JP4171480B2 - 耐熱性捲縮糸 - Google Patents

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本発明はアラミド繊維等の耐熱高機能繊維からなる耐熱性捲縮糸およびその製造方法に関する。より詳しくは、優れた耐熱性、難燃性、高強度特性のみならず良好な伸縮伸長率および伸縮弾性率と優れた外観とを有し、毛羽や埃の発生しにくい耐熱性捲縮糸、および高温高圧水蒸気もしくは高温高圧水処理または乾熱処理を行うことを特徴とする該耐熱性捲縮糸の製造方法に関する。
また、本発明は、該耐熱性捲縮糸からなる嵩高性および伸縮性を有する繊維製品に関する。特に、溶鉱炉での高熱作業、板金工作時の溶接作業もしくは農作業などの種々の労働作業、自動車産業もしくは電気製品産業などにおける製品の塗装工程、または精密機械産業、航空機産業もしくは情報機器産業などにおける製造工程、さらにはスポーツ、手術などいろいろな場面で、身体や手を保護するために必要な作業服や手袋に関する。
ナイロンやポリエステル繊維等の汎用熱可塑性合成繊維は約250℃前後で溶融するのに対して、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維等の耐熱高機能繊維は約250℃前後では溶融せず、その分解温度が約500℃前後と高温である。また、前記非耐熱性の汎用繊維であるナイロンやポリエステル繊維の限界酸素指数は約20前後であり、空気中でよく燃焼するのに対して、上記のような耐熱高機能繊維の限界酸素指数は約25以上であって、空気中では熱源である炎を近づけることによって燃焼するが、炎を遠ざけると燃焼を続けることができない。このように、耐熱高機能繊維は耐熱性および難燃性に優れた素材である。それゆえに、例えば耐熱高機能繊維であるアラミド繊維は炎や高熱に曝される危険の大きい場面での衣料製品、例えば消防服、自動車レース用のレーシングスーツ、製鉄用作業服または溶接用作業服などに好んで用いられている。中でも、耐熱性とともに高強度特性をも併せ持ったパラ系アラミド繊維は、引裂き強さと耐熱性を要するスポーツ衣料や作業服、ロープ、タイヤコードなどに利用されており、また刃物によって切れにくいことから作業用手袋などにも利用されている。一方、メタ系アラミド繊維は、耐熱性とともに耐候性・耐薬品性にも優れており、消防服や断熱フィルター、耐熱収塵フィルター、電気絶縁材料などに用いられている。
従来、これら耐熱高機能繊維を用いて衣料製品などの繊維製品を製造する際には、捲縮のないフィラメント糸や紡績糸などの形態で該繊維が利用されているにすぎなかった。しかし、フィラメント糸や紡績糸などの捲縮のない糸条を布地に加工し、消防服、レーシングスーツまたは作業服等の衣料製品を製造しても、糸条が十分な伸縮性を有していないため該衣料製品の伸縮性は劣っていた。その結果、該衣料製品を着用した場合に、着心地が悪く、また活動しにくいという難点があった。
特に、精密部品を取り扱う航空機産業、情報機器産業または精密機械産業で使用される作業手袋においては、従来の非捲縮糸条からなる作業手袋では、着用時の作業性が悪いので作業効率の低下につながっていた。また、医療分野においては、例えばエイズなど血液感染するおそれのある疾患を有する患者の手術に際し、該患者の血液が付着しないように医師はゴム手袋またはエラストマー手袋(以下、「ゴム手袋等」という)を装着する。また、例えば、救急隊員は不特定のけが人や病人に接するため、感染症の罹患が未確認である患者の血液や体液から自分自身を保護するため、ゴム手袋等を使用する。しかし、ゴム手袋等はメス等の手術器で簡単に破れるために、該患者の血液が付着したメスや注射針等から医師や救急隊員などの医療従事者を十分に保護することができない。そこで、機械的強度が大きい上記耐熱高機能繊維を織編した手袋を、ゴム手袋等の内側に装着することが考えられるが、上記したように耐熱高機能繊維からなる従来の手袋は伸縮性に劣るため、医師や救急隊員などの医療従事者の作業効率を低下させる。そのため、ゴム手袋等の内側にはめて使用できるような薄手で作業性を損なわない伸縮性と切れにくさを備えた手袋が求められている。
さらに、従来、紡績糸は一般に38mm前後又は51mm前後の短繊維を紡いで糸条となしており、ゆえに糸条表面に短繊維端がはみ出して毛羽状となっている。耐熱性高機能繊維からなる紡績糸から作られた作業服や手袋などは、使用時の摩擦によって毛羽が脱落するので、例えば空気中の埃を除去した環境下にあるクリーンルームや、塗装面へ付着した埃が製品の商品価値を低下させる塗装工場での作業服や手袋としては問題があり、毛羽や埃の発生しにくい作業服や手袋などの耐熱性高機能繊維からなる繊維製品が求められていた。
上記のように、非捲縮糸条を用いた耐熱高機能繊維からなる繊維製品の活動性または作業性の悪さおよび毛羽や埃の発生を改善すべく、耐熱高機能繊維が本来有する耐熱性および難燃性などの優れた性質を失うことなく、良好な伸縮伸長率および伸縮弾性率と優れた外観とを有し、毛羽や埃の発生しにくい耐熱性捲縮糸が熱望されていた。
かかる市場の要求に鑑みて、耐熱性捲縮糸または耐熱高機能繊維に捲縮を付与する方法についての研究、提案が多数なされている(特開昭48−19818、特開昭53−114923、特開平3−27117)。具体的には、ナイロンまたはポリエステル繊維など一般の熱可塑性合成繊維の捲縮付与方法を応用した方法が挙げられる。例えば、パラ系アラミド繊維などの高弾性率繊維に低弾性率繊維を混合して押込み法により捲縮を付与する方法(特開平1−192839)、アラミド繊維をその分解開始温度以上、分解温度未満(メタ系アラミド繊維の場合390℃以上460℃未満)に加熱した非接触ヒーターを用い仮撚り捲縮加工した後、弛緩熱処理するという仮撚り法により製造された捲縮糸(特開平6−280120)などが公知である。
しかし、公知方法のいずれにおいても、良好な伸縮伸長率および伸縮弾性率を有する高品質の捲縮糸の製造;加熱による強度の低下、色調の変化、毛羽立ちもしくは糸切れ等の糸条の品質劣化の防止;工程管理の容易性、設備の簡易性、優れた生産性、低コスト等の実用化可能性の観点からすれば、克服すべき技術的課題のすべてが揃って解決されているわけではなく、従って構成繊維の物性の劣化などがなく伸縮伸長率等に優れた品質の耐熱性捲縮糸も未だ市場化されていないのが現状である。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、製造時の加熱処理による耐熱高機能繊維糸の品質劣化を極力押さえ、耐熱高機能繊維が本来有する耐熱性または難燃性などの優れた性質を失うことなく、良好な伸縮伸長率および伸縮弾性率と優れた外観とを有し、毛羽や埃の発生しにくい耐熱性捲縮糸を提供することを目的とする。
また、本発明は、生産性、設備、コストなどの点で実用的な耐熱性捲縮糸の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、(a)伸縮性、耐熱性、機械的強度および外観に優れ、(b)手などの身体によくフィットして作業性がよく、(c)毛羽や埃の発生しにくく、(d)工程管理が容易で、生産性に優れており、低コストであるなど工業的製造上の利点を有する繊維製品、特に手袋を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の伸縮伸長率、伸縮弾性率および強度を有し、加熱による品質劣化のない捲縮糸の形態で耐熱高機能繊維を利用すれば、フィラメント糸や紡績糸などの非捲縮糸条の形態で利用した場合に比して、繊維製品の作業性または活動性を格段に向上させることができ、また使用時に摩擦などを受けても毛羽や埃が発生しにくいなど上記従来の問題点を一挙に解決できることを知見した。
