JP4160864B2 - 融合蛋白質、その製造方法及びそれを用いた評価方法 - Google Patents

融合蛋白質、その製造方法及びそれを用いた評価方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、創薬研究において重要な組換え膜蛋白質の調製方法及び組換え膜蛋白質に関する。
【0002】
【従来の技術】
膜蛋白質、特に膜受容体は細胞表面でリガンドと結合することで活性化され、細胞内情報伝達のカスケードを作動させる重要な働きを担っている。膜受容体のアゴニスト(作動薬)、アンタゴニスト(拮抗薬)は医薬品候補となるため、膜受容体の効率的な生産技術及びこれを用いた評価方法を開発することは創薬研究において非常に重要である。
【0003】
また、膜受容体に対する抗体医薬市場は年々伸びているが、実用化されている抗体医薬のターゲットとなる膜受容体の種類は限られている。抗膜受容体抗体の開発には、免疫原となる膜受容体及び免疫応答によって産生された抗体の評価の双方に組換え膜受容体を必要とする。例えば、G蛋白質共役型受容体(GPCR)のような7回膜貫通型膜受容体はその効率的生産技術が開発されていないためこれらをターゲットする抗体をはじめとする医薬の開発は遅れている。
【0004】
従来は、一般的に、創薬のターゲットとなる哺乳動物由来の膜受容体は、CHO細胞のような動物細胞、sf9細胞のような昆虫細胞での発現が試みられていたが、細胞膜画分への発現効率は低く、また細胞膜に発現しても、細胞膜上に存在する多種類の他の膜蛋白質の存在が問題となっていた。また、細胞膜に移行するまでに宿主のプロテアーゼによってすみやかに分解される等の問題もあった。また、昆虫細胞や動物細胞は取り扱いが煩雑であることや、目的の膜受容体を発現させる工程に至るまでに多くの工程と長い時間を要するという問題もあり、より簡便に活性型の組換え膜受容体を調製する技術が望まれていた。簡便な方法としてバクテリアを宿主として用いる方法があるが、バクテリアでは哺乳動物由来の膜受容体は発現が難しく、発現しても、正しい構造を形成することはなく、哺乳動物で発現させたものと同様の活性を有する膜受容体を得ることは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、バクテリアの組換え蛋白質発現系を改良することによって、創薬研究において重要な組換え膜蛋白質の調製方法及び組換え膜蛋白質を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、分泌型蛋白質と、目的膜蛋白質とを含有する融合蛋白質であって、上記分泌型蛋白質のC末端に、上記目的膜蛋白質が連結している融合蛋白質である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明の融合蛋白質は分泌型蛋白質を含有する。
上記分泌型蛋白質は、本発明の融合蛋白質において、目的膜蛋白質のリーダー蛋白質として機能する。
上記分泌型蛋白質はN末端に約20〜30アミノ酸残基からなるシグナルペプチドをもった前駆体としてリボゾームで合成される。シグナルペプチドは分泌型蛋白質の膜透過には必須であり、膜透過の過程でシグナルペプチダーゼによって切断され、成熟体蛋白質が生ずる。
【0008】
上記分泌型蛋白質としては特に限定されず、例えば、膜透過性ペプチド、膜蛋白質等が挙げられる。
上記分泌型蛋白質としては、N末端にシグナルペプチドを有するものであれば、膜透過性ペプチドの20残基以上の部分配列からなるペプチドや、膜蛋白質の細胞外ドメインに位置する20残基以上の部分配列からなるペプチドを用いることもできる。
【0009】
上記膜透過性ペプチド及び上記膜蛋白質としてはN末端にシグナルペプチドを有するものであれば特に限定されないが、膜透過性の点からバクテリアのシグナルペプチドを有する蛋白質が好ましく、透過性ペプチドとしてはバクテリアのペリプラズム由来蛋白質が好ましく、上記膜蛋白質としてはバクテリア由来の膜蛋白質が好ましい。
【0010】
7回膜貫通型膜蛋白質であるGPCR等の膜蛋白質のN末端は細胞外ドメインに位置する。このため、上記目的膜蛋白質のN末端側に、これらのバクテリアのシグナルペプチドを有する分泌型蛋白質を連結することにより、本発明の融合蛋白質をバクテリアに発現させた場合は、SecA、SecB、SRP(Signal recognition particle)等の蛋白質因子が関与する蛋白質輸送システムによって速やかに膜へ移行し易くなるため、目的膜蛋白質が細胞質内のプロテアーゼにより分解されにくくなる。また、上記のバクテリアのシグナルペプチドを有する蛋白質は、ほぼ確実にペリプラズムへ分泌されるため、上記目的膜蛋白質は膜上に正しい折り畳み構造で発現しやすくなる。
【0011】
上記分泌型蛋白質としては、人工的にN末端にシグナルペプチドが付与された蛋白質を用いることもできる。上記シグナルペプチドとしては、例えば、PelB(Power,BE et al.,1992,Gene 113,95)、OmpA(Tanji,Y.et al.,1991,J.Bacteriol.173,1997)、大腸菌マルトース結合蛋白質のシグナルペプチド(Fikes,JD et al.,1987,J.Bacteriol.169,2352)等が挙げられる。また、Bacillus sp.エンドキシラナーゼ由来のシグナルペプチドが付与された蛋白質を分泌型蛋白質として使用した場合は、高効率な分泌発現が可能となる(Jeong,KJ et al.,2000,Biotechnol.Bioeng.67,398)。
