JP4195931B2 - スカンジウム化合物超微粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スカンジウム化合物超微粒子及びその製造方法に関する。
希土類元素であるスカンジウムの酸化物Sc23粉末はジルコニアセラミックスの安定化剤として、あるいは窒化珪素セラミックスの焼結補助剤として、また、ガドリニウムガリウムガーネット固体レーザーへのドーパントとしてなど、耐火材及び光学材料への添加剤に供せられている。また、酸化スカンジウム粉末は酸化スカンジウムセラミックスの原料として注目されている。
すなわち、酸化スカンジウムは立方晶系であるため光学的異方性がなく、5.7eVと大きなバンドギャップを持ち、2430℃という高い融点を持つため、高性能の酸化スカンジウムセラミックスが実現されれば高出力紫外レーザーの母体材料としての応用が切り開かれる可能性がある。酸化スカンジウムは高融点であり、かつ、るつぼとの反応性が高いため引き上げ法や水熱合成法による単結晶育成は困難なため、焼結法によるセラミックスに期待が寄せられているのである。
しかし、市販の酸化スカンジウム粉末の粒径は10μm程度と大きいためこれを直接焼結することによりセラミックスを形成するのは困難である。このため、酸化スカンジウムを酸などに溶解し微小サイズのスカンジウム塩を合成し、これを酸化スカンジウムの前駆体とし、この前駆体を仮焼することにより微小サイズの酸化スカンジウム粉末を生成し、この粉末を焼結用の原料として検討する必要がある。
このような前駆体として従来知られているのはスカンジウムのγ相オキソハイドロオキサイド(γ−ScOOH)である。例えば、非特許文献1では前駆体としてゾルゲル法で合成
されたγ−ScOOHが報告されているが、その形状は扁平なひし形の板状であり、代表的な
形状は66×37×4.5nmと記載されている。
これはγ−ScOOHが室温で容易に結晶化し、かつその結晶系が斜方晶系であるためであ
り、扁平な形状は本質的なものである。非特許文献1の362頁には、γ−ScOOHを773Kで仮焼すると立方晶系のSc23が形成されるがその形状はγ−ScOOHのひし形板状を保っていた旨、記述されている。非特許文献1に示された酸化スカンジウムの応用は光学多層膜であったため、酸化スカンジウム膜に空隙が存在した方が空隙による応力緩和のため応用上の強度を確保できる。このような著しく形状対称性が劣っている形状により酸化スカンジウム膜に空隙ができ所望の応用に供されている。
しかし、セラミックス原料としての目的には形状対称性の劣った形状は空隙を生じやすく不都合である。また、純度を改善するために700℃から900℃の高温で仮焼すると4.5nmと薄い板状の酸化スカンジウムは凝集しやすく超微粒子構造を失ってしまう。このように凝集してしまうと焼結はますます困難になり、空隙の少ない高密度の酸化スカンジウムセラミックスは実現困難となる。また、凝集した酸化スカンジウム粉末は添加剤としての応用に関しても母体への均一添加が困難なため好ましくない。このように、従来知られていた酸化スカンジウム粉末及びその前駆体は添加剤やセラミックス原料としての応用に供するには構造的に不都合があった。
また、特許文献1には、アルコキシド法及びハライド法により球状のスカンジウム酸化物超微粒子が製造される旨の記載があるが、特許文献1の記載はチタン酸化物とジルコニ
ウム酸化物の超微粒子に関しては詳細な記述があるも、スカンジウム酸化物の超微粒子に関しては製造に関する具体的な記述がない。したがって、スカンジウム超微粒子の存在に関してもその存在は確認されていなかった。
ジャーナル オブ マテリアルズ ケミストリー (Journal of Materials Chemistry) 第10巻 第359−363頁 2000年出版 特公平4−57602号公報
非特許文献1に記載された酸化スカンジウムの前駆体γ−ScOOHは「扁平なひし形板状
の構造形態」をもつという欠点があった。この原因はγ−ScOOHが低温でも結晶化しやす
く、しかも斜方晶系に属するためである。すなわち、斜方晶系特有の扁平な構造形態が現れてしまう。このγ−ScOOHを仮焼して形成される酸化スカンジウムの構造形態はγ−ScOOHの形態を反映して扁平なひし形板状となり、しかも、高温での熱処理によって凝集しやすいという欠点があった。この原因はγ−ScOOHを前駆体としたためであり、また、凝集
しやすいのは、5nm程度という薄さに起因していると考えられる。
本発明の目的は、酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の前駆体であり、かつ形状対称性に優れた特徴を持つ非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子とその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明は、上記前駆体を原料として製造される形状対称性に優れた酸化スカンジウム仮焼体超微粒子とその製造方法を提供することを目的としている。
本発明の超微粒子は、塩基性炭酸スカンジウムSc(OH)CO3を含む、粒径が10n
