JP4191838B2 - 冷間タンデム圧延方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑油を供給しながら圧延する冷間圧延に際して、ヒートスクラッチの発生と板破断の発生を防止できる冷間タンデム圧延方法と圧延機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、冷間タンデム圧延機は、図5に示すように、上下ワークロール1o、1uと、この上下ワークロールの背面に当接した上下中間ロール2o、2uと、この中間ロールの背面に当接した上下バックアップロール3o、3uを備えた圧延機41 、42 、43 、44 、45 (ここでは6Hiの圧延機を5スタンド)を直列に配置してなり、各圧延機41 〜45 において、上下ワークロール1o、1u間を通板するストリップ材5aに所定の張力を付与した状態で潤滑油供給装置6から潤滑油を塗布しながら所定の圧下率で圧延してストリップ5bを製造するように構成されたものである。
【0003】
この冷間タンデム圧延機においては、ワークロール(2o、2u)の速度を増大させたり、圧下率を増大させたりすると、各圧延機のロールバイト内でヒートスクラッチが発生することが知られている。このヒートスクラッチとは、ストリップ材5aを圧延機で圧延した際に、圧延機のロールバイトRb内のワークロールとストリップ材5aとの界面温度の上昇に起因して発生する、ワークロールとストリップ材5aとの金属接触による焼き付き疵のことである。このヒートスクラッチの発生は、圧下率、板厚、圧延荷重、張力、圧延材料、潤滑条件等によって変わるが、通常、圧延荷重やワークロール速度が大きくなる後段の圧延スタンドで発生しやすい。ヒートスクラッチが発生すると、製品表面に欠陥が生じ製品歩留まりが低下するばかりか、ヒートスクラッチの生じた圧延スタンドのワークロールを組み替える必要があるため、生産性が著しく低下するという問題があった。
【0004】
ヒートスクラッチの発生を防止する方法としては、例えば、特開平5−98283号公報に開示されている「耐焼付き性に優れた圧延潤滑油を使用する」方法、特開昭56−111505号公報に開示されている「クーラント量を制御して板やワークロールの温度を低下させる」方法、特開平6−63624公報に開示されている「ワークロール速度を減速させる」方法などが提案されている。これらの方法は、「ロールバイトの内のロールと圧延材との界面温度上昇を防止する」、または「ロールバイト内の界面温度が上昇しても油膜破断が生じないようにする」方法に属するものである。しかしながら、耐焼付き性に優れた圧延潤滑油を使用する方法ではコストアップの問題、また、クーラント量の制御により板およびロール温度を制御する方法では応答性の問題、そして、ワークロール速度を減速させる方法では生産性が低下するという問題がある。
【0005】
また、製造コストの上昇および生産性の低下を招くことなくヒートスクラッチを防止する方法として、特開昭60−49802号公報に開示されている「圧下スケジュールや張力を変更する」方法が提案されている。しかしながら、圧下スケジュールを変更する方法では、板厚精度が一時的に悪化するという問題がある。また、張力を変更する方法では当然ながら高い値にすれば圧延荷重が減少し、ヒートスクラッチを防止する効果が得られるものの、高い値にすると板破断が生じることがあり、圧延状況を見ながら徐々に張力を高くすると、その応答性が悪くなり、ヒートスクラッチが発生したり、板厚精度が悪くなるという問題がある。
【0006】
他に、圧延スタンド出側の板温度を検出し、その温度に基づいて張力を制御する方法もあるが、この方法ではヒートスクラッチが発生する温度以上になった場合に張力制御が行われるので、一時的にヒートスクラッチが発生してしまうという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、冷間タンデム圧延機でストリップ材を冷間圧延する際には、ストリップとロール間に圧延潤滑油を供給・介在させることが多い。ここで用いている圧延潤滑油は、現状では水と植物油を混合したエマルジョン(油濃度:2〜30%程度)タイプのもの(以下「エマルジョン」という。)が主体であり、この圧延潤滑油は、各圧延スタンド(圧延機)の入側やロールバイトの入口で供給されている。
