以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1〜図5は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体の製造方法を順に説明するためのものである。本実施の形態では、これらの図をもとに、まず窒化物半導体の製造方法から説明することとする。ここでいう窒化物半導体とは、ガリウム(Ga)と窒素(N)とを含んだ窒化ガリウム系化合物のことであり、例えばGaN,AlGaN(窒化アルミニウム・ガリウム)混晶,あるいはAlGaInN(窒化アルミニウム・ガリウム・インジウム)混晶などが挙げられる。これらは、必要に応じてSi(シリコン),Ge(ゲルマニウム),O(酸素),Se(セレン)などのIV族およびVI族元素からなるn型不純物、または、Mg(マグネシウム),Zn(亜鉛),C(炭素)などのII族およびIV族元素からなるp型不純物を含有している。
まず、図1(A)に示したように、例えばAl2 O3 (サファイア)からなる基板100を用意する。基板100としては、その他にもSi(ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、GaAs(砒化ガリウム)、MgAl2 O4 (マグネシウム・アルミニウム複合酸化物)、LiGaO2 (リチウム・ガリウム複合酸化物)およびGaN等を用いることができる。この基板100の上(例えば(0001)面)に、GaN,AlN,AlGaNなどからなるバッファ層100aを形成する。次に、バッファ層100aの上にGaN:Siを成長させ、例えば厚さ2μmの種結晶層101を形成し、更にその上に、例えば厚さ0.9μmのSiO2 (二酸化ケイ素)膜102、厚さ1.3μmのフォトレジスト膜103を順次形成する。なお、SiO2 膜102は、SiX NY (窒化珪素,x,yは任意の値)により形成してもよく、あるいはSiO2 およびSiX NY の積層膜として形成してもよい。
ところで、本実施の形態においては、窒化物半導体の結晶層の成長は、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition :有機金属化学気相蒸着)法を用いて行う。その際には、例えば、Ga(ガリウム)の原料ガスとしては(CH3 )3 Ga(トリメチルガリウム,TMG)、アルミニウムの原料ガスとしては(CH3 )3 Al(トリメチルアルミニウム)、インジウムの原料ガスとしては(CH3 )3 In(トリメチルインジウム)、窒素の原料ガスとしてはアンモニアをそれぞれ用いる。また、Si(ケイ素)の原料ガスとしてはモノシランを用い、Mg(マグネシウム)の原料ガスとしては(C5 H5 )2 Mg(ビス=シクロペンタジエニルマグネシウム)を用いる。
次に、フォトレジスト膜103をフォトリソグラフィー技術を用いてストライプ状にパターニングする。このパターンは、例えば外1に示した方向に展延する幅2μm、周期13.5μm程のサイズに形成される。なお、外1に示した方向は、以降の明細書中では<1−100>と記す。
次に、図1(B)に示したように、フォトレジスト膜103をマスクとしてSiO2 膜102にエッチングを施し、SiO2 膜102を部分的に除去してマスクパターン104を形成する。なお、マスクパターン104の形成後、フォトレジスト膜103は酸素アッシング、アセトンによる処理などにより除去される。
次に、図1(C)に示したように、例えばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)などのドライエッチングを行い、種結晶層101およびバッファ層100aのマスクパターン104に覆われていない部分を除去することにより、互いに離間したストライプ状の種結晶部105が形成される。
続いて、同じくマスクパターン104を用いてドライエッチングを行い、基板100の表面も僅かに、例えば200nm程度除去することにより、図1(D)に示したような溝部106を形成する。溝部106が形成されていない場合には、後述の種結晶部105からの横方向成長時に成長層が基板100の表面に接触し、応力歪みによる欠陥が層内に発生する虞があるためである。次いで、例えばフッ化水素水を用いて、SiO2 からなるマスクパターン104を除去する。
次に、種結晶部105を基礎としてGaN:Siを成長させることにより、窒化物半導体層107を形成する。その際には、成長条件を2回以上変えて結晶を成長させるが、本実施の形態では、図2に示したように成長温度を2段階に分けて行う。
まず第1段階では、成長温度を1040℃以下、例えば1030℃とする。なお、成長温度は、使用するサセプタやヒータ線の種類、熱電対の相対位置によって変化するために一概に規定されるものではなく、本明細書においても測定系の違いによる誤差を許容するものとする。但し、こうした種結晶を基礎として横方向成長を行う際の一般的な成長温度は1060℃前後であり、ここではほぼ1040℃以下の比較的低温であることが望ましい条件である。このとき、GaN:Siの結晶は、種結晶部105の上面および側面から上方向および横方向に対して比較的低速で等方的に成長する。なお、本明細書における横方向とは、窒化物半導体層107自身の層面にほぼ平行な方向を指している。
