JP4160788B2 - 歯科用築造体を利用した生体情報計測・記録及び通信装置とこの装置の情報入出力を制御する情報制御方法 - Google Patents

歯科用築造体を利用した生体情報計測・記録及び通信装置とこの装置の情報入出力を制御する情報制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は歯科用築造体を利用した生体情報計測・記録及び通信装置とこの装置の情報入出力を制御する情報制御方法に係り、特に微小な生体情報計測センサとその制御・記録及び通信機能を有するICチップ及び電磁誘導コイルを兼ねたアンテナ等を、歯科治療において用いられる歯科用築造体内に封入した上、通法の歯科治療に基づいて失活歯ないし歯槽骨に装着することにより、生体に新たな侵襲や障害を何ら与えること無く人体と一体化し、患者の健康を維持するために必要となる医学的データを24時間、365日絶え間なく自動的に収集するシステムであり、医療用計測器具及び情報通信装置とこの装置の情報入出力を制御する情報制御方法に属する。
【0002】
【従来の技術】
かつてない長寿命社会を迎えつつある現代社会において、普段の生活において医学的メインテナンスを必要とする人々が急速に増加している。特に心臓病や糖尿病、脳血管障害を患う人々は常にきめ細かな医学的ケアを必要としている。適切な医学的管理には、日々の生活において、体温、血圧、脈拍、血糖値等の生体における生理的、生化学的情報をモニタすることが不可欠である。
【0003】
しかしながら実生活においてこれらの計測を実践するには、相当の労力を伴うことから、社会生活に支障をきたすのみならず、それを介助する家族の負担も大きい。実際、ひとたび上記のような全身疾患に見舞われた人々が、医学的メインテナンスを必要とせずに社会復帰を遂げるケースは少ない。すなわち、これら医学管理の足かせこそが、患者の社会復帰を妨げる最も大きな要因であった。
【0004】
患者に対する医学管理の大半は生理的、生化学的データの収集に費やされていると言っても過言ではない。従って、これら生体情報をモニタするシステムを小型、自動化して省力化しさらに安全なものとすることは、これら全身疾患を有する患者の社会復帰を支援し、充実した家庭生活を送る手段として大いに意義がある。血圧及び脈拍、体温、血糖値等の生体情報を検知する各種センサは、近年の微細加工技術の発達によりミリオーダに小型化されしかも高精度を実現していて、動脈瘤や冠状動脈の内視鏡手術等に実際に応用されている。これら計測システムを患者に常に携帯してもらい、自動的にしかも継続して医学データを収集することは、きめ細かな医学的メインテナンスや、治療の大きな助けとなるに違いない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
今日、生体センサならびにICチップを応用した生体モニタシステムは、ミリ単位のダウンサイジングが可能である。加速度、温度、圧力、光、音、振動、及びpH(ペーハー)等を測定する各種素子は、高感度の性能を有しながらもミクロン単位に小型化され、内視鏡の先端に設置されるほどに洗練されている。またこれらを制御して様々な生体情報を記録する機能を提供するセミコンダクタチップは集積回路技術の発達により小型でしかも高度の論理機能を有するまでになった。
【0006】
これらの中でICチップと呼ばれる素子は、アンテナとの組み合わせにより通信機能を有し、既に遠隔操作による個人情報の読み書きに利用されている。従来の磁気記録方式に比較して偽造や改変が困難であり、高度なセキュリティーを適用できるこれらICチップを利用することは、エイズや肝炎など、他人に知られたくない個人の医療情報を管理する意味からも有用である。
【0007】
ただし、生体計測機器を患者に携帯してもらうならば、その利用はあくまで患者自身の自発的な管理が前提条件である。
【0008】
ところが、実際には全身疾患を持つ患者の多くは、これら機器の管理を十分に行えない状況にあるので、装置の小型化や自動化のみの方策では、これらが医学管理に対する労力の軽減につながるとは考え難い。むしろ、患者による機器の破損及び紛失等のいわゆるヒューマンエラーから、患者にさらなる不利益をもたらすおそれすらあり、加えて盗難、不正使用等の犯罪行為から個人情報を守る対策も脆弱であることが不安視される。
【0009】
そこで、上記の課題を解決する手段として、これら生体計測装置を患者の体内に埋め込むことが提唱されている。すなわち、上記装置の根幹をなす電子デバイス類を体内に収容することで、紛失、盗難及びヒューマンエラーによる破損を完全に防止できる。体内にある計測装置が24時間絶え間なく患者の医学的メインテナンスに欠かせない生体情報を記録して提供してくれるならば、診断精度を格段に向上できるし、患者の普段の生活においてきめ細かな医学的ケアが実践できるので、患者の社会復帰を支援する上で極めて有用であることは疑いがない。
【0010】
しかしながら、これら電子デバイス等の体内埋め込みに関しては、様々な弊害や安全性へ懸念、さらには倫理的、道義的理由から、その実用化には疑問視の声が根強い。
【0011】
その大きな要因の一つは、体内に埋め込まれた装置が、生体に対して何ら為害作用を及ぼすことなく長期間にわたって正常に機能する事が保証されない点である。
【0012】
以前より、個人の身元を特定する方法として、マイクロチップ等を歯や義歯、もしくは体組織内に対して直接接着、あるいは埋め込む方法が考案され、既にペットや家畜の管理に利用されている。
【0013】
しかしながら、これらの使用例における皮下などに留置する方法では不意の外力により、また歯などの口腔内に設置される場合では咬合力によりこれらが破損するおそれが否めない。また、医学的検査や治療において被爆するX線や電子線等の核種放射線やMRI(核磁気共鳴断層撮影装置)の強力な電磁波から電子デバイスを保護することができず、集積回路やそこに含まれるデータの損傷が避けられないなど、装置の維持及び保護面の課題が未解決である。
【0014】
安全性における対策も十分ではない。
【0015】
集積回路を有するマイクロチップは、組織中において血液や組織液、歯や口腔及び消化管内では唾液や消化液及び食物に含まれる酸や塩分に僅かに触れるだけで容易に侵蝕され、その機能を失うのみならず、集積回路における半導体素子等を構成するクロム、砒素、カドミウムをはじめ、近年アルツハイマー病の原因として疑いのあるアルミニウムや銅などの重金属が生体中に溶出するおそれがある。しかも、マイクロチップの動作に必要な電源を埋め込む際には、生活組織に対する神経刺激などの侵害作用や、ペースメーカーなどの生命維持装置に影響を与えないような絶縁性の配慮がなされていなかった。
【0016】
このように侵襲が避けられない従来の埋め込み手法には、人々が安心して受け入れるための信頼性と安全性が担保されておらず、その組織障害性や倫理的、道義的課題の克服が極めて困難であったがために、心臓病や癌、糖尿病などの重篤な疾患における医療上の目的を除いて、生体情報のモニタ装置を体内に埋め込むことは躊躇せざるをえなかったのである。特に、プライバシーの保護や人権に関わる数多くの不安から、人に対して証明体などの情報媒体の生体への埋め込みが実用化された例は極めて少ない。
【0017】
この発明の特許出願人は、齲蝕等により失活した歯に適切な歯内療法処理後に適用される歯科用築造体ないし欠損歯の変わる人工歯根のインプラント体を利用した電子計測装置の体内留置により、生体に何ら悪影響を及ぼすことなく患者の生体情報をモニタする方法を確立した。
【0018】
その最大のメリットは、失活歯の治療過程で生まれる空間を、生体計測機器の設置スペースとして利用することにより、従来の人体への埋め込み法では避けることができなかった生体への侵襲を完全に回避できることにある。
【0019】
装置を絶縁性と防水性を有する材料に封入して設置すれば、唾液や組織液から電子装置を保護できるし、生体組織への電流漏洩を皆無にして安全に機器を動作できる。