上記分泌型蛋白質として、バクテリアのペリプラズム由来蛋白質や、バクテリア由来の膜蛋白質を用いる場合でも、そのシグナルペプチドを上記のようなものに置き換えることで効率良く本発明の融合蛋白質を生産することが可能になる。
【0012】
上記分泌型蛋白質は、他のペプチドと相互作用する性質を有することが好ましい。
上記分泌型蛋白質としては、例えば、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ(以下、PPIaseという)や、蛋白質のジスルフィド結合の形成・交換を触媒する蛋白質因子が好適に用いられる。これらの酵素を用いることにより、目的膜蛋白質の細胞外ドメインの構造形成を効率良く行うことができる。
上記分泌型蛋白質としては、また、PPIaseや、蛋白質のジスルフィド結合の形成・交換を触媒する蛋白質因子の10残基以上の部分配列からなるペプチドを用いることもできる。
【0013】
上記PPIaseは、ペプチドにおけるプロリン残基の立体異性化反応を触媒する蛋白質群であり、蛋白質の折り畳み構造の形成にも重要な役割を果たしている。
上記PPIaseとしては、例えば、PpiA、FkpA、SurA、PpiD等の大腸菌のペリプラズム由来のPPIaseが挙げられる。これらの大腸菌のペリプラズム由来のPPIaseには、実質的に同等の機能を有しているもの、即ち、実質的に同等のポリペプチド、少なくともこれらの1部分を含むポリペプチド、及び、1部のアミノ酸を他のアミノ酸に改変したもの等も含まれる。
【0014】
上記PPIaseにはシクロフィリン(シクロスポリン結合蛋白質)、FKBP(FK506結合蛋白質)及びパーブリンの3つのファミリーが存在し、大腸菌のペリプラズムにもこの3つのファミリーに属するPPIaseが見出されている。
上記PpiA(liu,J.et al.,1990,PNAS 87,4028)はシクロフィリンに、上記FkpA(Bothmann,H.,2000,J.Biol.Chem.275,17100)はFKBPに、上記SurA(Behrens,S.et al.,2001,EMBO J.20,285)及びPpiD(Dartigalongue,C.et al.,1998,EMBO J.17,3968)はパーブリンに、それぞれ属するものである。
【0015】
上記PpiAはシクロスポリンに対する親和性が低いが、アミノ酸変異導入を施すことによって親和性を向上させることも可能である。
上記FkpAはFK506に対する結合力が強く、上記FkpAと目的膜蛋白質との融合蛋白質を精製する際に、FK506又はその誘導体が固定化された担体を用いることにより容易に精製することができる。
上記SurAやPpiD等のパーブリンファミリーに属するPPIaseは、ジュグロン(Juglone)によって強く阻害される。上記SurAやPpiDと目的膜蛋白質との融合蛋白質もジュグロン又はその誘導体が固定化された担体を用いることにより容易に精製することができる。
【0016】
上記PPIaseは、PPIase活性依存的又は非依存的に蛋白質の構造形成に関与している。上記FkpAは、PPIase活性とは別に蛋白質の凝集形成を抑制するシャペロン活性を有するものである(Ramm,K.et al.,2000.J.Biol.Chem.275,17106)。また、上記SurA及びPPiDは膜蛋白質の折り畳みに関与していることが報告されている(Claire,D.et al.,1998,EMBO J.17,3968;Lazar,SW et al.,1996,J.Bacteriol.178,1770)。このため、上記大腸菌のペリプラズム由来のPPIaseを分泌型蛋白質として含有する融合蛋白質を大腸菌に発現させることで、目的膜蛋白質を大腸菌の膜上に正しい構造で発現させることができる
上記PPIaseとしては、大腸菌以外のバクテリア由来のものであって、上記大腸菌のペリプラズム由来のPPIaseと相同性の高いアミノ酸配列を有するものを用いることもできる。アミノ酸配列の相同性は、ClustalW等の多重整列ソフトによって同定することができる。
【0017】
本発明で用いられるPPIaseとしては、シグナルペプチド、及び、プロリンの立体異性化やリガンドとの結合に必要な領域を含む断片からなるペプチドを用いることもできる。また、本発明で用いられるPPIaseとしては、古細菌や真核生物由来のPPIaseを用いることもでき、古細菌や真核生物由来のPPIaseにバクテリアで機能するシグナルペプチド付加したものを用いることもできる。
【0018】
上記蛋白質のジスルフィド結合の形成・交換を触媒する蛋白質因子としては、例えば、DsbA、DsbB、DsbC、DsbD等の大腸菌由来のDsb蛋白質が挙げられる。これらの大腸菌由来のDsb蛋白質には、実質的に同等の機能を有しているもの、即ち、実質的に同等のポリペプチド、少なくともこれらの1部分を含むポリペプチド、及び、1部のアミノ酸を他のアミノ酸に改変したもの等も含まれる。
上記Dsb蛋白質は、PPIaseと同様に、ペリプラズム蛋白質の構造形成に重要な役割を果たしている。
【0019】
上記DsbA、DsbB、DsbC、DsbDは、全て活性発現に必須のCys−X−X−Cysモチーフ(Xは任意のアミノ酸)を有する。上記DsbAはDsbBと連携してS−S結合の形成を触媒し、上記DsbCはDsbDと連携して、S−S結合の架け変え(異性化)を触媒している。
また、上記DsbB及びDsbDは膜貫通型蛋白質であるが、細胞外ドメインに活性部位を有しており、それぞれ上記DsbA、DsbCと共同的に働く(Ritz,D.et al.,2001,Annu.Rev.Microbiol.55,21−48)。