また、耐熱性捲縮糸の製造方法についても検討を加えた結果、耐熱高機能繊維糸条に先ず第1の撚りを加え、高温高圧水蒸気もしくは高温高圧水処理または乾熱処理により熱セットし撚りを固定し、次いで、第1の撚りとは逆方向の第2の撚りを与えて解撚させることにより、上述のような優れた耐熱性捲縮糸を製造できるということも知見した。
さらに、耐熱高機能繊維のフィラメント糸はすべり易いため、例えば手袋に織編するなど機械織編を用いて繊維製品を製造するのに度々苦難を伴う。しかし、本発明に係る耐熱性捲縮糸を用いれば、かかる問題を解決できることを知見した。さらに、本発明に係る手袋などの耐熱性捲縮糸からなる嵩高で伸縮性のある繊維製品は、毛羽や埃が発生しにくいという利点を有することも知見した。すなわち、紡績糸は上述したように糸条表面に短繊維端がはみ出し毛羽状となっており、したがって耐熱高機能繊維の紡績糸からなる繊維製品は使用時の摩擦によって毛羽が脱落しやすいのに対し、本発明に係る耐熱性捲縮糸は長繊維から構成されているため糸条表面に毛羽が無く、したがってこれによって作られた作業服などの繊維製品は使用時の摩擦等を受けても単繊維の切断端である毛羽が発生しにくく、また単繊維毛羽の脱落がないのである。
したがって、精密機械産業、航空機産業または情報機器産業において、例えば、飛行機またはコンピューター等に用いる電子部品を取り扱う作業の際に、例えば作業手袋が使用時間の経過と共に劣化し繊維がちぎれてクリーンであるべき空間に飛散して埃が発生するような状況は避けなければならないことから、毛羽や埃が発生しにくいという利点を有す本発明の繊維製品、特に手袋は上記産業において有用であるといえる。また、アルミ建材、家庭電化製品または自動車などの製造時の塗装工程において、塗装面に毛羽や埃が付着すると製品の商品価値が低下することから、毛羽や埃が発生しにくい本発明の繊維製品、特に手袋はこれらの産業においても有用である。
本発明者らは、さらに検討を加え、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)単糸繊度が0.02〜1texである耐熱高機能繊維からなり、伸縮伸長率が6%以上、伸縮弾性率が40%以上、強度が0.15〜3.5N/texであることを特徴とする加熱による品質劣化のない耐熱性捲縮糸、
(2)耐熱高機能繊維がパラ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であり、強度が0.5〜3.5N/texであることを特徴とする前記(1)に記載の耐熱性捲縮糸、
(3)パラ系アラミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である前記(2)に記載の耐熱性捲縮糸、
(4)耐熱高機能繊維がメタ系アラミド繊維であり、伸縮伸長率が50〜300%であることを特徴とする前記(1)に記載の耐熱性捲縮糸、
(5)メタ系アラミド繊維がポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維である前記(4)に記載の耐熱性捲縮糸、
(6)前記(1)〜(5)に記載の耐熱性捲縮糸を繊維部分の50%以上含む嵩高で伸縮性のある繊維製品、
(7)手袋である前記(6)に記載の嵩高で伸縮性のある繊維製品、
(8)精密機械産業、航空機産業、情報機器産業、自動車産業、電気製品産業、医療手術または衛生分野で使用される前記(7)に記載の手袋、
(9)消防服、自動車レース用のレーシングスーツ、または製鉄用、溶接用もしくは溶接用作業服である前記(6)に記載の嵩高で伸縮性のある繊維製品、
(10)耐熱高機能繊維糸条に撚りを加えた後、高温高圧水蒸気または高温高圧水処理により熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚を行うことを特徴とする耐熱性捲縮糸の製造方法、
(11)耐熱性高機能繊維糸条に加えられる撚りが下記式で表わされる撚り係数K5,000〜11,000を有すること、高温高圧水蒸気または高温高圧水処理が130〜250℃の温度下で行われることを特徴とする前記(10)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
K=t×D1/2〔但し、tは撚り数(回/m)を表し、Dは繊度(tex)を表す。〕
(12)耐熱高機能繊維がパラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維およびポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維からなる群から選ばれる繊維であることを特徴とする前記(10)または(11)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(13)パラ系アラミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である前記(12)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(14)耐熱性捲縮糸が6%以上の伸縮伸長率および40%以上の伸縮弾性率を有することを特徴とする前記(10)〜(13)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(15)前記(12)に記載の製造方法により得られる耐熱性捲縮糸からなる嵩高、伸縮性繊維製品、
(16)耐熱高機能繊維糸条に撚りを加えた後、耐熱高機能繊維の分解開始温度以下の温度での乾熱処理により熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚を行うことを特徴とする耐熱性捲縮糸の製造方法、
(17)耐熱性高機能繊維糸条に、下記式で表わされる撚り係数K5,000〜11,000の撚りを加え、140〜390℃の温度下での乾熱処理により熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚を行うことを特徴とする前記(16)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
K=t×D1/2〔但し、tは撚り数(回/m)を表し、Dは繊度(tex)を表す。〕