【0020】
電磁誘導により非接触にて電源を供給すれば、半永久的使用が可能である。
【0021】
集積回路の周囲を歯科補綴の際に用いられる金属冠等によってシールドする事により、咀嚼や咬合力に対する耐久性を確保し、しかも核種放射線や電磁波からICチップ内の回路及び情報データを保護することができる。
【0022】
破損の際に、その除去ならび再設置が容易であり、皮下の体組織に埋め込まれた場合と異なり、生体に対し、機器の摘出や交換のため外科的侵襲を必要としない。
【0023】
我々は生体計測及び情報通信装置の生体への埋め込みに伴う従来の問題を克服し、口腔内にこれらを安全に設置して永続的に利用するために以下の新たな工夫を行った。
【0024】
まず第1に、本装置の電子機器部分は歯科用築造体ないし人工歯根を有するインプラント体に封入されて供給されるものである。歯科において根管充填を行った失活歯の殆どは、再び歯として機能するため、下地となる歯科用築造体を必要とする。従って、本装置の設置自体を目的とした歯質の削除等が行われることはなく、また、人工歯根は歯の欠損を補う目的のため歯科臨床において日常的に使用されているものであり、本装置の適用によって通常の歯科的処置を妨げる、あるいは手法を変更することは一切無い。
【0025】
第2に、生体計測・記録及び通信を司る電子機器は生体に対する為害性が無く、しかも防水性と絶縁性を有する素材に完全に封入されて供給される。これらは歯内療法によって生体内安定性・安全性が増した歯根と、金属やセラミック等を用いた歯冠によって全体を完全に被覆されることにより、口腔内の唾液や周囲の血流や組織液から完全に隔離される。これにより装置は生体に対して物理的、化学的為害作用を全く与えることなく、堅固に口腔内に留置し、半永久的に安定した機能を提供する。
【0026】
第3に、電子装置は独自の電源を持たず、電磁誘導によって作動時に電源が外部から供給されることで生体内における電流発生の機会を最小限にコントロールし、他の組織や電子医療機器への影響を最小限にとどめている。
【0027】
第4に、本装置の集積回路を含む部分を金属冠などの歯冠補綴物にて被覆できる位置に設置する一方で、アンテナは電波が到達する歯根内に設置する。これにより各種放射線及び電磁波から集積回路及びそれらに含まれるデータを電気的にシールドして保護しながら、信号の送受信ならびに動作用電力の供給機能を確保する。
【0028】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明は、通法の歯科治療に基づいて失活歯ないし歯槽骨に装着する歯科的術式の過程に沿って生体に設置される歯科用築造体において、この歯科用築造体の内部に少なくとも生体センサによる非接触計測を含む生体情報の計測を行う機能と計測結果及びこの計測結果に付随する各種情報を記憶する記録機能と記憶した内容を外部に伝送する通信機能とを有する生体情報計測・記録及び通信装置を設け、この生体情報計測・記録及び通信装置は、歯科用築造体の内部に封入する前に、電子機器及びその付属物の劣化防止のために防水・防湿処理を施し、前記生体情報計測・記録及び通信装置は、歯科用築造体の内部に封入された後に、外力に対する耐久性向上のために前記歯科用築造体を歯科用合金あるいはセラミックスによって被覆するとともに、各種放射線、電磁波による障害に対して保護機能を付加するために前記歯科用築造体に歯冠修復物による金属シールドを施して非浸襲としたことを特徴とする。
【0029】
また、通法の歯科治療に基づいて失活歯ないし歯槽骨に装着する歯科的術式の過程に沿って生体に設置される歯科用築造体の内部に少なくとも生体センサによる非接触計測を含む生体情報の計測を行う機能と計測結果及びこの計測結果に付随する各種情報を記憶する記録機能と記憶した内容を外部に伝送する通信機能とを有する生体情報計測・記録及び通信装置を設け、この生体情報計測・記録及び通信装置は、歯科用築造体の内部に封入する前に、電子機器及びその付属物の劣化防止のために防水・防湿処理を施し、前記生体情報計測・記録及び通信装置は、歯科用築造体の内部に封入された後に、外力に対する耐久性向上のために前記歯科用築造体を歯科用合金あるいはセラミックスによって被覆するとともに、各種放射線、電磁波による障害に対して保護機能を付加するために前記歯科用築造体に歯冠修復物による金属シールドを施して非浸襲とし、前記生体情報計測・記録及び通信装置に接続可能な情報端末手段を設け、情報端末手段からの制御信号により生体情報計測・記録及び通信装置の記録機能への必要情報の入力及び記録機能によって記憶された情報の出力を果たすべく通信機能を制御することを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
上述の如く発明したことにより、歯科用築造体の成形の際に、内部に生体情報計測・記録及び通信装置を封入し、この生体情報計測・記録及び通信装置の機能によって、生体情報の計測を行うとともに、計測結果及びこの計測結果に付随する各種情報を記憶し、記憶した内容を外部に伝送している。
【0031】
また、情報端末手段からの制御信号により生体情報計測・記録及び通信装置の記録機能への必要情報の入力及び記録機能によって記憶された情報の出力を果たすべく通信機能を制御している。
【0032】
【実施例】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【0033】
図1〜図7はこの発明の第1実施例を示すものである。図2において、2は歯科用築造体(「インプラント」とも換言できる)、2aは前歯用築造体、2bは臼歯部用築造体である。
【0034】
前記歯科用築造体2は、齲蝕等の疾患によって歯冠部歯質に実質欠損を生じた歯に歯冠を補綴(ほてつ)する際、歯冠材料と残遺した歯根を強固に固着することで咬合力に対する強度を確保して歯の咀嚼機能を回復せしめるものである。
【0035】
現在の歯科臨床では、材料として金合金などの金属ならびに、本発明にて用いられるコンポジットレジンやエポキシ樹脂及び歯科用セメントが用いられている。
【0036】
図2及び図3に示す如く、歯科用築造体2の、前歯用築造体2a及び臼歯部用築造体2bの一例では、歯肉縁上部分の「コア」と呼ばれる上部構造体2a−1及び2b−1と、歯根内に設置されて固着される「ポスト」と呼ばれる合釘2a−2及び2b−2により構成される。
【0037】
その形状は歯種により様々であるけれども、概ね前歯用と臼歯用の2種に大別される。
【0038】
前歯用築造体2aにおいて、上部構造体2a−1はやや扁平で鈍な円錐形を呈しその直径約6mm〜2mm、高さ約5mm〜10mmほどであり、合釘2a−2はテーパを有し直径約4mm〜1mm、長さ約5mm〜10mmのピン状である。
【0039】
また、臼歯部用築造体2bにおいて、上部構造体2b−1はやや楕円な座の砲台型で長径約4mm〜8mm、高さ5mm〜8mmほどであり、合釘2b−2は歯根の数に応じて複数設ける事があるけれども、各々の形状及びサイズは前歯部用と同様かやや短めである。
【0040】
生体情報計測・記録及び通信装置4は、図4に示す如く、センサ部6と、ICチップ等を用いた制御・記録及び通信部8と、通信用アンテナを兼ねた誘導コイル部10とにより構成される。
【0041】
そして、図1に示す如く、上述した生体情報計測・記録及び通信装置4が、例えば前歯用築造体2aに封入して成形されるにあたって、センサ部6は、用いるセンサの性質や数及び計測目的に応じて前歯用築造体2a内の随所に設置する。制御・記録及び通信部8は、歯冠補綴物14等の金属によって被覆され電気的にシールドされるため「コア」と呼ばれる上部構造体2a−1部分に設置する。誘導コイル部10は、外部との電磁誘導や通信を行うため「ポスト」と呼ばれる合釘2a−2部分に設置する。
【0042】