m以上60nm以下である非晶質の超微粒子であることを特徴としている。
この酸化スカンジウム前駆体の製造法は、スカンジウムの酸性塩水溶液を、炭酸を含む塩基性塩水溶液によって中和反応させることにより、その中和反応沈殿物として合成することを特徴としている。スカンジウムの酸性塩としては塩化塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの水溶性無機酸塩又は有機酸塩のうち、1種又は2種以上が使用される。炭酸を含む塩基性塩には、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はそれらの炭酸水素塩などの水溶性炭酸塩の1種又は2種以上が使用される。
また、この製造方法において、中和反応のために投与される炭酸イオンのモル数の被中和溶液中のスカンジウムイオンのモル数に対する比は2.2 以上4.0以下に設定され、中和時の反応温度は25℃ 以上60℃ 以下に制御するとよい。本発明の第2 の目的である酸化スカンジウム超微粒子は、10nm以上60nm以下の粒径をもち、かつ球状又は多面体状の外形形状を有することを特徴とする。
本発明による酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の製造方法は、塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子を700℃以上900℃以下の温度で酸素雰囲気中で仮焼する工程を含むことを特徴としている。
本発明による酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の形状として球状又は多面体状と規定したのは、仮焼中に立方晶系の晶癖出現により球状の形状が歪む理由による。多面体に変形しても形状対称性がよいため球状の超微粒子と同等の焼結性を示す。酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の製造法として酸素雰囲気中で700℃以上900℃以下と規定したのは、700℃未満では不純物の含有が除去されないためであり、900℃以下としたのは酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の凝集を防止するためである。
[作用]
本発明の目的である、酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の前駆体でありかつ形状対称性に優れた特徴を持つ非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子は、非特許文献1などに記載された従来の前駆体γ−ScOOHとは全く組成が異なるゆえに、球状の超微粒子構造を示す。
本発明による非晶質のスカンジウム化合物前駆体は、非晶質であるため晶癖をもたず、球状の超微粒子の形状を示す。組成として塩基性炭酸スカンジウムを含むことによりこのような超微粒子形状が得られる。酸性スカンジウム塩水溶液に加える中和剤として炭酸基を含む塩基性塩水溶液を採用する製造方法を適用することにより前駆体中に炭酸イオン及び塩基性イオンが導入される。
また、投与される炭酸イオンのモル数の被投与溶液中のスカンジウムイオンのモル数に対する比を2.2以上に設定し、中和時の反応温度は25℃以上60℃以下に制御することにより形状分散の少ない超微粒子が製造される。形成された超微粒子は球状で粒径の分散が少なく、かつ凝集は極めて少なかった。このため吸引濾過は容易であり、かつ乾燥物の粉砕も容易であった。
酸性スカンジウム塩水溶液に加える中和剤として炭酸基を含む塩基性塩水溶液がアンモニウム基を含む場合は、投与される炭酸イオンのモル数の被投与溶液中のスカンジウムイオンのモル数に対する比を2.2以上に設定した場合であっても、この比の増大とともに、製造される塩基性炭酸スカンジウム超微粒子中にアンモニウム基を含む炭酸スカンジウム塩(NH4)Sc(CO32の粒子が混入する。混入したアンモニウム基を含む炭酸ス
カンジウム粒子の体積が製造される前駆体の体積の50%未満であれば、発明の効果は損なわれず、空隙の少ない酸化スカンジウムセラミックスが実現する。
本発明の前駆体は、γ−ScOOHとは異なって凝集しにくい。前駆体である非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子が、粒径が1nmから100nmの範囲にあれば、従来の前駆体であるγ−ScOOHに比べて形状対称性に優れているため、700℃ 以上900℃以下の仮焼によっても凝集の少ない酸化スカンジウム仮焼体超微粒子が形成できる。
しかしながら、前駆体の一次粒子の粒径が10nm未満の場合は本発明による前駆体であっても凝集する可能性があり、前駆体粒径が60nmを超すと仮焼によって生成される酸化スカンジウムも粒径が60nmを超え、その後の焼成工程によって作成されるセラミックスの焼結性が低下し、密度も低下する。そのため、粒径として10nm以上60nm以下が望ましい。