【0008】
このエマルジョンは、ストリップ材やロールに供給されたとき、水と油に分離して油がストリップ材やロールの表面に付着する(以下「プレートアウト」という。)ことにより圧延時のストリップ材とロール間の摩擦係数の増大を抑えることによってヒートスクラッチの発生を防止するための努力がなされている。しかし、圧延速度が1000m/min 以上になるとプレートアウト量は減る傾向にあり、エマルジョン状態でロールバイト近傍に運ばれた際に、エマルジョン中の水は油より粘度が低いため、油の方が優先してロールバイトに入り、水はロールバイト入口から排除されてしまい、この際、剪断による発熱や再乳化が生じ、油分の導入量およびプレートアウト量は減少して摩擦係数が増大する。この結果、摩擦発熱が増大し、ヒートスクラッチが発生する危険性が増大するため、圧延速度を1000m/min 以上に上げて生産性を高める場合の支障要因になっている。
【0009】
本発明は、1500〜2500m/min の圧延速度で圧延する圧延スタンド(圧延機)を有する冷間タンデム圧延機で冷間圧延を行うに際しても、上記の従来の圧延方法での問題点を有利に解決でき、生産性の低下および製造コストの上昇、板厚精度の低下を招くことなくヒートスクラッチの発生、板破断の発生を防止できる冷間タンデム圧延機と圧延方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の(1)〜(3)の発明から構成されるものである。
(1) 冷間タンデム圧延機でストリップ材に潤滑油を供給しながら冷間圧延を行う際に、圧延速度が1500m/min以上となり、潤滑不足を生じやすい圧延スタンドにおいて、圧延潤滑油供給装置とロールバイト入口間に水切り装置を設置し、ロールバイトへの水の侵入を低減して潤滑性を確保することを特徴とする冷間タンデム圧延方法。
(2) 80℃以上の潤滑油を使用することを特徴とする前記(1)に記載の冷間タンデム圧延方法。
(3) 圧延機出側から潤滑油をワークロールに供給して潤滑性を高めることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の冷間タンデム圧延方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、圧延速度が1500m/min以上の圧延速度で、ストリップ材に圧延潤滑油を供給しながら冷間圧延を行う圧延スタンドを有する冷間タンデム圧延機によって冷間圧延する際に適用して、潤滑不足を生じやすい圧延スタンドでのプレートアウトを安定確保して、ヒートスクラッチの発生のない冷間圧延を実施できる冷間圧延方法と冷間タンデム圧延機であり、基本的には、3つの方法を採用することによって、上記従来の問題点を解消するものである。
(1) 圧延潤滑油供給位置とロールバイト入口間で水切りを行い、ロールバイトへの水の進入を防止してストリップ材と圧延ロール表面でのプレートアウトを安定確保し、ヒートスクラッチの発生を防止する。
(2) 圧延潤滑油の供給温度を80℃以上にしてプレートアウトを安定確保し、高速域での摩擦係数を低減してヒートスクラッチの発生を防止する。
(3) 圧延機出側から潤滑油をワークロールに供給して潤滑性を高め、ヒートスクラッチを防止する。
本発明では(1)、または、(1)に(2)および(3)のいずれか若しくは両方の手段を併用して、ストリップ材と圧延ロール表面でのプレートアウトをさらに確実なものにし、ヒートスクラッチの発生をより確実に防止する。
【0012】
本発明者らは、圧延潤滑油の温度を変えて圧延実験し、摩擦係数に及ぼす圧延速度の影響を調査した。図1は、圧延潤滑油の温度を60℃、90℃とした場合の摩擦係数と圧延速度との関係を示したものである。この実験結果に基いて、以下の知見が得られた。