成形方法は、通常の歯科治療における歯冠修復操作に準じで行う。すなわち、歯科用築造体2をセットしようとする歯の根管内印象を採得し、歯科用石膏にて作業模型を製作した後、これに適合する歯科用築造体2を蝋型にて製作する過程は一般の歯科用築造体2の製作方法と何ら変わらない。
【0043】
次に、蝋型を義歯のレジン成型用フラスコに埋没した後、蝋型を熱湯で流し去り鋳型を形成する。生体情報計測・記録及び通信装置4をシリコンで一層被覆した後、上記に従って鋳型に配置した後、常温で硬化するエポキシ樹脂を鋳型に流し込み硬化させる。
【0044】
そして、生体情報計測・記録及び通信装置4を内部に封入して成型された、例えば前歯用築造体2aを、図5に示す如く、歯科用セメントを用いて歯根12と合着させる。
【0045】
この状態にて印象を採得し、通法に従って図6に示す如く、歯冠修復物14を作成した後、前歯用築造体2aの上部構造体2a−1を完全に被覆するよう合着する。
【0046】
なおこの方法は歯科用築造体2を1歯ごとにカスタムメイドする手法であるが、歯科治療においては治療の迅速化と省力化のため、既製の鋳造体が頻繁に用いられている。そのため、前記生体情報計測・記録及び通信装置4を埋設した既製の歯科用鋳造体を利用することも可能である。その使用方法は、歯科用築造体2の形状に合わせて根管内の形成後、歯科用セメントを用いて歯科用築造体2をセット、さらに印象採得して歯冠補綴物を製作し、歯科用築造体2と合着するというもので、通法の歯冠修復処置と何ら変わるものではない。
【0047】
装着後、前記生体情報計測・記録及び通信装置4に対して電磁誘導によって電源を供給し、この電源供給によってICチップ等を用いた制御・記録及び通信部8が動作し、生体データを記録する。
【0048】
なお、ICチップ等を用いた制御・記録及び通信部8の記録内容はセキュリティー機能によって保護されているが、これを外部に読み出す際に周囲に発信される電波を傍受され、暗号等の解読に利用される可能性が完全に否定できない。そのため、通信を行う際には漏れ電波が最小となるよう、マイクロ波など鋭い指向性を確保できる通信デバイスを用いることが望ましい。
【0049】
次に、前記生体情報計測・記録及び通信装置4の動作原理を簡単な例を用いて解説する。
【0050】
図7に示す如く、抵抗器16とコンデンサ18とを並列に接続して設け、これらの抵抗器16とコンデンサ18とに対して誘導コイル20を直列に接続して閉回路を形成する。
【0051】
そして、抵抗器16の抵抗値とコンデンサ18の静電容量及び誘導コイル20のインダクタンスに応じて、特定の周波数の電波に対して共振により回路に電流が生じる。
【0052】
電流が生じると周囲に磁界の変動が発生し、この磁界の変動を、電界及び共振周波数計測器である、例えばディップメータ22等を用いて検知し、非接触にて回路の共振周波数を計測する。
【0053】
回路の抵抗器16としてサーミスタを用いた場合、温度変化による抵抗値の変動に応じて、回路の共振周波数の変動を検知することで、回路を非接触で計測する温度計とすることができる。
【0054】
また、抵抗器16として加速度センサを適用して脈拍計、ストレインゲージの適用により血圧計ならびに咬合力計として利用できるほか、コンデンサ18を高分子静電容量変化型湿度センサとすれば湿度計となる。近い将来、ICチップ内にセンサ類をすべて収容して、多機能の生体計測を実現することも可能であろう。
【0055】
前記生体情報計測・記録及び通信装置の根幹は、体温、脈拍、血圧、酸素飽和度等の生理学的情報の他、血液像や血糖、コレステロール、中性脂質、アミノ酸、組織内酵素、ATP、抗体価等の生化学、免疫学的情報を計測する電子センサ類、計測制御用論理回路及びリード・ライト可能な記憶装置を有するICチップ及び非接触にて通信を実現するためのアンテナを兼ねた電源供給用の電磁誘導コイルより構成される。
【0056】
基本的に電子機器と生体を隔離することが特徴であるから、生体センシングにあたっては非接触、非侵襲にて計測可能な加速度、圧力、温度、湿度、光ないしレーザ、磁気、音波センサなど主に用いるが、糖尿病に代表される内分泌疾患や白血病、エイズなどの免疫及び血液疾患、肝疾患等のケースにおいては、医療上の有益性から血糖値、各種酵素やアミノ酸、電解質、抗体価などの生化学、免疫学的情報を直接検知するバイオセラミックセンサ等を、体組織に接触させる生体センシング法にも利用可能である。
【0057】
例えば、体温については、サーミスタ等の素子を歯科用築造体内に設置して直接計測する。現在、冷蔵庫やエアコンに応用されているチップ型NTC(Negative Temperture Coefficient)サーミスタ(NTCCM1005:TDK(株))は、1mm程度のサイズの部品として供給されている。これらのパッケージを除いた素子単味を利用することにより、ミクロン単位のセンサとしてダウンサイズが可能であり、歯科用築造体やインプラント体内に余裕をもって収容できる。
【0058】
脈拍に関しては、歯が拍動により受ける振動や圧力を、加速度及び圧力センサを用いて検知したのち脈拍数を算出する。血圧計測では、その値に依存して仰臥位と立位における脈拍振幅が変動する現象を利用する。
【0059】
すなわち、転倒スイッチならびにホール素子等を用いて***を検知するとともに、両方の***における脈拍振幅を加速度センサで計測した後、差分計算により血圧値を算出する。
【0060】
この他、血圧計測には脈圧による歯の歪みをストレインゲージ等の歪みセンサを用いて計測する手法を利用できるだろう。
【0061】
これにあたり、ピエゾ式シリコン単結晶半導体素子をシリコンゲルにて被覆したマイクロチップサイズの圧力センサ(FPM−30PG:フジクラ(株))や圧電セラミックスをバイモルフ化した加速度センサ(PKGS−00LA:村田製作所(株))等は、既に1立方mm以下のサイズへのダウンサイズが可能である。
【0062】
更に、ストレインゲージや熱電対等を生体センサとして歯科用築造体内に収容することが可能であり、これら一連のマイクロセンサのうち、一部は既に血管内内視鏡に応用されている。
【0063】
将来的には、血中酸素飽和度の計測を実施するために、シリコンウェハース上に集積回路とともにアセンブルされたLED(Light Emitting Diode)とフォトダイオードを利用し、歯の内部から光を照射して周囲組織中の血流を光電脈波として検知する光電センサ(フォトカップラ、フォトインタラプタ)を利用し、光波長の異なる光電センサを複数個利用する手法により酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの構成比を算出するパルスオキシメトリーを実現する。
【0064】
湿度センサは、生体内に電子機器を埋め込む際に懸念される機器内部への水分侵入を検知して、機器の誤作動や故障を未然に防止する対策として利用し、その際には構造が単純で小型化が容易である高分子抵抗変化型及び高分子静電容量変化型湿度センサ(CHS−UGS、CHS−MSS:TDK(株))をモデルに、マイクロ化して用いることが可能であろう。
【0065】
計測及び記録等の制御を行うICチップは、モノリシックなASIC(Application Specific Integrated Circuit)として製作することが望ましいが、汎用のオペレーションアンプやメモリならびに制御、通信用チップを複数組み合わせても差し支えない。
【0066】
歯科用築造体の形状やサイズを考慮し、1歯毎に装着するならば、ワンチップタイプのICチップとした際のダイサイズは5mm角程度とする。橋義歯(ブリッジ)等に装着する際のダイサイズはこの限りではなく、5mmX30mm角程度のサイズが適用可能である。小型化を図るためICにはリードフレーム等を用いず、センサ及び誘導コイルと直接的に結束配線する。ICチップはセンサ制御用プログラムを有し、外部から命令を与えることにより生体情報を検出、記録したのち、アンテナを介してこれらを外部に伝達する機能を有する。