これにより、図3(A)に示したように、層厚み方向の断面形状が台形型の低温成長部107aが形成される。低温成長部107aの種結晶部105からの高さHおよび幅Wは特に制限されないが、後述するように高さHは窒化物半導体層107の表面欠陥密度に関係しており、例えば0.5μm以上の所定値に高さHが達するまで成長させることが好ましい。成長温度1030℃の場合には、成長速度の(上方向:横方向)のレート比がほぼ1:2となり、例えば10分後には低温成長部107aの断面は高さHが0.5μm,幅Wが1.0μmの台形型となる。なお、その斜辺は、横方向成長の成長面にあたり、この面が外2に示した結晶面からなるファセット(facet) となっている。なお、外2に示した結晶面は、以降の明細書中では{11−22}と記す。
続く第2段階では、成長温度を1070℃以上、かつ、第1段階の成長温度よりも高温に設定する。ここでは、例えば1070℃に昇温して結晶成長を行う。GaN:Si結晶の成長は全般に第1段階よりも速い速度で進行するが、種結晶部105の上方向よりも横方向の方が成長速度が速いため主に横方向に成長する。ここでは、成長速度の(上方向:横方向)のレート比がほぼ1:10である。これによって、高温成長部107bが形成される。従って、図3(B)に示したように、高温成長部107bでは、高さHは第1段階から特に増加せず、幅Wが急速に増大する。更に成長を続けると、種結晶部105の間に対応する領域のほぼ中央で高温成長部107b同士が会合し、連続した1つの層が形成される。表面が平坦となるまで結晶を成長させれば、図4に示した窒化物半導体層107が完成する。
図5(A)は、窒化物半導体層107に結晶部105から転位が伝播する様子を表している。本実施の形態の窒化物半導体層107においては、種結晶部105の直上の領域Aは主に低温成長部107aからなり、ここでは図示しないが、その表面にヒロックはほとんど発生しない。また、この領域における貫通転位は、種結晶部105の上面を拡大するようにして成長した窒化物半導体層107の上面に分散する結果、その密度は低減する。一方、低温成長部107aの形成の際に横方向成長のファセットに到達した貫通転位は、結晶の成長に従ってそのまま横方向に曲げられる。従って、領域Aに種結晶部105から伝播する転位は極めて少ないものとなる。
種結晶部105の間に成長する横方向成長領域Bは、主に高温成長部107bからなる。領域Bでは、会合による貫通転位が会合部M1に発生するものの、種結晶部105からの転位は横方向に伝播しにくく、転位密度は非常に低くなる。よって、窒化物半導体層107は、その表面に会合部M1を除けば欠陥が多い部分がほとんど生じないので、表面の低欠陥領域が広くなる。なお、高温成長部107bは速やかに成長するため、領域Bの間隔を例えば16μm程度まで拡げ、低欠陥領域を拡大することが可能である。比較のため、従来のように成長温度を一定として種結晶部405より横方向成長させた結晶層407を図5(B)に示す。横方向成長領域Dの転位密度は、図5(A)の横方向成長領域Bと同程度である。しかし、種結晶部405の真上の領域Cは、種結晶部405から貫通転位が伝播して種結晶部405と同程度に転位密度が高い領域となる。
また、この場合の窒化物半導体層107は、第2段階の成長ではほとんど上方に成長しないために、高さHがおよそ3μmと薄いものとなる。これに対して、結晶層407は上と横の両方向に一貫して同じ比率で成長させるために、窒化物半導体層107よりも層厚が大きくなる。これが結晶層407の反りの原因であり、言い換えると、窒化物半導体層107の場合には層厚が薄いために反りが防止される。
次に、このような窒化物半導体層107の具体例を、実施例によって示す。
上記実施の形態と同様にして種結晶部105を形成し、図2のヒートカーブに従って成長温度を調節しながらGaNを成長させて窒化物半導体層107を形成した。その際に、第1段階の温度を1040℃〜1070℃の範囲で変化させ、第2段階の温度は1070℃一定とし、形成された窒化物半導体層107のヒロック密度を見積もった。
図6に第1段階の成長温度に対するヒロック密度を示す。このように、ヒロックの発生状況は第1段階の成長温度に相関があり、ヒロックが殆ど発生しない低温領域(ヒロック密度の相対比が0)と、ヒロックが多く発生した高温領域(ヒロック密度の相対比が1)が存在する。2つの状態間はドラスティックな変移ではなく、ヒロック密度が図のような変化をする領域によって緩やかに遷移しており、本実施例の場合には、その遷移領域の中心はおよそ1040℃であった。従って、第1段階の成長温度は1040℃以下が好ましいことがわかる。
更に、上記実施の形態と同様に、図2に示したヒートカーブに従って第1段階を1030℃、第2段階を1070℃に設定し、GaNからなる窒化物半導体層107を形成した。その際に、第1段階の成長時間(図2の期間t)を0,3,5,10,20(単位;分)に変化させ、それぞれの場合に形成された窒化物半導体層107の表面観察を行ない、そのヒロック密度を見積もった。
図7に、第1段階の成長時間に対するヒロックの相対密度値の関係を示す。この温度条件では、第1段階における所要時間については10分が臨界値となっており、このときに時間に比例して減少するヒロック相対密度が0となる。これ以上時間を費やして低温成長部107aを成長させても、ヒロック相対密度は依然として0である。なお、第1段階で10分間成長させた低温成長部107aの形状は、図3(A)における高さHが0.5μm、幅Wが1.0μmである。従って、上記の条件下では、高さHが少なくとも0.5μm以上の低温成長部107aを形成することが窒化物半導体層107にヒロックを発生させない条件と考えられる。
