JP4177206B2 - 炭素繊維複合金属材料の製造方法 - Google Patents

炭素繊維複合金属材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素繊維複合金属材料の製造方法に関する。
近年、カーボンナノファイバーを用いた複合材料が注目されている。このような複合材料は、カーボンナノファイバーを含むことで、機械的強度などの向上が期待されている。しかしながら、カーボンナノファイバーは相互に強い凝集性を有するため、複合材料の基材にカーボンナノファイバーを均一に分散させることが非常に困難とされている。そのため、現状では、所望の特性を有するカーボンナノファイバーの複合材料を得ることが難しく、また、高価なカーボンナノファイバーを効率よく利用することができない。
例えば、カーボンナノファイバーを金属に複合化させる手段として、カーボンナノファイバーと金属粉体とをボールミルなどの攪拌手段を用いて機械的に混合する方法を用いた場合には、カーボンナノファイバーが互いに絡み合った状態で偏在し、カーボンナノファイバーが均一に分散された炭素繊維複合金属材料を得ることができない。また、このような方法では、カーボンナノファイバーが機械的な剪断力によって細かく千切れてしまい、ファイバーとしての機能を充分に発揮することが困難である。
そこで、本発明の目的は、カーボンナノファイバーが良好な繊維状態を保ちながら均一に分散された炭素繊維複合金属材料の製造方法を提供することにある。
本発明にかかる炭素繊維複合金属材料の製造方法は、
炭素繊維複合材料と流体状態の金属材料とを混合する工程(a)と、
前記工程(a)の後に、該工程(a)で得られた混合物を冷却して固化する工程(b)と、を含み、
前記炭素繊維複合材料は、エラストマーと、該エラストマーに分散されたカーボンナノファイバーとを含む。
本発明の製造方法によれば、カーボンナノファイバーが良好な繊維状態を保った状態で均一に分散された炭素繊維複合金属材料を得ることができる。
本発明においては、前記工程(a)において、前記金属材料はチクソトロピー流体あるいは溶融状態であることができる。
本発明においては、前記工程(b)の前に、前記エラストマーが除去される工程を含むことができる。
本発明においては、前記工程(a)および工程(b)は、鋳造法によって行われることができる。
本発明においては、前記金属材料は、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの少なくとも一方を含む合金から選択される1種であることができる。
前記エラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、エラストマーは架橋体あるいは未架橋体のいずれであってもよい。原料エラストマーとしては、ゴム系エラストマーの場合、未架橋体が用いられる。
前記炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、未架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は1000ないし10000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることができる。
また、前記炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし5000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることができる。
前記炭素繊維複合材料はこのような特性を有し、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されたものである。
本発明の製造方法においては、このようにカーボンナノファイバーが既に均一に分散された炭素繊維複合材料と流体状態の金属材料とを混合することにより、カーボンナノファイバーが絡み合うことなく相互に分離され、均一に分散された炭素繊維複合金属材料を得ることができる。また、本発明においては、前記炭素繊維複合材料と流体状態の金属材料とを混合するので、カーボンナノファイバーと金属粉体とをボールミルで攪拌する場合のように、強い剪断力をカーボンナノファイバーに直接作用させることがないので、カーボンナノファイバーが千切れてしまうことがなく、繊維状態を良好に維持できる。その結果、カーボンナノファイバーによる補強機能などの特性を充分に発揮できる炭素繊維複合金属材料を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合金属材料の製造方法は、炭素繊維複合材料と流体状態の金属材料とを混合する工程(a)と、前記工程(a)の後に、該工程(a)で得られた混合物を冷却して固化する工程(b)と、を含む。そして、前記炭素繊維複合材料は、エラストマーと、該エラストマーに分散されたカーボンナノファイバーとを含む。
まず、工程(a),(b)について述べる。
工程(a)において用いられる炭素繊維複合材料は、後に詳述するように、エラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されたものである。また、金属材料は流体状態であって、チクソトロピー流体あるいは溶融状態であることができる。炭素繊維複合材料は、例えば鋳造法において、溶解された金属材料に混合される。炭素繊維複合材料をかかる金属材料に混合するタイミングは、金属材料の温度、粘度などを考慮して設定される。
工程(a)で形成された混合物を固化する工程(b)の前に、炭素繊維複合材料のエラストマーを除去することができる。エラストマーを除去する方法やタイミングは特に限定されない。エラストマーを除去する方法は、例えば、溶解された金属材料の熱によってエラストマーを分解することができる。このとき、カーボンナノファイバーが熱によって分解しない温度で、エラストマーのみを分解して除去できる。
工程(a)では、溶解された金属(溶湯)に炭素繊維複合材料を混在する場合、溶湯は撹拌され下向きの流れを作っておくことが望ましい。この流れによって比重の小さいカーボンナノファイバーの溶湯上部への浮遊を防止することができる。