(18)耐熱性高機能繊維糸条に撚りを加えた後、乾熱処理により熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚をする工程を連続的に行うことを特徴とする前記(16)又は(17)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(19)乾熱処理が200〜330℃の温度下で行われることを特徴とする前記(16)〜(18)のいずれかに記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(20)耐熱高機能繊維がパラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維からなるグループから選ばれた繊維であることを特徴とする前記(16)〜(19)のいずれか1に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(21)パラ系アラミド繊維がポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である前記(16)〜(20)のいずれか1に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(22)耐熱性捲縮糸の伸縮伸長率が6%以上で伸縮弾性率が40%以上であることを特徴とする前記(16)〜(21)のいずれか1に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(23)前記(16)〜(22)のいずか1に記載の方法によって得られる耐熱性捲縮糸からなる嵩高、伸縮性繊維製品、
(24)耐熱高機能繊維糸条で編み地を作成し、この編地を乾熱処理または高温高圧水蒸気もしくは高温高圧水処理し、次いで該編み地を解編することを特徴とする耐熱性捲縮糸の製造方法、
(25)耐熱高機能繊維糸条で編み地を作成し、130〜250℃の高温高圧水蒸気または高温高圧水を用いて2〜100分間処理し、次いで該編み地を解編することを特徴とする前記(24)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(26)耐熱高機能繊維糸条で編み地を作成し、140〜390℃の温度下で乾熱処理し、次いで該編み地を解編することを特徴とする前記(24)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(27)耐熱性捲縮糸が6.5%以上の捲縮伸長率を有することを特徴とする前記(25)または(26)に記載の耐熱性捲縮糸の製造方法、
(28)耐熱高機能繊維捲縮糸を含む糸条で織編されていることを特徴とする手袋、
(29)前記(28)記載の捲縮糸の伸縮伸長率が6%〜30%で伸縮弾性率が40〜100%であることを特徴とする前記(28)記載の手袋、
(30)耐熱高機能繊維がパラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維からなる群から選ばれた繊維であることを特徴とする前記(28)又は(29)に記載の手袋、
(31)パラ系アラミド繊維がポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である前記(30)に記載の手袋、
(32)耐熱高機能繊維捲縮糸が、耐熱高機能繊維糸条に撚りを加えた後、乾熱処理又は高温高圧水蒸気もしくは高温高圧水処理により熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚を行うことを特徴とする製造方法によって製造された耐熱高機能繊維捲縮糸であることを特徴とする前記(28)〜(31)のいずれかに記載の手袋、および、
(33)手袋が精密機械産業、航空機産業、情報機器産業、医療手術又は衛生分野で使用される前記(28)〜(32)のいずれかに記載の手袋、
に関する。
本発明にかかる耐熱性捲縮糸は、耐熱高機能繊維が本来有する耐熱性または難燃性などの優れた性質とともに、従来のフィラメント糸や紡績糸では得られなかった良好な伸縮伸長率および伸縮弾性率と優れた外観とを有する。また、製造時の加熱処理による、例えば、強度の低下、色調の変化、毛羽立ちまたは糸切れなどの品質劣化が実質的に見られない。
したがって、本発明にかかる耐熱性捲縮糸を用いれば、繊維製品に耐熱性や難燃性のみならず伸縮性を与えることができ、例えば繊維製品が手袋や作業服などの衣類製品の場合は手などの身体によくフィットし、該繊維製品を装着したときの作業性や活動性が格段に向上するとともに、装着感にも優れている。
また、本発明に係る耐熱性捲縮糸は毛羽や埃を発生しにくい。したがって、精密機械産業、航空機産業もしくは情報機器産業におけるクリーンルームでの組立て作業、またはアルミ建材、家庭電化製品もしくは自動車などの製造時の塗装作業において、有用な繊維製品、特に作業服や手袋を提供できる。
また、本発明にかかる耐熱性捲縮糸の製造方法は、高温高圧水蒸気処理または乾熱処理により熱セットを行うことを特徴とする。ここで、高温高圧水蒸気処理は、耐圧密閉容器など慣用設備を利用して所定の温度を短時間維持するだけで熱セットすることができる。また、乾熱処理は、通常常圧下で行うことができ、連続工程も可能になる。したがって、ともに生産設備、工程管理、コスト、生産性において有利な製造方法である。また、熱セットを耐熱高機能繊維の分解開始温度より低い温度で行うので、加熱時の糸条の劣化を極力避けることができる。
本発明は、単糸繊度が0.02〜1texである耐熱高機能繊維からなり、約6%程度以上の伸縮伸長率、約40%程度以上の伸縮弾性率、約0.15〜3.5N/tex程度の強度を有し、加熱による品質劣化のない耐熱性捲縮糸を提供する。
本発明にかかる耐熱高機能繊維としては、限界酸素指数が約25以上の難燃性と示差走査熱量測定法による熱分解温度が約400℃以上の耐熱性とを有する繊維が好ましい。その例としては、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維(例えば株式会社クラレ製、商品名ベクトラン)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(例えば東洋紡株式会社製、商品名ザイロン)、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリアミドイミド繊維(例えばローヌプーラン社製、商品名ケルメル)、ポリイミド繊維などが挙げられる。アラミド繊維にはメタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維がある。メタ系アラミド繊維としては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(デュポン社製、商品名ノーメックス)などのメタ系全芳香族ポリアミド繊維が挙げられる。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名ケブラー)およびコポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名テクノーラ)などのパラ系全芳香族ポリアミド繊維が挙げられる。
本発明にかかる耐熱性捲縮糸は、上記耐熱高機能繊維の1種類からなっていてもよいし、任意の2種以上の上記耐熱高機能繊維からなっていてもよい。また、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール系繊維など他の自体公知の繊維との混繊、交撚などによる複合糸としても使用することができる。
本発明で用いられる耐熱性高機能繊維の単糸繊度は、約0.02〜1tex程度、好ましくは約0.05〜0.6tex程度、さらに好ましくは約0.08〜0.5tex程度であることが、本発明に係る耐熱性捲縮糸の柔軟性および耐熱性捲縮糸の製造のしやすさの面から好適である。
本発明で用いられる耐熱性高機能繊維糸条のトータル繊度は、撚糸や編み地の加工ができる太さであれば制限はないが、耐熱性捲縮糸の製造工程における撚糸や編み地の工程を鑑みれば、約5〜5000tex程度が好ましい。