以上のことから、上記DsbA、DsbC、DsbB、DsbDの細胞外ドメインと目的膜蛋白質とを融合蛋白質として発現させることで、目的膜蛋白質に正しいS−S結合を導入してバクテリアの細胞膜上に発現させることが可能となる。また、上記DsbAはDsbBに対して特定の酸化還元環境において強い親和性を示し、上記DsbCはDsbDに対して特定の酸化還元環境において強い親和性を示す(Kishigima,S.et al.,1995,J.Biol.Chem.270,17072;Haebel,PW et al.,2002,EMBO J.21,4774)。このため、上記DsbAと目的膜蛋白質との融合蛋白質は、上記DsbB又はその活性ドメインを含む断片が固定化された担体によって容易に精製することができ、上記DsbCと目的膜蛋白質との融合蛋白質は、上記DsbD又はその活性ドメインを含む断片が固定化された担体によって容易に精製することができる。
【0020】
本発明の融合蛋白質は、分泌型蛋白質のシグナルペプチドのC末端、又は、目的膜蛋白質のC末端に、3〜100アミノ酸からなるタグを有することが好ましい。
上記タグとしては、例えば、ポリArg−tag(Sassenfeld,H.et al.,1984,Bio/Technology 2,76)、ポリHis−tag(Hochuli,E.et al.,1988,Bio/Yechnology 6,1321)、FLAG−tag(Prickett,KSet al.,1989,Biotechniques 7,580)、ストレプトアビディン結合ペプチド(Wilson,DS et al.,2001,PNAS 98,3750)、カルモジュリン結合ペプチド(Stofko−Hahn,RE et al.,1992,FEBS Lett.302,274)、キチン結合ペプチド(Watanabe,T.et al.,1994,J Bacteriol.176,4465)、SPA(Nilsson,B.et al.,1985,EMBO J.4,1075)、ZZ(Moks,T.et al.,1987,Bio/Technology 5,379)、SPG(Nygren,PA et al.,1988,J Mol Recognit 1,69)等が挙げられる。なかでも、ポリArg−tag、ポリHis−tag、FLAG−tag、ストレプトアビディン結合ペプチド、カルモジュリン結合ペプチド、キチン結合ペプチドが好ましい。
上記タグを有することにより、本発明の融合蛋白質の精製を容易にすることができる。
【0021】
本発明の融合蛋白質は、分泌型蛋白質と、目的膜蛋白質との間にプロテアーゼの認識部位を有するペプチドを有することが好ましい。
上記プロテアーゼとしては特に限定されず、例えば、トロンビン、ファクターXa、プリシジョンプロテアーゼ等が挙げられる。上記プロテアーゼの認識部位を有するペプチドとしては、プロテアーゼの認識部位を含む5〜30アミノ酸程度のものが好ましい。上記プロテアーゼの認識部位を有するペプチドのプロテアーゼの認識部位以外の部分は特定の2次構造を形成しないものなら特に限定されず、いかなる配列であってもよいが、例えば、グリシン、セリンのようなサイズの小さい中性アミノ酸を多く含むものが好ましい。
分泌型蛋白質と、目的膜蛋白質との間にプロテアーゼの認識部位を有するペプチドを有することにより、本発明の融合蛋白質を精製した後、プロテアーゼを作用させて目的膜蛋白質を分泌型蛋白質から切り出し、目的膜蛋白質のみを回収するができる。
【0022】
上記目的膜蛋白質としては特に限定されず、既知、未知を問わず、哺乳動物、線虫、酵母等の真核生物のゲノムにコードされる、全ての膜蛋白質又は膜受容体蛋白質が挙げられる。
上記膜受容体蛋白質は構造的によく保存された各ファミリーを形成しており、大きく(1)イオンチャンネル内在型、(2)チロシンカイネース型、及び、(3)G蛋白質共役型(GPCR)の3つに分類される。上記イオンチャンネル内在型の受容体は、リガンドが結合すると、受容体そのものに存在するイオンチャネルが開き、Na+やCa2+等を細胞内外のイオン勾配を利用して細胞内に移動させる。上記チロシンカイネース型の受容体は、リガンドの結合をリン酸化活性の上昇に転換して、一連のカスケードを引き起こすことによりシグナルを増幅する。上記G蛋白質共役型の受容体は、受容体自身はイオンチャネルや酵素活性をもたず、リガンドの結合による情報をG蛋白質を介して細胞内に伝達する。
上記目的膜蛋白質としては、なかでも、イオンチャンネル内在型膜受容体蛋白質、チロシンカイネース型膜受容体蛋白質、及び、G蛋白質共役型膜受容体蛋白質が好ましい。
【0023】
上記膜受容体蛋白質をターゲットとする創薬研究においては、(1)オーファンレセプター(天然リガンドが同定されていない膜受容体蛋白質)のリガンド探索、(2)膜受容体蛋白質に特異的に結合する低分子リガンド又は抗体の探索と結合特性の解析、(3)膜受容体蛋白質の立体構造解析が重要である。本発明の融合蛋白質はこれらの研究全てに貢献するものである。
【0024】
上記目的膜蛋白質が膜受容体蛋白質である場合、分泌型蛋白質に対する特異的結合リガンドとの結合を介して固層化された本発明の融合蛋白質に、動物組織抽出液等を作用させることにより、目的とする膜受容体蛋白質に対する天然リガンドを回収することができる。得られた天然リガンドは電気泳動、質量分析、アミノ酸配列分析等の方法によって同定することができる。更に、得られた天然リガンドと膜受容体蛋白質との安定複合体の立体構造を解析することで、新規のリガンドを原子レベルで設計することも可能となる。また、膜受容体蛋白質の立体構造解析を行なうためには、結晶化や重水素化のために膜受容体蛋白質の大量発現技術の開発が不可欠であるが、これまでGPCRの発現は大腸菌や酵母では不可能であるとされており、主にCHOやCOS−7、HEKのような動物培養細胞で発現した微量なサンプルを用いて様々な分析が行われていた。これに対して、本発明の融合蛋白質によれば、膜受容体蛋白質を組み換え型蛋白質として安価に大量調製することができる。
