JP4183817B2 - 電気接点開閉装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性流体により固体電極間の開閉を機械的に行う、電気接点開閉装置、電気接点開閉装置集積体および電気接点開閉方法に関し、具体的には、より信頼性が高い機械接点式の超小型リレー、超小型スイッチ等の開閉装置、当該開閉装置の集積体およびその開閉方法に関する。
【0002】
【技術背景】
従来の代表的な小型の機械接点式リレーはリードリレーである。リードリレーは、磁性合金からなる2枚のリードを微小なガラス容器内部に、不活性ガスと共に封じ込めたリードスイッチを備えている。リードスイッチの周囲には、電磁駆動用のコイルが巻回され、2枚のリードは、ガラス容器内で、接触または非接触となるように配置されている。通常、この種のリードリレーは、非駆動状態では、コイルには電流が流されず、各リードの先端同士は排斥し合って非接触となり、駆動状態では、コイルに電流が流され、各リードの先端同士は吸引し合って接触する。
【0003】
この種のリードリレーには、ドライリードリレーと、ウェットリードリレーがある。
通常、ドライリードリレーでは、各リードの先端(接点)は、銀、タングステン、ロジウム、またはこれらの何れかを含む合金からなり、その表面にはロジウム、金等のめっき処理がなされる。
ドライリードリレーでは、接点における接触抵抗が大きく、また接点における摩耗も顕著である。接点における接触抵抗が大きい場合や、接点の摩耗が顕著である場合には、信頼性が低下するので、当該接点の表面処理には、種々の工夫がなされている。
このような観点から、ウェットリードリレーでは、水銀を利用して上記した接点の信頼性を高めている。すなわわち、毛細管現象を利用して、各リードの接点表面を水銀で被覆することにより、接点における接触抵抗を低下させるとともに、接点における摩耗を低減することで、信頼性を高めている。
【0004】
また、上記のリードリレーでは、リードの開閉動作には、屈曲に伴う機械疲労が伴うため、経年使用によりリードが正常に動作しなくなることがあり、信頼性が低下する。このような、リードの機械疲労を低減するとともに、接点における接触抵抗を下げ、かつリレー全体を小型化する技術が、特公昭36−18575号公報、特開昭47−21645号公報、特開平9−161640号公報に開示されている。
【0005】
これら公報においては、開閉機構は、電気的絶縁性を有する密閉された細長いチャネルの内壁の所定個所に複数の電極を露出形成し、当該チャネル内に電気的導電性を有する小体積の液体を封入して短い液体柱を形成するように構成されている。2つの電極を電気的に閉じる場合には、液体柱を両電極に同時に接触する位置に移動させ、2つの電極を電気的に閉じる場合には、液体柱を両電極に同時には接触しない位置に移動させる。
【0006】
液体柱を移動させるために、特開昭47−21645号公報では、ダイヤフラムにより、液体柱両側の気体収容部の容積を適宜変更することで液体柱両側に圧力差を生じさせており、また特公昭36−18575号公報、特開平9−161640号公報では、気体収容部にヒータを設けておき当該ヒータにより、液体柱の両側のチャネル内気体のうち少なくとも一方を加熱することで液体柱両側に圧力差を生じさせている。
【0007】
特に、特開平9−161640号公報の技術(マイクロリレー素子)は、集積回路にも応用が可能である。また、J.シモン他による走行水銀微小滴を備えた流体充填超小型リレー(A Liquid−Filled Microrelay with a Moving Mercury Drop;Journalof Microelectromechanical Systems,Vol.6,No.3,September 1997)に開示されているように、この種のリレーは、開発が進めば、さらに小型化、高速化が可能であり、また重力依存(姿勢依存)はなくなるし、水銀接点の長超寿命化、高信頼性化が可能となる他、製造に際して環境汚染を最小に止めることができる。
【0008】
図11は、特開平9−161640号公報に示されているラッチ型熱駆動マイクロリレー素子の平面レイアウト図である。マイクロリレー素子は、半導体基板91の所定の領域に形成した、能動貯蔵庫921と、受動貯蔵庫922と、チャネル93を含んで構成されている。能動貯蔵庫921,受動貯蔵庫922には、それぞれカンチレバー形状のヒータ941,942が複数設置されており、これら能動貯蔵庫100と受動貯蔵庫140とはチャネル120により連結されている(なお、図11では、ヒータ941,942の下側には、ヒータ支持台が設けられている)。
【0009】
チャネル93の中間位置には、当該チャネル93より径小のマイクロチャネル領域931が形成されている。マイクロチャネル領域931の、能動貯蔵庫921側には第1チャネル領域932が形成され、受動貯蔵庫921側には第2チャネル領域933が形成されている。第1チャネル領域932は第1の狭チャネル934を介して、能動貯蔵庫921に接続され、第2チャネル領域933は第2の狭チャネル935を介して、受動貯蔵庫922に接続されている。第1チャネル領域932には第1信号電極951,952が露出して形成され、第2チャネル領域933には第2信号電極954,955が露出して形成されている。マイクロチャネル領域931、第1チャネル領域932、第2チャネル領域933からなるチャネル部分には、導電性の流体柱である液体金属96が封入されている。
【0010】
図11のマイクロリレーでは、ヒータ941を加熱することにより能動貯蔵庫921の内圧を上昇させて、液体金属96を第2チャネル領域933に移動させることで、第1信号電極951,952間を”開”状態、第2信号電極954,955間を”閉”状態とすることができる。また、ヒータ942を加熱することにより受動貯蔵庫922内の圧力を上昇させて、液体金属96を第1チャネル領域932に移動させることで、第1信号電極9531,952間を”閉”状態、第2信号電極954,955間を”開”状態とすることができる。
【0011】