【0067】
また、ICチップは外部から電磁誘導により電力を供給できるので、防水、防湿素材で完全に包埋しても動作に支障はない。そのため、水分に満ちた組織内でも安定して留置でき、しかも半永久的な使用が可能である。そして、情報の読み書き機能を有しているので、患者の生体情報の他、それに付随する個人情報等を格納できる他、プログラムや暗号コード等の書き換えを行うことで、生体計測に関する新たな機能やICチップへの患者の意図しないアクセスをブロックするセキュリティー機能を付加することも可能である。プライバシー保護をより完全にするため、患者の求めに応じてICチップに記憶された情報を消去したり再び記録する機能を設けることができよう。
【0068】
本発明で利用される電子装置に対して電源を供給し、通信を成立させるために、歯根内のアンテナは口腔周囲の軟組織と歯槽骨を透過した電波を受信できる能力が必要である。
【0069】
アンテナは直径1mm〜2mm、長さ5mm〜10mm程のサイズで効率的な送受信を要求される。通信用アンテナは十分な感度を確保し、誘導コイルの機能を兼ねるため、空芯もしくは透磁率を確保するためのフェライトやアルミナコアなどを芯とした巻き線タイプのコイルに加え、積層型ないし薄膜型のコイルインダクタも使用することができる。特に、これらの中の小信号用コイルやチップインダクタについては、携帯端末等において飛躍的な小型化が行われ既に1立方mm以下のサイズのものも現れている。
【0070】
歯根内スペースに設置されるアンテナの形態は、直径1mm〜3mm、長さ5mm〜8mmの円筒状が望ましく、現在の技術水準においてこのサイズを実現することは容易であると思われる。
【0071】
例えば、ビデオレコーダーにおける回転ヘッドの上のコイルは上記のサイズをはるかに下回るにも関わらず、毎分数千回転の環境においてビデオテープとの高速な摩擦(5m/s〜6m/s)にも対応し得る耐久性を有している。
【0072】
通信にマイクロ波などを用いる際は、セラミックなどのインピーダンスの高い材料をアンテナとして用いることが可能である。生体親和性の高いハイドロキシアパタイトやアルミナス、酸化チタンなどのバイオセラミックをアンテナとして用いることも可能であり、その際はインプラントにおける人工歯根(フィクスチャー)そのものをアンテナにできるだろう。
【0073】
そして、本発明で構築される生体情報計測・記録及び通信装置は、基本的にはセンサ部と、制御・記録及び通信部と、通信アンテナを兼ねた誘導コイル部との3パートから構成される。携帯電話などの端末機器内部を観察すれば明らかなように、実はその体積の大半を占めるのは入力用キーボードと表示装置及び内蔵電池であり、一方に端末としての中枢部分は、CPU(中央演算処理装置)やメモリなど10個に満たないチップに集積され、驚くほど小型化されている。本発明をASICにて製作するならば、センサ部と通信部とを統合したモノリシックな集積回路とすることが可能である。
【0074】
本発明は入力キーやモニタ及び電池など容積や重量が嵩む部品を一切用いず、現在実用化されている技術で容易に微小化できる電子デバイスのみを採用することにより、研究開発などの新たな投資を行うこと無く、直ちに実施が可能なので、医療マーケットに本発明が浸透するための有益性及びコストパフォーマンスは十分確保されている。
【0075】
しかしながら、本発明における医療現場からのニーズは、さらなる機能やパフォーマンスの向上を要求するだろう。中でも蓄える情報量の増量が先決である。例えば既に販売されている通信型非接触ICタグ(VS−1: 信和エンジニアリング(株))は、直径5mmの小球に2Kバイトのメモリが搭載されている。この情報量はA4用紙1ページ程度のドキュメントに匹敵するけれども、本発明における生体情報の記録にはいささか物足りない感がある。
【0076】
現在、パソコンの記憶素子として利用されているメモリの記憶容量の増加はめざましく、既に1Mビットを超える製品が市場に現れている。本発明における生体情報の記録にあたっては、常にその時代の新しいメモリを採用することにより、将来求められるであろうよりプログラマバルで複雑な機能を要するニーズにも答えられるだろう。
【0077】
今日、電池のダウンサイジングが飛躍的に進んでおり、近い将来において微小化が図られるだろう。
【0078】
本発明では電池を絶縁体である歯科用築造体内部に格納して生体組織に電流が漏れぬよう十分配慮できるので、その際は内蔵電源による自立動作も可能である。これらの電池はひとたび生体に装着されれば長期にわたり交換できない都合上、充電可能な二次電池でなければならないけれども、電源が確保されることにより装置は外部電源に依らずに常時動作できるので、その利便性は格段に向上する。
【0079】
例えば、患者の容態が急変した際に警報を発信できるし、徘徊する老人を発見する手法に利用できる。遭難の際、救助の明暗を分ける決定的な機能を果たすこともあり得るだろう。普段の充電は外部電源で行われるけれども、口腔内に圧電素子やインダクタ等による発電装置を別途設けることにより、咬合ないし咀嚼力による圧力や加速度を利用した電源供給による自立的動作も可能である。
【0080】
上記に示した生体情報計測・記録及び通信装置を安定して患者の口腔内に設置するため、これらを歯科用築造体の形状に成形する際に、以下の条件を満たす材料を用いる必要がある。すなわち、
1.封入する電子装置に影響を与えない、
2.歯科用築造体として十分な強度を有する、
3.防水、防湿能力を有する、
4.生体に為害作用を及ぼさない、
5.電波を透過する、
6.電気的絶縁体を有する、
等である。既に歯科臨床において普及しているコンポジットレジンなどの歯科用充填材料は、概ね上記条件にかなうものであり、これらを利用して装置を封入し、築造体として形状を整えることが可能である。これらの中で特にエポキシ系樹脂(透明エポキシGM−9002: ブレニー技研(有))は優れた電気的絶縁性と強度を有し、常温での成形が可能であることから、歯科用築造体のマトリクスとして最も適していると思われる。
【0081】
但し、これらを歯科用築造体の材料とした場合、咬合力による繰り返し応力を受けることから、柔軟性に乏しい素材では長期使用の間に亀裂が生じることがある。その際、水分の微少漏洩により起こる電子装置の障害を防止する観点から、装置の成形の際には電子機器をシリコン等の柔軟性のある材料などで薄く被覆した上で、強度を有するエポキシ系樹脂やコンポジットレジンなどの材料により封入、成形する、いわゆるラミネート構造等を採用することにより、長期間の使用に耐える、より高度な防湿、防水機能を確保する必要性も考慮すべきであろう。
【0082】
本装置の設置は、電流に対して極めて敏感な歯髄神経を有する生活歯を対象とせず、齲蝕や歯周病などの病因及び歯冠補綴等、歯科的必然性により歯髄が失われた失活歯を対象とする。
【0083】
歯は齲蝕等によりひとたび崩壊し歯髄が冒された際に歯内療法を施すことにより、歯そのものは失活したものになるが、歯根表面のセメント質を介して保存でき、永続的な維持が可能である。
【0084】
歯内療法処置により空洞化した根管及び歯髄腔のスペースは、後に歯冠を修復するための歯科用築造体に置き換えられる。この歯科用築造体は数ミリ角のダイサイズであるICチップ及びアンテナを留置するのに十分な体積を有している。
【0085】
歯内療法を施した歯では、処置後に起こりうる二次齲蝕を防止すべく、歯の周囲にある組織液ならびに唾液の歯内部への侵入を完全に遮断する処置が行われるので、歯科用築造体のある部位に水分等が侵入する可能性は少なく、さらに歯科用築造体の素材として防水性の材料を用いることにより、センサならびにICチップの腐蝕等による機器の劣化が生じる可能性はほぼ皆無である。万一、装置が機能しなくなった際も、人工歯を交換する作業によって容易に除去、交換することが可能である。
【0086】