A.圧延潤滑油の温度を上げると、高速域での摩擦係数は低減する。圧延潤滑油の濃度や供給量や油種によって逆転現象が生じる点は若干異(600〜1200m/min )なるものの、ほぼ同じ傾向である。
B.ヒートスクラッチは、圧延速度が1800m/min 以上で生じることが多いことから、圧延速度が1500m/min 以上になる圧延スタンドで圧延潤滑油の温度管理を行えばよい。
C.圧延潤滑油の温度が高い方がプレートアウトが良くなる。現状では、圧延潤滑油の温度は、60℃前後であるがこれを80℃以上に上げないとその効果は顕著にでない。
D.圧延潤滑油として前記したエマルジョンを使用した場合には、圧延ロールバイトの入口で水と油が分離し、分離水が排除される際の剪断による発熱や再乳化がプレートアウトを低下させる要因になることがある。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0013】
第二の発明は、ストリップ材に圧延潤滑油を供給しながら1500m/min以上の圧延速度で冷間圧延を行う際に、少なくとも潤滑不足を生じヒートスクラッチを生じやすい圧延スタンド(圧延機)での圧延潤滑油の温度を80℃以上にして供給する冷間タンデム圧延機の圧延方法であり、ストリップ材に供給する圧延潤滑油の供給温度を80℃以上にして、高速域での摩擦係数を低減し、プレートアウトを安定確保し、ヒートスクラッチの発生を防止するものである。
【0014】
圧延潤滑油の温度を80℃以上にすることは、圧延速度が1500m/min 未満の圧延スタンドにおいても有効ではあるが、この圧延速度領域ではヒートスクラッチを生じることはないので、加熱コスト増を考慮した場合、圧延潤滑油の温度を80℃以上にすることは得策ではない。圧延潤滑油の温度が80℃未満では、摩擦係数の低減が不十分であり、圧延速度が1500m/min 以上の圧延速度で冷間圧延を行った場合、ヒートクラッチを生じる懸念がある。ただし、圧延潤滑油の供給温度が高すぎると、加熱コストの増大に加えて、酸化により変質してその潤滑能が低下してしまうことから、このようなことを考慮して供給温度を選択する必要がある。
【0015】
圧延速度が1500m/min 〜2500m/min の場合には、圧延潤滑油の供給温度の上限は95℃程度で十分な効果が得られる。常に上限レベルの温度で供給することも考えられるが、加減速時の摩擦係数の変動があるので、これらの変動に対応して加熱コストの節減ができるように、変動要因になる圧延対象(板厚や材質)、圧延速度や張力等に応じて、圧延潤滑油の温度を制御することが好ましい。この温度制御方法としては、例えば、低温油タンク(60℃)と高温油タンク(90℃)を用意し、混合装置を介して低温油と高温油の混合比を調整して温度を調整する方法や、圧延潤滑油の供給路に加熱装置を配設して、圧延潤滑油の温度を調整する方法などがある。
【0016】
第一の発明では、ストリップ材に圧延潤滑油を供給しながら1500m/min以上の圧延速度で冷間圧延を行う際に、少なくとも潤滑不足を生じやすいスタンドにおいて、圧延潤滑油供給位置とロールバイト入口間で水切りを行い、ロールバイトへの水の進入を防止する冷間タンデム圧延機の圧延方法であり、圧延潤滑油供給位置とロールバイト入口間で水切りを行い、ロールバイトへの水の進入を防止してストリップ材とロール表面でのプレートアウトを安定確保し、ヒートスクラッチの発生を防止するものである。この水切りは、ストリップ材や圧延ロールに圧延潤滑油を供給してプレートアウトが完成した後、水の悪影響を防止するために行うものであり、そのためには、ロールバイト入口で行うことが効果的である。
【0017】
第三の発明では、圧延ロールに対して圧延機出側から潤滑油を供給して、圧延ロールでの十分なプレートアウトを確保し、ヒートスクラッチの発生を防止するものである。この圧延機出側から供給する潤滑油としては、圧延機入側で供給する圧延潤滑油と同様のものを用いることができる。また、図2、3、4、5には図示していないが、ロール冷却の為に圧延機出側から冷却水をかけ、その冷却水が板に付着しにくいようにワークロールに水切り装置を備えていることは言うまでもない。
