JP4167595B2 - 酵素電極およびその製造方法 - Google Patents

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Description

技 術 分 野
本発明は、酵素電極およびその製造方法に関し、より具体的には、酵素反応を用いて、溶液中の特定の化学物質を電気化学的に測定するための、酵素電極およびそれを利用するバイオセンサに関する。
背 景 技 術
生体試料等に含まれる各種成分を測定する方法として、酵素反応と電気化学反応とを組み合わせた測定方法が広く用いられている。例えば、酵素の触媒機能を利用して、溶液中の化学物質を酵素反応産物と過酸化水素に定量的に変換し、次いで、この過酸化水素を酸化還元反応により計測するバイオセンサが汎用化している。例えば、グルコースバイオセンサにおいては、グルコースオキシターゼ(GOX)によってグルコースを酸化し、グルコノラクトンと過酸化水素を生成させる。該過酸化水素の生成量は、グルコース濃度に比例するため、過酸化水素の発生量を測定することによって、試料中のグルコース濃度を定量できる。酵素の触媒機能は、一般に基質濃度と比例して反応産物を与えるが、前記比例関係が保たれる基質濃度には限界がある。このため、限界濃度以上の基質濃度を測定する場合には、バイオセンサは、酵素に達する基質量を減らすための制限透過機能を有していた。例えば、バイオセンサに利用される、酵素電極中の固定化酵素層の上部に、制限透過層を形成する手法が従来利用されていた。
また、本発明者は、従来技術の有する上記課題を解決すべく、テフロンのようなフッ素含有量の多いポリマーで構成される膜に代えて、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを主成分として含む膜を利用する、優れた制限透過層の開発に成功し、すでに特許出願している(特開平2000−81409号公報)。この特開平2000−81409号公報に開示される酵素電極は、前記の特定の構造を有するポリマーを主成分とする膜からなる制限透過層を具えていることで、広範囲の使用条件下において測定することが可能であり、長期使用に対して良好な耐久性を示す。
その他、制限透過層を有するバイオセンサの例として、米国特許5,696,314号は、固定化酵素層の上に形成されている、テフロン粒子等を含む多孔質性の制限透過層を有する酵素電極を開示している。該酵素電極では、図5に示すように、基板30上に白金等からなる電極31が形成され、その上に固定化酵素層32が形成されている。そして、固定化酵素層32の上に、接着層33を介して固定化酵素層32に含まれる酵素と同一の酵素を含む高分子層34が形成されている。さらに、高分子層34の上に、制限透過層35、接着層36、保護層37が形成されている。該制限透過層35は、多孔質性の膜であり、ポリマー粒子、金属粒子、およびポリマーバインダーを必須成分として構成されており、前記ポリマー粒子およびポリマーバインダーの材料としてテフロン(登録商標;ポリテトラフルオロエチレン)を用いる例が開示されている。制限透過層35は、スクリーン印刷法を用いて形成される。すなわち、まず、テフロンバインダーをフッ素含有溶剤に溶解させ、次いで、その液にアルミナ粒子、テフロン粒子等を混合した混合物を練り混み(rollmilled)、インクとする。高分子層34の上に、作製したインクをスクリーン印刷(stenciled)することにより、制限透過層35を形成する。
しかしながら、テフロンを用いた制限透過層は、十分な柔軟性に欠けるため、隣接する層が膨潤した場合、その膨潤に充分に追随する変形を行うことができない。従って、酵素電極の使用中に、制限透過層と、固定化酵素層等の隣接層との間で、剥離が生じやすいという問題があった。一度剥離が生じると、酵素電極の固定化酵素層等の表面と制限透過層との間に、一定の間隙が生じることとなり、それ以降、正確な測定が困難になる、あるいは、前記間隙に浸入する液の洗浄除去に長時間を要し、再測定に先立つ準備時間が長くなる、という課題を有していた。
また、上記特許公報に示されている、テフロンバインダー等のフッ素含有量の多いポリマーバインダーを用いる場合、溶剤に対する溶解性が十分でないため、液粘性を制御した溶液の調製が困難である。そのため、スピンコート法等の技術により、塗布層を形成することが難しく、制限透過層の薄層化が困難である。加えて、上記フッ素含有量の多いポリマーで構成される膜を用いた制限透過層は、多孔質性の膜とすることによって制限透過性を発現させるものであるため、膜厚をある程度厚く確保する必要がある。上記特許公報には、該制限透過層35は、10〜40μmの層厚を有することが好ましいと記載されている。以上のように、制限透過層の層厚を厚くせざるを得ないため、バイオセンサの応答速度を遅くし、また、測定後、該制限透過層に浸潤している液の洗浄除去に長時間を要するという課題を有していた。
さらに、上述のように、テフロンのようなフッ素含有量の多いポリマーで構成される膜は柔軟性に欠けるため、隣接する層の膨潤によって、該制限透過層は破損されやすく、この点でも改善の余地を有している。特に、膨潤性の固定化酵素層と隣接して、該制限透過層を配置する場合、この問題が顕著となる。
このように、上記特許公報記載の酵素電極で利用されている、フッ素含有量の多いポリマーで構成される膜からなる制限透過層では、その強度、および制限透過層と固定化酵素層等の隣接する層と間の密着力が必ずしも充分ではない。また、フッ素含有量の多いポリマーで構成される膜からなる該制限透過層は、柔軟性に欠けるため、隣接する層が膨潤した場合、その膨潤に充分に追随する変形を行うことができない。その結果、酵素電極の使用中に、制限透過層と、固定化酵素層等の隣接層との間で、剥離が生じやすいという問題があった。一度剥離が生じると、酵素電極の固定化酵素層等の電極表面部と制限透過層との間に、一定の間隙が生じることとなり、それ以降、
(i)正確な測定が困難になる、
(ii)酵素電極に浸潤している液の洗浄除去に長時間を要し、再測定に先立つ準備時間が長くなる、という問題が生じることがある。
発明の開示
本発明者は、上記特開平2000−81409号公報に開示される構成を有する酵素電極を、量産化するための検討を精力的に進めた。その結果、設計した性能を満たす酵素電極を、歩留まり良く作製するためには、例えば、前記制限透過層の膜厚を0.01〜1μmの範囲に選択することで、前記制限透過層とその下地層(例えば、固定化酵素層)との間の密着性を向上させることが可能であるとの知見が得られた。上記特開平2000−81409号公報に開示される構成を有する酵素電極では、前記特定な構造のフッ素含有ポリマーを主成分とする膜を利用する制限透過層を具えているため、テフロン粒子等を混合した、テフロンのようなフッ素含有量の多いポリマーで構成される膜からなる制限透過層等に比べ、下地層との密着性が大幅に改善されている。しかしながら、1枚の基板上に大量の酵素電極を同時に作製するプロセスを採用して、ウエハ単位で複数の電極を量産するプロセスでは、制限透過層とその下地層(例えば、固定化酵素層)との間で、さらに強力な密着性が望まれる。固定化酵素層や制限透過層などを含む多層膜を表面に形成したウエハを加工する工程、例えば、表面に多層膜の形成されたウエハから、単一チップを切り分ける工程や、切り分けた単一チップを筐体等に実装する工程を実施する際、前記多層膜に対して、大きな機械的な負荷が加わるため、この負荷に耐え得る密着性、ならびに、変形への追従能を有する層構造が望まれる。
さらには、特開平2000−81409号公報に記載の製造方法に従うと、単一チップ単位で酵素電極を作製する限り、長期使用時における測定安定性に優れた酵素電極が再現性よく得られるものの、1枚の基板上に大量の酵素電極を同時に作製するプロセス、所謂ウエハプロセスにおいては、単一チップ単位で酵素電極を作製するプロセスと比べ、個々の酵素電極の性能差が大きくなる傾向にある。所謂ウエハプロセスにおいて、所望の性能を有する酵素電極を歩留まり良く得るためには、制限透過層について、それを構成する膜の材料以外の観点からの検討も重要となる。
本発明は前記の量産化を進める上での幾つかの課題を解決するもので、本発明の目的は、広範囲の使用条件下において使用でき、長期使用に対する耐久性が良好で、しかも、生産性に優れた酵素電極を提供することにある。特には、本発明の目的は、大量生産プロセス(ウエハプロセス)を採用した場合にも、所望の性能が安定的に得られる構造の酵素電極を提供することにある。
本発明者は、特開平2000−81409号公報に開示される、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを主成分として含む膜を利用する、優れた制限透過層の特徴を保持しつつ、ウエハプロセスにおいて、歩留まり良く酵素電極を量産化する上で、より適する酵素電極の構成、ならびにその製造方法について鋭意検討した結果、前記の特定の構造を有するポリマーを主成分とする膜からなる制限透過層を、固定化酵素層の上部に形成する際に、下記する電極構成とすることで、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに到った。
本発明の第一の形態によれば、固定化酵素層と制限透過層との間に、シラン含有化合物を含む密着層を介在させる電極構成を有する酵素電極が提供される。すなわち、本発明の第一の形態による酵素電極は、
絶縁基板上に設けられた電極部と、該電極部の上部に形成された固定化酵素層と、該固定化酵素層の上部に形成された、シラン含有化合物を含む密着層と、該密着層の上面に接して形成された、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを含む制限透過層と、を有することを特徴とする酵素電極である。また、本発明の第一の形態によれば、該本発明の第一の形態による酵素電極を利用するバイオセンサの発明も提供され、すなわち、該本発明の第一の形態によるバイオセンサは、前記構成を有する酵素電極を具備するバイオセンサである。
本発明の第一の形態による酵素電極は、固定化酵素層の上部にシラン含有化合物を含む密着層を具え、密着層の上面に接して、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを含む膜からなる制限透過層が形成されている。この特定な構造のフッ素含有ポリマーからなる膜と密着層とを組み合わせることにより、制限透過層とその下地層(例えば、固定化酵素層)との間の密着性が顕著に向上し、製造安定性に優れた高性能の酵素電極が得られる。この密着層に起因する密着性向上の効果は、制限透過層の形成に利用するフッ素含有ポリマーが、前記の特定な構造を有するフッ素含有ポリマーである際に、特に顕著となる。前記シラン含有化合物を含む密着層によって密着性が向上する理由、機構はかならずしも明らかではないが、固定化酵素層の上部に密着層を形成した結果、下地層の表面が改質され、制限透過層の形成に利用される前記特定な構造を有するフッ素含有ポリマーの濡れ性が改善されることによると推察される。例えば、該密着層をシランカップリング剤により構成する場合、シランカップリング剤が下地層表面を覆うことによって、表面張力が低下して表面親水性が増し、前記特定な構造を有するフッ素含有ポリマーの濡れ性が向上するものと考えられる。
この密着層を利用する密着性の改善効果は、制限透過層を構成する前記特定な構造を有するポリマー材料と、密着層を構成するシラン含有化合物との相乗作用によるものであり、制限透過層の構成ポリマー材料としてテフロンのように主骨格中に多くのフッ素を含むポリマーを用いる場合は、前記密着層の利用による密着性改善効果は充分に得られない。
また、本発明の第一の形態においては、上記の本発明の第一の形態による酵素電極の製造方法の発明として、次ぎの製造方法が提供され、すなわち、本発明の第一の形態による酵素電極の製造方法は、
絶縁基板の主面に電極膜を形成した後、該電極膜をパターニングして複数の電極部を形成する工程と、
絶縁基板主面に酵素を含む液を塗布した後、絶縁基板を乾燥させて固定化酵素層を形成する工程と、
絶縁基板主面上にシラン含有化合物を含む密着層を形成する工程と、
絶縁基板主面に、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを含む液を塗布した後、絶縁基板を乾燥させて制限透過層を形成する工程と、
絶縁基板をダイシングして複数の酵素電極を得る工程と、を含むことを特徴とする酵素電極の製造方法である。
この本発明の第一の形態による酵素電極の製造方法は、複数の酵素電極を一つの基板上に作製する方法である。従来、酵素電極を作製する場合、予めチップ単位に切り出した基板上に制限透過層等を形成する方法が採用されている。この従来の製造方法について、図19、20を参照して説明する。まず、基板に複数の電極部を形成した後、チップ単位で切り出す(図19(a))。例えば、スピナー表面に両面テープを貼り(図19(b))、次いで、電極部の形成された、基板チップを配置したフレキシブル基板を、両面テープを利用してスピナーに取り付ける(図19(c))。電極部に所定の溶液を滴下した後(図20(d))、スピナーを所定の回転数で回転させる(図20(e))。得られた酵素電極は、40℃、窒素雰囲気下の窒素ボックスに保管する(図20(f))。このチップごとに制限透過層等の形成を行う工程を採用する製造プロセスでは、量産化を進める上で、生産効率の向上に限界がある。それに対して、本発明の第一の形態では、基板上に複数の酵素電極を形成し、その後、酵素電極チップを切り出すという製造プロセスを採用するとともに、この製造プロセスによって、良好な製造安定性で酵素電極を形成するための手段として、上記特定な構造のフッ素含有ポリマーを利用する制限透過層を有する酵素電極構造を採用している。かかる特定な構造のフッ素含有ポリマーは、下地層に対する塗布性に優れる上、比較的低粘度の溶液または分散液として調製することができる。この特性を利用することで、例えば、スピンコート法により、基板全面に均一な層を再現性よく形成することが可能となり、基板上に複数の酵素電極を好適に形成することができる。
上記本発明の第一の形態による酵素電極の製造方法においては、固定化酵素層を形成する工程の後、絶縁基板主面にシラン含有化合物を含む液を付着した後、絶縁基板を乾燥させて密着層を形成し、次いで、該絶縁基板主面を被覆する密着層の上面に前記フッ素含有ポリマーを塗布した後、絶縁基板を乾燥させて前記制限透過層を形成する工程を実施すれば、制限透過層とその下地となる密着層との間の密着性が一層良好となり、製造安定性が良好となる。既に説明したように、この一層良好な密着性は、制限透過層を構成する特定な構造を有するフッ素含有ポリマー材料と、シラン含有化合物を含む密着層との相乗作用により得られる。
従来の製造方法では、基板をダイシングして複数の酵素電極を得る工程や、酵素電極に対して、ボンディングにより配線を行う工程において、加わる機械的な負荷によって、制限透過層と下地層との間で剥離が発生したり、あるいは、これらの層の破損が生じたりすることもある。上記本発明の第一の形態による酵素電極の製造方法では、制限透過層の形成工程に先立ち、シラン含有化合物を用いて密着層を形成する工程を有するため、製造プロセス中における前記の剥離・破損の発生を有効に防止することができる。
本発明の第二の形態によれば、固定化酵素層の上部に形成される制限透過層を、該酵素電極の最表面に配置した上で、上記特定な構造のフッ素含有ポリマーを利用する制限透過層の表面を多数の溝を有する形態、あるいは、表面に凹凸形状を有し、平均層厚に対する表面粗さを所定の範囲とする形態とする構成を有する酵素電極が提供される。すなわち、本発明の第二の形態による酵素電極は、
絶縁基板上に設けられた電極部と、該電極部の上部に形成された固定化酵素層と、
該固定化酵素層の上部に形成され、最表面に配置された制限透過層と、を有し、
前記制限透過層は、主としてフッ素含有ポリマーを含んでなる膜からなり、
主としてフッ素含有ポリマーを含んでなる膜からなる前記制限透過層の表面には、多数の溝が設けられていることを特徴とする酵素電極である。または、本発明の第二の形態による酵素電極は、
絶縁基板上に設けられた電極部と、該電極部の上部に形成された固定化酵素層と、
該固定化酵素層の上部に形成され、最表面に配置された制限透過層と、を有し、
前記制限透過層は、主としてフッ素含有ポリマーを含んでなる膜からなり、
前記制限透過層の平均厚みを、0.01〜1μmの範囲に選択し、
主としてフッ素含有ポリマーを含んでなる膜からなる前記制限透過層の表面は、表面粗さが、前記制限透過層平均厚みの0.0001倍以上1倍以下の範囲となる凹凸形状を有することを特徴とする酵素電極である。
本発明の第二の形態による酵素電極においても、最表面に配置される制限透過層は、主として上記の特定な構造を有するフッ素含有ポリマーを含む層に構成されている。本発明の第二の形態による酵素電極は、この要件を満たす制限透過層について、その表面形状を特定したものである。従来、酵素電極に利用する制限透過層についての技術的検討は、主として、制限透過層を構成する材料や膜厚の設計等について行われ、材料の選択や膜厚の設計により制限透過能力の向上等が図られてきた。一方、本発明の第二の形態では、最表面に配置される制限透過層の表面形状を、従来にない新規な構成の表面形状とすることにより、酵素電極の長期測定安定性、測定精度、ならびに酵素電極生産時の歩留まりの向上を図っている。
後述の実施例にて詳細に説明するように、本発明の第二の形態による酵素電極では、制限透過層として、表面に多数の溝を設ける形状、あるいは、凹凸状態を有するものの、その表面粗さを規定した構成を採用することにより、酵素電極の長期測定安定性、測定精度、ならびに酵素電極生産時の歩留まりが向上する。この向上が達成される理由は、必ずしも明らかではないが、上記する制限透過層表面の構成を採用することにより、汚染物質の酵素電極表面への付着がある程度抑制されること、電極表面に付着した汚染物質が測定後の洗浄時により取り除かれやすくなっていること、加えて、所定の表面形状を具えることにより制限透過層の強度が向上することが、制限透過層の性能向上に寄与しているものと推定される。