生体情報計測装置の存在する歯は、通法の修復処置にもとづき歯冠部をセラミックス及び金属冠で被覆することによって口腔内で咀嚼を担うことができ、しかも破折等の事故を生じない。
【0087】
また、ICチップ周囲を金属被覆することにより、X線やMRI(核磁気共鳴)等、医学的診査において用いられている各種放射線及び電磁波に対する被曝からICチップを保護することができる。
【0088】
口腔のある頭頸部は、四肢及び躯幹にくらべ、衝撃及び侵襲に対して常に慎重に保護される対象であり、温度的・化学的にも安定した環境である。従って、唾液や咬合による外力から十分に保護されれば、電子装置の留置には人体中最も適した場所と言える。
【0089】
現在、口腔内においては、マイクロチップを用いて義歯に患者名を刻印する方法が提唱されている。これを生体計測に利用出来ないこともないだろうが、義歯は本来着脱して利用するものである所似から、他の携帯用機器と同様、患者自身による自己管理を必要とするだろう。
【0090】
大地震のたび、多くの被災者が義歯を紛失する事例は後を絶たない。
【0091】
本発明では失活歯を利用することにより、電子計測機器と人体との完全な一体性を実現し、生体情報計測及び記録を完全に自動化した点で画期的である。記録にICチップを採用することにより情報の安全な管理が約束されている。何よりもセンサやICチップなど、本来は生体に対する異物である電子デバイスを歯科用築造体に完全に封入して失活歯に装着した上、さらに金属やセラミック冠により被覆する厳重さによって、本来、生体組織に埋め込む際に避けることができない異物反応や生体に歓迎されない金属ならびに化学物質の漏洩に対する充分な安全性が確保されている。
【0092】
本発明における生体情報計測・記録及び通信装置の設置部位は、失活歯の処置後において生まれる無用のスペースである。従って、装置の設置による生体に対する新たな侵襲や苦痛は一切無い。しかも安全確実であり、健康を維持するための高い利便性を有し、他の埋め込み式医療機器の如き道義的・倫理的問題は一切生じない。心臓ペースメーカーのように、やむを得ない事情から生体に埋め込まれる医療機器とは本質的に異なるものである。
【0093】
本発明は日常的な歯科治療に併せて施行するもので、健康な人であっても抵抗なく利用することができる。
【0094】
このような意味からも、本発明は新しい時代におけるアメニティ医療の実践にも寄与し、患者の健康や社会活動を支援する未来医療の健康管理のツールとして、広く利用されることが期待できる。
【0095】
図8はこの発明の第2実施例を示すものである。この第2実施例において、上述第1実施例のものと同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
【0096】
この第2実施例の特徴とするところは、前記歯科用築造体2、例えば前歯用築造体2aの内部に封入した生体情報計測・記録及び通信装置4に対して、情報端末手段32を接続し、この情報端末手段32によって、生体情報計測・記録及び通信装置4の情報入出力を制御する点にある。
【0097】
すなわち、前記生体情報計測・記録及び通信装置4は、図8に示す如く、センサ部6と、ICチップ等を用いた制御・記録及び通信部8と、通信用アンテナを兼ねた誘導コイル部10とにより構成されている。
【0098】
そして、前記情報端末手段32は、双方向コミュニケーション機能を有しており、例えば携帯型情報端末器(「携帯型コミュニケータ」、「PDA端末器」ともいう)34や固定型情報端末装置(「固定型コミュニケータ」ともいう)36からなる。
【0099】
詳述すれば、前記携帯用情報端末器34は、図8に示す如く、携帯可能なようにパスポートサイズ程度に形成した本体部34−1と、この本体部34−1に設けられる表示画面部34−2と、情報入出力の制御を行うための複数個のボタン操作部34−3とを有する。
【0100】
また、前記固定型情報端末装置36は、パーソナルコンピュータからなる本体部36−1と、表示用ディスプレイ部36−2と、入出力操作用のキーボード部36−3及びマウス部36−4とを有する。
【0101】
追記すると、前記情報端末手段32は、前記生体情報計測・記録及び通信装置4に対して定期的なリードライトを行い、本人の体温や血圧や脈拍パターン等の生体情報を常に監視するものである。
【0102】
以下に具体的な例について説明する。
【0103】
前記歯科用築造体2、例えば前歯用築造体2aの内部に封入した生体情報計測・記録及び通信装置4は、生体センサとして機能し、この生体情報計測・記録及び通信装置4と通信を行うことで、携帯型情報端末器34や固定型情報端末装置36からなる情報端末手段32が生体情報計測・記録及び通信装置4から生体情報を取得する。
【0104】
前記携帯型情報端末器34は、生体センサである生体情報計測・記録及び通信装置4の装着者が携帯することで、常時生体情報を取得・記録することが可能である。
【0105】
一方、固定型情報端末装置36は、装着者が何らかの理由、例えば就寝および入浴時などで携帯型情報端末器34を使用しない場合、あるいは通院や入院の際など、医師・歯科医師およびしかるべき機関(医療機関・消防・警察・法務など)による医学的管理下において、固定型情報端末装置36に対し、しかるべき情報の取得および記載(アップデート)を実施する際などに使用される。
【0106】
前記生体情報計測・記録及び通信装置4に設けられる計測機能としては、現在微細化が実現されている加速度、温度、光、圧力、姿勢(ポジショニング)および磁気などに対するセンサを組み込むことが可能である。
【0107】
例えば、温度センサを設置すれば体温について常時モニタリングを行うことが可能であるとともに、圧力センサならびに加速度センサを用いれば血圧や脈拍数について常時モニタリングを行うことが可能であり、得られたデータは体調管理に役立てることができる。
【0108】
また、本発明が設置されるのは口腔内の歯科用築造体2、例えば前歯用築造体2aの内部であり、加速度センサの利用により、不幸にして遭遇した事故や犯罪の際に起こり得る頭部に対する異常な衝撃を検知することにより、人体に対する傷害を警報として発信する警報システムに応用することが可能である。
【0109】
これら危機管理への応用に関しては、人体の中で四肢や体躯はスポーツの際など、異常とは言えない状況においても相当の衝撃を敢えて甘受するケースが頻繁に生じることを考慮すると、上述したセンサが頭部に設置されていることならではの機能であり、頭部以外の部位に設置される他の生体センサ利用法と比較して排他的な身体管理機能を実現できる可能性を有している。
【0110】
更に、人体において頭部は特に保護されるべき対象であり、それにおける血圧や脈拍の喪失ならびに生活上のアベレージを大きく上回る振動および衝撃は、生命中枢の座である中枢神経系の障害に直結するものである。
【0111】
従って、口腔内における生体情報計測システムは、生命の安全にもっとも関わり得るセキュリティ機能を提供することができる。
【0112】
例えば、加速度的な高齢化社会を迎える先進国において独居老人の健康管理は大きな課題である。
【0113】
病院の集中管理室(ICU)の如き心電図や体温計、呼吸センサおよび血圧計などを携帯して、常時モニタリングするような身体管理を高齢者に強いることは、到底不可能であるが、前記歯科用築造体2、例えば前歯用築造体2aの内部に封入した生体情報計測・記録及び通信装置4及び前記携帯型情報端末器34は装着可能であり、身体管理機能の大半について、装着者のストレスを伴うことなく提供することが可能である。
【0114】
すなわち、圧カセンサによって血圧を計測するとともに、加速度センサによって脈拍を計測し、温度センサによって体温を計測し、さらに発光ダイオード等により赤色ならびに近赤外帯域の光源を確保することにより光センサによる血中酸素飽和度の計測が実現できる。
【0115】
前記情報端末手段32、特に携帯型情報端末器34は、装着されたセンサを常時監視して生体情報をモニタリングすることにより、体調の急変を察知して警報を発することができる。
