本発明者らは、これまでの磁性トナーの特に低温低湿環境下における帯電の均一化および安定化、さらには低温定着性と耐オフセット性の両立化について鋭意検討した結果、低軟化点物質で均一に表面処理された酸化鉄が一定量以上極めて表面近傍に集中する構造を有する球状トナーとすることで、現像性・転写性等の画像特性を満足するだけでなく、耐久性が向上しかつ高着色力であるためにトナー消費量の低減が可能になり、さらには幅広い定着温度領域を有することを見出し本発明に至った。
具体的には、磁性体がトナー表面から投影面積相当径Cの0.2倍の深さまでに70個数%以上存在する構造を満足しているトナーが40個数%以上、好ましくは60個数%以上であるような実質的な磁性体のカプセル中間層を設けることによって、トナーとしての剛性が飛躍的に向上し、外添剤の埋め込み等が少なくなるため耐久安定性に優れる。また、低抵抗の磁性体がトナー表面近傍に存在することによって、特に低温低湿環境下でのチャージアップが抑えられ、耐久濃度の低下やカブリなどが低減される。さらに、本発明の磁性体のカプセル中間層は熱溶融時に、トナー外周に沿って局所的に磁性体密度が高くなるためトナー着色力も向上する。
上記のマグ中間層を有しているトナーが40個数%未満であると、磁性体のカプセル構造が十分ではないため磁性体のばらつきや粒度依存の影響が発生しやすくなり、トナーの耐久性に関して本発明の効果が得られにくくなる。具体的には、多量にワックスや低分子量/低Tgの樹脂などを内包させる場合には一部のトナーの外添剤劣化などが進み、耐久による画像濃度低下が生じやすくなったり、高温オフセットが生じやすくなる傾向にある。
一方で、磁性体のカプセル中間層はトナーの変形に関しては不利な方向である。その剛性ゆえに、内層に多量のワックスや低分子量/低Tgの樹脂などが内包可能であるが、反対にワックスの染み出しに関しては阻害する傾向であると考えられる。そもそも磁性トナーは、その内部に多量の磁性粉体が混合分散されているため、樹脂に対して熱容量の大きい磁性粉体が定着器から受けた熱の一部を吸収してしまい、定着器からの熱がバインダー樹脂の可塑・変形や低軟化点物質の溶融に有効に使われないと考えられてきた。
そこで本発明者らが鋭意検討した結果、低軟化点物質で処理された酸化鉄を用いることで、定着時に受けた熱量を磁性粉体が吸収する前に低軟化点物質が溶融して染み出すことにより、定着性が大きく向上することを見出した。さらに、本発明においては処理された酸化鉄がトナー表面近傍に存在するため、必然的に一定量以上の低軟化点物質が表面近傍に存在することになる。結果として、定着器からの熱に対する低軟化点物質の溶融、染み出しの速度が大きくなり、高速度プリンターにおいても十分な低温定着性と定着領域を確保することが可能になった。
本発明のトナーは、X線光電子分光分析により測定されるトナー表面に存在する炭素元素の存在量(A)に対する鉄元素の存在量(B)の比(B/A)が0.001未満であることが好ましい。B/Aが0.001未満であるとは、酸化鉄がトナー粒子表面に殆ど露出していないことを意味し、このような現像剤を用いれば、磁性体の吸湿の影響が実質的に無いために帯電の環境安定性に優れ、また帯電部材や転写部材などによりトナーが静電荷像担持体表面に圧接されるような画像形成方法においても、静電荷像担持体表面を削ることは殆ど無く、長期にわたり静電荷像担持体の削れやトナー融着を著しく低減させることが可能となる。さらに、酸化鉄に処理された低軟化点物質の表面露出も殆どなくなるので、トナー担持体や静電荷像担持体が低軟化点物質により汚染され、画像欠陥が引き起こされることもなくなるので好ましい。反対に、B/Aが0.001以上である場合には、磁性体の吸湿により特に高温高湿環境下におけるカブリや耐久による画像濃度の低下が生じやすくなる。さらに、静電荷像担持体が露出された磁性体により削れ易くなる。
また、本発明のトナーはトナーの断面観察における酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%以上であることが好ましい。D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%未満であると、過半数のトナーにおいて少なくともD/C=0.02境界線よりも外側には磁性粒子が全く存在しないことになる。よって、トナー粒子の表面が高抵抗となり、樹脂の帯電特性が直接反映されやすくなるため、特に低温低湿環境下でのカブリやチャージアップが生じやすくなる。さらに、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%未満であると、過半数のトナーにおいて少なくともD/C=0.02境界線よりも外側には低軟化点物質が全く存在しないことになる。このため、定着器から低軟化点物質への熱の伝達に時間がかかり、高速度プリンターにおいては十分な低温定着性を得るのが困難になる。
本発明のトナーにおける、酸化鉄の低軟化点物質による処理について説明する。
酸化鉄の表面を処理する低軟化点物質としては、公知のワックスが使用できる。例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体などが含まれる。ここでの誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。ワックスの酸価や、変性度などを調整することによって、トナー中での酸化鉄の分散状態を制御することも可能である。さらに、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸またはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。
これら低軟化点物質は、DSC測定において80℃乃至150℃の領域に吸熱ピークのピークトップを有しているものが好ましい。上記の温度領域にピークトップを有することにより、低温定着性に大きく貢献しつつ、離型性を効果的に発現することができる。ピークトップが80℃未満であると、トナー製造時にかかる熱により低軟化点物質が溶融する傾向にあり、表面処理の効果が小さくなってしまう。一方、ピークトップが150℃を超えると、耐ホットオフセット効果は大きいものの定着温度が高くなってしまう。また、低軟化点物質自体が硬くなってしまうため、磁性体に対する処理の均一性を保つことが困難になり好ましくない。
低軟化点物質は、酸化鉄100質量部に対して0.3乃至15質量部処理されていることが好ましい。処理量が0.3質量部未満であると、トナー表面近傍に存在して定着時瞬時に染み出すワックス量が少ないため、十分な定着性の効果が得られない。さらに、磁性体表面を均一に処理することが難しくなる。一方、処理量が15質量部を超えると、低軟化点物質の吸熱量が大きすぎて、反対に低温定着性を阻害することになってしまう。
磁性粉体表面に低軟化点物質を処理するための機器としては、せん断力を加えることのできる装置が好ましく、特に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール形混練機、ボール型混練機、ロール型混練機を好適に用いることができる。この中でも、特に均一処理と言う観点からホイール型混練機の使用が好ましい。ホイール型混練器を用いると磁性粉体表面に低軟化点物質をこすりつけ、付着・延伸させるような処理が可能となり、磁性粉体表面を均一に低軟化点物質で覆うことが出来る。
上記ホイール型混練機としては、具体的に、エッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。上記ボール型混練機としては、具体的に、振動ミル等がある。上記ロール型混練機としては、具体的に、エクストルーダー等がある。
磁性粉体表面に低軟化点物質を均一に処理/被覆出来るように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100kg/cm)、処理時間は5〜180分、好ましくは30〜150分の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