しかし、図11に示すような構成のマイクロリレー素子では、第1信号電極951,952、あるいは第2信号電極954,955の開閉の際に、各電極表面が粗されたり、各電極表面がチャネル93内の気体に含まれる成分により腐食を受けることにより開閉動作が不安定となる等、信頼性が低下することが懸念される。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、上記の問題を解決するために提案されたものであって、電極表面の腐食がなく、信頼性が極めて高く、さらに電極部間の導電率を可変にすることができる電気接点開閉装置、電気接点開閉装置集積体および電気接点開閉方法を提供することである。
【0013】
【発明の概要】
図11に示すような従来のマイクロリレー素子では、導電性流体からなる”柱”を2つの電極部に同時に接触させるように移動することでリレーを”閉”状態とし、また当該”柱”を2つの電極部に同時には接触しないように移動することでリレーを開閉しており、また電気的な開閉点は、あくまでも導電性流体と、固体電極の電極部との接触点である。
【0014】
本発明者は、このような開閉方式が、上記問題の原因となっていることを見出した。そして、種々研究を行った結果、リレーの開閉を、導電性流体の形態を変形させ、かつ導電性流体の機械的な分離または融合により行う(すなわち、電気的な開閉点を導電性流体の機械的な分離点または融合点とする)ようにすれば、電極部表面の腐食(キャビティ内の気体に含まれる成分との化学変化等)による劣化をなくすことができ、加えて電極部間電圧を可変とすることもできる、との知見を得て本発明をなすに至った。
【0015】
本発明の電気接点開閉装置(以下、「本発明装置」と言う)は、キャビティと、少なくとも2つの固体電極と、導電性流体と、形態変形手段とを有している。
固体電極は、2つが1組となって構成され、各固体電極の電極部は、前記キャビティ内の隔離位置に露出して形成される。
導電性流体は、キャビティ内に収容され、2つの電極部を、一体形態では”閉”状態とし、非一体形態(すなわち、分離形態)では”開”状態とする。ここで、”閉”状態には、導電性流体が完全な一体形態となる場合および不完全な一体形態(以下、「半一体形態」と言う)となる場合の双方を含む。電極部間の電気導電率は、導電性流体が半一体形態となっているときは、導電性流体が完全な一体形態(以下、単に「一体形態」と言う)となっているときに比べて小さいことは言うまでもない。
【0016】
本発明装置では、通常、キャビティは、導電性流体を満たすためのチャネルを含み、このチャネルに満たされた導電性流体が形態変形する。ここで、”形態変形”とは、導電性流体の一部が狭窄状態になること、導電性流体が2つの部分に分断されることはもちろん、導電性流体の一部が分離され、残る部分がさらに2つの部分に分断されることを含む。
また、本発明装置では、たとえば固体電極の組(電極部の組)を複数設けることもできる。この場合、当該電極部の組に対応させて、導電性流体は、キャビティの複数部位(電極部の各組に対応する位置)に設置される。各電極部は、導電性流体により、常に浸漬されているように構成することが好ましい。これにより、電極部の腐食が防止される。
【0017】
形態変形手段は、導電性流体に上記した形態変形を生じさせる。この形態変形手段は、一体形態の導電性流体の一部を、非導電性の流体または固体で置き換えることで、当該導電性流体を一体形態から半一体形態または非一体形態に形態変形させることができる。また、形態変形手段は、この置き換わった前記非導電性の流体または固体を、導電性流体から取り除くことで、当該導電性流体を半一体形態または非一体形態から一体形態に形態変形させることができる。
形態変形手段が、導電性流体を、非導電性の固体を用いて形態変形させる場合には、形態変形手段は、アクチュエータ等の機構を含むし、また非導電性の流体(液体または気体)を用いて形態変形させる場合には、次に述べるチャネル内圧を制御する機構を含む。
【0018】
導電性流体を、非導電性の流体を用いて形態変形させる場合、前記キャビティに、前記非導電性の流体を満たすためのチャネルを形成することができる。この場合には当該チャネルは、前記導電性流体を満たすためのチャネルに連通するように構成される。形態変形手段として、チャネル内圧制御手段を用いることができる。チャネル内圧制御手段は、非導電性の流体を満たすためのチャネル、導電性流体を満たすためのチャネルの少なくとも一方に接続される。チャネル内圧制御手段に、熱制御素子を用いる場合には、当該熱制御素子としてヒータを用いるとができるが、これには限定されずペルチェ素子等の冷熱発生手段を用いることもできる。もちろん、チャネル内圧制御手段として、圧電素子を用いたポンプ等、機械的な圧力制御手段を用いることもできる。
【0019】
チャネル内圧制御手段は、典型的には、2つ1組からなるチャンバーを用いて構成することができる。この場合、それぞれのチャンバーは、ヒータ等の流体を制御するための手段を内蔵し、前記導電性流体を満たすためのチャネルまたは前記非導電性の流体を満たすためのチャネルに接続される。もちろん、チャネル内圧制御手段を、2つ1組からなるチャンバーを用いて構成した場合であっても、上述の流体制御手段を一方にのみ内蔵するようにもできる。
【0020】
本発明装置では、固体電極は、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、またはプラチナ、あるいはこれらの何れかを含む金属から構成できる。また、導電性流体として、水銀、ガリウム、またはナトリウムカリウム等を用いることができる。本発明装置では、気体の非導電性流体として、窒素、アルゴン、またはヘリウム等の不活性気体、あるいはこれらを混合した気体、あるいは不活性気体ではないが水素等の気体を用いることができ、またフロン、油、アルコ−ル、水等の液体を用いることができる。もちろん、どのような導電性流体や非導電性流体を採用するかは、これら流体が相互間に化学反応しないこと、これら流体がチャネル壁面と化学反応を生じないこと、導電性流体が電極と反応しないこと、非導電性流体が内圧制御手段(例えば、内圧制御手段にヒータが内蔵されている場合にはヒータ)を構成する材料と反応しないこと等を考慮なければならない。
【0021】