図8は、このようにして2段階成長させた窒化物半導体層107の表面写真であり、図9は、比較例として従来の方法で形成した窒化物半導体層の表面写真である。図9では夥しいヒロックが発生していることがわかるが、これに対して、図8にはヒロックは見られなかった。なお、図8の窒化物半導体層107では、表面に転位が見られない無転位領域は種結晶部105の上部にまで拡がり(図5(A)参照)、その幅が13.5μmもあった。これに対し、図9の窒化物半導体層では、無転位領域は種結晶部の間に部分的に存在しており、その幅は9μmであった。
従って、本実施例より、窒化物半導体層107はその表面の低欠陥領域が従来に比べ広いものであること、および、均質で平坦な表面となることがわかる。また、第1段階の成長温度が1040℃以下とすると、そのような窒化物半導体層107を効果的に得ることができることがわかる。
このように本実施の形態では、窒化物半導体層107の成長過程を成長温度によって2段階に分け、低温で成長させる第1段階において種結晶部105の上方の領域をほとんど形成するようにしたので、その表面におけるヒロックの発生を防止することができると共に、層の厚みがこれ以上増加しないために薄く形成することができる。また、第1段階で形成される低温成長部107aが層厚み方向の断面形状が台形型であるようにしたので、種結晶部105の上方の欠陥密度を低減することができる。その後に、第2段階において第1段階よりも高温で横方向成長を選択的に行うようにしたので、成長温度が高くとも欠陥が発生する虞がなく、またより速く高温成長部107bを形成することができる。
また、本実施の形態では、成長温度を変化させることによって2段階に成長方向を変化させるようにしたので、種結晶部105近傍と種結晶部105間のそれぞれの領域において適切な条件で結晶が成長する。よって、窒化物半導体層107の表面には、会合部M1を除けばほとんど欠陥が存在せず、広い低欠陥領域を形成することができる。同時に、窒化物半導体層107を低欠陥でありながら薄く形成することができ、反りの発生を防止することができる。
従って、このようにして製造される窒化物半導体層107は、ヒロックがほとんどない表面に広い低欠陥領域を有しており、厚みが薄いという特徴を併せ持つことができる。
〔参考例〕
この参考例は、第1の実施の形態において種結晶部105の形状とその形成工程が異なったものであり、窒化物半導体層117が形成される。以下、その製造方法を具体的に説明する。
図10(A)〜(D)はこの場合の窒化物半導体層117の製造方法を工程順に表している。まず、図10(A)に示したように、上記第1の実施の形態と同様にして基板100の上に例えばGaN,AlN,AlGaNなどからなるバッファ層100a,GaN:Siからなる種結晶層101を順に成長させる。
次に、図10(B)に示したように、SiO2 (酸化ケイ素)からなる成長抑止層116を種結晶層101の表面に成長させる。この成長抑止層116は、例えばスパッタ法により成膜され、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチングにより開口を有する所望の形状、例えば所定の幅と周期を持つストライプ状に形成される。このとき、種結晶層101の開口より表出する部分が、種結晶部115となる。
次に、種結晶部115を基礎としてGaN:Siを成長させて窒化物半導体層117を形成する。この場合も、成長条件を2回以上変えて結晶を成長させるが、ここでは上記実施の形態と同様に成長温度を2段階に分けて行う。
まず第1段階では、成長温度を1040℃以下、例えば1030℃とする。このとき、GaN:Siの結晶は、種結晶部115の上面および側面から上方向および横方向に対して比較的低速で等方的に成長し、図10(C)に示したように層厚み方向の断面形状が台形型である低温成長部117aが形成される。低温成長部117aの種結晶部115からの高さHおよび幅Wは特に制限されないが、高さHは窒化物半導体層117の表面欠陥密度に関係しており、例えば0.5μm以上の所定値に高さHが達するまで成長させることが好ましい。なお、その斜辺は横方向成長の成長面にあたり、この面が{11−22}結晶面からなるファセットとなっている。
第2段階では、成長温度を1070℃以上、かつ、第1段階の成長温度よりも高温に設定する。ここでは、例えば1070℃に昇温して結晶成長を行い、高温成長部117bを形成する。これにより、GaN:Si結晶の成長は全般に第1段階よりも速い速度で進行するが、種結晶部115の上方向よりも横方向の方が成長速度が速いため主に横方向に成長する。従って、高温成長部117bでは、高さHは第1段階から特に増加せず、幅Wが急速に増大する。更に成長を続けると、種結晶部115の間に対応する領域のほぼ中央で結晶同士が会合し、連続した1つの層が形成される。表面が平坦となるまで結晶を成長させれば、図10(D)に示したような窒化物半導体層117が完成する。
このときの窒化物半導体層117の内部における転位の伝播状態は、第1の実施の形態における窒化物半導体層107と同様のものとなる。よって、横方向成長によって形成される領域のみならず、種結晶部115の上部領域の転位も極めて少なくなり、窒化物半導体層117の表面の低欠陥領域が広がる。また、種結晶部115の上部領域は主に低温成長部117aからなるために、窒化物半導体層117の表面にヒロックはほとんど発生しない。なお、この参考例においても成長温度を段階的に変化させて窒化物半導体層117を形成するようにしたが、例えば成長圧力などの他の成長条件を段階的に変えるようにしてもよい。
このように、本参考例においても窒化物半導体層117の成長過程を成長温度によって2段階に分けるようにしたので、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[第2の実施の形態]