なお、上記繊度はJIS L 0101(1999)に規定されるtex(テックス)で表している。例えば、1texは1000mの長さの繊維が1gの質量であることを示し、10texは1000mの長さの繊維が10gの質量であることを示す。texで表される数値が大きいほど繊維の太さが太いことになる。
本発明にかかる耐熱性捲縮糸のうち、耐熱高機能繊維がパラ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である場合は、該捲縮糸の伸縮伸長率が、好ましくは約6%程度以上、より好ましくは約10〜50%程度、さらに好ましくは約15〜40%程度であり、また、該捲縮糸の伸縮弾性率が約40%程度以上、好ましくは約50〜100%程度、より好ましくは約60〜100%程度であり、さらに、該捲縮糸の強度が約0.15〜3.5N/tex程度、好ましくは約0.5〜3.5N/tex程度であることが、本発明における好適な態様である。
本発明にかかる耐熱性捲縮糸のうち、耐熱高機能繊維がメタ系アラミド繊維である場合は、該捲縮糸の伸縮伸長率が約6%程度以上、好ましくは約50以上、より好ましくは約50〜300%程度、さらに好ましくは約70〜300%程度であり、また、該捲縮糸の伸縮弾性率が約40%程度以上、好ましくは約50〜100%程度、より好ましくは約70〜100%程度であり、さらに、該捲縮糸の強度が約0.15〜1.0N/tex程度であることが、本発明における好適な態様である。
本発明にかかる耐熱性捲縮糸は、加熱による品質劣化が実質的にないのが特長である。加熱による品質劣化としては、加熱処理による耐熱性捲縮糸の物性の低下または外観の悪化が挙げられ、より具体的には、例えば、加熱処理による耐熱性捲縮糸の強度の低下、色調の変化、糸切れまたは毛羽立ちなどが挙げられる。例えば、強度の低下がないことの目安として、加熱処理後の糸条の強度保持率が30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であることが好適である。なお、強度保持率は下記式から算出できる。
〔数1〕
強度保持率(%)={耐熱性捲縮糸の強度(N/tex)/処理前の耐熱高機能繊維糸の強度(N/tex)}×100
また、耐熱高機能繊維の種類によって異なるので一概には言えないが、例えばメタ系アラミド繊維の場合は、加熱処理後の糸条の色調変化がないことの目安として、加熱処理後の糸条の明度が加熱前の糸条の明度の約80%程度、好ましくは85%程度を保っていることが好適である。
本発明は、上記耐熱性捲縮糸からなる嵩高で伸縮性のある繊維製品を提供する。該繊維製品は、上記耐熱性捲縮糸のみからなっていてもよいし、それ以外の繊維糸条との混織または混編物であってもよい。但し、繊維製品が前記混織または混編物である場合は、繊維成分の約5%程度以上、好ましくは約25%程度以上、より好ましくは約50%程度以上が本発明にかかる耐熱性捲縮糸であることが好ましい。耐熱性捲縮糸以外の繊維糸条としては、特に限定されず自体公知のものを用いてよい。
本発明にかかる繊維製品としては特に限定されず、例えば、上記耐熱性捲縮糸を含む糸条で織編された布帛、該布帛を用いた例えば耐熱安全グローブなどの手袋、消防服、自動車レース用のレーシングスーツ、製鉄用、溶接用もしくは塗装用作業服などの炎や高熱に曝される危険の大きい場面での衣料製品、耐熱収塵フィルターなどの耐熱資材、ロープまたはタイヤコードなどが挙げられる。
上記繊維製品は自体公知の方法にしたがって容易に製造できる。例えば、手袋は、市販のコンピューター手袋編機SFGやSTJ(株式会社島精機製作所製)が便宜に採用される。
上記繊維製品を使用する際は、上記繊維製品を単独で用いてもよいし、他の耐熱性または難燃性等を有する製品と組み合わせて用いてもよい。また、自体公知の処理を行ってもよい。例えば、本発明にかかる手袋は、そのまま種々の作業に使用されてもよいし、手袋の一部、特に手のひら側の外面または手袋の外面全面などに樹脂を塗布してもよい。そのための樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、ラテックス、ウレタン樹脂、天然ゴムまたは合成ゴム等が挙げられ、樹脂の塗布によって手袋の強度がより強くなるとともに物をつかんだとき滑りにくくなる。樹脂塗布は自体公知の手段に従って行われてよい。また、該本発明にかかる手袋の上にさらにゴム手袋やエラストマー手袋をはめてもよい。
本発明は、また、生産性、設備またはコストなどの点で実用的な耐熱性捲縮糸の製造方法を提供する。
該方法は、例えばアラミド繊維等の耐熱高機能繊維からなる糸条に撚りを加え、高温高圧水蒸気処理もしくは高温高圧水処理(以下、単に「高温高圧水蒸気処理」という)または乾熱処理を行った後、前記撚りを解撚させることを特徴とする。耐熱高機能繊維からなる糸条は、例えば自体公知の方法によって作られる紡績糸またはフィラメント糸であってよい。なかでも、毛羽や埃が発生しにくいフィラメント糸が好ましい。
より具体的には、通常は、耐熱高機能繊維からなる糸条等に先ず第1(SまたはZのいずれか)の撚りを加え、所望によりこれをアルミニウムなどでできた耐熱性ボビンに巻き上げ、特定温度範囲に加熱して熱セットし撚りを固定する。次いで、第1の撚りとは逆方向の第2の撚り(ZまたはS)を与えて解撚させることにより耐熱性捲縮糸を製造するものである。
本発明にかかる方法によれば、第1の撚りをかけることによって糸条を構成する単糸は螺旋状の複雑な形態を取り、その形状が加熱作用によって固定される。しかるに次工程の解撚によって、単糸は第1の撚りを与えられた時の形状を記憶したまま、撚りによる拘束から解き放たれる。その結果として単糸それぞれが、記憶している形状に基づいた各々の配置を取ろうとして捲縮糸の形態になる。
本発明にかかる耐熱性捲縮糸の製造方法においては、上述したように、熱セットにおける手段の相違により、高温高圧水蒸気処理による製造方法と、乾熱処理による製造方法とがある。
高温高圧水蒸気処理による場合は、加熱ムラが少ないという利点がある。すなわち、極端に加熱されて品質劣化を招く繊維糸条部分や、加熱が少なすぎて熱セットが充分に行われない繊維糸条部分が発生しにくい。
一方、乾熱処理による場合には、(a)熱処理のための高温高圧水蒸気や高温高圧水(以下、単に「高温高圧水蒸気」という)を用いないため、大気圧下で撚り固定ができ、ゆえに耐高圧熱処理器が不要であり、(b)製造工程としては、バッチ式のみならず、例えば高温処理領域を通過させるような連続工程をとることができ、該高温処理領域にホットエア、流動床が採用できるなどの利点がある。
以下、高温高圧水蒸気処理による製造方法について詳述する。
該製造方法においては、まず耐熱性高機能繊維からなる糸条に第1の撚りを加える。該糸条は、フィラメント糸であってもよいし、紡績糸であってもよい。なかでも、毛羽や埃が発生しにくいフィラメント糸が好ましい。
第1の撚りは、次式;K=t×D1/2〔但し、tは撚り数(回/m)を表し、Dは繊度(tex)を表す。〕で表される撚り係数Kの値が約5,000〜11,000程度であることが好ましい。より好ましくは約6,000〜9,000程度である。糸条に加えられる撚りは、糸を適度に捲縮させるとともに、撚りをかけすぎることにより繊維の切断を防ぐため、上記範囲が好ましい。
なお、上記撚り係数(K)は、糸条の太さに関係なく撚りの程度を表わす指標であり、撚り係数が大きいほど撚りの程度は高い。
上記第1の撚りを加える撚糸工程では、例えば、リング撚糸機、ダブルツイスターまたはイタリー式撚糸機など自体公知の撚糸機を用いてよい。
