JP4189908B2 - 溶接部の材質予測方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、アーク溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接等の溶接一般において、溶接施工後における溶接金属部および熱影響部を含む溶接部内の被予測部の材質(機械的特性)を予測する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、船舶、鉄骨、橋梁等の建築構造物の溶接施工には様々な溶接法が適用されている。溶接施工を実施するに当たっては、施工後における溶接部内の被予測部(被予測部は溶接部全体あるいはその一部を意味する。以下、単に被予測部という場合がある。)の機械的特性を予め予測することは、目標とする特性の溶接部を得る上で重要である。
【0003】
溶接金属の機械的特性を予測する方法として、例えば特許第2850773号には、サブマージアーク溶接に関して、母材成分、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、ワイヤ成分などから溶接金属組成を予測し、これを基に機械的特性を予測する技術が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術は溶接金属組成を基に材質を予測するため、被予測部の特性の予測精度が劣るという問題がある。これは、溶接部が繰り返し、加熱・冷却を受けて、その内部で複雑な変態現象が生じていることが考慮されておらず、また特に溶接金属部には主として酸化物からなる晶出物が生成することや溶接条件によって変態組織が大きく変化することがあるが、これらの影響が無視されているためである。
【0005】
なお、特開平5−93720号公報には、熱間圧延後の鋼材の組織を予測する方法が記載されているが、溶接金属部は溶接条件によっては晶出物の顕著な晶出が観察されるほか、一般的に複数の溶接パスによる溶接により加熱冷却が繰り返されて形成されるため、従来の鋼材の材質予測のように、高温から低温へと連続的に冷却されていく冷却条件の下での材質予測によっては被予測部の組織を予測することはできない。
【0006】
本発明はかかる問題に鑑みなされたものであり、被予測部の組織を予測し、これに基づいて材質を予測することで、被予測部材質の予測精度を向上させることができる材質予測方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶接部の材質予測方法は、母材同士が一または複数の溶接パスによって溶接金属部を介して溶接された溶接構造物の、前記溶接金属部および熱影響部を含む溶接部内の被予測部の材質を予測する方法であって、
前記溶接部を区画して複数のメッシュ領域を想定し、各メッシュ領域に対して、下記(1) 、 (2) 、 (3) 、および (4)の各計算を行い、
(1) 最終溶接パス終了まで単位時間経過毎に、母材成分、ワイヤ成分あるいは当該単位時間経過前の溶接金属組成と溶接条件とに基づいて当該単位時間経過後におけるメッシュ領域温度を順次求めて第1溶接パスから最終溶接パスに至る温度履歴を算出するメッシュ領域温度履歴計算、
(2) 最終溶接パス終了まで単位時間経過毎に、母材成分、ワイヤ成分、シールドガス成分あるいは当該単位時間経過前の溶接金属組成と当該単位時間経過後におけるメッシュ領域温度とに基づいて当該単位時間経過後の溶接金属組成を求める溶接金属組成計算、
(3) 前記メッシュ領域温度履歴計算および溶接金属組成計算の後に、前記溶接金属組成と温度履歴とに基づいて晶出物の組成、平均粒径および晶出物量を含む晶出物情報並びに晶出物が晶出した後の晶出後溶接金属組成を求める晶出計算、
(4) 前記晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいてメッシュ領域内における変態組織の分率を含む変態組織情報を求める変態組織計算、
その後、前記被予測部内の各メッシュ領域における最終溶接パス終了後の前記晶出物情報および変態組織情報に基づいて、予め実測により求められた組織と材質との関係から前記被予測部の材質を予測する材質予測計算を行う。前記材質予測計算として、前記被予測部内の各メッシュ領域における最終溶接パス終了後の変態組織情報から前記被予測部における組織情報を求める被予測部組織計算を行い、前記被予測部組織計算によって求められた被予測部組織情報に基づいて、予め実測により求められた組織と材質との関係から前記被予測部の材質を予測する組織・材質予測計算を行うことができる。あるいは、前記被予測部内の各メッシュ領域における変態組織情報に基づいて、予め実測により求められた溶接部組織と材質との関係から前記各メッシュ領域における材質を予測するメッシュ領域材質予測計算を行い、前記メッシュ領域材質予測計算によって求められた前記被予測部内の各メッシュ領域における材質に基づいて前記被予測部の材質を予測する材質・材質予測計算を行うことができる。
【0008】
本発明の材質予測方法によると、溶接部を区画した複数のメッシュ領域について、メッシュ領域温度履歴計算により、第一溶接パスから最終溶接パスに至る温度履歴を求め、この温度履歴を基に溶接金属組成計算によって溶接金属組成を算出し、この溶接金属組成と温度履歴とに基づいて晶出計算によって晶出物情報および晶出後溶接金属組成を求め、この晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいて前記被予測部内の各メッシュ領域における最終溶接パス終了後の変態組織情報を得て、これに基づいて被予測部の材質を予測するため、被予測部の材質を高精度に予測することができる。特に、溶接金属部には、一般の鋼材と異なり、シールドガス成分に酸素など活性な元素が含まれるため、主として酸化物からなる晶出物の生成を伴い、また溶接次パスの再溶融による溶接金属組成変化が変態組織に影響を与える。本発明では、かかる晶出物や再溶融の情報を考慮して晶出後の溶接金属部の組成を決定し、溶接部内の被予測部の組織情報が予測されるため、予測精度が向上する。なお、本発明における溶接金属組成計算においては、溶接金属部の組成が、母材からの希釈によりワイヤ成分とは異なること、およびスラグ/メタル反応により合金成分がスラグとして排出されることを考慮した計算が行われる。具体的には、母材からの希釈計算は、融点以上となっている全てのメッシュ領域の組成を平均化することにより、スラグ/メタル反応は例えばデータベースにより算出することができる。これにより、溶接金属部の組成が概ね予測計算される。