本発明装置では、キャビティ(すなわち、各チャネルやチャンバー)を形作るための溝を複数の基板を貼り合わせて形成することができる。基板として半導体(たとえばシリコン)基板やセラミック(たとえばガラス)基板を用いることができる。
2枚の基板を貼り合わせる場合には、前記キャビティを形作るための溝を前記2枚の基板の一方または双方に形成することができる。
また、3枚以上の基板を貼り合わせる場合には、前記キャビティを形作るための溝を面接触した基板の一方または双方に形成し、または連通開口部を有する、内側に位置する基板の当該連通開口部により形成することができる。たとえば、3枚の第1の基板、第2の基板および第3の基板を貼り合わせる場合に、第1の基板の第2の基板側の面にヒータを形成し(ただし、溝は形成しない)、第2の基板にはチャンバーとなる連通開口を形成し、第3の基板の第2の基板側の面にはチャネルとなる溝を形成することができる(もちろん、この構成は、種々ある実施形態の1例にすぎないことは言うまでもない)。
後述する実施例では、シリコン基板とガラス基板の2枚の基板の組み合わせにより電気接点開閉装置を構成している。
【0022】
なお、本発明装置は、半導体装置製造技術、マイクロマシン製造技術等、既存の技術を用いて製造できる。たとえば、前記チャンバーや、前記導電性流体を満たすためのチャネルおよび前記非導電性の流体を満たすためのチャネルは、上記何れかの製造技術において用いられている方法(たとえば、リソグラフ法(写真焼き付け法))により形成することができる。
上記の半導体装置製造技術、マイクロマシン製造技術等を組み合わせることにより、本発明装置を多数個集積化した、電気接点開閉装置集積体を製造することができる。
【0023】
本発明の電気接点開閉方法(以下、「本発明方法」と言う)は、キャビティ内の隔離位置に露出して形成された2つ電極部の電気的開閉を、導電性流体により行う方法であって、前記キャビティ内において、前記導電性流体を一体形態に維持することで、当該電極部間を”閉”状態とし、前記導電性流体を半一体形態または非一体形態となるように形態変形させることで、前記2つの電極部間を”開”状態とすることを特徴とする。
【0024】
ここで、2つの電極部間を”開”状態とするときには、一体形態の導電性流体の一部を、非導電性流体または固体で置き換えることにより、当該導電性流体を一体形態から半一体形態または非一体形態に形態変形させる。また、この”開”状態の2つの電極部間を”閉”状態とするときには、前記導電性流体から、非導電性の流体または固体を取り除くことで、当該導電性流体を半一体形態または非一体形態から一体形態に形態変形させる。この場合に、各電極部を導電性流体により、常に浸漬しておくことが好ましい。
【0025】
本発明において、チャネル内圧制御手段が2つ1組からなるチャンバーである場合、それぞれのチャンバー同士はチャネルにより接続され、かつ各チャンバーの空間は、当該チャネル内の導電性流体により分断される。このとき、両チャンバーの空間同士は、完全に隔離されている必要はない。たとえば、両チャンバーに内圧差がある状態で、導電性流体が位置的に安定している場合において、一方のチャンバーから他方のチャンバーに非導電性流体が移動し、結果として両チャンバーに内圧差がなくなったとしても、本発明の実施には影響は生じない。
【0026】
【実施例】
図1〜図3は、本発明装置の第1実施例の概略構成図である。図1〜図3に参照されるように、電気接点開閉装置100は、第1チャンバー111、第2チャンバー112、導電性流体を満たすためのチャネル12、非導電性流体を満たすためのチャネル131,132,133を有しており、これらが本発明におけるキャビティを構成する。
【0027】
第1チャンバー111および第2チャンバー112は、それぞれ矩形状をなして、互いに距離を隔てて配置されており、各チャンバー111,112には、それぞれヒータ151,152が内蔵されている。第1チャンバー111の第2チャンバー112に対向する辺からは、チャネル131が第2チャンバー112に向けて形成され、第2チャンバー112の第1チャンバー111に対向する辺からは、2つのチャネル132,133が第1チャンバー111に向けて形成されている。第1チャンバー111と第2チャンバー112との間には、チャネル131,132,133に垂直に、チャネル12(本実施例では、長さがチャネル132,133間隔よりもやや長く、幅がチャネル131,132,133の2倍)が形成されている。チャネル12の両端には、電極部161,162がチャネル12の内部に露出して形成されている。なお、第1,第2チャンバー111,112、ヒータ151,152、チャネル131,132,133が、本発明装置における形態変形手段を構成している。
【0028】
本実施例では、導電性流体17としてガリウムを用いており、同じく非導電性流体18として窒素ガスを用いている。導電性流体17は、チャネル12に、その容積よりもやや多い量封入されている。非導電性流体18は、第1,第2チャンバー111,112、およびチャネル13,141,142に封入されている。図1〜図3では、第1チャンバー111側の非導電性流体18を符号181で示し、第2チャンバー112側の非導電性流体18を符号182で示してある。
【0029】
本実施例では、導電性流体17は、その表面張力により、チャネル12から、チャネル131,132,133に大量に流入することがないように、各チャネルの断面積の大きさや形状が設計され、ヒータ151や152の加熱時における窒素ガス圧等が決定される。導電性流体17の表面張力の大きさは、当該導電性流体17が接触する物質との”濡れ性”に影響され、”濡れ性”が大きければ表面張力の大きさは小さくなり、”濡れ性”が小さければ表面張力の大きさは大きくなる。したがって、チャネル131,132,133の内壁面を導電性流体17との”濡れ性”が小さくなるように形成しておくことで、導電性流体17が、チャネル12から、チャネル131,132,133に大量に流入しないようにできる。
【0030】
本実施例の接点開閉装置の動作を以下に説明する。