表面に溝を設ける、あるいは、表面粗さを所定の範囲とすることによる性能向上の程度は、制限透過層を構成する材料や厚み等にも大きく依存する。本発明の第二の形態による酵素電極では、制限透過層を、主として上記の特定な構造を有するフッ素含有ポリマーを含む層に構成し、加えて、その厚みを上記の範囲に選択する薄い膜とする際に、制限透過層の性能向上の程度が顕著となる。
本発明の第二の形態においては、酵素電極の最表面に配置する制限透過層を、表面に溝を設ける、あるいは、制限透過層の表面粗さを所定の範囲とするため、ウエハ表面に固定化酵素層および制限透過層を含む多層膜を形成し、最表面の制限透過層製膜終了後、チップ単位に切り出して酵素電極を得る製造プロセス方式を採用することができ、その方式を採用した上で、制限透過層の製膜法として、スピンコート法を採用し、上記の特定な構造を有するフッ素含有ポリマーを含む液を塗布し、次いで、乾燥させて制限透過層を形成する工程とし、さらには、そのスピンコート条件を適切に設定することが有効である。
従って、本発明の第二の形態においては、上記の本発明の第二の形態による酵素電極の製造方法の発明として、次ぎの製造方法が提供され、すなわち、本発明の第二の形態による酵素電極の製造方法は、
絶縁基板の主面に電極膜を形成した後、該電極膜をパターニングして複数の電極部を形成する工程と、
絶縁基板主面に酵素を含む液を塗布した後、絶縁基板を乾燥させて固定化酵素層を形成する工程と、
絶縁基板主面に、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを含む液をスピンコート法により塗布した後、絶縁基板を乾燥させて制限透過層を形成する工程と、
絶縁基板をダイシングして複数の酵素電極を得る工程と、
を含むことを特徴とする酵素電極の製造方法である。
この本発明の第二の形態による酵素電極の製造方法においては、前記の特定な構造を有するフッ素含有ポリマーを含む液をスピンコート法により塗布、乾燥して制限透過層を形成しているので、形成される制限透過層表面に多数の溝が形成される、あるいは、適度な表面粗さを有する制限透過層を安定的に形成することができる。
加えて、本発明の第二の形態による酵素電極の製造方法において、
固定化酵素層を形成する工程の後、絶縁基板主面にシラン含有化合物を含む液を付着した後、絶縁基板を乾燥させて密着層を形成し、
次いで、該密着層の上面に前記特定な構造を有するフッ素含有ポリマー液をスピンコート法により塗布した後、絶縁基板を乾燥させて前記制限透過層を形成する工程を実施するプロセス構成を採用することもできる。ここで、密着層の形成に利用する前記シラン含有化合物として、シランカップリング剤を用いることが好適である。特定な構造を有するフッ素含有ポリマーを含む制限透過層とシラン含有化合物を含む密着層とを組み合わせることにより、制限透過層とその下地層(例えば、固定化酵素層)との間の密着性が顕著に向上し、製造安定性に優れた高性能の酵素電極が得られる。
なお、本発明の第二の形態において、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーは、フッ素を含まないビニル系重合体として、ポリカルボン酸(A)を有し、該ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルとすることができる。また、フッ素を含まないビニル系重合体として、ポリカルボン酸(A)を有し、該ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルに加えて、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルをも含む混合物とすることができる。さらに、主として、フルオロアルコールエステル基およびアルキルアルコールエステル基を有するポリカルボン酸エステル化合物からなるフッ素含有ポリマーとすることもできる。このようなフッ素を含まないビニル系重合体をポリマー鎖骨格に有するフッ素含有ポリマーを用いることにより、スピンコート法により塗布法を採用した際、表面に多数の溝が形成され、適度な表面粗さを有する制限透過層を、より安定的に形成することができる。
本発明の第二の形態による酵素電極の製造方法において、上記の特定な構造を有するフッ素含有ポリマーを含む液の調製には、溶媒として、フッ素含有化合物からなる溶媒を用いることができる。スピンコート法による塗布工程で、このフッ素含有化合物からなる溶媒を利用すれば、表面に多数の溝が形成され、あるいは適度な表面粗さを有する制限透過層を、より一層安定的に形成することができる。
この本発明の第二の形態による酵素電極の製造方法も、ウエハ単位で複数の酵素電極を作製する方法である。従来、酵素電極を作製する場合、予めチップ単位に切り出した基板上に制限透過層等を形成する方法が採用されている。この従来の製造方法は、上述する図19、20に示す工程を採用する製造プロセスであり、量産化を進める上で、生産効率の向上に限界がある。それに対して、本発明の第二の形態でも、基板上に複数の酵素電極を形成し、その後、酵素電極チップを切り出すという製造プロセスを採用することで、スピンコート法により、基板全面に均一な平均層厚の塗布膜を再現性よく形成することが可能となり、基板上に複数の酵素電極を好適に形成することができる。加えて、このスピンコート法で塗布後、乾燥して膜を形成する工程を採用することにより、表面に多数の溝が形成され、適度な表面粗さを有する制限透過層を、基板全面において、歩留まり良く得られるのである。
発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明の第一の形態ならびに第二の形態について、それぞれより詳細に、個別的な実施形態を参照しつつ説明する。
先ず、本発明の第一の形態における好適な実施形態として、下記の第1の実施の形態〜第4の実施の形態を説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第一の形態にかかる、第1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に、第1の実施形態の酵素電極の構成を示す。図1に示すように、絶縁基板1上に作用極として機能する電極2が設けられ、その上面を被覆するように尿素化合物から主としてなる電極保護層5が形成されている。電極保護層5は、電極2部分にのみ選択的に形成されている。これらの上に、γ−アミノプロピルトリエトキシシランから主としてなる結合層3が形成され、さらにその上に、有機高分子を母材として、酵素を固定化した固定化酵素層4が形成され、その上にγ−アミノプロピルトリエトキシシランにより構成された密着層8が形成され、そして、密着層8上面上にポリカルボン酸樹脂のフルオロアルコールエステルを主成分とする制限透過層6が順次形成されている。
絶縁基板1の材料としては、セラミックス、ガラス、石英、プラスチック等の絶縁性の高い材料から主としてなるものを用いることができる。絶縁基板1に利用する材料は、耐水性、耐熱性、耐薬品性および電極との密着性に優れた材料であることが好ましい。
電極2の材料としては、例えば、白金、金、銀、炭素等を主成分とする導電性材料が用いられ、このうち耐薬品性および過酸化水素の検出特性に優れた白金が好ましく用いられる。絶縁基板1上の電極2は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、ケミカル・ベーパー・ディポジッション法、電解法等により形成することができ、このうちスパッタリング法の使用が望ましい。スパッタリング法の使用は、形成される導電性材料膜と絶縁基板1との密着性が良好であり、かつ、白金層を容易に形成できるからである。また、絶縁基板1と電極2の密着性を改善するために、これらの間にチタン層やクロム層などを挟んでも良い。
電極2を被覆する電極保護層5は、測定試料中に含まれる尿素等の汚染物質の電極への透過を制限する。例えば、電極保護層5は尿素化合物により構成される。尿素化合物としては尿素、チオ尿素等が挙げられ、このうち毒性が低くさらにコストの安い尿素が好ましく用いられる。但し、これらに限定されるものではない。本発明の酵素電極は、尿素化合物のような汚染物質を含む電極保護層を予め電極表面に設けておくことで、使用中、電極表面へ透過してくる尿素等の汚染物質による汚染を受ける結果、感度の変動を起こすことを防止するものである。従って、このような電極保護層の作用を考慮すれば、電極保護層に利用される尿素化合物の種類が上記のものに限定されないことは明らかである。
電極保護層5は、例えば、浸漬法、プラズマ重合法、電解法等で形成される。このうち、プロセス時間が短く、安価な装置で実施できる電解法が望ましい。すなわち、支持電解質と尿素化合物を含む混合溶液中に、電極を予め形成した絶縁基板を浸漬し、通電することにより、電極保護層を形成することが好ましい。尿素化合物として尿素を用いる場合、混合溶液中の尿素濃度は、好ましくは0.1mM〜6.7Mの範囲、さらに好ましくは1M〜6.7Mの範囲に選択する。また、支持電解質として塩化ナトリウムを用いる場合、混合溶液中の塩化ナトリウム濃度は、好ましくは0.1mM〜2Mの範囲、さらに好ましくは1.5mM〜150mMの範囲に選択する。前記の形成条件を選択することによって良質な電極保護層が得られ、使用中における汚染物質の電極への付着を効果的に制限するとともに、電極2における過酸化水素との反応に干渉する物質の電極への透過を制限して、電極2での過酸化水素との反応に対する良好な選択性を得ることができる。さらに、電極保護層5を設けることで、その上に形成される結合層3との密着性も向上する。
電極保護層5上に形成される結合層3は、その上の固定化酵素層4と、絶縁基板1および電極保護層5との密着性(結合力)を向上させる。また、結合層3は、絶縁基板1の表面の濡れ性を改善し、酵素を固定化した固定化酵素層4を形成する際、固定化酵素層4の膜厚の均一性を向上させる効果もある。さらには、結合層3は、電極2での過酸化水素の反応に干渉するアスコルビン酸、尿酸およびアセトアミノフェンに対する選択透過性も有する。この結合層3は、例えば、シランカップリング剤により構成することができる。利用可能なシランカップリング剤の種類としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−スルファニルプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、が挙げられるが、このうち、層間結合力、選択透過性の観点から、アミノシランの一種であるγ−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく用いられる。結合層3は、例えば、シランカップリング剤溶液をスピンコートすることにより形成することができる。このシランカップリング剤溶液を用いるスピンコート法により結合層3を作製する際、シランカップリング剤濃度は、1v/v%(体積%)程度とすることが好ましい。かかる条件を選択することで、得られる酵素電極全体における選択透過性が、顕著に向上するからである。
固定化酵素層4は、有機高分子を母材(バインダー)として、触媒機能をもつ酵素を固定化したものである。固定化酵素層4は、例えば、各種酵素、グルタルアルデヒド等のタンパク質架橋剤、およびアルブミンを含む溶液を、結合層3上に滴下し、スピンコート法にて形成される。アルブミンは、各種酵素を架橋剤の反応から保護するとともに、酵素タンパク質の基材となる。酵素としては、乳酸酸化酵素、グルコース酸化酵素、尿酸酸化酵素、ガラクトース酸化酵素、ラクトース酸化酵素、スクロース酸化酵素、エタノール酸化酵素、メタノール酸化酵素、スターチ酸化酵素、アミノ酸酸化酵素、モノアミン酸化酵素、コレステロール酸化酵素、コリン酸化酵素およびピルビン酸酸化酵素等の酸化酵素のうち、酵素による触媒反応の生成物として、過酸化水素を生成する、または酸素を消費する酵素が挙げられる。
固定化酵素層4に対して2種類以上の酵素を同時に用いて、過酸化水素を生成させてもよい。例えば、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、およびサルコシンオキシダーゼが、2種類以上の酵素を同時に用いる際の一例に該当する。これらの酵素を用いることによって、クレアチニンの検出が可能になる。また、固定化酵素層4に対して、酵素と補酵素を同時に用いてもよい。例えば、3−ヒドロキシ酪酸脱水素酵素とニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)が、酵素と補酵素を同時に用いる際の一例に該当する。これらの酵素と補酵素を用いることによって、3−ヒドロキシ酪酸の検出が可能になる。さらに、固定化酵素層4に対して、酵素と電子メディエータを同時に用いてもよい。その場合には、酵素によって還元された電子メディエータが電極表面上で酸化され、その際、得られる酸化電流値を電極2によって測定する。例えば、グルコースオキシダーゼとフェリシアン化カリウムが、酵素と電子メディエータを同時に用いる際の一例に該当する。この酵素反応系を用いることによって、グルコースの検出が可能になる。
以上述べたように、固定化酵素層4は、少なくとも酵素を含み、測定対象物質に作用して、電極感応物質である過酸化水素等に変換する機能を有する構成であれば、特に限定されない。
なお、固定化酵素層4の形成方法については、均一な膜厚を形成できる方法であれば特に制限がなく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップ法などを用いることができるが、このうち、スピンコート法を使用することが好ましい。スピンコート法を使用することにより、品質および厚みの均一な固定化酵素層が安定的に得られるからである。
固定化酵素層4上に形成される密着層8は、固定化酵素層4とその上の制限透過層6との密着性を向上させる役割を果たす。従来の酵素電極では、制限透過層を形成した後、基板をダイシングして複数の酵素電極を得る工程や、酵素電極に対して、ボンディングにより配線を行うとき、制限透過層と下地層との間に剥離が発生したり、これらの層の破損が生じたりすることがある。それに対して、本第一の実施形態の酵素電極では、制限透過層の形成に先立ち、シラン含有化合物を用いて密着層を形成しているため、このような剥離を有効に防止することができる。その結果、ウェハプロセスを利用して、特性の揃った酵素電極を安定的に製造することができる。また、制限透過層6を形成する際、形成される制限透過層の膜厚の均一性や表面平坦性を向上させる効果もある。さらには、電極2での過酸化水素との反応に干渉するアスコルビン酸、尿酸およびアセトアミノフェンに対する、測定対象物の制限透過層での選択透過性も良好となる。
密着層8は、例えば、シランカップリング剤により構成することができる。密着層へ利用可能なシランカップリング剤の種類としても、上記結合層3に利用可能なシランカップリング剤として、例示される一連に化合物を挙げることができる。密着層8においても、密着性等の観点から、アミノシラン、特にγ−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく用いられる。また、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの利用も効果的である。
密着層8や結合層3におけるカップリング剤液等の塗布方法としては、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、加熱気流法等が用いられる。スピンコート法とは、カップリング剤等の、密着層や、結合層の構成材料を溶解または分散させた液をスピンコーターにより塗布する方法である。このスピンコート法によれば、膜厚の薄い結合層ならびに密着層を膜厚制御性良く形成することができる。また、スプレー法とは、カップリング剤液等を基板表面に向けてスプレー噴霧する方法であり、ディップ法とは、基板をカップリング剤液等に浸漬する方法である。これらの塗布被膜形成方法によれば、特殊な装置を必要とせず、簡便な工程で結合層や密着層を形成することができる。一方、加熱気流法とは、基板を加熱雰囲気下に設置し、ここにカップリング剤液等の蒸気を流動させる方法である。この加熱気流方法によっても、膜厚の薄い結合層や密着層を膜厚制御性良く形成することができる。
密着層8をカップリング剤により構成する際には、このうち、シランカップリング剤溶液をスピンコートする方法が好ましく用いられる。スピンコート法で形成されるシランカップリング剤で構成される密着層を使用すると、優れた密着性が安定的に得られるからである。このスピンコート法による塗布の際、溶液中のシランカップリング剤濃度は、好ましくは0.01〜5v/v%、より好ましくは0.05〜1v/v%の範囲に選択する。シランカップリング剤溶液の溶媒としては、純水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル類等を単独または2種以上を混合して使用できる。このうち、純水で希釈したエタノール、メタノール、および酢酸エチルが好ましい。前記の溶媒を利用して、スピンコート法で形成されるシランカップリング剤で構成される密着層においては、密着性の向上効果が特に顕著となるからである。なお、密着層8は、制限透過層による選択透過性を顕著に向上させる効果も有する。
