JP4181247B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関のための燃料噴射弁であって，弁保持体に固定的に締付けられた弁体とテンションナットとを備えており，弁体内には弁部材が孔内で軸方向に摺動可能に案内されており，その場合，孔が半径方向に拡張された圧力室を備えており，この圧力室内には，孔と並んで延びている少なくとも１つの供給通路が開口しており，かつ，テンションナットが，円錐形に形成された内側の環状肩で，圧力室の高さのところに配置されている弁体の環状段部に当接して，弁体を弁保持体に締付けている形式のものに関する。
【０００２】
【従来の技術】
この種の燃料噴射弁は例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第１９５２３２４３号明細書に開示されている。
【０００３】
この燃料噴射弁では，弁体を軸方向で保持体に締め付けるテンションナットの環状肩の，保持体から遠い方の端部と，テンションナットと協働する，弁体の環状段部とが円錐形に形成されており，その場合，円錐形の環状段部と弁部材軸線とが挟む角度は，円錐形の環状肩と弁部材軸線とが挟む角度に比して小さい。
【０００４】
この形式で，局部化され，集中され，かつ同時に圧力負荷に抗して作用する力を弁体へ導入することができる。
【０００５】
しかし，この種の燃料噴射弁では，環状段部と環状肩とが互いに異なる円錐角を有する円錐形に構成されているにもかかわらず，テンションナットの締付け時に摩擦半径の変化を完全には回避できないことが，問題点として生じる。要するに，組付け前にはテンションナットと弁体との円錐面の円錐角が互いに異なっているためノズルとテンションナットとの間に線接触は生じるが，しかし，テンションナットの締付け時には，例えばノズルに比して極めて著しく柔らかいテンションナットの肩が周方向で種々異なって変形するか又はノズルの肩に種々異なって当接することにより，平面及び傾斜面の誤差が生じて，局所的に互いに異なる摩擦半径が生じてしまう。このことにより，摩擦半径と，その結果としてテンションナットの締付けトルクを介して生じる合力とが変化する。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は，摩擦半径と，その結果としてテンションナットの締付けトルクを介して生じる合力とが可能な限りコンスタントに維持されるように，冒頭に記載した燃料噴射弁を改良することにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記課題は本発明によれば，請求項１に記載したように，弁体の環状段部がテンションナットの環状肩に面した側で，弁部材軸線から所定の間隔をおいて環状に延びる支持点を生じるように，湾曲して形成されており，この支持点に，円錐形の環状肩が組立状態で当接していることにより解決される。
【０００８】
【発明の効果】
環状段部が環状肩に面した側で，弁部材軸線から所定間隔をおいて環状に延びていて組立状態で円錐形の環状肩を当接させる支持点を形成するために，湾曲して形成されているようにした本発明による構成の有する特別大きな利点は，摩擦半径が環状段部のジオメトリ的な設計により決定されるため，摩擦半径が正確にコンスタントに維持されることにある。この摩擦半径は特に組立時でも，さらにはテンションナットの締付け状態でもコンスタントに維持され，その結果，テンションナットの締付けトルクにより生じる精密に規定された合力が弁体に作用する。
【０００９】
摩擦半径が精密に設定される他に，特別有利には，環状に延びる支持点だけに環状肩が当接するため，環状段部及び環状肩のわずかな位置の不正確さが，力の配分に，特にテンションナットにより弁体に作用する合力にネガティブに作用することはない。
【００１０】
環状段部が環状肩に面した側で湾曲して形成されていることについては，種々多様な構成が考えられる。
【００１１】
有利な１構成では，環状段部が，断面で見てほぼ円弧形の形状を有しており，この形状に，環状肩が環状に延びる支持点を形成して接線状に当接する。
【００１２】
環状段部の断面で見て円弧形の形状により，特に有利に，均一なかつ規定された力の導入が可能である。
【００１３】
別の有利な１構成では，環状段部が，角度を成して互いに隣接する少なくとも２つの面を備えており，その境界縁が環状に延びる支持点を形成している。
【００１４】
有利にはテンションナットの円錐形の環状肩は互いに異なって傾斜した２つの環状肩領域を備えており，その半径方向外側に位置する環状肩領域が環状に延びる支持点上に当接しており，かつ，弁部材軸線に対して比較的小さな角度を有していてエッジを介してこの環状肩領域に続いて設けられた半径方向で内側に位置する環状肩領域は無接触である。
【００１５】
【発明の実施の形態】
次に，図示の若干の実施例ににもとづいて本発明の構成を具体的に説明する。
【００１６】
図１に示した内燃機関のための燃料噴射弁は弁体１を有しており，この弁体は中間板３をはさんで，スリーブ状のテンションナット５によって，軸方向に弁保持体７に締付けられている。
【００１７】
弁体１は軸方向の孔９を備えており，この孔内には，ピストン状の弁部材１１が軸方向に摺動可能に案内されており，この弁部材はその一端で，弁体１の燃焼室側の円頭部１５の内向きの弁座１３と協働しており，この円頭部１５には弁座１３の下流に複数の噴口が配置されている。
【００１８】
弁体１は回転対称的な構成部材であって，上方の太い部分１９と，下方の細いシャフト部分２１とを備えており，このシャフト部分２１の燃焼室側の端部は円頭部１５により閉鎖されている。孔９の，上方の太い部分１９に配置された部分は弁部材１１の案内部２５のための案内孔２３として形成されている。