ヒータ151,152に通電していない状態(以下、「非駆動状態」と言う)では、図1に示すように導電性流体17がチャネル12全体に一体形状で充填されており、電極部161,162間は”閉”状態となっている。なお図1では、一体形状の導電性流体17の一部は、チャネル132,133側にやや溢れている。
【0031】
ここで、ヒータ151に電流I1を流して当該ヒータ151を加熱すると、チャンバー111の内圧が上昇し、非導電性流体17は、チャネル12とチャネル131との交差部C1部分において導電性流体17を押圧する。押圧が進むにしたがって、図2に示すように、導電性流体17の一部は交差部C1において非導電性流体181に置き換えられ、交差部C1における導電性流体17は狭窄する(すなわち、導電性流体17は一体形態から半一体形態に形態変形する)。この結果、電極部161,162間は”半開”状態になる。すなわち、電極部161,162間は導電率は低くなる。ここで、電流I1を調整することで、”半開”の程度を変化させ、電極部161,162間の導電率を適宜の値に安定させることも可能である。この場合、ヒータ152に電流I2を流し、当該ヒータ152を加熱することで、上記”半開”状態を制御することもできる。
【0032】
図2の”半開”状態から、さらに電流I1を流し続けると、図3に示すように、交差部C1における導電性流体17は非導電性流体181に完全に置き換えられ、導電性流体17は電極部161側と電極部162側とに2分される(すなわち、導電性流体17は図2の半一体形態から非一体形態に形態変形する)。この結果、電極部161,162間は”開”状態となる。この状態で、ヒータ151の通電を停止すると、チャンバー111の内圧が低下し、交差部C1において2分されていた非一体形態の導電性流体17は、半一体形態を経て一体形態に復帰する。すなわち、ヒータ151の通電を停止すると、電極部161,162間は”開”状態から、”半開”状態を経て”閉”状態に徐々に復帰する。この場合、ヒータ152に電流I2を流して、第2チャンバー112の内圧を速やかに高くすることで、導電性流体17を非一体形態から一体形態に急速に変形させる(すなわち、電極部161,162間を”開”状態から”閉”状態に急速に変化させる)ことができる。
【0033】
図1〜図3のいずれにおいても、電極部161,162は導電性流体17により、常に浸漬されいるので、電極部161,162の接触面が粗されることはないし、非導電性流体18に含まれる成分により腐食等を受けることはない。
本実施例では、非導電性流体18が収納されるチャネル131と、導電性流体17が収納されるチャネル121とは垂直に配置され、非導電性流体18が、柱状の導電性流体17を中間において”押し潰す”構成としたので、”半開”状態が可能となった。
【0034】
図4,図5は、第1実施例の変形例を示す概略構成図である。この変形例では、本実施例ではチャネル132,133のチャネル12側寄りに、1辺がチャネル12の幅に等しい平面視正方形状の導電性流体溜め141,142が備えられている。導電性流体17の量(容積)は、チャネル12全体の容積と、2つの導電性流体溜め141,142の容積と、チャネル12と各導電性流体溜め141との間のチャネル132の容積と、チャネル12と各導電性流体溜め142との間のチャネル133の容積との合計よりもやや少なくなるように設定されている。ヒータ151,152のいずれにも通電しないときには、図4に示すように、導電性流体17は一体形態となっている。ここで、ヒータ151に電流I1を流しチャンバー111の内圧を高くすると、図5に示すように、導電性流体17は導電性流体溜め141,142に流れ込む。この状態で、ヒータ151の通電を停止したとする。定常状態では、チャンバー111の内圧は、導電性流体17が導電性流体溜め141,142に移動した分、チャンバー112の内圧よりも低くなる。しかし、本変形例では、チャンバー111,112の容積は、導電性流体溜め141,142の容積に比べて十分に大きいので、チャンバー111とチャンバー112との内圧差はわずかである。導電性流体17のチャネル12の内壁面との接触抵抗、導電性流体溜め141,142内における導電性流体17の表面張力等による力は、上記内圧差に打ち勝つので、導電性流体17は図5の状態に安定する。
ヒータ152に電流I2を流し(ヒータ152を加熱して)、チャンバー212の内圧を、チャンバー211の内圧よりも、所定の値だけ高くすることで、電極部216,217間を図7の”開”状態から、図6の”閉”状態にすることができる。
【0035】
図6および図7は、本発明装置の第2実施例の概略構成図である。
図6および図7に参照されるように、電気接点開閉装置200は、第1チャンバー211、第2チャンバー212、導電性流体を満たすためのチャネル22、非導電性流体を満たすためのチャネル231,232を有しており、これらが本発明におけるキャビティを構成する。第1,第2チャンバー211,212の構成、およびそれぞれのチャンバー内に設けられたヒータ251,252の構成は、第1実施例における、第1,第2チャンバーおよび各ヒータと同様である。また、キャビティ内に封入される導電性流体27および非導電性流体28は、第1実施例と同様、ガリウムおよび窒素ガスである。
第1チャンバー211の第2チャンバー212に対向する辺からは、チャネル231が第2チャンバー212に向けて形成されている。また、第2チャンバー212の第1チャンバー211に対向する辺からは、チャネル231と同軸にチャネル232が第1チャンバー211に向けて形成されている。第1チャンバー211と第2チャンバー212との間には、チャネル231,232に垂直に、チャネル22が形成されている。すなわち、チャネル231,232からなる一直線状のチャネルとチャネル22とが、十字形状に配置されている。なお、本実施例でも、導電性流体を満たすチャネル22の両端には、電極部261,262がチャネル22の内部に露出して形成されている。
【0036】
図6,図7では、チャネル22の幅はチャネル231,232の2倍に形成されている。チャネル231の、チャネル22との交差部C2に近接した部分には、ピンからなるストッパS21が形成されており、チャネル232の、チャネル22との交差部C2に近接した部位には導電性流体溜め24が形成されている。導電性流体溜め24のチャンバー212寄りには、ピンからなるストッパS22が形成されている。図6,図7では、チャネル232の、交差部C2と導電性流体溜め24との間の部分を符号2321で示し、導電性流体溜め24と第2チャンバー212との間の部分を符号2322で示してある。
