JP4163798B2 - 電磁式ダイヤフラムポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁式ダイヤフラムポンプに関し、特に、対向する電磁石に交流電流を通電させることにより、対向する電磁石の間に介在された振動子を交流電源と同じ周波数で往復運動させ、振動子の両端部に対向するように配置された一対のダイヤフラムの変形を利用し、ダイヤフラムで仕切られるケース内の容積変化と、弁の作用により圧縮気体を連続的に吐出させる電磁式ダイヤフラムポンプに関する。このような電磁式ダイヤフラムポンプは、例えば、曝気式浄化槽の曝気用、養魚の酸素補給用、泡風呂等のエアー噴気用、小型コンプレッサー等に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、浄化槽の曝気用や養魚の酸素補給用のポンプの一つとして、電磁式ダイヤフラムポンプが使用されている。
【0003】
このような電磁式ダイヤフラムポンプは、例えば、実開平2−83387号公報等に開示されているように、上部を開放した箱状の電磁石ケースと、この電磁石ケースの中に対向するように配置され固着された一対の電磁石と、この一対の電磁石の対向面の間に介在され電磁石の極性変化に伴い往復運動する振動子を備えており、さらに、該振動子の両端部には、センタープレートを介して対向するように配置された一対のダイヤフラムが配置され、このダイヤフラムの外方には弁機構を有する弁ケース本体が被着されている。
【0004】
そして、電磁式ダイヤフラムポンプは、電磁石の極性変化に伴い振動子が往復運動し、この振動子にセンタープレートを介して連結されたダイヤフラムを振動させることによって、外部空気の圧縮室内への吸入、および吸入した空気の圧縮吐出という動作が連続的に繰り返されるように作用する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような電磁式ダイヤフラムポンプの開発においては、省スペース化が要求されているために、例えば、弁ケース本体の大きさ(容量)は、できだけ小さく設定される傾向にある。また、弁ケース本体の材質は、一般にはPBT(ポリブチレンテレフタレート)が用いられている。
【0006】
しかしながら、このような弁ケース本体の大きさ(容量)の設定方法や材質の選定ではダイヤフラムの振動に基づく騒音を低減させることは困難であった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような課題、特に、ダイヤフラムが弁ケース本体内に空気を圧縮するために生じる騒音を低減させるために、本願にかかる発明者らが弁ケース本体の容積と、ダイヤフラム変形容積との関係を鋭意研究したところ、これらの関係を所定の範囲に設定することで騒音の発生状況が極端に変化することを見いだし本発明に想到したのである。さらには、弁ケース本体の材質の選定次第で遮音効果が大きく騒音防止に寄与できることを見いだし本発明に想到したのである。
【0008】
すなわち、本発明は、筐体状の電磁石ケースと、
該電磁石ケースの中に対向するように配置された一対の電磁石と、
該一対の電磁石の対向面の間に介在され電磁石の極性変化に伴い、電磁石の対向方向に対して直角方向に往復運動する振動子と、
該振動子の両端部に対向するように配置された一対の弾性を有するダイヤフラムと、
該ダイヤフラムの齏中央部を挟持するように配置され実質的に振動子と連結されるセンタープレートと、
前記ダイヤフラムにより隔離され、かつ弁機構を有する弁ケース本体とを有する電磁式ダイヤフラムポンプであって、
前記ダイヤフラムで仕切られる弁ケース本体の容積をV0、前記ダイヤフラムが前記振動子の振動により齎される全変形容積をVdとした場合、V0=1.5V d 〜1.9V d の関係を満たすような仕様を備えて構成される。
【0009】
また、本発明の好ましい態様として、前記弁ケース本体は、その構成材質が樹脂をマトリックス成分とする比重1.6〜2.0の材質から構成される。
【0010】
また、本発明の好ましい態様として、前記弁ケース本体は、その構成材質がBMC(バルク・モールディング・コンパウンド)であり、不飽和ポリエステル成形材料をマトリックス成分とし、ガラス繊維としてチョップドストランド(ガラス含有)を用いてバルク状にした成形材料から構成される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の電磁式ダイヤフラムポンプ1を、個々の主要パーツに分解させた状態を概略的に示す斜視図である。
【0014】
図2は、本発明の電磁式ダイヤフラムポンプの主要部分の必要箇所を、断面で示した正面図、図3は、本発明の電磁式ダイヤフラムポンプの主要部分の必要箇所を、断面で示した平面図である。