【0018】
なお、ロールバイトの出側にも必要に応じて、ストリップ材上に浮遊する水を除去する水切り装置を設けてもよい。この水切り装置としては、プレートアウトを阻害しないような方式のものを用いることが望ましい。例えば接触式のロール方式でもよいし、気体噴射または接触タイプのワイパー方式を用いてもよい。気体噴射を用いる場合には、気体を加熱して圧延潤滑油の温度降下を減少させるようにしてもよい。
【0019】
第一の発明に第二または第三の発明を組み合わせても良く、これらは、ストリップ材と圧延ロール表面でのプレートアウトをさらに確実なものにし、ヒートスクラッチの発生をより確実に防止するものである。すなわち、ストリップ材に潤滑油を供給しながら冷間圧延を行う際に、圧延速度が1500m/min以上の圧延速度で冷間圧延を行う、少なくとも潤滑不足を生じやすい圧延スタンドの圧延潤滑油の温度を80℃以上にして供給するとともに、ロールバイト入口で水切りを行うものである。また、必要に応じて、圧延機出側から潤滑油をワークロールに供給してロールの潤滑性を向上させることもできる。潤滑油の供給手段、水切り手段については、前記と同様の手段を用いることができる。
【0020】
【実施例】
以下に本発明の実施例について、図2〜図4に基づいて説明する。
(1)図2は、本発明の第一の発明〜第三の発明を適用する冷間タンデム圧延機の設備配置例を示すものであり、この冷間タンデム圧延機は、基本的には、前記図5に示した冷間タンデム圧延機と同様の構造を有するものであり、上下ワークロール1o、1u(圧延ロール)と、この上下ワークロールの背面に当接した上下中間ロール2o、2uと、この中間ロールの背面に当接した上下バックアップロール3o、3uを備えた6Hiの圧延機41〜45を直列に5スタンド配置してなり、各圧延機において、上下ワークロール間で通板するストリップ材5aに所定の張力を付与した状態で、所定の圧下率で圧延してストリップ5b製造するように構成されたものである。
【0021】
この冷間タンデム圧延機においては、各圧延機41 〜45 の入側に、ストリップ材5aに圧延潤滑油を供給する潤滑油供給装置6が配設しており、この潤滑油供給装置には、混合装置7を介して、低温油タンク8と高温油タンク9が接続されている。低温油タンクと高温油タンクには、それぞれ温度調整装置10が設けられており、各タンク内に収容された圧延潤滑油11は、常に所定温度に管理されている。ここでは、例えば低温油タンク8の圧延潤滑油は60℃に、高温油タンク9の圧延潤滑油は90℃に管理されており、混合装置7により所定の混合比で混合することによって、潤滑油供給装置6に供給する圧延潤滑油11の温度を所望の温度に調整し、この潤滑油供給装置6からストリップ材5aに所定の温度の圧延潤滑油11を所定の供給量で供給することができる。
【0022】
図中16は、圧延潤滑油11を供給するためのポンプである。ここでは、圧延潤滑油11の塗布量は、各圧延機毎に圧延対象のストリップ材5aの材質、サイズ、圧延温度、圧下率に応じて各圧延機単位で設定し、圧延潤滑油11の供給量を一定にした状態で、圧延速度に応じて圧延潤滑油11の温度を制御するようにしている。そのため、各圧延機に圧延速度計12を配置して圧延速度を測定し、この圧延速度情報を演算装置13に入力して、この演算装置で圧延速度に応じた圧延潤滑油11の温度を演算するとともに、高温油タンク9と低温油タンク8からの圧延潤滑油11の混合比を演算し、駆動制御装置14を介して高温油タンク9と低温油タンク8の流量調整弁15を作動させ、混合装置7で混合して潤滑油供給装置6から圧延潤滑油11を所定の温度にして噴出させ、ストリップ材5aと圧延ロール(ワークロール1o、1u)の表面に供給する。圧延速度を殆ど変化させない場合には、圧延速度一定として、予め各圧延機毎に圧延潤滑油の温度を一定値に設定してもよい。
【0023】