本発明のトナーに用いられる磁性粉体は、カップリング剤により表面処理した後にさらに低軟化点物質で処理されていることが好ましい。
これまで述べてきたように、本発明では磁性粉体表面を低軟化点物質で処理することが必須であるが、磁性粉体は無機物である一方、低軟化点物質は有機化合物である。このため、上記の処理機器を用いても低軟化点物質で均一に磁性粉体表面を覆うことは難しい。そこで、磁性粉体表面をカップリング剤で処理することで(磁性粉体表面をオルガノシロキサン化合物、あるいはポリシロキサン化合物で覆うことにより)、それを媒体に低軟化点物質を均一に処理することが可能となる。このため、磁性粉体表面をカップリング剤処理しないと低軟化点物質の処理の均一性が劣るものとなり、低温定着性が劣ってしまう。
ここで、磁性粉体表面をカップリング剤で処理する方法としては、乾式処理と湿式処理の二つがある。本発明ではどちらの方法で行っても良く、乾式で処理する場合、低軟化点物質を処理するのに好適な処理装置と同様な機器で処理することが出来る。
湿式で処理する場合は、水系媒体中で、酸化鉄を一次粒径となるよう分散した状態でカップリング剤を加水分解しながら表面処理することが好ましく、水溶液中で製造した磁性体を洗浄後、乾燥させずに疎水化処理することがより好ましい。
酸化鉄の疎水化処理に使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式
RmSiYn
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。]
で示されるものである。例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランを挙げることができる。
特に、式
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す]
で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して酸化鉄を疎水化処理するのが良い。
上記式におけるpが2より小さいと、疎水化処理は容易となるが、疎水性を十分に付与することが困難であり、またpが20より大きいと、疎水性は十分になるが、酸化鉄粒子同士の合一が多くなり、トナー中へ酸化鉄粒子を十分に分散させることが困難になる。
また、qが3より大きいと、シランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなる。
特に、式中のpが2〜20の整数(より好ましくは、3〜15の整数)を示し、qが1〜3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用するのが良い。
その処理量は酸化鉄100質量部に対して、0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部とするのが良い。
磁性粉体の表面処理として水系媒体中でカップリング剤で処理するには、水系媒体中で適量の磁性粉体及びカップリング剤を撹拌する方法が挙げられる。
水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1〜5質量%添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸の如き無機酸が挙げられる。
撹拌は、例えば撹拌羽根を有する混合機(具体的には、アトライター、TKホモミキサーの如き高剪断力混合装置)で、酸化鉄微粒子が水系媒体中で、一次粒子になるように充分におこなうのが良い。
本発明のトナーに用いる酸化鉄は、結着樹脂100質量部に対して、10〜200質量部用いることが好ましく、20〜180質量部用いることが更に好ましい。酸化鉄の配合量が10質量部未満では現像剤の着色力が乏しく、カブリの抑制も困難であり、一方、200質量部を超えると、現像剤担持体への磁力による保磁力が強まり現像性が低下したり、個々のトナー粒子への酸化鉄の均一な分散が難しくなったりするだけでなく、定着性が低下してしまう。
なお、本発明の疎水性磁性体においてもトナー内部の磁性体構造の制御までは困難であり、本発明の磁性体のみで本発明の磁性体分布構造を製造するにはコア粒子を設計し、その後磁性体を添加する等多段階の工程が必要である。
そのため本発明のトナーは、ケン化価20乃至200の極性化合物を含有することが好ましい。水系媒体中直接重合の系において上記の極性化合物を添加することにより、内部に均一に分散する磁性体を表面付近に偏析させることが容易になる。
本発明におけるケン化価20乃至200の極性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、アビエチン酸等のカルボン酸誘導体基や、スルホン酸、硫酸基等の硫黄系酸基を有する樹脂又はその変性物であれば全て使用可能であり、具体的なモノマー成分としてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類や無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル等のマレイン酸類、スルホン酸等の硫黄系酸基、アビエチン酸等が例示される。
なお、これらの化合物の中ではマレイン酸成分を有する樹脂が特に微量で効果を発揮できるという点で好ましく、帯電性を損なわず、結着樹脂との相溶性にも優れる点から、下記一般式(1)及び/又は(2)に示される無水マレイン酸共重合体又はその開環化合物が特に好ましく、本発明の効果が一層発揮される。
(各式中、Aはアルキル又はアルキレン基を示し、Rは水素原子または炭素数1乃至20のアルキル基を示す。nは1〜20の整数、x、y、zはそれぞれ各成分の共重合比を示す。)
極性化合物の添加量としては、該トナー中に結着樹脂成分に対して該極性物質が0.001乃至10質量部含有していることが好ましく、0.001質量部未満であると本発明の効果が発揮されず、10質量部を超えると電荷のリークに伴う帯電量の絶対値低下が生じ易くなり、カブリや耐久画像濃度の低下が生じやすい。
次に、トナーの円形度について説明する。静電荷像担持体上の非画像部へのトナー付着や転写残余トナー量を低減するには、トナー粒子の帯電性が十分で且つ均一であることが必要である。さらに、高画質化の観点から微小粒径のトナーを用いる場合は、トナー粒子の付着力が増大するため、トナー粒子の形状も静電荷像担持体上の非画像部へのトナー付着に大きな影響を及ぼす。すなわち、トナー粒子が球形に近く、形状が揃っているほど粒子の付着面積が減少し、静電荷像担持体上の非画像部へのトナー付着や転写残余トナー量が低減され、高画質及び耐久安定性が達成される。
本発明に係るトナー粒子は帯電性が十分であり、且つ上述した如くトナー粒子の付着力が低減されていることにより、静電荷像担持体から紙等の転写材へのトナーの転写効率も大きく改善される。これは、微小ドット画像の再現性と共に高解像性を達成するための重要なトナー性能と言える。
さらに、トナー粒子が球形に近く、形状が揃っていると、トナーと定着器との接触面積も一様になるため、本発明のトナー粒子表面近傍に存在する磁性体に処理された低軟化点物質も安定して染み出すことができる。そのため、高いプロセススピードにおいても安定した定着性を発揮することが可能になる。
従って、本発明のトナーにおいては、トナーの平均円形度が0.970以上であることが好ましく、これによって高画質や高安定性、低温定着性が達成される。
本発明のトナーにおいては、重量平均粒径が2〜10μmであることが好ましい。