【0116】
しかし、これらの実施に当たっては、例えば、体調の急変の際には、脈拍数および血圧の変動が検知された時点と、通常の生活における運動や負荷の大きい作業によって血圧の変動が生じたケースとの識別が必要となる。
【0117】
このため、これら脈拍および血圧センサに異常値が検知された際には、同時に姿勢センサの状態をモニタする。
【0118】
すなわち、体調急変時の殆どの場合、センサ装着者の姿勢は継続的な仰臥位または、うつ伏せの姿勢にあり、一方運動や作業の負荷により生ずる血圧・脈拍の亢進では装着者の姿勢は立位である。従って、センサ装着者の脈拍・血圧の亢進を検知した際には、同時にその姿勢が仰臥位状態にあるか否かを検知することにより、前記情報端末手段32、特に携帯型情報端末器34はセンサ装着者の危急状況を高い確度で判定し、自動的に警報を発信することが可能となる。
【0119】
ただし、本発明のものを上記のように生活上において常時適用する際には、口腔内に装着する生体情報計測・記録及び通信装置4と、それを管理・運用するための前記情報端末手段32、特に携帯型情報端末器34が常に連携していなくてはならない。
【0120】
本発明における生体情報記録を、必要に応じて随時行うのであれば、携帯型情報端末器34を携行する必要は無いけれども、身体の維持に重大な支障を及ぼす疾病を有する場合のような医学的管理下に常時あるものが望ましい場合には、携帯型情報端末器34を常時携行する必要がある。そのためには携帯型情報端末器34は生体情報記録装置と常時連携が行われるよう、生体情報取得機能の動作を常時監視する。
【0121】
例えば、着替えや入浴の際など、時として携帯型情報端末器34が装着者から外され、生体情報の取得が中断されるケースも考えられるが、ある一定時間を経過しても携帯型情報端末器34による生体情報取得が再開されない場合には、携帯型情報端末器34が警報を発する保安機能を具備するのが望ましい。
【0122】
これらのシステムは健常者に対しても緊急状況を警報として発する有益なセキュリティツールとして利用することができる。例えば、目下、学童および生徒らによるいじめの問題は、長きにわたりその解消が望まれて来た大きな社会問題であるけれども、これまでその解決を阻んできた大きな要因は、被害者がいじめの事実の告知をためらう事例に他ならない。
【0123】
被害者が告知を躊躇するのは、第1にいじめが隠蔽されやすい環境、すなわち第3者の目撃の可能性が少ない場所で発生すること、第2に被害者が受けた被害を立証することが困難であること、第3に被害者の自発的告発が加害者によって妨害されることなどの理由にある。
【0124】
口腔内に設置された生体情報計測システムである生体情報計測・記録及び通信装置4は、被害者が受ける傷害により生ずる衝撃および脈拍・血圧の更新など、暴力を受けることによる為害作用をリアルタイムに検知して警報を発すると同時に、その状況を記録する。
【0125】
この結果、いじめ被害の告知は加害者の意図により妨害を受けることなく、しかるべき機関に確実に通報されるので、迅速かつ確実に事件の究明を行うことが可能となる。
【0126】
これらシステムは学童・生徒らの粗暴行為の大きな抑止力ともなるであろうし、一般に使用が拡大されれば、より安全な社会環境を実現する手段の一つとして威力を発揮し得る。
【0127】
図9〜図12はこの発明の第3実施例を示すものである。
【0128】
この第3実施例の特徴とするところは、生体ダイナミズムパターン認証によるセキュリティツールに応用される生体情報計測・記録及び通信装置42を開示した点にある。
【0129】
すなわち、前記生体情報計測・記録及び通信装置42は、歯科用築造体2として設置される生体センサであり、生体センサを用いて装着者の生体情報を常時記録することができる。
【0130】
それら情報には脈拍、血圧、体温およぴ血中酸素飽和度などが含まれる。
【0131】
その一例として、動作原理に準拠したこの第3実施例の知見によれば、口腔内において設置された光センサを用いて脈波を取得することができる。
【0132】
ここで、歯髄よりの光検知法に基づく脈波を得る方策を開示する。
【0133】
例えば、上顎前歯44に、図9に示す如く、光検知を行うフォトダイオード46及び光源となる発光ダイオード(「LED」とも記載する)48を、保持具50によって装着する。
【0134】
このとき、上顎前歯44の舌側に装着した発光ダイオード48から、568、660、そして940nmの単色光を上顎前歯44の舌側面に照射したのち、上顎前歯44を透過した光をフォトダイオード46により検知する。
【0135】
また、上顎前歯44に、図10に示す如く、光検知を行うフォトダイオード46及び光源を導入する光ファイバ52を、保持具50によって装着する方策もある。
【0136】
そして、この光ファイバ52を通じ、上顎前歯44の舌側より任意の波長による可視光および近赤外、近紫外光を照射した後に、上顎前歯44を透過した光をフォトダイオード46により検知する。
【0137】
このとき、照射光及びフォトダイオード46の特性は、検索する生体情報の種類に応じて随時調整を行う必要があるが、光源は生体に為害作用を及ぼさないレベルの強度である実効値100μ(ミクロン)W程度とする。
【0138】
図11に開示したグラフ波形は、前記発光ダイオード48を光源とした568nmの緑色光を上顎前歯44に照射した後に、透過した光を検知したものである。
【0139】
この図11の左右の波形における上段(「TLP」と付記)は、上顎前歯44を透過した光強度であり、下段は計測被験者の心電図(「ECG」と付記)である。
【0140】
上顎前歯44を透過した光による出力が、被験者の脈拍と相同して変化している。これは上顎前歯44の歯髄血流量の脈拍による変動を反映したもので、透過光光電脈波(Transmitted Light Photoplethymography)と呼ばれるものである。
【0141】
このような場合には、血流量を反映しやすいように、血中ヘモグロビンに対する吸収特性の高い可視短波長領域の光が用いられる。
【0142】
また、歯のみに限定した透過光を抽出するには、計測対象の歯以外をオペークまたは、マスクして、測定対象以外からの光の混入を抑止するのが効果的である。
【0143】
図11における右側のグラフ波形は、計測対象の歯以外をマスクする黒色のラバーダムシートを併用して計測した際の結果であり、左側に比べて得られる波形の振幅が大きく減少することが示されている。
【0144】
このことは、仮に歯から周囲組織に向けて光が導入された場合であっても、周囲組織に伝搬した光より脈波が検知できることを示している。
【0145】
図12は、660、810、そして940nmを光源とした歯を対象とする透過光光電脈波であり、810や940nmの光源を用いた際には脈波が得られるものの、660nmの光源を用いた際には脈波が抽出できないことを示しており、検索する対象によって適切な光源を選択する必要があることが理解できる。
【0146】
既に、半導体リレーなど集積回路内において発光及びその光を検知して電気的出力に変換するシステムを作り込む微小なフォトカップリングが実用化されている。
【0147】
これらをこの第3実施例の前記生体情報計測・記録及び通信装置42のICチップ内に適用することは容易であり、生体情報計測・記録及び通信装置42に光電脈波計測機能を付加することも可能である。
【0148】
また、脈拍の計測には、この他にも拍動によって生ずる局所振動を加速度センサにて検知する手法や、血圧による局所の組織圧を検知する方法が確立されでいる。
【0149】
すなわち、この第3実施例における生体情報計測システム、つまり前記生体情報計測・記録及び通信装置42では、生体のバイタルサインを単なる拍動数や血圧等の数値データのみではなく、脈波のような二次元像をとして取得することが可能である。