【0037】
なお、ストッパS21を形成せずに(または形成するとともに)、チャネル231の第1チャンバー211側の断面積を小さく形成することができる。また、ストッパS22を形成せずに(または形成するとともに)、チャネル232の第2チャンバー212側(すなわち、チャネル2322)の断面積を小さく形成することもできる。
導電性流体27の量は、チャネル22全体(C2部分を含む)の容積よりもやや多い量としてある。導電性流体27は、チャネル22の全体、導電性流体溜め24およびチャネル2321からなる領域に封入されている。
図6,図7では、第1チャンバー211側の非導電性流体28を符号281で、第2チャンバー212側の非導電性流体28を符号282で示してある。
【0038】
本実施例の接点開閉装置の動作を以下に説明する。
ヒータ251,252が非駆動状態にある場合には、図6に示すように導電性流体27がチャネル22全体に一体形状で充填されており、電極部261,262間は”閉”状態となっている。なお図6では、一体形状の導電性流体27の一部は、交差部C2部分でチャネル23側のストッパS21に達するようにせり出すとともに、チャネル232側にもややせり出している。
【0039】
ここで、ヒータ251に電流I1を流して、ヒータ251を加熱すると、チャンバー211の内圧が上昇し、非導電性流体281は、交差部C2部分において導電性流体22を押圧する。この押圧により、交差部C2部分の導電性流体22がチャネル232に押し出され、導電性流体溜め24に押し入れられる。このようにして、導電性流体27は、電極部261側と電極部262側とに2分される(すなわち、導電性流体27は図6の一体形態から図7の非一体形態に形態変形する)。この結果、電極部261,262間は”開”状態となる。この状態で、ヒータ251の通電を停止する。定常状態では、チャンバー211の内圧は、導電性流体27が導電性流体溜め24に移動した分、チャンバー212の内圧よりも低くなる。しかし、本実施例では、チャンバー211,212の容積は、導電性流体溜め14の容積に比べて十分に大きいので、チャンバー211とチャンバー212との内圧差はわずかである。導電性流体27のチャネル22の内壁面との接触抵抗、導電性流体溜め24内における導電性流体27の表面張力等による力は、上記内圧差に打ち勝つので、導電性流体27は図7の状態に安定する。
【0040】
ヒータ252に電流I2を流し(ヒータ252を加熱して)、チャンバー212の内圧を、チャンバー211の内圧よりも、所定の値だけ高くすることで、電極部216,217間を図7の”開”状態から、図6の”閉”状態にすることができる。
【0041】
本実施例の装置では、第1,第2チャンバー211,212に設けられたチャネルはそれぞれ1本である。したがって、本実施例の装置は、第1実施例の装置よりも小型化できる。また、チャネル22はその両端が閉じているので、相当の衝撃が加えられても導電性流体27がチャネル22から漏れ出る危険性はない。
【0042】
図8および図9は、本発明装置の第3実施例の概略構成図である。
図8および図9に参照されるように、開閉接点装置300は、第1チャンバー311、第2チャンバー312、導電性流体を満たすためのチャネル321,322、非導電性流体を満たすためのチャネル331,332,333を有しており、これらが本発明におけるキャビティを構成する。第1チャンバー311および第2チャンバー312の構成、およびそれぞれのチャンバー内に設けられたヒータ351,352の構成は、第1,第2実施例における、第1,第2チャンバーおよび各ヒータと同様である。また、キャビティ内に封入される導電性流体および非導電性流体は、第1,第2実施例と同様、ガリウムおよび窒素ガスである。
第1チャンバー311と第2チャンバー312との間には、第2チャンバー312に対向する辺(または、第2チャンバー312の第1チャンバー312に対向する辺)に垂直に、チャネル331,332,333が一直線状に形成されている。チャネル331と332との境界には、これらチャネルと垂直にチャネル321が形成され、チャネル332と333との境界には、これらチャネルと垂直にチャネル322が形成されている。すなわち、本実施例では、第2実施例のチャネル22に相当するチャネルが2つ設けられた構成をなしている。
【0043】
チャネル321の両端には、電極部3611,3612がチャネル321の内部に露出して形成され、チャネル322の両端には、電極部3621,3622がチャネル322の内部に露出して形成されている。
【0044】
図8,図9では、チャネル321,322の幅はチャネル331〜333の2倍に形成されている。チャネル331の、チャネル321との交差部C31に近接した部分には、ピンからなるストッパ31が形成され、チャネル333の、チャネル322との交差部C32に近接した部分には、ピンからなるストッパS32が形成されている。
なお、ストッパS31やS32を形成せずに(または形成するとともに)、チャネル331の断面積や、チャネル333の断面積を小さく形成することもできる。
【0045】
導電性流体37の量は、チャネル321,322全体(C31,C32部分を含む)の容積よりもやや少なくしてある。導電性流体37は、チャネル321,322にそれぞれ封入されている。
図8,図9では、第1チャンバー311側の非導電性流体38を符号381で、第2チャンバー312側の非導電性流体38を符号382で示してある。
【0046】
本実施例の接点開閉装置の動作を以下に説明する。
ヒータ351,352が非駆動状態にある場合において、図8に示すように導電性流体371がチャネル321全体に一体形状で充填され、導電性流体372がチャネル322の交差部C32を除く領域に非一体形状で充填されている。これにより、電極部3611,3612間は”閉”状態となり、電極部3621,3622間は”閉”状態となっている。