すなわち、非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子及び酸化スカンジウム仮焼体超微粒子としては、高分解能走査顕微鏡観察により測定した一次粒子の粒径が10nmから60nmの範囲に分布し、数平均で定義された平均粒径が30から50nmであることが望ましい。また、非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子としては、アンモニウム基を含む炭酸スカンジウム粒子を体積比で50% 未満混在したものでも本発明の作用は失われない。
本発明により、酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の前駆体であり、かつ形状対称性に優れた特徴を持つ非晶質スカンジウムを主成分とする超微粒子が提供され、さらに、従来の酸化スカンジウム粉末に比べて粒径がはるかに小さく、形状対称性に優れ、かつ形状分散の少ない酸化スカンジウム仮焼体超微粒子が提供される。この酸化スカンジウム仮焼体超微粒子を用いて空隙の少ないセラミックスの焼結が可能となる。
本発明の実施の形態について詳細に説明する。塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子の合成には、まずスカンジウムの酸性塩水溶液を、炭酸を含む塩基性塩水溶液で中和して沈殿物を生成する。スカンジウムの酸性塩としては塩化塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの水溶性無機酸塩又は有機酸塩のうち、1種又は2種以上が使用される。炭酸を含む塩基性塩には、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はそれらの炭酸水素塩などの水溶性炭酸塩の1種又は2種以上が使用される。
中和反応時の温度は25℃以上60℃以下が適切である。60℃を超える温度では水溶性炭酸塩の分解が生じることと、生成される塩基性炭酸スカンジウムの粒径が60nmを越えてしまうため望ましくなく、25℃未満では中和反応の進行が遅くなることと、生成される塩基性炭酸スカンジウムの粒径として10nm未満のものが生成されるため望ましくない。
沈殿物が生成された溶液は、攪拌しながら熟成する。熟成時間は25℃ から60℃ の範囲の温度下では1時間で十分であるが、12時間以上熟成してもさしつかえない。この熟成後、沈殿物を吸引ポンプで濾過し、蒸留水と無水アルコールで洗浄した後に窒素ガス中で室温乾燥させる。乾燥物は粉砕したのち酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の前駆体として供せられる。
本発明による酸化スカンジウム仮焼体超微粒子は、本発明による非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子を仮焼することにより形成される。仮焼工程は、酸素雰囲気中での700℃以上900℃以下の加熱によって構成される。酸素雰囲気は化学量論的組成を持つScを得るために必要である。700℃以上としたのは酸化スカンジウム中に含まれる揮発性の微量不純物の除去に望ましいからであり、900℃以下としたのは、この温度を超えると温度では酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の凝集が開始するため望ましくないからである。加熱時間は、1時間以上が望ましい。しかし、900℃を超える温度で24時間以上加熱すると凝集が進行した。したがって、過度に長い加熱は避けた方がよい。
以下では、スカンジウムの酸性塩として硝酸塩を、炭酸を含む塩基性塩として炭酸水素アンモニウムを選択した。これ以外の組み合わせであっても前述の組み合わせであれば塩基性炭酸スカンジウム超微粒子は合成される。硝酸塩水溶液は、市販の酸化スカンジウム粉末(純度99.9%以上、平均粒径10μm以上)を80℃で過剰量の硝酸に溶解させたのち、過剰量の硝酸を蒸発させることにより作成した。
図1は、0.1モル濃度の硝酸スカンジウム溶液に1モル濃度の炭酸水素アンモニウム溶液を沈殿剤として加えたときの滴定曲線であり、横軸は反応系に含有される炭酸水素アンモニウムモル量のスカンジウムイオンのモル量に対する比R(すなわちNH4HCO3/Sc3+)である。縦軸はそのときの反応系のpH値である。また、図中には沈殿反応の開始点と終了点を示した。図1より沈殿はRが0.75(pHは4.4)から開始し、Rが2.2(pHは5)で終了している。したがって、溶液中のScイオンを完全に沈殿させるにはRを2.2以上とする必要がある。
沈殿によって得られた前駆体の組成分析を行ったところ、Rが2.2以上3.0以下(pHは7.8以下)の条件で形成された前駆体は塩基性炭酸スカンジウムSc(OH)CO3・H2Oと同定された。同定に当たって、スカンジウム量は誘導結合型プラズマ分光光度計で決定し、炭素量は炭素/硫黄同時決定計で決定した。この結果、前駆体中のスカンジウムと炭素の比は1:1であることが判明した。
炭素は価数−2の炭酸基CO3によるものであり、スカンジウムイオンの価数が+3で