【0009】
前記材質予測方法の好ましい態様として、前記変態組織計算を行う前に前記晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいてオーステナイト粒情報を求めるオーステナイト組織計算を行い、前記変態組織計算の基礎として前記オーステナイト粒情報をも用いる。
前記オーステナイト粒情報を変態組織計算において使用することで、予測の精度をさらに向上させることができる。このとき、溶接金属に特有のデンドライト状のオーステナイト粒の形態を考慮すれば、予測精度をより一層向上させることができる。
【0010】
また、好ましい態様として、前記変態組織計算を行う前に前記晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいて組織中に析出する析出物の組成、平均粒径および析出量を含む析出物情報を求める析出計算を行い、前記材質予測計算の基礎として最終溶接パス終了後の析出物情報をも用いる。
予測しようとする材質において、特に析出物の影響も考慮する必要がある場合には、前記析出物情報を材質予測計算において他の組織情報と共に用いることによって、予測精度を更に向上させることができる。
【0013】
また、前記材質予測方法の好ましい態様として、前記温度履歴から固相線温度以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この加熱冷却過程に対して晶出計算を行い、また前記温度履歴から加熱過程においてオーステナイト変態が終了する温度Taf以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程に対してオーステナイト組織計算を行い、また前記温度履歴から加熱過程においてオーステナイト変態が開始する温度Tas以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程に対して変態組織計算を行う。
これらの態様によれば、最終的な組織に最も影響する加熱冷却過程についてのみ所定の計算を行うことにより、最終溶接パス終了後の晶出物情報および変態組織情報並びに最終溶接パス終了後の変態組織を決定するオーステナイト粒情報を容易に算出することができる。このため、計算負荷が軽くなり、速やかな材質予測を行うことができる。
【0014】
変態組織としては、フェライト、アシキュラフェライト、パーライト、マルテンサイト、ベイナイトなど種々の組織があり、より多くの変態組織情報を予測することにより、機械的特性の予測精度は向上する。しかし、これらすべての変態組織情報を予測するには、計算負荷が大きくなるため、所望の機械的特性への影響が最も大きい変態組織情報を選択して計算することが望ましい。現在、汎用的に溶接構造物に使用されている鋼材の中に490MPa級鋼があるが、このような汎用鋼の溶接部はフェライト、あるいはさらにアシキュラフェライトが主体組織となることが多く、また機械的特性への影響も大きい。このため、このような汎用鋼材の溶接部の材質予測を行う場合には、変態組織情報としてフェライト平均粒径およびフェライト量(フェライト変態分率)を含むフェライト粒情報、あるいはさらにアシキュラフェライト平均粒径およびアシキュラフェライト量(アシキュラフェライト変態分率)を含むアシキュラフェライト粒情報を採用することが好ましい。前記フェライト粒情報は以下の計算手法によって計算することがが好ましい。なお、アシキュラフェライト粒情報の計算手法については後述する。
【0015】
前記変態組織計算として、前記変態組織計算において、オーステナイト粒情報と溶接金属組成および温度履歴によって求められたオーステナイト粒界面積、フェライトの核生成速度および成長定数を用いてフェライト変態分率を計算することが好ましい。
これによって、フェライト粒情報(フェライト変態分率)をフェライトの核の生成と粒の成長との2面から計算することができ、フェライト粒情報の予測精度が向上する。
【0016】
また、前記オーステナイト粒界面積として、オーステナイト粒情報の長径、短径に基づく細長状粒に対する粒界面積を用いることが好ましい。
これによって、変態組織計算において、オーステナイト粒の形態を溶接金属で顕著なデンドライト(柱状晶)に即した直方体などの細長状粒に近似し、これに対応した粒界面積を用いることができるので、鉄鋼材などの場合の球形粒に基づく粒界面積を用いるより、フェライト粒情報をより正確に予測計算することができる。
【0017】
また、前記フェライトの核生成速度として、オーステナイト粒界を核として生成するオーステナイト粒界面積に基づいて求められた粒界核生成速度と、晶出物を核として生成する晶出物核生成速度とに基づいて求められた複合核生成速度を用いることが好ましい。
これによって、変態組織計算において用いる核生成速度として、オーステナイト粒界からの核生成のみならず、晶出物からの核生成を取り込むことができ、フェライト粒情報をより正確に予測計算することができる。
【0018】
さらにまた、前記成長定数として、パラボリックレイト定数に対して晶出物によるピンニングの影響を補正した補正パラボリックレイト定数を用いることが好ましい。
これによって、変態組織計算において、溶接金属で顕著な晶出物によるピンニング効果(粒成長を晶出物がピン止めして、成長を抑制する効果)をフェライト量の計算に反映させることができ、フェライト粒情報をより正確に予測計算することができる。
【0019】
一方、変態組織情報としてフェライト粒情報のほか、アシキュラフェライト粒情報をも用いる場合、アシキュラフェライト変態分率はアシキュラフェライトの核生成速度および成長定数を用いて計算することが好ましい。