溶湯に添加された炭素繊維複合材料中のエラストマー分子は直ちに分解され燃焼しながら除去される。エラストマー分子が除去された空間へは溶湯が入り込み、カーボンナノファイバー同士の凝集を妨げる。なお、エラストマー分子が燃焼・分解して除去される際、還元雰囲気となって溶湯の酸化を低減するとともにカーボンナノファイバーの酸化分解を防ぐ。
チクソトロピー流体を利用する場合は、以下のように行う。例えば700℃で溶解した金属を強く撹拌しながら徐々に温度を500℃〜550℃に下げると、通常デンドライト晶が成長するところが球状晶が生成し、その周りを液相が囲む状態となる。このような固相−液相共存状態ではチクソトロピーを示す。チクソトロピー状態では撹拌に対して大きな抵抗(粘性)が発生し、添加する炭素繊維複合材料の分散を良好とし、また、エラストマー分子が除去された際のカーボンナノファイバーの浮上を防止することができる。
カーボンナノファイバーは酸素雰囲気では500℃〜600℃で酸化分解する。しかし、酸素の存在しない不活性雰囲気や還元雰囲気では900℃程度までは分解しない。したがって、工程(a)および(b)は、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気、あるいはこれらの不活性雰囲気に水素を少量混合した還元雰囲気で行うことにより溶湯の酸化を防ぎ、巣などの欠陥を防止するとともに、カーボンナノファイバーの酸化分解を防ぐことができる。
工程(b)では、工程(a)で得られたカーボンナノファイバーを含む溶湯を鋳型に流し込み冷却して、インゴットを作ることができる。
このインゴットを原料として、最も一般的な重力鋳造から、スクイズキャスティング、遠心鋳造など各種の鋳造法、およびプレスで高圧を与えて形状を得る鍛造、型に高圧で流し込む射出成形などの成形方法で所望の形状を得ることができる。
また、工程(b)では、工程(a)で得られた溶湯を用いて直接鋳造することも可能である。この場合、重力鋳造、スクイズキャスティング、遠心鋳造はもちろん、チクソ状態から鋳造するチクソキャスティングによっても所望の形状を得ることができる。また、工程(a)でえられた溶湯を高圧で型に注入する射出成形も可能である。
このようにして、カーボンナノファイバーが分散された各種形態の金属成形品を得ることができる。この金属成形品は、剛性、特に高温時における剛性などの機械的強度に優れる。また、この金属成形品は機械的強度が大きいので、成形品を肉薄にでき、その小型化、軽量化を図ることができる。
本実施の形態においては、金属材料としては特に限定されないが、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの少なくとも一方を含む合金から選択される1種を用いることができる。金属材料としては、特にアルミニウムあるいはアルミニウム合金を用いることができる。
次に、炭素繊維複合材料について述べる。
(A)まず、エラストマーについて説明する。
本実施の形態において用いられる炭素繊維複合材料においては、エラストマーは、カーボンナノファイバーに対して親和性を有する不飽和結合または基を有する。エラストマーの不飽和結合または基が、カーボンナノファイバーの活性な部分、特にカーボンナノファイバーの末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノファイバーの凝集力を弱め、その分散性を高めることができる。その結果、炭素繊維複合材料は、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されたものとなる。
エラストマーは、例えば、カーボンナノファイバーと親和性が高いことの他に、分子長がある程度の長さを有すること、柔軟性を有すること、などの特徴を有することが望ましい。また、炭素繊維複合材料は、エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させることによって得られる。
エラストマーは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万である。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーは、凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。エラストマーの分子量が5000より小さいと、エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけてもカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなる。また、エラストマーの分子量が500万より大きいと、エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃で測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100ないし3000μ秒、より好ましくは200ないし1000μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができる。このことにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合したときに、エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノファイバー相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より短いと、エラストマーが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が3000μ秒より長いと、エラストマーが液体のように流れやすくなり、カーボンナノファイバーを分散させることが困難となる。