【0025】
本発明の融合蛋白質はバクテリアを宿主として発現されることが好ましく、本発明の融合蛋白質が細胞膜に発現している融合蛋白質産生バクテリアもまた、本発明の1つである。
本発明の融合蛋白質産生バクテリアとしては、組換え蛋白発現系が充分に開発されている大腸菌又は枯草菌に属するものが好ましい。
【0026】
本発明の融合蛋白質産生バクテリアとしては、分泌型蛋白質の膜移行に関与する細胞内因子であるSecB蛋白質やSRP蛋白質の遺伝子を含有するプラスミドが導入されているものが好ましい。
SecB蛋白質やSRP蛋白質の遺伝子を含有するプラスミドを導入することにより、過剰に生産する分泌型蛋白質の膜への移行を速やかに行うことができ、このため、目的膜蛋白質を効率よく細胞膜上に発現させることができる。
【0027】
本発明の融合蛋白質産生バクテリアとしては、プロテアーゼが欠損した株であることが好ましい。
上記プロテアーゼが欠損した株としては、例えば、lon、OmpTのようなプロテアーゼ構造遺伝子の1部が欠損した大腸菌が挙げられる(Phillips,et al.,1984,J.Bacteriol.159,283)。また、上記プロテアーゼが欠損した株として、宿主の生育に悪い影響を与えない限りにおいて、更に他のプロテアーゼを欠損させる遺伝子操作を施したものを用いることもできる。
膜蛋白質は疎水的領域がその大半を占めている場合が多く、これらが膜移行するまでに細胞質内のプロテアーゼによって分解してしまう場合が多いが、プロテアーゼが欠損した株を用いることにより、目的膜蛋白質がプロテアーゼによって分解されるのを防ぐことができる。
【0028】
本発明の融合蛋白質産生バクテリアは、分泌型蛋白質が細胞外に提示され、かつ、目的膜蛋白質が細胞膜上に発現しているものであることが好ましい。
本発明の融合蛋白質産生バクテリアは、スフェロプラスト化されたものであることが好ましい。上記スフェロプラスト化する方法としては特に限定されず、例えば、本発明の融合蛋白質産生バクテリアに1mM程度のEDTAの存在下で適当量のリゾチームを作用させる方法等が挙げられる。
本発明の融合蛋白質産生バクテリアを適当な、培養液、及び、培養条件下で培養することによって本発明の融合蛋白質を生産することができる。
【0029】
本発明の融合蛋白質産生バクテリアは、本発明の融合蛋白質をコードする遺伝子を適当なプラスミド又はベクターに組み込み、これらを宿主バクテリアに導入することによって得られる。このような、本発明の融合蛋白質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターもまた、本発明の1つである。
本発明の発現ベクターとしては、宿主バクテリア中で複製可能なものであれば特に限定されないが、例えば、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド等に由来するものが挙げられる。上記プラスミドとしては、例えば、pET21、pBR322、pUC118等の大腸菌由来のプラスミド;pUB110等の枯草菌由来のプラスミド等が挙げられ、上記バクテリオファージとしては、例えば、λgt10、λZAP等のλファージが挙げられる。
本発明の発現ベクターは、例えば、まず本発明の融合蛋白質をコードする遺伝子を精製し、次いで適当な制限酵素で切断し、それを適当なプラスミドの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してプラスミドに連結する方法により構築される。
【0030】
本発明の発現ベクターは、宿主バクテリア中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合部位、本発明の融合蛋白質をコードする遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。
上記プロモーターとしては、大腸菌等のバクテリア中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、AraBプロモーター、ヒートショックプロモーター等の大腸菌やファージに由来するプロモーターが挙げられる。上記プロモーターとして、tacプロモーター等のように人為的に設計改変されたプロモーターを用いることもできる。
本発明の発現ベクターは、更に、プロモーターを制御する遺伝子を有していてもよい。
【0031】
本発明の発現ベクターを宿主バクテリアに導入することにより、本発明の融合蛋白質産生バクテリアを製造することができる。宿主バクテリアに本発明の発現ベクターを導入する工程、及び、融合蛋白質を発現するバクテリアを回収する工程を有する本発明の融合蛋白質産生バクテリアの製造方法、並びに、宿主バクテリアに本発明の発現ベクターを導入する工程、融合蛋白質を発現するバクテリアを回収する工程、及び、バクテリアを細胞壁溶解酵素処理等によってスフェロプラスト化する工程を有する本発明の融合蛋白質産生バクテリアの製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の発現ベクターを宿主バクテリアに導入する方法としては、バクテリアにDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えば、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0032】