これによって、アシキュラフェライト粒情報(アシキュラフェライト変態分率)をアシキュラフェライトの核の生成と成長との2面から計算することができ、アシキュラフェライト粒情報の予測精度を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の好ましい態様として、各メッシュ領域に対して、前記温度履歴から加熱過程においてオーステナイト変態が開始する温度Tas以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程以降の加熱冷却過程において冷却過程でフェライト変態が終了する温度Tffから焼き戻し温度までの温度領域の間に各メッシュ領域の材質が受けた回復、焼き戻しによる材質変化に対して前記被予測部の材質を補正する焼き戻し補正計算を行う。前記焼き戻し補正計算としては、前記最後の加熱冷却過程以降の加熱冷却過程において冷却過程でフェライト変態が終了する温度Tffから焼き戻し温度までの温度領域に保持される保持時間を求め、各メッシュ領域の保持時間から前記被予測部における平均保持時間を求め、この平均保持時間によって予測された前記被予測部の材質を補正する手法を取ることができる。
この態様によれば、回復、焼き戻しによる組織変化による材質変化を補正することができ、溶接部あるいは溶接部内の被予測部の材質予測精度をより向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の材質予測方法を、母材厚鋼板(亜共析組成)を突き合わせて、複数溶接パスによりアーク溶接する場合について説明する。
実施形態にかかる材質予測方法は、後述するフローチャートに示された各種計算を実行するプログラムが記憶装置に記憶された材質予測計算機によって実施される。前記記憶装置には、オペレータにより、あるいは中央管理計算機から計算に必要な情報、例えば母材成分、溶接ワイヤ成分、シールドガス成分、溶接条件が入力され、保存される。溶接条件としては、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、パス間温度(次パスの溶接が開始される際の溶接部許容温度)、母材形状(板厚)、開先形状、溶接長さ、パス数などがある。これらのデータからパス溶接時間(1パス当たりに要する溶接時間=溶接長さ/溶接速度)などの2次的情報が計算され、これらも記憶装置に保存される。
【0022】
また、記憶装置には、例えば下記イ〜トに示す種々のデータベースが格納されている。これらのデータベースのデータは事前に実験等により調査されたものである。データベースのデータは離散的なものであるが、必要に応じて線形補間されて利用される。また、離散的データを回帰分析することによって関係式を求め、定式化した形で利用することもできる。
イ.組成(母材、溶接金属)と液相線温度、固相線温度、加熱過程においてオーステナイト変態が終了する温度(全ての組織がオーステナイトとなる温度)Taf、加熱過程においてオーステナイト変態が開始する温度(オーステナイトが生成し始める温度)Tas、冷却過程においてフェライト変態が開始する温度Tfs、冷却過程においてフェライト変態が終了する温度Tff、焼き戻し温度(回復、焼き戻しにより実質的に材質変化が生じる下限温度、通常300℃程度)、必要に応じてその他の変態温度(例えば、マルテンサイト変態開始温度、パーライト変態開始温度)との関係を示す状態図データベース
ロ.溶接金属組成と晶出する晶出物の種類、溶融加熱温度および同温度から固相線温度までの凝固時間と晶出物の平均粒径および晶出量(単位面積当たりの個数)を示す晶出物データベース
ハ.オーステナイト加熱温度(Taf以上、固相線温度以下)および同加熱温度からTfsまでの冷却速度とオーステナイト粒の長径および短径との関係を示すオーステナイト組織データベース
ニ.溶接金属組成と析出する析出物の種類、オーステナイト加熱温度および同加熱温度から焼き戻し温度までの析出時間と析出物の平均粒径および析出量(単位面積当たりの個数)を示す析出物データベース
ホ.晶出物および析出物の種類とその量、フェライト粒径とその量(分率)から材質(機械的特性)を示す材質予測データベース
ヘ.晶出物および析出物の種類とその量、フェライトおよびアシキュラフェライトの各粒径と各量(分率)から材質(機械的特性)を示す材質予測データベースト.Tffから焼き戻し温度までの焼き戻し時間と材質補正係数との関係を示す焼き戻し補正データベース
【0023】
以下、本発明の一形態について、図1に示す主フローチャートを参照しながら、この実施形態にかかる材質予測方法について詳細に説明する。
【0024】
まず、予測計算の基礎となる、母材成分、ワイヤ成分、シールドガス成分、溶接条件が材質予測計算機に入力され(S1)、記憶装置に保存される。
【0025】
次に、図2に示すように、母材1,1の開先形状から想定される溶接金属部2および熱影響部を含む溶接部を多数のメッシュ領域3に区画する(S2)。溶接部は溶接金属部の幅、高さ方向にパス数よりも多く分割することが予測精度の上では好ましいが、必要以上に細かく分割すると計算時間が増大する。通常は、パス数の2〜8倍程度に分割すればよい。各メッシュ領域は適宜の座標軸を設定することにより、その位置が確定する。図例では、右方にX軸、上方にY軸、紙面と垂直方向にZ軸が設定されている。
【0026】
そして、溶接パスiおよび単位時間ごとの経過時間tにつき、初期値を設定する(S3)。溶接パスは、第1パスから始まるのでi=1とする。単位時間は冶金学的変化が観察可能な時間とすればよいが、この実施形態では1秒とするので、経過時間tはt=1と設定する。
【0027】
次に、各メッシュ領域について以下の計算を行う。
(1) メッシュ領域温度履歴計算(S4)
この計算は、母材成分、ワイヤ成分および溶接条件、あるいは当該単位時間経過前の溶接金属組成(すでに母材とワイヤとが溶け合って溶接金属を形成している場合)および溶接条件に基づいて、単位時間経過ごとの各メッシュ領域の温度を求め、これを最終溶接パスNまで順次繰り返して、第1パスから最終パスに至る温度履歴を求めものである。メッシュ領域の温度は、3次元熱伝導方程式を用いて計算することができる。なお、この計算に必要な熱伝導媒体(母材、ワイヤあるいは溶接金属)の熱伝導度や密度などのデータは適宜データベースから読み取られる。また、この計算に利用されるソフトウェアは、熱解析ソフトとして市場に供給されているので、これを利用することができる。