【0015】
図4は、本発明の電磁式ダイヤフラムポンプに用いられるダイヤフラムと弁ケース本体との設定仕様を説明するための模式的断面図である。
【0016】
図1に示されるように、下部タンク容器5の上面には、板状の底部基台プレート7が、密封状態となるように被着固定される。この板状の底部基台プレート7の略中央付近の上に、電磁石ケース10が設置されている。電磁石ケース10は、一般に、底部基台プレート7の上に直接載置されるのではなく、実質的にクッション作用が働くように、例えば、防振ゴム9を介して設置されている。電磁石ケース10は、本実施の形態の場合、開口部を有する有底容器状の電磁石ケース本体11と、この開口部を覆うための板状の電磁石ケース蓋体15を有し構成される。
【0017】
電磁石ケース10の中には、対向するように配置された一対の電磁石21,25と、この一対の電磁石21,25の対向面の間に介在され、電磁石の極性変化に伴い、電磁石の対向方向に対して直角方向に往復運動する振動子30が挿着される。さらに、振動子30は、その両端部に連結用シャフト31,31が固定配置されており、これにより振動子30の両端部に対向する一対のダイヤフラム40が配置される。
【0018】
ダイヤフラム40の中央部には、ダイヤフラム電磁石側センタープレート70と、ダイヤフラム弁ケース側センタープレート80とが挟持された状態で固定されており、これらの結合プレート70,80に実質的に振動子30(連結用シャフト31,31)が固定される。
ダイヤフラム40の外周面は電磁石ケース10の側面に固定され、このダイヤフラム40を押しつけるように弁ケース本体50および弁ケース蓋体60が、電磁石ケース10の両側に固着される。
【0019】
弁ケース蓋体60は、外部に突出したホース連結部61を備え、この連結部61にL型ゴムホース90の上部口91が挿着され、L型ゴムホース90の下部口95は、底部基台プレート7の孔部7aに挿着される。
【0020】
このようにして底部基台プレート7の上に、配置された電磁石ケース10およびそれに固着される上記の主要部材は、外包ケース100によってすっぽりと覆われ、外包ケース100の底部は、通常、下部タンク容器5の周縁あるいは底部基台プレート7の周縁と当接しつつ密封状態に固着される。外包ケース100は、エアーフィルタ(図示していない)をその上部備え、外部空気がエアーフィルタを介して外包ケース100内部に流入するようにエアーフィルタカバー101によりエアーフィルタの固着が行われている。図1における符号110は、ゴム脚を示している。
【0021】
次いで、図2および図3に基づき、本発明の電磁式ダイヤフラムポンプの基本的構造をさらに詳細に説明する。
【0022】
図2および図3に示されるように、対向して配置される一対の電磁石21,25は、それぞれ、E型の電磁石コア22,26と、電磁石コイル23,27が巻かれた電磁石ボビン24,28とを備えている。電磁石ボビン24,28はそれぞれ、両端にフランジ部24aおよび28aを有する筒状形態をなし、これらの電磁石ボビン24,28は、それぞれ、E型の電磁石コア22,26の中央コア22a,26aに挿入された形態で組み立てられる。電磁石21,25の電磁石コイル23,27には交流電源が接続され、交流電源の周波数と同一回数の磁極の変化(極性変化)が生じるようになっている。
【0023】
このような一対の電磁石21,25の対向面の間隙には、電磁石21,25の極性変化に伴い往復運動する振動子30が電磁石と接触しないように装着されている。振動子30は、本実施の形態の場合、プレート本体部35と、その両端に形成される連結用シャフト31,31を有し、プレート本体部35には、四角状の4つの極性の異なる永久磁石36,36(例えばN極),37,37(例えばS極)が埋設されている。
【0024】
振動子30の両端部には、一対の中央穴あき円盤状の弾性体(例えばゴム)ダイヤフラム40が対向するように配置されており、一対のダイヤフラム40の外周フランジ部41は、電磁石ケース10と、弁ケース本体50により挟持固定されている。ダイヤフラム40の内周部45は、ダイヤフラム電磁石側センタープレート70と、ダイヤフラム弁ケース側センタープレート80とによって挟持された状態で固定されており、これらの結合プレート70,80に振動子30が固定されている(連結用シャフト31,31の先端部で螺子止めされている)。
【0025】
