JP4162336B2 - 染料系偏光膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリビニルアルコール又はその誘導体からなる偏光膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光の透過・遮へい機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も初期の頃の電卓および時計等の小型機器から、ノートパソコン、ワープロ、液晶プロジェクタ、液晶テレビ、カーナビゲーションおよび屋内外の計測機器等の広範囲に広がり、使用条件も低温〜高温、低湿度〜高湿度の幅広い条件で使用されることから、偏光性能が高くかつ耐久性に優れた偏光板が求められている。
【0003】
現在、偏光膜は延伸配向したポリビニルアルコール又はその誘導体のフィルムに、偏光素子としてヨウ素や二色性染料を含有せしめて製造される。あるいは、ポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸又はポリビニルアルコール又はその誘導体からなるフィルムの脱水によりポリエンを生成して配向せしめたポリエン系のフィルムなどから製造される。これらのうち、偏光素子としてヨウ素を用いたヨウ素系偏光膜は、初期偏光性能には優れるものの、水および熱に対して弱く、高温、高湿の状態で長時間使用する場合にはその耐久性に問題がある。耐久性を向上させるためにホルマリン、あるいは、ほう酸を含む水溶液で処理したり、また透湿度の低い高分子フィルムを保護膜として用いる方法などが考えられているが十分とはいえない。一方、偏光素子として二色性染料を用いた染料系偏光膜はヨウ素系偏光膜に比べ、耐湿性および耐熱性は優れるものの、一般に初期偏光性能が十分ではない。
【0004】
また、高分子フィルムに数種の二色性染料を吸着・配向させてなる中性色の偏光膜において、2枚の偏光膜をその配向方向が直交するように重ね合わせた状態(直交位)で、可視光領域、特に400〜700nmの波長領域における特定波長の光漏れ(色漏れ)があると、偏光膜を液晶パネルに装着したとき、暗状態において液晶表示の色相が変わってしまうことがある。そこで、偏光膜を液晶表示装置に装着したとき、暗状態において特定波長の色漏れによる液晶表示の変色を防止するためには、高分子フィルムに数種の二色性染料を吸着・配向させてなる中性色の偏光膜において、可視光領域、特に400〜700nmの波長領域における直交位の透過率(直交透過率)を一様に低くしなければならない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
偏光膜の製造に用いられる染料としては、例えば特許第2844360号公報の実施例1に下記式(2)の水溶性染料が記載されている。
【0006】
【化2】
【0007】
しかしながら、前記従来の水溶性染料を含有してなる偏光膜は、偏光特性、吸収波長領域、色相等の観点から、需要家のニーズを十分に満足させるに至っていない。
【0008】
本発明の目的の一つは、優れた偏光性能および耐湿性・耐熱性を有する高性能な偏光膜を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、高分子フィルムに二種類以上の二色性染料を吸着・配向せしめてなる中性色の偏光膜であって、可視光領域、特に400〜700nmの波長領域における直交位の色もれがなく、優れた偏光性能及び耐湿性、耐熱性を有する高性能な偏光膜を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、特定の染料を含有する偏光膜が、優れた偏光性能及び耐湿性、耐熱性を有することを見いだし、さらにはかかる特定の染料とともに、中性色を有する偏光膜とするための特定の選択された染料を含有させることにより、偏光性能及び耐久性に優れるとともに、可視光領域における色もれも少ない偏光膜が得られることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち本発明は、
(1)遊離酸の形で下記式(1)
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、nは0または1を、Xはニトロ基またはアミノ基を表す。R1 、R2 、R3 、R4 は各々独立に水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチルアミノ基を表す。R5 はヒドロキシ基または無置換もしくは置換されたアミノ基を表す。R6 は水素原子、ヒドロキシ基、無置換もしくは置換されたアミノ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、またはエトキシ基を表す。)