【0028】
(2) 溶接金属組成計算(S5)
この計算は、母材成分、ワイヤ成分、シールドガス成分および前記メッシュ領域温度履歴計算によって求められた当該単位時間経過後のメッシュ領域温度、あるいは当該単位時間経過前の溶接金属組成(すでに母材とワイヤとが溶け合って溶接金属を形成している場合)および当該単位時間経過後のメッシュ領域温度に基づいて、当該単位時間経過後のメッシュ領域の溶接金属組成を求めるものである。より詳しくは、当該単位時間経過後において液相線温度以上となっている全てのメッシュ領域の組成を平均化することによって溶接金属組成を算出することができる。
【0029】
上記(1) 、 (2)の計算は単位時間経過ごとに、当該経過時間tがパス溶接時間tpを経過しているか否かが判断され(S6)、経過するまで順次、単位時間経過後の状態を計算する(S7)。経過後、メッシュ領域の温度Tがパス間温度Tpass以下になっているか否かが判断され(S8)、パス間温度以下になるまで順次、単位時間経過後の状態を計算する(S7)。さらに、パス間温度以下になると、当該パスが最終パスであるか否かが判断され(S9)、最終パスになるまで順次、次パスにおける単位時間経過後の状態を計算する(S10)。
【0030】
以上のようにして計算された、あるメッシュ領域の温度履歴を図3に例示する。同図は5パスで溶接した際の第1パスにおいて形成される溶接金属部に在るメッシュ領域の温度履歴例であり、第1パスから最終パス(第5パス)に渡って、各パスごとに最高温度を記録し、この最高温度は後段のパスに移行するに従って順次低下している。図中の「Pn」は第nパス目のピーク温度を示している。同図には、液相線温度、固相線温度、Tas、Taf、Tfs、Tff、焼き戻し温度Tpも併記した。
【0031】
次に晶出計算(S11)を行う。この計算は、溶接金属組成と温度履歴とに基づいて晶出物の組成、平均粒径および晶出量(単位面積当たりの個数)などの晶出物情報を求め、前記溶接金属組成から晶出物組成および晶出量を基にして算出した晶出成分を差し引き、晶出後の溶接金属組成を求めるものである。より詳しくは、溶接金属組成を基にデータベースから晶出物の組成を求め、また温度履歴から液相線温度以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程における最高温度およびこの最高温度から固相線温度に至るまでの経過時間を求め、この最高温度と経過時間を基にデータベースから晶出物の粒径、晶出量を求める。
図3を例に説明すると、液相線温度以上に加熱される最後の冷却過程はP2をピークとする加熱冷却過程であり、P2の温度とP2から固相線温度を通過するまでの経過時間を求める。P1をピークとする加熱冷却過程では、最高温度はP1であり、冷却中に晶出物が晶出するが、次の加熱冷却過程でその晶出物のほとんどが再溶融する。このため、この実施形態では凝固後に残存する晶出物を主に晶出する、P2をピークとする加熱冷却過程について晶出計算を行う。これによって簡易に計算することができる。なお、最終溶接パス終了後に残存する晶出物は、厳密には(P1をピークとする加熱冷却過程の冷却時において生成する晶出物)−(P2をピークとする加熱冷却過程の加熱時において再溶融する晶出物)+(P2をピークとする加熱冷却過程の冷却時において生成する晶出物)である。
【0032】
次にオーステナイト組織計算(S12)を行う。この計算は、晶出計算によって求められた晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいてオーステナイト粒の長径、短径および平均粒径などのオーステナイト粒情報を求めるものである。より詳しくは、温度履歴からTaf以上となる最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程に対して最高温度と、最高温度からTfsまでの冷却速度とを求め、この最高温度と冷却速度とを基にデータベースからオーステナイト粒情報を求める。なお、平均粒径の表現方法は種々あるが、通常、長径および短径から導かれる。例えば長径、短径を有する楕円形の面積と等価の面積を有する円形の直径で表すことができる。
図3を例に説明すると、Taf以上に加熱される最後の加熱冷却過程はP3をピークとする加熱冷却過程であり、その最高温度P3と、P3からTfsに至る冷却速度を求める。Tafを超える最後の加熱冷却過程についてのオーステナイト粒情報を求めることにより、フェライト変態前のオーステナイト粒の情報を得ることができ、無駄な計算を省くことができる。
【0033】
次に析出計算(S13)を行う。この計算は、晶出計算によって求められた晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいて析出物の組成、平均粒径、析出量(単位面積当たりの個数)などの析出物情報を求めるものである。より詳しくは、晶出後溶接金属組成を基にデータベースから析出物の組成を求め、また温度履歴から固相線温度以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程における固相線温度到達時点から焼き戻し温度に至るまでの経過時間を求め、この固相線温度と経過時間を基にデータベースから析出物の粒径、晶出量を求める。
図3を例に説明すると、固相線温度以上に加熱される最後の加熱冷却過程はP2をピークとする加熱冷却過程であり、固相線温度到達時点から焼き戻し温度Tpまでの経過時間t1を求める。析出物はTp程度まで析出するのでこの間の経過時間を求めることとした。
【0034】
次に変態組織計算(S14)を行う。この計算は、例えばフェライト変態を考慮する場合、晶出後溶接金属組成、オーステナイト粒情報および温度履歴に基づいてオーステナイト粒界から析出するフェライトの平均粒径および量(変態分率)を含むフェライト粒情報をフェライト変態モデルから求めるものである。
前記フェライト変態モデルとしては、下記式によって記述されるモデル(第131・132回、西山記念技術講座、『鉄鋼材料の材質予測・制御技術の現状と将来』、社団法人日本鉄鋼協会編、平成元年発行、「無加工および加工硬化したオーステナイトからの相変態挙動の定量化」の論文参照)を用いることができる。