カップリング剤液等を塗布した後は、溶媒を含有する塗布膜の乾燥を行う。乾燥温度は特に制限がないが、通常、室温(25℃)〜170℃の範囲で行う。乾燥時間は、温度にもよるが、通常は0.5〜24時間とする。乾燥は空気中で行っても良いが、窒素等の不活性ガス中で乾燥させてもよい。例えば、窒素を基板に吹き付けながら乾燥させる窒素ブロー法を用いることもできる。
制限透過層6の構成材料としては、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合したポリマーが用いられる。このような、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した、フッ素を含まないビニル系重合体をポリマー骨格に有するポリマーを用いることにより、下地となる密着層との密着性が顕著に向上する。ここで、「フッ素を含まないビニル系重合体」は、固定化酵素層等の他の有機高分子層との密着性を良好にする役割を有する部分である。一方、ペンダント基を除く重合体部分にフッ素を多量に含むポリマーを用いると、固定化酵素層等の他の有機高分子層との密着性が低下し、加えて、かかるポリマーを含む溶液の調製が困難となり、制限透過層を薄膜として形成することが困難になる。前記のフッ素を含まないビニル系重合体は、炭素−炭素結合からなる主骨格を有する重合体であり、好ましい例としては、不飽和炭化水素、不飽和カルボン酸、および不飽和アルコールからなる群より選ばれた一種以上のモノマーの単独重合体または共重合体が挙げられる。これらフッ素を含まないビニル系重合体うち、特に、ポリカルボン酸となるものが好ましい。このような重合体を選択することによって、下地となる密着層との密着性がさらに顕著に向上し、耐久性に優れる制限透過層を得ることができる。また、ビニル系重合体に対するペンダント基として、フルオロアルキレンブロックがエステル基を介して結合していることが好ましい。エステル基は適度な極性を有しているため、ビニル系重合体に対するペンダント基として、少なくともフルオロアルキレンブロックがエステル基を介して結合しているポリマーを主として含む制限透過層は、密着層で表面を覆われた下地に対し、顕著な密着性を示す。また、フルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基とは、フルオロアルキレンを構成単位として含有するペンダント基をいう。一方、フルオロアルキレンとは、アルキレン基の水素の一部または全部をフッ素で置換したものをいう。
制限透過層6の構成材料は、以上に述べた、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合したポリマー材料により構成されるが、このうち、ポリカルボン酸のフルオロアルコールエステルが特に好ましい。前記ポリカルボン酸の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体等が挙げられる。また、ポリカルボン酸のフルオロアルコールエステルとは、ポリカルボン酸に存在する複数のカルボキシ基の一部、または全部がフルオロアルコールでエステル化されたものをいう。フルオロアルコールとは、アルコール中の水素のすべて、または少なくとも一つがフッ素に置換されたものである。ポリカルボン酸に存在する複数のカルボキシ基は全てがエステル化されていてもよいが、少なくとも、一部がエステル化されていればよい。均一な特性が得られる点で、ポリカルボン酸に存在する複数のカルボキシ基に対して、その0.1%以上がエステル化されていることが望ましい。ポリフルオロアルコール中の炭素数は、製膜後に優れた耐久性が得られるC5からC9の範囲が好ましく、なかでも、製膜し易くなるC8がさらに好ましい。また、ポリフルオロアルコールの級数は、耐久性および耐薬品性が最も高くなる第一級アルコールがよい。ポリカルボン酸のフルオロアルコールエステルのうち、特に好ましいのは、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルおよびポリアクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルである。前記のポリカルボン酸のフルオロアルコールエステルを利用すると、優れた制限透過性が安定して得られる上、製膜し易く、酸、アルカリおよび各種有機溶媒に対する耐性が高いからである。
制限透過層の構成材料として、ポリカルボン酸のフルオロアルコールエステルに加えて、さらに、ポリカルボン酸のアルキルアルコールエステルを導入してもよい。例えば、制限透過層を、ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルと、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルとを含む混合構成とすることができ、あるいは、制限透過層を、主として、フルオロアルコールエステル基およびアルキルアルコールエステル基を有するポリカルボン酸エステル化合物からなる構成とすることもできる。なお、前記混合物を構成する、ポリカルボン酸(A)とポリカルボン酸(B)は、同種のものであっても異種のものであってもよい。また、「主としてなる」とは、上記ポリマーが、制限透過層を構成する主成分となっていることをいい、例えば、制限透過層中における、上記ポリマーの含有率が50重量%以上であることをいう。制限透過層を上記のようなポリマーを主成分とする構成とすると、高温安定性の良好な酵素電極が得られる。なお、制限透過層を構成する前記ポリマーの分子量(平均分子量)は、好ましくは1000〜50000、さらに好ましくは3000〜30000の範囲とする。分子量が大きすぎると、前記ポリマーを含む溶液の調製が困難となり、制限透過層の薄層化が困難となることがある。分子量が小さすぎると、得られる制限透過層において、充分な制限透過性が得られない場合がある。なお、ここでいう分子量とは、数平均分子量をいい、GPC(Gel Permiation Chromatography)により測定することができる。
制限透過層6は、下地となる密着層8の上面に、上述するフッ素含有ポリマーを含む溶液をスピンコート法により塗布することにより形成される。触媒機能をもつ酵素を固定化した固定化酵素層4上に、予め密着層8を形成した後、例えば、パーフルオロヘキサン等のパーフルオロカーボンの溶媒で希釈したポリメタクリル酸のポリフルオロアルコールエステル溶液を滴下してスピンコート法により、制限透過層6を形成することができる。このスピンコート法を使用する際、前記フッ素含有ポリマーの溶液中濃度は、測定対象物質にもよるが、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.3重量%程度に調整する。この濃度範囲の溶液を利用して、スピンコート法により膜形成を行うことに、得られる制限透過層6において、より良好な制限透過性が発現するからである。なお、制限透過層6の形成方法については、均一な厚さの層が得られる方法であれば制限がなく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップ法などを用いることができるが、このうち、上述するように、スピンコート法の使用が好ましい。スピンコート法により膜形成を行うことに、品質および厚みの均一な制限透過層が安定的に得られるからである。なお、制限透過層6の好ましい厚みは、好ましくは0.01〜3μm、さらに好ましくは0.01〜1μmである。このような厚みを有する制限透過層6を利用することで、酵素電極の応答速度の向上、および測定後における洗浄時間の短縮化を図ることができる。
主成分として、上述した特有の構造を有するフッ素含有ポリマーを含む制限透過層6を設けることにより、酵素電極に対する、タンパク質や尿素化合物等の汚染物質の付着が抑制される。このため、図1のように、電極保護層5を具えると、制限透過層6に加えて、電極保護層5による汚染物質の付着抑制効果との相乗効果が得られ、長期使用した場合にも安定した出力特性が得られるという効果が得られる。また、下地となる密着層8を制限透過層6と組み合わせる結果、良好な制限透過性が得られ、測定濃度範囲を大幅に拡大できるという効果も得られる。さらに、制限透過層6と密着層8との密着性が高いため、剥がれを発生することもなく、溶液中の測定対象物を長期間安定して測定することが可能となる。また、ウェハプロセスを利用する量産化の製造過程においても、多層膜を形成する工程後の工程にける多層構造の損傷が少なく、高い生産性が得られる。
本発明の第一の形態では、該第一の実施形態の酵素電極を採用するセンサをグルコースセンサとして使用する場合、最外層の制限透過層6がグルコースの拡散速度を制限し、グルコース酸化酵素を使用した固定化酵素層4において、拡散してきたグルコースは、酸素による触媒反応の結果、過酸化水素とグルコノラクトンを発生する。このうち、過酸化水素が電極2に到達した際の酸化電流を測定して、試料中に含まれるグルコースの濃度を知ることができる。また、測定時の電極系は、2極法の場合には、外部から既存の参照極を使用し、3極法の場合には、対極、参照極の両方を測定溶液中に同時に浸漬する。
(第2の実施形態)
図2に、本発明の第一の形態にかかる、第2の実施形態の酵素電極の構成を示す。図2に示す酵素電極では、絶縁基板1上に作用極として機能する電極2が設けられ、その上面を被覆するように尿素化合物から主としてなる電極保護層5が形成されている。これらの上に、γ−アミノプロピルトリエトキシシランから主としてなる結合層3が形成され、その上に、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂からなるイオン交換樹脂層7、その上に有機高分子を母材として、酵素を固定化した固定化酵素層4、その上にγ−アミノプロピルトリエトキシシランにより構成された密着層8、そして、密着層8の上に、ポリカルボン酸樹脂のフルオロアルコールエステルを主成分とする制限透過層6が順次形成されている。
絶縁基板1上に形成する電極2、電極保護層5、結合層3、固定化酵素層4、密着層8および制限透過層6は、前記第1の実施の形態と同様の方法により順次形成される。
この第2の実施形態の酵素電極において、イオン交換樹脂層7を構成するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂としては、例えば、ナフィオン(商品名)を用いることができる。ナフィオンは、市販の陽イオン交換樹脂であり、パーフルオロメチレン主鎖に、末端スルホン酸基を有するパーフルオロポリアルキレンエーテル側鎖を結合させた構造を有している。
ナフィオン膜等のイオン交換樹脂層7を、固定化酵素層4の下部に配置することにより、電極2に対する干渉物質の影響を排除することができる。このため、結合層3および密着層8、電極保護層3による、電極2に対する干渉物質の透過抑制効果との相乗効果が得られ、この第2の実施形態の酵素電極における測定精度に対する、干渉物質の影響を著しく小さくすることができる。
イオン交換樹脂層7は、例えば、純水で50%に希釈したエタノールに溶解させて調製したナフィオン溶液を、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン層からなる結合層3上に滴下し、スピンコート法で形成される。前記スピンコート法に利用するナフィオン溶液の溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコールが用いられる。滴下する溶液中のナフィオン濃度は、好ましくは1〜10w/v%、さらに好ましくは5〜7w/v%とする。このような濃度範囲の液を用いて、スピンコート法で形成することにより、得られるイオン交換樹脂層7による、電極2に対する干渉物質の影響を排除する効果が顕著となる。
(第3の実施形態)
本発明の第一の形態にかかる、酵素電極の製造方法について、図3および図4を参照して説明する。この第3の実施形態として示す製造方法では、まず、絶縁材料からなるウエハ12上に電極膜を形成した後、パターニングして、作用極9、対極10および参照極11を、それぞれ複数、形成する。図3に、この電極の形成工程を終えた状態を示す。次いで、ウエハ12上に酵素を含む液をスピンコート法等により塗布した後、ウエハ12を乾燥させて、少なくとも作用極9の上部に固定化酵素層を形成する。
次に、固定化酵素層の形成工程を終えた、ウエハ12上に、上述するシラン含有化合物を含む液を付着した後、ウエハ12を乾燥させて、密着層を形成する。
次いで、この密着層の上面に、上記の特定の構造を有するフッ素含有ポリマー液を塗布した後、ウエハ12を乾燥させて、制限透過層を形成する。制限透過層の構成材料として、前記フッ素含有ポリマー、例えば、ポリカルボン酸のフルオロアルコールエステル類を用いると、品質および厚みの均一な薄層の制限透過層を安定的に形成できる。また、このようなフッ素含有ポリマー材料を用いる場合、該フッ素含有ポリマーを含む溶液粘度を低く抑えることができるので、スピンコート法により薄い制限透過層を安定的に形成できる。
その後、ウエハ12をダイシングして、複数の酵素電極を得る。図4に、作製された、3極法用の酵素電極の構成を示す。この3極法用の酵素電極は、作用極9、対極10および参照極11が同一チップ内に配置された構造を有する。作用極9及び対極10は、上記する第1の実施形態および第2の実施形態で述べた電極2と同様のものであればよい。一方、参照極11の材料は、銀/塩化銀が好ましく用いられる。
この図4に示されるような構成とすると、作用極、対極、参照極が一つの絶縁基板上に形成されるため、センサを駆動しながら溶液を交換することが可能になる。すなわち、センサ表面が電解質等で濡れている限り、作用極、対極および参照極の電極間は電気的に接続されることから、溶液を交換する間、センサが一時的に空気に触れても、そのまま、計測を継続できるからである。また、3極法による正確な電気化学測定が可能になり、特に微小な電流検出型の酵素電極を実現することが可能になる。
(第4の実施形態)
図6に、本発明の第一の形態にかかる酵素電極を利用するバイオセンサの構造を示す。この第4の実施形態として示すバイオセンサは、絶縁基板1上に作用極17、対極18および参照極19が配置され、さらに、温度センサ15が設けられている。作用極17、対極18および参照極19の表面は、それぞれ、図1に示す層構造の多層膜で覆われている。
この第4の実施形態では、バイオセンサに利用する酵素電極中の作用極は一種類であるが、異なる固定化酵素層を形成した複数の作用極を設けたセンサ構成とすることもできる。また、温度センサ以外に、pHセンサ等を設けた構成とすることもできる。また、3極法用の酵素電極を構成する、作用極17、対極18および参照極19は、任意の配置とすることができる。また、第4の実施形態では、作用極、対極、参照極の3極からなるバイオセンサについて説明したが、バイオセンサ自体を、白金からなる作用極と参照極を石英基板上に設けた構成としてもよい。
また、本第4の実施形態では、アンペロメトリックタイプのセンサの例を示したが、本発明の第一の形態にかかる酵素電極は、イオン感受性電界効果型トランジスタタイプのセンサにも適用できることはいうまでもない。
更に、本発明の第二の形態における好適な実施形態として、下記の第5の実施の形態〜第7の実施の形態を説明する。
(第5の実施の形態)
本発明の第二の形態にかかる、第5の実施形態について、図面を参照して説明する。図7に、第5の実施形態の酵素電極の構成を示す。図7に示すように、第5の実施形態の酵素電極では、絶縁基板1上に作用極として機能する電極2が設けられ、この上に、主としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランからなる結合層3が形成され、さらにその上に、有機高分子を母材として、酵素を固定化した固定化酵素層4が形成され、そして、固定化酵素層4の上に、主成分として、ポリカルボン酸樹脂のフルオロアルコールエステルを含む制限透過層6が順次形成されている。最表面に配置されている制限透過層6の表面には、多数の溝が形成されている。
本発明の第二の形態にかかる酵素電極における、絶縁基板1ならびに電極2には、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極を構成する絶縁基板、電極と同様なものが利用できる。また、絶縁基板、電極に関して、その好ましい態様は、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極における好ましい態様と同じものとなる。
電極2上に形成される結合層3も、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極において、電極保護層上に形成される結合層と同様なものが利用できる。その際、かかる第5の実施形態の酵素電極の結合層に関しても、その好ましい態様は、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極の結合層における好ましい態様と同じものとなる。かかる第5の実施形態の酵素電極において、結合層3は、その上の固定化酵素層4と、絶縁基板1および電極2との密着性(結合力)を向上させる。また、結合層3は、絶縁基板1の表面の濡れ性を改善し、酵素を固定化した固定化酵素層4を形成する際、固定化酵素層4の膜厚の均一性を向上させる効果もある。さらには、結合層3は、電極2での過酸化水素の反応に干渉するアスコルビン酸、尿酸およびアセトアミノフェンに対する選択透過性も有する。
本発明の第二の形態にかかる酵素電極における、固定化酵素層4も、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極において利用される固定化酵素層と同様なものが利用できる。その際、固定化酵素層に関しても、その好ましい態様は、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極における好ましい態様と同じものとなる。