で表される水溶性染料またはこの銅錯体染料を含有することを特徴とするポリビニルアルコール又はその誘導体からなる偏光膜、
(2)さらに式(1)で表される水溶性染料またはこの銅錯体染料以外の有機染料を少なくとも一種以上含有することを特徴とする(1)に記載のポリビニルアルコール又はその誘導体からなる偏光膜、
に関する。
【0012】
上記式(1)で表される水溶性染料またはその銅錯体染料を一種以上含有してなる偏光膜は、偏光性能に優れ、しかも耐湿性、耐熱性に優れる特徴を有する。さらに上記式(1)で表される水溶性染料またはその銅錯体染料を一種以上含有した偏光膜は別の有機染料を含有させることにより、偏光性能に優れ、しかも耐湿性、耐熱性に優れた特徴を有する中性色(グレー)の偏光膜が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の偏光膜は、式(1)で表される水溶性染料またはその銅錯塩染料を少なくとも一種以上含有する。式(1)において、Xはニトロ基またはアミノ基を表す。R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アセチルアミノ基を表す。また、R5 はヒドロキシ基および無置換のもしくは置換されたアミノ基を表す。R6 は水素原子、ヒドロキシ基、無置換のもしくは置換されたアミノ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。R5 、R6 において、置換されたアミノ基としては、例えばメチルアミノ基、カルバモイルアミノ基、アセチルアミノ基等があげられる。
【0014】
これらのうち、好ましい組み合わせとしては、例えば式(1)において、Xがニトロ基、R1 、R2 がメトキシ基で、nが0、R5 がヒドロキシ基、R6 が水素原子またはヒドロキシ基があげられ、またR6 の置換位置としてはアゾ基に対してオルト位が好ましい。次に本発明で使用する式(1)で表される水溶性染料の代表例を以下にあげる。
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
式(1)で表される水溶性染料は、通常のアゾ染料の製法に従い、公知のジアゾ化、カップリング法で容易に製造できる。即ち、4ーニトロー4´アミノスチルベンー2、2´ージスルホン酸ナトリウムをジアゾ化し、置換基を有していてもよいアニリン類と一次カップリングさせ、モノアゾアミノ化合物を得る。次いで、このモノアゾアミノ化合物をジアゾ化し、置換基を有していてもよいアニリン類と2次カップリングさせ、ジスアゾアミノ化合物を得る。このジスアゾアミノ化合物をジアゾ化し、R5 、R6 で置換されたナフトール類とアルカリ性で3次カップリングさせることにより、nが1の式(1)で表される水溶性染料が得られる。nが0の水溶性染料は、モノアゾアミノ化合物のジアゾ化物と、R5、R6 で置換されたナフトール類と2次カップリングさせることにより、nが0である式(1)で表される水溶性染料が得られる。さらに硫酸銅等を用いて常法により銅錯体化すれば式(1)で表される水溶性染料の銅錯体化物が得られる。
【0018】
上記反応においてジアゾ化法はジアゾ成分の塩酸、硫酸などの鉱酸水溶液または、けん濁液に亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩を混合するという順法によるか、あるいはジアゾ成分の中性もしくは弱アルカリ性の水溶液に亜硝酸塩を加えておき、これと鉱酸を混合するという逆法によってもよい。ジアゾ化の温度は、−10〜40℃が適当である。また、カップリングはアミン類の塩酸、酢酸などの酸性水溶液と上記ジアゾ液を混合し中和してPH2〜7にすればよい。カップリングの温度は−10〜40℃が適当である。
【0019】
カップリングして得られたモノアゾ化合物及びジスアゾ化合物はそのままあるいは酸析や塩析により析出させ濾過して取り出すか、溶液またはけん濁液のまま次の工程へ進むこともできる。ジアゾニウム塩が難溶性でけん濁液となっている場合は濾過してプレスケーキとして次のジアゾ化工程で使うこともできる。
【0020】