【0150】
人間のバイタルサインの精細な波形画像として取得する機能は、心電図波形による循環器機能の診断のような身体の健康を保つための医学的管理や、本人の身体の危機を発信するセキュリティシステムに利用できるほか、極めて確度の高い本人確認手段として利用することができる。
【0151】
このようなシステムには、当然のことながら、装着者の人事不省などの緊急時に備えた、装着者の身元ならびに医学的個人情報などが格納されていて、そのものが身分証明の機能を担保するケースが生じる可能性は高い。
【0152】
なぜならば、前記生体情報計測・記録及び通信装置42はクレジットカードや免許証とは異なり、歯内に埋設されていることにより、盗難や紛失の危険性が極めて低く、身分証明の手段として高い信頼性を有しているためである。
【0153】
しかしながら、近年、クレジットカード犯罪として急増しているスキミングなどによるカードデータのコピー及び偽造のように、万一にも前記生体情報計測・記録及び通信装置42のICチップに何らかの不正なアクセスにより、内部の個人情報をコピーされ、身分証明機能を偽造されないともを限らない。
【0154】
そこで、前記生体情報計測・記録及び通信装置42に認証機能を付加して利用する際には、人間の安静時における脈波の形状がほぼ一定である点に着目し、これを予め記録して個人毎のパターンを生成した後に、データペースとして登録する。
【0155】
そして、個人を認証する際には、前記生体情報計測・記録及び通信装置42のICカードの記録情報に加え、装着者から取得した脈波パターンをデータベースに登録されたパターンと照合する。
【0156】
さすれば、生体ダイナミズムパターン認証機能を提供できる。
【0157】
このバイタルパターン認証の第1の特徴は、”社会生命”に視点を置いたオーサライズにある。
【0158】
すなわち、クレジットカード犯罪に見られるような、カードの複製・偽造による他人へのなりすましを完全に防止できることはもとより、装着者が身体に重大な変調を来した場合、例えば装着者が死亡することにより前記生体情報計測・記録及び通信装置42がバイタルサインを検知できなくなった場合には、その時点で認証体としての機能を消失させることもできる。
【0159】
これは、特に高度なセキュリティを要求する分野において威力を発揮する。一例として航空機ハイジャック犯罪の抑止に利用可能である。
【0160】
先ず、パイロットの口腔内に前記生体情報計測・記録及び通信装置42を装着して動作させるとともに、航空機側には、前記生体情報計測・記録及び通信装置42を認証してパイロットによる自由な操縦が可能となる機能を予め付加しておく。
【0161】
なお、航空機が飛行中である際にも、操縦席周辺においてこの生体情報計測・記録及び通信装置42が認証体として機能していない限り、自由な操縦が出来ないシステムとする。
【0162】
仮に、ハイジャッカーによってパイロットらが操縦室から排除された場合、あるいは最悪のケースでパイロットが死亡した場合には、航空機が生体情報計測・記録及び通信装置42を認証できず、その時点で航空機は強制的にオートパイロットとなる。
【0163】
なお、オートパイロットの際には、最寄りの空港周辺にて着陸に必要な最低限の燃料量になるまで旋回を続ける、あるいは、近年開発された航空機の遠隔操縦による着陸ないし航空機自信による自動着陸などを実施するようにプログラムすることで、ハイジャック犯が航空機を自らの目的地に飛行させることを防止することができる。
【0164】
このような高度なセキュリティ機能は、生体情報計測・記録及び通信装置42のような認証体が生体のバイタルサインを認知するものならではのものであり、いわば究極の本人認証システムと言うことが可能である。
【0165】
なお、この発明は上述第1〜第3実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0166】
例えば、この発明の第1〜第3実施例に開示される生体情報計測・記録及び通信装置は、装着者の生体情報に加え、医学的管理の上で必要となる様々な個人情報を記録する機能を有しているが、これらの情報が常に装着者とともにあることは、体調の急変などの緊急時に対応する際に、極めて有用である一方、装着者のプライバシーに関する個人情報が悪意ある他人によって盗用される可能性を有している。場合によっては、装着者自信による改ざんが行われるかもしれない。
【0167】
従って、生体情報計測・記録及び通信装置に個人情報を記録する際に、暗号化を行うなどの保安対策を施す構成とすることも可能である。
【0168】
すなわち、暗号化による保護の対象となるデータは、装着者の氏名、住所、生年月日、連絡先、保険証番号および記号、血液型の他、必要に応じ医療機関より入力された装着者の診療に関する内容(病歴、経過、処方箋、患者への伝達事項など)が含まれる。
【0169】
そして、暗号化の方法としては、一般的な暗号化の手法として用いられている共通鍵暗号の使用が考慮されるが、共通鍵暗号方式では装着者によるデータ改ざんの余地が存在する。
【0170】
従って、医療機関が装着者を他院に紹介する際に、生体情報計測・記録及び通信装置に対して医学的情報を記録する場合などには、より安全な暗号化手法として公開鍵暗号方式を用いるのが望ましい。
【0171】
この場合、照会を行う医療機関は、紹介先の公開鍵によって照会事項を暗号化し、紹介先の医療機関の秘密鍵によってデータの復号を実施する。
【0172】
さすれば、生体情報計測・記録及び通信装置に個人情報を記録する際に、暗号化によって十分な保安対策を施すことができる。
【0173】
また、この発明の第1〜第3実施例に開示される前記生体情報計測・記録及び通信装置を、矯正用ブラケットに装着して口腔内に設置する方策とすることも可能である。
【0174】
すなわち、前記生体情報計測・記録及び通信装置を口腔内に露出させるものである。
【0175】
さすれば、前記生体情報計測・記録及び通信装置を口腔内に露出させることができるので、センサとしてpH(ペーハー)センサを組み込むことができ、このpH(ペーハー)センサによって口腔内唾液の酸性度を計測することによる齲蝕予防システムや、摂取した食物の電気抵抗を計測することで塩分摂取モニ夕を実現することが可能となり、装着者の健康管理の一助となることができ、実用上有利である。
【0176】
また、口腔内に露出させた前記生体情報計測・記録及び通信装置においては、外部との通信を行うエアリアル(アンテナ)を生体情報計測・記録及び通信装置の外周を被覆するループコイル状に確保するか、矯正用ブラケットに用いられるステンレスワイヤをエアリアルとして併用することが可能であり、製作が容易となるものである。
【0177】
【発明の効果】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、歯科用築造体を利用した生体情報計測・記録及び通信装置は以下のような効果をもたらす。
(1)生体に負荷や侵襲及び為害作用を全く与えることなく、患者の必要に応じて体温、脈拍、血圧及び血糖値などの生体情報を24時間、絶え間なくモニタし、得られた情報を常に携帯することにより、患者がいかなる状態であっても、あるいは行きつけ以外の医療機関においても、医師は速やかに患者の病歴を把握することが出来る。詳細な生体データは診断精度の向上や、きめ細かな医学的メインテナンスの実現に役立てることができる。装置は金属冠などの補綴物で完全に被覆されているので、装置の所有を他人に知られる可能性は極めて少ない。記録装置にICカードを用いることで機密性を確保し、エイズや肝炎など、プライベートや人権に関わる医学的情報であっても安心して所持できる。データの紛失や盗難のおそれが無く、不慮の事故、事件の際には身元確認手段しても利用できるなど、社会生活における利便性も有する。