本発明の第二の形態にかかる酵素電極では、その最表面に配置されている制限透過層6の表面は、多数の溝が形成されている特定な表面形状を有する、フッ素含有ポリマーを含む制限透過層6を設けることにより、酵素電極に対する、タンパク質や尿素化合物等の汚染物質の付着が抑制される。このため、かかる制限透過層6による汚染物質の付着抑制効果に伴い、長期使用した場合にも安定した出力特性が得られるという効果が得られる。また、特定な表面形状を有する、制限透過層6を最表面に配置する結果、良好な制限透過性が得られ、測定濃度範囲を大幅に拡大できるという効果も得られる。本発明の第二の形態では、例えば、該第5の実施形態の酵素電極を採用するセンサをグルコースセンサとして使用する場合、最表面に配置される制限透過層6がグルコースの拡散速度を制限し、グルコース酸化酵素を使用した固定化酵素層4において、拡散してきたグルコースは、酸素による触媒反応の結果、過酸化水素とグルコノラクトンを発生する。このうち、過酸化水素が電極2に到達した際の酸化電流を測定して、試料中に含まれるグルコースの濃度を知ることができる。また、測定時の電極系は、2極法の場合には、外部から既存の参照極を使用し、3極法の場合には、対極、参照極の両方を測定溶液中に同時に浸漬する。
従って、本発明の第二の形態にかかる酵素電極では、最表面に配置する制限透過層6の表面形態を、次の(i)、(ii)のいずれかまたは両方を満たす構成とする。
(i)制限透過層の表面に多数の溝が設けられた構成。
(ii)制限透過層の平均厚みを0.01〜1μmの範囲、好ましくは0.02〜0.5μmの範囲に選択し、その際、制限透過層の表面粗さは、前記制限透過層の平均厚みの0.0001倍以上1倍以下、好ましくは0.001倍以上1倍以下である構成。
このような表面に多数の溝が設けられている、あるいは前記の表面粗さを示す表面が凹凸形状の制限透過層6を最表面に設ける構成とすることにより、本発明の第二の形態にかかる酵素電極は、広範囲の使用条件下において使用でき、長期使用に対する耐久性が良好で、しかも、生産性に優れた酵素電極となっている。また、量産化のため、ウェハプロセスを採用した製造工程を利用する場合にも、所望の性能が安定的に得られる構造の酵素電極とすることができる。これらの効果が達成される理由は必ずしも明らかではないが、上記の表面形状の制限透過層6を用いる構成を採用することにより、汚染物質の酵素電極表面への付着がある程度抑制されること、所定の表面形状を具えることにより制限透過層の強度が向上することが性能向上に寄与しているものと推定される。
上記制限透過層6の表面に設ける多数の溝のサイズは特に限定されないが、電子顕微鏡、特に三次元方向の解析能力の優れた原子間力顕微鏡で観察される程度の微小なサイズを有することが好ましい。より具体的には、溝の深さは、好ましくは0.1〜100nmの範囲、より好ましくは0.5〜30nmの範囲に選択する。
制限透過層の表面に多数の溝を設ける、あるいは、制限透過層の表面粗さを所定の範囲とするためには、製造工程を、ウエハ表面に固定化酵素層および制限透過層を含む多層膜を形成し、製膜終了後、チップ単位に切り出して酵素電極を得る方式を採用した上で、ウエハ状態で実施される、制限透過層の形成工程では、制限透過層の製膜法として、スピンコート法を採用し、さらにスピンコート条件を適切に設定することが有効である。例えば、ウエハ状態で実施される多層膜の形成過程は、絶縁基板の主面に電極膜を形成した後、該電極膜をパターニングして複数の電極部2を形成する工程と、絶縁基板主面に酵素を含む液を塗布した後、絶縁基板を乾燥させて固定化酵素層4を形成する工程と、絶縁基板主面に、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを含む液をスピンコート法により塗布した後、絶縁基板を乾燥させて制限透過層6を形成する工程とを少なくとも具えたものとし、その後、多層膜の形成を終えた、絶縁基板をダイシングして複数の酵素電極を得る工程を実施する、酵素電極の製造プロセスを採用することにより、上記特定表面構造を示す制限透過層を製造安定性良く得ることができる。
前記制限透過層6を形成する工程に利用する、該フッ素含有ポリマーを含む液のウエハ表面へのスピンコートの条件としては、以下に述べるものが好ましい。すなわち、利用するスピナーの回転数については、好ましくは500rpm以上、より好ましくは2000rpm以上とする。塗布される被膜厚さに依存するものの、スピナーの回転数上限については、例えば、6000rpm以下とする。製膜時の温度は、0℃以上40℃以下、例えば、4℃程度の温度で製膜を行うのがよい。塗布材料は、形成される制限透過層の形状、特には、層厚、表面形状に大きな影響を与えると考えられるが、この点については後述する。
本発明の第二の形態にかかる酵素電極に利用する制限透過層6は、フッ素含有ポリマーにより構成される。本発明の第一の形態と同様に、制限透過層6を主に構成する好ましいポリマー材料としては、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合したポリマーが例示される。この特定な構造を有するフッ素含有ポリマーを主成分として用いることにより、形成される制限透過層の表面をより確実に好適な形状に制御することができ、所望の溝や凹凸形状を実現することができる。その結果、本発明の第二の形態にかかる酵素電極の測定安定性や、その製造時の歩留まりを向上させることができる。
なお、本発明の第二の形態にかかる酵素電極においても、制限透過層6の構成材料として、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した、フッ素を含まないビニル系重合体をポリマー骨格に有するポリマーを用いることにより、下地層との密着性が顕著に向上する。その際、本発明の第二の形態にかかる酵素電極において、制限透過層6の構成材料として、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極に利用される制限透過層用の構成材料として例示するものが同様に利用できる。加えて、この制限透過層6の構成材料に関しても、その好ましい態様は、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極における好ましい態様と同じものとなる。
本発明の第二の形態にかかる、図7に示す第5の実施形態の酵素電極では、制限透過層6は、下地の固定化酵素層4の上面に、上述するフッ素含有ポリマーを含む溶液をスピンコート法により塗布することにより形成される。触媒機能をもつ酵素を固定化した固定化酵素層4上に、例えば、パーフルオロヘキサン等のパーフルオロカーボンの溶媒で希釈したポリメタクリル酸のポリフルオロアルコールエステル溶液を滴下してスピンコート法により、制限透過層6を形成することができる。このスピンコート法を使用する際、前記フッ素含有ポリマーの溶液中濃度は、測定対象物質にもよるが、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.3重量%程度に調整する。この濃度範囲の溶液を利用して、スピンコート法により膜形成を行うことで、得られる制限透過層6において、より良好な制限透過性が発現するからである。なお、制限透過層6の形成方法については、均一な厚さの層が得られる方法であれば制限がなく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップ法などを用いることができるが、このうち、上述するように、ウェハプロセスを採用する上では、スピンコート法の使用が好ましい。スピンコート法により膜形成を行うことに、品質および厚みの均一な制限透過層が安定的に得られるからである。なお、(i)制限透過層の表面に多数の溝が設けられた構成を採用する際、制限透過層6の好ましい厚みは、0.01〜1μm、より好ましくは0.02〜0.5μm、さらに好ましくは0.04〜0.25μmである。このような厚みを有する制限透過層6を利用することで、酵素電極の応答速度の向上、および測定後における洗浄時間の短縮化を図ることができる。
(第6の実施形態)
図8に、本発明の第二の形態にかかる、第6の実施形態の酵素電極の構成を示す。図8に示す酵素電極では、絶縁基板1上に作用極として機能する電極2が設けられ、その上に、主としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランからなる結合層3が形成され、さらにその上に、有機高分子を母材として、酵素を固定化した固定化酵素層4が形成され、その固定化酵素層4上に、主としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランからなる密着層8が形成され、そして、密着層8の上に、ポリカルボン酸樹脂のフルオロアルコールエステルを主成分とする制限透過層6が順次形成されている。
絶縁基板1上に形成する電極2、結合層3、固定化酵素層4、および制限透過層6は、本発明の第二の形態にかかる、前記第5の実施形態と同様の方法により順次形成される。
上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極に利用する密着層と同様に、この第6の実施形態の酵素電極において、固定化酵素層4上に形成された密着層8は、固定化酵素層4とその上の制限透過層6との密着性を向上させる役割を果たす。すなわち、本第6の実施形態の酵素電極に用いる密着層8は、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極に利用する密着層と同様なものとすることが好ましい。
従って、本第6の実施形態の酵素電極でも、前記結合層3と同様に、密着層8も、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤により構成することができる。加えて、かかる第6の実施形態の酵素電極の密着層に関しても、その好ましい態様は、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極の密着層における好ましい態様と同じものとなる。
さらには、本発明の第二の形態においても、密着層8や結合層3におけるカップリング剤液等の塗布方法としては、本発明の第一の形態において、密着層や結合層の形成に利用される塗布方法が利用できる。なかでも、本発明の第二の形態において、密着層8をカップリング剤により構成する際には、本発明の第一の形態と同様に、シランカップリング剤溶液をスピンコートする方法が好ましく用いられる。加えて、かかる第6の実施形態の酵素電極の密着層を形成する工程、条件関しても、その好ましい態様は、上述する本発明の第一の形態にかかる酵素電極の密着層における好ましい態様と同じものとなる。
(第7の実施形態)
図6に、本発明の第二の形態にかかる酵素電極を利用するバイオセンサの構造を示す。この第7の実施形態として示すバイオセンサでも、絶縁基板1上に作用極17、対極18および参照極19が配置され、さらに、温度センサ15が設けられている。作用極17、対極18および参照極19の表面は、それぞれ、図7に示す層構造の多層膜で覆われている。
この第7の実施形態では、バイオセンサに利用する酵素電極中の作用極は一種類であるが、異なる固定化酵素層を形成した複数の作用極を設けたセンサ構成とすることもできる。また、温度センサ以外に、pHセンサ等を設けた構成とすることもできる。また、3極法用の酵素電極を構成する、作用極17、対極18および参照極19は、任意の配置とすることができる。また、第7の実施形態では、作用極、対極、参照極の3極からなるバイオセンサについて説明したが、バイオセンサ自体を、白金からなる作用極と参照極を石英基板上に設けた構成としてもよい。
また、本第7の実施形態では、アンペロメトリックタイプのセンサの例を示したが、本発明の第二の形態にかかる酵素電極は、イオン感受性電界効果型トランジスタタイプのセンサにも適用できることはいうまでもない。
実施例
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例で用いたポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルは、住友スリーエム社製のフロラードFC−722であり、平均分子量Mnは6000〜8000程度(GPC測定値)である。
以下の実施例1〜実施例8は、本発明の第一の形態にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明の第一の形態は、かかる具体例により限定を受けるものではない。
(実施例1)
まず、図3に示すように、日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ12(厚さ0.515mm)上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした82組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。次に、これを150mMの塩化ナトリウムを含む6M尿素溶液中に浸漬し、参照極11に対して、作用極9に0.7Vを、10分間印加した。実際には、図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。従って、円周部分と参照極11を電気化学測定装置に接続し、前記電位を印加した。このようにして、電解法により作用極9上に、電極保護層2として尿素層を形成した。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、適宜[APTES]と称する。)水溶液をスピンコートして結合層3を形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。次に、0.1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして密着層8を形成した。さらに、その後、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、濃度0.3重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液を順次スピンコートしてポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成し、酵素電極ウェハを作製した。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。作製された酵素電極チップより、任意の3個を選択し、それぞれフレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
比較として、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を形成しなかったこと以外は、上記と同様にして酵素電極ウェハを作製した。そして、この酵素電極チップからも、任意の3個を選択し、それぞれフレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
以上のようにして製作した酵素電極を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して保存し、このTES緩衝液を含む200mg/dlグルコース溶液に対するセンサ出力である電流値を0、1、3、9、27日目に測定し、得られるセンサ出力の安定性を評価した。保存温度は24℃として、保存中は電位を印加しなかった。
その評価結果として、図9に、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設けていない酵素電極のセンサ出力の経時的変化を、図10に、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設けている酵素電極のセンサ出力の経時的変化をそれぞれ示す。両者の比較によって、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設けることによって、長期間に渡って安定したセンサ出力が実現され、また、センサ出力値のバラツキも低減されることが確認された。
(実施例2)
まず、図3に示すように、日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ12(厚さ0.515mm)上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした82組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。次に、これを150mMの塩化ナトリウムを含む6M尿素溶液中に浸漬し、参照極11に対して、作用極9に0.7Vを、10分間印加した。実際には、図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。従って、円周部分と参照極11を電気化学測定装置に接続し、前記電位を印加した。このようにして、電解法により作用極9上に、電極保護層2として尿素層を形成した。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして結合層3を形成した。次に、5w/v%のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液をスピンコートして、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層7を結合層3上に形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。次に、0.1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして密着層8を形成した。さらに、その後、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、濃度0.3重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液を順次スピンコートしてポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成し、酵素電極ウェハを作製した。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。作製された酵素電極チップより、任意の20個を選択し、それぞれフレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