また、エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒であることが好ましい。その理由は、上述した未架橋体と同様である。すなわち、上記の条件を有する未架橋体を本発明の製造方法によって架橋化すると、得られる架橋体のT2nはおおよそ上記範囲に含まれる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりエラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかる炭素繊維複合材料は中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバー、特にその末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有する。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合、官能基から選択される少なくともひとつであることができる。官能基としては、例えば、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などがある。
カーボンナノファイバーは、通常、側面が炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、先端は構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。
(B)次に、カーボンナノファイバーについて説明する。
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましい。また、カーボンナノファイバーは、平均長さが0.01〜1000μmであることが好ましい。
カーボンナノファイバーの配合量は、特に限定されず、用途に応じて設定できる。炭素繊維複合材料を金属の複合材料の原料として用いるときは、炭素繊維複合材料に対してカーボンナノファイバーを0.01〜50重量%の割合で含むことができる。炭素繊維複合材料は、金属材料にカーボンナノファイバーを混合する際に、カーボンナノファイバーの供給源としてのいわゆるマスターバッチとして用いることができる。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。
アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。
レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(C)次に、エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る方法について説明する。
エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る方法として、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いた例について述べる。
図1は、2本のロールを用いたオープンロール法を模式的に示す図である。図1において、符号10は第1のロールを示し、符号20は第2のロールを示す。第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1ないし0.3mmの間隔で配置されている。第1および第2のロールは、正転あるいは逆転で回転する。図示の例では、第1のロール10および第2のロール20は、矢印で示す方向に回転している。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。この工程での剪断力は、エラストマーの種類およびカーボンナノファイバーの量などによって適宜設定される。
また、この工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の温度で行われる。オープンロール法を用いた場合には、ロールの温度を上記の温度に設定することが望ましい。
第1,第2のロール10,20が回転した状態で、第2のロール20に、エラストマー30を巻き付けると、ロール10,20間にエラストマーがたまった、いわゆるバンク32が形成される。このバンク32内にカーボンナノファイバー40を加えて、さらに第1,第2のロール10,20を回転させることにより、エラストマー30とカーボンナノファイバー40との混合が行われる。ついで、第1,第2ロール10,20の間隔をさらに狭めて前述した間隔dとし、この状態で第1,第2ロール10,20を所定の表面速度比で回転させる。これにより、エラストマー30に高い剪断力が作用し、この剪断力によって凝集していたカーボンナノファイバーが1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30に分散される。
このとき、エラストマーは、上述した特徴、すなわち、エラストマーの分子形態(分子長)、分子運動、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用などの特徴を有することによってカーボンナノファイバーの分散を容易にするので、分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、分子長が適度に長く、かつ分子運動性の高いエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、さらに、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。この状態で、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる方法は、上記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離できる剪断力をエラストマーに与えることができればよい。
上述したエラストマーにカーボンナノファイバーを分散させて両者を混合させる工程(混合・分散工程)の後は、公知の方法によって、押出工程、成形工程、架橋工程などを行うことができる。
エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合・分散工程において、あるいはこの混合・分散工程に続いて、通常、ゴムなどのエラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。
(D)次に、上記方法によって得られた炭素繊維複合材料について述べる。