トナーの重量平均粒径が10μmを超えるような場合、微小ドット画像の再現性が低下し、且つ本発明のトナー構成ではより耐久における粒度変動の影響を受けやすくなる為、本発明により得られる過酷環境下でのトナーの帯電安定性が十分発揮し得ない。一方、トナーの重量平均粒径が2μmより小さい場合には、本発明の特殊な構造を用いても流動性の低下に伴って外添剤の劣化等が生じ易く、帯電不良によるカブリ、濃度薄等の問題が発生しやすくなる。
つまり、本発明のトナーにおいて帯電安定性や流動性の改善等、従来例と比較して顕著な効果が画像上に現れるのは、重量平均粒径が2〜10μm(より好ましくは3〜10μm)であり、さらに、より一層の高画質化という点では3.5〜8.0μmが好ましい。
次に本発明におけるトナーの製造方法を説明する。
本発明のトナーは、粉砕法によって製造することも可能であるが、粉砕法では本発明の磁性体構造を得るためには多段階の工程を経る必要があるため、収率やコストの面から不利である。
これに対して水系媒体中単量体系を直接重合して得られるトナー製造方法(以下、重合法と表記)においては、水系媒体との親和性の観点から極性−非極性成分との間に局在/分離が生じやすいため、本発明の磁性体構造を1段階で得ることが可能となり、好ましい。特に本発明では本発明の極性化合物を微量用いることで、重合中の液滴の安定性をも向上でき、粒度分布がシャープとなるため収率の面でさらに好ましい。
本発明に使用される重合性単量体系を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドが挙げられる。
これらの単量体は単独または混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいはほかの単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
先にも述べたように、本発明のトナーは、低軟化点物質で表面処理された酸化鉄がトナー粒子表面近傍に局在することにより、定着時に受け取った熱に対して低軟化点物質が迅速に溶融・染み出すため、非常に定着性に優れるものであるが、さらに、結着樹脂に対して1〜50質量%の離型剤を含有することが好ましい。磁性体のカプセル中間層の内層にも離型剤を含有させることで、定着性がより一層向上することになる。離型剤の含有量が1質量%未満では低温オフセット抑制効果が小さく、50質量%を超えてしまうと長期間の保存性が低下すると共に、他のトナー材料の分散性が悪くなり、トナーの流動性の劣化や画像特性の低下につながる。
本発明のトナーに使用可能な離型剤としては、先に挙げたような、酸化鉄の表面を処理する低軟化点物質として用いられる種類のものが、同じく使用できる。
その中でも、DSC測定において、30〜100℃の領域に吸熱ピークのピークトップを示すものが好ましく、35〜90℃の領域に吸熱を示すものが更に好ましい。DSC測定において吸熱が30℃未満の領域に存在すると、常温においてもワックス成分の染み出しが起こるようになり、保存性が悪くなる。一方、吸熱が100℃を超えた領域に存在すると定着温度が高くなり低温オフセットが発生しやすくなるので好ましくない。さらに、水系媒体中で重合法により直接トナーを得る場合、吸熱領域の温度が高いと、多量に添加する場合造粒中にワックス成分が析出する等の問題が生じるため好ましくない。
さらに、上記の離型剤は、DSC測定における吸熱ピークの半値幅が10℃以上であることが好ましい。低温から高温まで広範囲な吸熱成分を有することにより、低温定着に大きく貢献しつつ、離型性をも効果的に発現することができる。
ワックス成分の最大吸熱ピーク温度の測定は、「ASTM D 3418−8」に準じて行う。測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
本発明では、本発明の極性化合物のケン化価に入らないのものであっても単量体系に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基の如き親水性官能基含有の単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体の如き共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミドの如き重縮合体、ポリエーテル、ポリイミンの如き重付加重合体の形で使用が可能となる。こうした極性官能基を含む高分子重合体をトナー中に共存させると、前述のワックス成分を相分離させ、より内包化が強力となり、耐オフセット性、耐ブロッキング性、低温定着性の良好なトナーを得ることができる。その使用量としては、重合性単量体100質量部に対して1〜20質量部が好ましい。使用量が1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部を超えて使用された場合には、重合トナーの種々の物性設計が難しくなってしまう。またこれら極性官能基を含む高分子重合体の平均分子量は3000以上が好ましく用いられる。分子量3000未満、特に2000以下では、本重合体が表面付近に集中し易いことから、現像性、耐ブロッキング性等に悪い影響が起こり易くなり好ましくない。また、単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を単量体中に溶解して重合すれば、分子量分布の広い、耐オフセット性の高いトナーを得ることができる。
本発明のトナーには、荷電特性を安定化するために荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
さらに、トナーを直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料もしくはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、その四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。これらの荷電制御剤は、重合性単量体100質量部に対して0.5〜10質量部使用することが好ましい。しかしながら、本発明の画像形成方法に関わる現像剤は、荷電制御剤の添加は必須ではなく、現像剤の層圧規制部材や現像剤担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
また、本発明のトナーにおいて磁性体として用いられる酸化鉄は、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素の如き元素を含んでもよく、四三酸化鉄、γ−酸化鉄を主成分とするものであり、これらを1種または2種以上を併用して用いられる。これら酸化鉄は、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは2〜30m2/g、特に3〜28m2/gであり、更にモース硬度が5〜7のものが好ましい。
また、酸化鉄の形状としては、8面体、6面体、球状、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球状、不定形の如き異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。こういった形状は、SEMなどによって確認することができる。酸化鉄の粒度としては、0.03μm以上の粒径を有する粒子を対象とした粒度の測定において、体積平均粒径が、0.1〜0.3μmであり、かつ0.03〜0.1μmの粒子が40個数%以下であることが好ましい。
平均粒径が0.1μm未満の酸化鉄を用いた磁性トナーから画像を得ると、画像の色味が赤味にシフトし、画像の黒色度が不足したり、ハーフトーン画像ではより赤味が強く感じられる傾向が強くなるなど、一般的に好ましいものではない。また、酸化鉄の表面積が増大するために分散性が低下し、製造時に要するエネルギーが増大し、効率的ではない。また、酸化鉄の着色剤としての効果が弱くなり、画像の濃度が不足することもあり、好ましいものではない。