比較として、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を形成しなかったこと以外は、上記と同様にして酵素電極ウェハを作製した。そして、この酵素電極チップからも、任意の20個を選択し、それぞれフレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
以上のようにして製作した酵素電極を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して保存し、このTES緩衝液を含む200mg/dlアスコルビン酸溶液に対するセンサ出力である電流値を測定し、得られるセンサ出力に対するアスコルビン酸の影響を評価した。なお、保存温度は24℃として、保存中は電位を印加しなかった。
その評価結果として、それぞれ20個の酵素電極で得られるセンサ出力を平均して、図11に、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設けてない酵素電極のセンサ出力を100%ととして、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設けている酵素電極のセンサ出力を相対値で示した結果を示す。両者の比較により、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設けることによって、干渉物質であるアスコルビン酸の影響を1/10に低下させることができることがわかった。
(実施例3)
まず、図3に示すように、日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ12(厚さ0.515mm)上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした82組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。次に、これを150mMの塩化ナトリウムを含む6M尿素溶液中に浸漬し、参照極11に対して、作用極9に0.7Vを、10分間印加した。実際には、図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。従って、円周部分と参照極11を電気化学測定装置に接続し、前記電位を印加した。このようにして、電解法により作用極9上に、電極保護層2として尿素層を形成した。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして結合層3を形成した。次に、5w/v%のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液をスピンコートして、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層7を結合層3上に形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。次に、0.1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして密着層8を形成した。さらに、その後、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、濃度0.3重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液を順次スピンコートしてポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成し、酵素電極ウェハを作製した。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。作製された酵素電極チップより、無作為に1個を選択し、フレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
比較として、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を形成しなかったこと以外は、上記と同様にして酵素電極ウェハを作製した。そして、この酵素電極チップからも、無作為に1個を選択し、フレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
以上のようにして製作した酵素電極を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して保存し、約20mg/dlのグルコースを含むバイオラッド(株)社製の定量用尿コントロール正常(ライフォチェック)について、繰り返し10回連続して測定した。前記2種の酵素電極による測定値より、標準偏差を算出し、繰り返し再現性を評価した。表1に、評価結果として、平均測定値を基準として、繰り返し再現性を相対値で示す。
Figure 0004167595
両者の結果を比較すると、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設ける酵素電極においては、繰り返し再現性は2.5%を示したのに対して、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設けていない酵素電極では、繰り返し再現性は3.1%であり、測定精度は固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を設ける酵素電極が優れていることが示された。
(実施例4)
まず、図3に示すように、日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ12(厚さ0.515mm)上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした82組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。次に、これを150mMの塩化ナトリウムを含む6M尿素溶液中に浸漬し、参照極11に対して、作用極9に0.7Vを、10分間印加した。実際には、図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。従って、円周部分と参照極11を電気化学測定装置に接続し、前記電位を印加した。このようにして、電解法により作用極9上に、電極保護層2として尿素層を形成した。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させ、結合層3を形成した。次に、5w/v%のナフィオン溶液をスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させ、ナフィオンを主成分とするイオン交換樹脂層7を結合層3上に形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。
次いで、純水を溶媒に用いて調製した、濃度が0.05v/v%、0.1v/v%、および0.2v/v%の3種類のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をそれぞれ用いて、各ウェハにスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させて、平均膜厚の異なる3種の密着層8をそれぞれ形成した。加えて、コントロールとして、前記密着層8を形成していないウェハを用意した。
さらに、その後、前記合計4種の各ウェハに対して、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、濃度0.3重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液をスピンコートして、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成し、酵素電極ウェハを作製した。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。作製された酵素電極チップより、それぞれ任意に5個を選択し、フレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
以上のようにして製作した4種類の酵素電極を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して保存し、このTES緩衝液を含むグルコース含有濃度が0〜2000mg/dlの溶液に対するセンサ出力である電流値を測定し、各5個の酵素電極について、検量線を作成した。また、4種類の酵素電極について、それぞれ、各5個の酵素電極の検量線に対応する平均値と標準偏差を算出した。
図12に、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を形成していない酵素電極(コントロール)の測定結果を、図13〜図15に、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を形成している酵素電極3種に対する測定結果をそれぞれ示す。図13、14、15は、それぞれ、濃度0.1v/v%、0.05v/v%、および0.2v/v%の3種類のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液を用いて、密着層8を形成している酵素電極に対する結果である。図中、分図(a)は各5個の酵素電極に対する検量線を示し、分図(b)の棒グラフは、その平均値、エラーバーは標準偏差を示す。その対比から、固定化酵素層4と制限透過層6との間に密着層8を形成することによって、酵素電極毎の測定値のバラツキの低い、すなわち特性の揃った、直線性の高い検量線を与える酵素電極の作製が可能であることがわかった。特に、図13に示す、濃度0.1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液を用いて、密着層8を形成している酵素電極において、酵素電極毎の測定感度、測定値のバラツキ、直線性の高さを考慮すると、最適の特性が達成されていることがわかった。
(実施例5)
まず、図3に示すように、日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ12(厚さ0.515mm)上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした82組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。次に、これを150mMの塩化ナトリウムを含む6M尿素溶液中に浸漬し、参照極11に対して、作用極9に0.7Vを、10分間印加した。実際には、図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。従って、円周部分と参照極11を電気化学測定装置に接続し、前記電位を印加した。このようにして、電解法により作用極9上に、電極保護層2として尿素層を形成した。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させ、結合層3を形成した。次に、5w/v%のナフィオン溶液をスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させ、ナフィオンを主成分とするイオン交換樹脂層7を結合層3上に形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。
次いで、スピンコート法による密着層8の形成に利用するシランカップリング剤溶液として、終濃度として5v/v%、エタノールを純水に添加する混合溶媒に対して、それぞれ、以下の(a)〜(g)のカップリング剤を各0.1v/v%溶解した溶液7種を調製した。
(a)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
(b)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
(c)N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
(d)γ−クロロプロピルトリメトキシシラン
(e)γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
(f)3−イソシアネートプロピルトリエシキシシラン
(g)3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
各ウェハ上に、前記7種の溶液をそれぞれスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させて、異なるシランカップリング剤からなる密着層8を形成した。
さらに、その後、前記合計7種の各ウェハに対して、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、濃度0.3重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液をスピンコートして、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成し、酵素電極ウェハを作製した。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。作製された酵素電極チップより、それぞれ任意に5個を選択し、フレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
以上のようにして製作した7種類の酵素電極を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して保存し、このTES緩衝液を含むグルコース含有濃度が0〜2000mg/dlの溶液に対するセンサ出力である電流値を測定し、各5個の酵素電極について、検量線を作成した。さらに、7種類の酵素電極について、それぞれ、各5個の酵素電極の検量線より平均値を算出し、平均された検量線として、該平均値をグルコース含有濃度に対してプロットした結果を、図16に示す。図16中、s1〜s7の7種は、順に、それぞれ、s1:(a)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、s2:(b)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、s3:(c)N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、s4:(d)γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、s5:(e)γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、s6:(f)3−イソシアネートプロピルトリエシキシシラン、およびs7:(g)3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのカップリング剤により作製された密着層8を具える酵素電極を示す。密着層8の作製に用いるカップリング剤の種類に応じて、電流値および検量線の直線性に若干の違いがあるが、上記(a)〜(g)のカップリング剤のいずれを利用しても、作製される酵素電極において、低濃度のグルコースに対しても十分な電流値が得られた。すなわち、低濃度のグルコースに対しても正確に測定できる酵素電極の作製が可能であることがわかった。
(実施例6)
まず、図3に示すように、日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ12(厚さ0.515mm)上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした82組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。次に、これを150mMの塩化ナトリウムを含む6M尿素溶液中に浸漬し、参照極11に対して、作用極9に0.7Vを、10分間印加した。実際には、図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。従って、円周部分と参照極11を電気化学測定装置に接続し、前記電位を印加した。このようにして、電解法により作用極9上に、電極保護層2として尿素層を形成した。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させ、結合層3を形成した。次に、5w/v%のナフィオン溶液をスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させ、ナフィオンを主成分とするイオン交換樹脂層7を結合層3上に形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。