図3に示されるように、電磁石ケース10に固着される弁ケース本体50および弁ケース蓋体60により、吸気室150が形成され、この吸気室150は、連通孔59で電磁石ケース10内部に連通している。吸気室150を区画する弁ケース本体50の吸気側外側壁51には、吸入弁120が内側から装着されている。この吸入弁120の弁作用により、外側壁51に形成された弁通気孔121を通して、空気がダイヤフラム室160に吸入される。ダイヤフラム室160は、ダイヤフラム40と、弁ケース本体50の吸気側外側壁51と吐出側外側壁55とによって区画されており、吐出側外側壁55には吐出弁130が外側から装着されている。この吐出弁130の弁作用により、吐出側外側壁55に形成された弁通気孔131を通して、ダイヤフラム室160の空気は、吐出室170に吐出されるようになっている。吐出室170に吐出された空気は、L型ゴムホース90内を通過して、下部タンク容器5内に入り、吐出口5a(図1)を通して吐出される。
【0026】
なお、吸入弁120および吐出弁130の弁作用は、以下の動作に基づき行われる。すなわち、交流電源に接続された電磁石21,25の極性変化に伴い振動子30は、交流電源と同じ周波数で図面の矢印(イ)および矢印(ロ)方向に往復運動する。この振動子30の動きに同期して振動子30の両端部に配置されたダイヤフラム40は、そのダイヤフラム40の中央部を中心にして振動子30のストロークと同じ変位量で変形する。これにより、ダイヤフラム室160の容量の変化が生じ、図3の右方向側のダイヤフラム室160に注目すると、ダイヤフラム40が矢印(イ)方向に変形した場合、ダイヤフラム室160は膨張して負圧になり、吸入弁120は開いて、空気がダイヤフラム室160内に吸入される。この逆に、ダイヤフラム40が矢印(ロ)方向に変形した場合、ダイヤフラム室160は圧縮され正圧になり、吐出弁130は開いて、空気がダイヤフラム室160内から吐出室170に吐出される。これらの動作が交互に連続的に行われ、圧縮空気が連続的に吐出される。なお、このような弁機構を含む基本的な動作原理そのものは、すでに公知の技術となっている。
【0027】
本発明における第1の発明要部は、前記ダイヤフラム40で仕切られる弁ケース本体50の容積を、ダイヤフラムの全変形容積との関係で、騒音が低減できるように仕様設定したところにある。すなわち、図4に示されるようにダイヤフラム40(センタープレート70,80を含む)で仕切られる弁ケース本体の容積をVd(ダイヤフラム40の位置は振幅なしの(2)の位置で測定される)、ダイヤフラム40が振動子30の振動(矢印(イ)−(ロ)方向)により齎される全変形容積をVdとした場合、V0=1.5V d 〜1.9V d の関係を満たすような仕様を備えて構成される。このV0値が1.5V d 未満となり、相対的に小さくなり過ぎると圧力変動を吸収しにくく騒音が大きくなるという不都合が生じ、またこのV0値が1.9V d を超えて、相対的に大きくなり過ぎると容積内空気の膨張・収縮が大きくなり流量が低下するという不都合が生じる。
【0028】
なお、ダイヤフラム全変形容積Vd は、図4に示されるようにダイヤフラムの振幅なしの状態である▲2▼の位置を基準にして、そこから矢印(イ)方向へ一定ストローク(▲1▼の位置)の振動の際に生じる変形容積Vd1と、矢印(ロ)方向へ一定ストローク(▲3▼の位置)の振動の際に生じる変形容積Vd2と和により算出され、Vd =Vd1+Vd2となる。上記範囲の仕様設定においては、特に、1000Hz,2000Hz近傍での騒音低減が極めて顕著となる。本発明の効果を示すグラフを図5に提示する。このグラフからわかるように本発明の範囲内であるV0 =1.5Vd 、1.9Vd では、1000Hzでそれぞれ3dB、4.2dBの騒音低減効果が見られ、また2000Hzでも同様な低減効果が見られる。上限を外れても騒音低減の効果はあるものの、上述したように流量低下の問題が生じて実用的でない。また、下限をはずれるV0 =1.0Vd では低減効果は発現しない。
【0029】
なお、図4は、実際にダイヤフラム40が一定ストロークで振動している状態を模式的に説明するために点線(▲1▼の位置)、実線(▲2▼の位置)、および一点鎖線(▲3▼の位置)で便宜上区別して示しているが、実際は一つの同一ダイヤフラム40である。
【0030】
また、本発明における第2の発明要部は、弁ケース本体50の構成材質を特定し、大きな遮音効果が得られるようにした点にある。すなわち、弁ケース本体50は、その構成材質が樹脂をマトリックス(母材)成分とする比重1.6〜2.0の材質から構成される。比重が1.6未満となると有効な遮音効果を得ることが困難となってしまう。このような樹脂を主成分とする材料は、生産性を考慮して射出成形可能であるグレードとすることが好ましい。
【0031】