モノアゾアミノ化合物または、ジスアゾアミノ化合物のジアゾ化物と、置換されたナフトール類との2次または3次カップリング反応は、温度が−10〜40℃でPH7〜10のアルカリ性条件で行われる。反応終了後、塩析により析出させ濾過して取り出す。さらに銅錯体化物とするには、その水溶液を、例えばアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の存在下に硫酸銅、塩化銅、酢酸銅と95〜100℃で反応させ、塩析等により析出させ濾過して取り出せばよい。また精製が必要な場合には、塩析を繰り返すか、または有機溶媒を使用して水中から析出させればよい。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類等の水溶性有機溶媒があげられる。
【0021】
式(1)で表される水溶性染料を合成するための出発原料は4ーニトロー4´アミノスチルベンー2、2´ージスルホン酸ナトリウムである。
【0022】
カップリング成分である、置換基を有していてもよいアニリン類における置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アセチルアミノ基が挙げられる。これらの置換基は1つまたは2つ以上結合しても良い。その結合位置は、アミノ基に対して、2位、3位、2位と5位が好ましい。置換基を有していてもよいアニリン類としては、例えばアニリン、2ーメチルアニリン、3ーメチルアニリン、2ーエチルアニリン、3ーエチルアニリン、2、5ージメチルアニリン、2、5ージエチルアニリン、2ーメトキシアニリン、3ーメトキシアニリン、2ーメトキシー5ーメチルアニリン、2、5ージメトキシアニリン、3ーアセチルアミノアニリン、2ーメトキシー5ーアセチルアミノアニリン、等が挙げられる。これらのアニリン類はアミノ基が保護されていても良い。保護基としては、例えばそのωーメタンスルホン酸基があげられる。1次カップリングに使用するアニリン類と2次カップリングに使用するアニリン類は同じであっても異なっていても良い。
【0023】
上記した置換されたナフトール類としては6ー(4´ーヒドロキシフェニルアゾ)ー3ースルフォン酸ー1ーナフトール、6ー(2´、4´ージヒドロキシフェニルアゾ)ー3ースルフォン酸ー1ーナフトール、6ー(4´ーアミノフェニルアゾ)ー3ースルフォン酸ー1ーナフトール、6ー(4´ーNメチルアミノフェニルアゾ)ー3ースルフォン酸ー1ーナフトール、等が挙げられる。置換されたナフトール類はJ酸を公知の方法で、トシル化した後ジアゾ化し、フェノール類またはアニリン類とカップリングした後、脱トシル化すれば得られる。あるいはモノアゾアミノ化合物または、ジスアゾアミノ化合物のジアゾ化物と、J酸をカップリングした後、J酸のアミノ基をジアゾ化しフェノール類またはアニリン類とカップリングして得ることもできる。またXをアミノ基とするには、ニトロ基を硫化ナトリウム等を用いて還元すれば、Xがアミノ基である、式(1)で表される化合物が得られる。
【0024】
式(1)で表される水溶性染料は単独で使用される他、それら同士、あるいは他の色素と配合することにより、各種の色相及び中性色を有する偏光素子または偏光板を製造することができる。配合する他の有機染料としては、本発明の水溶性染料の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収特性を有する染料であって二色性の高いものであれば、いかなる染料であってもよく、例えば、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド 2、シー.アイ.ダイレクト.レッド 31、シー.アイ.ダイレクト.レッド 79、シー.アイ.ダイレクト.レッド 81、シー.アイ.ダイレクト.レッド 247 、シー.アイ.ダイレクト.グリーン 80、シー.アイ.ダイレクト.グリーン 59および特開昭59−145255号、特開昭60−156759号、特開平3−12606号、特願平10−32407号の各公報に記載された染料等が挙げられ、これらの色素は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。
【0025】
本発明の偏光膜は、式(1)で表される水溶性染料を、偏光膜材料である高分子フィルムに公知の方法で含有せしめることにより、製造することができる。
【0026】
本発明の偏光膜に使用する基材(高分子フィルム)は、ポリビニアルコールまたはその誘導体、これらのいずれかをエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸などで変性したもの、EVA(エチレン/ビニルアセテート)樹脂、ケン化EVA樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂などからなるものが利用される。なかでも、ポリビニアルコールまたはその誘導体からなるフィルムが、染料の吸着性および配向性の点から、好適に用いられる。