次いで、スピンコート法による密着層8の形成に利用するシランカップリング剤溶液として、終濃度として5v/v%、エタノール、メタノール、酢酸エチル、をそれぞれ純水に添加する混合溶媒3種に対して、それぞれ、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを各0.1v/v%溶解した溶液3種を調製した。さらに、コントロールとして、純水を溶媒に用いて、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを0.1v/v%溶解した水溶液を調製した。各ウェハ上に、前記合計4種の溶液をそれぞれスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させて、密着層8を形成した。
さらに、その後、前記合計4種の各ウェハに対して、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、濃度0.3重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液をスピンコートして、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成し、酵素電極ウェハを作製した。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。作製された酵素電極チップより、それぞれ任意に5個を選択し、フレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
以上のようにして製作した4種類の酵素電極を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して保存し、このTES緩衝液を含むグルコース含有濃度が0〜2000mg/dlの溶液に対するセンサ出力である電流値を測定し、各5個の酵素電極について、検量線を作成した。さらに、4種類の酵素電極について、それぞれ、各5個の酵素電極の検量線より平均値を算出し、平均された検量線として、該平均値をグルコース含有濃度に対してプロットした結果を、図17に示す。図17中、Et、Mt、EA、およびWの4種は、上記するEt:純水にエタノールを添加した混合溶媒、Mt:純水にメタノールを添加した混合溶媒、EA:純水に酢酸エチルを添加した混合溶媒、およびW:純水を、それぞれ溶媒に用いたγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液で形成された密着層8を具える酵素電極を示す。利用した混合溶媒の種類に依存する、電流値および検量線の直線性の差異は僅かであり、純水を溶媒に用いた場合と比較して、上記有機溶媒を純水に少量添加した混合溶媒のいずれを利用しても、作製される酵素電極において、低濃度のグルコースに対しても格段に高い電流値が得られた。すなわち、シランカップリング剤からなる密着層8を形成する工程において、上記実施例5に示す、エタノールを純水に少量添加した混合溶媒を利用する方法と同様に、これら有機溶媒を純水に少量添加した混合溶媒を利用する方法が有効であり、また、その効果に遜色はない。なお、本実施例6に示す終濃度5v/v%と同等の濃度範囲、例えば、終濃度7v/v%以下の範囲内において、上記したいずれ有機溶媒を純水に添加する溶媒を用いることで、低濃度のグルコースに対しても正確に測定できる酵素電極の作製が可能であることがわかった。
(実施例7)
まず、図3に示すように、日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ12(厚さ0.515mm)上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした82組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。次に、これを150mMの塩化ナトリウムを含む6M尿素溶液中に浸漬し、参照極11に対して、作用極9に0.7Vを、10分間印加した。実際には、図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。従って、円周部分と参照極11を電気化学測定装置に接続し、前記電位を印加した。このようにして、電解法により作用極9上に、電極保護層2として尿素層を形成した。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させ、結合層3を形成した。次に、5w/v%のナフィオン溶液をスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させ、ナフィオンを主成分とするイオン交換樹脂層7を結合層3上に形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。
次いで、終濃度として、5v/v%のエタノールを純水に添加した混合溶媒を用いて調製した、濃度0.1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液を用いて、ウェハにスピンコートし、40℃の窒素雰囲気下で1時間乾燥させて、密着層8を形成した。
さらに、その後、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、濃度0.3重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液をスピンコートして、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成し、酵素電極ウェハを作製した。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。作製された酵素電極チップをそれぞれ、フレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
以上のようにして製作した酵素電極を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して保存し、このTES緩衝液を含むグルコース含有濃度が0〜2000mg/dlの溶液に対するセンサ出力である電流値を測定し、図3に示すように、ウェハ上でマトリックス状に作製されている各チップより作製された酵素電極について、それぞれ検量線を作成した。
併せて、比較として、前記密着層8の形成工程を省き、密着層8のみを形成していない酵素電極ウェハも同様に作製し、密着層8を設けていない酵素電極を製作し、それについても、ウェハ上でマトリックス状に作製されている各チップより作製された酵素電極について、それぞれ検量線を作成した。
個々の酵素電極について、作成された検量線に基づき、下記の基準に従って、良品の酵素電極を選別した。ただし、前記選別基準は、良品の酵素電極とは、感度については、グルコース濃度2000mg/dlに対する出力が30nA以上150nA未満、同時に、検量線の直線性については、グルコース濃度500mg/dlに対する出力が、グルコース濃度2000mg/dlに対する出力の1/4±30%以内、の両特性をともに満たすものとした。そして、各ウェハ上の各チップより作製された、ウェハ当たり計82個の酵素電極について、良品の酵素電極を選択し、歩留まりを以下の計算式に基づいて算出した。
計算式 : 歩留まり(%)=良品/合計×100
前記選別基準に利用する、グルコース濃度2000mg/dlに対する出力の測定結果について、表2に、密着層を設けていない酵素電極のセンサ出力、表3に、密着層を設けている酵素電極のセンサ出力をそれぞれ示す。各表中において、ウェハ上でマトリックス状に作製されている各チップの基板面内の位置を、アルファベットおよび数字の組み合わせによって示す。例えば、表2において、「A」と「3」の組み合わせの示す位置のチップから製作された酵素電極のセンサ出力は、「43.6」である。この評価の結果、密着層を設けていない酵素電極における、ウェハ当たりの歩留まりは約32%(26/82)、密着層を設けている酵素電極における、ウェハ当たりの歩留まりは約85%(70/82)であった。以上の対比結果から、ウェハプロセスを利用する大量生産工程において、密着層を設けている酵素電極構造を採用することが、ウェハ当たりの良品歩留まり向上に有効に機能することが示された。
Figure 0004167595
Figure 0004167595
(実施例8)
まず、図3に示すように、日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ12(厚さ0.515mm)上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした82組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。次に、これを150mMの塩化ナトリウムを含む6M尿素溶液中に浸漬し、参照極11に対して、作用極9に0.7Vを、10分間印加した。実際には、図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。従って、円周部分と参照極11を電気化学測定装置に接続し、前記電位を印加した。このようにして、電解法により作用極9上に、電極保護層2として尿素層を形成した。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして結合層3を形成した。次に、5w/v%のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液をスピンコートして、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層7を結合層3上に形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。次に、0.1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして密着層8を形成した。さらに、その後、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、それぞれ濃度0.1、0.3、1.0、および10重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液をスピンコートして、対応する4種の膜厚を有するポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成し、4種の酵素電極ウェハを作製した。
スピンコートの条件は、4℃の雰囲気下において回転数 3000rpm、回転時間 30秒とした。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。作製された酵素電極チップより、無作為にそれぞれ5個を選択し、フレキシブル基板とワイヤーボンディングで結線した後、結線部に防水処理を施した。
以上のようにして製作した酵素電極を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して保存し、0〜2000mg/dlのグルコース溶液に対する電流値を測定した。図18に、測定値を、5個の平均値として示す。
一方、前記4種の濃度のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液を、同サイズの石英ウエア表面に同様にスピンコートして、制限透過層の膜厚評価用試料を形成した。続いて、ガラス・スクライブ装置でダイシングし、酵素電極チップと同サイズに切り分けた。そして、超音波カッターを用いて、評価用試料上、制限透過層の表面の一部分をはがし、石英ガラス面をむき出しにした。そして、原子間力顕微鏡(セイコーエプソン製SPI3000)を用い、石英ガラス面と制限透過層表面との段差を測定し(測定はn=5で行った)、制限透過層の膜厚を求めた。表4に、測定された制限透過層の膜厚を示す。
Figure 0004167595
図18に示す結果と、表4にまとめる膜厚の測定結果を比較すると、濃度が1重量%以上のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液を用いると、得られる制限透過層の厚さが250nmになり、制限透過機能が急激に向上するため、センサ出力である電流値が極めて小さくなったと思われる。しかしながら、出力の直線性は確保されていることから、この制限透過層は、均一に製膜されていると思われる。
従って、出力の直線性の観点で、適度な制限透過性を示す制限透過層の膜厚は、70nmであることが示された。
以下の実施例9〜実施例12は、本発明の第二の形態にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明の第二の形態は、かかる具体例により限定を受けるものではない。
(実施例9)
日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ(厚さ0.515mm)を2枚用意し、これらを用いて以下の工程を実施した。
まず、図3に示すように、石英ウェハ12上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした87組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、適宜[APTES]と称する。)水溶液をスピンコートして結合層3を形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。
さらに、その後、固定化酵素層4上に、溶媒として、パーフルオロヘキサンを用いて調製した、濃度0.3重量%のポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液を塗布し、塗布膜を乾燥することで、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルからなる制限透過層6を形成する。
一方のウェハに対しては、前記塗布膜の形成は、下記する条件でスピンコート法によって行った。このスピンコート法塗布工程で作製されるものを、試料1とする。
スピンコート回転数:3000rpm 30秒間
滴下する溶液量:0.3μl/mm
製膜温度(溶液温度):4℃
他方のウェハに対しては、前記塗布膜の形成は、ディップコート法によって行った。このディップコート法塗布工程で作製されるものを、試料2とする。
最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、酵素電極を得た。制限透過層6を構成するポリマー材料の塗布方法の異なる、前記2種の酵素電極チップについて、制限透過層6の層厚、表面粗さを測定するとともに、制限透過層6で被覆されている電極表面を原子間力顕微鏡により観測して、その表面粗さを測定した。結果は、以下のようになった。
試料1(スピンコート)
平均層厚D:0.3μm 表面粗さR:0.6nm R/D=0.002
試料2(ディップコート)
平均層厚D:1.4μm 表面粗さR:1.3nm R/D=0.0009
なお、表面粗さは、中央値(R50)である。
スピンコート法により形成した試料1については、制限透過層6の表面には、全面に微細な溝が形成される。図23は、制限透過層6の表面に形成されている溝の様子を示す、表面AFM(AFM:Atomic Force Microscopy 原子間力顕微鏡)像のプリント・アウトである。なお、図24は、図23に示す表面AFM像に基づき計測された、対応する制限透過層の表面粗さ測定図を示す。なお、溝の深さは、前記表面粗さを中心とする分布を示すが、全て、0.1〜100nmの範囲にあった。
また、図25に、この制限透過層表面のAFMによる観察像のプリント・アウトの一例を示す。図中、白い部分は、制限透過層表面に形成された溝を示す。前記の作製法で形成される、制限透過層6の表面には、多数の溝が無秩序に形成されていることがわかる。
(実施例10)
日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ(厚さ0.515mm)を2枚用意し、これらを用いて以下の工程を実施した。
まず、図3に示すように、石英ウェハ12上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした87組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして結合層3を形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。
その後、一方のウェハに対しては、固定化酵素層4の上に、溶媒として、キシレンヘキサフルオライドを用いて調製した、濃度0.3重量%のアクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル溶液をスピンコート法によって塗布し、塗布膜を乾燥することで、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルからなる制限透過層6を形成した。スピンコートの条件は、回転数 3000rpm、30秒間とした。用いた塗布液は、ポリアクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルのキシレンヘキサフルオライド溶液(アクリル酸樹脂含有率17%、キシレンヘキサフルオライド含有率83%、粘度20cps(25℃))に対し、さらに、溶媒キシレンヘキサフルオライドを添加し、0.3重量%の樹脂含有率を有する希釈溶液に調製したものである。最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、第1の酵素電極を作製した。