得られた撚糸はボビンに巻き上げるのが好ましい。ただし、撚糸時にボビンに巻き上げた場合は巻き返しの必要はない。ここで、ボビンとは通常糸条を捲きつけるための芯体ことであり、自体公知のものを用いてよいが、例えばアルミニウムなどの耐熱性素材からなるものが好ましい。また、次の熱セット工程において、高温高圧水蒸気が通りやすいように、耐熱性ボビンには全面に小孔を設けることが好ましい。
このとき撚糸をボビンに巻きあげてできた糸条チーズまたは糸条コーンの巻厚は約15mm以上が好ましく、また巻密度は約0.4〜1.0g/cm程度、好ましくは約0.5〜0.9g/cm程度、より好ましくは約0.6〜0.9g/cm程度であるのが好適である。
ついで、特定温度範囲の高温高圧水蒸気により上記第1の撚りを固定する高温高圧水蒸気処理を行う。
該高温高圧水蒸気処理は自体公知の技術に従い、例えば内部に高温高圧水蒸気を供給できる高温高圧密閉容器を用いて行われる。該高温高圧密閉容器は自体公知のものを用いてよく、例えば、高温高圧水蒸気を供給する蒸気配管および排水バルブと処理終了時放圧のための排気バルブが接続され、また、先の工程で得られる撚り糸の巻かれたボビンを搬入するための開口部と、密閉状に開閉可能な蓋が取り付けられている構造を有するもの等が挙げられる。
高温高圧水蒸気処理の温度条件としては約130〜250℃程度が適しており、好ましくは約130〜220℃程度、より好ましくは約140〜220℃程度、さらに好ましくは約150〜200℃程度である。実用に適する捲縮を与え、一方で繊維の劣化を防ぐため、上記温度範囲が好ましい。
前記処理時の圧力については、高温高圧水蒸気として飽和水蒸気を用いる場合は上記温度条件から物理化学的に一義的に決まるものであり、下限温度130℃における飽和水蒸気圧の値は2.70×10Pa、また上限温度250℃における飽和水蒸気圧の値は38.97×10Paに相当するので、従って本発明にとって約130℃〜250℃程度の温度、約2.70〜39.0×10Pa程度の圧力で高温高圧水蒸気処理を行うのが好ましい。ただし、本発明においては、常に飽和水蒸気で処理しなければならないというわけではなく、水蒸気の圧力は、約2.7〜39.0×10Pa程度であればよい。ただし、その温度での飽和水蒸気圧以上の圧力にできないことは当然である。中でも、高温高圧水蒸気処理は、約130℃〜220℃程度の温度、約2.7〜23.2×10Pa程度の圧力で行うのが好ましく、約140℃〜220℃程度の温度、約3.5〜23.2×10Pa程度の圧力で行うのがより好ましく、約150℃〜200℃程度の温度、約4.8〜15.6×10Pa程度の圧力で行うのがさらに好ましい。
高温高圧水蒸気の代わりに高温高圧水を使用してもよい。この場合の水の温度は約130〜250℃程度、好ましくは約130〜220℃程度、より好ましくは約140〜220℃程度、さらに好ましくは約150〜200℃程度、圧力は約2.70〜39.0×10Pa程度、好ましくは約2.7〜23.2×10Pa程度、より好ましくは約3.5〜23.2×10Pa程度、さらに好ましくは約4.8〜15.6×10Pa程度である。高温高圧水処理の場合には、上記および下記における高温高圧水蒸気および水蒸気を、高温高圧水および水と読み換えるものとする。
高温高圧水蒸気処理に要する時間は、高温高圧水蒸気処理を行う際のボビンに巻かれた糸条の巻き量などによって異なるので一概にはいえず、上記所定温度を数分程度保持できれば十分であるが、約2〜100分程度が好ましい。より好ましくは約3〜60分程度の範囲である。ボビンに巻かれた糸条のうち表面の糸条と内部の糸条をより均一に熱セットし、一方で繊維の劣化を防止するためには、上記範囲が好ましい。ボビンに巻かれた糸条は高温高圧水蒸気処理後、冷風などにより強制冷却してもよいが、室温による自然冷却が好ましい。
高温高圧水蒸気処理後、撚り糸に第1の撚りとは逆方向に第2の撚りを与えて、撚り糸を解撚することで本発明にかかる耐熱性捲縮糸が製造できる。解撚時も施撚時と同じように自体公知の撚糸機を用いてもよい。
つぎに、乾熱処理による製造方法について詳述する。
乾熱処理による製造方法としては、バッチ式製造方法または仮撚り加工方法が挙げられ、本発明においてはいずれを用いてもよい。なお、これら製造方法においては熱セットのために高温高圧水蒸気や高温高圧水を使わない。つまり、高温高圧水蒸気や高温高圧水を用いない加熱処理を乾熱処理と称する。
バッチ式製造方法または仮撚り加工方法のいずれの製造方法においても、所望によりさらに弛緩熱処理を行ってもよい。弛緩熱処理としては、例えば得られた捲縮糸をある程度伸長させながら加熱する方法などが挙げられる。弛緩熱処理を行うことにより、糸の嵩高性を損なうことなく、トルクを減少させることができるという利点がある。
以下に乾熱処理によるバッチ式製造方法について述べる。
該製造方法においては、まず耐熱性高機能繊維からなる糸条に第1の撚りを加える。該糸条は、フィラメント糸であってもよいし、紡績糸であってもよい。なかでも、上述のように毛羽や埃が発生しにくいフィラメント糸が好ましい。第1の撚りは、糸を適度に捲縮させるとともに撚りをかけすぎることにより繊維の切断を防ぐため、撚り係数Kの値が約5,000〜11,000程度、好ましくは約6,000〜9,000程度であるのが好適である。
上記第1の撚りを加える撚糸工程では、例えば、リング撚糸機、ダブルツイスターまたはイタリー式撚糸機など自体公知の撚糸機を用いてよい。
得られた撚糸はボビンに巻き上げるのが好ましい。ただし、撚糸時にボビンに巻き上げた場合は巻き返しの必要はない。ボビンは自体公知のものを用いてよいが、例えばアルミニウムなどの耐熱性素材からなるものが好ましい。
ついで、特定温度範囲に加熱して、上記第1の撚りを熱セットし固定する乾熱処理を行う。
加熱処理の温度条件は、原料繊維の分解開始温度未満であればよく、好ましくは約140〜390℃程度、より好ましくは約170〜350℃程度、最も好ましくは約200〜330℃程度である。得られる耐熱性捲縮糸の捲縮の程度を実用に適したものとし、一方で糸条の劣化を避けるためには、上記範囲が好ましい。このように、本発明の乾熱処理においては、原料繊維の分解開始温度以上の高温処理を施す必要がないので、例えば、強度の低下、色調の変化、毛羽立ちまたは糸切れ等の加熱による糸条の劣化が実質的に発生しない。具体的には、例えば、強度の低下がないことの目安として、加熱処理後の糸条の強度保持率が30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であることが好適である。強度保持率は上記数式より容易に算出される。また、耐熱高機能繊維の種類によって異なるので一概には言えないが、例えばメタ系アラミド繊維の場合は、加熱処理後の糸条の色調変化がないことの目安として、加熱処理後の糸条の明度が加熱前の糸条の明度の約80%程度、好ましくは85%程度を保っていることが好適である。
加熱処理のためのヒーターは、接触ヒーターでも、非接触ヒーターでもよく、また加熱はホットエア方式または流動床方式など自体公知の手段によって行われてよい。
バッチ式における加熱時間は、繊維の種類、糸条の太さまたは加熱温度などにより異なるため一概には言えないが、通常は約2〜100分程度が望ましい。より好ましくは約10〜100分程度、さらに好ましくは約20〜40分程度の範囲である。ボビンに巻かれた糸条のうち表面の糸条と内部の糸条をより均一に熱セットし、一方で繊維の劣化を防止するためには、上記範囲が好ましい。