このように構成した第一の発明〜第三の発明を実施することによって、ストリップ材5aと圧延ロールに対する圧延潤滑油の温度を、圧延速度に応じて調整して、特に高速圧延領域での摩擦係数を低減させるとともにストリップ材5aと圧延ロール表面でのプレートアウトを安定確保し、ヒートスクラッチの発生を防止することができる。
【0024】
(2)図3は、第一の発明を適用する冷間タンデム圧延機の設備配置例を示すものであり、この冷間タンデム圧延機は、基本的には、前記図2に示した冷間タンデム圧延機と同様の構造を有するものである。この冷間タンデム圧延機においては、各圧延機41〜45の入側に、ストリップ材5aに圧延潤滑油11を供給する潤滑油供給装置6が配設され、この潤滑油供給装置と各圧延機との間に水切り装置として接触式ロール17が配設されており、ストリップ材5aに圧延潤滑油11を供給してプレートアウトが完成した後に、ロールバイトRbの入口で水切りを行い、ロールバイトでの分離水によるプレートアウトの低下を防止するようにしている。この水切りは、ストリップ材や圧延ロールに圧延潤滑油11を供給してプレートアウトが完成した後、水の悪影響を防止するために行うものであり、そのためには、ロールバイトRb入口で行うことが効果的である。しかし、これだけでは、圧延ロールで十分なプレートアウトを確保することは難しいので、圧延ロールに対してロールバイトRbの出口側から潤滑油19を供給して、圧延ロールでの十分なプレートアウトを確保することも考慮することが好ましい。
【0025】
このように構成した第一の発明を実施することによって、圧延潤滑油供給位置とロールバイト入口間で水切りを行い、ロールバイトへの水の進入を防止してストリップ材5aと圧延ロール表面でのプレートアウトを安定確保し、ヒートスクラッチの発生を防止することができる。
【0026】
また、このロールバイトの出口側から潤滑油19を供給した第三の発明では、、圧延ロールでのプレートアウトをより確実にでき、圧延ロール機能を長時間にわたって安定確保することができる。
【0027】
(3)図4は、第一の発明に第二または第三の発明を組み合わせた発明を適用するものであり、基本的には、前記図2に示した冷間タンデム圧延機と同様、圧延潤滑油の温度制御を可能とするとともに、図3に示すように潤滑油供給装置と各圧延機との間に水切り装置17を配設して、ロールバイトRbの入口で水切りを行い、さらに圧延機出側に潤滑油供給装置18を配設して、図2と図3の実施例の効果を同時に得ることができるようにしたものである。
【0028】
すなわち、ストリップ材5aに潤滑油11を供給しながら冷間圧延を行う際に、圧延速度が1500m/min 以上の圧延速度で冷間圧延を行う、少なくとも潤滑不足を生じやすい圧延機における圧延潤滑油11の温度を80℃以上にして供給するとともに、ロールバイトRbの入口で水切りを行うものであり、さらに、ロールバイトの出口側に潤滑油19を供給して圧延ロールの潤滑を行うもので、潤滑油供給装置18から圧延ロールに対し潤滑油19を供給して、圧延ロールでのプレートアウト量を十分に確保できるようにしたものである。詳細は、ほぼ図2と図3の実施例を合体させた内容であるので、詳細説明を省略する。
【0029】
このように構成した第一の発明に第二または第三の発明を組み合わせた発明を実施することによって、ストリップ5a材と圧延ロールに対する圧延潤滑油11の供給温度を、圧延速度に応じて調整して、特に高速圧延領域での摩擦係数を低減させるとともに、潤滑油供給位置とロールバイトRbの入口間で水切りを行ってロールバイトへの分離水の進入を防止し、ストリップ材5aと圧延ロール表面でのプレートアウトをさらに安定確保し、ヒートスクラッチの発生をより確実に防止することができる。また、圧延機出側に潤滑油19を供給した場合には、特に圧延ロール表面でのプレートアウトをさらに安定確保し、ヒートスクラッチの発生をより確実に防止することができ、圧延ロール機能を長時間にわたって安定確保することができる。