フェライト粒径Dα=f(α,Is,t,S)
フェライト分率X=g(α,Is,t,S)
ここで、tは保持時間、Sは単位体積中のオーステナイトの粒界面積、αは成長係数(パラボリック定数と呼ばれる。)、Isは単位面積当たりの核生成速度である。前記Sはオーステナイト粒情報から算出され、前記Isはオーステナイト組成および保持温度から、また前記αはオーステナイト組成(晶出後溶接金属組成中のC濃度)と保持温度から理論的に、あるいは実験的に求められる。
【0035】
本実施形態では、Tas以上に加熱される最後の加熱冷却過程(図3ではP4をピークとする加熱冷却過程)を求め、この最後の加熱冷却過程における最高温度(図3ではP4)(最高温度がTafを超える場合はTfs)を前記保持温度とし、また前記最高温度からTffまでの経過時間を前記保持時間tとして用いる。これによって、前記最後の加熱冷却過程以前の加熱冷却過程における、最終フェライト組織に関与しない変態組織計算を省略することができる。
【0036】
前記フェライトの変態分率Xやフェライト粒径Dαの計算において、オーステナイト粒界面積Sが用いられ、このSは先に述べたとおりオーステナイト粒情報から算出される。オーステナイト粒界面積は、鋼材の場合のようにオーステナイト粒がほぼ球形と仮定できる場合には、平均粒径のオーステナイト粒が単位体積に稠密に充填された場合の粒界面積を用いることができる。しかし、溶接金属ではオーステナイト粒が球状ではなく、柱状晶となる領域があるため、オーステナイト粒を球形に近似したのでは精度が低下する。そこで、本実施形態では、オーステナイト粒情報の内、長径、短径(あるいはこれらの寸法の一方とアスペクト比(=長径/短径)、あるいは平均粒径とアスペクト比)を用いて、楕円体ないし直方体形状の粒形を想定し、これを単位体積に稠密に充填された場合の粒界面積を用いる。これにより、予測精度を向上させることができる。
【0037】
前記核生成速度Isは、オーステナイト粒界からの核生成速度を意味するものであり、本発明においてもこのIsを用いることができる。しかし、溶接金属では多数の晶出物が存在するため、オーステナイト粒界だけでなく、晶出物からも核生成が生じる。このため、核生成速度Ia としては、前記Isを単独で用いるより、晶出物からの核生成速度IcをIsに加算した(Is+Ic)(複合核生成速度と呼ぶ。)を用いることが好ましい。Icは晶出物情報と温度を基としてデータベースから求められる。
【0038】
また、前記成長係数αは、記述のとおり、平衡計算により理論的に、あるいは実験的に求められるものであり、本発明においてもこのαを用いることができる。しかし、溶接金属では先に述べたように多数の晶出物が存在する。この晶出物は、フェライトが成長する際に成長を妨げるようにピンニング効果を発揮し、成長を遅らせる。このため、成長係数として、この効果を補正し、成長係数αa としてaα+b(a(0<a≦1),bは定数、)(補正パラボリック定数と呼ぶ。)を用いることが好ましい。定数a,bは、晶出物情報を基としてデータベースから求められる。
【0039】
変態組織計算において、変態組織情報としてアシキュラフェライト粒情報をも計算する場合は、晶出後溶接金属組成、温度履歴に基づいてオーステナイトから析出するアシキュラフェライトの平均粒径および量(変態分率)を含むアシキュラフェライト粒情報をアシキュラフェライト変態モデルから求める。
前記アシキュラフェライト(以下、アシキュラフェライトをAFと略記することがある。)変態モデルとしては、下記式によって記述されるモデルを用いることができる。
AF分率=1−expΣ(−k・Iaf(T)・αaf(T)・Δt1/2)
AF平均粒径={ΣIaf(T)・αaf(T)・Δt}/ΣIaf(T)
ここで、kは定数、Iaf(T)はある温度TにおけるAFの核生成速度、αaf(T)はある温度TにおけるAFの成長定数である。Δtは微小時間であり、積算時間は、後述するアシキュラフェライト変態の開始温度からマルテンサイト変態開始温度もしくはパーライト変態開始温度に至るまでの間とされる。
【0040】
前記k、Iaf(T)、αaf(T)の値は溶接金属の組成、温度によって変化するため、予め実験によって得られたデータベースから、あるいはこのデータベースを回帰分析して得られた関係式から計算される。より厳密な計算を行う場合、k、Iaf(T)、αaf(T)は晶出物の種類とその量(個数)、さらに析出物の種類とその量(個数)によっても変動するので、これらの要素に基づいて予め実験によって決定した補正係数によって核生成速度や成長定数の計算値を補正したり、溶接金属の組成や温度のほか、晶出物や析出物の種類や量を含む詳細なデータベースからk、Iaf(T)、αaf(T)を決定してもよい。
【0041】
アシキュラフェライトの変態開始温度(フェライト変態の終了温度)は、冷却に従ってフェライト粒情報についての変態組織計算を押し進め、フェライト変態が進行中であるか停止中であるかを問わず、オーステナイトの自由エネルギー(G(γ))とフェライトの自由エネルギー(G(α))との差(ΔG=G(γ)−G(α))が600J/molになった時点における温度とする(『材料とプロセス』、VOL.3、No. 3、p871、1990)。前記自由エネルギー差(ΔG)は、各変態組織計算の前に熱力学関数を用いて計算される。なお、前記文献によれば、600J/mol以上にてベイナイト変態が開始するとされているが、アシキュラフェライトはオーステナイト粒内から生成したベイナイトと見なすことができるので、本発明ではこの値以上となったときにアシキュラフェライトの変態が開始するものとした。
前記オーステナイトとフェライトとの自由エネルギー差(ΔG)は、G(γ)およびG(α)を熱力学関数として表現し、同組成のときのその差を取ったものである。従って、ΔGの値はAe3点ではゼロであり、温度の低下に伴って大きい値を取る。前記G(γ)、G(α)はそれぞれ各成分の熱力学データの総和として表現されるものであり、本発明においてはウレニウスの報告(Urenius:Hardenability Concepts with Applications to Steels (1978) ed. by Doane and Kirkaldy, P28-81)による熱力学データを採用して計算した。