あることを考慮すると価数−1のOH基の存在が不可欠であり、したがって、Sc(OH)CO3が前駆体の主成分と推定された。なお、アンモニウムイオンは蒸留滴定法で定量
し、硝酸イオンは分光光度計で定量したが前駆体には含まれていなかった。結晶水H2
の量は以上の結果と前駆体の重量との違いから推定した。前駆体を仮焼するとSc23に変化する。この変化に伴う重量変化は、前駆体組成の前記同定結果が正しいことを裏付けていた。
この前駆体のX線回折は非晶質を示すブロードな背景回折を示すのみであった。図2にこの前駆体の高分解能走査電子顕微鏡像を示す。粒径は10nm以上60nm以下に分布するが30nmから40nmに分布(数平均分布)が集中する分散の少ない球状超微粒子構造が認められた。また、図2は凝集の程度が小さいことを示している。
一方、Rが4を超す条件で形成された前駆体の組成を同様な同定手法で決定したところ、(NH4)Sc(CO32・H2Oの組成と判明した。そのX線回折には明瞭な回折ピークが多数見られており、前駆体は結晶化していることがわかった。また、Rが3と4の間の条件で形成された前駆体は、Sc(OH)CO3・H2Oと(NH4)Sc(CO32
2Oの混合物であった。Rが4以下では、(NH4)Sc(CO32・H2Oの存在は体
積比で50%未満であった。Rが3より大きい条件で形成された前駆体の高分解走査顕微鏡観察を行ったが、その凝集の程度はいずれもγ−ScOOHよりは小さく、したがって従来の前駆体であるγ−ScOOHより形状が優れていた。
しかし、図2のような粒径分散の少ない球状超微粒子構造だけで構成される構造ではなく、数ミクロンに凝集した構造体を含んでいた。特に、Rが4を超える値の前駆体では凝集した構造体が大部分(体積比で50%以上)を占めていた。したがって、Rの値としては2.2以上3.0以下が理想的な条件である。3.0以上4.0以下の場合も非晶質の球状超微粒子が多数含まれているので実用的な条件の範疇に含まれる。
Rが4.0を超える値では凝集した構造体が多いため実用的な条件とはいい難い。このようなR依存性は、炭酸を含む塩基性塩として炭酸水素アンモニウムのようにアンモニウム基を含むものを採用した場合に現れる現象であって、アンモニウム基を含まない炭酸を含む塩基性塩を採用した場合には、結晶化する前駆体は形成されないので、R(ただし、この場合のRは、炭酸イオンのモル量のスカンジウムイオンのモル量に対する比と定義される)が2.2以上という条件で十分である。
以上のとおり、スカンジウムの酸性塩水溶液を、炭酸を含む塩基性塩水溶液で中和して沈殿物を生成することにより非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子が合成された。特に、炭酸イオンのモル量のスカンジウムイオンのモル量に対する比を2.2 以上4.0以下に制御すれば約50nmの粒径にそろった凝集の小さい非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子が得られた。以上では前駆体をつくるための母塩として硝酸スカンジウムを採用したが、母塩として塩化スカンジウムあるいは硫酸スカンジウムを用いた場合の結果も、母塩を硝酸スカンジウムとした場合と変わりはなかった。
実施例1 で製造した非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子を酸素雰囲気中で700℃、2時間仮焼した。図3は、得られた超微粒子の高分解能走査電子顕微鏡像である。明らかに超微粒子構造を示しており、粒径は10nm以上60nm以下に分布するが30nmから40nm に分布( 数平均分布) が集中する分散の少ない超微粒子構造となっている。超微粒子の形状はほぼ球状であるが、一部、立方晶系の晶癖を反映した多面体形状の超微粒子も混在していた。
X線回折は立方晶系の酸化スカンジウムからの回折のみを示した。背景散乱はほとんどなく、ほぼ完全に結晶化していることが判明した。透過電子顕微鏡観察から、多面体形状の超微粒子も含めて、これらの超微粒子は多結晶粒であることが判明した。仮焼温度と時間を選ぶことにより、単結晶化させることは可能であるが、同時に凝集が進行するので焼結用原料の目的には多結晶の状態で十分である。酸化スカンジウムの(222)回折線幅から計算した粒径は28nmであり、窒素吸着量から測定した表面積(グラムあたり49m2)から球状を仮定して計算した粒径は32nmであった。これらの粒径の値は、図2
の形状とよく一致する。
図3に示した酸化スカンジウム仮焼体超微粒子を室温で200メガパスカルの圧力を用いて圧縮したのち、圧力印加のない状態で空気中で1500℃ 2時間焼結させたところ、密度が理論値の99% 以上の高密度酸化スカンジウムセラミックスが得られた。
比較例1
硝酸スカンジウムに加える沈殿剤として炭酸基を含まないアンモニア水を用いた。25℃ 以上70℃以下の温度に保たれた硝酸スカンジウム含有溶液を攪拌しながら沈殿剤であるアンモニアを滴下することにより沈殿物を生成させた。この生成沈殿物を吸引ろ過したのち蒸留水及び無水アルコールで洗浄し、乾燥させた。乾燥物は破砕して粉末状の形状とした。沈殿物は、強度にゲル化したため吸引ろ過は容易ではなかった。また、乾燥工程中に試料は激しく凝集したので、その粉砕も容易ではなかった。