【0027】
このような高分子フィルムに式(1)で表される水溶性染料を含有せしめるにあたっては、通常、高分子フィルムを染色する方法が採用される。染色は、例えば次のように行われる。まず、式(1)で表される水溶性染料を水に溶解して染浴を調整する。染浴中の染料濃度は特に制限されないが、通常は0.001〜10重量%程度の範囲から選択される。また、必要により染色助剤を用いてもよく、例えば、芒硝を0.1〜10重量%程度の濃度で用いるのが好適である。このようにして調整した染浴に高分子フィルムを浸漬し、染色を行う。染色温度は、好ましくは40〜80℃程度である。
【0028】
式(1)で表される水溶性染料の配向は、高分子フィルムを延伸することによって行われる。延伸する方法としては、例えば湿式法、乾式法など、公知のいずれの方法を用いてもよい。高分子フィルムの延伸は、染色の前に行ってもよい。式(1)で表される水溶性染料を含有・配向せしめた高分子フィルムは、必要に応じて公知の方法によりホウ酸処理などの後処理が施される。このような後処理は、偏光膜の光線透過率および偏光度を向上させる目的で行われる。ホウ酸処理の条件は、用いる高分子フィルムの種類や用いる染料の種類によって異なるが、一般的にはホウ酸水溶液のホウ酸濃度を0.1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲とし、処理は30〜80℃、好ましくは40〜75℃の温度範囲で行われる。更に必要に応じて、カチオン系高分子化合物を含む水溶液で、フィックス処理を併せて行ってもよい。
【0029】
このようにして得られた染料系偏光膜は、その片面または両面に、光学的透明性および機械的強度に優れる保護膜を貼合して、偏光板とすることができる。保護膜を形成する材料は、従来から使用されているものでよく、例えば、セルロースアセテート系フィルムやアクリル系フィルムのほか、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂またはポリアミド系樹脂からなるフィルムが用いられる。
【0030】
また、式(1)で表される水溶性染料に加えて前記の有機染料を少なくとも一種以上用いることによっても本発明のポリビニルアルコール又はその誘導体からなる偏光膜が得られる。この場合、それぞれの配合割合は特に限定されるものではないが、一般的には、式(1)で表される水溶性染料の重量を基準として、前記の有機染料の少なくとも一種以上の合計で0.1〜10重量部の範囲で用いるのが好ましい。このように構成した偏光膜は中性色を有し、可視光領域、特に400〜700nmの波長領域において直交位の色もれがなく、偏光性能に優れ、さらに高温、高湿状態でも変色や偏光性能の低下を起こさないという特徴を有する。
【0031】
このようにして、高い偏光性能を有し、且つ耐湿性、耐熱性に優れた偏光膜を得ることができる。また式(1)で表される水溶性染料と他の有機染料を併用することによって、耐湿性、耐熱性の優れた中性色の偏光膜を得ることができる。この場合、有機染料として前記した染料から一種以上を併用することによって、耐湿性、耐熱性に優れ、可視光領域における直交位での光もれの少ない偏光膜を得ることができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明をなんら限定するものではない。例中にある%および部は、特にことわらないかぎり重量基準である。
【0033】
合成例1
4ーニトロー4´アミノスチルベンー2、2´ージスルホン酸ナトリウム44.4部を水600部に加え70℃として溶解する。冷却し30℃以下で、35%塩酸32部を加え、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、25〜30℃で2時間攪拌する。そこへ 2、5ジメトキシアニリン15.3部を加え、25〜30℃で2時間攪拌したのち、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過して、モノアゾ化合物を得る。得られたモノアゾ化合物を水600部に分散させたのち、35%塩酸32部を、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、25〜30℃で2時間攪拌してジアゾ化し、モノアゾジアゾ反応液を得る。
【0034】