図11は第2の実施の形態に係る窒化物半導体の製造工程を順に表しており、図12は製造工程に対応する結晶の成長過程において転位が伝播する様子を表している。本実施の形態では種結晶部105から窒化物半導体層207を形成するが、その際、結晶成長をその成長温度によって2つの段階に分けて行う。なお、種結晶部105の形成までの工程は第1の実施の形態と同様なので(図1(A)〜(D)参照)、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
予め、第1の実施の形態と同様にして、基板100およびバッファ層100aの上に種結晶部105を形成する。種結晶部105は、例えば、互いに離間したストライプ形状であり、その展延方向を<11−00>方向とする。まず、図11(A)に示したように、この種結晶部105を基礎としてGaN:Siを成長させ、第2の種結晶部207aを形成する。このときの成長温度は1000℃以下、例えば970℃とする。これにより、{11−22}面からなるファセットが現れ、第2の種結晶部207aは、ファセットに囲まれて層厚み方向の断面形状が三角形となる。なお、図12(A)に示したように、第2の種結晶部207aには種結晶部105からの貫通転位がその上部に垂直に伸びている。
次に、図11(B),(C)に示したように、第2の種結晶部207aを基礎として高温成長部207bを成長させる。このときの成長温度は1050℃以上であり、層面に垂直な縦方向と共に横方向にも結晶成長が進行する。その成長過程においては、図11(B)のように、横方向に対し外3に示した結晶面からなるファセットが出現し、高温成長部207bの断面は四角形となる。なお、外3に示した結晶面は、以降の明細書中では{11−20}と記す。
また、結晶内部では、図12(B)に示したように、転位が{11−22}ファセットにおいて屈曲され、第2の種結晶部207aの直上にくる2つの{11−22}ファセットの交線を境に両脇に分かれてゆくように高温成長部207bに伝播する。これにより、第2の種結晶部207aの直上には殆ど転位や結晶欠陥が存在しなくなる。
更に成長させると、高温成長部207bは、種結晶部105の間に対応する領域のほぼ中央で主に横方向成長した領域同士によって会合し、連続した1つの層が形成される。表面が平坦となるまで結晶を成長させれば、図11(C)に示したような窒化物半導体層207が完成する。このとき、図12(C)に示したように、先に高温成長部207bに伝播した転位は、結晶の成長と共に横方向に屈曲されてゆき、会合部M3以外の領域では殆ど表面まで到達しない。これにより、窒化物半導体層207は表面の低欠陥領域が広くなる。
このようにして製造される窒化物半導体層207には、三角形の断面形状を有する第2の種結晶部207aが種結晶部105を覆うように設けられている。その層内の転位は第2の種結晶部207aと高温成長部207bとの境界で屈曲し、窒化物半導体層207は表出する転位が少ないものとなる。
なお、本実施の形態でも成長温度を段階的に変化させるようにしたが、成長圧力を変えることによっても窒化物半導体層207と同様な窒化物半導体層を得ることができる。具体的には、第2の種結晶部207aの形成工程では、成長圧力を例えば67kPa(500torr)以上の高圧とし、以後の高温成長部207bの成長工程では、成長圧力を例えば40kPa(300torr)以下の低圧とすると、上述した温度変化と同様の効果が得られるので好ましい。なお、温度と圧力の双方を同時に変化させてもよいし、これらと同様の作用を結晶成長に及ぼすその他の成長条件(雰囲気ガス種など)について同様に取り扱うようにすることもまた可能である。
本実施の形態では、窒化物半導体層207の成長過程を成長温度によって2段階に分け、低温(または高圧)の条件下で成長させる第1段階において、第2の種結晶部207aを層厚み方向の断面が三角形となる形状に形成するようにしたので、その上の領域では、第2段階の成長において第2の種結晶部207aから転位が伝播せず、窒化物半導体層207の表面に広い低欠陥領域を容易に形成することができる。
また、窒化物半導体層207は、層厚み方向の断面が三角形状である第2の種結晶部207aを成長の基礎とするようにしたので、会合部M3を除けば転位はその表面には殆ど伝播せず、広い低欠陥領域を有することができる。
〔参考例〕
この参考例は、第2の実施の形態において種結晶部105の形状とその形成工程が異なったものであり、窒化物半導体層217が形成される。以下、その製造方法を具体的に説明する。
図13(A)〜(D)はこの場合の窒化物半導体217の製造方法を工程順に表している。まず、図13(A)に示したように、上記第2の実施の形態と同様にして基板100の上に例えばGaN,AlN,AlGaNなどからなるバッファ層100a,GaN:Siからなる種結晶層201を順に成長させる。
次に、図13(B)に示したように、SiO2 (酸化ケイ素)からなる成長抑止層216を種結晶層201の表面に形成する。この成長抑止層216は、例えばスパッタ法により成膜され、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチングにより開口を有する所望の形状、例えば所定の幅と周期を持つストライプ状に形成される。このとき、種結晶層201の開口より表出する部分が種結晶部215となる。種結晶部215は、例えば、互いに離間したストライプ形状であり、その展延方向を<11−20>方向とする。