対照として、他方のウェハに対しては、固定化酵素層4の上に、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル溶液をディップコート法によって塗布し、塗布膜を乾燥することで、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルからなる制限透過層6を形成した。同じく、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、第2の酵素電極を作製した。
第1の酵素電極と第2の酵素電極について、それぞれ、無作為にウェハからチップを4個ずつ取り、以下の評価に供した。なお、制限透過層6の平均厚みは、第1の酵素電極では0.08μm、第2の酵素電極では1.6μmであった。また、第1の酵素電極について、表面AFM像に基づき計測された、制限透過層6のプロファイルは以下の通りであった。
平均層厚D:0.08μm 表面粗さR:0.6nm R/D=0.0075
各酵素電極チップをワイヤーボンディングによって、電気化学測定装置に接続し、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液を用いて、pH調整されている溶液中に24℃で浸漬し、測定対象化合物を含まない液に対して電圧印加時に得られるベースの電流値と、測定対象化合物を含まない液に対して得られる出力の電流値と差を、センサ出力として測定した。なお、前記印加電位は、参照極に対して、作用極に700mVとした。一方、測定中に加えて、保存中も、各酵素電極は、前記150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES緩衝液中に24℃で浸漬しておく。このTES緩衝液を含むグルコース含有濃度が0〜2000mg/dlの溶液に対するセンサ出力を測定し、各4個の酵素電極について、検量線を作成した。
図21に、第1の酵素電極(スピンコート法)における、グルコースに対するセンサ出力(検量線)を示す。また、図22に、第2の酵素電極(ディップコート法)における、グルコースに対するセンサ出力(検量線)を示す。スピンコート法により制限透過層6を作製している、第1の酵素電極では、直線性の高いセンサ出力が得られ、かつセンサ間の出力バラツキもほとんど発生しなかった。この優れた選択透過性は、制限透過層6をスピンコート法によって製作することで、その表面に形成された溝が、グルコースを固定化酵素層4へスムーズに透過させていることによるものと考えられる。一方、制限透過層6をディップコート法で作製した場合、センサ出力(検量線)の直線性が低下し、さらに、センサ間の出力バラツキも大きくなった。ディップコート法で製作する場合には、制限透過層6の表面には溝が形成されないため、グルコースの透過がスムーズに行われないばかりか、透過率のバラツキが大きくなり、さらには、ウェハ面内で作製される個々の酵素電極チップの性能バラツキが大きくなることの原因と考えられる。
以上の対比によって、制限透過層6をスピンコート法で製作し、表面に溝を形成された制限透過層6を具える酵素電極とすることで、かかる酵素電極は、得られる検量線の直線性が高く、センサ間の出力バラツキの低い優れた特性を示すことが明らかになった。
(実施例11)
日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ(厚さ0.515mm)を2枚用意し、これらを用いて以下の工程を実施した。
まず、図3に示すように、石英ウェハ12上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした87組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして結合層3を形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。そして、さらに固定化酵素層4上に、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして密着層8を形成した。
その後、一方のウェハに対しては、密着層8を設けた固定化酵素層4の上に、溶媒として、キシレンヘキサフルオライドを用いて調製した、濃度0.3重量%のアクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル溶液をスピンコート法によって塗布し、塗布膜を乾燥することで、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルからなる制限透過層6を形成した。スピンコートの条件は、回転数 3000rpm、30秒間とした。用いた塗布液は、ポリアクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルのキシレンヘキサフルオライド溶液(アクリル酸樹脂含有率17%、キシレンヘキサフルオライド含有率83%、粘度20cps(25℃))に対し、さらに、溶媒キシレンヘキサフルオライドを添加し、0.3重量%の樹脂含有率を有する希釈溶液に調製したものである。最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、第1の酵素電極を作製した。
対照として、他方のウェハに対しては、固定化酵素層4の上部に、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル溶液をディップコート法によって塗布し、塗布膜を乾燥することで、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルからなる制限透過層6を形成した。同じく、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、第2の酵素電極を作製した。
第1の酵素電極と第2の酵素電極について、それぞれ、無作為にウェハからチップを3個ずつ取り、以下の評価に供した。なお、制限透過層6の平均厚みは、第1の酵素電極では0.2μm、第2の酵素電極では1.4μmであった。また、第1の酵素電極について、表面AFM像に基づき計測された、制限透過層6のプロファイルは以下の通りであった。
平均層厚D:0.2μm 表面粗さR:0.5nm R/D=0.0025
各酵素電極チップをワイヤーボンディングによって、電気化学測定装置に接続し、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液を用いて、pH調整されている溶液中に24℃で浸漬し、測定対象化合物を含まない液に対して電圧印加時に得られるベースの電流値と、測定対象化合物を含まない液に対して得られる出力の電流値と差を、センサ出力として測定した。なお、前記印加電位は、参照極に対して、作用極に700mVとした。一方、測定中に加えて、保存中も、各酵素電極は、前記150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES緩衝液中に24℃で浸漬しておく。例えば、このTES緩衝液を含むグルコース含有濃度が0〜2000mg/dlの溶液に対するセンサ出力を測定し、グルコースに対する個々の酵素電極について、検量線を作成した。
第1の酵素電極(スピンコート法)について、検量線を作成した前記3個のセンサを用いて、糖尿病患者の実尿(22サンプル)中に含まれる成分を測定した。別途、既存の測定装置である既存の測定装置である(商品名、日立自動測定装置7050)を利用して、前記糖尿病患者の実尿(22サンプル)中に含まれる成分を同一条件で測定した。そして、既存の測定装置による測定で得られた、前記実尿(22サンプル)中個々の成分の含有値に対して、第1の酵素電極による測定値を回帰処理し、既存の測定装置による測定値との相関係数を算出して、評価した。また、同様に、第2の酵素電極(ディップコート法)を用いて、前記糖尿病患者の実尿中に含まれる成分を測定し、回帰処理し、既存の測定装置による測定値との相関係数を算出して、評価した。表5に、各酵素電極について、前記評価の結果算出された相関係数を示す。
スピンコート法により制限透過層6を作製している、第1の酵素電極では、各電極全て、相関係数Rが0.99以上の高い相関が得られた。一方、制限透過層6をディップコート法で作製している、第2の酵素電極では、各電極間において、相関係数のバラツキが認められ、また、相関係数Rは、いずれも0.89以下であった。
制限透過層6をスピンコート法で製作し、表面に多数の溝が形成された制限透過層6を具える酵素電極とすることで、かかる酵素電極では、均一に溝が形成され、グルコースがスムーズに制限透過層を透過し、同時に、適度な表面粗さが付与されているため、汚染物質の付着が抑制され、それに伴い、ウェハ面内で作製される個々の酵素電極の性能が均一になると考えられる。
以上の対比によって、制限透過層6をスピンコート法で製作し、表面に溝を形成された制限透過層6を具える酵素電極とすることで、かかる酵素電極は、既存の臨床検査用大型装置による測定と、同等の高い測定精度を示すことが明らかになった。
Figure 0004167595
(実施例12)
日本電気硝子(株)社製の4インチの石英ウェハ(厚さ0.515mm)を2枚用意し、これらを用いて以下の工程を実施した。
まず、図3に示すように、石英ウェハ12上に、図4に示す配置を有する、白金からなる作用極9(面積5mm)と対極10(面積5mm)、銀/塩化銀からなる参照極11(面積1mm)を一組とした87組の電極チップを製作した。一組に切り分けた際、各電極チップサイズは10mm×6mmである。図3に示すように、作用極9は全て結線され、円周部分につながっている。
続いて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして結合層3を形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層4を形成した。そして、さらに固定化酵素層4上に、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液をスピンコートして密着層8を形成した。
その後、一方のウェハに対しては、密着層8を設けた固定化酵素層4の上に、溶媒として、キシレンヘキサフルオライドを用いて調製した、濃度0.3重量%のアクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル溶液をスピンコート法によって塗布し、塗布膜を乾燥することで、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルからなる制限透過層6を形成した。スピンコートの条件は、回転数 3000rpm、30秒間とした。用いた塗布液は、ポリアクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルのキシレンヘキサフルオライド溶液(アクリル酸樹脂含有率17%、キシレンヘキサフルオライド含有率83%、粘度20cps(25℃))に対し、さらに、溶媒キシレンヘキサフルオライドを添加し、0.3重量%の樹脂含有率を有する希釈溶液に調製したものである。最後に、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、第1の酵素電極を作製した。
対照として、他方のウェハに対しては、固定化酵素層4の上部に、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル溶液をディップコート法によって塗布し、塗布膜を乾燥することで、アクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルからなる制限透過層6を形成した。同じく、ガラス・スクライブ装置でウェハをダイシングし、第2の酵素電極を作製した。
第1の酵素電極と第2の酵素電極について、それぞれ、無作為にウェハからチップを3個ずつ取り、以下の評価に供した。なお、制限透過層6の平均厚みは、第1の酵素電極では0.2μm、第2の酵素電極では1.4μmであった。また、第1の酵素電極について、表面AFM像に基づき計測された、制限透過層6のプロファイルは以下の通りであった。
平均層厚D:0.2μm 表面粗さR:0.5nm R/D=0.0025
各酵素電極チップをワイヤーボンディングによって、電気化学測定装置に接続し、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液を用いて、pH調整されている溶液中に24℃で浸漬し、測定対象化合物を含まない液に対して電圧印加時に得られるベースの電流値と、測定対象化合物を含まない液に対して得られる出力の電流値と差を、センサ出力として測定した。なお、前記印加電位は、参照極に対して、作用極に700mVとした。一方、測定中に加えて、保存中も、各酵素電極は、前記150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES緩衝液中に24℃で浸漬しておく。次いで、前記TES緩衝液を含むグルコース含有濃度が0〜2000mg/dlの溶液に対するセンサ出力を測定し、グルコースに対する個々の酵素電極について、検量線を作成した。
第1の酵素電極(スピンコート法)について、検量線を作成した前記3個のセンサを用いて、糖尿病患者の血漿(31サンプル)中に含まれる成分を測定した。別途、既存の測定装置である既存の測定装置である(商品名、日立自動測定装置7050)を利用して、前記糖尿病患者の血漿(31サンプル)中に含まれる成分を同一条件で測定した。そして、既存の測定装置による測定で得られた、前記血漿(31サンプル)個々中の成分の含有値に対して、第1の酵素電極による測定値を回帰処理し、既存の測定装置による測定値との相関係数を算出して、評価した。また、同様に、第2の酵素電極(ディップコート法)を用いて、前記糖尿病患者の実尿中に含まれる成分を測定し、回帰処理し、既存の測定装置による測定値との相関係数を算出して、評価した。表6に、各酵素電極について、前記評価の結果算出された相関係数を示す。
第1の酵素電極(スピンコート法)を用いて糖尿病患者の血漿(31サンプル)を測定し、同時に既存の測定装置である臨床検査装置(商品名、日立自動測定装置7050)でも同一条件で測定した。そして得られた個々の成分の値を回帰処理し、相関関係を算出して評価した。また、第2の酵素電極(ディップコート法)を用いて同様に糖尿病患者の実尿を測定した。これらの結果を表6に示す。
スピンコート法により制限透過層6を作製している、第1の酵素電極では、各電極全て、相関係数Rが0.99以上の高い相関が得られた。一方、制限透過層6をディップコート法で作製している、第2の酵素電極では、各電極間において、相関係数のバラツキが認められ、また、相関係数Rは、いずれも0.92以下であった。
制限透過層6をスピンコート法で製作し、表面に多数の溝が形成された制限透過層6を具える酵素電極とすることで、かかる酵素電極では、均一に溝が形成され、グルコースがスムーズに制限透過層を透過し、同時に、適度な表面粗さが付与されているため、汚染物質の付着が抑制され、それに伴い、ウェハ面内で作製される個々の酵素電極の性能が均一になると考えられる。加えて、データとしては明示されないもののが、電極表面、特に、最表面の制限透過層表面に付着した汚染物質は、測定後の洗浄時において、完全に取り除かれていることも、多数のサンプルを測定する際、その測定精度の向上に寄与していると考えられる。
以上の対比によって、制限透過層6をスピンコート法で製作し、表面に溝を形成された制限透過層6を具える酵素電極とすることで、かかる酵素電極は、既存の臨床検査用大型装置による測定と、同等の高い測定精度を示すことが明らかになった。
Figure 0004167595
産業上の利用の可能性
以上に説明したように、本発明において、先ず、本発明の第一の形態による酵素電極は、固定化酵素層4の上部にシラン含有化合物を含む密着層8を具え、その密着層8の上面に接して、特定の構造を有するフッ素含有ポリマーを含む制限透過層6を形成されている構成を有し、この固定化酵素層4と制限透過層6との間にシラン含有化合物を含む密着層8を設けているため、制限透過層6とその下地層(例えば、固定化酵素層4)との間の密着性が良好となり、固定化酵素層4と制限透過層6との間における剥がれに起因する特性の変動が防止され、製造安定性に優れた高性能の酵素電極が得られる。また、本発明の第一の形態による酵素電極に対して、本発明に係る酵素電極の製造方法を適用することで、ウェハプロセスを採用した場合にも、従来にない高い生産性、歩留まりで高品質な酵素電極を作製することができる。
加えて、本発明において、本発明の第二の形態による酵素電極は、固定化酵素層4の上部に、表面に多数の溝を有する、あるいは、表面は適正な表面粗さを有する、その表面形状が高度に制御されている、主成分としてフッ素含有ポリマーを含む制限透過層6を最表面に配置する構成を有し、この表面形状が高度に制御されている制限透過層6の持つ、優れた選択透過性のため、広範囲の使用条件下において使用でき、長期使用に対する耐久性が良好で、しかも、生産性に優れた酵素電極が得られる。特には、表面形状が高度に制御されている制限透過層6の形成工程に、ウェハ状態で、特定の構造を有するフッ素含有ポリマーを含む液をスピンコート法により塗布し、塗布膜を乾燥することで制限透過層6を形成する、ウェハプロセスを採用する本発明に係る酵素電極の製造方法を適用することで、高い生産性、歩留まりで、所望の性能が安定的に得られる、本発明の第二の形態による構造の酵素電極を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第一の形態に係る酵素電極の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2は、本発明の第一の形態に係る酵素電極構成の他の一例を模式的に示す断面図である。