一方、酸化鉄の平均粒径が0.3μmを超えると、一粒子あたりの質量が大きくなるため、製造時にバインダーとの比重差の影響でトナー表面に露出する確率が高まったり、製造装置の摩耗などが著しくなる可能性が高まったり、分散物の沈降安定性などが低下するため好ましくない。
また、トナー中において、該酸化鉄の0.1μm以下の粒子が40個数%を超えると、酸化鉄の表面積が増大して分散性が低下し、トナー中にて凝集塊を生じやすくなりトナーの帯電性を損なったり、着色力が低下したりする可能性が高まるため40個数%以下であることが好ましい。さらに、30個数%以下とすると、その傾向はより小さくなるため、より好ましい。
尚、0.03μm未満の酸化鉄は、粒子径が小さいことに起因してトナー製造時に受ける応力が小さいため、トナー粒子の表面へ出る確率が低くなる。さらに、仮に粒子表面に露出してもリークサイトとして作用することはほとんど無く実質上問題とならない。そのため、本発明では、0.03〜0.1μmの粒子に注目し、その個数%を定義するものである。
また、酸化鉄中の0.3μm以上の粒子が10個数%を超えると、着色力が低下し、画像濃度が低下する傾向になることに加え、同じ使用量であっても個数的に少ないためにトナー粒子表面の近傍まで存在させること及び各トナー粒子に均一個数を含有させることが確率的に難しくなり、好ましくない。より好ましくは5個数%以下とするのが良い。
本発明においては、前述の粒度分布の条件を満たすよう、酸化鉄製造条件を設定したり、予め粉砕及び分級の如き粒度分布の調整を行ったものを使用することが好ましい。分級方法としては、例えば、遠心分離やシックナーといった沈降分離を利用したものや、例えばサイクロンを利用した湿式分級装置などの手段が好適である。
酸化鉄の体積平均粒径及び粒度分布の決定は、以下の測定方法によって行う。
粒子を十分に分散させた状態で、透過型電子顕微鏡(TEM)において3万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の酸化鉄粒子のそれぞれ投影面積を測定し、測定された各粒子の投影面積に等しい円の相当径を各粒子径として求めた。さらに、その結果を基に、体積平均粒径の算出ならび0.03〜0.1μmの粒子と、0.3μm以上の粒子の個数%を計算した。尚、粒度の測定は、0.03μm以上の粒径を有する粒子を対象とした。また、画像解析装置により粒子径を測定することも可能である。
トナー粒子中の酸化鉄の体積平均粒径及び粒度分布を決定する場合には、以下の測定方法により行う。
エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、ミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万〜4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の酸化鉄の粒子径のそれぞれ投影面積を測定し、測定された各粒子の投影面積に等しい円の相当径を酸化鉄の粒子径として求めた。さらに、その結果を基に、0.03〜0.1μmの粒子と、0.3μm以上の粒子の個数%を計算した。また、画像解析装置により粒子径を測定することも可能である。
さらにまた、酸化鉄以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色材料としては、磁性あるいは非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルの如き強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素を加えた合金、ヘマタイト、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニンが挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いても良い。
本発明に使用する重合開始剤としては重合反応時に半減期0.5〜30時間であるものを、重合性単量体の0.5〜20質量%の添加量で重合反応を行なうと、分子量1万〜10万の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドの如き過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明では、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体の0.001〜15質量%である。
懸濁重合法によるトナーの製造では、一般に上述のトナー組成物、すなわち重合性単量体中に、酸化鉄、着色剤、離型剤、可塑剤、結着剤、荷電制御剤、架橋剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるために入れる有機溶媒、分散剤等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散せしめた単量体系を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。なお、本発明の極性化合物を用いて適度に表面近傍に偏析させるためには、単量体系を添加する前の水系媒体中のpHが重要であり、本発明の磁性体構成とするためにはpH4〜10.5であることが好ましい。pHが4未満であると、該極性化合物の効果がほぼ消失してしまうため多量の極性物質添加が必要となり、帯電量の低下や粒度分布の広がり等の影響が出る。またpHが10.5を超えると極性化合物の添加によってむしろ一部の磁性体の露出が促進され、本発明の磁性体構造を維持することが困難となる。
本発明の懸濁重合法においては、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機・無機分散剤が使用でき、中でも無機分散剤が有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛の如き燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2〜20質量部を単独でまたは2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。平均粒径が5μm以下である様な、より微粒化されたトナーを目的とする場合には、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムが挙げられる。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させることができる。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。重合反応終期に残存重合性単量体を除去する時には障害となることから、水系媒体を交換するか、イオン交換樹脂で脱塩したほうが良い。無機分散剤は、重合終了後酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことができる。
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50〜90℃の温度に設定して重合を行なう。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が、相分離により析出して内包化がより完全となる。残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90〜150℃にまで上げることは可能である。
また、本発明のトナーには、流動性向上剤として、無機微粉体または疎水性無機微粉体が混合されることが好ましい。例えば、酸化チタン微粉末、シリカ微粉末、アルミナ微粉末を添加して用いることが好ましく、特にシリカ微粉末を用いることが好ましい。
現像剤に用いられる無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上のもの、特に50〜400m2/gの範囲のものが良好な結果を与えることができるため好ましい。