【0030】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。例えば、上記の実施例では、6Hiの圧延機を5スタンド直列に配置した冷間タンデム圧延機に適用した場合のものであるが、2Hi〜6Hiの圧延機を2〜8スタンド直列に配置した冷間タンデム圧延機に適用してもよい。また、本発明で用いる、潤滑油供給装置6、18およびその供給系(給油タンク、温度調整装置、混合装置、供給ポンプなど)の構成、水切り装置などの型式およびその構成要素、圧延速度計、これらの装置の制御系、潤滑油の種類などについては、圧延対象、圧延機機の種類、規模、配置、圧延条件などを考慮して上記本発明の請求項の範囲を満足する範囲内で変更のあるものである。
【0031】
【実験例】
(実験例1)
図2に示すような冷間タンデム圧延機を用いて、厚みが2.5mm、幅1240のストリップ材を1スタンド当たり圧下率30〜35%で圧延して、厚み0/35mmのストリップを製造する際に、圧延速度が1500m/min になる各圧延機44 において、ストリップ材5aに温度が80〜90℃の圧延潤滑油を供給して圧延し、ヒートスクラッチの発生状況を調査した。その結果を、圧延潤滑油を常温(60℃)にして塗布して圧延した比較例の場合と比較して以下に説明する。
[圧延条件]
ストリップ材:材質 炭素鋼ブリキ
ワークロール
径 :460mm
有効幅:2000mm
圧下率
41 42 43 44 45
34.8% 31.8% 31.5% 31.6% 32.7%
圧延速度:1500〜1800m/min
圧延潤滑油(圧延機入側に供給)
種類:パーム油(濃度3%)エマルジョン
供給温度:80℃〜90℃
供給量:40リットル/min
【0032】
(1)圧延速度が1500m/minを超える各圧延機において、圧延速度に応じて圧延潤滑油の温度を80〜90℃の範囲に制御して供給して圧延した本発明の各実験例では、ヒートスクラッチの発生は全く認められず、良好なストリップを製造できた。
(2)これに対して、圧延速度が1500m/minを超える各圧延機において、温度が60℃の圧延潤滑油を供給して圧延した比較例では、第四圧延機においてヒートスクラッチが発生し、ストリップの品質が確保できなかった。
【0033】
(実験例2)
図3に示すような冷間タンデム圧延機を用いて、厚みが2.5mm、幅1240のストリップ材を1スタンド当たり圧下率30〜35%で圧延して、厚み0/35mmのストリップを製造する際に、圧延速度が1500m/min になる圧延機44 において、ストリップ材5aに60℃の圧延潤滑油を供給し、供給後、各圧延機入口で水切りして圧延し、ヒートスクラッチの発生状況を調査した。その結果を、圧延潤滑油を塗布後に各圧延機入口で水切りを行わないで圧延した比較例の場合と比較して以下に説明する。
[圧延条件]
ストリップ材:材質 炭素鋼ブリキ
ワークロール
径 :460mm
有効幅:2000mm
圧下率
41 42 43 44 45
34.8% 31.8% 31.5% 31.6% 32.7%
圧延速度:1500〜1800m/min
圧延潤滑油(圧延機入側に供給)
種類:パーム油(濃度3%)エマルジョン
供給温度:60℃
供給量:40リットル/min
水切り
接触ロール(表層をウレタンで形成したもの)
径:300mm
押付圧:500kgf
【0034】
(1)圧延速度が1500m/min を超える各圧延機において、圧延機入側で温度が60℃の圧延潤滑油を供給後、各圧延機入口で水切りを行って圧延した本発明の各実験例では、第一圧延機〜第四圧延機においてはヒートスクラッチの発生は全く認めらなかった。第五圧延機においては、極く軽度のヒートスクラッチが認められたが、概ね良好なストリップを製造できた。
【0035】
(実験例3)
前記実験例2と同様に圧延機入側で温度が60℃の圧延潤滑油を塗布後、各圧延機入口で水切りを行い、さらに、圧延機出側から温度が60℃の潤滑油{(パーム油(濃度3%)エマルジョン}を供給(供給量2リットル/minで供給)した本発明の実験例では、いずれの圧延機においてもヒートスクラッチの発生は全く認められなかった。実験例2に対して改善が認められ良好なストリップを製造できた。