次に、図13(C)に示したように、種結晶部215を基礎としてGaN:Siを成長させ、第2の種結晶部217aを形成する。このときの成長温度は1000℃以下、例えば970℃とする。これにより、{11−20}面からなるファセットが現れ、第2の種結晶部217aは、ファセットに囲まれて層厚み方向の断面が三角形となるように形成される。このとき、第2の種結晶部217aには種結晶部215からの貫通転位がその上部に垂直に伸びている。
次に、第2の種結晶部217aを基礎として高温成長部217bを成長させる。このときの成長温度は1050℃以上であり、層面に垂直な縦方向と共に横方向にも結晶成長が進行する。更に成長させると、高温成長部217bは、種結晶部215の間に対応する領域のほぼ中央で主に横方向成長した領域同士によって会合し、連続した1つの層が形成される。表面が平坦となるまで結晶を成長させれば、図13(D)に示したような窒化物半導体層217が完成する。その成長過程における転位の伝播状態は、第2の実施の形態における窒化物半導体層207と同様のものとなる。これにより、第2の種結晶部217aの直上には殆ど転位や結晶欠陥が存在せず、窒化物半導体層217は表面の低欠陥領域が広くなる。
なお、この参考例においても成長温度を段階的に変化させて窒化物半導体層217を形成するようにしたが、上記第2の実施の形態で説明したように、例えば成長圧力などの他の成長条件を段階的に変えるようにしてもよい。
このように、本参考例においても窒化物半導体層217の成長過程を成長温度によって2段階に分けるようにしたので、上記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
以上のようにして窒化物半導体層207〜217を成長させた後、その上に半導体層を成長させて半導体素子を製造することができる。そのような半導体素子の一例として、次に、半導体レーザとその製造方法について説明する。
[第3の実施の形態]
図14は第3の実施の形態に係る半導体レーザの断面構成を表している。この半導体レーザでは、第1の実施の形態に係る窒化物半導体層107の上に半導体層300(308〜315)が形成されている。
半導体層300は、窒化物半導体からなり、例えば窒化物半導体層107の側から順にn側コンタクト層308,n型クラッド層309,n型ガイド層310,活性層311,結晶劣化防止層312、p型ガイド層313,p型クラッド層314およびp側コンタクト層315が積層されて構成される。そのうち、n側コンタクト層308は、例えば、厚さ1.5μmであり、GaN:Siにより構成され、n型クラッド層309は、例えば、厚さ1.0μmのn型Al0.08Ga0.92Nにより構成され、n型ガイド層310は、例えば、厚さ0.1μmのn型GaNから構成されている。ところで、レーザのn側コンタクト層は通常、層内に流れる電流の向きから充分な厚みを必要とする。本実施の形態では、n側コンタクト層308のみならず同じn型GaNである窒化物半導体層107もまた実質的なn側コンタクト層として機能するようになっている。
活性層311は、例えば、厚さが30nmであり、Ga0.98In0.02N/Ga0.92In0.08N多層膜からなる多重量子井戸構造となっている。この活性層311は、電流が注入される電流注入領域を有しており、電流注入領域は発光領域として機能する。
結晶劣化防止層312は、例えば、厚さが5nm〜20nmであり、n型Al0.18Ga0.82Nから構成されている。p型ガイド層313は、例えば、厚さ0.1μmであり、p型GaNから構成されている。p型クラッド層314は、例えば、厚さ0.8μmであり、p型Al0.14Ga0.86N/GaNから構成されている。p側コンタクト層315は、例えば、厚さ0.5μmであり、p型GaNから構成されている。
これらp側コンタクト層315からn側コンタクト層308の一部までは、帯状(図14においては紙面に対し垂直方向に延長されている)の凸部として成形され所定の領域に設けられている。これが所謂レーザストライプである。n側コンタクト層308が表出した領域は、後述するn側電極318を設けるための領域となっている。
また、ここでは、p側コンタクト層315、およびp型クラッド層314の一部は、レーザストライプと同じ方向に展延する細い帯状の凸部に加工され、電流狭窄部を構成している。この電流狭窄部は、活性層311において局所的に電流が注入されるように、電流注入領域を制限するためのものである。よって、電流注入領域は電流狭窄部と対応した位置に設けられることとなる。そこで、素子特性の劣化を防止させるため、電流注入領域の基となる電流狭窄部を半導体層の低欠陥領域に設けることが好ましい。この場合、低欠陥領域は会合部M1の間の領域となるが、種結晶部105の上部に欠陥が発生することがあれば、そのときには低欠陥領域を種結晶部105と会合部M1との間の領域とすればよい。
半導体層300の上には、例えば二酸化ケイ素(SiO2 )よりなる絶縁層317が設けられている。この絶縁層317には、電流狭窄部に対応する部分およびn側コンタクト層308に対応する部分の一部において開口が設けられており、これらの上に、それぞれp側電極316,n側電極318が形成されている。p側電極316は、例えば、Ni(ニッケル)、PtおよびAuが順次積層された構造をしており、p側コンタクト層315と導通している。n側電極318は、例えば、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Pt(白金)およびAu(金)が順次積層された構造をしており、n側コンタクト層308と導通している。
