機溶媒の沸点よりも30〜60℃高い温度範囲、特に45〜60℃の温度範囲の中で、第一回収溜分及び第二回収溜分の組成が前記条件を満たすように好適な設定温度を選択すればよい。
尚、第一回収溜分の回収工程では、液相の温度を緩やかに上昇させることで、グリシドール、未反応エピクロルヒドリン及び水溶性有機溶媒の分離能が向上し溜分中のグリシドール含有量低減の効果が顕著なものとなる。よって、液相の昇温速度は、初溜分の溜出開始時点から最終温度までの間で0.1〜1.0℃/分となる範囲であることが好ましい。
【0023】
次に、液相の温度が前記設定温度に到達した時点で、回収容器を別の容器に切り替えると共に、液相の温度を前記水溶性有機溶媒の沸点よりも30〜60℃高い温度範囲、好ましくは前記設定温度±5℃の範囲に維持し、かつ、気相を0.1kPa〜6kPaとなるまで減圧しながら、第二回収溜分を回収する。尚、ここで前記水溶性有機溶媒の沸点とは、常圧(0.101MPa)における沸点をいう。
【0024】
このようにして回収される第一回収溜分及び第二回収溜分のうち、第一回収溜分は前記したとおり副生成グリシドール含有量が未反応エピハロヒドリン1質量部に対して0.01質量部以下であるが、なかでも0.007質量部以下であることが好ましい。
【0025】
一方、第二回収溜分は、前記した通りこの溜分中、前記水溶性有機溶媒の含有量が未反応エピハロヒドリン1質量部に対して0.1質量部以下であるが、特に0.05質量部以下であることが好ましい。このように第二回収溜分は水溶性有機溶媒量が少ないため、次工程の水洗工程にて良好な油水分離状態を得ることができ、副生成グリシドールの除去効率が良好なものとなる。
また、第一回収溜分と第二回収溜分との質量比は、特に制限されないが、工程時間やエネルギーコストを考慮した精製効率が良好となる点から、質量基準で、[第一回収溜分/第二回収溜分]=45/55〜95/5の範囲であることが好ましい。
【0026】
尚、前記(2)の工程が完了した時点では、残溜物中には無機塩が相当量残存し、また生成したエポキシ樹脂も一部ハロヒドリン基を有する場合がある。このような場合、該残溜物から水洗により無機塩を除去し、次いで、トルエンやメチルイソブチルケトンなどの疎水性有機溶媒で溶解しアルカリ処理することにより前記ハロヒドリン基が閉環してエポキシ基が生成され、エポキシ樹脂中のエポキシ基濃度を高めることができる。
アルカリ処理の方法は、例えば、1〜49質量%の苛性ソーダや苛性カリなどを、必要に応じて、四級アンモニウム塩やポリアルキレングリコールなどの相間移動触媒と併せて添加して、所望の不純物ハロゲン濃度以下になるまで反応させる方法が挙げられる。アルカリ処理終了後、必要に応じて、系内を中性にした後に脱水精密濾過等の処理を施してから、有機溶媒を蒸溜回収することによって、目的のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0027】
次に、前記(3)の工程として、前記第二回収溜分を水洗して前記水溶性有機溶媒と前記副生成グリシドールとを除去することにより前記エピハロヒドリンを前記第二回収溜分から回収する。
この水洗の工程は、具体的には、バッチ水洗法又は塔式抽出法に依って行うことができる。バッチ水洗法は、容器2に回収された溜分と水とを攪拌接触させて分液によってグリシドールを抽出除去する方法である。バッチ水洗法による場合、回収溜分の質量に対して0.05〜2倍量の水を用いて、5〜100℃の温度範囲で1〜10回抽出することが洗浄効果に優れる点から好ましい。一方、塔式抽出法は、例えば交流型抽出塔などを使用して、塔内で溜分と水を接触抽出する方法が挙げられる。塔式抽出法の水洗条件としては、溜分の単位時間当たりの供給量に対して質量基準で0.01〜1倍量の水を塔内に供給して5〜100℃の温度範囲で塔内抽出処理することが好ましい。具体的には、エピハロヒドリン100質量部に対するグリシドール量が0.3質量部以下、さらに0.1質量部以下となるまで水洗を行うことが望ましい。
【0028】
次に、前記(4)の工程として、このようにして回収した前記第一回収溜分と前記回収エピハロヒドリンは、エポキシ樹脂の製造原料として再利用される。即ち、前記第一回収溜分及び前記回収エピハロヒドリンは、多価フェノール化合物とエピハロヒドリンとをアルカリ性反応触媒の存在下に水溶性有機溶媒中で反応させるエポキシ樹脂の製造において、該エピハロヒドリン及び該水溶性有機溶媒として用いられる。
【0029】