【0042】
各メッシュ領域について前記晶出計算によって得られた晶出物情報、析出計算によって得られた析出物情報および変態組織計算によって得られたフェライト、あるいはさらにアシキュラフェライトの粒径、量(変態分率)は、被予測部組織計算(S15)によって被予測部の全領域に渡って平均化され、組織・材質予測計算(S16)によって前記被予測部組織情報を基にデータベースから、あるいはデータベースを基に回帰分析によって得られた組織−材質関係式によって材質(機械的特性)が予測される。
【0043】
なお、図1のフローチャートは、材質予測計算として被予測部組織計算および組織・材質予測計算を用いる場合を示したものであるが、他の手法として、各メッシュ領域ごとに計算された変態組織情報を基に、各メッシュ領域ごとにメッシュ領域材質予測計算を行い、その後、算出された各メッシュ領域における材質から被予測部全体の材質を求める材質・材質予測計算を行うようにしてもよい。
【0044】
以上によって溶接部の材質は予測されるが、さらに回復、焼き戻しによる影響を焼き戻し補正計算(S17)によって補正することによって予測精度をより向上させることができる。
この計算は、Tff以下で焼き戻し温度以上の温度領域で回復、焼き戻しが生じると考え、Tffから焼き戻し温度までの温度領域において、各メッシュ領域の回復、焼き戻しを考慮して前記被予測部の材質を補正するものである。補正手法としては、例えば前記温度領域に保持される時間を各メッシュ領域について求め、これを基に溶接部全体における平均保持時間を求め、この平均保持時間を基にデータベースから補正係数を求め、材質予測計算によって求めた材質を補正することができる。
前記保持時間の算出方法についてより詳しく説明すると、温度履歴から最高温度がTas以上となる最後の加熱冷却過程(図3ではP4をピークとする加熱冷却過程)を求め、この最後の加熱冷却過程のTff以下で焼き戻し温度Tp以上となる全時間(図3ではt2)を求める。なお、図3でP4をピークとする冷却過程で一旦メッシュ領域温度がTp以下になる部分がある場合、Tp以上の温度区間の時間を積算する。
なお、他の補正方法として、各メッシュ領域についてメッシュ領域材質予測計算によって組織から材質を予測し、材質・材質予測計算によって被予測部の材質を予測するする場合、前記例と同様の手法で各メッシュ領域の材質を前記保持時間に基づいて補正する焼き戻し補正計算を行い、この計算によって補正された各メッシュ領域の補正材質に基づいて材質・材質予測計算によって被予測部の材質を予測することもできる。
【0045】
ところで、被予測部の材質を予測する方法として、上記のように溶接後の組織を求めることなく、溶接金属組成と温度履歴から被予測部の材質を直接予測することが考えられる。しかし、溶接金属を含む鉄鋼材料では、変態などを伴うことから、ある化学成分や温度を境に特性が急激に変化することがよくある。このため、化学成分や温度履歴と材質とは必ずしも線形の関係にはならない。従って、計算された化学成分や温度履歴を基に、離散的データによって構成されるデータベースを用いて材質を予測する際、所望のデータ点を一次補間(線形補間)により内挿したとしても、予測精度にバラツキが生じやすく、総じて精度が低下する。一方、機械的特性は組織に対して連続的に、より線形の関係で変化するので、本発明のように化学成分や温度履歴を基に組織を求め、組織から材質を予測する方法によれば、予測精度を向上させることができる。
【0046】
【実施例】
[実施例1]
成分(mass%、残部実質的にFe)がC:0.15%、Si:0.37%、Mn:1.43%の母材(板厚20mmの厚鋼板)と、C:0.06%、Si:0.80%、Mn:1.60%、Ti:0.26%の溶接ワイヤを用いて下記の溶接条件にてCO2 ガスシールドアーク溶接を行うこととし、前記晶出計算、オーステナイト組織計算、析出計算および変態組織情報としてフェライト粒情報のみを考慮した変態組織計算により予測した組織情報を基に溶接金属部の材質(引張強さTS、0℃でのシャルピー衝撃値vE0)を予測するとともに、実際に溶接を行って同部の材質を実測した。
・溶接条件
下記の各条件の下、開先V型(開き角45°)、ギャップ6mmとし、溶接速度25cm/分、溶接長さ0.35m(パス溶接時間84秒)とした。
条件A:パス数5、入熱量30kJ/cm、パス間温度150℃
条件B:パス数5、入熱量30kJ/cm、パス間温度250℃
条件C:パス数5、入熱量30kJ/cm、パス間温度350℃
条件D:パス数4、入熱量40kJ/cm、パス間温度250℃
条件E:パス数4、入熱量40kJ/cm、パス間温度350℃
【0047】
メッシュ領域のサイズは、図2に示すように、開先形状の高さh、幅W、パス数N、溶接長さLから、x方向サイズ=(h/N)/4、y方向サイズ=(h/N)/4、溶接長さ方向のサイズ=L/10の各式によって決定した。
【0048】
また、変態組織計算において、オーステナイト粒界面積を下記A、Bの2種の手法で求めたものを用いた。
・手法A
従来の鉄鋼材での手法であり、オーステナイトの平均粒径をDγとしたとき、オーステナイト粒界面積Sを下記式にて求めた。
S=4/(√π・Dγ)
・手法B
溶接金属における結晶形態(デンドライト形態)を考慮し、オーステナイト粒の長径をa、短径をbとするとき、オーステナイト粒を縦a、横a、高さbの直方体と仮定して単位体積当たりの粒界面積を求めた。
【0049】
また、変態組織計算において、フェライトの核生成速度、成長定数を下記A、Bの2種の手法で求めたものを用いた。
・手法A
従来の鉄鋼材での理論計算により、核生成速度Iaとしてオーステナイト粒界からの核生成速度Isを、成長係数αaとしてパラボリックレイト定数αを求めた(Ia=Is、αa=α)。
・手法B
溶接金属材における晶出物を考慮して、核生成速度Iaとして前記Is(オーステナイト粒界からの核生成速度)にIc(晶出物からの核生成速度)を加算した複合核生成速度(Ia=Is+Ic)を求めた。また、成長係数αaとして下記式により補正パラボリックレイト定数を求めた。