乾熱処理は、加圧下、減圧下、常圧下のいずれで行われてもよいが、常圧下で行われるのが好ましい。
次いで、乾熱処理後、撚り糸に第1の撚りとは逆方向に第2の撚りを与えて、撚り糸を解撚することにより、本発明にかかる耐熱性捲縮糸を製造することができる。加熱処理後は冷風などにより強制冷却してもよいが、空気冷却に任せるのが好ましい。解撚時も施撚時と同じように自体公知の撚糸機を用いてもよい。
次ぎに、仮撚り加工方法を用いた製造方法について述べる。
仮撚り加工方法においては、送り出しローラによって供給糸条チーズ(巻き芯であるボビンに巻き上げられた糸)から引き出された糸は、巻き取りローラを経て巻き取りボビンに巻き上げられる。送り出しローラと巻き取りローラの間には、仮撚りスピンドルが設置されている。糸を仮撚りスピンドルのピンに巻いてつかみ、スピンドルを回転させると送り出しローラと仮撚りスピンドルの間の糸は、例えばS撚りが加えられ、これをヒーターで熱セットし、仮撚り装置と巻き取りローラの間では前記と反対の例えばZの撚りが加えられることによって解撚されて捲縮糸となる。仮撚り装置と巻き取りローラーの間は冷却ゾーンであり、空気冷却に任せるのが好ましい。仮撚りを与える方法には上述の仮撚りスピンドルのほか、糸を高速回転する円筒の内壁や円盤の外周あるいは高速走行するベルトの表面と接触させ、摩擦によって仮撚りを与える方法などが用いられる。
該仮撚り方法において、耐熱性高機能繊維からなる糸条は、フィラメント糸であってもよいし紡績糸であってもよいが、毛羽等が発生しにくいフィラメントが好ましい。
仮撚りスピンドルによる撚りは、糸を適度に捲縮させるとともに撚りをかけすぎることにより繊維の切断を防ぐため、撚り係数Kの値が約5,000〜11,000程度、好ましくは約6,000〜9,000程度が好適である。
本方法において、上記加撚は、例えばスピンドル法、ニップベルト法等のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。スピンドル法で撚りを加える場合には、1本ピンでもよいが、2本ピン以上、好ましくは4本ピンのスピナを用いることが本発明における好適な態様である。すなわち、スピンドル法で通常使用される1本ピンのスピナを使用して撚りを加える際には、耐熱性高機能繊維からなる糸条をピンに1回巻きつける必要があるが、摩擦によって切れやすい耐熱高機能繊維からなる糸条は加燃の際に糸切れすることもあり得る。しかしながら、2本以上のピン、特に上2本と下2本の位置をずらして設置した4本ピンのスピナを使用し、ピンとピンの間をジグザグ状に糸を通して、糸が上部中心部から入り、下部中心部から出るようにすれば、より効率よく撚りを加えることが可能となる。この場合、糸条はピンとピンの間で屈曲されるので摩擦抵抗で撚りが付与される。
熱セットのための加熱温度は、バッチ式製造方法と同一である。一方、本製造方法はバッチ式製造方法に比べ熱処理効果が高いので、加熱時間は糸条の太さにもよるが、約0.5〜300秒程度、好ましくは約1〜120秒程度である。
加熱処理のためのヒーターは、バッチ式製造方法と同様、接触ヒーターでも非接触ヒーターでもよく、また加熱はホットエア方式または流動床方式など自体公知の手段によって行われてよい。なお、ヒーターとして接触ヒーターを用いてもタール状のミストが溜まりにくく、一般的にミストが溜まり易いアラミド繊維であっても安定して加工することができ、接糸面の頻繁な清掃は不要である。
上記仮撚り加工は、バッチ式製造方法と同様、加圧下、減圧下、常圧下のいずれで行われてもよいが、常圧下で行われるのが好ましい。
本発明に係る耐熱性捲縮糸は、上記の方法以外にも以下のような方法で製造することができる。すなわち、耐熱高機能繊維糸条で編み地を作成し、この編み地を熱セット処理した後、編み地を解編(編み地をほどくこと)して耐熱性捲縮糸を得る方法である。熱セット処理としては、上記高温高圧水蒸気処理または乾熱処理を用いてよく、その条件などは上記に従ってよい。中でも高温高圧水蒸気処理を用いるほうが好ましい。
この場合編み地を作成するときの糸条の撚りは糸条を拘束するので少ない方が良く、撚係数は0〜500が望ましく、0に近いほうがより望ましい。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
各物性等の評価方法は次の方法に依拠した。
限界酸素指数:JIS K 7201:1999 酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法により測定した。
熱分解点:JIS K 7120:1987 プラスチックスの熱重量測定方法により測定した。
伸縮性:JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.11.A法により伸縮伸長率および伸縮弾性率を測定した。
繊度:JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.3により正量繊度を測定した。
引張強さ:JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.5.1に準じて測定した。但し、単繊維の乱れを無くし糸条を構成する単繊維それぞれに応力がかかるように測定前に撚り係数K=1000の撚りを加えて測定した。
スナール指数:JIS L 1095:1999 一般紡績糸試験方法9.17.2 B法に準じて測定した。
〔実施例1〕
限界酸素指数29、熱分解点537℃、引張強さ2.03N/tex、引張弾性率49.9N/tex、繊度0.167texの単糸が1000本束となった繊度167texの東レ・デュポン株式会社製ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維フィラメント糸条(商品名ケブラー)を使用して、該糸条にリング撚糸機(株式会社柿木製作所製 複合撚糸機タイプKCT)で撚り係数K=6308相当の第1の撚りを加えた後、180℃の飽和水蒸気による熱処理を30分行った。次いで、上記撚糸機により第1とは逆方向に第2の撚りを与えて撚り数が0になるまで解撚し、本発明にかかる捲縮糸を得た。この捲縮糸の物性を測定した。
〔実施例2、3および比較例1、2〕
糸条に加える第1の撚りの撚り係数が表1に示した値であること以外は、実施例1と同じ糸種を用いて同じ方法で飽和水蒸気による熱処理および加撚、解撚を行った。その結果、得られた捲縮糸の物性を測定した。
なお、実施例2および3における撚り係数の値は本発明における好ましい範囲に入っており、一方比較例1および2における撚り係数の値は本発明における好ましい範囲よりも低い値を選択した。
〔実施例4〕
繊度が22.2texであるほかは実施例1と同じ素材の糸条を用いて、該糸条に撚り係数K=5277相当の第1の撚りを加え、180℃の飽和水蒸気による熱処理を30分行い、次いで解撚して本発明に係る捲縮糸を得た。同じくその物性を測定した。
上記実施例1〜4および比較例1、2の結果をまとめて表1に示す。また、飽和水蒸気による熱処理前の撚り係数と、捲縮糸の代表的特性である伸縮伸長率との関係を図1に示す。同表および同図より、実施例1〜4による捲縮糸条は捲縮糸として十分な伸縮伸長率を有するが、比較例1、2は処理前の撚りの程度が低く伸縮伸長率が劣っていて実用に適さないことが分かる。