また、このレーザでは、レーザストライプの延長方向において対向する一対の側面が共振器端面となっており、共振器端面には図示しない一対の反射鏡膜が付設されている。これらの反射鏡膜は、反射率が異なるように設計されている。これにより、活性層311において発生した光は反射鏡間を往復して増幅され、低反射率側の反射鏡膜からレーザビームとして出射するようになっている。
この半導体レーザは、例えば次のようにして製造することができる。
まず、第1の実施の形態の方法により形成された窒化物半導体層107の平坦な表面に、例えばMOCVD法などを用いて半導体層300(308〜315)を成長させる。すなわち、GaN:Siからなる厚さ1.5μmのn側コンタクト層308、n型Al0.08Ga0.92Nからなる厚さ1.0μmのn型クラッド層309、続いて、n型GaNからなる厚さ0.1μmのガイド層310を成長させる。その上に、Ga0.98In0.02N/Ga0.92In0.08N多層膜により多重量子井戸構造の活性層311を形成する。更にその上に、n型Al0.18Ga0.82Nからなる結晶劣化防止層312、p型GaNからなる厚さ0.1μmのガイド層313、p型Al0.14Ga0.86N/GaNからなる厚さ0.5μmのp型クラッド層314、p型GaNからなる厚さ0.1μmのp側コンタクト層315を成長させる。ここでは、半導体層300は、ヒロックなどの欠陥や転位が少ない窒化物半導体層107の平坦面上に成長するために、各層における結晶基板由来の転位や欠陥が低減する。また、窒化物半導体層107は薄いために、その内部応力が増大し難く、反りの発生が抑制される。
次に、p側コンタクト層315およびp型クラッド層314を例えばドライエッチング法により細い帯状にパターンニングし、電流狭窄部を形成する。前述したように、電流狭窄部は、特に会合部M1(図5(A))の間の低欠陥領域に対応するように、その上部に形成されることが好ましい。電流狭窄部の位置に応じて決まる発光領域の位置を活性層311の低欠陥部分に合わせることによって、素子特性の劣化を防止することができるからである。更に、発光領域をより確実に低転位密度の領域に設けるためには、この電流狭窄部が種結晶部105と会合部M1との間の領域に対応して形成されることが好ましい。半導体層300では、欠陥は会合部M1付近に集中して発生しており、会合部M1間は実質的に広い低欠陥領域となっている。従って、会合部M1からのマージンを大きくとる必要がなく、比較的容易に電流狭窄部の位置合わせを行なうことができる。もしくは、電流注入領域の形成位置を強く制限する必要がないので、精度からくる作製プロセス上の困難を回避することができる。
続いて、p型クラッド層314〜n側コンタクト層308の所定部分をフォトリソグラフィ法などにより除去してn側コンタクト層308を表出させ、n側電極318の形成領域を設ける。続いて、n側コンタクト層308からp側コンタクト層315までの表出部分全体を絶縁膜317で覆うと共に、n側コンタクト層308上にn側電極318を形成し、p側コンタクト層315上にp側電極316を形成する。ここで、n側電極318は、例えば、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Pt(白金)およびAu(金)を順次蒸着して形成する。また、p側電極316は、例えば、Ni(ニッケル)、PtおよびAuを順次蒸着して形成する。このようにして、図14に示した半導体レーザが得られる。
この半導体レーザでは、p側電極316とn側電極318との間に所定の電圧が印加されると、活性層311に電流が注入され、電子−正孔再結合によって発光が起きる。この光は、図示しない反射鏡膜によって反射されてレーザ発振し、ビームとなって外部に射出される。ここでは、半導体層300が窒化物半導体層107の上に成長したものであるので、半導体層300の欠陥密度は低くなっている。特に、会合部M1間に活性層311の電流注入領域が設けられれば、電流注入領域の欠陥密度は低くなる。よって、素子の劣化が起こりにくく、寿命が長くなる。
このように本実施の形態によれば、表面に広い低欠陥領域を有する窒化物半導体層107の上に半導体層300を成長させるようにしたので、半導体層300の欠陥を低減し、その結晶性を向上させることができる。よって、電圧の印加による劣化が起こりにくく、半導体レーザの寿命を延長させることができる。また、貫通転位などに起因する非発光再結合の確率を低くすることができ、発光効率を向上させることができる。
また、会合部M1間に活性層311の電流注入領域を設けるようにすれば、発光効率をより向上させることができる。更に、会合部M1間は、通常の電流注入領域の幅に比べて充分に大きいため、電流注入領域の設計マージンを拡げることができ、このような半導体レーザを容易に製造することが可能となる。
更に、半導体層300を薄く形成された窒化物半導体層107の上に成長させるようにしたので、窒化物半導体層107に生ずる応力が軽減し、素子の反りを防止することができる。
[第4の実施の形態]
図15は第4の実施の形態に係る半導体レーザの断面構成を表している。この半導体レーザは、種結晶部105, 105間で電流狭窄部314Aが設けられる位置が更に特定されることを除き、第3の実施の形態と同様の構成を有している。よって、ここでは同一構成要素には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる部分を詳述する。