αa=aα+b
但し、a=0.86、b=−n/D×0.6×10-23 であり、nは晶出物の個数(個/m2 )、Dは晶出物の平均粒径(m)である。
【0050】
本実施例による材質予測計算による計算結果の一例を下記に示す。溶接条件は前記条件Aであり、計算結果を例示するメッシュ領域は、最終原質部として図2の座標系でx=0mm、y=18mmの位置における領域、再加熱部としてx=0mm、y=12mmの位置における領域を示す。
(1) 最終加熱冷却過程後の溶接金属組成計算結果(mass%、残部実質的にFe)・最終原質部
C:0.087%、Si:0.52%、Mn:1.16%、Ti:0.05%、O:0.39%
・再加熱部
C:0.083%、Si:0.51%、Mn:1.08%、Ti:0.05%、O:0.033%
(2) 最終加熱冷却過程後の晶出計算結果
・最終原質部
析出物組成:TiO2 、平均粒径:660nm、個数:9600個/mm2
・再加熱部
析出物組成:TiO2 、平均粒径:480nm、個数:11000個/mm2
(3) 最終加熱冷却過程後のオーステナイト組織計算結果
・最終原質部
オーステナイト平均粒径:187μm 、アスペクト比:2.68
・再加熱部
オーステナイト平均粒径:89μm 、アスペクト比:1.18
(4) 変態組織計算
▲1▼最終パス後の単位体積当たりのオーステナイト粒界面積S(m2/m3)
・最終原質部
手法A:1.2×104、手法B:2.3×104
・再加熱部
手法A:2.5×104、手法B:3.4×104
▲2▼750°におけるフェライトの核生成速度Ia、成長定数αa
手法A:Ia=Is=2.6×107、αa=α=1.6×10-6
手法B:Ia=Is+Ic=1.1×108、αa=1.3×10-6
【0051】
材質予測計算結果および実測による測定結果を表1、図4および図5に示す。同図より、本実施例による材質予測結果と実測結果とは誤差が小さく、良好な一致が認められる。
【0052】
【表1】
【0053】
[実施例2]
成分(mass%、残部実質的にFe)がC:0.15%、Si:0.37%、Mn:1.43%の母材(板厚20mmの厚鋼板)と、C:0.06%、Si:0.80%、Mn:1.60%、Ti:0.26%の溶接ワイヤを用いて、CO2 ガスシールドアーク溶接を行うこととし、前記晶出計算、オーステナイト組織計算、析出計算および変態組織情報としてフェライト粒情報およびアシキュラフェライト粒情報を考慮した変態組織計算により予測した組織情報を基に溶接金属部の材質(引張強さTS、0℃でのシャルピー衝撃値vE0)を予測するとともに、実際に溶接を行って同部の材質を実測した。
【0054】
溶接条件は、実施例1と同様の母材開先条件の下で、溶接パス数5、溶接速度25cm/分とし、溶接後の冷却速度を種々設定するため、入熱量およびパス間温度を種々変えて冷却速度を調整した。
また、フェライト粒情報の計算に際して、オーステナイト粒界面積を実施例1の手法Bにより、またフェライトの核生成速度、成長定数を実施例1の手法Bにより求めた。また、アシキュラフェライト粒情報の計算に際して、アシキュラフェライトモデルのk(定数)、析出速度Iaf(T)、成長定数αaf(T)はデータベースを回帰分析して得られた下記値、式を用いて計算した。
【0055】
本実施例による材質予測計算による計算結果の一例を表2、図6および図7に示す。また、表2には、図2の座標系でx=0mm、y=18mmの位置におけるメッシュ領域(溶接金属中央上部)におけるフェライト、アシキュラフェライトの量(体積%)についての計算値および実測値を示す。また、同部における、オーステナイト変態開始温度Tas以上に加熱される最後の加熱冷却過程における最高到達温度からフェライト変態終了温度に至る平均冷却速度を同表に併せて示す。フェライト量などの実測値は以下の要領にて測定した。溶接部断面を観察することができるように組織観察用試験片を切り出し、研磨後、ナイタールエッチングで金属組織を現出させ、400倍の光学顕微鏡写真を撮り、画像解析装置(Image Pro PLUS(プラネトロン社製))にて組織量を面積率で測定し、その値を体積率に等しいものと見なした。
【0056】
図6および図7より、本実施例による材質予測結果と実測結果とは誤差が小さく、良好な一致が認められる。また、フェライト量、アシキュラフェライト量についても、予測精度に優れることが看取される。
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明の材質予測方法によれば、晶出物の生成を伴う溶接金属部について、晶出物を考慮した組織を予測計算し、予測計算された組織に基づいて溶接部内の被予測部の材質特性を予測するので、被予測部の材質特性を精度良く予測することができる。また、溶接条件に応じて被予測部の材質を精度良く予測することができるので、目標とする特性を得るための最適な溶接条件を予測結果を基に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の材質予測方法を示す主フローチャートである。
【図2】溶接部におけるメッシュ領域を示す断面説明図である。
【図3】あるメッシュ領域の温度履歴を示す時間−温度線図である。
【図4】実施例1における引張強さの予測計算値と実測値との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1におけるシャルピー衝撃値の予測計算値と実測値との関係を示すグラフである。
【図6】実施例2における引張強さの予測計算値と実測値との関係を示すグラフである。
【図7】実施例2におけるシャルピー衝撃値の予測計算値と実測値との関係を示すグラフである。
Claims (17)
- 母材同士が一または複数の溶接パスによって溶接金属部を介して溶接された溶接構造物の、前記溶接金属部および熱影響部を含む溶接部内の被予測部の材質を予測する方法であって、
前記溶接部を区画して複数のメッシュ領域を想定し、各メッシュ領域に対して、下記(1) 、 (2) 、 (3) 、および (4) の各計算を行い、