本発明中のトナーには、必要に応じて流動性向上剤以外の外部添加剤を添加してもよい。
例えば、クリーニング性を向上させる等の目的で、一次粒径が30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)微粒子、より好ましくは一次粒径が50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)で球状に近い無機微粒子または有機微粒子をさらに添加することも好ましい形態の一つである。例えば球状のシリカ粒子、球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状の樹脂粒子を用いるのが好ましい。
更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;または酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤;ケーキング防止剤;または例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤;また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量加えることもできる。これらの添加剤も、その表面を疎水化処理して用いることも可能である。
上述の如き、外添剤は、トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは0.1〜3質量部)使用するのが良い。
本発明のトナーを粉砕法により製造する場合は、公知の方法が用いることができる。公知の方法としては、例えば、結着樹脂、離型剤、荷電制御剤、場合によっては着色剤等のトナーとして必要な成分及びその他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器中で十分混合した後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して、樹脂類をお互いに相溶させた中に磁性体等の他のトナー材料を分散又は溶解させ、冷却固化、粉砕後に、分級、加えて磁性体による表面処理を行い、さらに樹脂粒子等で表面処理するという多段階の工程によってトナー粒子を得、必要に応じて微粉体等を添加して混合することによって現像剤を得ることが出来る。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率の点からは、多分割分級機を用いることが好ましい。
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いて行うことができる。本発明に係わる特定の円形度を有する現像剤を得るためには、さらに熱をかけて粉砕したり、または補助的に機械的衝撃を加える処理をすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法,熱気流中を通過させる方法などを用いてもよい。
機械的衝撃力を加える方法としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法がある。また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法を用いてもよい。
機械的衝撃を加える処理をする場合には、処理時の雰囲気温度をトナーのガラス転移点Tg付近の温度(すなわち、ガラス転移点Tgの±30℃の範囲の温度)とすることが、凝集防止と生産性の観点から好ましい。さらに好ましくは、トナーのガラス転移点Tgの±20℃の範囲の温度で処理を行うことが、転写効率を向上させるのに特に有効である。
さらにまた、本発明のトナーは、特公昭56−13945号公報等に記載のディスク又は多流体ノズルを用いて溶融混合物を空気中に霧化し球状トナーを得る方法や、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用いて直接トナーを生成する分散重合方法、又は水溶性の極性重合開始剤の存在下で直接重合させてトナーを生成するソープフリー重合方法に代表される乳化重合方法等を用いてトナーを製造する方法でも製造が可能である。
本発明のトナーを好適に用いることの出来る画像形成装置の一例を図に沿って具体的に説明する。
図1の画像形成装置において、100は感光ドラムで、その周囲に一次帯電ローラー117、現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナ116、レジスタローラー124等が設けられている。そして感光体100は一次帯電ローラー117によって、例えば−700Vに帯電される(印加電圧は交流電圧−2.0kVpp、直流電圧−700Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光される。感光体100上の静電潜像は現像器140によって一成分磁性現像剤で現像され、転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像をのせた転写材は搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーニング手段116によりクリーニングされる。現像器140は図2に示すように感光体100に近接してアルミニウム、ステンレスの如き非磁性金属で作られた円筒状のトナー担持体102(以下現像スリーブと称す)が配設され、感光体100と現像スリーブ102との間隙は図示されないスリーブ/感光体間隙保持部材等により約300μmに維持されている。現像スリーブ内にはマグネットローラー104が現像スリーブ102と同心的に固定、配設されている。但し現像スリーブ102は回転可能である。マグネットローラー104には図示のように複数の磁極が具備されており、S1は現像、N1はトナーコート量規制、S2はトナーの取り込み/搬送、N2はトナーの吹き出し防止に影響している。トナーは、トナー塗布ローラ141によって、現像スリーブ102に塗布され、付着して搬送される。搬送されるトナー量を規制する部材として、弾性ブレード103が配設され弾性ブレード103の現像スリーブ102に対する当接圧により現像領域に搬送されるトナー量が制御される。現像領域では、感光体100と現像スリーブ102との間に直流及び交流の現像バイアスが印加され、現像スリーブ上現像剤は静電潜像に応じて感光体100上に飛翔し可視像となる。
本発明における各種物性データの測定法を以下に詳述する。
(1)トナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)
本発明におけるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)は、ESCA(X線光電子分光分析)により表面組成分析を行い算出した。
本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:PHI社(Physical Electronics Industries,Inc.)製 1600S型 X線光電子分光装置
測定条件:X線源 MgKα(400W)
分光領域800μmφ
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出した。
測定試料としては、トナーを用いるが、トナーに外添剤が添加されている場合には、イソプロパノールの如きトナーを溶解しない溶媒を用いて、トナーを洗浄し、外添剤を取り除いた後に測定を行う。
(2)トナーの平均円形度