炭素繊維複合材料は、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されている。このことは、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けたエラストマー分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、炭素繊維複合材料の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より短くなる。なお、架橋体におけるスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーの混合量に比例して変化する。
また、エラストマー分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによってエラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より小さくなる。
以上のことから、炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にあることが望ましい。
すなわち、未架橋体において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
また、架橋体において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし5000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法により測定されたスピン−格子緩和時間(T1)は、スピン−スピン緩和時間(T2)とともに物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、エラストマーのスピン−格子緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえ、そしてスピン−格子緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
炭素繊維複合材料は、動的粘弾性の温度依存性測定における流動温度が、原料エラストマー単体の流動温度より20℃以上高温であることが好ましい。炭素繊維複合材料は、エラストマーにカーボンナノファイバーが良好に分散されている。このことは、上述したように、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、エラストマーは、カーボンナノファイバーを含まない場合に比べて、その分子運動が小さくなり、その結果、流動性が低下する。このような流動温度特性を有することにより、炭素繊維複合材料は、動的粘弾性の温度依存性が小さくなり、その結果、優れた耐熱性を有する。
カーボンナノファイバーは、通常、相互に絡み合って媒体に分散しにくい性質を有する。しかし、本実施の形態では、炭素繊維複合材料を金属複合材料の原料として用いると、カーボンナノファイバーがエラストマーに既に分散した状態で存在するので、この炭素繊維複合材料と金属材料とを混合することでカーボンナノファイバーを金属材料に容易に分散することができる。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)炭素繊維複合材料のサンプルの作製(実験例1〜6,比較実験例1〜3)
まず、実施例に用いられる炭素繊維複合材料のサンプルを得た。具体的には、表1に示す高分子物質に所定量のカーボンナノファイバーをオープンロール法によって混練してサンプルを得た。サンプルは、以下の方法によって未架橋サンプルと架橋サンプルとを作製した。
(a)未架橋サンプルの作製
1)6インチオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す所定量(100g)の高分子物質(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせた。
2)高分子物質に対して表1に示す量(重量部)のカーボンナノファイバー(表1では「CNT」と記載する)を高分子物質に投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
3)カーボンナノファイバーを投入し終わったら、高分子物質とカーボンナノファイバーとの混合物をロールから取り出した。
4)ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
5)ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、分出しした。
このようにして、実験例1〜6および比較実験例2,3の未架橋サンプルを得た。
比較実験例1の高分子可塑剤としては、液状のフタル酸2−ジエチルヘキシル(分子量:391)を用いた。比較実験例2としては、熱可塑性樹脂であるエチルセルロースを用いた。さらに、比較実験例3として、カーボンナノファイバーを含まない高分子物質(EPDM)の未架橋サンプルを、上記工程1)から5)においてカーボンナノファイバーを混合しない他は同様にして得た。
(b)架橋サンプルの作製
1)〜4)は未架橋サンプルと同様に行った。
5)ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、さらに所定量の架橋剤(2重量部)を混合物に投入した。その後、この混合物を分出しした。
6)金型サイズに切り取ったサンプルを金型にセットし、175℃、100kgf/cmにて、20分間プレス架橋を行った。
このようにして、実験例1〜5および比較実験例3の架橋サンプルを得た。なお、実験例6では原料エラストマーとしてSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン熱可塑性エラストマー)を用いており、架橋を行っていない。比較実験例1では、液状の高分子物質を用いており、架橋を行っていない。また、比較実験例2では、熱可塑性樹脂を用いており、やはり架橋を行っていない。
(2)パルス法NMRを用いた測定