本発明の融合蛋白質産生バクテリアに融合蛋白質を発現させた後、分泌型蛋白質のリガンドが固定化された固層担体によって本発明の融合蛋白質を回収することにより、本発明の融合蛋白質を効率よく製造することができる。
このような、本発明の融合蛋白質産生バクテリアに融合蛋白質を発現させる工程、及び、分泌型蛋白質のリガンドが固定化された固層担体によって本発明の融合蛋白質を回収する工程を有する融合蛋白質の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0033】
本発明の融合蛋白質の製造方法において、上記分泌型蛋白質がFKBP型のPPIaseである場合は、上記分泌型蛋白質のリガンドは、FK506又はFKBP型のPPIaseに対してFK506と同等以上の結合力を有する化合物であり、上記分泌型蛋白質がシクロスポリン結合型のPPIaseである場合は、上記分泌型蛋白質のリガンドは、シクロスポリン又はシクロスポリン結合型のPPIaseに対してシクロスポリンと同等以上の結合力を有する化合物であり、上記分泌型蛋白質がパーブリン型のPPIaseである場合は、上記分泌型蛋白質のリガンドは、ジュグロン又はパーブリン型のPPIaseに対してジュグロンと同等以上の結合力を有する化合物である。
【0034】
本発明の融合蛋白質と、分泌型蛋白質のリガンドとが結合している複合体もまた、本発明の1つである。本発明の複合体において、上記分泌型蛋白質は、FKBP型のPPIase、シクロスポリン結合型のPPIase、又は、パーブリン型のPPIaseであり、上記リガンドは、FK506、シクロスポリン、ジュグロン、又は、上記PPIaseに対してそれらと同等以上の結合力を有する化合物である。
【0035】
本発明の融合蛋白質の製造方法により得られた融合蛋白質がプロテアーゼの認識部位を有する場合は、得られた融合蛋白質にプロテアーゼを作用させることにより、目的とする膜蛋白質を容易に得ることができる。このような膜蛋白質の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0036】
本発明の融合蛋白質産生バクテリアに被験物質を作用させることにより、目的膜蛋白質に対する被験物質の親和性を評価することができる。このような、本発明の融合蛋白質産生バクテリアに被験物質を作用させる工程を有する目的膜蛋白質に対する親和性の評価方法もまた、本発明の1つである。
【0037】
本発明の評価方法においては、本発明の融合蛋白質産生バクテリアを固相化して、固相化された本発明の融合蛋白質産生バクテリアに被験物質を作用させることが好ましい。
【0038】
本発明の融合蛋白質産生バクテリアの細胞膜画分に被験物質を作用させることによっても、目的膜蛋白質に対する被験物質の親和性を評価することができる。
上記細胞膜画分もまた、本発明の1である。
上記細胞膜画分を用いる本発明の評価方法においては、上記細胞膜画分を固相化して、固相化された細胞膜画分に被験物質を作用させることが好ましい。
【0039】
上記被験物質としては特に限定されないが、例えば、目的膜蛋白質に対する完全長抗体、抗体H鎖の全長、抗体L鎖の全長、単鎖抗体、抗体H鎖可変領域、又は、抗体L鎖可変領域等が好ましい。
【0040】
本発明の融合蛋白質、本発明の融合蛋白質産生バクテリア、又は、本発明の細胞膜画分を用いて膜受容体蛋白質等の目的膜蛋白質に対する抗体を調製することができる。このような、本発明の融合蛋白質、本発明の融合蛋白質産生バクテリア、又は、本発明の細胞膜画分を動物に免疫する工程を有する抗体の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記抗体を調製するには、まず、本発明の融合蛋白質、本発明の融合蛋白質産生バクテリア、又は、本発明の細胞膜画分を動物に免疫する。
上記動物としては特に限定されず、例えば、マウス、ウサギ、ラット等が挙げられる。
【0041】
人工的に調製される組み換えマウス・ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体、及び、ヒト抗体は、今後、蛋白医薬の中でも最も成長する素材の一つであると予測されている。
現在は、抗原を動物に免疫することで、抗体産生組織からmRNAを回収し、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって抗体可変領域に相当する遺伝子を増幅し、大腸菌を用いたファージディスプレイ法(Winter,G.et al.,1994,Ann.Rev.Immunol.12,433)等によって抗体可変領域遺伝子のクローニングをしており、クローン化された可変領域遺伝子とヒト抗体遺伝子と融合させることで、キメラ又はヒト化抗体を作製することができる。
本発明の融合蛋白質、本発明の融合蛋白質産生バクテリア、又は、本発明の細胞膜画分を動物に免疫して、免役された動物より抗体遺伝子を分離することにより、目的とする膜蛋白質に対する抗原認識領域を有する抗体遺伝子を得ることができる。得られた抗体遺伝子を用いることにより、目的膜蛋白質に対するキメラ又はヒト化抗体を作製することができる。本発明の融合蛋白質、本発明の融合蛋白質産生バクテリア、又は、本発明の細胞膜画分を動物に免疫した後、免役された動物より分離される抗体遺伝子であって、少なくとも抗体の抗原認識領域の6残基以上のペプチドをコードするものである抗体遺伝子もまた、本発明の1つである。
【0042】
本発明の抗体の製造方法において用いる動物としては、ヒト抗体産生トランスジェニック動物が好ましい。免疫動物としてヒト抗体産生マウス(Bruggemann,M.et al.,1996,Immunol.Today 17,391;Tomizuka,et al.,2000,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97,722)等のヒト抗体産生トランスジェニック動物を用いることにより目的膜蛋白質に対するヒト抗体及びその遺伝子を直接得ることができる。