Figure 0004171480
〔実施例5〜7および比較例3〕
糸条に加える第1の撚りの撚り係数がK=8258であること、飽和水蒸気処理の時間が表2に示したように7.5〜60分間であること以外は、実施例1と全く同様にして、本発明に係る耐熱性捲縮糸を得た。
また比較例3として、実施例5〜7と同じ糸を用い同じ撚りをかけて、前記飽和水蒸気処理を行わず室温で1日放置後解撚して得た糸条についても物性を測定した。その結果をまとめて表2に示す。また処理時間と伸縮伸長率との関係を図2に示す。実施例5〜7および実施例2ならびに比較例3から分かることは、処理時間7.5分以上では伸縮伸長率にたいして変化がないことであり、本発明に係る耐熱性捲縮糸を得るための加熱時間は短時間で十分であることである。
Figure 0004171480
〔実施例8〜10および比較例3、4〕
糸条に加える第1の撚りの撚り係数がK=8258であること、飽和水蒸気処理時の水蒸気温度が表3に示したように130〜200℃であること以外は、実施例1と全く同様にして、本発明に係る耐熱性捲縮糸を得た。
比較例4では飽和水蒸気処理時の水蒸気温度が120℃の温度であること以外は、上述と全く同様にして捲縮糸を得た。結果を実施例2、比較例3とともに表3に示す。処理温度と伸縮伸長率との関係を図3に示す。これより実用的な捲縮糸の製造には、飽和水蒸気処理の温度条件が130℃以上であることが好ましいことが分かる。
Figure 0004171480
〔実施例11〜14、比較例5,6〕
実施例1と同じ糸条を用い、表4で示した撚り係数の撚りをリング撚糸機で加え、該撚り糸を熱風乾燥機に入れて表4に示した条件で乾熱処理を行った。次いで、上記撚糸機により第1とは逆方向に第2の撚りを与えて撚り数が0になるまで解撚し、本発明に係る耐熱性捲縮糸を得た。
比較例5では、乾熱処理時の温度が130℃であったこと以外は、実施例11と同様に行った。
また、比較例6では、撚り係数K=4846の撚りを加えたこと以外は、実施例12と同様に行った。
その結果を表4に示す。処理温度と伸縮伸長率との関係を図3に示す。試験した範囲では、高温高圧水蒸気を用いた製造方法及び乾熱処理を用いた製造方法ともに、熱処理の温度が高いほど得られる捲縮糸の伸縮伸長率は高い。また、上記の条件では、高温高圧水蒸気処理を用いたほうが乾熱処理を用いたよりも、伸縮伸長率の高い捲縮糸が得られた。
また、比較例5は、乾熱処理時の温度が130℃と低いので、得られた捲縮糸の伸縮伸長率がやや低かった。したがって、乾熱処理時の温度は140℃以上が好ましいことがわかった。一方、比較例6では、第1の撚りの撚り数が少なかったので、同じく得られた捲縮糸の伸縮伸長率がやや低かった。したがって、第1の撚りは、撚り係数が5,000以上であることが好ましいことがわかった。
Figure 0004171480
〔実施例15〕
繊度が22.2texであるほかは実施例1と同じ素材の糸条に、イタリー式撚糸機で1850回/m(撚り係数K=8775)の撚りを加え、糸重量500gをアルミニウム製のつば付ボビンに巻き取った。撚り方向S、Z夫々が同数のチーズを作成した。これを飽和水蒸気処理用の密閉容器に入れ、180℃で30分飽和水蒸気処理を行った。冷却後、イタリー式撚糸機で撚り数が0となるまで逆撚りをかけて本発明に係る耐熱性捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸の伸縮伸長率は17.1%であった。この捲縮糸は若干のトルクが残っているので、S、Z異なる残留トルクの捲縮糸条を引き揃えてトルクを打ち消し、合計88texの糸条をSFG−10Gシームレスグローブ編み機(島精機株式会社製)に供給し、本発明に係る作業用手袋を編み上げた。得られた作業用手袋の切れにくさ(Cut protection performance)をASTM F1790−97に従って測定したところ、6.8Nであった。
一方、比較として、上記本発明に係る耐熱性捲縮糸の代わりに、市販のウーリーポリエステルフィラメント糸16.5tex(単糸数48フィラメント 東レ株式会社製)を6本引き揃えて合計99texとなっている糸条を用いて、上記と全く同様にして手袋を編み上げ、上記と全く同様にして切れにくさを測定したところ3.5Nであった。このように、本発明に係る手袋は、切れにくさにおいて優れていることがわかった。
得られた作業用手袋は捲縮糸から構成されているので、ケブラー紡績糸から作られている手袋と比べて毛羽が発生しにくく、また薄くて伸縮性に富んでいるので細かな部品を扱いやすい特徴をもつ。したがって、この手袋は例えば電子部品のハンダ付け作業やクリーンルームでの組立て作業時、またはアルミ建材、家庭電化製品もしくは自動車などの塗装工程時の安全確保、やけどや鋭利な部品による怪我の防止などに有効である。
〔実施例16〕
実施例15と同じ糸条、同じ撚り条件の撚り糸500gをアルミボビンに巻き上げ、これを180℃の高温高圧水中で10分間処理した後、冷却・脱水・乾燥を行い、ついで実施例15と同じようにイタリー式撚糸機でより数が0となるまで逆撚りをかけて本発明に係る耐熱性捲縮糸を得た。得られた捲縮糸条の伸縮伸長率は18%であった。また、撚りのセットムラがなく、均一性に優れたものであった。
〔実施例17〕
実施例15と同じ糸条、同じ撚り条件の撚り糸500gをアルミボビンに巻き上げ、これを250℃の熱風乾燥器で30分間処理した後、自然冷却し、実施例15と同じようにイタリー式撚糸機でより数が0となるまで逆撚りをかけて捲縮糸条を得た。得られた糸条の伸縮伸長率は12%であったが、ボビンの巻き層内部への熱の伝達が十分でなく撚りセットムラ部分がありその部分の伸縮伸長率が低く、捲縮ムラが甚だしくて捲縮糸としては実用に耐えなかった。
しかしながら、ボビンの捲き厚を半分にして上記問題点を解決した。このように、乾熱処理ではボビンの糸層が厚いとき熱処理ムラによる捲縮ムラが発生しやすいので、乾熱処理を用いて本発明に係る捲縮糸の製造する際にはボビンの巻厚はあまり厚くしないほうが好ましい。
〔実施例18〕
長さ10mの加熱ゾーンと長さ5mの空冷ゾーンの間に仮撚り装置を設け、両ゾーンを通過するヤーンに撚り数1760回/m(撚り係数K=8258)の撚りをかけ、加熱ゾーンで撚り固定を行い空冷ゾーンで撚りを解撚するいわゆる仮撚り方式により連続的に本発明に係る耐熱性捲縮糸を得た。原糸として、繊度が22texであるほかは実施例1と同じ素材の糸条であるパラ系アラミド繊維ケブラー22Texを用いた。加熱ゾーンは300℃に加熱し、糸条の送り込み速度は10m/分であった。得られた耐熱性捲縮糸の物性は、伸縮伸長率が12.5%、伸縮弾性率が82.6%、捲縮糸繊度が22.9tex、強度が0.96N/texであった。
〔実施例19〕
実施例18で得られたパラ系アラミド繊維ケブラーの捲縮糸は若干のトルクが残っているので、S、Z異なる残留トルクの捲縮糸条を引き揃えてトルクを打ち消し、島精機の13ゲージシームレスグローブ編機へ供給し、薄手のグローブを得た。このグローブは、紡績糸で作ったグローブと異なり、次の利点がある。
1)伸縮性があって手によくフィットし、手の動きを阻害しないので作業性がよい。
2)毛羽がでにくいのでクリーンルームなどの埃の許されない環境での作業に適する。
〔実施例20〕