電流狭窄部314Aは、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間隔L1 と電流狭窄部314Aと会合部M1との間隔L3 との和が4μm以上で、かつ、電流狭窄部314Aの幅L2 が1μm以上3μm以下である、という条件を満たすように設けられる。あるいは、電流狭窄部314Aは、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間隔L1 と電流狭窄部314Aと会合部M1との間隔L3 との和が5μm以上で、かつ、電流狭窄部314Aの幅L2 が1.3μm以上2.5μm以下である、という条件を満たすように設けられる。ここで、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間隔L1 と電流狭窄部314Aと会合部M1との間隔L3 とが等しくなっている。また、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間隔L1 と電流狭窄部314Aと会合部M1との間隔L3 とが略等しくなっていてもよい。なぜならば、電流狭窄部314Aが半導体層の低欠陥領域に対応するように設けられればよいので、間隔L1 と間隔L3 とが完全に一致しなくてもよいからである。
このような構成を有する半導体レーザは、次のようにして製造することができる。
まず、第3の実施の形態と同様に、第1の実施の形態の方法により形成された窒化物半導体層107の平坦な表面に、例えばMOCVD法などを用いて半導体層300(308〜315)を成長させる。
次に、p側コンタクト層315およびp型クラッド層314を例えばドライエッチング法により細い帯状にパターンニングし、電流狭窄部314Aを形成する。このとき、発光領域をより確実に低転位密度の領域に設けるためには、この電流狭窄部314Aが種結晶部105と会合部M1との間の領域に対応して形成されることが好ましい。
具体的には、種結晶部105と会合部M1との間の領域で、上方に電流狭窄部314Aが設けられる部分以外、すなわち、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間の領域の間隔L1 と電流狭窄部314Aと会合部M1との間の領域の間隔L3 との和(L1 +L3 )を4μm以上とする(L2 ≦L/2―4)。なぜならば、間隔L1 と間隔L3 との和を4μmより小さくすると、電流狭窄部314Aが欠陥領域に入る危険性が高くなるからである。なお、種結晶部105, 105の間の間隔をL(μm)とする。
また、電流狭窄部314Aの幅L2 を1μm以上3μm以下とする(1≦L2 ≦3)。なぜならば、電流狭窄部314Aの幅L2 について、1μmより小さくすると、電流狭窄部314Aは欠陥領域に入らないものの、半導体レーザの閾値電圧VOPが上昇してしまうからである。一方、幅L2 を3μmより大きくすると閾値電圧VOPは低下するものの、閾値電流IOPが上昇し、キンクレベルが低下し、しかも、電流狭窄部314Aが欠陥領域に入る危険性が高くなってしまうからである。なお、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間隔L1 と電流狭窄部314Aと会合部M1との間隔L3 とを等しくする。また、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間隔L1 と電流狭窄部314Aと会合部M1との間隔L3 とを略等しくしてもよい。なぜならば、電流狭窄部314Aを半導体層の低欠陥領域に対応するように設けるようにすればよいので、間隔L1 と間隔L3 とを完全に等しくしなくてもよいからである。
ここでは、会合部M1に対して、紙面に向かって左側の種結晶部105と会合部M1との間の領域に対応して電流狭窄部314Aを設けるようにしたが、会合部M1を中心とした低欠陥領域の対称性から、右側の種結晶部105と会合部M1との間の領域に電流狭窄部314Aを設けるようにしてもよいのはいうまでもない。
以上から、図16(A)に示したように、半導体層の低欠陥領域内で、種結晶部105,105の間隔L、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間隔L1 、電流狭窄部314Aの幅L2 、および電流狭窄部314Aと会合部M1との間隔L3 の関係が、L2 ≦L/2―4、および、1≦L2 ≦3を満たすように、電流狭窄部314Aを設けると、電流狭窄部314Aが低欠陥領域に入り、キンクレベルが大きくなると共に、閾値電圧VOPおよび閾値電流IOPが小さくなる。
ここで、図17(A)に示したように、L=13の場合、L2 ≦2.5および1≦L2 ≦3を満たす、すなわち1≦L2 ≦2.5を満たすようにすると、電流狭窄部314Aが低欠陥領域に入ることが確認された。また、図17(B)に示したように、L=18の場合、L2 ≦5および1≦L2 ≦3を満たす、すなわち1≦L2 ≦3を満たすようにすると、電流狭窄部314Aが低欠陥領域に入ることが確認された。
また、半導体層の低欠陥領域内で、種結晶部105,105の間隔L、種結晶部105と電流狭窄部314Aとの間隔L1 、電流狭窄部314Aの幅L2 、および電流狭窄部314Aと会合部M1との間隔L3 の関係が、図16(B)に示したように、L2 ≦L/2―5、および、1.3≦L2 ≦2.5を満たすように電流狭窄部314Aを設けるとより好適である。というのは、これらの関係式を満たすようにすると、電流狭窄部314Aがより低欠陥領域に入る可能性が更に高くなるからである。