【0043】
本発明の抗体の製造方法は、本発明の目的膜蛋白質に対する親和性の評価方法によって、得られた抗体を評価する工程を有することが好ましい。即ち、免疫された動物から血清を採取し、本発明の融合蛋白質産生バクテリアをスフェロプラスト化したものと混合し、更に蛍光標識された二次抗体を作用させる。以上の操作を目的膜蛋白質が発現していないコントロールの宿主バクテリアについても同様に行う。次に、フローサイトメトリー、セルソーター、蛍光標示式細胞分種装置(FACS)等により本発明の融合蛋白質産生バクテリア及び宿主バクテリアの蛍光標識化の解析を行う。これによって、免疫された動物が目的膜蛋白質の細胞外ドメインを認識する抗体を産生しているかを調べることができる。
【0044】
上記抗体を治療に用いる場合は、当該抗体は膜受容体蛋白質の細胞外ドメインに結合する必要性があることから、細胞膜上に目的膜受容体蛋白質を正しいオリエンテーションで保持する本発明の融合蛋白質産生バクテリアはこのような解析に極めて有用である。また免疫動物の抗体産生組織から、ハイブリドーマ法や、ファージディスプレイ法によりモノクローナル抗体を単離する場合にも本発明の融合蛋白質産生バクテリアを用いることができる。また、本発明の融合蛋白質、膜受容体蛋白質又は本発明の融合蛋白質産生バクテリアが固層化されたプレートを用いてELISA法を行なえば、上記の抗体評価を簡便化することができる。
【0045】
本発明によれば、バクテリアの分泌発現系を利用することで、GPCRを始めとする膜受容体等の膜蛋白質を分泌型蛋白質との融合蛋白質として膜上に発現させ、更に発現した組換え膜蛋白質の活性を保持させた状態で、これらに対するリガンドや抗体のスクリーニングや結合特性を評価する技術を提供することができる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)分泌型蛋白質と目的膜蛋白質との融合蛋白質の発現ベクターの構築pTWV228(タカラ社製)のEcoRIとHindIIIとの制限酵素サイト間に配列番号1及び2の合成DNAからなる相補的2本鎖DNAをEcoRI及びHindIIIで消化したものを導入してpPMを作製した。pPMはNdeIサイトとBamHIサイトの間に分泌型蛋白質の遺伝子を、SpeIサイトとMluIサイトの間に目的膜蛋白質の遺伝子を導入できるものである。また翻訳される融合蛋白質において、分泌型蛋白質と目的膜蛋白質との間には、プレシジョンプロテアーゼ(アマシャムバイオサイエンス社製)の認識部位を含むGGGSLEVLFQGPTS(アミノ酸は1文字略記で記した)が介在するように設計されている。また、目的膜蛋白質のC末端には6個のヒスチジン残基が付加される設計となっている。
【0048】
大腸菌CTF073株から、終止コドンを除いたFkpA遺伝子(配列番号3)をPCRにて増幅した。PCR用のプライマーはNCBIコード:AE016767で登録されている塩基配列を元に設計した。プライマーには5側にNdeI制限酵素サイトを、3側にBamHI制限酵素サイトをそれぞれ設けた。PCR産物をpT7ブルーTベクターに挿入後、シーケンスが登録情報と相違ないことを確認した。NdeI及びBamHI消化によってFkpA遺伝子を回収し、これを同制限酵素処理及びバクテリアアルカリフォスファターゼ処理が施されたpPMに導入し、目的膜蛋白質をFkpAとの融合蛋白質として発現させるベクターpPMFを構築した。
【0049】
一方、大腸菌由来SurAタイプPPIaseと融合するための発現ベクターを構築するために、大腸菌K12株から、終止コドンを除いたSurA遺伝子(配列番号4)をPCRにて増幅した。PCR用のプライマーはNCBIコード:AE000115で登録されている塩基配列を元に設計した。プライマーには5‘側にNdeI制限酵素サイトを、3’側にBamHI制限酵素サイトをそれぞれ設けた。PCR産物をpT7ブルーTベクターに挿入後、シーケンスが登録情報と相違ないことを確認した。NdeI及びBamHI処理によってSurA遺伝子を回収し、これを同制限酵素処理及びバクテリアアルカリフォスファターゼ処理が施されたpPMに導入し、目的膜蛋白質をSurAとの融合蛋白質として発現させるベクターpPMSを構築した。
【0050】
(実施例2)ヒト由来セロトニンレセプターとFkpAとの融合蛋白質の大腸菌膜画分への発現
7回膜貫通型膜受容体の一つであるヒト由来セロトニンレセプター(5HT1aレセプター)と大腸菌由来FkpAとの融合蛋白質発現系を構築するためにヒトcDNAライブラリーから5HT1aレセプター遺伝子のクローニングを行った。すなわち、NCBIコード:HSSERR51として登録されている塩基配列情報を元にPCR用のプライマーを設計し、ヒトcDNAライブラリーを鋳型としたPCRにより、5HT1aレセプター遺伝子を増幅した。5HT1aの塩基配列は配列番号5に示した。プライマーには5‘側にSpeI制限酵素サイトを、3’側にHpaI制限酵素サイトをそれぞれ設けた。PCR産物をpT7ブルーTベクターに挿入後、シーケンスが登録情報と相違ないことを確認した。SpeI及びHpaI処理によってHT1a遺伝子を回収し、これを同制限酵素処理及びバクテリアアルカリフォスファターゼ処理が施されたpPMFに導入し、5HT1aをFkpAとの融合蛋白質として発現させるベクターpPMFHを構築した。
【0051】