【0047】
ここで、ヒータ351に電流I1を流して、ヒータ351を加熱すると、チャンバー311の内圧が上昇し、非導電性流体381は、導電性流体371のC31部分を押圧する。この押圧により、導電性流体371のC31部分は、チャネル333を介してC31部分に押し出され、導電性流体371は、電極部3611側と電極部3612側とに2分される(すなわち、導電性流体371は図8の一体形態から図9の非一体形態に形態変形する)。一方、導電性流体371のC31部分にもともと存在していた導電性流体は、ストッパS32に突き当たって停止すると同時に、導電性流体372と融合する(すなわち、導電性流体372は図8の非一体形態から図9の一体形態に形態変形する)。この結果、電極部3611,3612間は”開”状態となり、電極部3621,3622間は”閉”状態となる。この状態で、ヒータ351への通電を停止する。定常状態では、チャンバー311の内圧は、導電性流体371の一部が導電性流体372側した分、チャンバー312の内圧よりも低くなる。しかし、本実施例では、チャンバー311,312の容積は、チャネル332と比べて十分に大きいので、チャンバー311とチャンバー312との内圧差はわずかである。導電性流体のチャネル333の内壁面との接触抵抗、導電性流体の表面張力等による力は、上記内圧差に打ち勝つので、導電性流体371,372は図9の状態に安定する。
【0048】
ヒータ352に電流I2を流し(ヒータ352を加熱して)、チャンバー312の内圧を、チャンバー311の内圧よりも、所定の値だけ高くすることで、電極部3611,3612間を図9の”開”状態から、図8の”閉”状態にし、電極部3621,3622間を図9の”閉”状態から、図8の”開”状態にすることができる。
【0049】
上記した第2実施例におけるチャネル22の両端の電極部261,262近傍、および第3実施例にけるチャネル321,322の各両端の電極部3611,3612,3622,2622近傍に、導電性流体溜めを形成することができる。上記チャネルからの導電性流体の脱落の懸念があるような場合には、このような導電性流体溜めを形成することが有効である。図10は、第2実施例において、チャネル22の電極部261に、導電性流体溜め29を形成した場合を示す図である。この導電性流体溜め29の形成により、チャネル22内の導電性流体27はチャネル22内に留められる。
【0050】
本発明装置の具体的な製造プロセスを、以下に説明する。
ここでは、シリコン基板とガラス基板とを貼り合わせて接点開閉装置を製造する方法を説明するが、本発明装置はこの方法の他、シリコン基板等の半導体基板同士の組み合わせること、ガラス基板同士の組み合わせること等による、他の方法により製造することができる。
【0051】
以下、第2実施例で示した電気接点開閉装置を製造する場合を例に、(1)電極部261,262、ヒータ251,252を形成する工程、(2)シリコン基板とガラス基板のいずれか、または双方に、キャビティ(2つのチャンバー211,212、各チャネル22,231,232、導電性流体溜め24)に相当する溝を形成する工程、(3)導電性流体27を設置する工程、(4)非導電性流体28を設置するとともにシリコン基板とガラス基板とを貼り合わせる工程、(5)ダイシングする工程を、説明する。
【0052】
(1)シリコン基板として4インチのウェーハを用い、このシリコン基板に、導電層と絶縁層とを組み合わせて、電極部261,262(固体電極)、ヒータ251,252を形成する。導電層としてスパッタによるアルミニウム薄膜、絶縁層としてCVDによる酸化シリコンを用いた。この回路の形成法は、半導体プロセスとして周知である。この場合、上記固体電極261,262やヒータ251,252の形成とともにに、トランジスタ等を用いたヒータ駆動回路を含む各種能動回路や、抵抗等の受動回路をシリコン基板上に形成することもできる。
【0053】
導電性流体(ここでは、ガリウム)に接触する電極部261,262として、アルミニウムを用いた場合には、アルミニウム表面が導電性流体と反応して腐食が進みやすく、装置の長期的な信頼性を得ることができないことがある。したがって、この電極部(すなわち、固体電極のチャネル側に露出する部分)には、タングステン、モリブデン等のガリウムに反応しにくい材料からなる層を形成することが好ましい。本製造例では、固体電極のチャネル側に露出する部分に、接着層としてチタン膜を形成し、このチタン膜上にコンタクト層としてタングステン膜を形成することで、電極部261,262を形成した。
【0054】
また、電極部261,262とガリウムとの、より低いコンタクト抵抗を得るためには、相互の接着面積を大きくすることが好ましい。第2実施例(図6,図7)では、説明の便宜上、電極部261,262は、チャネル22の両端近傍にのみ設けて示してあるが、電極部261,262は、交差部C2の近傍まで延設することが好ましい。また、第2実施例では、電極部261,262は、チャネル22内に突出する形状として示してあるが、電極部261,262と導電性流体との接触面積を大きくとるために、電極部261,262を、チャネル22の内壁に面状に形成することもできる。
【0055】
ヒータ251252はタングステン、モリブデン薄膜を用いて、電極部電極部261,262と同様にシリコン基板上に形成した。発熱効率および放熱効率を高めるために、厚みを約0.3μm、ライン幅を約0.1mmとし、1辺が0.4mmの正方形領域に、複数回折り繰り返して形成した。なお、図6,図7では、説明の便宜上、折り返しは2回として示してあるが、実際には10回とした。
【0056】
ヒータ251,252は、発熱効率および放熱効率をより高めるために、その下部をエッチングして、チャンバー211,212内で浮かすことが有効である。本製造例では、ヒータ251,252部分を除く領域を、酸化シリコンまたは窒化シリコンでマスクし、水酸化カリウムで上記領域内のシリコン部分を異方性エッチングし、これにより、ヒータの下部に、逆ピラミッド形状の空洞を形成することで、ヒータをチャンバー内で浮かした。なお、ヒータが形成される基板として熱伝導率が小さい材料を用いることで、ヒータ251,252をチャンバー211,212内で浮かさないようにもできる。