【0036】
(実験例4)
図4に示すような冷間タンデム圧延機を用いて、厚みが2.5mm、幅1240のストリップ材を1スタンド当たり圧下率30〜35%で圧延して、厚み0.35mmのストリップを製造する際に、圧延速度が1500m/min になる各圧延機44 において、圧延機入側でストリップ材5aに温度が80〜90℃の圧延潤滑油を供給後、各圧延機入口で水切りを行って圧延し、ヒートスクラッチの発生状況を調査した。その結果を、以下に説明する。
[圧延条件]
ストリップ材:材質 炭素鋼ブリキ
ワークロール
径 :460mm
有効幅:2000mm
圧下率
41 42 43 44 45
34.8% 31.8% 31.5% 31.6% 32.7%
圧延速度:1500〜1800m/min
圧延潤滑油(圧延機入側に供給)
種類:パーム油(濃度3%)エマルジョン
供給温度:80℃〜90℃
供給量:50リットル/min
水切り
接触ロール(表層をウレタンで形成したもの)
径:250mm
押付圧:500kgf
【0037】
(1)圧延速度が1500m/min を超える各圧延機において、圧延機入側でストリップ材5aに温度が80〜90℃の圧延潤滑油を塗布後、各圧延機入口で水切りを行って圧延した本発明の実験例では、ヒートスクラッチの発生は全く認められず、良好なストリップが製造できた。
【0038】
【発明の効果】
本発明では、ヒートスクラッチを発生しやすい、圧延速度が1500m/min以上でストリップを圧延する冷間タンデム圧延機において、圧延潤滑油を塗布後に圧延機入側で水切りを行ってエマルジョンからの分離水の悪影響を防止するという簡易な方法で、所望のプレートアウト量を安定確保することができ、生産性の低下および製造コストの上昇、板厚精度の低下を招くことなくヒートスクラッチの発生を防止することができる。また、特に圧延機入側で水切りを行う場合においては、使用する圧延潤滑油の温度を80℃以上にして、摩擦係数を低減したり、圧延機出側からも潤滑油を供給したりすることにより、所望のプレートアウト量をさらに安定確保するとともに、圧延ロール機能を長時間にわたって安定確保することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷間タンデム圧延機における圧延潤滑油の温度と、圧延速度と摩擦係数の関係を示すグラフ。
【図2】本発明の冷間タンデム圧延機の構造例を示す側面説明図。
【図3】本発明の冷間タンデム圧延機の他の構造例を示す側面説明図。
【図4】本発明の冷間タンデム圧延機の他の構造例を示す側面説明図。
【図5】一般的な冷間タンデム圧延機の基本構造例を示す側面説明図。
【符号の説明】
1o 上ワークロール
1u 下ワークロール
2o 上中間ロール
2u 下中間ロール
3o 上バックアップロール
3u バックアップロール
41 〜45 圧延機
5a ストリップ材
5b ストリップ
Rb ロールバイト
6 潤滑油供給装置
7 混合装置
8 低温油タンク
9 高温油タンク
10 温度調整装置
11 圧延潤滑油
12 圧延速度計
13 演算装置
14 駆動制御装置
15 流量調整弁
16 ポンプ
17 水切り装置
18 潤滑油供給装置
19 潤滑油
Claims (3)
- 冷間タンデム圧延機でストリップ材に潤滑油を供給しながら冷間圧延を行う際に、圧延速度が1500m/min以上となり、潤滑不足を生じやすい圧延スタンドにおいて、圧延潤滑油供給装置とロールバイト入口間に水切り装置を設置し、ロールバイトへの水の侵入を低減して潤滑性を確保することを特徴とする冷間タンデム圧延方法。
- 80℃以上の潤滑油を使用することを特徴とする請求項1に記載の冷間タンデム圧延方法。
- 圧延機出側から潤滑油をワークロールに供給して潤滑性を高めることを特徴とする請求項1または2に記載の冷間タンデム圧延方法。
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