このようにして形成された前駆体粉末をX線回折により解析した。回折スペクトルはブ
ロードであったがγ−ScOOHを特徴づける多数の明瞭な回折ピークを示し、前駆体はγ−ScOOHであることが同定された。(020)回折ピークの線幅を解析した結果、γ−ScOOH
は(020)回折線に規定される空間軸方向に対し約6nmのサイズを持つことが判明した。この値は非特許文献1に記載されたγ−ScOOHのひし形板片の板片厚4.5nmに近
い値である。また、乾燥中に激しく凝集したため走査型顕微鏡で観察される形態は、数μm程度サイズの粗い粒子であった。すなわち、γ−ScOOHは激しい凝集のため粒径の揃っ
た超微粒子の形状を呈することはない。
比較例2
比較例1で得られた粒子を前駆体として700℃で仮焼した。得られた酸化スカンジウムは、その(222)X線回折線幅から見積もられた結晶粒径は38nmであったが、走査顕微鏡で観察される形態は、γ−ScOOHの形状を反映して数μm程度の粗い粒子であっ
た。また、窒素ガスの吸着量から計算された1グラムあたりの表面積は0.7m2であっ
た。この表面積から球形を仮定して計算して求めた粒径は2.2μmとなり、走査顕微鏡観察結果を裏付けている。このような形状の酸化スカンジウムを焼成しても酸化スカンジウムの理想密度の83%のセラミックスしか得られなかった。ただし、ここで理想密度とは単結晶酸化スカンジウムから計算される密度をいう。このような低密度のセラミックスは光学的応用に供することができない。
以上の結果は、γ−ScOOHを前駆体とした場合には粒径の揃った酸化スカンジウム仮焼体超微粒子は実現せず、したがって、焼成法によっては応用に供することの可能な酸化スカンジウムセラミックスは実現できないことを示している。
本発明によれば、形状対称性に優れ、かつ形状分散の少ない酸化スカンジウム仮焼体超微粒子が提供され、従来の酸化スカンジウム粉末に比べて粒径がはるかに小さいので、耐火性セラミックスや固体レーザー材料への均一なスカンジウム添加が容易になる。また、従来の酸化スカンジウム粉末に比べて粒径がはるかに小さいので、空隙の少ないセラミックスの焼結が可能となり、高出力紫外レーザーの母体材料としての応用が可能な高密度なスカンジウムセラミックス合成も可能になる。
本発明の酸化スカンジウム前駆体製造方法における滴定曲線を示すグラフである。 本発明の非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子の走査顕微鏡像を示す図面代用写真である。 本発明の酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の走査顕微鏡像を示す図面代用写真である。

Claims (5)

  1. 非晶質塩基性炭酸スカンジウムSc(OH)CO主成分とする、粒径が10nm以上60nm以下であることを特徴とする超微粒子。
  2. 請求項1記載の非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子の製造方法において、スカンジウムの酸性塩水溶液を、炭酸を含む塩基性塩水溶液によって中和反応させる工程と、中和反応沈殿物を乾燥する工程とを有し、前記の中和反応させる工程において、塩基性塩水溶液に含まれる炭酸イオンのモル量の酸性塩水溶液に含まれるスカンジウムイオンのモル量に対する比を2.2以上4.0以下に制御し、反応温度を25℃以上60℃以下に制御することを特徴とする非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子の製造方法。
  3. 請求項2記載の非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子の製造方法において、スカンジウムの酸性塩として硝酸塩を、炭酸を含む塩基性塩として炭酸水素アンモニウムを用いることを特徴とする非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子の製造方法。
  4. 請求項2記載の方法で製造した非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子を仮焼することにより生成する酸化スカンジウム仮焼体超微粒子であって、その粒径が10nm以上60nm以下であり、球状もしくは多面体状の形状を有し、かつ、立方晶系に属する多結晶粒であることを特徴とする酸化スカンジウム仮焼体超微粒子。
  5. 請求項4記載の酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の製造方法であって、請求項2記載の方法で製造した非晶質塩基性炭酸スカンジウムを主成分とする超微粒子を酸素雰囲気中で700℃以上900℃以下の酸素雰囲気中で1時間以上仮焼することを特徴とする酸化スカンジウム仮焼体超微粒子の製造方法。
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