【0057】
(2)キャビティ(2つのチャンバー211,212、各チャネル22,231,232、導電性流体溜め24)に相当する溝は、シリコン基板とガラス基板のいずれか、または双方に形成することができる。本製造例では、上記したヒータの下部に空洞を異方性エッチングにより形成する際に、チャネル22,231,232となる溝をシリコン基板上に形成した。ここでは、チャネル22の溝幅を0.2mm、チャネル231,232の溝幅を0.1mmとした。各溝は断面が逆二等辺三角形状であり、その深さは、溝幅が0.2mmの場合には約0.14mm、溝幅が0.1mmの場合には約0.07mmとなる。
【0058】
本製造例では、チャンバー211,212用の溝をシリコン基板側とガラス基板側の各表面に対向させて形成し、両基板を貼り合わせることで、当該チャンバー211,212を形成した。シリコン基板側とガラス基板側の双方にチャンバー用の溝を形成することで、ヒータ251,252を各チャンバー211,212内の空間に浮かすことができる。
【0059】
チャンバー用の溝は、1辺が0.5mmの正方形状とし、シリコン基板側に形成する溝の深さは0.1mmとし、ガラス基板側に形成する溝の深さは0.1mmとした。シリコン基板側に形成する溝の深さと、ガラス基板側に形成する溝と深さとが異なると、非導電性流体がチャンバー用の溝に出入りする際に、ヒータが当該流体による応力を受けやすいので、本実施例のように、両溝の深さを同じとすることが好ましい。。なお、シリコン基板側の溝はKOH異方性エッチングにより形成し、ガラス基板側の溝はサンドブラストにより形成した。
また、導電性流体溜め24用の溝をシリコン基板側にのみ形成した。この溝は、1辺が0.2mmの正方形状とし、深さは0.1mmとした。なお、本製造例では、導電性流体溜め用の溝は、当該溝をシリコン基板側のチャンバー用溝の形成と同時に形成した。
【0060】
本製造例では、各チャネル用の溝を、シリコン基板に形成したが、ガラス基板側に形成することもできる。ガラス基板側に形成する場合、レジストパターンをガラス基板表面に形成しておき弗化水素水で化学的にエッチングする方法、またはサンドブラストで機械的に掘削する方法が採用できる。
エッチングによる場合には、正確な寸法で溝形成ができ、また溝の内壁面を滑らかにすることができる。
一方、サンドブラストによる場合には、掘削した面には微小な凹凸が形成されるが、溝形成を短時間で行うことができる。
導電性流体が設置されるチャネル、あるいは導電性流体が移動するチャネルとして、内壁面に微小な凹凸を積極的に形成する場合もあろうが、通常、これらのチャネルは、内壁面が滑らかになるように、エッチングにより形成される。なお、本製造例では、ストッパS21,S22はガラス基板側に、エッチングにより形成した。
【0061】
(3)導電性流体27(すなわちガリウム)をチャネル21に相当する溝に設置する工程は、窒素雰囲気中で行う。
ガリウムを液体状態でチャネル22に相当する溝に設置する場合には、液体精密定量吐出装置(ディスペンサ)を用いることもできるし、メタルマスク印刷法を用いることもできる。
【0062】
液体精密定量吐出装置は、シリンジと呼ばれる注射器のような容器に液体を入れ、シリンジ内に微小な窒素を送り込んで、液体を、シリンジ外部に吐出させる装置である。この装置では、最小で10万分の1ccの流体を吐出することができ、ロボットと組み合わせることで、所定の位置に最小0.1mm幅で液体を設置することが可能である。この方法は、ガリウムを正確な量、設置できること、ロボットを用いることでさまざまな形状の溝に対して1つの装置で対応できること等の利点を有する。この装置を用いて、チャネル22に相当する溝に、ガリウムを幅0.2mm、長さ約0.5mmにわたり設置した。
【0063】
メタルマスク印刷による方法では、所望の位置に0.15mm幅、長さ約0.5mmの穴を開けた0・2mm厚のメタルマスクを用意し、これをシリコン基板に形成したチャネル22に相当する溝に位置合わせして、ガリウムをスキージで印刷した。一般には、ガリウムのような粘度の低い液体をこの方法を用いて印刷することは難しいが、本製造例では、印刷されるシリコン基板にすでに溝が形成されているので、ガリウムが流れて広がることがなく容易に設置することができた。メタルマスク印刷による方法は、ガリウムの設置量の正確さは、液体精密定量吐出装置を用いる方法に比べてやや劣るものの、高価な装置を必要とせずに初期投資を低く抑えることができるという利点がある。
【0064】
なお、本製造例のように、導電性流体27としてガリウムを用いた場合には、所定の溝に導電性流体を設置する作業は、一般には30℃以上の雰囲気中で行うか、または液体精密定量吐出装置を用いた方法の場合には、シリンジ内のガリウムを30℃以上に加熱しておく必要がある。導電性流体として融点が低い物質を用いる場合には当該融点に応じて上記雰囲気温度やシリンジ内の導電性流体の温度を定めることは言うまでもない。
【0065】
ガリウムを固体状態で所定の溝に設置する場合には、ガリウムシートの打ち抜きによりその設置ができる。具体的には、すでにチャネル22に相当する溝(幅0.2mm、長さ5.0mm)が形成されているシリコン基板上にガリウムシートを置き、当該溝と同一幅、同一長さの突起を形成した金属のジグを、前記溝に前記突起を位置合わせして、当該溝内に固体ガリウムを押し込む。ガリウムを安定した固体として扱うには、ガリウムまたは雰囲気が30℃以下であればよく、したがってこの設置方法では、室温での作業できるという利点を有している。
【0066】
(4)シリコン基板とガラス基板とを貼り合わせる工程は、窒素雰囲気中で行う。非導電性流体28は窒素ガスであるので、この貼り合わせと同時に、非導電性流体28は、キャビティ内の空間部に充填される。
シリコン基板とガラス基板の双方または一方の貼り合わせ面に紫外線硬化型の樹脂を塗布し、精密ボンディング装置を用いて、位置合わせをして加圧を行い、この後紫外線を照射して、両基板の貼り合わせを行うことができる。また、紫外線硬化型樹脂に代えて、熱硬化型の樹脂を用いて、同様の貼り合わせを行うこともできる。
【0067】