各未架橋サンプルおよび架橋サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、原料エラストマー単体および複合材料の未架橋サンプル,架橋サンプルについて、第1および第2のスピン−スピン緩和時間(T2n,T2nn)と第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)とを求めた。測定結果を表1に示す。また、測定温度が30℃の場合における未架橋サンプルの第1および第2のスピン−スピン緩和時間(T2n,T2nn)を測定し、この結果も表1に併せて記載した。複合材料の架橋サンプルについては、カーボンナノファイバー1体積%あたりに換算したスピン−格子緩和時間変化量(ΔT1)を求めた。測定結果を表1に示した。
(3)E’(動的貯蔵弾性率)、TB(引張強度)およびEB(切断伸び)の測定
複合材料の架橋サンプルについて、E’、TBおよびEBをJIS K 6521−1993によって測定した。これらの結果を表1に示す。なお、比較実験例1は液体であるので、これらの特性を測定することができなかった。比較実験例2は非架橋体であり、表1ではこれらの数値に*印を付した。
(4)流動温度の測定
原料エラストマー単体および複合材料の未架橋サンプルについて、動的粘弾性測定(JIS K 6394)によって流動温度を測定した。具体的には、流動温度は、幅5mm、長さ40mm、厚み1mmのサンプルに正弦振動(±0.1%以下)を与え、これによって発生する応力と位相差δを測定して求めた。このとき、温度は、−70℃から2℃/分の昇温速度で150℃まで変化させた。その結果を表1に示す。なお、表1において、150℃までサンプルの流動現象がみられない場合を「150℃以上」と記載した。
表1から、本発明の実験例1〜6によれば、以下のことが確認された。すなわち、カーボンナノファイバーを含む複合材料(未架橋サンプルおよび架橋サンプル)における150℃でのスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)は、カーボンナノファイバーを含まない原料エラストマー単体の場合に比べて短い。また、カーボンナノファイバーを含む複合材料(未架橋サンプルおよび架橋サンプル)における成分分率(fnn/150℃)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合に比べて小さい。またさらに、カーボンナノファイバーを含む架橋サンプルにおけるスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まない原料エラストマーの場合に比べて変化量(ΔT1)だけ低い。これらのことから、実験例にかかる炭素繊維複合材料では、カーボンナノファイバーが良く分散されていることがわかる。
このことは、実験例1,2と比較実験例3とを比較することによりよくわかる。すなわち、カーボンナノファイバーを含まない比較実験例3では、未架橋サンプルのスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)は原料エラストマー単体の場合に比べてあまり差がない。これに対し、本発明の実験例1,2では、未架橋サンプルのスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)は原料エラストマー単体の場合に比べてかなり短くなっている。そして、カーボンナノファイバーの含有割合が大きい実験例2では、未架橋サンプルのスピン−スピン緩和時間(T2nn/150℃)は検出されなかった。このようなことから、未架橋サンプルにおいて、実験例1,2は、T2nおよびT2nnの点で比較実験例3とは著しく異なることが確認された。また、成分分率(fnn/150℃)についても同様のことが確認された。
架橋サンプルについては、原料エラストマー単体に比べてスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)はいずれも短くなっていることが確認された。特に、カーボンナノファイバーの含有割合が大きい実験例2では、架橋サンプルのスピン−スピン緩和時間(T2nn/150℃)は検出されなかった。このようなことから、架橋サンプルにおいても、実験例1,2は、T2nおよびT2nnの点で比較実験例3とは著しく異なることが確認された。また、成分分率(fnn/150℃)についても同様のことが確認された。また、カーボンナノファイバー1体積%あたりに換算したスピン−格子緩和時間変化量(ΔT1)は、いずれも大きな値を示し、分子運動性は、原料エラストマー単体に比べて低くなっていることが確認された。
また、架橋サンプルを用いたE’、TBおよびEBの結果から、カーボンナノファイバーを含むことにより、本発明の実験例によれば、切断伸びを維持しながら動的貯蔵弾性率および引張強度が向上し、カーボンナノファイバーにより著しい補強効果が得られることが確認された。このことは、実験例1,2とカーボンナノファイバーを含まない比較実験例3とを比較することによりよくわかる。特に、カーボンナノファイバーの割合が大きい実験例2では、動的貯蔵弾性率および引張強度が著しく向上していることがわかる。
さらに、カーボンナノファイバーを含む複合材料(未架橋サンプル)における流動温度は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合に比べて20℃以上高いことから、動的粘弾性の温度依存性が小さく、優れた耐熱性を有することがわかる。
比較実験例1では、エラストマーの分子量が小さすぎることから、カーボンナノファイバーを分散させることができなかった。なお、比較実験例1では、スピン−スピン緩和時間ならびに、特性E’、TBおよびEBを測定できなかった。
比較実験例2では、原料エラストマーの30℃における第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が小さすぎることから、カーボンナノファイバーを充分に分散させることができないことが確認された。また、150℃におけるスピン−スピン緩和時間(T2nn)が大きすぎることから、分子運動性が高すぎてサンプルに剪断力をかけることができず、やはりカーボンナノファイバーを分散させることが困難であることが確認された。
また、比較実験例3では、カーボンナノファイバーを含まないので補強効果は認められなかった。