ここで、図18(A)に示したように、L=13の場合、L2 ≦1.5および1.3≦L2 ≦3を満たす、すなわち1.3≦L2 ≦1.5を満たすようにすると、電流狭窄部314Aがより低欠陥領域に入ることが確認された。また、図18(B)に示したように、L=18の場合、L2 ≦4および1.3≦L2 ≦2.5を満たす、すなわち1.3≦L2 ≦2.5を満たすようにすると、電流狭窄部314Aがより低欠陥領域に入ることが確認された。
続いて、p型クラッド層314〜n側コンタクト層308の所定部分をフォトリソグラフィ法などにより除去してn側コンタクト層308を表出させ、n側電極318の形成領域を設ける。続いて、n側コンタクト層308からp側コンタクト層315までの表出部分全体を絶縁膜317で覆うと共に、n側コンタクト層308上にn側電極318を形成し、p側コンタクト層315上にp側電極316を形成する。このようにして、図15に示した半導体レーザが得られる。
このように本実施の形態によれば、L2 ≦L/2―4、および、1≦L2 ≦3を満たすように、電流狭窄部314Aを設けるようにしたので、電流狭窄部314Aが低欠陥領域に入り、閾値電圧VOPおよび閾値電流IOPが小さくなり、キンクレベルが大きくなる。
更に、L2 ≦L/2―5、および、1.3≦L2 ≦2.5を満たすように、電流狭窄部314Aを設けるようにしたので、電流狭窄部314Aがより低欠陥領域に入り、閾値電圧VOPおよび閾値電流IOPが更に小さくなり、キンクレベルが更に大きくなる。
以上実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、第3の実施の形態では、第1の実施の形態の方法で形成した窒化物半導体層107を用いて半導体レーザを製造するようにしたが、本発明のその他の窒化物半導体を用いてもよく、その場合にも第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。例えば、図19は、第1の実施の形態の参考例に従って窒化物半導体層117を形成し、その上に半導体層300を形成して製造した半導体レーザの断面構成を表したものである。この場合も、電流狭窄部が、会合部M1間に対応するように設けられている。また、第2の実施の形態およびその参考例における窒化物半導体層207,217を用いるようにすれば、種結晶部の上の領域の欠陥をより効果的に減少させることができ、半導体層300の結晶性が向上すると共に電流狭窄部を設ける領域のマージンをより大きく取ることが可能となる。
また、例えば、第4の実施の形態では、第1の実施の形態の方法で形成した窒化物半導体層107を用いて半導体レーザを製造するようにしたが、本発明のその他の窒化物半導体を用いてもよく、その場合にも第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。例えば、図20は、第1の実施の形態の参考例に従って窒化物半導体層117を形成し、その上に半導体層300を形成して製造した半導体レーザの断面構成を表したものである。この場合も、L2 ≦L/2―4および1≦L2 ≦3を満たすように電流狭窄部314Aを設けるようにすると、電流狭窄部314Aが低欠陥領域に入り、閾値電圧VOPおよび閾値電流IOPが小さくなり、キンクレベルが大きくなる。更に、L2 ≦L/2―5および1.3≦L2 ≦2.5を満たすように、電流狭窄部314Aを設けるようにすると、電流狭窄部314Aが低欠陥領域に入り、閾値電圧VOPおよび閾値電流IOPが更に小さくなり、キンクレベルが更に大きくなる。
更に、上記実施の形態では、サファイア等からなる基板100を用いる場合について説明したが、本発明は、他の材質の基板を用いる場合についても同様に適用することができる。特に、GaN基板を用いる場合には、基板裏面にn側電極を設けるようにすると、基板表面を加工してn側電極を設ける必要がなく、n側コンタクト層を設けずに済むので、製造工程を簡略化すると同時にレーザを小型化することができる。その場合に、図21に示したように、GaN基板100の一面に種結晶部100cを直接形成してもよく、種結晶部100cから成長させた窒化物半導体層107の上に半導体層300を形成してレーザを製造することができる。
また更に、本発明は、上記実施の形態のようにしてサファイア基板などの上に作製した窒化物半導体層107〜217を基板から分離し、その上にレーザ等の半導体素子を製造する場合にも同様に適用できる。
更に、上記実施の形態では、基板の表面を{0001}面としたが、他の結晶面としてもよい。同様に、上記実施の形態において種結晶部を<1−100>方向に延長させて形成するようにしたが、他の方向に延長させて形成するようにしてもよい。また、第2の種結晶部の斜面は、必ずしも{11−22}面あるいは{11−20}面である必要はない。なお、種結晶部の形状はストライプ状に限定されるものではなく、例えば格子状あるいは島状などでもよい。
また、上記実施の形態では、半導体素子として半導体レーザを挙げ、その構成について具体的に例示して説明したが、本発明は、他の構造を有する半導体レーザについても同様に適用することができる。例えば、n型ガイド層110およびp型ガイド層113、あるいは劣化防止層112を備えていなくともよい。更に、上記実施の形態では、利得導波型と屈折率導波型とを組み合わせたリッジ導波型の半導体レーザを例に挙げて説明したが、利得導波型の半導体レーザおよび屈折率導波型の半導体レーザについても同様に適用することができる。
また、上記実施の形態では、半導体素子として半導体レーザを具体例に挙げて説明したが、本発明は、発光ダイオードあるいは電界効果トランジスタなどの他の半導体素子についても適用することができる。