本発明では、回収された前記第一回収溜分と前記回収エピハロヒドリンは、グリシドール量が充分に低減されているため、このように原料として再利用してもエポキシ基濃度が高いエポキシ樹脂を製造することができる。例えば半導体封止材料として汎用のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、理論エポキシ当量は175〜178g/eq.であるのに対し、実用化されているクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、通常、193〜220g/eq.程度と高くなる。これに対して、本発明で製造されるエポキシ樹脂は、理論エポキシ当量に近いものとなる。
【0030】
また、前記第一回収溜分と前記回収エピハロヒドリンを再利用してエポキシ樹脂の製造を行う際、回収エピハロヒドリン及び回収水溶性有機溶媒の量と、消費又は消失される量に等しい分量の新しいエピハロヒドリン及び水溶性有機溶媒が反応系に加えられるが、本発明では、前記第一回収溜分と前記回収エピハロヒドリンは、その品質を劣化させることがなく、かつ、回収率も高いことから原料の再利用効率に優れたエポキシ樹脂生産システムとなる。例えば、本発明におけるエピハロヒドリンの回収率は、反応消費分を除外すれば90質量%以上となる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の製造方法を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでない。尚、表中の性状値の測定条件、および略号の意味は以下の通りである。
[グリシドール含有率および水溶性有機溶媒含有率]
ガスクロマトグラフィー法により定量した値である。
[エピクロルヒドリン損失率]
工程1〜3で回収される全エピクロルヒドリン量に対して工程3で損失する損失するエピクロルヒドリンの質量%を表す。
【0032】
[全塩素含有量]
エポキシ樹脂0.2gを1−ブタノール20mlに溶解して、これに金属ナトリウムを1g添加した後に、120℃環流条件下で3時間加熱処理して脱離する塩素イオンを硝酸銀溶液で電位差滴定することによって得られるエポキシ樹脂中の全塩素原子濃度を表す。
[エポキシ当量と理論エポキシ樹脂当量の比]
エポキシ当量と理論エポキシ樹脂当量の比は、理論エポキシ樹脂当量に対して、実際に測定したエポキシ当量の比率であり、値が小さいほど理論エポキシ当量に近いエポキシ当量が製造可能であることを表す。
[溜分(A)中のグリシドール含有量]
溜分(A)中のグリシドールの含有量を、該溜分(A)中の未反応エピハロヒドリン1質量部に対するグリシドールの質量部で表したものである。
[溜分(B)中の水溶性有機溶媒含有量]
溜分(B)中の水溶性有機溶媒の含有量を、該溜分(B)中の未反応エピハロヒドリン1質量部に対する水溶性有機溶媒の質量部で表したものである。
[精製溜分(B')中のグリシドール含有量]
精製溜分(B’)中のグリシドールの含有量を、該精製溜分(B’)中の未反応エピハロヒドリン1質量部に対するグリシドールの質量部で表したものである。
[略号の説明]
IPA:イソプロピルアルコール
t−BuOH:ターシャリーブチルアルコール
AN:アセトニトリル
【0033】
実験例1〜8及び比較例1〜3
(エポキシ樹脂の製造)
加熱装置と攪拌装置とコンデンサと温度計および下部に分液コックが装着された反応装置に、表1〜3に示す量の多価フェノール化合物とエピクロルヒドリンおよびエピクロルヒドリン100質量部に対し30重量部の水溶性有機溶媒を添加した。
次いで表1〜3に示す量の35質量%水酸化カリウム水溶液を2段階に分けて添加した。まず40℃で全量の10質量%を添加して、40℃を保ちながら4時間攪拌した。次いで50℃に昇温して残りの90質量%を50℃を保持しながら3時間要して滴下した。さらに50℃で30分間攪拌した後に、生成塩が飽和濃度になるような量の水を添加して塩を溶解して、攪拌を止めて水層を棄却した。
【0034】
(工程1)
未反応のエピクロルヒドリンを表1〜3に示す昇温速度で、表1〜3に示す温度(表中「工程1設定温度」と表記する。)まで加熱し溜分(A)を回収した。
(工程2)
次いで温度を保持したまま気相の圧力が最終的に1.3kPaとなるまで減圧を行いながら、溜分(B)を別容器に回収し、粗反応生成物を得た。
(工程3)