また、チャネル22,231,232となる溝やチャンバー211,212となる溝の縁周囲にガスケットとして作用するシリコン樹脂を塗布し、硬化させ、位置合わせする。そして、ネジなどの手段により、ガラス基板とシリコン基板とを加圧することで、両基板の貼り合わせを行うこともできる。この方法では、位置合わせの不備が生じたときに、簡単に取り外しができ、再度の位置合わせができる、という利点がある。
【0068】
シリコン基板とガラス基板との貼り合わせをさらに強固にしたい場合には、陽極酸化接合法を用いることもできる。この方法では、シリコン基板とガラス基板とを位置合わせした後、これを450℃に昇温し、両基板間に50ないし100ボルトの直流電圧を印加することで、両基板を貼り合わせることができる。この方法は、前記した樹脂接着による場合に比べて高い密閉性を得ることができる。
【0069】
(5)電気接点開閉置が単独である場合には、ガラス基板は、1つの接触接点装置について1つである。また、複数の開閉接点装置が1組として製造される場合(この場合には、閉接点装置間には、配線がすでになされているであろう)には、ガラス基板は、当該1組接触接点装置について1つである。ダイシングは、ガラス基板を単位に行われる。
本発明装置は、上述したように、半導体と同様のプロセスにより構成できるので、たとえば、シリコン基板として4インチのものを使用した場合には、当該シリコン基板から約3000個以上の接点開閉装置を製造することができる。
【0070】
【発明の効果】
本発明では、接点開閉は、導電性流体同士の分離または融合により行われる。したがって、開閉接点には、従来装置(露出した固体電極と導電性流体との接触により接点開閉を行う装置)におけるような電極表面の物理的または化学的変化(金属疲労や腐食)は生じないので、信頼性が極めて高い。また、導電性流体の形態変移の機構を工夫することで(たとえば、第1実施例参照)、電極部間の導電率を可変とすることができる。
もちろん、従来のリードリレーのような、リードを持たないので、摩擦による経時変化や、機械疲労による破壊は皆無である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例における、電極部間が”閉”状態の様子を示す図である。
【図2】本発明の第1実施例における、電極部間が”半開”状態の様子を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例における、電極部間が”開”状態の様子を示す図である。
【図4】第1実施例の変形例における、極部間が”閉”状態の様子を示す図である。
【図5】第1実施例の変形例における、極部間が”開”状態の様子を示す図である。
【図6】本発明の第2実施例における、電極部間が”閉”状態の様子を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例における、電極部間が”開”状態の様子を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例における、電極部間が”閉”状態の様子を示す図である。
【図9】本発明の第3実施例における、電極部間が”開”状態の様子を示す図である。
【図10】本発明の第2実施例における、導電性流体を満たすためのチャネルに導電性流体溜めを形成した場合を示す図である。
【図11】従来のマイクロリレーを示す図である。
【符号の説明】
100 電気接点開閉装置
111 第1チャンバー
112 第2チャンバー
12,131,132,133 チャネル
151,152 ヒータ
161,162 電極部
17 導電性流体
18,181,182 非導電性流体
Claims (7)
- 導電性流体で満たされた細長の第1のチャネルと、
前記第1のチャネルの中間部分に連通した一方のチャネルと、前記導電性流体の一部を移動させるために前記第1のチャネルに連通した他方のチャネルとを有する第2のチャネルと、
前記第2のチャネルにおける前記第1のチャネルとは反対の側に接続されるチャネル内圧制御手段と、
前記第1のチャネルの両端部に露出するように配設された一対の電極部と、を備え、
前記チャネル内圧制御手段により、前記第2のチャネルにおける前記一方のチャネルの内圧を上昇させて、この一方のチャネルに収容された非導電性流体で前記第1のチャネル内の前記導電性流体の一部を前記第2のチャネルにおける前記他方のチャネル内に押し出すとともに、前記第1のチャネル内の前記導電性流体の一部を前記非導電性流体に置き換え、これによって、前記第1のチャネル内の前記導電性流体を一体形態から非一体形態に形態変形させることを特徴とする電気接点開閉装置。 - 前記チャネル内圧制御手段がヒータを有し、該ヒータにより前記第2のチャネルの内圧を変化させることを特徴とする請求項1に記載の電気接点開閉装置。
- 前記電極部は、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、またはプラチナ、あるいはこれらの何れかを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気接点開閉装置。
- 前記導電性流体が、水銀、ガリウム、またはナトリウムカリウム合金のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気接点開閉装置。
- 前記第1のチャネルが複数枚の基板を貼り合わせることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気接点開閉装置。
- 前記複数枚の基板のすべてが半導体基板、セラミック基板、ガラス基板、あるいはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項5に記載の電気接点開閉装置。
- 前記電気接点開閉装置は2枚の基板を貼り合わせることにより形成され、前記第1のチャネルは少なくとも該2枚の基板の一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気接点開閉装置。
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