(2)普段の生活において医学的メインテナンスを必要とする人々が急速に増加する長寿社会において、これらの人々の医学的管理を適切に行うには、患者の生理学的、生化学的情報をきめ細かく把握することが必要である。実際、医学的メインテナンスの大半は、生理的、生化学的データの収集に費やされている。本発明はこの作業を完全に自動化するので、これまでは相当の労力を必要とした医学的ケアを大幅に省力化し、実生活における患者や家族の負担を大幅に軽減することができる。絶え間なくしかもきめ細かい医学的管理は、患者が重篤な状態に至る以前に適切な対策を施すことにつながり、全身疾患に見舞われた人々の社会復帰を大いに支援するとともに、結果的には医療コストの削減にも寄与するだろう。
(3)従来、本発明で採用するような高度で精密な生体計測機器を体内に留置する際に、これまでは新たな侵襲や生体への為害作用に対する懸念があったが、本発明では装置の設置自体を目的とした侵襲が一切無く、それを実施する方法は歯の機能を補う目的において歯科臨床において日常的に使用されているものである。本装置の適用によって通常の歯科的処置を妨げる、あるいは手法を変更することも無い。装置は絶縁性と封鎖性及び防水性に優れた材料で完全に封入されて供給され、しかも周囲を強固な歯冠補綴物によって完全に被覆されることにより、口腔内の唾液や周囲の血流や組織液から完全に隔離される。これにより、装置は生体に対して物理的、化学的為害性を何ら生ずることなく、これまでにない生体への安全性を担保するとともに、半永久的な機能維持を実現している。
(4)本発明では、記憶装置などの集積回路の周囲を金属製の歯冠補綴物により被覆することで、集積回路やそこに蓄えられたデータを、患者が頻繁に被るであろうX線検査による核種放射線やMRI検査による電磁波から保護することができる。
(5)本発明の実施により、患者の医学管理を容易にし、その健康をこれまで以上にきめ細かくサポートできるのみならず、社会や経済などの生活面においても、その揺るぎない信用や安寧をもたらすことによって、その日常生活をトータルに支えるヘルシーでセーフティーなライフシステムの確立を実現することが期待できる。
【0178】
また、歯科用築造体を利用した生体情報計測・記録及び通信装置の情報入出力を制御する情報制御方法は、以下のような効果をもたらす。
(1)情報端末手段によって、生体情報計測・記録及び通信装置に対して定期的なリードライトを行い、本人の体温や血圧や脈拍パターン等の生体情報を常に監視することができる。
(2)生体情報計測・記録及び通信装置を、生体センサとして機能させることができ、危機管理、例えば身体管理へ応用可能である。
(3)心電図波形による循環器機能の診断のような身体の健康を保つための医学的管理や、本人の身体の危機を発信するセキュリティシステムに利用できるほか、極めて確度の高い本人確認手段として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例を示す歯科用築造体内部に生体情報計測・記録及び通信装置を配設した状態の概略構成図である。
【図2】歯科用築造体である前歯用築造体の正面図である。
【図3】歯科用築造体である臼歯用築造体の正面図である。
【図4】生体情報計測・記録及び通信装置の構成斜視図である。
【図5】前歯用築造体を設置した状態の斜視図である。
【図6】築造体を被覆する歯冠補綴物を設置した状態の斜視図である。
【図7】生体センサの動作原理を表す回路説明図である。
【図8】この発明の第2実施例を示す歯科用築造体、例えば前歯用築造体の内部に封入した生体情報計測・記録及び通信装置とこの装置に接続される情報端末手段との概略構成図である。
【図9】この発明の第3実施例における動作原理を示す上顎前歯に光検知を行うフォトダイオード及び光源となる発光ダイオード(「LED」とも記載する)を装着した状態の概略断面図である。
【図10】この発明の第3実施例の改良例における動作原理を示す上顎前歯に光検知を行うフォトダイオード及び光源を導入する光ファイバを装着した状態の概略断面図である。
【図11】発光ダイオードを光源としたヒトにおける脈波を検知する方法として、568nmの緑色光を上顎前歯に照射した後に、透過した光を検知したグラフ波形を示す図である。
【図12】660、810、そして940nmを光源とした歯を対象とする透過光光電脈波を示す図である。
【符号の説明】
2 歯科用築造体
2a 前歯用築造体
2a−1 上部構造体
2a−2 合釘
2b 臼歯部用築造体
2b−1 上部構造体
2b−2 合釘
4 生体情報計測・記録及び通信装置
6 センサ部
8 制御・記録及び通信部
10 誘導コイル部
12 歯根
14 歯冠修復物
16 抵抗器
18 コンデンサ
20 誘導コイル
22 ディップメータ
32 情報端末手段「コミュニケータ」
34 携帯型情報端末器「携帯型コミュニケータ」
34−1 本体部
34−2 表示画面部
34−3 ボタン操作部
36 固定型情報端末装置「固定型コミュニケータ」
36−1 本体部
36−2 表示用ディスプレイ部
36−3 キーボード部
36−4 マウス部
42 生体情報計測・記録及び通信装置
44 上顎前歯
46 フォトダイオード
48 発光ダイオード(「LED」とも記載する)
50 保持具
52 光ファイバ

Claims (3)

  1. 通法の歯科治療に基づいて失活歯ないし歯槽骨に装着する歯科的術式の過程に沿って生体に設置される歯科用築造体において、この歯科用築造体の内部に少なくとも生体センサによる非接触計測を含む生体情報の計測を行う機能と計測結果及びこの計測結果に付随する各種情報を記憶する記録機能と記憶した内容を外部に伝送する通信機能とを有する生体情報計測・記録及び通信装置を設け、この生体情報計測・記録及び通信装置は、歯科用築造体の内部に封入する前に、電子機器及びその付属物の劣化防止のために防水・防湿処理を施し、前記生体情報計測・記録及び通信装置は、歯科用築造体の内部に封入された後に、外力に対する耐久性向上のために前記歯科用築造体を歯科用合金あるいはセラミックスによって被覆するとともに、各種放射線、電磁波による障害に対して保護機能を付加するために前記歯科用築造体に歯冠修復物による金属シールドを施して非浸襲としたことを特徴とする歯科用築造体を利用した生体情報計測・記録及び通信装置。
  2. 前記生体情報計測・記録及び通信装置は、体温、脈拍、血圧、血中酸素飽和度及び血糖値の生体情報の計測を行うセンサ部と、送受信のための双方向通信機能を有するICチップを用いた制御・記録及び通信部と、通信用アンテナを兼ねた誘導コイル部とにより構成される請求項1に記載の歯科用築造体を利用した生体情報計測・記録及び通信装置。
  3. 通法の歯科治療に基づいて失活歯ないし歯槽骨に装着する歯科的術式の過程に沿って生体に設置される歯科用築造体の内部に少なくとも生体センサによる非接触計測を含む生体情報の計測を行う機能と計測結果及びこの計測結果に付随する各種情報を記憶する記録機能と記憶した内容を外部に伝送する通信機能とを有する生体情報計測・記録及び通信装置を設け、この生体情報計測・記録及び通信装置は、歯科用築造体の内部に封入する前に、電子機器及びその付属物の劣化防止のために防水・防湿処理を施し、前記生体情報計測・記録及び通信装置は、歯科用築造体の内部に封入された後に、外力に対する耐久性向上のために前記歯科用築造体を歯科用合金あるいはセラミックスによって被覆するとともに、各種放射線、電磁波による障害に対して保護機能を付加するために前記歯科用築造体に歯冠修復物による金属シールドを施して非浸襲とし、前記生体情報計測・記録及び通信装置に接続可能な情報端末手段を設け、情報端末手段からの制御信号により生体情報計測・記録及び通信装置の記録機能への必要情報の入力及び記録機能によって記憶された情報の出力を果たすべく通信機能を制御することを特徴とする歯科用築造体を利用した生体情報計測・記録及び通信装置の情報入出力を制御する情報制御方法。
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