また5HT1aレセプター遺伝子の上流にバクテリアのシグナル配列であるPelBに相当する遺伝子が付加されたものをPCRによって作製し、これをpPMのNdeI及びBamHIサイトに導入した。これにより5HT1aのPelBによる分泌発現を行う発現ベクターpPMPBHを構築した。
【0052】
大腸菌BL21株にpPMFHを導入し、カルベニシリンが100μg/L含有されたLB液体培地にてOD600が2.5まで37℃で培養し、IPTGを0.1mM添加し、更に25℃で4時間培養して菌体を回収した。1L培溶液相当の菌体を1mM EDTA、25%サッカロース、0.5mMフェニルメチルスルフォニルフルオリド、及び、60μg/mLのリゾチームが添加された100mLの50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)にけん濁し、4℃で1時間放置した。これに等量の冷純水を添加混合し更に1時間、4℃で放置した。これを30秒間処理、2分間放置の超音波処理を3回繰り返し、その後、150,000gで1時間超遠心分離を行った。沈殿物を100mLの500mM NaCl及び、1mM EDTAを含有する20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に再度けん濁した後、150,000gで1時間超遠心分離を行った。得られた沈殿物を25mLの20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)にけん濁した。サンプルの1部をSDS−PAGEによって分離し、更に抗ヒスチジンタグ抗体を用いるウエスターンブロッティングによって融合蛋白質の発現を調べた。pPMPBHが導入されたBL21株、pTWV228が導入されたBL21株についても本実施例の方法に従い、膜画分を調製し、同様のウエスターンブロッティングを行った。
【0053】
その結果、pPMPBH及びpTWV228が導入されたBL21株画分ではバンドが確認できず、pPMFHが導入されたBL21株の膜画分のみに目的融合蛋白質の分子量に相当する、分子量約75kDaのバンドが検出された。以上のことから、5HT1aはPelBによる分泌発現では大腸菌細胞膜上に発現せず、分泌型蛋白質としてFkpAを用いる分泌発現によって大腸菌細胞膜上に発現したものと考えられる。
【0054】
(実施例3)細胞膜画分を用いた5HT1レセプターのリガンド結合能の評価(1)
実施例2にて調製したFkpAと5HT1aとからなる融合蛋白質を含む膜画分に1%ジギトニン及び0.3%コール酸ナトリウムを添加して可溶化した。これを10000rpmで遠心分離し、回収した上清を、1%ジギトニン、0.3%コール酸ナトリウム、0.15M NaCl、及び、1mMイミダゾールを含有する25mM Na−リン酸酸緩衝液(pH7.5)で平衡化されたニッケルセファロースカラムにアプライし、吸着画分を1〜300mMのイミダゾールの濃度勾配によって溶出した。FkpAとセレトニンレセプターの融合蛋白質の画分は、SDS−PAGE及び抗ヒスチジンタグ抗体によって確認した。回収した画分を0.15M NaCl、及び、3mM EDTAが含有された10mM Hepes−KOH(pH7.5)に透析した。透析内液を、表面プラズモン共鳴による分子間相互作用解析装置用のセンサーチップ表面に固定化した。なお、固定化は、予めセンサーチップの金薄膜の表面にカルボキシメチル基を導入しておき、融合蛋白質中のFkpAのアミノ基と結合させることにより行った。得られたセンサーチップを、表面プラズモン共鳴シグナル解析装置(ビアコア社製、BIACORE X)にセットし、リガンドサンプルとして10〜100nMのセロトニン溶液をフローセルに流してリガンドを結合させた後、pH2.5のグリシン溶液によって解離させた。
【0055】
この結合・解離に伴う質量変化をリアルタイムで測定し、解析ソフトウェアBIAevaluation9.1(ビアコア社製)によって解離定数(Kd)を算出したところ15.3nMであった。以上のことから本実施例で調製された5HT1aは天然型と同レベルのリガンド結合能があると考えられた。
【0056】
(実施例4)ヒト由来セロトニンレセプターとSurAとの融合蛋白質の大腸菌膜画分への発現
実施例2で得られた5HT1aレセプター遺伝子をSpeI及びHpaI処理及びバクテリアアルカリフォスファターゼ処理が施された実施例1で作製されたpPMSに導入し、5HT1aをSurAとの融合蛋白質として発現させるベクターpPMSHを構築した。
【0057】
大腸菌BL21株にpPMSHを導入し、カルベニシリンが100μg/L含有されたLB液体培地にてOD600が2.5まで37℃で培養し、IPTGを0.1mM添加し、更に25℃で4時間培養して菌体を回収した。1L培溶液相当の菌体を1mM EDTA、25%サッカロース、0.5mMフェニルメチルスルフォニルフルオリド、及び、60μg/mLのリゾチームが添加された100mLの50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)にけん濁し、4℃で1時間放置した。これに等量の冷純水を添加混合し更に1時間、4℃で放置した。これを30秒間処理、2分間放置の超音波処理を3回繰り返し、その後、150,000gで1時間超遠心分離を行った。沈殿物を100mLの500mM NaCl及び、1mM EDTAを含有する20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に再度けん濁した後、150,000gで1時間超遠心分離を行った。得られた沈殿物を25mLの20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)にけん濁した。サンプルの1部をSDS−PAGEによって分離し、更に抗ヒスチジンタグ抗体を用いるウエスターンブロッティングによって融合蛋白質の発現を調べた。実施例2で作製されたpPMPBHが導入されたBL21株、pTWV228が導入されたBL21株についても本実施例の方法に従い、膜画分を調製し、同様のウエスターンブロッティングを行った。その結果、pPMPBH及びpTWV228が導入されたBL21株画分ではバンドが確認できず、pPMSHが導入されたBL21株の膜画分のみに目的融合蛋白質の分子量に相当する、分子量約100kDaのバンドが検出された。以上のことから、5HT1aはPelBによる分泌発現では大腸菌細胞膜上に発現せず、分泌型蛋白質としてSurAを用いる分泌発現によって大腸菌細胞膜上に発現したものと考えられる。