一方、J酸24.0部を水250部に分散させ、水酸化ナトリウム12部を加えて溶解し、塩化トシル19部を加えて35〜40℃で1時間攪拌する。この液に35%塩酸42部を、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、10〜15℃で2時間攪拌する。次いでフェノール9.4部を加えた後、水酸化ナトリウムを加えてPH9とし10〜15℃で攪拌してカップリング反応を完結させる。この反応液に水酸化ナトリウム6部を加え、80℃で3時間攪拌して加水分解させる。20〜30℃に冷却した後、35%塩酸を加えてPH7とし、次いで塩化ナトリウムを加えて塩析し、濾過してモノアゾ化合物である6ー(4´ーヒドロキシフェニルアゾ)ー3ースルフォン酸ー1ーナフトールを得る。このモノアゾ化合物を水300部に加え、水酸化ナトリウムを加えて溶解しておく。
【0035】
先に得られたモノアゾジアゾ反応液を、モノアゾ化合物の溶解液に炭酸ナトリウムで弱アルカリ性を保ちながら加え、15〜25℃で攪拌してカップリング反応を完結させる。反応液に塩化ナトリウムを加えて塩析し、濾過して化合物No.1のトリスアゾ化合物の水溶性染料を得た。
【0036】
合成例2
合成例1で得られた化合物40部を水500部に分散させ、結晶硫酸銅15部およびモノエタノールアミン10部を加えて95℃に加熱し、10時間反応させる。反応液に塩化ナトリウムを加えて塩析し、濾過して、化合物No.2の銅錯体染料である水溶性染料を得た。
【0037】
合成例3
合成例1で用いた2、5ジメトキシアニリンに変えてpークレシジンを用いて化合物No.3の水溶性染料を得た。
【0038】
実施例1
合成例1で得られた化合物No.1の染料の0.03%および芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液に、厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜は、最大吸収波長615nmであり、この偏光膜は高い偏光度を有し、しかも、高温、高湿の状態でも長時間にわたる耐久性をしめした。
【0039】
実施例2
合成例2で得られた化合物No.2の染料の0.03%および芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液に、厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜は、最大吸収波長665nmであり、この偏光膜は高い偏光度を有し、しかも、高温、高湿の状態でも長時間にわたる耐久性をしめした。
【0040】
実施例3
合成例2で得られた化合物No.2の染料の0.05%、合成例3で得られた化合物No.3の染料の0.04%、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39を0.03%、シー.アイ.ダイレクト.レッド81を0.03%、および芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液に、厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜は、中性色を示し、高い偏光度を有し、しかも、高温、高湿の状態でも長時間にわたる耐久性をしめした。
【0041】
実施例4
合成例2で得られた化合物N0.2の染料0.05%、シー・アイダイレクト・オレンジ39を0.03%、シー.アイ.ダイレクト.レッド81を0.03%、特願平10ー32407号明細書、実施例1に記載されている下記構造式で示される染料0.04%、および芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液に、厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜は、中性色を示し、高い偏光度を有し、しかも、高温、高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示した。
【0042】
【化6】
【0043】
【発明の効果】
本発明の化合物は、染料、特に偏光膜用の染料として有用である。そしてこの化合物を含有する偏光膜は、ヨウ素を用いた偏光膜に匹敵する高い偏光性能を有し、且つ耐久性にも優れるので、各種液晶表示体、なかでも高い偏光性能と耐久性を必要とする車載用途、各種環境で用いられる工業計器類の表示用途に好適である。
Claims (2)
- さらに式(1)で表される水溶性染料またはこの銅錯体染料以外の有機染料を少なくとも1種以上含有することを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコール又はその誘導体からなる偏光膜。
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