加熱装置と攪拌装置とコンデンサと温度計および下部に分液コックが装着された反応装置に工程2で得られた溜分(B)と溜分(B)100質量部に対し20質量部の水を仕込み、30℃で10分間攪拌接触させ水洗した後、溜分(B)と水を分離した。この操作を3回繰り返し、グリシドール含有量がエピクロルヒドリンに対して表1〜3に示す量の精製溜分(B’)を得た。
工程1で得られた溜分(A)と、工程2で得られた精製溜分(B’)とを混合して混合溜分を得た。
【0035】
(粗樹脂の後処理)
工程2にて得られた粗反応生成物に対し、質量基準1.5倍量のメチルイソブチルケトンを添加して溶解した後、n−ブタノール50重量部と10%水酸化ナトリウム水溶液12重量部を加えて、80℃で2時間攪拌して分液した。それに第一燐酸ソーダで中和した後に、共沸によって脱水し、精密濾過を経た後にメチルイソブチルケトンを蒸溜によって溜去して表1〜3記載のエポキシ当量のエポキシ樹脂を得た。
【0036】
比較例4
実施例2と同様にしてエポキシ樹脂の合成を行った後、0.02MPa、90℃の条件下にエピクロルヒドリンの回収を行った。
エピクロルヒドリン回収率は83.2質量%であり、回収成分中のグリシドール量は、回収エピクロルヒドリン1質量部あたり0.009質量部であった。
【0037】
比較例5
実施例2と同様にしてエポキシ樹脂の合成を行った後、0.02MPa、90℃の条件下にエピハロヒドリンの回収を行った。残渣を1.3kPa、185℃の条件下で蒸溜した。得られた溜分に対して0.02MPa、69℃なる条件下に精溜を行いエピクロルヒドリンを回収し、エポキシ樹脂合成直後に回収した成分に混合した。
エピクロルヒドリン回収率は88.0質量%であり、回収成分中のグリシドール量は回収エピハロヒドリン1質量部あたり0.008質量部であった。
【0038】
【表1】
Figure 0004196627
【0039】
【表2】
Figure 0004196627
【0040】
【表3】
Figure 0004196627
【0041】
実施例9〜16
エピクロルヒドリンとして新品エピクロルヒドリンと再利用エピクロルヒドリンの混合物を使用した以外は、表4及び表5に従って、実験例と同様な操作において目的のエポキシ樹脂を得た。尚、再利用エピクロルヒドリンは、エピクロルヒドリン成分が表4及び表5の量になる重量を、ガスクロマトグラフィー法により測定した純度から計算して使用した。
【0042】
【表4】
Figure 0004196627
【0043】
【表5】
Figure 0004196627
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、グリシドール含有量の低い回収エピハロヒドリンを用いたエポキシ樹脂の製造方法において、エネルギーコストを低減できる他、エピハロヒドリンの再利用効率が格段に向上し、工業的生産性が飛躍的に向上する。

Claims (3)

  1. 多価フェノール化合物とエピハロヒドリンとをアルカリ性反応触媒の存在下に水溶性有機溶媒中で反応させてエポキシ樹脂を製造する方法において、
    (1)前記反応により得られる粗反応生成物から溜出成分を連続的に溜出させて、前記水溶性有機溶媒と未反応エピハロヒドリンと該未反応エピハロヒドリン1質量部あたり0.01質量部以下の副生成グリシドールとを含有する第一回収溜分を回収した後、
    (2)更に溜出成分を連続的に溜出させて、副生成グリシドールと未反応エピハロヒドリンと該未反応エピハロヒドリン1質量部あたり0.1質量部以下の前記水溶性有機溶媒とを含有する第二回収溜分を回収し、
    (3)前記第二回収溜分を水洗して該溜分から前記水溶性有機溶媒と前記副生成グリシドールとを除去することにより前記エピハロヒドリンを回収し、
    (4)前記第一回収溜分と前記回収エピハロヒドリンとを前記反応の原料として再利用することを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
  2. 前記水溶性有機溶媒が沸点120℃以下のものである請求項1記載の製造方法。
  3. 前記第一回収留分を、0.08〜0.12MPaの圧力条件下、液相の温度を前記水溶性有機溶媒の沸点よりも30〜60℃高い温度となるまで上昇させながら回収し、前記第二回収留分を、液相の温度を前記水溶性有機溶媒の沸点よりも30〜60℃高い温度範囲に維持し、かつ、気相の圧力を0.1kPa〜6kPaにまで減圧しながら回収する請求項2記載の製造方法。
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