【００１９】
孔９の，シャフト部分２１内で延びる部分と，弁部材１１の軸部とは，弁座１３まで達する環状隙間２７を形成している。上方の太い部分１９内では，下方のシャフト部分２１の近くで，孔９の案内孔２３と環状隙間２７との間に，増径されたバックテーパ状の圧力室２９が配置されており，その外側の制限壁３１は有利には湾曲していて，環状隙間２７内へ移行している。弁保持体７の袋孔内に挿入されたばね３３が噴射弁の閉鎖時にばね受け３５を介して弁部材１１を弁座１３に当接せしめる。
【００２０】
燃料供給のために，弁体１の太い部分１９内にはその上方の端面を起点として，供給通路３７が案内孔２３と並んで圧力室２９へ延びている。この供給通路３７は上方から圧力室の側部へ開口している。圧力室２９の直径を可能な限り小さくし，かつ開口の横断面を十分に大きくするために，供給通路３７は案内孔２３に対して斜めに延びており，その場合，弁体１の上方の端面における供給通路の入口と弁部材軸線との間隔は，圧力室２９内への供給通路の入口と弁部材軸線との間隔に比して大きく，従って，中間壁３９の厚さは，供給通路３７の開口領域の近くで，かつ案内孔２３から圧力室２９への移行部の近くで，小さくなっている。
【００２１】
弁体１の上方の太い部分１９にかぶさって雌ねじ山４１で弁保持体７の雄ねじ山４３に螺合しているスリーブナットとして形成されたスリーブ状のテンションナット５は内側の円錐形の環状肩４４を備えており，この環状肩には，弁体がその上方の太い部分１９から下方の細長いシャフト部分２１への移行部の領域内の湾曲した環状段部４５で支持されている。
【００２２】
図１及び図２から分かるように，燃料噴射弁の１実施例では，縦断面で見て，環状段部４５がほぼ円弧形の形状を有しており，この形状に，環状肩４４が環状に延びる支持点６０を形成して接線状に当接している。
【００２３】
この場合，テンションスリーブ５の円錐形の環状肩４４は弁部材軸線７０に対して互いに異なって傾斜した２つの環状肩領域を有しており，その半径方向外側に位置する環状肩領域５２が環状段部４５に接線状に当接している。この環状肩領域５２には，エッジ５５を介して半径方向内側に位置していて弁部材軸線７０と比較的小さな角度を挟む環状肩領域５７が続いており，この環状肩領域５７は常に無接触である。
【００２４】
環状段部４５と，これに接線状に当接する環状肩４４とのこの構成により，弁部材軸線７０に関してコンスタントな摩擦半径Ｒreib が生じ，この摩擦半径は特に組立てられた状態でもそのまま正確に維持され，このことにより，テンションナット５の締付けトルクを介して生じて弁体１に作用する合力がコンスタントに維持される。
【００２５】
図３に示す別の実施例では，環状段部４５が環状肩４４に面した側に，角度を成して互いに隣接した２つの面４６，４７を備えており，その境界縁が環状に延びる支持点６０を形成している。この境界縁に環状肩４４が当接しており，このことにより，やはりこの場合も，規定された摩擦半径Ｒreib が可能となる。
【００２６】
両面のうちの一方の面４７は弁部材軸線７０に近い方の側で，弁部材軸線７０に対して直角に延びる環状端面４８へ移行しており，この環状端面により，テンションナット５がこの領域内で環状段部４５に当接しないことが保証される。
【００２７】
環状段部４５及び環状肩４４の上述の構成によって，予め規定された摩擦半径Ｒreib がテンションナット５の組付け時に極めて正確に維持されることが可能であり，このことにより，テンションナット５の締付けトルクを介して生じる合力が，組立時にコンスタントな規定された値を維持することが保証される。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明にもとづく燃料噴射弁の燃焼室側の部分の縦断面図である。
【図２】本発明にもとづく燃料噴射弁の環状段部と，これに当接する環状肩との拡大縦断面図である。
【図３】本発明の別の実施例にもとづく燃料噴射弁の環状段部と，これに当接する環状肩との拡大縦断面図である。
【符号の説明】
１ 弁体， ５ テンションナット， ７ 弁保持体， ９ 孔， １１ 弁部材， ２９ 圧力室， ３７ 供給通路， ４４ 環状肩， ４５ 環状段部， ４６ ，４７ 互いに隣接した面， ５２ 環状肩領域， ５５ エッジ，５７ 環状肩領域， ６０ 支持点， ７０ 弁部材軸線

Claims (1)

1. 内燃機関のための燃料噴射弁であって，弁保持体（７）に固定的に締付けられた弁体（１）とテンションナット（５）とを備えており，弁体内には弁部材（１１）が孔（９）内で軸方向に摺動可能に案内されており，その場合，孔（９）が半径方向に拡張された圧力室（２９）を備えており，この圧力室内には，孔（９）と並んで延びている少なくとも１つの供給通路（３７）が開口しており，かつ，テンションナット（５）が，円錐形に形成された内側の環状肩（４４）で，圧力室（２９）の高さのところに配置されている弁体（１）の環状段部（４５）に当接して，弁体を弁保持体（７）に締付けている形式のものにおいて，環状段部（４５）が環状肩（４４）に面した側で，弁部材軸線から所定の間隔（Ｒreib ）をおいて環状に延びる支持点（６０）を生じるように，湾曲して形成されており，この支持点に，円錐形の環状肩（４４）が組立状態で当接しており、環状段部（４５）が，角度を成して互いに隣接する少なくとも２つの面（４６，４７）を備えており，その境界縁が環状に延びる支持点（６０）を形成していることを特徴とする燃料噴射弁。

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