さらに、実験例4において得られた、複合材料の架橋サンプルについてSEM(Scanning Electron Microscopy)による映像を求めた。このSEM像を図2に示す。この場合の撮影条件は、加速電圧が3.0kVで、倍率が10.0kであった。図2から、NBRからなるエラストマー基材中にカーボンナノファイバーが互いに絡み合うことなく、均一に分散されていることが確認された。図2において、白っぽいライン状の部分がカーボンナノファイバーである。
参考のために、混合前の原料カーボンナノファイバーのSEM像を図3に示す。SEMの撮影条件は、加速電圧が3.0kVで、倍率が10.0kであった。図3のSEM像から、原料カーボンナノファイバーは相互に絡み合っていることがわかる。
以上のことから、本実験例によれば、一般に基材への分散が非常に難しいカーボンナノファイバーが良好な繊維状態を維持しながらエラストマーに均一に分散されることが明かとなった。
(5)炭素繊維複合金属材料の製造(実施例1)
上記実験例で得られた炭素繊維複合材料を用いて、以下の方法によって実施例にかかる炭素繊維複合金属材料を得た。
窒素雰囲気において、700℃で溶解したアルミニウムを強く撹拌しながら徐々に温度を500℃〜550℃に下げた。このとき、アルミニウムの流体はチクソトロピーを示した。このアルミニウム流体に、上記(1)の実験例4で得られた炭素繊維複合材料を添加してアルミニウム流体を攪拌した。さらに、このアルミニウム流体を鋳型に流し込み、冷却して炭素繊維複合金属材料を作成した。この炭素繊維複合金属材料の断面を電子顕微鏡で調べたところ、カーボンナノファイバーが分散していることが確認された。
本実施の形態で用いたオープンロール法によるエラストマーとカーボンナノファイバーとの混練法を模式的に示す図である。 実験例で得られた炭素繊維複合材料のSEM像を示す図である。 原料カーボンナノファイバーのSEM像を示す図である。
符号の説明
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
40 カーボンナノファイバー

Claims (14)

  1. 炭素繊維複合材料と流体状態の金属材料とを混合する工程(a)と、
    前記工程(a)の後に、該工程(a)で得られた混合物を冷却して固化する工程(b)と、を含み、
    前記炭素繊維複合材料は、エラストマーと、該エラストマーに分散されたカーボンナノファイバーとを含む、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記工程(a)において、
    前記金属材料はチクソトロピー流体である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  3. 請求項1において、
    前記工程(a)において、
    前記金属材料は溶融状態である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    前記工程(b)の前に、前記エラストマーが除去される工程を含む、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
    前記工程(a)および工程(b)は、鋳造法によって行われる、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
    前記金属材料は、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの少なくとも一方を含む合金から選択される1種である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  7. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、分子量が5000ないし500万である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  8. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、二重結合、三重結合、官能基から選択される少なくともひとつを有する、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  9. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし3000μ秒である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  10. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  11. 請求項1ないし1のいずれかにおいて、
    前記炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、未架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし10000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  12. 請求項1ないし1のいずれかにおいて、
    前記炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし5000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  13. 請求項1ないし1のいずれかにおいて、
    前記エラストマーの未架橋体における流動温度は、該エラストマー単体の流動温度より20℃以上高温である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  14. 請求項1ないし1のいずれかにおいて、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmである、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
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