実施例1と同じポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名:ケブラー)のフィラメント糸条にリング撚糸機を用いて撚り数640t/m(撚り係数8270)の撚りを加え、アルミニウムからできているボビンに巻き取って高温高圧水蒸気処理を行った後、リング撚糸機で撚り数が0になるまで解撚し、本発明にかかる耐熱性捲縮糸を得た。高温高圧水蒸気処理温度は200℃、処理時間は15分間であった。
〔実施例21〜24〕
ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の代わりに、実施例21ではポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維〔高弾性タイプ〕(東レ・デュポン株式会社製、商品名:ケプラー49)を、実施例22ではコポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名:テクノーラ)を、実施例23では全芳香族ポリエステル繊維(株式会社クラレ製、商品名:ベクトラン)を、実施例24ではポリベンゾビスオキサゾール繊維(東洋紡株式会社製、商品名:ザイロン)を用いた以外は、実施例20と同様にして本発明にかかる耐熱性捲縮糸を得た。ただし、表5に示すように、フィラメント糸に加えられる撚りは、実施例20とは異なる撚り数に変えた。
〔実施例25〕
実施例20より細い繊度(22.2tex)の糸条を用い、フィラメント糸に加えられる撚りの単位長さ当たりの撚り数を1600t/mと多くし(表5参照)、そのためリング撚糸機の代わりに撚り数が多い場合の撚糸に適したダブルツイスターを用いて加撚、解撚した以外は、実施例20と同様にして、本発明にかかる耐熱性捲縮糸を得た。
〔実施例26〕
ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の代わりに、繊度が22.2texのポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(デュポン社製、商品名:ノーメックス)からなる糸条を用いた以外は、実施例25と同様にして、本発明にかかる耐熱性捲縮糸を得た。
実施例20〜26で得られた耐熱性捲縮糸の物性を表5に示す。なお、表5中の引張強度、引張弾性率、熱分解点、限界酸素指数、原糸繊度は、捲縮糸に加工する前のフィラメント糸条の物性を示す。
その結果、試験したいずれの繊維を用いても捲縮の程度を示す伸縮伸長率は8.5%以上であった。特にパラ系アラミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維およびコポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維、メタ系アラミド繊維であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維は高い伸縮伸長率を示した。中でもメタ系アラミド繊維であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の伸縮伸長率は、104.6%であり、一般に使用される汎用繊維のポリエステル捲縮糸の伸縮伸長率と遜色のない高い捲縮特性であった。
Figure 0004171480
〔実施例27〕
ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名:ケブラー)からなる22.2texフィラメント糸条1本を総数150本の編み針が直径91mmの円周状に配列された丸編み機に供給し、編み組織天竺の筒状の編み地を作成した。これを200℃の飽和水蒸気で15分間処理した。ついで編み地を自然放冷した後、編み地の一端から編み糸をほどいた。ほどかれた糸条は編み形状が記憶された捲縮糸である。該捲縮糸の伸縮伸長率は35%、伸縮弾性率は56%であった。
〔実施例28〕
ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(デュポン社製、商品名:ノーメックス)からなるフィラメント糸を用い、実施例27と同様にして編み組織天竺の筒状の編み地を作成した。該編み地を200℃において0.5分間熱風乾燥機で加熱した。ついで編み地を自然放冷した後、編み地の一端から編み糸をほどいて、捲縮糸を製造した。得られた捲縮糸の引っ張り強度および明度を測定した。なお、引っ張り強度は、つかみ間隔200mm、引っ張り速度200mm/分の定速引っ張り試験器で測定した。明度は、スガ試験器株式会社製SMカラーコンピュータで測定した。
〔実施例29、30または比較例7、8〕
表6に示した温度で加熱処理した以外は、実施例28と全く同様に行った。なお、実施例29または30は、本発明の好ましい温度範囲内で加熱処理し、比較例7または8は本発明の好ましい温度範囲よりも高い温度で加熱処理した。
その結果を表6に示す。また、乾熱処理時の温度と引っ張り強度の関係を図4に、乾熱処理時の温度と明度の関係を図5に示す。図4から明らかなように、350〜400℃にかけて引っ張り強度の低下がみられた。また、図5から明らかなように、350〜400℃にかけて明度が低下し、白色であったメタ系アラミド繊維が茶褐色に変色した。
Figure 0004171480
飽和水蒸気処理前の撚り係数と、捲縮糸の代表的特性である伸縮伸長率との関係を示す。 処理時間と伸縮伸長率との関係を示す。 処理温度と伸縮伸長率との関係を示す。 乾熱処理時の温度と引っ張り強度の関係を示す。 乾熱処理時の温度と明度の関係を示す。

Claims (5)

  1. 単糸繊度が0.02〜1texである、パラ系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維およびポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維から選択される耐熱高機能繊維からなり、該耐熱高機能繊維に撚りを加えた後、高温高圧水蒸気または高温高圧水処理により2〜100分間熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚を行うことにより得られる、伸縮伸長率が6%以上、伸縮弾性率が40%以上、強度が0.15〜3.5N/texであり、かつ下記式により計算される高温高圧水蒸気または高温高圧水処理後の糸条の強度保持率が30%以上であることを特徴とする加熱による品質劣化のない耐熱性捲縮糸。
    強度保持率(%)={耐熱性捲縮糸の強度(N/tex)/処理前の耐熱高機能繊維糸の強度(N/tex)}×100
  2. 強度が0.5〜3.5N/texであることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性捲縮糸。
  3. パラ系アラミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である請求項1または2に記載の耐熱性捲縮糸。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性捲縮糸を繊維部分の50%以上含む嵩高で伸縮性のある繊維製品。
  5. 精密機械産業、航空機産業、情報機器産業、自動車産業、電気製品産業、医療手術もしくは衛生分野で使用される手袋、消防服、自動車レース用のレーシングスーツ、または製鉄用、溶接用もしくは塗装用作業服である請求項4に記載の嵩高で伸縮性のある繊維製品。
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