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下記式により求める。更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.400〜1.000を0.010間隔で、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満・・・0.990以上1.000未満及び1.000の如くに61分割した分割範囲に分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。
この算出法で算出される平均円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であるため、本発明においては、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこの様な算出法を用いている。
本発明における円形度は、粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
円形度の具体的な測定方法としては、ノニオン型界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlにトナー約5mgを分散させ分散液を調整し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜20000個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、3μm以上の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
測定の概略は、東亜医用電子社(株)発行のFPIA−1000のカタログ(1995年6月版)、測定装置の操作マニュアル及び特開平8−136439号公報に記載されているが、以下の通りである。
試料分散液は、フラットで扁平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子はフローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
(3)トナーの粒度分布
測定装置としてはコールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びCX−1パーソナルコンピュータ(キヤノン製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)を使用できる。測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターTA−II型により、アパチャーとして100μmアパチャーを用いて、トナーの体積、個数を測定して2〜40μmの粒子の体積分布と個数分布とを算出する。それから数平均粒径(D1)体積分布から求めた重量基準の重量平均径D4(各チャンネルの中央値をチャンネルごとの代表値とする)、体積分布から求めた重量基準の12.7μm以上の重量分布を求める。
(4)D/C、磁性体分布の測定方法
本発明において、TEMによる具体的なD/Cや磁性体分布の測定方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべき粒子を十分に分散させた後に温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、そのまま、あるいは凍結してダイヤモンド歯を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察する方法が好ましい。
該当する粒子数の割合の具体的な決定方法については、以下のとおりである。TEMにてD/Cを決定するための粒子は、顕微鏡写真での断面積から円相当径を求め、その値がコールターカウンターを用いる後述の方法により求めた数平均粒径の±10%の幅に含まれるものを該当粒子とし、その該当粒子100個について、磁性粒子表面との距離の最小値(D)を計測し、D/Cを求め、D/C値が0.02以下の粒子の割合を計算する。
また、磁性体の分布については該当粒子中の磁性体数と本発明の円相当径の0.2倍より外側にある磁性体数をカウントすることによって得る。
このときの顕微鏡写真は精度の高い測定を行うために、1万〜2万倍の倍率が好適である。本発明では、透過型電子顕微鏡(日立製H−600型)を装置として用い、加速電圧100kVで観察し、拡大倍率が1万倍の顕微鏡写真を用いて観察、測定した。
(5)酸価の測定方法
酸価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
次によって試験を行う。
(1)試薬
(a)溶剤エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)で、これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬としてN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/10水酸化カリウム−エチルアルコール溶液 水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作 試料1〜20gを正しくはかりとり、これに溶剤100mlおよび指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これをN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
3)計算式 つぎの式によって酸価を算出する。
ここにA:酸価
B:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
(6)ケン化価の測定方法
ケン化価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を酸価といい、次によって試験を行う。
(1)試薬
(a)溶剤エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)で、これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬としてN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/10水酸化カリウム−エチルアルコール溶液 水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作 試料1〜20gを正しくはかりとり、これに溶剤100mlおよび指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これに過剰量のN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液100−200ml添加し、1時間加熱還流してケン価させその後冷却する。得られた溶液をN/10塩酸水溶液で逆滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いて消失したときを中和の終点とする。なお、本試験と並行して空試験を行う
3)計算式 つぎの式によって酸価を算出する。
A={(B)−(C)}×5.611×f/S
ここにA:ケン化価
B:空試験のN/10塩酸水溶液の添加量(ml)
C:本試験のN/10塩酸水溶液の添加量(ml)
f:N/10塩酸水溶液のファクター
S:試料(g)
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。尚、以下の配合における部数は全て質量部である。
<磁性粉体1の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対してリン元素換算で1.5質量%のヘキサメタ燐酸ソーダ、鉄元素に対して珪素元素換算で1.5質量%の珪酸ソーダを混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。