図3は、本発明に係る酵素電極の製造方法を説明するための図であり、絶縁基板1上に形成される、多数の酵素電極チップ用電極の配置を模式的に示す図である。
図4は、本発明に係る酵素電極の電極配置の一例を示す図である。
図5は、従来の酵素電極の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図6は、本発明に係る酵素電極を具備するバイオセンサの構成の一例を模式的に示す図である。
図7は、本発明の第二の形態に係る酵素電極の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図8は、本発明の第二の形態に係る酵素電極構成の他の一例を模式的に示す断面図である。
図9は、従来技術による、実施例1に記載する密着層8を具えていない酵素電極に対する、センサ出力の経時的安定性の評価結果を示す図である。
図10は、本発明の第一の形態による、実施例1に記載する密着層8を具える酵素電極に対する、センサ出力の経時的安定性の評価結果を示す図である。
図11は、本発明の第一の形態による、実施例2に記載する密着層8を具える酵素電極と、従来技術による、実施例2に記載する密着層8を具えていない酵素電極とにおける、干渉物質であるアスコルビン酸に起因するセンサ出力の評価結果を対比して示す図である。
図12は、従来技術による、実施例4に記載する密着層8を具えていない酵素電極における、センサ出力をグルコース濃度に対してプロットしたグラフ(検量線)を示し、(a)は、計5個の酵素電極個々の検量線を示し、(b)は、前記5個の酵素電極のセンサ出力より算出した、センサ出力平均値と標準偏差をグルコース濃度に対してプロットしたグラフである。
図13は、本発明の第一の形態による、実施例4に記載する密着層8を具える酵素電極における、センサ出力をグルコース濃度に対してプロットしたグラフ(検量線)を示し、(a)は、密着層8を濃度0.1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液を用いて形成している酵素電極に関して、計5個の酵素電極個々の検量線を示し、(b)は、前記5個の酵素電極のセンサ出力より算出した、センサ出力平均値と標準偏差をグルコース濃度に対してプロットしたグラフである。
図14は、本発明の第一の形態による、実施例4に記載する密着層8を具える酵素電極における、センサ出力をグルコース濃度に対してプロットしたグラフ(検量線)を示し、(a)は、密着層8を濃度0.05v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液を用いて形成している酵素電極に関して、計5個の酵素電極個々の検量線を示し、(b)は、前記5個の酵素電極のセンサ出力より算出した、センサ出力平均値と標準偏差をグルコース濃度に対してプロットしたグラフである。
図15は、本発明の第一の形態による、実施例4に記載する密着層8を具える酵素電極における、センサ出力をグルコース濃度に対してプロットしたグラフ(検量線)を示し、(a)は、密着層8を濃度0.2v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液を用いて形成している酵素電極に関して、計5個の酵素電極個々の検量線を示し、(b)は、前記5個の酵素電極のセンサ出力より算出した、センサ出力平均値と標準偏差をグルコース濃度に対してプロットしたグラフである。
図16は、本発明の第一の形態による、実施例5に記載する密着層8を具える酵素電極において、密着層8を、純水に終濃度5%でエタノールを添加した混合溶媒により調製された、濃度0.1v/v%の各種シランカップリング剤溶液を用いて形成している酵素電極7種に関して、それぞれ計5個の酵素電極個々のセンサ出力より算出した、センサ出力平均値をグルコース濃度に対してプロットしたグラフであり、それぞれ
s1:(a)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
s2:(b)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
s3:(c)N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
s4:(d)γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、
s5:(e)γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
s6:(f)3−イソシアネートプロピルトリエシキシシラン、および
s7:(g)3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのカップリング剤により作製された酵素電極に関する結果を示す。
図17は、本発明の第一の形態による、実施例6に記載する密着層8を具える酵素電極において、密着層8を、純水に終濃度5%で各種有機溶媒を添加した混合溶媒または純水により調製された、濃度0.1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液を用いて形成している酵素電極4種に関して、それぞれ計5個の酵素電極個々のセンサ出力より算出した、センサ出力平均値をグルコース濃度に対してプロットしたグラフであり、それぞれ
Et:純水にエタノールを添加した混合溶媒、
Mt:純水にメタノールを添加した混合溶媒、
EA:純水に酢酸エチルを添加した混合溶媒、および
W:純水を溶媒に利用して作製された酵素電極に関する結果を示す。
図18は、本発明の第一の形態による、実施例8に記載する制限透過膜を製膜する際、用いるポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチル溶液中の濃度を変えて作製さえる、酵素電極4種に関して、それぞれ計5個の酵素電極個々のセンサ出力より算出した、センサ出力平均値をグルコース濃度に対してプロットしたグラフである。
図19は、酵素電極を構成する被膜層の形成工程を、ウェハから切り出したチップ単位でスピンコート塗布法を使用して実施する、酵素電極の製造方法による製造プロセスの各工程を示す図であり、それぞれ
(a)は、ウェハから切り出したチップをフレキシブル基板上に装着する工程、
(b)は、スピンコート塗布に利用するスピナーに、前記フレキシブル基板を搭載するための、両面テープを装着する工程、ならびに
(c)は、前記両面テープを利用して、前記フレキシブル基板をスピナーに搭載する工程を示す。
図20は、酵素電極を構成する被膜層の形成工程を、ウェハから切り出したチップ単位でスピンコート塗布法を使用して実施する、酵素電極の製造方法による製造プロセスの各工程を示す図であり、それぞれ
(d)は、スピナーに搭載した、フレキシブル基板に装着するチップ上に塗布溶液を滴下する工程、
(e)は、チップ上に滴下する塗布溶液の液滴をスピナー回転により、スピンコート塗布膜とする工程、ならびに
(f)は、スピンコート塗布後、前記塗布膜を乾燥して、各種被膜層に形成する工程を示す。
図21は、実施例10に記載する、本発明の第二の形態による第1の酵素電極における、センサ出力をグルコース濃度に対してプロットしたグラフ(検量線)を示し、それぞれ、計4個の酵素電極個々の検量線を示すグラフである。
図22は、実施例10に記載する、従来技術による第2の酵素電極における、センサ出力をグルコース濃度に対してプロットしたグラフ(検量線)を示し、それぞれ、計4個の酵素電極個々の検量線を示すグラフである。
図23は、実施例9に記載する、本発明の第二の形態による、最表面に配置されるスピンコート法により作製された制限透過層6を具える酵素電極 試料1について、その制限透過層6の表面を観察した、三次元的表示のAFM像のプリント・アウトを示す図である。
図24は、実施例9に記載する、図23に示す制限透過層6の表面を観察したAFM像に基づき測定される、対応する表面粗さの分布を示すヒストグラムである。
図25は、実施例9に記載する、本発明の第二の形態による、最表面に配置されるスピンコート法により作製された制限透過層6を具える酵素電極について、その制限透過層6の表面を観察した、凹凸を濃淡表示する二次元的表示のAFM像のプリント・アウトを示す図であり、凹部(溝部)を白色表示によって示す。

Claims (25)

  1. 絶縁基板上に設けられた電極部と、
    該電極部の上部に形成された固定化酵素層と、
    該固定化酵素層の上部に形成された、シラン含有化合物を含む密着層と、
    該密着層の上面に接して形成された、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを含む制限透過層と、
    を有することを特徴とする酵素電極。
  2. 前記密着層は、主としてシランカップリング剤により構成された層である
    ことを特徴とする請求項1に記載の酵素電極。
  3. 前記フッ素含有ポリマーは、フッ素を含まないビニル系重合体として、ポリカルボン酸(A)を有している、該ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルである
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の酵素電極。
  4. 前記フッ素含有ポリマーは、フッ素を含まないビニル系重合体として、ポリカルボン酸(A)を有している、該ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルに加えて、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルをも含む混合物である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の酵素電極。
  5. 前記フッ素含有ポリマーは、ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルと、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルとが共重合している
    ことを特徴とする請求項1に記載の酵素電極。
  6. 前記ポリカルボン酸(B)が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、または、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体である
    ことを特徴とする請求項4または5に記載の酵素電極。
  7. 前記ポリカルボン酸(A)が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、または、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の酵素電極。
  8. 絶縁基板上に設けられた電極部と、
    該電極部を被覆する電極保護層と、
    該電極保護層上に形成されたシラン含有化合物を含む結合層と、
    該結合層上に形成されたイオン交換樹脂膜層と、
    該イオン交換樹脂膜層上に形成された固定化酵素層と、
    該固定化酵素層上に形成されたシラン含有化合物を含む密着層と、
    該密着層上に形成されたフッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーを含む制限透過層が形成されている
    ことを特徴とする酵素電極。
  9. 前記電極保護層は、主として尿素化合物である
    ことを特徴とする請求項8に記載の酵素電極。
  10. 前記結合層、ならびに前記密着層は、主としてシランカップリング剤により構成された層である
    ことを特徴とする請求項8に記載の酵素電極。
  11. 前記フッ素含有ポリマーは、フッ素を含まないビニル系重合体として、ポリカルボン酸(A)を有している、該ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルである
    ことを特徴とする請求項8に記載の酵素電極。
  12. 前記フッ素含有ポリマーは、フッ素を含まないビニル系重合体として、ポリカルボン酸(A)を有している、該ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルに加えて、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルをも含む混合物である
    ことを特徴とする請求項8に記載の酵素電極。
  13. 前記フッ素含有ポリマーは、ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルと、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルとが共重合している
    ことを特徴とする請求項8に記載の酵素電極。
  14. 前記ポリカルボン酸(B)が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、または、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体である
    ことを特徴とする請求項12または13に記載の酵素電極。
  15. 前記ポリカルボン酸(A)が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、または、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体である
    ことを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の酵素電極。
  16. 絶縁基板の主面に電極を形成した後、該電極をパターニングして複数の電極部を形成する工程と、
    該電極面を被覆する電極保護層を形成する工程と、
    絶縁基板主面にシラン含有化合物を含む結合層を形成する工程と、
    絶縁基板主面にイオン交換樹脂膜層を形成する工程と、
    絶縁基板主面に酵素を含む液を塗布した後、絶縁基板を乾燥させて固定化酵素層を形成する工程と、
    絶縁基板主面にシラン含有化合物を含む液を付着した後、絶縁基板を乾燥させて密着層を形成し、次いで、該密着層の上面に前記フッ素含有ポリマー液を塗布した後、絶縁基板を乾燥させて前記制限透過層を形成する工程と、
    絶縁基板をダイシングして複数の酵素電極を得る工程と
    を含むことを特徴とする酵素電極の製造方法。
  17. 前記制限透過層は、スピンコート法により形成された層である
    ことを特徴とする請求項16に記載の酵素電極の製造方法。
  18. 前記密着層の形成に利用するシラン含有化合物は、シランカップリング剤である
    ことを特徴とする請求項16に記載の酵素電極の製造方法。
  19. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の酵素電極を具備することを特徴とするバイオセンサ。
  20. 前記フッ素含有ポリマーは、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基が結合した構造を有するフッ素含有ポリマーである
    ことを特徴とする請求項16に記載の酵素電極の製造方法。
  21. 前記フッ素含有ポリマーは、フッ素を含まないビニル系重合体として、ポリカルボン酸(A)を有している、該ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルである
    ことを特徴とする請求項16または20に記載の酵素電極の製造方法。
  22. 前記フッ素含有ポリマーは、フッ素を含まないビニル系重合体として、ポリカルボン酸(A)を有している、該ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルに加えて、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルをも含む混合物である
    ことを特徴とする請求項16に記載の酵素電極の製造方法。
  23. 前記フッ素含有ポリマーは、ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルと、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルとが共重合している
    ことを特徴とする請求項16に記載の酵素電極の製造方法。
  24. 前記ポリカルボン酸(B)が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、または、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体である
    ことを特徴とする請求項22または23に記載の酵素電極の製造方法。
  25. 前記ポリカルボン酸(A)が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、または、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体である
    ことを特徴とする請求項21〜23のいずれか一項に記載の酵素電極の製造方法。
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