【0058】
(実施例5)細胞膜画分を用いた5HT1レセプターのリガンド結合能の評価(2)
実施例4にて調製したSurAと5HT1aとからなる融合蛋白質を含む膜画分に1%ジギトニン及び0.3%コール酸ナトリウムを添加して可溶化した。これを10000rpmで遠心分離し、回収した上清を、1%ジギトニン、0.3%コール酸ナトリウム、0.15M NaCl、及び、1mMイミダゾールを含有する25mM Na−リン酸酸緩衝液(pH7.5)で平衡化されたニッケルセファロースカラムにアプライし、吸着画分を1〜300mMのイミダゾールの濃度勾配によって溶出した。SurAとセレトニンレセプターの融合蛋白質の画分は、SDS−PAGE及び抗ヒスチジンタグ抗体によって確認した。回収した画分を0.15M NaCl、及び、3mM EDTAが含有された10mM Hepes−KOH(pH7.5)に透析した。透析内液を、実施例3の方法と同様にして、表面プラズモン共鳴による分子間相互作用解析装置用のセンサーチップ表面に固定化した。得られたセンサーチップを、表面プラズモン共鳴シグナル解析装置(ビアコア社製、BIACORE X)にセットし、リガンドサンプルとして10〜100nMのセロトニン溶液をフローセルに流してリガンドを結合させた後、pH2.5のグリシン溶液によって解離させた。この結合・解離に伴う質量変化をリアルタイムで測定し、解析ソフトウェアBIAevaluation9.1(ビアコア社製)によって解離定数(Kd)を算出したところ8.7nMであった。以上のことから本実施例で調製された5HT1aは天然型と同レベルのリガンド結合能があると考えられた。
【0059】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、バクテリアの分泌発現系を利用することで、GPCRを始めとする膜受容体等の膜蛋白質を分泌型蛋白質との融合蛋白質として膜上に発現させ、更に発現した組換え膜蛋白質の活性を保持させた状態で、創薬研究において有用な、これらに対するリガンドや抗体のスクリーニングや結合特性を評価する技術を提供することができる。
【配列表】
Figure 0004160864
Figure 0004160864
Figure 0004160864
Figure 0004160864

Claims (4)

  1. イオンチャンネル内在型膜受容体蛋白質、チロシンカイネース型膜受容体蛋白質又はG蛋白質共役型膜受容体蛋白質である目的膜蛋白質をバクテリアに産生させる膜蛋白質の製造方法であって、
    ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼの全長又はその10残基以上の部分配列からなるペプチドであるバクテリア由来の分泌型蛋白質のC末端に、前記目的膜蛋白質が連結した融合蛋白質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターを、バクテリアに導入する融合蛋白質産生バクテリア製造工程と、
    前記融合蛋白質産生バクテリアを培養して前記融合蛋白質を産生させる工程とを有する
    ことを特徴とする膜蛋白質の製造方法。
  2. ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼは、PpiA、FkpA、SurA又はPpiDであることを特徴とする請求項1記載の膜蛋白質の製造方法。
  3. ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼの全長又はその10残基以上の部分配列からなるペプチドであるバクテリア由来の分泌型蛋白質のC末端に、イオンチャンネル内在型膜受容体蛋白質、チロシンカイネース型膜受容体蛋白質又はG蛋白質共役型膜受容体蛋白質である目的膜蛋白質が連結した融合蛋白質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターをバクテリアに導入してなる融合蛋白質産生バクテリアに、被験物質を作用させる工程を有することを特徴とする膜蛋白質に対する親和性の評価方法。
  4. ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼの全長又はその10残基以上の部分配列からなるペプチドである分泌型蛋白質のC末端に、イオンチャンネル内在型膜受容体蛋白質、チロシンカイネース型膜受容体蛋白質又はG蛋白質共役型膜受容体蛋白質である目的膜蛋白質が連結したバクテリア由来の融合蛋白質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターをバクテリアに導入してなる融合蛋白質産生バクテリアの細胞膜画分に、被験物質を作用させる工程を有することを特徴とする膜蛋白質に対する親和性の評価方法。
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