該水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹込みながら酸化反応を進め、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。このスラリーを濾過、洗浄、乾燥後、解砕処理し、これにn−オクチルトリエトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100部に対し2部添加し、ホイール型混練機にて60分間処理し、磁性粉体表面の疎水化処理を行った。
このようにして得られた磁性粉体100部にフィッシャートロプシュワックス5部(平均粒径は30μm)を加え、ホイール型混練機にて加圧しながら2時間処理を行ない平均粒径が0.21μmの磁性粉体1を得た。
<磁性粉体2の製造>
磁性粉体1の製造において、フィッシャートロプシュワックスをポリプロピレンワックス(平均粒径は130μm)に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして、磁性粉体2を得た。
<磁性粉体3の製造>
磁性粉体1の製造において、フィッシャートロプシュワックスをパラフィンワックス(平均粒径は60μm)に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして、磁性粉体3を得た。
<磁性粉体4の製造>
磁性粉体1の製造において、フィッシャートロプシュワックスの量を5部から0.2部に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして、磁性粉体4を得た。
<磁性粉体5の製造>
磁性粉体1の製造において、フィッシャートロプシュワックスの量を5部から16部に変えたこと以外は磁性粉体1の製造と同様にして、磁性粉体5を得た。
<磁性粉体6の製造>
磁性粉体1の製造と同様に酸化反応を進め、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。このスラリー液を濾過、洗浄、乾燥後、十分解砕処理し、これにn−オクチルトリエトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100部に対し2部添加し、ホイール型混練機にて60分間処理し磁性粉体6を得た。
<磁性粉体7の製造>
磁性粉体1の製造と同様に酸化反応を進め、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。このスラリー液を濾過、洗浄、乾燥後、十分解砕処理した。このようにして得られた磁性粉体100部にフィッシャートロプシュワックス5部(平均粒径は30μm)を加え、ホイール型混練機にて加圧しながら2時間処理を行ない磁性粉体7を得た。
以上の磁性粉体1〜7の物性を表1に示す。
<磁性トナー1の製造>
イオン交換水720部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
スチレン 74部
n−ブチルアクリレート 26部
ジビニルベンゼン 0.5部
飽和ポリエステル樹脂[Mn=11000、Mw/Mn=2.4、
酸価=30mgKOH/g、Tg=72℃] 6部
負荷電制御剤・T−77(保土ヶ谷化学製) 1部
磁性粉体1 95部
極性化合物1(スチレン−無水マレイン酸共重合体)[ケン化価=150、Mp=3000] 0.1部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。
この単量体組成物を60℃に加温し、そこにポリエチレンワックス(DSCにおける最大吸熱ピーク65℃、吸熱ピークの半値幅17℃)10部を添加混合溶解し、これに重合開始剤t−ブチル−オキシ2−エチルヘキサノエート4部を溶解して重合性単量体組成物とした。
前期水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃,N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で8時間反応させた。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて分散剤を溶解し、分散剤を溶解し、濾過、水洗、乾燥してトナー粒子1を得た。
このトナー粒子100部と、一次粒径12nmのシリカにヘキサメチルジシラザンで処理をした後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.0部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))を用い混合し、磁性トナー1を調製した。磁性トナー1の物性を表2に示す。
<磁性トナー2の製造>
極性化合物1の添加量を0.1部から0.05部に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー2を得た。磁性トナー2の物性を表2に示す。
<磁性トナー3の製造>
磁性粉体1の代わりに磁性粉体7を用い、極性化合物1の添加量を0.1部から1.0部に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー3を得た。磁性トナー3の物性を表2に示す。
<磁性トナー4の製造>
磁性トナー1の製造で得られたトナー粒子100部に対して、乳化粒子(スチレン−メタクリル酸、粒径0.05μm)25部を外添した後、衝撃式表面処理装置(処理温度50℃、回転式処理ブレード周速90m/sec.)を用いて繰り返し固着・皮膜形成化を行うことで、皮膜トナー粒子を得た。磁性トナー1の製造と同様にして、疎水性シリカ微粉体1.0部を外添し、磁性トナー4を得た。磁性トナー4の物性を表2に示す。
<磁性トナー5の製造>
磁性粉体1を磁性粉体2に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー5を得た。磁性トナー5の物性を表2に示す。
<磁性トナー6の製造>
磁性粉体1を磁性粉体3に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー6を得た。磁性トナー6の物性を表2に示す。
<磁性トナー7の製造>
磁性粉体1を磁性粉体4に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー7を得た。磁性トナー7の物性を表2に示す。
<磁性トナー8の製造>
磁性粉体1を磁性粉体5に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー8を得た。磁性トナー8の物性を表2に示す。
<磁性トナー9の製造>
極性化合物1を極性化合物2(スチレン−メタクリル酸共重合体)[ケン化価=18、Mp=6200]5.0部に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー9を得た。磁性トナー9の物性を表2に示す。
<磁性トナー10の製造>
極性化合物1を極性化合物3(スチレン−無水マレイン酸共重合体)[ケン化価=220、Mp=4300]0.05部に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー10を得た。磁性トナー10の物性を表2に示す。
<磁性トナー11の製造>
ポリエチレンワックスをパラフィンワックス(DSCにおける最大吸熱ピーク78℃、吸熱ピークの半値幅9℃)に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー11を得た。磁性トナー11の物性を表2に示す。
<磁性トナー12の製造>
スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(質量比74/26)
(Mn=24300、Mw/Mn=3.0) 100部
飽和ポリエステル樹脂[Mn=11000、Mw/Mn=2.4、