具体的な好適材料の一例としては、BMC(バルク・モールディング・コンパウンド)が挙げられる。BMCは、不飽和ポリエステル成形材料をマトリックス成分とし、ガラス繊維としてチョップドストランド(ガラス含有)を用いてバルク状にした成形材料である。通常、粘度を上げ、取扱の容易な成形樹脂材料とするために増粘材や重合開始材等が添加される。その他、例えば、成形樹脂材料に金属ないしは非金属無機材料の微粉末を混合させて、比重1.6以上の成形材料としてもよい。
【0032】
本発明者らが、ガラス繊維等の含有率を変化させ、▲1▼比重1.4、▲2▼比重1.6、▲3▼比重2.0の各BMC成形材料を配合し、実際に弁ケース本体50を射出成形し、これらを電磁式ダイヤフラムポンプに組み込んで遮音効果実験を行ったところ、▲1▼比重1.4のサンプルと▲2▼比重1.6のサンプルとの間では5dBの差異が認めら、▲2▼比重1.6のサンプルの方が格段と遮音効果に優れていることが確認できた。また、▲2▼比重1.6のサンプルと▲3▼比重2.0のサンプルとででは若干▲3▼比重2.0のサンプルの方が良好と見られる結果が得られたが、双方共に極めて高い遮音効果を有していることが確認できた。また、従来品のPBT(ポリブチレンテレフタレート)サンプルと比重1.6のサンプルとの間では2dBの差異が認められた。
【0033】
【発明の効果】
上述してきたように、本発明の電磁式ダイヤフラムポンプにおいては、ダイヤフラムで仕切られる弁ケース本体の容積をV0 、前記ダイヤフラムが前記振動子の振動により齎される全変形容積をVd とした場合、V0 =1.3〜2.2Vd の関係を満たすような仕様を備えているので、ダイヤフラムの振動に基づく騒音を極めて低いレベルまで低減させることができる。
【0034】
また、本発明の電磁式ダイヤフラムポンプに用いられる弁ケース本体の構成材質は、樹脂をマトリックス成分とする比重1.6以上の材質から構成されているので、遮音効果が極めて大きく騒音防止に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電磁式ダイヤフラムポンプを、個々の主要パーツに分解させた状態を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の電磁式ダイヤフラムポンプの主要部分の必要箇所を、断面で示した正面図である。
【図3】本発明の電磁式ダイヤフラムポンプの主要部分の必要箇所を、断面で示した平面図である。
【図4】本発明の電磁式ダイヤフラムポンプに用いられるダイヤフラムと弁ケース本体との設定仕様を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明の効果を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1…電磁式ダイヤフラムポンプ
5…下部タンク容器
7…底部基台プレート
10…電磁石ケース
11…電磁石ケース本体
15…電磁石ケース蓋体
21,25…電磁石
30…振動子
40…ダイヤフラム
50…弁ケース本体
60…弁ケース蓋体
70…ダイヤフラム電磁石側センタープレート
80…ダイヤフラム弁ケース側センタープレート
90…L型ゴムホース
100…外包ケース
120…吸入弁
130…吐出弁
150…吸気室
160…ダイヤフラム室
170…吐出室
Claims (3)
- 筐体状の電磁石ケースと、
該電磁石ケースの中に対向するように配置された一対の電磁石と、
該一対の電磁石の対向面の間に介在され電磁石の極性変化に伴い、電磁石の対向方向に対して直角方向に往復運動する振動子と、
該振動子の両端部に対向するように配置された一対の弾性を有するダイヤフラムと、
該ダイヤフラムの中央部を挟持するように配置され実質的に振動子と連結されるセンタープレートと、
前記ダイヤフラムにより隔離され、かつ弁機構を有する弁ケース本体とを有する電磁式ダイヤフラムポンプであって、
前記ダイヤフラムで仕切られる弁ケース本体の容積をV0、前記ダイヤフラムが前記振動子の振動により齎される全変形容積をVdとした場合、V0=1.5V d 〜1.9V d の関係を満たすような仕様を備えてなることを特徴とする電磁式ダイヤフラムポンプ。 - 前記弁ケース本体は、その構成材質が樹脂をマトリックス成分とする比重1.6〜2.0の材質から構成される請求項1に記載の電磁式ダイヤフラムポンプ。
- 前記弁ケース本体は、その構成材質がBMC(バルク・モールディング・コンパウンド)であり、不飽和ポリエステル成形材料をマトリックス成分とし、ガラス繊維としてチョップドストランド(ガラス含有)を用いてバルク状にした成形材料から構成される請求項1または請求項2に記載の電磁式ダイヤフラムポンプ。
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