(1) 最終溶接パス終了まで単位時間経過毎に、母材成分、ワイヤ成分あるいは当該単位時間経過前の溶接金属組成と溶接条件とに基づいて当該単位時間経過後におけるメッシュ領域温度を順次求めて第1溶接パスから最終溶接パスに至る温度履歴を算出するメッシュ領域温度履歴計算、
(2) 最終溶接パス終了まで単位時間経過毎に、母材成分、ワイヤ成分、シールドガス成分あるいは当該単位時間経過前の溶接金属組成と当該単位時間経過後におけるメッシュ領域温度とに基づいて当該単位時間経過後の溶接金属組成を求める溶接金属組成計算、
(3) 前記メッシュ領域温度履歴計算および溶接金属組成計算の後に、前記溶接金属組成と温度履歴とに基づいて晶出物の組成、平均粒径および晶出物量を含む晶出物情報並びに晶出物が晶出した後の晶出後溶接金属組成を求める晶出計算、
(4) 前記晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいてメッシュ領域内における変態組織の分率を含む変態組織情報を求める変態組織計算、
その後、前記被予測部内の各メッシュ領域における最終溶接パス終了後の前記晶出物情報および変態組織情報に基づいて、予め実測により求められた組織と材質との関係から前記被予測部の材質を予測する材質予測計算を行う、溶接部の材質予測方法。 - 材質予測計算は、前記被予測部内の各メッシュ領域における最終溶接パス終了後の変態組織情報から前記被予測部における組織情報を求める被予測部組織計算と、前記被予測部組織計算によって求められた被予測部組織情報に基づいて、予め実測により求められた組織と材質との関係から前記被予測部の材質を予測する組織・材質予測計算とを有する、請求項1に記載した材質予測方法。
- 材質予測計算は、前記被予測部内の各メッシュ領域における変態組織情報に基づいて、予め実測により求められた溶接部組織と材質との関係から前記各メッシュ領域における材質を予測するメッシュ領域材質予測計算と、前記メッシュ領域材質予測計算によって求められた前記被予測部内の各メッシュ領域における材質に基づいて前記被予測部の材質を予測する材質・材質予測計算とを有する、請求項1に記載した材質予測方法。
- 前記変態組織計算を行う前に前記晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいてオーステナイト粒情報を求めるオーステナイト組織計算を行い、前記変態組織計算の基礎として前記オーステナイト粒情報をも用いる、請求項1から3のいずれか1項に記載した材質予測方法。
- 前記各メッシュ領域に対して、前記温度履歴から加熱過程においてオーステナイト変態が終了する温度Taf以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程に対してオーステナイト組織計算を行う、請求項4に記載した材質予測方法。
- 前記変態組織計算を行う前に前記晶出後溶接金属組成と温度履歴とに基づいて組織中に析出する析出物の組成、平均粒径および析出量を含む析出物情報を求める析出計算を行い、前記材質予測計算の基礎として最終溶接パス終了後の析出物情報をも用いる、請求項1から5のいずれか1項に記載した材質予測方法。
- 前記各メッシュ領域に対して、前記温度履歴から固相線温度以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程に対して晶出計算を行う、請求項1から6のいずれか1項に記載した材質予測方法。
- 前記各メッシュ領域に対して、前記温度履歴から加熱過程においてオーステナイト変態が開始する温度Tas以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程に対して変態組織計算を行う、請求項1から7のいずれか1項に記載した材質予測方法。
- 前記変態組織情報はフェライト平均粒径およびフェライト量を含むフェライト粒情報である、請求項1から8のいずれか1項に記載した材質予測方法。
- 前記変態組織計算において、オーステナイト粒情報と溶接金属組成および温度履歴によって求められたオーステナイト粒界面積、フェライトの核生成速度および成長定数を用いてフェライト変態分率を計算する、請求項9に記載した材質予測方法。
- 前記オーステナイト粒界面積として、オーステナイト粒情報の長径、短径に基づく細長状粒に対する粒界面積を用いる、請求項10に記載した材質予測方法。
- 前記フェライトの核生成速度として、オーステナイト粒情報から算出されたオーステナイト粒界面積に基づいて求められた粒界核生成速度と、晶出物を核として生成する晶出物核生成速度とに基づいて求められた複合核生成速度を用いる、請求項10または11に記載した材質予測方法。
- 前記成長定数として、パラボリックレイト定数に対して晶出物によるピンニングの影響を補正した補正パラボリックレイト定数を用いる、請求項10から12のいずれか1項に記載した材質予測方法。
- さらに前記変態組織情報はアシキュラフェライト量およびアシキュラフェライト平均粒径を含むアシキュラフェライト粒情報である、請求項9から13のいずれか1項に記載した材質予測方法。
- 晶出後溶接金属組成および温度履歴によって求められたアシキュラフェライトの核生成速度および成長定数を用いてアシキュラフェライト変態分率を計算する、請求項14に記載した材質予測方法。
- 各メッシュ領域に対して、前記温度履歴から加熱過程においてオーステナイト変態が開始する温度Tas以上に加熱される最後の加熱冷却過程を求め、この最後の加熱冷却過程以降の加熱冷却過程において冷却過程でフェライト変態が終了する温度Tffから焼き戻し温度までの温度領域の間に各メッシュ領域の材質が受けた回復、焼き戻しによる材質変化に対して前記被予測部の材質を補正する焼き戻し補正計算を行う、請求項1から15のいずれか1項に記載した材質予測方法。
- 前記焼き戻し補正計算は、前記最後の加熱冷却過程以降の加熱冷却過程において冷却過程でフェライト変態が終了する温度Tffから焼き戻し温度までの温度領域に保持される保持時間を求め、各メッシュ領域の保持時間から前記被予測部における平均保持時間を求め、この平均保持時間によって予測された前記被予測部の材質を補正する、請求項16に記載した材質予測方法。
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