酸価=30mgKOH/g、Tg=72℃] 5部
負荷電制御剤・T−77(保土ヶ谷化学製) 1部
磁性粉体1 30部
極性化合物1[ケン化価=150、Mp=3000] 0.1部
磁性トナー1の製造で用いたポリエチレンワックス 5部
上記材料をブレンダーにて混合し、110℃に加熱した2軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をターボミル(ターボ工業社製)で微粉砕し、得られた微粉砕物を風力分級して重量平均粒径6.0μmのトナー粒子を得た。
その後、該トナー粒子100部に対して磁性粉体1を65部外添し、衝撃式表面処理装置(処理温度55℃、回転式処理ブレード周速90m/sec.)を用いて磁性体を表面に固着させた後、さらに磁性体固着トナー粒子100部に対して乳化粒子(スチレン−メタクリル酸、粒径0.05μm)8部を外添した後、衝撃式表面処理装置(処理温度50℃、回転式処理ブレード周速90m/sec.)を用いて固着・皮膜形成化を行い、皮膜トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100部に磁性トナー1の製造と同様にして、疎水性シリカ微粉体1.0部を外添し、磁性トナー12を調製した。得られた磁性トナー12の物性を表2に示す。
<磁性トナー13の製造>
スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(質量比74/26)
(Mn=24300、Mw/Mn=3.0) 100部
飽和ポリエステル樹脂[Mn=11000、Mw/Mn=2.4、
酸価=30mgKOH/g、Tg=72℃] 5部
負荷電制御剤・T−77(保土ヶ谷化学製) 1部
磁性粉体1 95部
極性化合物1[ケン化価=150、Mp=3000] 0.1部
磁性トナー1の製造で用いたポリエチレンワックス 5部
上記材料をブレンダーにて混合し、110℃に加熱した2軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をターボミル(ターボ工業社製)で微粉砕し、得られた微粉砕物を風力分級して重量平均粒径6.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100部に、磁性トナー1の製造と同様にして、疎水性シリカ微粉体1.0部を外添し、磁性トナー13を調製した。得られた磁性トナー13の物性を表2に示す。
<磁性トナー14の製造>
磁性粉体1を磁性粉体6に変えたこと以外は磁性トナー1の製造と同様にして、磁性トナー14を得た。磁性トナー14の物性を表2に示す。
<実施例1>
画像形成装置として、LBP−1760を改造し、概ね図1に示される構造のものを用いた。
静電荷像担持体(感光体ドラム)の電位は、暗部電位Vd=−650V、明部電位VL=−130Vとした。また、静電荷像担持体と現像スリーブとの間隙は270μmとし、トナー担持体として下記の構成の層厚約7μm、JIS中心線平均粗さ(RA)1.0μmの樹脂層を、表面をブラストした直径16φのアルミニウム円筒上に形成した現像スリーブを使用し、現像磁極85mT(850ガウス)、トナー規制部材として厚み1.0mm、自由長0.5mmのウレタン製ブレードを39.2N/m(40g/cm)の線圧で当接させた。
フェノール樹脂 100部
グラファイト(粒径約7μm) 90部
カーボンブラック 10部
次いで、現像バイアスとして直流バイアス成分Vdc=−450V、重畳する交流バイアス成分Vp-p=1600V、F=2200Hzを用いた。また、現像スリーブの周速は感光体周速(235mm/sec)に対して順方向に110%のスピード(259mm/sec)とした。また、転写バイアスは直流1.5kVとした。
定着方法としてはLBP−1760のオイル塗布機能のない、フィルムを介してヒーターにより加熱加圧定着する方式の定着装置を用いた。この時加圧ローラーはフッ素系樹脂の表面層を有するものを使用し、ローラーの直径は30mmであった。また、定着温度は180℃、ニップ幅を7mmに設定した。
磁性トナー1をカートリッジに100g充填し、常温常湿環境下(23℃,60%RH)及び低温低湿環境下(15℃,10%RH)において、印字率2%の横線のみからなる画像パターンで5000枚の画出し試験を行った。なお、転写材としては75g/m2の紙を使用した。
その結果、トナー1は初期、及び、5000枚の画出し後において濃度の低下も無く、非画像部へのカブリのない良好な画像が得られた。また、低温定着性、耐オフセット性にも優れ、幅広い定着温度幅を取ることができた。常温常湿環境下での評価結果を表3に、低温低湿環境下での評価結果を表4に示す。
本発明の実施例、ならびに、比較例中に記載の評価項目とその判断基準について述べる。
(定着性)
LBP−1760の改造機を用い、常温常湿環境下において定着試験を行った。このときの画像面積比率は25%であり、単位面積当たりのトナー載り量は、0.6mg/cm2に設定した。また、プロセススピードは235mm/secに設定した。定着開始温度の測定は、定着器の設定温度を130〜230℃迄の温度範囲で5℃おきに温度調節して、各々の温度で定着画像を出力し、得られた定着画像を4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で摺擦し、摺擦前後の濃度低下率が10%以下となる定着温度を定着開始温度とした。また、高温オフセット温度については画像上及び紙裏の汚れを目視で評価した。
(画像濃度)
画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定を行った。
(カブリ)
カブリの測定は、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用い、カブリは下記の式より算出した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙上の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
なお、カブリの判断基準は以下の通り。
A:非常に良好(1.5%未満)
B:良好(1.5%以上乃至2.5%未満)
C:普通(2.5%以上乃至4.0%未満)
D:悪い(4%以上)
(ドット再現性)
ドット再現性は、図2に示す80μm×50μmのチェッカー模様を用いて画出し試験を行ない、顕微鏡により黒色部の欠損の有無を観察し、評価した。
A:100個中欠損が2個以下
B:100個中欠損が3〜5個以下
C:100個中欠損が6〜10個以下
D:100個中欠損が11個以下
(着色力)
A4の複写機用普通紙(75g/m2)に単位面積当たりのトナー重量を
0.6mg/cm2になるように調整し、濃度測定用の10mm×10mmベタ画像を多数有する画像を出力し、このときの画像濃度により評価した。尚、画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用い、以下に基づいて評価した。
A:1.55以上
B:1.40以上、1.55未満
C:1.20以上、1.40未満
D:1.20未満
<実施例2〜12>
トナーとして、磁性トナー2〜12を使用し、実施例1と同様の条件で画出し試験、定着性評価及び耐久性評価を行った。その結果、初期の画像特性も問題なく、印字5000枚までいずれも大きな問題のない結果が得られた。常温常湿環境下での評価結果を表3に、低温低湿環境下での評価結果を表4に示す。
<比較例1〜2>
トナーとして、磁性トナー13、14を使用し、実施例1と同様の条件で画出し試験、定着性評価及び耐久性評価を行った。その結果、磁性トナー13については耐久試験と共にカブリの悪化が生じ、特に低温低湿環境下においては画像濃度の低下が著しかった。また、磁性トナー14については定着領域が狭かった。常温常湿環境下での評価結果を表3に、低温低湿環境下での評価結果を表4に示す。